想い出はすべて宝石。
10月31日と11月1日の宝塚大劇場星組公演「柳生忍法帖」と「モア―・ダンディズム!」の前楽と千秋楽を見てきました。
「モア―・ダンディズム」はやはりあっという間のショーでした。
そのときはすっかり忘れていたのですが前楽はハロウィーンで、プロローグの大階段で礼真琴さんが「Happy Halloween!」と叫ばれて、ひゃあぁぁぁぁ♡となってしまい、それからもうパレードまでそのままのテンションで見てしまった気がします。
さらに油断していたらハードボイルドのキメで超クールに「Trick or treat...!」とつぶやかれてえっ?!いまTrick or treatっておっしゃった??ひゃぁぁぁぁ♡となってしまいました。
それを反芻する暇もなく次々と繰り広げられるクオリティの高いショーを楽しんでいたら、テンプテーションの場面で礼さんが「お菓子くれなきゃ」、愛ちゃん(愛月ひかるさん)が「いたずらしちゃうぞ」と。
このときもまったく予想していなかった私は不意打ちを喰らってしまって、こんなことがあっていいの???と現実を受け入れるのに時間を要しました。そ、そんなかっこよく言われましても・・と頭はパニック。だって「ダンディズム」ですよ?! クールでエレガントにそんな可愛らしいことを?? ちょっと素敵すぎて酸欠状態になりました。
学習能力を置き忘れてしまっていた私は、「ラ・パッション」の銀橋渡りで瀬央ゆりあさんが曲中で「パン・・」「パン・・」とおっしゃっているのに「えっパン???」と頭をハテナ?でいっぱいにしてよくわからないままノリノリで手拍子をしていたところ、「パンプキン大好き」と情熱的にキザっておっしゃったのでずずずーっと座席から滑り落ちそうになりました。
ここまで来たら少しは察しろって話ですが、本当にそんなふうに考えを巡らす暇もないくらい勢いのあるショーだったのです。
それに、礼さんたちがここぞという一瞬にバチッとアドリブをキメられるのに対して、瀬央さんはけっこう強引といいますか独特のテンポ感で発せられ、まさかという思いもありました。(独特のテンポ感といえば真風さんにも通ずるものがあるかもしれません。これもひとつのスター性なのかも??)
そんな感じで前楽はすこしも湿っぽくならずに高揚感のまま観劇を終えることができました。
「ダンディズム!」といえば「キャリオカ」の場面が大好きなのですが、今回の「モア―・ダンディズム」にもその場面があって本当に見ていると気持ちが高揚しました。
男役の端正な美しさ、娘役のしなやかな華やかさが舞台いっぱいに広がってこれぞ宝塚で見たかったもの♡と思いますし、構成の緩急も絶妙で天才~~~と思います。
強弱の「強」のところをどれだけ強く打ち出せるかが勝負なところでもあるので、いまの星組にこそピッタリな場面だなと思います。それだけいまの星組には男役にも娘役にも光る人が多いのだと実感しました。
「ダンディズム!」といえば“その2”、の「ハード・ボイルド」は、昭和から平成に年号が変わる直前に公開された昭和のやくざ者をオマージュした映画の主題歌(PARADISO)に乗せて男役たちがストライプスーツとカラーシャツといういかにもな出で立ちで歌い踊る場面。
歌詞はハードボイルドというより感傷的で自己陶酔的で聴いていてこそばゆくもあり。反社をこんなふうに解釈したかった時代だったかもと思います。
そして初演の頃ってちょうど濵マイクシリーズが流行っていた頃でもあったなぁと。映画に夢が詰まっていた過ぎ去った時代に憧れてオマージュしたくなっていた時代だなぁ。
憧れをそのままストレートに表現するのは気恥ずかしい時代だったのだけど、宝塚はあっけらかんと真っ直ぐに具現化しちゃってたんだなぁ。なんてことを思うのです。それができるのが宝塚で、作り手の夢を詰め込める世界でもあったのだなぁと(それはいまもかな)。
そして2021年のいま、それをどうだカッコイイだろうってやっちゃえるのが宝塚。それを成立させているのがいまの星組の力なんだなぁと思いました。
こそばゆさもあるけれどカッコイイからいっかって思います。つくづく宝塚歌劇って類まれな世界だなぁ。
オマージュのオマージュのさらにオマージュを成立させてしまう世界。
「おもいでは薄紫のとばりの向こう」「ゴールデン・デイズ」そして「アシナヨ」は、もう大劇場でこうして愛ちゃんを見ることはないのだなぁと思うと、千秋楽は言葉にならない気持ちが押し寄せてきました。
白や薄紫の浮世離れしたファンタジーの王侯貴族みたいなコスチュームがここまで似合う人は宝塚でも稀有だと思います。
ドラゴンだってやっつけてお姫様を救出できそう。流浪したってこの高貴さは失われることはなさそう。
この個性が宝塚にとってどれだけ価値があるか。
こんなに宝塚らしいタカラジェンヌが去って行ってしまうんだなぁ。
もって生まれたものも大きいと思いますが、それだけじゃない。長い年月をかけて自分のなかに蓄え、輝ける日々のすべてを賭して学び努力して、ここにこうして表現されているものなのだなぁと思うと、その指先、髪艶、肩幅、表情、etc.すべてが愛おしく胸に詰まりました。
「アシナヨ」で、礼さんに肩に手を添えられる場面は、愛ちゃんの表情がまるで娘役さんみたいだなと思っていましたが、千秋楽は男役も娘役も超越した「慈しみ」が光となって発せられているようでした。「愛」と「死」が融和すると「慈しみ」になるのかな。
そして愛ちゃんをそんな存在にしている礼さんに心からありがとうと思いました。
こんなに愛に包まれて卒業していく愛ちゃんを見ることができるなんて。
もうじき愛ちゃんにとってさいごの東京公演が初日を迎えますが、星組の皆さんとファンの皆さんの愛に包まれて幸せな公演期間を過ごせされることを心から願っています。
そして星組生として大劇場よりもさらにクオリティの高い舞台をめざし、さらに男役を極めてほしいなと願っています。
(サヨナラショーについて書きだすとまた長くなりそうなので、ひとまずこれで)
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