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2018/11/14

あらしのよるに。

11月6日に博多座にて新作歌舞伎「あらしのよるに」を見てきました。

原作は読んでいましたから、まちがいなく泣いてしまうのはわかっていましたが・・・。
中村獅童さんのがぶがもう(涙)。
心の中で自分の抑揚で読んでいたものを芝居巧者に感情を込めてセリフにされてはもうどうしようもありませんでした。
見た目は強い狼なのに、心の中は優しいのが獅童さんのビジュアルにぴったり。
狼の本能として山羊のめいを食べたいと思うけれど、そんな自分を恥ずかしいと思い、たいせつなめいに嫌われるのではと身もだえして必死でがまんする姿。
自分はお腹をすかせているのに、めいが美味しい草をたくさん食べられるように見守ってあげる。
めいが安心して自分のそばにいられるように、本当の自分を面に出さぬように必死で耐えている優しさ。
「~やんす」という口癖はコミカルで自分を抑えようと身をよじる姿はせつないやら・・・。
記憶を失ってしまった場面での豹変ぶりはまさに役者さんだなぁと思いました。
(記憶がもどってホッとしました)

なにも知らぬげに無邪気にがぶを慕っていたように見えためいもまた、内心は狼であるがぶを怖いと思う自分を必死で抑えてなにも気にしていないように見せかけていて、そのことに深い罪悪感を覚えて悩んでいたことが3幕でわかって、それもまた心を揺さぶられて涙でした。
その気持ちは女性としてよくわかりました。
疑ってはいけないと思うのにちょっとした挙動に怯えてしまう気持ちとその罪悪感。
尾上松也さんのめいは、すごく中性的でそこがまたなんとも魅力的でした。

みい姫の中村米吉さんが愛らしいくも気高いお姫様で、登場するたびにいいなぁ♡となりました。
めいが打ち明けられない秘め事を持っているのを聴いた場面では、めいを信じて無理強いに告白させないフェアネスにいたく感心しました。
山羊の?上に立つに相応しい立派なお姫様。マイフェアレディ♡
みい姫の登場場面が楽しみでした。

客席には小さいお客様もちらほら見受けられ、客席降りではそんなお客様を可愛いお花に見立てて弄ってみたり。
近道と称して通路ではない客席と客席の間を無理やりに通って行ったり。
花道から小さいお客様をみつけて弄ったり。
がぶが義太夫の方に遊ばれたり。
客席を盛り上げ笑わせる演出やアドリブも満載でお子様が思わず立てる愛らしい笑い声も聞こえて微笑ましい空間になっていました。

絵本が原作でわかりやすい作品になっていましたが、見得を切ったり花道を飛び六方で引っ込んだりと、歌舞伎らしさもふんだんで、やはりこれは歌舞伎演目なんだなと思いました。
歌舞伎だからこその感情表現とこの獣たちの架空のお話の相性も抜群だなぁと思いました。

この作品を博多座で見ることができて本当によかったなと思いましたし、歌舞伎未経験なお若い方にぜひこの作品をすすめたいなと思いました。

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