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2020/02/21

真実を知るには勇気がいる。

2月17日に宝塚大劇場にて星組公演「眩耀の谷」「Ray」を見てきました。
期待の新トップコンビ礼真琴さんと舞空瞳さんの大劇場お披露目公演。チケットを手に入れるのは難しいかなぁと思っていたのですが、宙組東京千秋楽観劇の翌日に日にちを絞ってプレイガイドの先行にエントリーしてみたら幸運にも観劇が叶いました。

「眩耀の谷」はお芝居としては初の謝珠栄先生の大劇場作品でした。
古代の中国が舞台の作品として、音楽も舞踊も舞台美術も素晴らしいものでした。それを表現している星組の皆さんも。
凄いものを見たわと思いました。

宙組公演「エル ハポン-イスパニアのサムライ-」を見て、人を育てるということが明日への希望だなぁとしみじみと思ったのですが、この「眩耀の谷」を見てさらに、命をつなぐ次世代への愛が連々と人を生かしているのだなぁと思いました。
主人公が民を扇動し殲滅されゆくさまを美化する「メサイア」が美しければ美しいほどエモーショナルであればあるほど受け容れ難かった私には、この主人公礼真(礼真琴さん)の苦悩するさま、そして彼の決断に深く共感しました。

礼真の瞳には、そこに生きている人々の姿が見えている―― そう思いました。
生きるために、次代に命をつなぐために、虐げられ傷ついた民たちが必死で銀橋を渡っている姿に心迫るものがありました。
彼らを護るため目を配る男たちにも。
生きるということがどれほど尊いか。それを見せられたような気がしました。
有沙瞳さん演じる春崇がそれを象徴しているような役で幸せな気持ちのなかで終幕を迎えることができました。

「まことを知るには勇気がいる」
自分が真実と思っているものは、都合よく修正されたそれではないのか。
おそらく主演の礼真琴さんのお名前にも掛けられた“マコト”という言葉を噛みしめながら、この時世だからこそいっそう心に響くものがありました。

礼真琴さんは父母を敬愛し、尊敬する人の言葉に素直に感銘をうける純粋な青年丹礼真を全身全霊で演じてらっしゃいました。
礼真として民を思う気持ちはそのまま組を思う気持ちとも重なって見え、この役を通じて彼女自身が大きくなるにつれ、さらに深みのある作品になる予感がしました。

見ているとどんどん湧いてくる謎と、それが解けていく面白さ。
あのとき意味があるとも思わなかった礼真の行動にちゃんと意味があったのか!とか。(金属で叩くと火花が散る黄鉄鉱は「愚者の黄金」とも呼ばれる)
このさき公演を重ねてネタバレが浸透してしまってからは、内面を表現する芝居が勝負かなと思います。
磨かれていくことでさらに面白くなる作品だと思います。

ヒロインの瞳花を演じる舞空瞳さんは、一族の王の妹で舞姫の役。
可憐な彼女にぴったりな役かと思いきや、盲目にされ、しかも幼い子どもと生き別れてしまった悲しい女性の役。
彼女にとってこの役は挑戦だなぁと思いました。女性として言い尽くしがたい悲惨な憂き目に遭ったという実感は正直まだ伝わってこなくて、セリフの上だけになってしまっている感はありました。
盲目の役ということで目ヂカラを封印されてしまうのも難しいところかなぁ。星組には目ヂカラのある娘役さんが多いから(小桜ほのかさんとか音羽みのりさんとか小桜ほのかさんとか)つい薄い印象になってしまうのも気の毒な気がしました。
彼女がどうこの役を掴んでいくかで作品も深まっていくだろうなぁと。
盲目ながら舞う姿はとっても美しくて彼女の魅力が発揮されていました。ラストシーンで礼真と並ぶ姿も美しい対でした。

管武将軍役の愛月ひかるさんは、まだまだ本領発揮とはいかないかなぁというのが正直な印象でした。
まだお芝居が臆病というか。
もっと礼真の心酔が当然に思える武将としての器の大きさやキラキラ(ギラギラ?)したカリスマ性が見えたらいいなぁ。
そこからのギャップが見せどころじゃないかしら。
そうすると礼真の苦悩の理由に説得力が増すと思います。
コスチュームの似合いっぷりはさすがでしたので、役に相応しい色気も加味して魅せてほしいなと思います。

ひきつづき謎の男役の瀬央ゆりやさんについて書きたいところですが、健康管理も社会的責任なご時勢、睡眠時間確保のため、後日にいたしたいと存じます。

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