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2024/03/20

ヒールで1マイル歩いただけでわかったと思わないで

3月16日に博多座にて山崎育三郎さん主演のミュージカル「Tootsie」を見てきました。
とてもクオリティの高い舞台でした。

女性とキャリアのリアル

悩みながら傷つきながらも目指すものに対して一生懸命で正直、自然体な感性のジュリー(愛希れいかさん)がいいなぁと思いました。
役者を目指すなかで心の支えだった恋人が子どもを欲しがり別れを選択したことを語るくだりはせつなかったです。キャリアを積む時期と出産適齢期が重なる問題、キャリアを積みたい女性にとって二者択一を迫られる現実、その選択は子どもを持つ持たないだけではなく様々な問題に派生し愛情関係の清算に及ぶこともある。
キラキラのミュージカルコメディ然とした作品ながら、こういうリアルな問題から目を背けていないのがこの作品に関わる人たちを信用できるなと思いました。

役者の性別と役の性別がちがってもいいよね?

マイケル/ドロシー(山崎育三郎さん)については、ふだん宝塚歌劇や歌舞伎を見ているので、役者の性別と役の性別がちがっても人気が出たならどんどんやればいいやん?って思いました。
(役柄にもよりますが新派の女形は女性の役者に混じっても素敵だと思います)
なので「女性から役を奪った」という理屈には頭が???となりました。じゃあ女性だったら誰が演じてもいいのかっていうと違うわけだし。
このあたりの感覚はアメリカのショービズの世界とはちがうのかなぁ。
ただ役者自身が自分の身体の性別を偽るのはダメだと思います。

女性として生きること

言えるのは、マイケルはしばしのあいだでも女性として生きたからこそ気づいたことがいろいろあったんだなということ。
男性として女役を演じたのだったらこの気づきはなかったと思います。
そこにこの作品の面白さがあるのだと思いました。
女装して女性として存在していると相手に寄り添った考え方ができたのに、素の男性にもどると相手に対する認知が歪むのが不思議だなぁと思いました。マイケルに限らずロン(エハラマサヒロさん)もマックス(おばたのお兄さん)もですが、男性でいると目の前の人の意思を無視して話をすすめるようになるのはどうしてだろうと思いました。3人とも男性像としては、ちょっとステレオタイプに描かれ過ぎなのかもしれませんが。

サンディの生きづらさ

サンディ(昆夏美さん)は混乱しているなぁと思います。
一度インプットしたら上書きができなくて人生が大変になってしまっているみたい。俳優になる夢も人生のパートナーも。とっくに「これじゃない」と判断を下す段階は過ぎていると思うのに。それができないことが彼女自身を生き難くさせているみたいだなぁ。
さいごにマイケル以外の男性の魅力に気づいたことで、世界の見え方が変わったかな? これまでの自分の人生を踏まえ肥やしにして、幸福だと思える人生を歩めるといいなぁと思いました。なぜか応援したくなるキャラでした。

こんなふうにショービズの世界のみならず、現代にリアルにある問題を考えさせられる脚本はいいなぁと思いました。
変にストレスを感じることもなくて、ストーリーに没入できたのが満足度の高さに直結した気がします。

CAST

マイケル・ドーシー/ドロシー・マイケルズ(山崎育三郎)
ジュリー・ニコルズ(愛希れいか)
サンディ・レスター(昆 夏美)
ジェフ・スレーター(金井勇太)
マックス・ヴァン・ホーン(おばたのお兄さん)
ロン・カーライル(エハラマサヒロ)
スタン・フィールズ(羽場裕一)
リタ・マーシャル(キムラ緑子)

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