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2020年8月の2件の記事

2020/08/20

かんたんに言ってくれる。

8月18日にシアタードラマシティにて宝塚歌劇宙組公演「壮麗帝」千秋楽の2公演を見てきました。

プロローグから歌舞音曲に目と耳が喜ぶ公演でした。
数か月宝塚だけではなくすべての観劇から遠ざからずを得なかった身にはとても沁みました。
この1か月で見た「はいからさんが通る」「Flying SAPA」と比べても宝塚歌劇らしいお約束がふんだんにある作品で「私いま宝塚を見てる~」と実感しました。

初見は「宝塚」を見たことにただただ満足な私でしたが、脚本的にはエピソードの羅列というかロジックがないというか、こどもの話をうんうん、それで?と聴きながら、あ、ヤマもオチもナシか(笑)となるようなそんな感覚でした。
同じ回を見た方が終演後の感想で「年代記」とおっしゃっていたのですがまさにそれだなと思いました。
魅力ある役者たちが演じて見せる「歴史秘話ヒストリア」「ぜいたくな年代記」ですね。

皇帝が即位するとき継承権をもつ他の皇子を殺めるのがオスマンの慣習と聞かされたヒロインのヒュッレム(遥羽ららちゃん)が、慣習は改めればよいと、家族が仲良く暮らすのは素敵なことじゃありませんかと言って、心優しき皇帝スレイマン(桜木みなとさん)の心を動かしていました。
スレイマンも仲の良かった異母兄が自分のせいで殺されたから彼女の言葉が響くのだろうなぁ。

さあこれからどうするのかお手並み拝見!と思って見ていたんだけど。

次々に子どもをこさえるだけで、もしかして何もしていない・・・??
「可愛いなお前は」とか言われている場合じゃないですよ。

皇帝の側室は1人しか皇子を生まないのが慣習、何人も皇子を産めば同母の兄弟同士で殺し合うことになる、それでもいいのかと真意を母后ハフサ(凛城きらさん)に問いただされても、兄弟が仲良く助け合って国を治めればよいという以上のことは言わないヒュッレム、確実に我が子に迫っている危機について考えているのはそれだけ? と思いました。
とうぜんながら母后にわかってもらえなくて、ひとり「伝えたいことが言葉にできない」的なことを歌うけれど、すでにこの世に生まれた息子たちをどう守っていこうとしているのか、なにを訴え理解してもらいたいのか、それをつたえることを母として命懸けでやらないでどうするの?! 
(ていうかですよ、そのヒロインの思いなり覚悟なりを言葉に尽くして観客に見せるのが脚本家の仕事じゃないのかな~? 「言葉にできない」でわかってもらおうっていうのは観客に甘えすぎじゃない??とも思いました)

慣例を破りヒュッレムひとりを寵愛し次々に子を産ませているスレイマン。
子どもを多く作ればそれだけ殺される子どもが増える。そうならないための手立てはなにも講じていない。
子どもたちは成長し、寵妃ヒュッレムの一番目の息子の第二皇子が次期皇帝の有力候補と目されるようになると、とうぜん第一皇子の母マヒデブラン(秋音光さん)は危機感を募らせヒュッレムを毒殺しようとして露見。
スレイマンはマヒデブランと第一皇子を地方へ封じるも、それがゆくゆくの火種となって祭り上げられ反乱を起こした第一皇子を処刑するはめに陥る。
すべては自分が蒔いた種だ。寵妃の命が狙われるのも、自分が息子を処刑することになるのも。
そうならないためにある慣習なのに、それを破りながらなにも対処していないんだもの。

馴れ初めし頃、国境付近の小競り合いで故郷が被害を受け奴隷に売られたヒュッレムに同情し自分の責任だと言い、平和を望む彼女の言葉に肯きながら「国境のない世界をつくるために戦う」と言ったスレイマン。
その「戦う」は比喩でもなんでもなく、戦争をして領土を広げていくってことですよね。ヒュッレムの身にかつて起きたことを、さらにどんどん起こしていくって彼女にむかって宣言しているのですよね。
(ニコニコ聴いているヒュッレムもどうなの・・・汗)

対話になっていないのですよね。対話しているようで噛み合っていない。
たがいに耳の遠い祖母と大叔母の会話を聞いているような感覚に陥りました。(相槌を打ちながらそれぞれちがうことを話していたなぁ)

ともに育ち信頼していた大宰相イブラヒム(和希そらさん)があんなにかんたんに敵の奸計に堕ちるのもどうしても解せない。
なにかに囚われすぎて目が曇っていたの? そこを描いて見せてほしかったなぁ。

なんというか元ネタはドラマチックだから尺はあるけど、物語としては伝記よりもさらに浅くて軽い、抗いもせずなるようになった年代記だったなという感想です。

と言いながら、タカラジェンヌのパフォーマンスをおおいに愉しみ、プロローグのベリーダンス衣装のららちゃんに溶かされ、ハティージェの天彩峰里ちゃん可愛い~、こってぃ(鷹翔千空さん)悪~い、水音志保さん素敵、七生(眞希)さんほくろ~♡ 群舞のカズキソラッ! ハフサ様のお化粧で燕尾の凛城さん♡となり、ずんちゃん(桜木みなとさん)の挨拶に感動し満足して劇場を後にした私でした。

こうして文句も言いつつ心ときめかせつつ宝塚が見られるってことが、ほんとうにしあわせなことだと感じています。

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2020/08/13

どんな世界をつくるか競争ね、わたしたち。

究極の融和、ユートピア思想、それを渇望するわけ。
ちがいが争いを、分断を、不幸を招くと考えたから。
神の恵みが当たり前の人びとと明日には命がないかもしれない憐れなみなし子。

8月4日と5日、梅田芸術劇場メインホールにて宝塚歌劇宙組公演「FLYING SAPA -フライング サパ-」を見てきました。
以来ずっと心のうちでブコビッチ(汝鳥伶さん/穂稀せりさん)と対話をしているような気がします。
彼がめざしたもの。彼がわかってほしかったことを知りたくて。

ブコビッチと対話したオバク(真風涼帆さん)は宇宙へと冒険の旅に出ることを決意。
崩壊した共同体のシステムの再構築に関心を向ける人ではなく、未知をもとめて刺激的で外的リスクの多い人生をその足で歩いていきたい人なんだな。
たしかにそういう人だったと思います。SAPAの違法ホテルに目的地へ向かうでもなくぐずぐず停留していた人たちを一蹴したり、「自己責任」を口にして人助けは不本意そうだったし。レジスタンスとして活動していたのも誰かのため社会のためではなくブコビッチへの憎しみのため、それだけだったのじゃないかな。

その彼の無謀ともいえる旅にポルンカの人口の半分(15,000人?)の人びとが同行するというのがどうにも解せないのです。
いつの間にそれほどの人びとを束ねる艦長と認められる人になったのかな。
その15,000人とはどんな人たちなんだろう。タフで健康で夢のある人たちかしら。

私だったらオバクにはついていかないなぁと思います。福祉とか医療とかに感心がなさそうなリーダーだし。
ピカピカのキレイゴトと批判されても「誰も見捨てない」と言ったノア(芹香斗亜さん)とポルンカに残りたいなぁ。
ノアを批判したイエレナ(夢白あやさん)は「サーシャ(オバク)だったら」と言いかけたけど、オバクだったら「自分の身は自分で守れ」と言ったはずと言いたかったのかな。

そんなイエレナもオバクたちとは旅立たずポルンカに残るという。子どもが生まれるからと。それは口実かもしれないけれど、それが口実になるくらいには、子連れでは困難な旅ということなのだろうな。
誰でもが行ける旅じゃない。

そんな旅に行きたい人びと、行くことができる人びと・・・夢と自信に満ちた人びとを統率するオバクとともに旅立つミレナ(星風まどかちゃん)。
微笑ましいクーデターを起こしてポルンカに残り黴臭い民主主義とやらをやりなおすと宣言するイエレナ。ノアとともに。
それぞれに苦しみ自分を苛み抜いた2人がふたたび友情をわかち抱擁する場面が大好きでした。
「どんな世界をつくるか競争ね、私たち」と。
壮絶な15年間を過ごしてきた2人。愛についてはこれからたくさん学んでいくのだろうな。
そして憐れなみなし子ブコビッチと内なる対話を登場人物のだれかひとりでもいいのでしていてほしいな。ときどきは。

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