« 古い小さな傷痛むように懐かしさが込みあげてくる。 | トップページ | やつのさいごの顔を見守ってやりたいんだ。 »

2019/02/11

世間で君のことをなんと呼んでいるか知っているか。

2月2日(土)、宝塚歌劇宙組博多座公演「黒い瞳」「VIVA! FESTA! in HAKATA」の初日があけました。
初日から2月11日までほぼ1日おきに8公演を見た感想です。

「黒い瞳」は初日から完成度が高く見応えがありました。
“まかまど”こと真風涼帆さんと星風まどかさんのトップコンビには純愛ものが似合うなぁとしみじみ。

真風さん演じるニコライは、漠然とした表面的な華やかさや称賛に憧れる人生の経験値の浅い初々しい青年士官が、運命の出会いと恋によって、さらに恋人とわが身が命の危険に晒される酷しい経験を通じて、心逞しく成長する様が鮮やかでした。
「ウエストサイド・ストーリー」のトニーにも感じましたが、恋に落ち純粋に相手を想う役がとってもはまる方だなぁと思いました。大人っぽい外見とはうらはらに。そのギャップが魅力だなぁ。
初日から日を追うごとにお坊ちゃま感が増していて、好きだわぁと思います。そのお坊ちゃまが試練を経て責任ある大人になっていく感じがより鮮明になって。

大尉の娘マーシャを演じるまどかちゃんは、もうひたすらに愛らしい。まさに柴田作品のヒロインという印象。
冒頭の雪の少女の愛くるしさと躍動感溢れるダンスからがっちりと心を掴まれました。目を奪われます。
中盤までは、両親や恋人に従順な娘の印象ですが、愛のために大胆に行動するところからが見せ場かな。
ペテルブルクへの道を急ぐダンスも素晴らしい。トリオにリフトされるところはとても印象的でした。
踊れる娘役さんいいなぁ。
エカテリーナに陳情する場面もその必死さが伝わってきて毎回うるうるしてしまいます。

愛ちゃん(愛月ひかるさん)演じるプガチョフは冒頭から物語の手綱を握る役。トップさんと拮抗する2番手男役さんの大きさと華が必要な役。
愛ちゃんとうとう声変わりしたの?と初日に思って以来、日を追うごとにさらに低い声に余裕が出てきた感じ。声量も凄いですし、雄叫びのような太い声に艶が出ています。
愛ちゃんの低音に酔い痴れる日がくるとは。と胸を熱くしました。

もう一つ、日を追うごとに変わったと思うのは目です。
虐げられた経験のある者が持つ孤独と虚勢と悲しさを秘めた瞳。憤怒と赦しと許容を繰り返してきた人の優しさと寂しさと色気が髭面の奥から日増しにつよくなってきたように感じます。
自分を憎み蔑む者たちが自分のことをなんと言っているか、自分を崇める者たちが自分をなんと呼んでいるか、両方を彼はよく知っている。そういう目です。

鞭をもって踊る時にも全身から彼の命が迸っているようで見ていると感情が溢れてきました。
コサックと蔑まれる生まれであっても持って生まれた知性と心の気高さは隠せないようでした。それゆえに苦しむ魂。
彼の白黒はっきりつける態度は、無知な民衆にもわかりやすく彼らの支持を得るための彼が身に着けた戦略なのだと思うけれど、本当の彼はそんなに単純な男ではない。

同じコサック軍の部下たちにも理解してもらえない、貧しい農民や農奴たちからは崇められる立場であって対等ではない、もちろん貴族や政府側の人たちとは天と地ほどに相容れない。そんな孤独な魂が、純粋で真っ直ぐな青年貴族の士官と対等に触れ合い、そこに生まれたものをかけがえなく思うのはせつないほどわかる気がしました。
どんなに虐げられていても歪んでいない純粋さと真っすぐさを彼もまた心の奥に秘めているように感じました。

このまま突き進めば行く手に何が待っているのか知力の高い彼には見えている。自分がやろうとしていることがとんでもない大博打であることを彼がいちばんよくわかっている。
この男ならそれをやってのけてしまうのではないかと思わせる器の大きさを彼は持っていて、だからこそここまでになっているのだけど。
けれどもやっぱり帝国を覆すほどの戦略を彼1人で立てられるわけはないし、ただのエネルギーの塊となった農民たちを率いて行くところまでいくしかない、その決着をどこでつけるのか。
彼のいちばん痛いところを、真っ直ぐに抉ってくるニコライを、だからこそ彼は友と認め信頼し本心を語るのだと思いました。

進むだけ。
止まることはできない。
THE SHOW MUST GO ON ―― 
髭面の奥の潤んだ美しい瞳。
心が引き裂かれそうなほどつらいです。
あの瞳から目が離せなくなります。

(愛ちゃんのプガチョフの表情がフレディと重なるんですよ。額や眉やほんとはさみしがりの可愛い瞳が)
(髭面でもハンサムだし)

命を懸けて彼が望んだものはいったい何だったのか。
それを考え感じながら次の公演もみてみたいと思います。


ということで、今日はプガチョフに肩入れの日でした。
同場面にいるトリオも見たいし、コサックや政府軍の人たちもいろいろ見どころがあるし、本当に目が足りません。
思ったことも感動したことももっとたくさんたくさんあるのですが、また日をあらためて書いてみたいと思います。
(だがしかし仕事と観劇を交互に繰り返す生活ではなかなかPCに向かえず、次回は千秋楽後になってしまう予感が・・・)


補記。
今日2月11日15時半の組総見には、7代目宙組トップスター朝夏まなとさんがいらしてました。
ハネウマライダーで「たとえば君が」と朝夏さんに手を差し伸べる真風さんに客席の方がキャーでした(笑)。

2月7日11時公演には、真琴つばささんと風花舞さんがいらしていて、ショーのプロローグの客席降りでは七生眞希さんが自ら跪いて握手をもとめてて面白かったです。七生さんがとても嬉しそうなお顏だったのが印象的でした。


| |

« 古い小さな傷痛むように懐かしさが込みあげてくる。 | トップページ | やつのさいごの顔を見守ってやりたいんだ。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 古い小さな傷痛むように懐かしさが込みあげてくる。 | トップページ | やつのさいごの顔を見守ってやりたいんだ。 »