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2021年1月の2件の記事

2021/01/30

一緒に見た夢を一緒に叶えよう。

1月28日と29日に宝塚バウホールにて花組公演「PRINCE OF ROSES-王冠に導かれし男-」を見てきました。

作品を見ているうちに登場する人物たちが主人公ヘンリー・テューダーに向けるその思いに、私は宝塚を愛する人々の思いを重ねていました。
フィナーレで出演メンバーを従えてセンターで踊る主演の聖乃あすかさんが、客席に目線をやり髪を掻き上げた瞬間、胸が震えて涙が溢れ出てしまった自分に驚きました。

自分をとりまく人々の思いを受け取って前に進もうとする主人公と、聖乃さんの初主演舞台を支えた出演者たちや客席からの思いを受け取っていまそこに存在する聖乃さんが重なり、またその彼女にこれまで見てきた宝塚のスターさんたちの姿が何重にも重なって見えた気がしました。

なんという美しさ、なんと眩い生命の輝きかと——
―― もしかして、1幕1場でヘンリー・テューダー(聖乃あすかさん)のかんばせを見たヘンリー6世(冴月瑠那さん)やジャスパー・テューダー(高翔みずきさん)、そしてトマス・スタンリー(一之瀬航季さん)が言っていたことは、私がいま見たこの光景に近いものがあるのかもしれないと。
人が夢を託し希望と仰ぐ人は、こういう人なのだろうなぁという納得の存在感を感じました。

この作品は、演出家竹田悠一郎先生のバウホールデビュー作でもありましたが、若者によるテーゼとロジックを見せてもらった気がするというのがいちばんの印象でした。
まだ荒削りで散らかった部分はありましたが、伝えたい思いをこれほどストレートに表現できることへの羨望も感じました。
そして経験値が高い人ならばきっと手を出さないだろう「薔薇戦争」という七面倒くさい題材に挑んだことも。(おかげでこの年齢になって勉強というものをする機会をいただきました笑)
それからフィナーレに大変心躍りましたので、ぜひショーを作ってほしいなと思いました。

年齢的に私は主人公の親世代の登場人物に気持ちを寄せがちだったのですが、若い世代の彼らに何を渡せるのだろうと考えてしまう作品でもありました。
できることならもっと自由を。少なくとも若者の夢や未来を搾取しないようにしなければと、作品とは関係のないことを思い至ったり。

聖乃あすかさんについては、じつはこれまでは素顔の美しい男役さんという程度の認識しかありませんでした。たぶん私の好みだろうなと思ってはいましたが笑。
「MESSIAH」の新人公演を見ているのですが、あの時は「舞空瞳ちゃん凄っっ!!!」で頭がいっぱいでその記憶しか・・汗。
本公演では去年の「はいからさんが通る」の蘭丸の美しさに釘付けになったことが記憶に新しいのですが、これほど舞台で堂々と眩しく存在できる方とは知りませんでした。

好きだったところは、聖乃さん演じるヘンリー・テューダーが、ヘンリー・スタッフォード(希波らいとさん)の死の悲しみを忘れないようにして前に進もうとするところ。それがあるから目指す未来が明確になるのだなぁと。
辛い過去に蓋をすることなく、自分への思いを残した人のその思いを受け取って、その思いとともに進んでいこうとする彼の器の大きさがまさに王者になるべき人のものだなぁと思いました。
それからブルターニュのイザベル(星空美咲さん)のもとに戻ったときの一連。包容力が凄すぎて。そこからシルキーにラブシーンへもっていくところはまさにプリンス。

そしてやっぱり花男♡と思わせるフィナーレの黒燕尾のダンスは洒脱で大好物でありました。あれをもっと見たいです。


イザベル役の星空美咲さんはリトルちゃぴちゃん(愛希れいかさん)といった見た目で少女らしい可憐さがあるヒロインでした。ドレス姿も素敵ですし「えっ」と一声発するだけでも納得のヒロイン感があり、これもまた天性の素質だなぁと思いました。そしてお歌がとても良かったです。

バッキンガム公ヘンリー・スタッフォード役の希波らいとさんの存在感も印象的でした。103期なんですか。本当でしょうか。赤い髪、赤いコスチューム、誰よりもひときわ長身、で舞台のどこにいてもすぐにわかりました。(初日の幕間に、お名前と「花より男子」のメインキャストだったことを教えていただきました)
自分の血筋を紹介する場面が面白くて客席の笑いが起きていたのも印象的でした。魅力のある方だなと思いました。

キレ者トマス・スタンリー役の一之瀬航季さんも聖乃さんと同期の100期ですか。本当でしょうか。お髭のおじさまがお似合いなのに。
いろんな登場人物と関わり物語を動かす役でしたが、存在感もお芝居も不安要素がまるでなくて100期の方とは思えませんでした。
というかもう100期以下の生徒さんたちが活躍される時代なんだなぁということに、瞠目するばかりです・・汗。

演出の竹田先生も100期生と同期なんですよね。いやはや。
宝塚歌劇の未来が楽しみになった舞台でした。

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2021/01/12

ローマです。

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2021年の初観劇は1月9日、博多座で上演のミュージカル「ローマの休日」でした。

ほんとうは前日1月8日のマチネを見るはずだったのですが、積雪によるバスの運休により地下鉄の駅に辿りつけず、またタクシーも出払っていてつかまえられず、雪道を徒歩で4km歩くことはできずに観劇できませんでした。
風雪の増す中小一時間雪だるまになりかけながらバスを待っていたのに、バス停を1つ1つまわられていたバス会社の方に運休を告げられ呆然・・。
数日前から大雪の予報が出ており、一緒に観劇する友人が山越えしてくるためずっと心配していたのですが、まさか私の方が身動きできなくなるとは・・・なにがおきるかわかりませんです。
(あとで考えたら、こんなときこそ配車アプリを使えばよかったのでした・・!)

なんとか帰宅して気を取り直し、博多座に電話をすると別日に振替えてくださるということで、翌日1月9日ソワレの観劇となりました。

楽しみにしていた「ローマの休日」は期待の大きさに対して、あれ?となったのは正直否めませんでした。
それほど映画を繰り返し見た人間ではないのですが、見せ方や見せるところがちがうんじゃないかと思いました。

アンとジョーの心が近づき変化していく過程、投げやりで口から出まかせだけで生きていたジョーの葛藤と変化していくさま、アーヴィングとの友情、王女をとりまく人びとの思い、そして自分がすべきことを自覚し覚悟を決めたアンの威厳とせつなさ・・それらをもっと感じたかったなぁと思ってしまいました。思っていたよりもあっさりしている印象でした。
見たいところはここからなのに・・の前でシーンが終わってしまって。演出と私の感覚が合わないといいますか。

全体的に熱量も伝わってこないなぁとも思いました。コロナ禍というのも関係があったのかもしれません。客席のリアクションも薄いなぁと感じましたし。笑いどころはたくさんあったにも関わらず・・笑い声も控えてしまうのはしょうがないのかな。(昨年の「ダンス・オブ・ヴァンパイア」や「シスター・アクト」みたいに客席参加型のフィナーレがついた作品のようにはいかないですよね。お祭り好きの博多座だけにリアクションを控えめにすると極端になってしまうのかな)

イタリア人の誇張の仕方も好い感じがしないなぁと思いました。
映画には製作当時のアメリカとイタリアの格差(戦勝国のアメリカに対し敗戦国であるイタリアは社会情勢も不安定)やアメリカ人に向けたローマの名所などが描かれていますが、いまこの時代に日本人がその当時のアメリカ人視点の誇張した“イタリア人”を演じるのは面白いと思えませんでした。イタリア人役の人びとがイタリア語らしきものを話す演出も、片言を話すのも、この作品のテーマを損なっていると思います。
主人公たちがローマの異邦人であることを表現するとしてももっとほかにやり方があるだろうにと思いました。

もっとロマンチックに、もっとエモーショナルに描けたはずだよなぁと思えてなりません。
アーヴィングの出し方も・・・。傍観者でいてほしいところで出張ったり、(内面的に)寄り添ってほしいところであっさりしていたり。
これはもう私とは感覚が合わないとしか。

朝夏まなとさんのアン王女は、コミカルな間がいいなと思いました。客席を向いてニカッと笑うところが私のツボでした。
ジョーのパジャマやガウンを着る場面は、映画だと袖や丈が長いのが萌えだったはずなんですが、朝夏さんはふつうに着てる(笑)。なんならガウンなんてカッコイイくらい。これはこれでこのアン王女もありかな。
大使館に戻って決意を述べる場面は、顔をあげ凛とした立ち姿に決意が見えて王位継承権第一位の王女様なんだろうなと思える気概が感じられて感動的でした。

加藤和樹さんのジョー・ブラッドレーは、思い通りにいかない人生を背負った男性像がリアルだなぁと思いました。なんでも適当で口から出まかせばかりで誠意の欠片もないような彼が、アーニャのために一獲千金のチャンスを手放す決意を大騒ぎする訳でもなく淡々とするところもリアルで好きでした。ほかの誰に気づかれなくともアン王女だけに向けられた友情に変えた恋心と誠意がつたわりました。

良い作品なんですよね。名作の名に恥じない。
だからこそ私の感覚と合わないのが残念でした。
あとやっぱり生オケは良いなと思いました。

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