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2023/01/19

私を返して。

1月14日と17日に博多座にてミュージカル「エリザベート」を見てきました。

【14日(マチネ)】
  花總シシィ古川トート佐藤フランツ立石ルドルフ香寿ゾフィー黒羽ルキーニ
【17日(ソワレ)】
  花總シシィ井上トート田代フランツ甲斐ルドルフ香寿ゾフィー黒羽ルキーニ

直近だと2019年に帝劇で見ているのですが、今回のバージョンはすごくすっきりわかりやすく演出されているように感じました。
そのぶん、個人的に心地よかったノイズも消えてしまったような、なにか隙間が埋まりきっていない印象ももちました。
なんといえばいいのかわかりませんが、90年代的なもの、ベルリンの壁崩壊後のヨーロッパ的なものが感じられなくなった感。
脚本もわかりやすくなっていた印象で、この作品に限らず「言葉通り」が主流になっているのかなぁと。

オケやコーラスの重厚さが以前ほど感じられない気がしたのですが、コロナ禍と関係があったりするのでしょうか。減員? それとも座席位置や私の側に起因する問題でそう感じたのでしょうか。
逆にエコーが強すぎるのが違和感で、トートの声をマイクが拾いきれていないようなもったいない感じもありました。

14日の初見時、トート閣下のご登場シーンで頭上からワイヤーで降臨されるのを見てふと昨年見た「薔薇とサムライ」の天海祐希さんが脳裏に浮かんでしまったばっかりに、よからぬスイッチが入ってしまったのがわたし的敗因のような気もします。
物語に没頭しきれずどこか退いたところから見ていたかもしれません。
真っ白だった頃の私を返して・・涙。

また観劇できるはずなので、それまでに自分を調整しておかなくては。
このご時世、貴重な1公演1公演のはずなのに・・。

花總まりさんのシシィは愛らしい少女から大人の女性へそして晩年への変化が、わかってはいるつもりだったのですが、以前にも増して見事であらためて驚かされました。
予想を超えていました。
印象としてはとてもポジティブで自分を曝け出すことができるシシィでした。

古川雄大さんは2019年に見たときとはかなり雰囲気が変わって存在感のあるトートになっていました。
低血圧そうに(青い血を流すらしいから血圧はあるんですよね?)悠然として物事に無頓着そうなのにシシィにだけは執着するのが「愛と死の輪舞」って感じで、作品世界に漂う空気が凝って具現化したようなトート閣下だなぁと思いました。
小さなルドルフからさりげなくピストルを受け取り懐にしまうまでの一連、のちに成長したルドルフにそのピストルを渡すところなどのメタな小道具使いに見惚れてしまいました。ついふらふらとついて行ってしまいそうになるトート閣下でした。

佐藤隆紀さんのフランツ、そっかシシィってファザコンだったよねと。優し気なところに惹かれたのかな。
シシィの部屋の前の歌、いい声。あれでも扉を開けないシシィなのですね。
棘のない声といいますか包み込むような誰ともケンカしない声だなぁ。
夜のボートは劇中でもいちばんの感動ポイントでした。

立石俊樹さん、悲劇を待っているルドルフといいますか。このルドルフ、自分が悲劇が似合うことを知っているなと思いました。
追い詰められてイキイキしていると言ったら変ですが、悲嘆に浸っているなぁと。古川トートとの耽美な闇広ご馳走様でした♡

香寿たつきさんのゾフィーは正しくて厳しくて怖い印象。それが息子や孫のためだと心の底から信じているんですよねぇ。
強くなくては生きていられない場所で彼らは生きていくのだから。
安定の力強い歌声の頼もしいゾフィー様でした。

ルキーニの黒羽真璃央さん、ルキーニといえばベテランの役者さんの印象があったのでキャリアも年齢もお若い方がキャスティングされたことに最初は驚きでした。
実際に舞台で見て違和感もまったくなく演じこなしていることにも驚きを覚えましたが、考えたら実在のルキーニも犯行時は25歳だったのですよね。
無政府主義を信奉し、「偉そうなやつ」を暗殺して自分を誇示したかったのだろう若者の役を年齢が近い役者が演じるのは自然かも。その言動の支離滅裂さも、教え込まれたことを一途に情熱的に信奉し誰かを情熱的に憎むことができるのも若さゆえともいえるかもと納得でした。
そう仕向けられていることに気づかず万能感に浸っている感じも。彼は誰かに利用されたのかも・・?と思える余地があるのも。(この作品の世界観だとトート閣下がその黒幕ですが)
強烈なアクセントで狂気を印象付けるというよりは、若さゆえの万能感と自己陶酔と操られやすさを印象付けるルキーニだったかなと思います。


17日は、トート、フランツ、ルドルフが14日とは異なるキャストでした。

井上芳雄さんのトートは、アグレッシブに仕掛けてくる印象でかなり怖かったです。自分から矢面に立つトートだなと。
ルドルフを失って弱気になったシシィに「死なせて」と言われて傷ついたような顔をしていたのが印象的でした。愛されていないことがショックなのかな。強いシシィを求めているからかな。子どものようにイノセントで自分が望むままに行動するトート閣下なのかなと思いました。
井上トートは歌も楽しみだったのですが、エコーが効きすぎていてマイクが拾っていない声もあった気がしてそれがもったいないなぁと思いました。

田代万里生さんのフランツはトートへの対抗心が強いなぁというのがいちばんの印象です。シシィは私のものだ感が凄い。
彼女を裏切ったことをめちゃくちゃ後悔してそうだし、そのことで母をとても恨んでいそうだし、帰ってこないシシィのことをずっと思っていそう。
その割には息子にきつくて、そんなところは母に似ている気がするし。下手をすると息子にも嫉妬しそうなくらいだなぁと思いました。
こんなにシシィを愛しているのに拒まれてしまう「夜のボート」は胸が痛かったです。彼に脇目もふらずトートの胸に飛び込んでいくんだなぁシシィは・・涙。

甲斐翔真さんのルドルフは、めっちゃ育っとるやん!って思いました。こんなに大きくなって・・と。
ゾフィー様の言いつけを守って鍛錬したのかな~ 彼なりに一生懸命に国を思って行動しているよねと思いました。そんなところはゾフィー様の孫だなぁと。
井上トートの声をかき消さんばかりの音量の闇広がめちゃくちゃツボりました。こんな闇広(闇が広がる)ははじめて。勢いで突き進んでなにかよくわからないうちに勢いで自滅してしまうルドルフ。正義感が強かったのよねと思いました。
次は古川トートと甲斐ルドルフで見る予定なのですが、ちゃんと噛み合うのかどうなってしまうのか、いまから不安なような楽しみなような笑。

革命家の皆さんも一新で、背の高い方たちばかりでびっくりでした。
こうやってどんどん受け継がれていくんだなぁ。
博多座でアムネリス(宙組「王家に捧ぐ歌」)だった彩花まりさんが今回はヴィンディッシュ嬢で頑張っている姿を見れてうれしかったです。
おなじく元宙組だった華妃まいあさんの姿も退団後はじめて見ることができました。相変わらずスタイル良いなぁと。宙組で活躍していた彼女たちがまたエリザベートの世界で息づいている姿を見ることができて感無量です。
スタイルが良いといえば美麗さんのマデレーネも妖艶で素晴らしかったです。

次の観劇予定は1週間後なのですが、なにやら凄まじい寒波に見舞われるみたいで・・・。
大雪にさえならなければ大丈夫なはずなので、無事に観劇が叶いますように。
そして千秋楽まで止まることなく上演されますように。心の底から祈っています。

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