スウィングしなけりゃ意味がない。
10月15日の宝塚バウホール月組公演「LOVE AND ALL THAT JAZZ」を見てきました。
風間柚乃さんのバウホール初主演作品です。
感じたのはひたすら「恐怖」でした。
これを書いた人に人の心があるのかと疑いました。
スウィング? 否、洗脳でしょ?
「恐怖による支配」を「善導」と勘違いしている人による。
独善と自己満足のために出逢った人々を次々と不幸に陥れていく主人公が怖かったです。
不穏な時代に突然店に飛び込んで来た娘のただならぬ様子にお構いもなく、訊かれもしない自分の正当性をべらべらと話し出し、相手の事情を察するや怒鳴りつけて叱りつけて自分のビジョンに従わせるところから嫌な予感はしていましたが、それは最後まで払拭されず、それどころかますます増長していく主人公が恐怖でした。
愛とか人は誰もが違ってよいとか、どんなに立派なことを言っていても相手の心に寄り添わなければそれはただの独善では。
他人を自分の理想に巻き込み命をも懸けさせながら、この人はそれをどう思っているのだろう。
相手の同意を一度だってとっていたかな。若い娘には判断力も意思もないと思っているのかな。
仲間たちの憧れのジャズマンの自分だから、皆が諸手を挙げて賛同するのが当然と思っているのかな。
善良な仲間たちの前で、命に関わる重大な機微情報をするっと口にするヒロインも怖かったし、それを勝手に解釈して自分の主張のために取り込み自分の正義に利用する主人公も怖かったです。
仲間の命の意味や重さまでも彼が解釈して誰にも口を挟ませないことも。
恋人の死の報せを受けたばかりで錯乱する娘に微笑みを強要するのも怖かったし、その状況で彼の言葉(歌)に感銘を受けて娘が心を改めることも怖かったです。
彼の微笑みには不思議な魅力があるそうな。
だから皆彼のために瞳をキラキラ輝かせて、命まで懸けてくれるらしい。
強制労働の最中でもひとたび彼がジャズを歌い出せば、皆憑りつかれたように笑顔になって踊り出していました。
音楽は人の心を支配する手段なの?
彼の奏でるジャズは人の心を彼の思いのままに動かす技のよう。
ストーリーにお構いなくジャズナンバーになると客席からぜんぜんスウィングしていない平坦な集団手拍子が起きるのも怖かったです。
自由であるはずのジャズなのに全体主義のお手本みたいで。
私は何を見せられているのだろう? 人の心を思いのままに支配したい「教祖様になりたい男の夢」?
その主張は誰からも否定されずすべて受け入れられて、誰も彼もが自分のために命を懸けてくれる「不思議な魅力をもった俺」の夢?
本編が終わってフィナーレの「Sing,Sing,Sing」でようやく私はナイトメアから解放された気分になりました。
演じきった人たちに心から拍手を送りました。
主演の風間柚乃さんにジャズを歌わせたことは買います。どう歌えば聴く人が心地よくなるのかわかってらっしゃるなぁと思いました。
ストーリーを考えずにもっと聴きたいと思う歌声でした。
芝居をぐいぐいと引っ張っていく力も凄いなぁと思いました。
とくにあの雪山のソロを1人でもたせてしまう力は素晴らしいなと。
主演以外の出演者にも目に留まった若手の方が何人もいたのですが(風間さんより下級生ってことですよね)、プログラムを見ても誰が誰だかわからなくて。
とくにジャズナンバーを踊っている場面では役名ともちがって、月組さんについて履修不足の私には難易度高しでした・・汗。
博多座公演、バウ公演と見て、月組の芝居力に感服です。これからが楽しみです。
(来年からは組に偏らずに見ていきたいなと思い中・・です・・)
| 固定リンク | 0
コメント