一緒に見た夢を一緒に叶えよう。
1月28日と29日に宝塚バウホールにて花組公演「PRINCE OF ROSES-王冠に導かれし男-」を見てきました。
作品を見ているうちに登場する人物たちが主人公ヘンリー・テューダーに向けるその思いに、私は宝塚を愛する人々の思いを重ねていました。
フィナーレで出演メンバーを従えてセンターで踊る主演の聖乃あすかさんが、客席に目線をやり髪を掻き上げた瞬間、胸が震えて涙が溢れ出てしまった自分に驚きました。
自分をとりまく人々の思いを受け取って前に進もうとする主人公と、聖乃さんの初主演舞台を支えた出演者たちや客席からの思いを受け取っていまそこに存在する聖乃さんが重なり、またその彼女にこれまで見てきた宝塚のスターさんたちの姿が何重にも重なって見えた気がしました。
なんという美しさ、なんと眩い生命の輝きかと——
―― もしかして、1幕1場でヘンリー・テューダー(聖乃あすかさん)のかんばせを見たヘンリー6世(冴月瑠那さん)やジャスパー・テューダー(高翔みずきさん)、そしてトマス・スタンリー(一之瀬航季さん)が言っていたことは、私がいま見たこの光景に近いものがあるのかもしれないと。
人が夢を託し希望と仰ぐ人は、こういう人なのだろうなぁという納得の存在感を感じました。
この作品は、演出家竹田悠一郎先生のバウホールデビュー作でもありましたが、若者によるテーゼとロジックを見せてもらった気がするというのがいちばんの印象でした。
まだ荒削りで散らかった部分はありましたが、伝えたい思いをこれほどストレートに表現できることへの羨望も感じました。
そして経験値が高い人ならばきっと手を出さないだろう「薔薇戦争」という七面倒くさい題材に挑んだことも。(おかげでこの年齢になって勉強というものをする機会をいただきました笑)
それからフィナーレに大変心躍りましたので、ぜひショーを作ってほしいなと思いました。
年齢的に私は主人公の親世代の登場人物に気持ちを寄せがちだったのですが、若い世代の彼らに何を渡せるのだろうと考えてしまう作品でもありました。
できることならもっと自由を。少なくとも若者の夢や未来を搾取しないようにしなければと、作品とは関係のないことを思い至ったり。
聖乃あすかさんについては、じつはこれまでは素顔の美しい男役さんという程度の認識しかありませんでした。たぶん私の好みだろうなと思ってはいましたが笑。
「MESSIAH」の新人公演を見ているのですが、あの時は「舞空瞳ちゃん凄っっ!!!」で頭がいっぱいでその記憶しか・・汗。
本公演では去年の「はいからさんが通る」の蘭丸の美しさに釘付けになったことが記憶に新しいのですが、これほど舞台で堂々と眩しく存在できる方とは知りませんでした。
好きだったところは、聖乃さん演じるヘンリー・テューダーが、ヘンリー・スタッフォード(希波らいとさん)の死の悲しみを忘れないようにして前に進もうとするところ。それがあるから目指す未来が明確になるのだなぁと。
辛い過去に蓋をすることなく、自分への思いを残した人のその思いを受け取って、その思いとともに進んでいこうとする彼の器の大きさがまさに王者になるべき人のものだなぁと思いました。
それからブルターニュのイザベル(星空美咲さん)のもとに戻ったときの一連。包容力が凄すぎて。そこからシルキーにラブシーンへもっていくところはまさにプリンス。
そしてやっぱり花男♡と思わせるフィナーレの黒燕尾のダンスは洒脱で大好物でありました。あれをもっと見たいです。
イザベル役の星空美咲さんはリトルちゃぴちゃん(愛希れいかさん)といった見た目で少女らしい可憐さがあるヒロインでした。ドレス姿も素敵ですし「えっ」と一声発するだけでも納得のヒロイン感があり、これもまた天性の素質だなぁと思いました。そしてお歌がとても良かったです。
バッキンガム公ヘンリー・スタッフォード役の希波らいとさんの存在感も印象的でした。103期なんですか。本当でしょうか。赤い髪、赤いコスチューム、誰よりもひときわ長身、で舞台のどこにいてもすぐにわかりました。(初日の幕間に、お名前と「花より男子」のメインキャストだったことを教えていただきました)
自分の血筋を紹介する場面が面白くて客席の笑いが起きていたのも印象的でした。魅力のある方だなと思いました。
キレ者トマス・スタンリー役の一之瀬航季さんも聖乃さんと同期の100期ですか。本当でしょうか。お髭のおじさまがお似合いなのに。
いろんな登場人物と関わり物語を動かす役でしたが、存在感もお芝居も不安要素がまるでなくて100期の方とは思えませんでした。
というかもう100期以下の生徒さんたちが活躍される時代なんだなぁということに、瞠目するばかりです・・汗。
演出の竹田先生も100期生と同期なんですよね。いやはや。
宝塚歌劇の未来が楽しみになった舞台でした。