あの日の12月。
11月12日と13日に宝塚大劇場にて、宙組公演「アナスタシア」を見てきました。
アーニャ役の星風まどかちゃん、知ってはいたけれどほんとうに素晴らしいパフォーマーだなぁ。
開幕1週間にしてこの安定感。声の張り、伸び、コントロール。気持ちの良い歌声でした。
リトルアナスタシア役の天彩峰里ちゃんの愛らしいこと! ほんとうにそこにちいさなグランドプリンセスが存在していました。
祖母マリア皇太后(寿つかささん)に「私のいちばんのお気に入り」とハグされ、父ロシア皇帝ニコライⅡ世(瑠風輝さん)からも「今宵のさいしょのダンスの相手」としてエスコートされるなど大切に愛情を注がれて、尊重されて育ち培われた自尊心。それがのちの彼女につながっているなぁと思いました。
アナスタシアの長姉大公女オリガ役の愛海ひかるさん、娘役転向後のはじめての役でしたが笑顔輝く美人さんでドレスもよく似合って違和感なし(笑)。実咲凛音さんに面影が似ている気がしました。
次姉大公女タチアナ役の水音志保さん、宙組にこんな素敵な娘役さんがいたのか~♡ ほかの場面でもモブの中に素敵な娘役さんがいるな~と思うと彼女でした。大公女の豪華なドレス姿もとてもお似合いでした。これからどんどん注目したいです。
アナスタシアのすぐ上の姉大公女マリア役は、宙組にようこその潤花ちゃん。とても華があり目を惹きました。クラシカルな雰囲気もありお姫様役がぴったり。バレエの場面ではオデットとしてジークフリート役の亜音有星さんとの並びが夢夢しかったです。
白い生地に金の錦繍のドレスを纏ったこの三姉妹がとてもとても眼福で、私は目を離すことができませんでした。
アナスタシアの弟、幼い皇太子アレクセイ役は遥羽ららちゃん。アナスタシアの夢の中で語りかける場面はその鈴の音のような声と不思議な言葉が印象的でした。
そのアレクセイを平然とお姫様抱っこ?していたロマノフ家の鷹翔千空さん、涼しいお顏を少しも崩さずすごいなぁと思いました。
ニコライⅡ世役の瑠風輝さんも、リトルアナスタシアを(こちらはまさに)お姫様抱っこしていて、なんだかもうタカラヅカなんだけども、さらにその先の超タカラヅカといいますか、夢心地でした。
ロマノフ家のプリンスとして登場する4人の美麗な白軍服の男役さんは、秋音光さん、紫藤りゅうさん、留依蒔世さんそして鷹翔千空さん。大公女姉妹をエスコートする立ち姿も凛々しく優しく一滴の毒もなくこれはまさしくタカラヅカじゃなければどこで見るのかと。
このなかのいちばん若い人がドミトリー大公かな?と思ったけれど、彼は革命の時にはロシアを追放されていたのだっけ。
ではこのロマノフたちは、処刑された別の若き大公や公たちかなぁ。
まるで砂糖菓子のようにロマンチックなロマノフたちに陶然となりながら、その煌めきと幸福感がいっそうせつなくなりました。
彼らに富と幸福が集約されるシステムの陰で、お腹も心も満たされず凍えて走り回っていた少年がいたのよね。ペテルブルクの街で。(と心の中でもうひとりの私が囁きました)
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素晴らしいナンバーの数々、たのしい掛け合い、コーラスの圧、メインキャストのバックで踊られるさまざまなダンス、美しい映像そして舞台転換を追うだけであっという間に1幕が終わり。
2幕は登場人物たちの心情を追うのに忙しいうえに、ブラド役の桜木みなとさんとリリー役の和希そらさんの掛け合いや、リリーを中心としたナイトクラブのナンバーで大盛り上がりしたかと思うと、主演コンビのロマンチックな場面にそわそわ。
かと思いきや目が離せないバレエのシーンをぶっこんで来られて(亜音有星さんのジークフリートの横顔が大変美しく、優希しおんさんのロットバルトは絶対に見逃したら悔しい感じ!)ちょっと待ってー!と思っている間に登場人物たちはどんどん物語をすすめていき、なんで怒ってるの?なんでそんなことを?なんで——?と思う間に、寿つかささん演じるマリア皇太后に圧倒されてうるうるとしていたらハッピーエンド!!
大好きなロマノフたちの中にディミトリ(真風涼帆さん)も~~~と涙目になって考えるいとまもなくフィナーレに突入(笑)。
1回目の観劇では、その圧倒的な美とキラキラと幸福感の情報量になにも考えられなくなり、ただひたすらハッピーだったのですが、2回目の観劇でふともの足りなさを感じてしまいました。
帰路もずっとその足りないものがなんだったのかを考えて、私はもっとゆっくりディミトリの心情を味わいたかったのだと気づきました。端的に言うといつものようにもっとたくさん真風さんを浴びたかったというか。“グランドミュージカル”と“タカラヅカ”の狭間で彷徨う魂の行き場がみつからなかったのかなと思います。
劇中なんどか見えた男の子のまぼろし。一瞬肩車をされた男の子がはっきりと見えた気がしたのだけれど。すぐにストーリーの展開の中にかき消えてしまいました。
アナスタシアの過去がくりかえし美しく煌めいて目の前に登場するように、リトルディミトリの「あの日の12月」をこの目で見ることができたら。
この次はラストの家族写真の中にあの男の子の姿がみつけられたらいいなぁと思います。
そしてグレブ(芹香斗亜さん)です。
どうも私には彼のロジックが理解できなかったので、次回の観劇では彼の心に触れられたらいいなぁと思います。
(彼の父親が己を蔑む理由をずっと考え中・・・)
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