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2021年11月の7件の記事

2021/11/28

胸にしみる故郷のなつかしい香り。

11月25日に熊本城ホールにて宝塚歌劇宙組公演「バロンの末裔」「アクアヴィーテ!!」ソワレを見てきました。

熊本城ホールは2019年にこけら落としされた新しいホールで、1階後方席でも見やすくセリフも聞き取りやすかったです。お手洗いも多めで30分の幕間も余裕がありました。バスターミナルの上にあるのでアクセスもよくて次の熊本公演もここだといいなぁと思いました。

そして熊本は言わずと知れた宙組トップスター真風涼帆さんの故郷。2019年に続いての凱旋公演ともいえる公演でした。
今回は新しい相手役さんの地元お披露目ともいえるかも。
劇中で歌われていた故郷を思う歌に真風さん自身が重なって、またこの数年に見舞われた熊本の苦難と復興への道のりが重なって見えて胸が熱くなりました。

「バロンの末裔」は映像を繰り返し見ていた作品で、けっこう覚えているものだなぁと思いつつ観劇しました。生で見たことがなかったので再演で見ることができて嬉しかったです。
正塚先生の作品なのでテンポにメリハリがつくともっとよくなるなぁと思いました。来月福岡でも観劇するので深化しているといいなと思います。

真風さんの双子の演じ分け面白かったです。(星組でも愛ちゃんが双子を演じていたのでそれを思い出してよけいに楽しくなりました)
舞台上でエドワードからローレンスに切り替えて演じ分けるのは凄いなぁと思いました。(それぞれの影武者は春瀬央季さんと鳳城のあんさんが演じられていたんですね)

双子のうち私は案外ローレンスが好きでした。
自分のことよりも家のこと、屋敷の使用人たちのこと、領民のことを考えるように育てられた人なんだと思います。男爵家の跡継ぎとして。
彼が投機に手を出したのも、信頼している会計士に勧められるがままに家や領民のため、そしてキャサリンのためを考えたことで、決して私欲のためではないと思いますし、失敗してもまだ取り戻せますと繰り返し言われるままに深みにはまっていったのじゃないかなぁ。
彼だって屋敷を出て別の世界で生きられる弟エドワードを羨ましく思ったこともあるんじゃないかな。口には出さなくても。

というわけで、もっと憂いを帯びたハンサムに演じてくれてもいいのに~~というのが不満です笑。あの浮世離れ感はとても好きですが。さらにもっとと。
オスカー・ワイルドの小説に出てきそうなやつれた貴族的な美男子を造形してほしいなぁ。恥ずかしがらすにぜひ♡ ペンより重いものを持ったことがないようななにかというと蒼白になるような。
キャサリンだって結婚してもいいと思っているくらいだから、エドワードに勝るとも劣らぬ魅力があるのだと私は信じています。

エドワードはかっこいいけどふつう~~と思いました。
石炭がなかったら彼にもどうしようもなかったし。
弟の立場として失望も味わい、家のことも領地のことも、キャサリンのことも自分のものではないと見切ってローレンスにすべて委ねて屋敷を出たのだろうと思います。それがわかっているローレンスも弟においそれと相談はできなかったのではないかなと思います。
それゆえ自分がやってしまったことをわかっているローレンスはキャサリンが弟を選んでも、2人がそのことに罪悪感を抱かないですむようにダメ男を装っているのではないかと思ったりもするのです。(とことんローレンス贔屓)

結局兄が倒れた報せをうけて故郷に帰ってみて、窮地に立たされた兄と想い人、なつかしい使用人たちの顔を見て、彼らと領地のために初めて本気で奔走することで、エドワードは故郷と故郷の人びとのかけがえのなさに気づくことができたんじゃないかな。
屋敷を出た頃はいろいろあって失意で忘れていたかもしれないけれど、ローレンスが自分にしてくれた様々なことも思い出したりしたのじゃないかな。
自分の立場からしか見ていなかったことや、ローレンスが家や使用人や領地のためにしていたことに気づけたりしたのじゃないかな。と思うのです。

潤花ちゃんが演じるキャサリンは生きる力に溢れてて逞しそうで、きっとホテルにたくさんの人を呼べそうな気がして、彼女の選択は決して間違っていないと思えて、未来は明るい気がしました。
古風でハンサムな当主の男爵と美人で華やかな男爵夫人はホテルの名物になりそうだし、銀行家とも対等に渡り合っていけそう。ホテルはきっと繁盛するはず。
エドワードは自分の人生を築いていったらいいと思います。美しい故郷は兄夫婦が守っているから。

とラストも湿っぽくならずに見ていました。

潤花ちゃんはこういう役が似合うなぁと思いました。
しっかりローレンスを支えてホテルを繁盛させそうなキャサリンでした。
彼女を見ていると希望を感じました。(つい数日前に元伯爵夫人が料亭の女将として奮闘し守り抜いた旧柳川藩主立花邸御花に行ってきたばかりなのでイメージがダブったのかもしれません。伯爵令嬢 立花文子
ローレンスはいつの間にか論文を書いてたりして、それが評価されて叙勲されたりして。(妄想)
ローレンスとキャサリンとエドワードに、ルイ16世とマリー・アントワネットとフェルゼン伯爵みを感じました。

桜木みなとさんは間が良くてリチャードが成り立っているなぁと思いました。もっと爪痕を残してもいいんだぞと思いましたが、これからでしょうか。
ヘレン役の山吹ひばりちゃんとのペアが可愛らしかったです。

瑠風輝さんは若き頭取ウィリアムのフェアな精神がよく出ていて良かったです。役としては不足はないのだけどあとすこしスター的ななにかがあったらなぁと思いました。

鷹翔千空さんはウィリアムの秘書ブリンクリーとしてその場にいることを愉しんでいる感じがしました。もっとはっちゃけたいのかなぁと思うけど、こちらもまだ様子見かなぁ。

全体的に皆芝居が真面目だなぁという印象を受けました。もっとキャラクターになりきって変人になってもいいのじゃないかなぁ。
皆それぞれに変なところがあったり自分勝手だったりするけれど、愛しい。そういうお話だと思うので。
11/21に梅田で初日を迎えてから九州初上陸の地だったのでまだ芝居が硬いのかなと思いました。来週末は福岡公演を見る予定なので役としてもっともっと自由に演じているといいなと愉しみにしています。

さすがだなと思ったのが寿つかささん。ボールトン家の執事ジョージ役として必要以上に分を弁えた感じが滑稽で、メイド長のミセス・サーティーズ(小春乃さよさん)と面白い一対という感じでした。

それから、銀行の創業者でウィリアムの父トーマス役の凛城きらさんが作品の世界観の中で好き勝手に存在している感じで光っていました。秘書のシャーロット(愛未サラさん)とはなかなか良いペアでした。
美しい顧客イングリット(水音志保さん)との場面がとっても好きでした。

お屋敷で働き始めたばかり(フットマン見習い?)のヘンリー役の亜音有星さんがのびのびと演じているのが好印象でした。ヘンリーは美味しい役だと知ってはいたけれど(初演新公では大和悠河さんが演じてた)、知ってた以上に美味しい役でした。主役のエドワードとヒロインのキャサリンの間を取り持ったりして。ラストも気が利いてて。


ショー「アクアヴィーテ!!」は2019~2020年に宙組で上演された作品なので、ついついもういない人を探していました。
私が座っていた席からオペラグラスを使うとセンターより上手が見やすかったのですが、鷹翔さん亜音さんが生き生きと輝いて見えました。
そしてオペラグラスの視界にお名前はわからないけど素敵な下級生が幾人も。

瑠風さんの脇に出てくる美脚の黒いアマーミ、春瀬央季さんともう1人は琥南まことさんだったんですね。美しくて眼福でした。
それから寿さんが従えている2人、大路りせさん泉堂成さんも美少年系で素敵でした。
黒燕尾で見た綺麗な方は誰だったのかな。スモーキーナイトの場面にも白い衣装のフィーストの中にも綺麗な方がいたと思うのですが、同じ人なのか別の人なのか。福岡公演で答え合わせできたらいいな。
それにしてもいつの間にこんなに綺麗な男役さんが増えていたんでしょうか??

綺麗な方といえば水音志保さんに目が奪われがちでした。幕開きから春瀬さんと美男美女で踊られていて眼福。
そして2019年当時は組長さんがされいたパート副組長さんがされていたパート、はたまたあの方がされていたパートをこの方がされる時代になったんだなーと宝塚歌劇における2年の歳月の進み方の速さを実感しました。
そして2年前は客席降りのタカラジェンヌさんたちとグラスを合わせてはしゃいでいたのになぁと。世の中の変化を実感しました。(通路側の席だったのに・・涙目)

そうそう。「アクアヴィーテ!!」といえば!の3人のスターが甘い言葉を囁いて客席の反応を愉しむ場面では、瑠風さんはドライヤーに桜木さんはピアスに真風さんは枕になりたがっていました。
熊本公演だったせいか、瑠風さんは「あなたの髪は熊本の太平燕のように」、桜木さんは「あなたの耳は熊本のいきなり団子のように」、真風さんは「あなたのおでこは熊本の馬刺しのように」と喩えてらっしゃいましたが、ここはご当地アドリブになっているのかな。福岡ではなにに喩えられるのかも愉しみです。

ウィスキーが蒸留、熟成されていく場面は、大劇場公演より人数は少ないもののさらに洗練されていて美しくてとても感動的でした。
桜木さんと潤花ちゃんのリフトも素敵。

熊本まで日帰りでソワレ観劇はしんどいかなぁなんて思ったりもしていたのですが、行って良かったです。
つぎはいよいよ福岡公演観劇。
最高の時間になりますように!

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2021/11/23

ハートのエースがほしいの?

11月17日と18日にシアター・ドラマシティにて宝塚歌劇宙組公演「プロミセス、プロミセス」を見てきました。
18日のソワレは千秋楽でした。

外部のミュージカルを見てとても好きな作品だったし、宙組でキキちゃん(芹香斗亜さん)がチャックなんて絶対面白いに違いない!せったい見たい!と思っていて、チケットが取れた時は小躍りしました。

わくわくして客席に座って、キキちゃん演じるチャックが客席に語りかけながら軽妙に舞台は進んで、とっても面白かったんだけど、思っていたのとはニュアンスが違うなぁと正直思いました。
お笑いがベタになっているのが気になりました。千秋楽は関西最終日ということでいっそう振り切ったのもあるかもしれないけど。笑いに関するコンポジションがちょっとうううーーん。

クスリと笑った後にせつなくなるような。苦笑いしちゃうような。そんな作品を期待していたんだけどな。
チャックが待ち合わせの時間を過ぎてもフランが来なかったときにいうセリフたち。どれもみんなせつなくて好きなんだけど、流れてしまってて。
大好きなニックスが129-128で負けちゃう試合が見なくてもいい試合だなんてはずがないのに。
チャックのやせ我慢とフランを悪く思いたくない気持ちと自己欺瞞とが混ぜこぜになったあのセリフたち。クスリと笑って切なくなったあの一連が。

重役たちがデフォルメされすぎちゃっていたのも笑いにくいなぁと思いました。本物の男性が演じたときは、えーーひどい信じられない!と思いつつも悲哀も感じたのだけど。

それといちばんはサウンドがちがうなぁと。タイプライターとかエレベーターとか電話とか。“Tin!”という軽やかな世界。そういうイメージだったのだけど、音響さんが頑張り過ぎちゃったのか、音がかぶさり過ぎちゃってて。
いちばんショックだったのは、“I’ll never fall in love again"をこんなふうにアレンジして歌っちゃうんだーってとこ。

傷ついた女の子が、恋したらどうなるの?嘘と痛みと悲しみを得るだけ キスしたらどうなるの?ばい菌もらって肺炎になって彼から見向きもされなくなる もう恋なんてしないわ すくなくとも明日まではね と歌う歌なんだけど。
私はチャーミングなフランを期待していたのだけどちがってて。え?ってなっちゃいました。

主人公は田舎から大都会に出てきて大会社で働いてて、でも自分はその歯車の一部にしかすぎなくて、野心はあるけど目立たなくて女の子にもモテなくて。そんな毎日がひょんなことから一転してこれはチャンス??というところからのアップダウン。
勝手に夢見ていた理想のマドンナも自分とおなじ現実を生きる現代の女の子で。
自分はどうなりたいのかってやっと気づいてっていうお話。
これはチャックだけじゃなくて、舞台に登場する社員の1人ひとりがきっと似たような経験をして人生のステップを登っていくんだなと思えるお話。
女の子たちもおなじ。
世界中のチャックとフランに向けた応援歌みたいな作品だと思います。
繊細で柔らかいところを優しく扱ってほしい作品なんだなぁ。。
面白かったけれど、でもなぁって正直思いました。


キキちゃん(芹香斗亜さん)は肩肘はらなくても魅力的な男役さんだなぁ。チャックの自己分析的な面白さと、自分でも気づかない哀愁の具合が絶妙でした。キキちゃんでコメディをもっと見てみたいなぁと思います。

天彩峰里ちゃんのフランは可愛らしいけど思ったよりも大人っぽかったな。やっぱり歌がいいなぁ。できればもっと彼女の素の歌声を聴かせるアレンジになっていたらいいのになぁと思いました。ポップス系もお上手だから。

輝月ゆうまさん、私は生で見るのは月組の「エリザベート」以来でした。好きだったなぁ輝月さんのマックス公爵。今回もDr.ドレファス最高でした。若い頃は羽目を外したこともでもいまは魅力的な人生の先輩っていうかんじ。本人はうんとお若いのに笑。芝居の間がとてもいいなぁと思いました。

シェルドレイクの和希そらさん、ミドルエイジの色気が凄かったです。どうしちゃったの。変幻自在だなぁ。若い女性はいちころですよねあれは。若くないけどいちころになりそうでしたもん。雪組に行っちゃうの寂しいなぁ。

留依蒔世さん、振り幅凄すぎ。なにをやっても決まるなぁ。ミュージカルナンバーは最高でした。宙組の宝だと思います。これからもいっぱい見たいです。期待!

瀬戸花まりさんのミス・オルスンがキラリと光ってました。オフィスレディの花宮沙羅さんや春乃さくらさんも美人で魅力的でした。宙組には素敵な娘役さんがいっぱいなことに気づきました。
若いビジネスマンたちのスーツ姿も素敵。重役を演じていた人たちがバーでは別の人になって自由にいろいろやってるのも面白かったです。
真名瀬みらさんと風色日向さんに目がとまりがちでした。

今月末から東京公演がはじまりますが、配信も放送も販売ソフトもないので伝説の舞台になりそうです。
実況CDだけは発売されるのかな。
CSのニュースだと劇場よりも音が控えめで聴きやすかったので、それとおなじ音のレベルだったら購入しようかなと思います。
今年はウィンターイルミネーションを見るたびにこの舞台を思い出しそう。
どうか千秋楽まで無事完走しますように。
happy holidays!

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2021/11/22

花はFascination!

11月9日に宝塚大劇場にて花組公演「元禄バロックロック」と「The Fascination!」を見てきました。

「元禄バロックロック」は、華やかなポスターと衣装に期待して見たのですが、ストーリーや設定で感性が合いませんでした。
脚本が甘くて(スウィートじゃないほう)芝居が軽くて、素人臭くて見ていられない気分になりました。
誰がこの芝居を締めるのだろう??と。
芝居を引っ張る人急募。演技指導する人急募。(辛うじて永久輝さんが頑張ってはいたけれど、役に必然性がないのでどうしようもないかんじ)
キャラクターは可愛くて面白いけれどそれだけ。設定で遊ぶゲームみたい。(眼鏡の柚香光さんは反則的に沼でしたが)
これって別エンディングがありますか?というかんじ。(やらないけど)
いつまで甘えてるんだよーとイライラしちゃう。そんなストーリーとキャラクター。
日本語を英語にGoogle翻訳したものをさらに日本語にGoogle翻訳したみたいな日本語も受け付けませんでした。(狙っているのかもですが)
「仇討ち」なら日本的精神としての正当性があるかもだけど「復讐」になっちゃったらクラノスケの正当性がどこにあるのかわからなかったし。
そもそも鎖国をしていない設定ならこうはならないだろうし。と突っ込むのも馬鹿らしくなってしまって。
リクとの場面も面白いとおもって書いたんだろうなぁって白けてしまって。
ショーとしてやるのなら面白そうだけど大劇場で芝居でやる内容じゃないなぁと。
衣装や舞台美術も綺麗だけれど芝居にはうるさすぎて動いている人、セリフを話している人の邪魔になっていました。
ポスターやプログラムだけ眺めていたらじゅうぶん。
ごめんなさい。私には合いませんでした。ギブアップでした。


ショー「The Fascination!」は落ち着いて見れました笑。
踊る踊る踊る!歌う歌う歌う!の正統派に正統派に正統派を重ねたザ・花組!なショーでした。
育ちの良さがこれでもかと迫ってくるかんじ。
御曹司に御曹司に御曹司。
プリンスアンドプリンセス。

トップコンビも好きだけれど、永久輝せあさんから目が離せませんでした。まちがいなく私の趣味。ときどきチギちゃん(早霧せいなさん)っぽいなと思ったり、ちょっと雪組時代の凰稀かなめさんぽいなと思ったり。(うんまちがいなく私好み)

ピアノ・ファンタジィの場面は圧巻でした。スタイリッシュ。
花組の過去の名曲を歌い継ぐ場面も好きでした。
「心の翼」のコーラスが素晴らしくて舞台からエモーショナルな圧が押し寄せてきて言葉にならない感情が込みあげてきました。
フィナーレで舞台に勢ぞろいする紳士たちと淑女たちに中村一徳先生だなぁと笑。
上品を絵にしたらこんなかんじになるのかなぁ。

お芝居には心が折れたけれどショーで持ち直しました。
やっぱり宝塚は素敵。花組素敵と。
生で見られるのはこの1回だけ。
あとはライブ配信をたのしみにしています。

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もうどこへも行くな。

10月26日と11月3日に博多座にて、宝塚歌劇月組公演「川霧の橋」「Dream Chaser -新たな夢へ-」を見てきました。
11月3日は千秋楽でした。

「川霧の橋」は23日に見た時よりもさらに深まっている印象をうけました。
月組の皆さん本当にお芝居が上手い!
舞台の上の1人ひとりがさまざまなキャラクターたちを魅力的に演じ、それぞれの場面で自分の役目をきっちり熟しつつ自らも光っていて、人の愛おしさに胸をふるわせながら見ていました。
そんな人々について思いつくままに書き残しておきたいと思います。

芸妓の小りん姐さん(晴音アキさん)は女性1人で芸で身を立てて生きているような小粋な姐さん。杉田屋の幸次郎
(月城かなとさん)に想いを寄せながら傍観者でいる道を貫いている健気なところもあり。いまでいうところの「押し活」に近い想いなのかもしれないな。「押し」が幸せに笑っていてくれたら自分も幸せというような。
作中では状況説明も担っている役を、晴音さんはとても巧い塩梅で演じてらっしゃいました。お光(海乃美月さん)が若夫婦となった幸次郎とおよしに出会う場面では「とてもここには居られない」に毎回笑わせてもらいました。

杉田屋の杉太郎(蓮つかささん)は口跡もよくて気持ちよい人。朗らかで気遣いもできてコミュ力あり。大工としての腕は半次や清吉に劣るのかもしれないけど、コーディネーター、渉外担当として良い仕事をしてそう。じつはいないと困る人だと思うので、幸さんもっと大事にしてやってと思いました笑。
「杉太郎です」「千代松です」の場面は面白かったなぁ。
あの場面は一緒にいる千代松(柊木絢斗さん)も口跡よく芝居の間も良いので毎回笑いました。

鳶の小頭辰吉(英かおとさん)は着流しがすらりと似合ういい男でした。恋女房が自分を心配して迎えに来たのが男同士の手前決まりが悪くて叱りつけたりしながらも、寄り添いながら帰っていく姿は微笑ましかったです。
火消しとして纏を担って駆け抜ける姿もいい男でした。

杉田屋の女将お蝶さん(夏月都さん)は祭りのご接待をテキパキと采配する有能な女性。ほかの人より先に発言する人だし、言いたいことはすべて逃さずに言うタイプ。
うん、この人なら悪気なく人を傷つけて気づかないでいそうだなぁって女性を、夏月さんが説得力のある芝居で見せていました。

杉田屋の棟梁巳之吉さん(夢奈瑠音さん)は腕と人柄を見込まれて入り婿になったんじゃないかな。お蝶さんが惚れたのかもね。と思いました。
怒鳴りつけるような人柄ではなさそうなのにまちがいなく徒弟たちに尊敬されていることがよくわかる人物。次期棟梁の選び方をとっても皆を納得させてまとめるタイプなのでしょうね。彼が言葉を発すると場が締まります。

飛脚の権二郎(春海ゆうさん)は、はじめはふつうに酒好きのご近所さんなんだなぁと思っていましたが、じつは大事なところを担っている役でした。
源六(光月るうさん)が幸次郎を遠ざける時に近所の目があることを理由にしていたけれど、酔っぱらった権二郎の「妾宅からのお帰りですか」という軽口で、まんざらそれが口実ではないのだとわかりました。
酔っぱらいの戯言が、それを聴いた人から人への伝聞で、いつの間にかそれらしい醜聞になっていくことは人の世にはありがちすぎて

そんなつまらないことに左右されてしまうのも人生だなぁとほろ苦く思いました。
そして、そんな酒に人生を売っ払って生きているような彼の職業が飛脚だからこそ、江戸から遠い大坂で清吉(暁千星さん)とばったり会い、後半の話へと展開するのだなと。
冒頭の祭りのシーンからすでに質の悪い飲み方をしていて、お酒のためなら恥も体裁もほっぽってしまう性格を春海さんはうまく演じられているなぁと思いました。

お甲(麗泉里さん)は、最初の登場では芸妓姿で「お金よりココ(気持ち)が大事」ときっぱり啖呵を切る気風の良い女性。
大火の後では河原で春を売る夜鷹姿となって「金が命の世の中さ」と世を嗤う。女性が生きて行くには信念などは後回しにしなければやっていけない無念さが滲んでいるよう。
それでもやっぱり心根は気持ちの良い姉御肌の女性のようで、芸妓の頃から妹分のように一緒だったお銀(花時舞香さん)たちを従えている。きっとなにかと目を懸けてあげているんだろうな。
なにより半次にお組の行方についての情報を教えてもお金は受け取らない。その情報はお酒一杯の値というのが彼女にとっての理、それを違えないのが矜持なのだろうなと。たとえ100%理想の生き方は無理でも通すところは通して生きようと抗っている。かっこいいぞお甲姐さん。

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2021/11/15

愛はさらにさらにさらに強く。

11月1日に宝塚大劇場にて星組公演「柳生忍法帖」と「モア―・ダンディズム!」の千秋楽を観劇し、引き続き行われた「愛月ひかるサヨナラショー」を見てきました。

開演間にまず座席に貼り付けてあったペンライトに、とうとうこの日が来てしまったかと覚悟をあらたにしました。
お隣には愛ちゃんを「誰がために鐘は鳴る」の新人公演から応援されている方が座られていましたが、ペンライトを手に取り添え書きに点灯する曲として「幸せの鐘の鳴る日」とあるのを目にしたとたん、「泣きそう・・」と目を潤ませていらっしゃいました。
ちなみにですが、添え書きにもう1曲「エル・ミ・アモール」とあったのを私は「マノン」のナンバーだと思ってしまって、曲がはじまって、あ、これじゃないやと思いバッグにしまってしまったのでした涙。
(「シークレットハンター」の主題歌は宝塚の曲でも1・2を争うくらい好きな曲なのですが、日本語タイトルの「大切な人」で覚えてしまっていました・・涙目)

私は「誰がために鐘は鳴る」の頃はあまり宝塚を見ていない時期でもあり、CS
でも本公演、新人公演ともに見たことがなくて、記憶に間違いがなければ、サヨナラショーではじめて愛ちゃんが歌うのを聴きました。楽曲自体はタカラヅカ・スペシャルなどで何度か歌われていて知っているのですけど。
初新公で「誰がために」のロバート、しかも大空祐飛さんの役とは。プレッシャーも含めて大変だっただろうなぁ。それがこんなに堂々と情感を込めて歌えるようになって・・と新公を見てもいないくせに涙目の私。
私ですらこうなのですから、お隣の方はどんなに万感胸に迫っていらっしゃったことかと。聴きながらハンカチで目元を拭っていらっしゃる様子が窺えました。

つづいて流れてきたイントロに、え?え?と。これはシークレットハンター?? そっか初舞台公演! そっか星組公演!!
この時点でペンライトの添え書きの「エル・ミ・アモール」が「シークレットハンター」の主題歌のタイトルだとは気づいていなかったもので驚きとともに、大好きな曲をまさか愛ちゃんの歌声で聴けるとは思っていなかった私の鼓動は跳ね上がりました。
こんなふうに1曲1曲がきっと誰かの心に刺さっていたのだろうなといまになって思います。たくさんの人の心に爪痕を残していたのですよね、愛ちゃんは。

そして大階段の真ん中に立つ愛ちゃんの背後から男役さんたちが、「マノン」より「マドリードへ」のボレロ調アレンジの曲に合わせて降りてきて、黒燕尾の男役群舞へ。
逆三角形の頂点に愛ちゃん。愛ちゃんにピタリと揃えてくる星組男役さんたち。ザ・男役の美学。
黒燕尾の群舞が美しいのはカタチ以上に心映えが重要なのだということをあらためて見せてくれる黒燕尾でした。
愛ちゃんに向かって静かに熱いエナジーが注がれていることを感じることができる黒燕尾の群舞は息をのむほど美しかったです。
(この1回のために皆でお稽古を繰り返してくれたのだなぁ・・)

退団同期の皆さんが銀橋を渡りながら「Bouquet de TAKARAZUKA」の主題歌を歌い継いだ後に、まさかのこれは!!??
それが「うたかたの恋」のプロローグだとわかった瞬間、私はお隣の方にすがりついていました。まさかのまさか。
愛ちゃんが「うたかたの恋」が大好きということは下級生時代から聞いていましたし(それもちょっとやそっとの好きさ加減じゃないってことも)、専科異動から星組異動と激動だった2019年暮れの「タカラヅカ・スペシャル」で「うたかたの恋」のプロローグを舞空瞳ちゃんと演じたときには、心から良かったと思いました。これだけでも星組に異動できてほんとうに良かったと。
まさかふたたび、それも大劇場の大階段で!「うたかたの恋」のルドルフを演じる愛ちゃんを見ることができるとは。それもトップ娘役の舞空瞳ちゃんがマリー役で。しかも2発目の銃声まで聴けるとは。誰にお礼を言えばよいでしょう???(通りもんを贈答させていただきます!)
宝塚大劇場の大階段に白軍服で佇む愛ちゃんの姿、しっかりと脳裏に焼き付いています。

それからまた星組生で歌い継がれる「You Are My Sunshine」。「Ray」のこの場面大好きだったなぁと思い出してうるうる。
大階段の真ん中でトップの礼さんが美声を響かせ最高潮に達したところで、上手袖から愛ちゃん登場。裾の長い白い変わり燕尾? 後ろについているのはモフモフのフェザー? なんて素敵な。愛ちゃんだから着こなせる愛ちゃんのための衣装だぁ涙。
愛ちゃんを交えて星組生全員で歌う「You Are My Sunshine」のなんて温かいこと。みんなみんな好い人すぎて胸がいっぱいで泣いてしまいそうでした。

そして礼さんはじめ舞台の全員が白い衣装。あっ。
つぎは「不滅の棘」だと。これは私でも予測できました。
愛ちゃんと星組の皆さんが「バンバン」を歌い盛り上がりながら幕がおりた瞬間、ああよかったと思うことができました。
幸せそうに輝く愛ちゃんを見ることができて心がいっぱいになりました。
こんなに素敵なサヨナラショーで愛ちゃんを送り出してくれる星組の皆さん、関係者の皆さんの愛を感じることができました。
短い期間ではあったけれど、どうか愛ちゃんが在たことが星組の財産になっていますように。
東京公演のサヨナラショーはライブビューイングで見る予定ですが、またあの感動を味わえるのは幸せに思います。
どうか無事に千秋楽まで東京公演が上演されますように。心から心から祈ります。

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想い出はすべて宝石。

10月31日と11月1日の宝塚大劇場星組公演「柳生忍法帖」と「モア―・ダンディズム!」の前楽と千秋楽を見てきました。

「モア―・ダンディズム」はやはりあっという間のショーでした。
そのときはすっかり忘れていたのですが前楽はハロウィーンで、プロローグの大階段で礼真琴さんが「Happy Halloween!」と叫ばれて、ひゃあぁぁぁぁ♡となってしまい、それからもうパレードまでそのままのテンションで見てしまった気がします。
さらに油断していたらハードボイルドのキメで超クールに「Trick or treat...!」とつぶやかれてえっ?!いまTrick or treatっておっしゃった??ひゃぁぁぁぁ♡となってしまいました。

それを反芻する暇もなく次々と繰り広げられるクオリティの高いショーを楽しんでいたら、テンプテーションの場面で礼さんが「お菓子くれなきゃ」、愛ちゃん(愛月ひかるさん)が「いたずらしちゃうぞ」と。
このときもまったく予想していなかった私は不意打ちを喰らってしまって、こんなことがあっていいの???と現実を受け入れるのに時間を要しました。そ、そんなかっこよく言われましても・・と頭はパニック。だって「ダンディズム」ですよ?! クールでエレガントにそんな可愛らしいことを?? ちょっと素敵すぎて酸欠状態になりました。

学習能力を置き忘れてしまっていた私は、「ラ・パッション」の銀橋渡りで瀬央ゆりあさんが曲中で「パン・・」「パン・・」とおっしゃっているのに「えっパン???」と頭をハテナ?でいっぱいにしてよくわからないままノリノリで手拍子をしていたところ、「パンプキン大好き」と情熱的にキザっておっしゃったのでずずずーっと座席から滑り落ちそうになりました。
ここまで来たら少しは察しろって話ですが、本当にそんなふうに考えを巡らす暇もないくらい勢いのあるショーだったのです。
それに、礼さんたちがここぞという一瞬にバチッとアドリブをキメられるのに対して、瀬央さんはけっこう強引といいますか独特のテンポ感で発せられ、まさかという思いもありました。(独特のテンポ感といえば真風さんにも通ずるものがあるかもしれません。これもひとつのスター性なのかも??)

そんな感じで前楽はすこしも湿っぽくならずに高揚感のまま観劇を終えることができました。

「ダンディズム!」といえば「キャリオカ」の場面が大好きなのですが、今回の「モア―・ダンディズム」にもその場面があって本当に見ていると気持ちが高揚しました。
男役の端正な美しさ、娘役のしなやかな華やかさが舞台いっぱいに広がってこれぞ宝塚で見たかったもの♡と思いますし、構成の緩急も絶妙で天才~~~と思います。
強弱の「強」のところをどれだけ強く打ち出せるかが勝負なところでもあるので、いまの星組にこそピッタリな場面だなと思います。それだけいまの星組には男役にも娘役にも光る人が多いのだと実感しました。

「ダンディズム!」といえば“その2”、の「ハード・ボイルド」は、昭和から平成に年号が変わる直前に公開された昭和のやくざ者をオマージュした映画の主題歌(PARADISO)に乗せて男役たちがストライプスーツとカラーシャツといういかにもな出で立ちで歌い踊る場面。
歌詞はハードボイルドというより感傷的で自己陶酔的で聴いていてこそばゆくもあり。反社をこんなふうに解釈したかった時代だったかもと思います。
そして初演の頃ってちょうど濵マイクシリーズが流行っていた頃でもあったなぁと。映画に夢が詰まっていた過ぎ去った時代に憧れてオマージュしたくなっていた時代だなぁ。
憧れをそのままストレートに表現するのは気恥ずかしい時代だったのだけど、宝塚はあっけらかんと真っ直ぐに具現化しちゃってたんだなぁ。なんてことを思うのです。それができるのが宝塚で、作り手の夢を詰め込める世界でもあったのだなぁと(それはいまもかな)。
そして2021年のいま、それをどうだカッコイイだろうってやっちゃえるのが宝塚。それを成立させているのがいまの星組の力なんだなぁと思いました。
こそばゆさもあるけれどカッコイイからいっかって思います。つくづく宝塚歌劇って類まれな世界だなぁ。
オマージュのオマージュのさらにオマージュを成立させてしまう世界。

「おもいでは薄紫のとばりの向こう」「ゴールデン・デイズ」そして「アシナヨ」は、もう大劇場でこうして愛ちゃんを見ることはないのだなぁと思うと、千秋楽は言葉にならない気持ちが押し寄せてきました。
白や薄紫の浮世離れしたファンタジーの王侯貴族みたいなコスチュームがここまで似合う人は宝塚でも稀有だと思います。
ドラゴンだってやっつけてお姫様を救出できそう。流浪したってこの高貴さは失われることはなさそう。
この個性が宝塚にとってどれだけ価値があるか。
こんなに宝塚らしいタカラジェンヌが去って行ってしまうんだなぁ。
もって生まれたものも大きいと思いますが、それだけじゃない。長い年月をかけて自分のなかに蓄え、輝ける日々のすべてを賭して学び努力して、ここにこうして表現されているものなのだなぁと思うと、その指先、髪艶、肩幅、表情、etc.すべてが愛おしく胸に詰まりました。

「アシナヨ」で、礼さんに肩に手を添えられる場面は、愛ちゃんの表情がまるで娘役さんみたいだなと思っていましたが、千秋楽は男役も娘役も超越した「慈しみ」が光となって発せられているようでした。「愛」と「死」が融和すると「慈しみ」になるのかな。
そして愛ちゃんをそんな存在にしている礼さんに心からありがとうと思いました。
こんなに愛に包まれて卒業していく愛ちゃんを見ることができるなんて。

もうじき愛ちゃんにとってさいごの東京公演が初日を迎えますが、星組の皆さんとファンの皆さんの愛に包まれて幸せな公演期間を過ごせされることを心から願っています。
そして星組生として大劇場よりもさらにクオリティの高い舞台をめざし、さらに男役を極めてほしいなと願っています。

(サヨナラショーについて書きだすとまた長くなりそうなので、ひとまずこれで)

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2021/11/08

どれもみんな愛しい。

10月31日と11月1日の宝塚大劇場星組公演「柳生忍法帖」と「モア―・ダンディズム!」の前楽と千秋楽を見てきました。

「柳生忍法帖」は前回見た時に、ゆら(舞空瞳さん)の恋心が唐突に感じられたので、今回は十兵衛(礼真琴さん)が鶴ヶ城の門前に登場してからずっと彼女の様子が気になって見ていたのですが、彼女は沢庵和尚に反論する十兵衛の口上を真剣な顔で聞いていました。
まるで憎しみの表情にも似た恐いほど真剣な面持ちが、私にはなんだかせつなく愛おしく感じられました。

芦名一族の再興という目的のためには自己を犠牲にして当然という中で生きてきたゆらにとって、
十兵衛の言葉はあまりに衝撃的で容易には受け入れられなかったんじゃないかと思います。
堀一族の女たちの命を差し出して徳川を守らなくてはという局面に、彼女たちを見殺しにしてなんのための武士道かと言い放つ十兵衛から視線を逸らすことができなくなってしまったように見えました。なんとか平静を保とうとはしている様子だけれど。
彼女のこれまでの人生を全否定するような言葉を放った十兵衛に耐えられぬほどの苦しみを与え、その言葉は間違いだったと思い知らせることで自我を守ろうとしたのだと思うけれども、どんな苦しみの中でも揺るがぬ十兵衛の優しさを目の当たりにしてしまい、彼女はわかってしまったんだなと思いました。
自分が本当に望んでいたことを。十兵衛に揺さぶられ惹かれていたことを。芦名再興という名目のために自分が犯してきた罪も。
そんなゆらの最期がかなしくて愛おしくてたまりませんでした。
(あの場面を思い出すと頭の中に「アシナヨ」が流れてきて涙腺が・・彼だけが弔ってやれる人・・涙・・)

堀一族の女たちの運命は過酷すぎるものですが十兵衛みたいな信頼できる師を持てたことは羨ましくもありました。
武家の娘や妻として生きていて、女ゆえの代償(性的なことに限らず)
を一切求められない絆で結ばれた関係を持てるなんて、彼女たちにとってはなかったことではないかなと思います。家族思いの堀主水だって殿様が改心したら娘を差し出しても良いって言っている時代ですから。
安心して自分のままで向き合っていられる“先生”。生きる上でそんな尊敬できる人を持てることは本当に幸せなことだなと思います。
「先生、先生」と童心に返ったみたいに自分を見てほしいというように十兵衛にまとわりつく彼女たちを見ていると、やっぱり泣きたいような愛おしいような気持ちになりました。
そんな彼女たちとの触れ合いから十兵衛の中にも彼女たちがそんなふうにしていられるこの時を守りたいと思う気持ちが芽生えているのではないかなと
思いました。見返りなどいらない彼女たちが幸せでいてくれればよいという思いが。

見返りは求めず注がれる愛情、十兵衛のこともそんなふうに育て見守る人がいることも見ていて嬉しくなりました。
沢庵和尚(天寿光希さん)、千姫様(白妙なつさん)、そして宗矩様(朝水りょうさん)♡ 好きだなぁと思いました。

愛ちゃんこと愛月ひかるさん演じる芦名銅伯のラスボス感は凄かったです。あまり表情を変えないのにその身の内には沸々と湧きあがる情念のようなものや、なにかとてつもないものが冷えて凝ってあるような。
まだ黒髪の麗しい頃には、ともに戦い散っていった芦名の者たちの辛苦や無念を思って感情を昂らせ泣きもしていたのに。齢100歳を超えたいまでは妄執だけで存在しているように見えました。

打って変わって双子のあの方は、同じお顏でありながら毒気のない苦し気な慈しみのまなざしで千姫を見つめ、堀一族の千絵(小桜ほのかさん)を見つめておられました。
法衣の頭巾がまるで狂言の美男鬘のようにも見えてそのアセクシャルな魅力に私は心奪われました。
かつての彼も泰平の世を築くためには1人の女の絶望は仕方がないことと口を塞ぎ黙らせた側の人。しかしこたびは、天下泰平のためになにがなんでも成し遂げようとしてきた天台相承を己の執着と見極めたなのだなぁと。こんなに偉大な大僧正であっても齢百歳を超えても、人との出会いによって悟ることがあるのだなぁと思いました。

仏法も武士道も同じところに行きつき、こうであってほしいという理想が描かれていることになんともいえない悦びがありました。心のうちにすこしずつ澱のようにたまっていたかなしみが癒されるような感覚を得ました。
こういう瞬間のために私はフィクションを求めているのかもと思います。

ラストの十兵衛が歌う歌には、彼という人が如実に表されているなぁと思います。なにかを探し求めて彷徨うことができる根底には、人を人として信じ慈しむことができる優しさがあるからだなぁと思いました。
その十兵衛と礼さんが重なって礼さんの優しさを感じた気がしました。そして礼さんや出演されていた皆さんのこの先の幸せを願いたい気持ちになりました。



「モア―・ダンディズム」そして愛月ひかるサヨナラショーについても書きたいことがあったので、記事タイトルを「アシナヨ」の歌詞からつけたにもかかわらず、「柳生忍法帖」の感想が長くなってしまってたどり着けませんでした・・。
10月からずっと観劇とプライベートで目まぐるしくてなかなかPCに向かうことができません。
星組のショーのことはもちろん、月組博多座公演千秋楽についてや花組「バロックロック」そして宙組「プロミセス・プロミセス」に全国ツアーとこれから観劇する舞台についても感想を書き残しておこうと思うのですが、記憶が朧になるまえに。
(続きは後日にきっと書くつもりです・・)

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