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2018/10/16

罪の中で生まれた私の産声。

10月8日と9日に宝塚大劇場にて宙組公演「白鷺の城」と「異人たちのルネサンス」を見てきました。

「異人たちのルネサンス」は悲しいお話だけどどこか優しさを感じるのが私は気に入っています。
あれは主役のレオナルドを演じる真風さんの持つ優しさなのかな。
どうしても受け付けない箇所というのがないので、役者の芝居を通して物語に入っていけます。
もっと上手く描く手法もあるかもしれないけれど、私にはなによりも描かんとしているものが胸に響くかどうかが大切な気がします。
(宝塚らしいパフォーマンスがもっと挿入されていたらなぁとは思いますが)

初見では、登場人物たちのそれぞれの心の闇を想像しながらストーリーを追うのが面白かったです。
演者の内面の在り方で物語が広がる作品だなぁと思いました。
カテリーナが「ゆるしを請う」子になった具体的なエピソードがなかったので、そこがいちばん妄想ポイントでした。
グイドが意図的にそう育てたってことだよねと見終わってからもぐるぐると考えました。

2回目の観劇では、登場人物たちの心がぐっと近く見えた気がして、初見にはなかった感動を覚えました。
天才の青春を見た感じ。
田渕先生の作品に共通しているのは心傷つきうずくまっている人が人との関わりを経て彼(女)なりに立ち上がり前に進もうとする姿が描かれていることだけど、あらためて私はそこに惹かれるのだなぁと思いました。

葛藤の中でレオナルド(真風涼帆さん)が自分が絵を描くことの意味を見つめ、かつての自分に重なる者に心を寄せ、他者に心を縛られ身動きできなくなっている想い人を解放したいともがく、その彼の心の動き、在り様に惹かれました。

登場人物たちの心の有り様や過去は、セリフよりもアリアの歌詞に込められていることが多く、初見では気づかなかったことに、2回目以降の観劇でその歌詞が頭に入ってくることで気づいたように思います。
その点では1回しか見ない人にはやさしくないかもと思います。

庶子の生まれで兄弟とは分け隔てをうけて育ち、またその才ゆえに家族からも気味悪がられたレオナルド。
そんな傷ついた少年レオナルドが前を向いて歩けるようになったのは、芸術や研究への没頭、そしてヴェロッキオ夫妻の愛情と工房の仲間の存在のおかげなんだろうなと。
それがわかるヴェロッキオ(松風輝さん)の場面が好きでした。
「その才能を邪魔する優しさなどもう棄ててしまえ」という優しさ。
このあたりが凄く田渕先生の作品らしいなと思いました。

いつも工房に集う皆の心とお腹を満たすことを気にかけている優しい奥さん(花音舞さん)も。
寂しい子どもにとって「食べていくかい?」と優しく声をかけてもらうほどうれしいことはないのじゃないかな。
立派な大人になったレオナルドにも同じように「食べていくかい?」と。
なにを考えているのかはわからなくても、なにか重いものをレオナルドが心に抱えていることがきっと彼女にはわかるのだなぁ。

そんな夫妻に彼の優しさも育まれていったのではないかな。
だからこそ彼はサライ(天彩峰里さん)のことを見捨てられないのだろうな。
そして立派に成人し芸術家として才能を発揮しているいまでも、彼の心の中にはかつての傷ついた少年が住んでいるのだろうなと思います。
だから彼はあの後もきっといつかサライをゆるすのだろうと思います。

彼がカテリーナの瞳の中になにを見たのか。3回の観劇では曖昧だったので、次回の観劇ではそこをしっかりと感じたいなと思いました。
彼が求める『少女』とはなんなのか。
わたし的にはいまの彼女をそのまま受け止めてあげてほしいと思ったのだけど、そういうこととはまたちがうことなのかな。
芸術家の目は、本質を見抜くということなのかな。

それにしても芸術家の要求は高度で多大だなぁと銀橋での独唱を聴いていて思いました(笑)。
だからこそ尋常ではない深い飢えと苦悩を抱えてしまうのかな。

カテリーナ役の星風まどかちゃんのドレス姿は、胸が高くて腰が細くて、完璧なフォルムで。
胸の開いたドレスがとても似合っていました。
まさに西洋の絵画を見るようでした。

カテリーナは前半はほぼ自分の心を語らないヒロイン。
だから、いま彼女はどんな思いでいるのだろうと想像しながら見ていくかんじ。

ロレンツォの正妻クラリーチェ(純矢ちとせさん)とのなんとも言えない距離感が凄いなぁと思いました。
さらっと刺さる言葉を言ってのけるクラリーチェに言い返すこともできないカテリーナ。
(目障りな小鳥は殺してしまったと・・・小鳥が暗喩するものは一目瞭然)

囚われの小鳥がカルナヴァーレに紛れて館を抜け出しひとときの心を解放を得て、鳥籠に戻る。
一度解き放たれたその心はもう以前と同じではないはず。
けれども可愛がっている小鳥でも、ひとたび逃げようとすれば握りつぶしてしまうロレンツォの性質を知っているがゆえに、彼女は二度と飛び立てない。
レオナルドにも害が及ぶことは必至だから。
愛を知ったがゆえの苦しみと葛藤。
そのときどきのカテリーナの内面の変化が繊細に鮮やかに見えることで成り立つ作品なので、まどかちゃんには思いきり力を発揮してほしいなと思います。

彼女はアリアの中で、罪の中で生まれたと歌っていたけれど、それはつまり不義の子として生まれたということなのかな。
高貴な夫人か令嬢の婚外子とかかな。訳あって親元で育てることができないために乳飲み子のうちから修道院に預けられて。
その境遇に付け込んだグイドに利用され、彼の思い通りにコントロールするために、常に罪悪感を抱き許しを請わねば生きていけないメンタルを持つ娘に育てあげた、それがカテリーナということかな。
罪には恐ろしい罰を与えて。

カテリーナの言う『許しを乞う』とか『恐ろしい罰』とかも具体的ではないだけに意味深で。
それはつまり児童虐待…だよねという闇が心に過ります。
もはや宝塚ではとても描写できないような…。
そう考えて深すぎるグイドの闇に驚愕してしまいます。(というか自分の想像のエグさにだけど)

カテリーナを支配する闇が深ければ深いほど、レオナルドのいまの境遇との対比が悲しくなりました。
レオナルドの気持ちに希望を抱いてよいのか。
彼はカテリーナの魂を解放に導けるのか。ただの独善、思い上がりに終わるのか。
それが気になって物語を見ていました。


そんなレオナルドとカテリーナを取り巻く、ロレンツォ、ジュリアーノ、パッツィ(凛城きらさん)、グイド、それぞれの野心や確執が、サンタクローチェ教会のあの事件に繋がった場面がゾクゾクしました。
いろんな人間の思惑が交錯してクライマックスに繋がるというストーリー運びが好きでした。

芹香斗亜さん演じるロレンツォ・デ・メディチは2番手の美味しい役でした。
キャラクターがはっきりしている役なので演じるのが愉しそう(笑)。
銀橋の歌が迫力がありました。
『私を支配する私』―― メディチ家の継嗣としてメディチの仮面をかぶらなければ別の人格で生きていたのかな。

愛月ひかるさん演じるグイドは、序章から教皇にロレンツォ・デ・メディチを謀殺しようともちかけたりかなり悪い人であることはわかっていたのですが、正直ここまで闇の深い人とは…。
罪悪感を植え付けて否定と恐怖で1人の女性の心を支配し、自分の野心のために利用する。
1人の貧しい農夫の息子が教皇の座を狙わんとするほどの野心を抱くにいたる彼の人生に興味が湧きます。
彼の人生で1作品できるんじゃないかと思うけど、とても宝塚では上演できなさそう(^^;

桜木みなとさんはロレンツォの弟でジュリアーノ・デ・メディチという、自分が何者なのかどうなれるのか見えない闇の中でもがいているという田渕先生の作品らしい登場人物を、どっぷり役に入り込んで演じていらっしゃいました。
有能でなにもかも手に入れていく兄と、自分はなにも手にできないという空虚を心に抱えた弟。
つねに兄と自分を比べ、自分の不遇、自分の持たざるものを反芻する思考は苦しいだろうなと思います。
憧れの兄のものを欲しがる子どものメンタルのまま大人になって、またも兄の愛妾に惹かれて。救いようがないなぁ。


ヴェロッキオの工房では、モデルをやっている娼婦役の華妃まいあちゃんがすらりとして素敵でした。
彼女に気があるらしい蒼羽りくさんが、彼女をヴィーナスに喩えていて、あ!と思ったらやっぱりボッティチェリでした(笑)。
その前に工房の作品を役人に没収される場面でも、ヴィーナス像に執着していたし。
ヴィーナス、そしてまいあちゃんが彼の制作の源でありミューズなのだろうな。
まいあちゃんがレオナルドにすり寄っているのに気づいたボッティチェリの慌てる様子も可笑しくてほっこり♡
(役名が娼婦1、娼婦2、娼婦3じゃ感想が書きにくい・・・涙。名前をつけてほしいなぁ)

ほかの工房の仲間も後世に名を遺す画家たちなので、もっとそれに絡めたじゃれ合いとかも見たかった気がします。製作中やこれから製作したい作品を仄めかしたりとか・・・。
(観劇中にすぐにはわからなくてもあとであ~なるほど~となるのも楽しいものなので)
暗い世界観の中で工房の仲間たちとレオナルドの場面、カルナヴァーレの場面が心和む場面でした。


少女時代のカテリーナと、ロレンツォの新しい愛妾ルクレツィアの二役を演じた夢白あやさんが美しくて、新たな宙組観劇の楽しみができました。

レオナルドとカテリーナには悲しい結末となってしまったけれど、レオナルドは彼女の肖像を描くことで彼女を愛し昇華させたのだなぁと思いました。
その肖像をじっとたたずんで見つめるロレンツォの後ろ姿が胸に沁みました。
レオナルド、そしてロレンツォ。
芸術家と権力者。
史実とはちがうこのダ・ヴィンチの物語で描かれていたものはなにか、見終わったあともいろいろと反芻しています。


前ものが日本物のショーだったので、お芝居の後にフィナーレがありました。
劇中でのパフォーマンスが少なかったので宙組が一気に炸裂というかんじで興奮しました。

KAORIaliveさんの振付が斬新でした。
宙組らしいスラリとした娘役さんたちのダンスが大人っぽくてスタイリッシュできゃあ♡となりました。
スリットから見えるおみ足もカッコイイ。
真風さんに順々にに絡んで行くとこがとくに好きでした。
(まいあちゃんの目元のほくろが色っぽかった♡)
真風さんがえびちゃん(綾瀬あきなさん)とせーこちゃん(純矢ちとせさん)の肩に肘をかけて階段を降りるところなんてSO COOL!!!でした。

男役さんたちが印を結ぶようなしぐさで躍る群舞も新鮮でした。
(あれは聖職者たち? 陰陽師とも掛かっているのかな?)
センターの芹香さんが印を切ると、旋風のようにぐるりとそれぞれのマントが翻っていくのが凄かったです。

銀橋で歌う芹香さん、愛月さん、桜木さんがそれぞれ個性的なヘアスタイルと合わせて素敵でした。
なかでも愛月さん、サラサラ前髪の人があの悪い髭のおじさまだとは(笑)
パレードでは何食わぬ顔でまた悪いおじさまに戻っているのが可笑しかったです。

デュエット・ダンスは、まどかちゃんが怪我のため真風さんの相手を代役の夢白あやさんがつとめていました。
リフトも斬新だし、なによりもジャンプする振りが多かったからまどかちゃんはこの場面を休演なのかなと思いました。
代役の夢白さんも必死にこなしてらっしゃる印象で、経験値の浅い夢白さんへの真風さんの優しさを感じるデュエットダンスになっていました。
そんな真風さんを見ながら、きっと復帰したまどかちゃんのことも包み込むような眼差しで見てあげるのだろうな。
などと想像して1人で感極まったりしておりました。
トップ2作目にして真風さんの頼もしさをひしひしと感じました。

夢白さんはちょっととなみちゃん(白羽ゆりさん)を彷彿とさせる美貌の娘役さんで、真風さんも水さんに似て見えるところがあるのであらら・・・と懐かしい気持ちになったりもしました(笑)。
真風さんと夢白さんのペアもとても夢夢しくて素敵だったのだけど、その素敵なデュエットダンスを見るほどに、まどかちゃんと踊る真風さんを見たい気持ちが湧いてきました。
祝福を受けずに生まれてようやく愛を知ったとたんに天に召されたカテリーナが皆の祝福を受けるのと重なる場面でもあると思うので・・・。
無理はしてほしくはないけれど、全快してこの場面を真風さんと踊るまどかちゃんを見られたらいいなと思います。

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