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2023/05/15

恩恵は次の者へ。

4月17日と21日に博多座にて舞台「キングダム」を見てきました。
すべてが「本気」で目を瞠る舞台でした。

「キングダム」は家族がアニメを見ているのをながらで聴いていたくらいの認識しかありません。
ずっと戦っているなーとかオウキ将軍は面白いしゃべり方をするなーとか途中でこれは秦の始皇帝がモデル?と気づいたり、その程度でした。
勇ましいことを言って命が何個あっても足りなそうとか。
(音声だけでしたので、さいしょのうちは別のアニメと区別がついていなかったかもと思います)
そんな中でもセイの邯鄲脱出のくだりやセイの母親のくだりなどは耳をそばだてた覚えがあります。
仲間のキャラクターが女の子なのを主人公だけが知らなかった話も、いま思えばキングダムだったんだなと思います。

その程度の知識しかないのに観劇しようと思った動機はキャストです。
人からびっくりされるほど若手俳優さんに疎いのですが、信役の三浦宏規さんは「ヘアスプレー」や「千と千尋の神隠し」でお芝居の間が気持ちよくて体の使い方がきれいな人だなぁという印象で、この方が主役なら見応えがあるのではと。
宝塚退団後の華優希さんや美弥るりかさんの活躍も見たいし、早乙女友貴さんも凄そう。
それに山口祐一郎さんの王騎って・・?という興味本位でした。

そんな状態ではありましたが、見たいキャストの日を選んでチケットを申し込みました。
(顔覚えがすこぶる悪いので、初めて見る作品は登場人物把握のためできるだけ知っている役者さんで見たいのです)
その後貸切公演を1公演追加で申し込みをしたのですが、確認するとほぼ同じキャストの回でした。
2回見るなら未知の役者さんでも大丈夫だったなぁ違うキャストも見たかったなぁなんて後の祭りです。

一抹の不安も覚えながらの初見でしたが、皆さんキャラ立ちが凄くて見分けがつかないなんてことはまったくの杞憂でした。
とにかく圧巻のパフォーマンス。登場人物それぞれの立場も状況もよくわかる脚本で集中して見ていたらあっという間に1幕が終わりました。
夥しい情報量なのにわかりやすいのが凄いなと。セリフ1つにも、そのキャラの一貫した思いや個性が織り込まれていて、そうそう信ってこういう人だよね、政ってこういうものを背負った人だよねとあらためて理解することができました。

そしてなにより役者の皆さんの表現力が素晴らしい。
身体表現、声。丁々発止の絶妙な間。舞台上で生きる人々が作り上げる空気に劇場全体が支配され息をのむ観劇体験となりました。

<CAST> ※私が見た回です

信(三浦宏規) 三浦宏規さんは近年私の中で信頼度の高い若手の舞台俳優さんです。三浦宏規さん主演なら間違いないと観劇を決めました。
今回も身体能力、体力、表現力、精神力、地頭の良さに驚きました。これってまさに信やん、と思いました。
楊端和との軍議の時に「敵8万に対して味方は3千」と知って驚く信に、初見では下僕育ちなのに万とか千の概念がすぐにわかるのかなと疑問だったのですが、見終わる時には信の地頭の良さが理解できてその疑問はなくなりました。戦いに対しての知識ならグイグイと頭に入っていくタイプなんだなぁと。知識のみならず頭の使い方、身体の使い方の会得が天才なんだなと。それを納得させる三浦宏規さんの信でした。(これがお金儲け等の話になると途端に頭に入ってこなかったりするんだろうなぁとも)
擬闘における身体能力には開演直後から驚きの連続でしたが、一瞬で成蟜が座る玉座の背に飛び乗ったときには何が起きたのかと理解ができませんでした。
Wキャストとはいえこの舞台を何十回と繰り返していることが驚異でした。(ほかのキャストもおなじく)

嬴政・漂(牧島 輝) 牧島輝さんは初めて見る俳優さんでしたが、あまりの声の良さにひれ伏しました。セリフの説得力が凄いです。
親と子は関係がないという場面、仲間を失う痛みなら知っているという場面、目指すものを語る場面、王騎との対話、セリフに重みがあり政が背負ったものが見えるようでした。
漂から政への一瞬のキャラクター入れ替わりも驚きでした。
無情に聞こえる言葉を発しても根底に慈恵の温もりがにじむ政でした。

河了貂(華 優希) 信が戦の天才なら貂はサバイブの天才かな。
華ちゃんの貂は粗野で元気いっぱいな中にひとつまみの健気さも滲ませていてその塩梅が絶妙でした。(過剰にならない塩梅の天才かも)
梟の着ぐるみ姿が愛らしすぎてたまりませんでした。

楊端和(梅澤美波) 美しく凛とした楊端和でした。壁たちがぼーっとしていたような気がするのは気のせいかな。私がぼーっとなってたのかな笑。
生脚にどうしても目がいきました。山に住んでいるのに生肌を出し過ぎだと思います(山の民皆そうですが)。

楊端和(美弥るりか ) 目線の利かせ方、残し方がさすが! 擬闘の見せ場もカッコよくて楊端和から目が離せませんでした。周囲をひれ伏せさせる圧のある楊端和でした。

壁(有澤樟太郎) 昌文君、漂、政、信、それぞれとの関係性がよくわかりました。家柄も育ちも良くてフェアなお坊ちゃまが信を認め仲間になっていくのが素敵だなと思いました。

成蟜(神里優希) 憎まれ役が巧いなぁと思いました。実はルックスと拗らせた感じがタイプでした。

左慈(早乙女友貴) 太刀筋が美しくてもはや芸術。ブレない体幹も素晴らしかったです。カッコよすぎて見られて良かったの一言に尽きます。

バジオウ(元木聖也) 初見がセンター下手寄りの2列目で前が空席だったのですが、目の前で壁を垂直に走っているのを見て絶句でした。どうしてあんなことができるの??
役柄から強面の方を想像していたので、カーテンコールで仮面を外された時には優しそうなお顔立ちでびっくりしました。

紫夏(朴 璐美) ほぼ1人芝居な場面がありましたが情景が浮かぶセリフ回しで引き込まれました。「恩恵はすべて次の者へ」は忘れられません。

昌文君(小西遼生) あまりのイケオジにびっくりでした。昌文君ってこんな素敵なキャラだったっけ?? 
小西さんのおじ様役は初めて見ました。 ちゃんと老け声だし貫禄もありましたし、政の前で跪いて不手際を詫びるところから心を掴まれました。槍投げもカッコよかったです。
今作私のイチオシキャラでした。

王騎(山口祐一郎) ほぼ全登場人物が体を張って演じていたところですべてをさらっていくのズルイです笑。
でもこの声、この存在感は納得でした。
そして次代の若者たちへ向けるまなざしに感動でした。
若い人たちに期待するっていいなぁ。この希望ある作品を体現しているキャラだなぁと思いました。

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