日傘さす人つくる人。
7月7日に宝塚大劇場にて花組公演「鴛鴦歌合戦」と「GRAND MIRAGE!」の初日を見てきました。
6月28日に星組公演「1789」を観劇した後、宝塚ホテルの部屋で何気なくCSを付けていたら、次回大劇場公演のPR番組で柚香光さんが着物の組紋のことなどを朗らかにお話しされていてなんだか楽しそうな作品だなぁと興味が湧いたのですが、「1789」にかまけて花組公演のチケットを手に入れていなかったことに気づいてがっかり。
その話を翌日ヅカ友さんにお話ししたら青天の霹靂のように初日に見に行けることになり(急展開)1週間後の再遠征と相成りました。
今回は諦めていたところからの奇跡のような出来事でしたがまず滅多に起きることではないし、こんな迂闊な人間にもチャンスがあるように観劇できなくなった人が譲りたい相手に譲渡できる公式のシステムがあるといいなぁと思います。
「鴛鴦歌合戦」は昔のオペレッタ映画が元ネタということだけは事前に知っていましたが、それ以外の知識も情報もなく、ただただ「柚香さんが公演について朗らかにお話ししている」という印象だけで観劇しました。
その光景が胸に刺さった訳が観劇してなんとなくですがわかった気がします。
ここ最近観劇した「ファクトリー・ガールズ」や「1789」とは真逆の世界観で、誰も世の中を変えようなんて思っていない!
彼らはユートピアみたいな世界に生きているから。
お米がなくてもヒロインは飢えないし可愛いおべべを着ているし、親のない子は優しい誰かに育んでもらえる。
まさに小柳ワールド。
取り巻きを大勢連れている大店のお嬢さんが恋のライバルで、父親は生活費を使い込んで晴れ着も買えないし、フェティシズム強めなお殿様には好かれてしまうし、なにより好きな礼三さんは態度をはっきりしてくれないし!ヒロインお春ちゃんの日常はなかなか困難。思わずがんばれ~~!と思ってしまう。
いやいや、父親が生活費を使い込んでしまってお米が買えないとか、その父親が奸計に嵌って大金を工面できなければ殿様の妾にされてしまうとか、現実的に考えたらかなり深刻な状況、経済的虐待だし性搾取未遂。がんばれ~とかヘラヘラ言ってる場合じゃないと思うんですけどそこはさらっとノンキな演出に。それこそがこの作品なのかな。
社会を変えなくてもヒロインを困らせている人たちが改心すればそれで解決。(登場人物は皆素直なので気づいたら改心も早い)
経済的な問題も思いもよらぬことで解決。(最初から匂わせているのでわかりやすい)
唯一変わらないのが礼三郎。
金持ちは嫌いだと言って決別を匂わせて彼女に決心させる。
礼三郎に対して自分が変わらないことを証明するために彼女は国家予算に匹敵するものをふいにする。
あれまぁ。(心の声)
この展開は往年の喜劇っぽくて懐かしいけれど。
自分が支配できない女性とは添えないってことか。
と今の世に見るとついそんな感想ももっちゃうかな。
そのお金で世の中に貢献して人々を幸せにすることもできるのだけど、社会的な責任を負うよりもささやかな幸せ、という人なんだよね礼三郎は。
たしかにお殿様の器ではないな。
ツッコミ出すといろいろあることはあるのだけど、見ているひとときは登場人物たちへの愛おしさに涙し、演じる人たちに対する愛しみが溢れて心が癒されました。
役として人として葛藤し魂を振り絞るような舞台に深く感動もしますが、このような演者の魅力を前面に出した「上質な学芸会」を楽しめるのも宝塚の懐の深さだなぁと思いながらほのぼのとした気持ちで帰路につきました。
結論「これはこれであり」。
(・・・がしかし、どのへんが「鴛鴦」で「歌合戦」だったのかな)
<CAST>
浅井礼三郎(柚香光) 涼しい顔をして自分の領域を守って生きている人。そこに皆が憧れて方々から縁談話が持ち込まれるのだと思うけど本人は嫌気がさしていそう。山寺で子どもたちに剣術の指南をしている姿がいちばん清々しくて彼らしくて目に麗しかったです。これを見られるのは山寺の尼さまたちだけなんですよね笑。
客席から登場して振り向いた時の懐から出る手が色っぽくて反則だと思いました。
お春(星風まどか) チェッが可愛い。お父さんがあんなだから生活の苦労を背負って強がって生きているところが愛おしい。時折こぼす少女らしい愚痴もまた可愛いのだけど、お父さんにしろ礼三さんにしろ、自分の世界に没頭するタイプだから一生生活の苦労は絶えなそう。この先も自分のほうを見てくれない礼三さんにやきもきしそうだし・・強くなるしか仕様がないなぁ。
料亭のお嬢さんおとみちゃんが傘を売ってというのに「うちは小売りはしてません!」って突っぱねるのが超絶可愛かったです。その後の2人のやりとりも。
峰沢丹波守(永久輝せあ) 「ぼくは若い殿様~♪」なんて歌いながら登場するお殿様ははじめて見ました笑。大好き。楽しそうに演じている永久輝さん大好き。はちゃめちゃな役なのに塩梅がわかっているのさすがだなぁ。途中からうっすらと悲哀を感じさせるところも巧いなと思いました。
殿様本人は軽い気持ちでもそれを聞いた家来はそれを叶えるために悪知恵を働かせ非道なこともやってしまいかねないので言動には気をつけましょうねと思いました。
秀千代(聖乃あすか) とにかく可愛い弟君。皆に愛される末っ子というかんじ。頭をふるふるふるとさせるところはたまらなく可愛かったです。ちょとした仕草でも客席の目が止まるのはさすがだなぁ。舞台にいると思わず目が行ってしまいます。
どうしてこんなにもやさしい兄おとうとが生まれるのでしょうか。(あの方のお子様だからかなぁ)
道具屋六兵衛(航琉ひびき) みんなに同じものを二つとない一品と売りつけて平気な顔でいるのが笑えました。自分が売りつけておいて買い取る時には偽物扱いで二束三文で平然としているのも。商いとはこんなものだから引っ掛かる方が悪いのだという前提なのですね。
この作品で卒業される航琉さんにたくさん場面があるのが愛を感じました。(宝塚のこういう学芸会っぽい愛情も嫌いじゃないです)
志村狂斎(和海しょう) ヒロインのすべての困りごとの原因をつくっているのはこのお父様だと思います。なのに憎めない役に作っているのは凄いなぁと思いました。
最後まで道具屋さんのこと微塵も疑っていないように演じる方が難しそう笑。
和海さんもこの公演で卒業されるのでラストがこの役でよかったなぁと思いました。(主役の柚香さんより舞台にいた記憶が・・)
麗姫(春妃うらら) ある意味お家騒動の黒幕??(可愛い黒幕だけど) 妄想劇場気味で愛するお殿様と倹しく市井で暮らしても良いって言うあたりは案外本気ですよね。
春妃さんも卒業されるこの公演で天然風味全開の可愛い奥方様の役でよかったなぁと思います。
遠山満右衛門(綺城ひか理) 娘の藤尾の恋心を知ってなんとかしてやりたい親ばか全開のお武家様で礼三郎の義理の叔父。
縁談の話の時に藤尾ちゃんを礼三さんにもっと近づけと唆すのが可笑しくて可愛くて好きでした。
藤尾(美羽愛) 親同士が決めた礼三郎の許嫁。礼三さんのことは憧れの君って感じなのかな。親に言われつづけて自分も礼三が好きという暗示にかかっているのかなとも思う素直で愛らしい武家のお嬢様。
恋煩いの病鉢巻で登場する場面は凛として新しい心境に立ったことを感じさせて印象的でした。(そんな娘に慌てふためくお父様も好き)
ラストでお春ちゃんとおとみちゃんとのわたしたちお友達になりましょうね♡は最高でした。
おとみ(星空美咲) いつも取り巻きを引き連れて登場するのですがそれだけで可笑しい。
お春ちゃんとの日傘を売る売らないの場面はもう1回(というかなんどでも)見たいくらい好きでした。
自分が恵まれていることを知らないで育ったとても素直なお嬢様キャラが愛おしかったです。
お春ちゃん藤尾さんとはしゃいでいる姿を見ると目尻が下がりまくりました。
天風院(美風舞良) 山寺の尼様。蓮京院様にお仕えしながらも礼三郎に見惚れていて夢見る夢子さんな面もあり可愛らしかったです。
蘇芳(紫門ゆりや) お家のことをとっても心配している家臣。お殿様があんなだから時には悪者にも回らなくちゃいけないし気苦労が多そう。愚痴もこぼしたくなりますよね。(わかります)
蓮京院(京三紗) 今回のMVPを差し上げたい。セリフに入る間が素晴らしくて聴き入ってしまいます。礼三郎さん良い男に育って見惚れちゃいますよね。(わかります)
「GRAND MRAGE!」は"ネオ・ロマンチック・レビュー”と銘打ったショーで、岡田先生のロマンチック・レビューとしては22作目だそうです。
新場面もどこか既視感があるかなというかんじです。
プロローグの紫陽花色のコスチュームが花組によく似合って素敵でした。
くすみパステル調が“ネオ”かなぁなんて思いました。
「彷徨える湖」の場面の星風まどかちゃんのダンスに釘付けでした。まどかちゃんのお腹がグランミラージュ!
名曲「SO IN LOVE」を永久輝さんが歌って、柚香さんまどかちゃんが踊るフィナーレのデュエットダンスは最高でした。
どんなに激しく踊ってもコスチュームがセクシーでも、上品さだけは絶対に崩れないのが宝塚らしくて素晴らしいなぁと思いました。
花組は舞台化粧が綺麗な組だなぁというのも再認識しました。
お芝居とともにショーも夢夢しくて明朗で「ザ・宝塚」を浴びたひとときでした。
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