ひとりひとりの人と人が生きた軌跡が見えてくる。
9月14日と15日に東京宝塚劇場にて宙組公演「シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-」「Délicieux!-甘美なる巴里-」を見てきました。
東京宝塚劇場のサイズのせいなのか音響のせいなのか、大劇場公演で数回見ているのでお芝居もショーも見どころがわかった状態だからか、東京宝塚劇場には特別な魔法があるのかなと思うくらい、ひたすらパフォーマンスを愉しむことができて2日間3公演があっという間でした。
初っ端から真風ホームズが歌うテーマ曲「鎖の一環」の歌詞が心に沁みました。なんだろうとてもせつない。薄暗いロンドンの閉塞感と情景が目に浮かびました。
そして1人ひとりのキャラクターがとても愛おしかったです。
シャーロックが滝の上で戦っている時、ワトソンはあんなに彼の身を心配しているんですね。アイリーンより心配してるんじゃないかな。(アイリーンは後ろ向きだからよくわからないのもあるけど)
滝から落ちた時には気の毒なくらいに嘆いていて、あれは絶対心の傷として引き摺ると思いました。カウンセリングが必要な状態では。あのままほうっておいていいのかな。メアリーが癒してくれるのかな。(でもメアリーも・・と考えてしまう)
とぼけたホームズ兄弟も好きでした。どことなく似ている気がするシャーロックとマイクロフト。真風さんと凛城きらさん、同期なんですよね。
凛城さんはこの公演をさいごに宙組生じゃなくなってしまうんだなぁ。「ベルばら」のダグー大佐のキャラ作りが好きだったなぁ。ある時期の宙組は元雪組生がお芝居を支えているんじゃないかと思うほど彼女たちが突出してて、そのうちのメンバーだったんですよね。
(雪組生は初日からキャラを作ってくるのが巧いと思っているのですが、潤花ちゃんにもその片鱗がうかがえて私の心の中の雪組リスペクトが発動しました)
「サンクチュアリ」のギーズ公も印象的でした。そして「神々の土地」の美しくて繊細で茨の棘の上に立っているような痛々しいアレクサンドラ皇后の衝撃は忘れられません。
どこか一歩退いたようなクールな印象がありつつ面白さと端正さを兼ね備えた凛城さんが演じるマイクロフトは今作私の中のベストアクトです。
専科異動第1作目「プロミセス・プロミセス」※見れたらいいなぁ(※完全に勘違いしていましたが、凛城さんは全国ツアーでした💦 全ツは行きます!!!)「NEVER SAY GOODBYE」にも出演してほしいなぁ※※。(ジョルジュたちと行動を共にするラジオバルセロナのパオロを凛城さんでどうでしょう小池先生 ※※残念ながらこの願いは叶わずでした・・涙)
あんなに優秀な部下を揃えておいて間の抜けた失敗をするモリアーティも好き。
世界を支配しようとする彼はマッドサイエンティストの類なんでしょうか。兄のモリアーティ大佐の動機や目的はなんなんだろう。弟よりはよほどまともな人に見えるのに。陸軍大佐にまで出世しているのに。なぜ弟のいいなり? 溺愛? それとも弱みを握られているのでしょうか。これだという確信がないまま千秋楽になっちゃうのかな。
ムラの初見ではいろんな疑問が湧き、それも何度か見ているうちに一つ一つ納得できていったのですが、まさかこの疑問が最後まで残るとは思っていませんでした。
もう一つ残っていた疑問はレストレード警部がマイクロフトを撲ることでしたが、これはマイクロフトが女王陛下から直接お声を賜る政府高官にもかかわらず「偉そうに見えないという特殊能力の持ち主」というのと、フロックコートに勲章まで付けているマイクロフトを官僚と気づかないようなレストレードの「観察眼のなさゆえ」の複合的理由かなと思いました。これでは事件解決なんて無理。それで警部なのも不思議ですが。
あれでレストレードの進退に一切不問のマイクロフトは本当に「いい人」だなと思います。それが成立するマイクロフトなんですよね。
「デリシュー」はとにかくとってもとっても楽しかったです。愉しくて可愛くてせつなくて。
東京公演初見では、久しぶりに体感する生のショーに心が震えて、中詰めの「Amor Amor Amor」の歌詞で「・・決して忘れはしない」を耳にしたとたんにわわわわ~っと退団される方のことが浮かんできてそれからは何を見ても胸がいっぱいになってしまい、その後のキャンディーマンもI love Parisも虹色の薔薇も笑いながら涙という状態で、マスクをしていて良かったと思いました。
それから東京公演になっていちばん変わったのが「フォレノワール」のレザンちゃん(桜木みなとさん)かもと思いました。
のっけからプンスカしていて表情がとても可愛くて目が離せませんでした。ベラミの真風涼帆さんやアメリカンチェリーの潤花ちゃんに対してコロコロと表情が変わって、ムラよりコミカルに感じました。
大劇場公演で苦手だったのは、レザンちゃんが何を考えているのかわからない、というかわかりたくなかったからというのも大きかったかもしれません。
登場人物の気持ちを誰ひとりわかりたくなかった、そんな場面だったのが、ちょっとだけレザンちゃんが好きになることで紛れたかも。
それでもやっぱり誰かの尊厳を貶めるのはだめだと思うし、弱い立場にある人が尊厳を傷つけられていることを当たり前だと思ってしまうようなストーリーは受け入れ難いなと思います。
いろんなことを思ってたくさんのことを考えたこの公演もあと数日で終わってしまいます。
そして千秋楽を最後にもう宝塚の舞台では逢えなくなってしまう人も・・。
千秋楽まで何事もなく公演が続きますように。そして千秋楽は卒業する方々がしあわせな1日となりますように。
(2021/9/25 私の思い違いと最新ニュースを得て、※と ※※を書き足しました)
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