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2024年11月の3件の記事

2024/11/30

すべての世代はその絶頂期において道を譲り若者を招き入れて良き日を分かち合わねばならない

11月11日に福岡サンパレスにてミュージカル「ニュージーズ」を見てきました。
この日は公演の大千穐楽で、ヒロインの星風まどかさんのお誕生日でした。

そもそもの観劇の動機は、星風まどかちゃんが地元に来る?!ならば見に行かねば!ということで、作品についてはほとんど知らないままでした。
幕が上がり、まず思ったのはみんな若い!ということ。よく動くなぁ、よく跳ぶなぁ!とまぁびっくり。
大勢で踊っている中にシスター姿の晴華みどりさんを見つけて嬉しかったです。相変わらず素敵だなぁと思いました。
劇場の女主人役に霧矢大夢さんも登場しておお~!っと思いました。懐深い役で謎の説得力がありました笑。

主演のジャック役の岩﨑大昇さん、声が良く出るなぁ。大きいなぁと思いました。
大千穐楽ということでカーテンコールのあとに登壇した演出の小池修一郎氏によると、この公演中にもさらに大きく育ったとのこと。役者としても体格の面でもってことかな。(肩幅50cmを超えたとか!)
磨けば光るポテンシャルと真ん中に立てる風格が備わっていて彼が出演する舞台をこれから私はきっといくつも見るようになるんだろうなぁと思いました。

そしてヒロインのキャサリン役の星風まどかさん、臆することなく舞台に立つ勇ましさも健在でうれしく思いました。
彼女がヒロインを演じた「アナスタシア」が大好きでしたし、宝塚在団中は本格的なミュージカルで歌い踊るまどかちゃんをもっと見たいと思っていたので、退団して間もなくこのように活躍している姿を見ることができてうれしいなぁと思いました。これからもっともっと舞台でのびのびと輝く姿を見られることを期待します。

加藤清史郎さん(ディヴィ役)も相変わらず巧いなぁと。これからどんな役者に成長していくのか楽しみだなぁと思いました。
クラッチ―役の横山賀三さんは初めて見る方でしたが、役柄も相まってかなり惹かれました。今後の出演作も見てみたいなぁと思います。

ニュージーズ(新聞少年たち)の存在はこの作品ではじめて知ったくらいに無知でしたが、ニューヨークも19世紀末の闇を抱えていたのだなぁと作品を見ながら思いました。工業化や人口流入による住宅不足や生活困窮者の増加、労働環境の問題。頼る者もなく自分の力で生きていくしかない子どもたちがたくさんいた時代なんだなぁ。

ニュージーズを窮地に追い込む敵として描かれるピューリッツァー(石川禅さん)ってピューリッツァー賞のピューリッツァーだよね? 勝手に高潔な人物のイメージを抱いていたけれど、なかなかのやり手実業家だったんだなぁとか。
同様にセオドア・ルーズベルト(増澤ノゾムさん)ってあの‟テディ”のルーズベルトだよね?と。大統領時代にはパナマ運河の件でピューリッツァーとやりあっていたよね? この作品ではまだ州知事なのでそれはこののちの話になるのかなぁとか。
歴史上の人物が物語の中で描かれる姿に興味を惹かれました。

セオドア・ルーズベルトがワシントンやジェファーソン、リンカーンと並んでアメリカ人に人気の理由がいまいちピンときていなかったのだけど、この作品に描かれる役どころで、なんとなくその理由がわかったような気がしました。
警察の汚職と戦ったり生活困窮者の問題に取り組んだ人として人々の記憶に残っているんだなぁ。

セオドア・ルーズベルトには格言が多いというか、民衆受けする格好の良いことを言う人だという印象があるので、劇中のセリフも「彼らしいなぁ」と思いました。
曰く「すべての世代はその絶頂期において道を譲り若者を招き入れて良き日を分かち合わねばならない
自分の理想の人物になるために努力を惜しまず生きた人らしいなと思います。そういうところが尊敬されるのかなと思います。
同時にやっぱりそういう生き方ができる環境に生まれた人だよねとも思います。
ディズニー作品ゆえなのか、いくつかの綺麗事すぎる部分に「ふふん」と思ってしまう自分がいました。

作品の上ではピューリッツァーが悪者でセオドア・ルーズベルトが正義の人だけれど、ピューリッツァーがセオドア・ルーズベルトのやり方を批判するところはやっぱりジャーナリストらしくてなるほどと思いました。

大千穐楽の挨拶でピューリッツァー役の石川禅さんが、セオドア・ルーズベルトのこの言葉(すべての世代はその絶頂期において道を譲り若者を招き入れて良き日を分かち合わねばならない)を引用して、岩崎さんをはじめとする若い出演者の皆さんの未来に期待しご自分たち先達のなすべき道をお話をされ、霧矢さんや増澤さんたちがそれに肯いている様子が印象深かったです。

そして自身を含め舞台上にいる若い共演者たちにご期待くださいとこれから精進していくことを舞台で宣言する岩﨑さんの言葉に、時代は変わっていっているのだなぁとしみじみと思いました。
これからを担う若い舞台人の活躍に私も期待したいと清々しくも感慨深い思いに浸り、本邦のミュージカルの未来に明るい兆しを感じながら劇場を後にしました。

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2024/11/15

運命ってやつにもう一度挑戦しようじゃないか

11月4日に鹿児島市の宝山ホールにて宙組全国ツアー公演「大海賊」と「Heat on Beat!」をマチソワしてきました。ツアーの大千秋楽でした。

素晴らしいパフォーマンス、それを余すところなく楽しもうとする客席の意気込み、圧巻の熱量が充満する空間を体験しました。
楽しくて幸せで忘れられない観劇になりました。

このところ宙組生に疎くなっていたのですが、お芝居ショーともに多くの出演者にセリフや見せ場のある作品で、それぞれの出演者がイキイキと演じている姿を見ることができて解像度が高まり、宙組を見る楽しみがまた増量しました。

ヒロインの義姉マリア役の湖々さくらさんの「与えられたものを受け取って」真摯に生きる年長の婦人としての威厳と慈愛をうかがわせる落ち着きのあるセリフ回しと歌。タカラヅカニュースのナビゲーターとしての姿には馴染みがあったものの、こんなお芝居をしてこんなふうに歌う人だったのだとのは初めて知ったように思います。

初見で主人公の母上の悪者に抵抗する際の身のこなしのキレにおっ?と思っていたらやはり水音志保さんで、それ以降ずっと美しい母上から目が離せずその美しい死に顔に見惚れている間に照明が落ちてはっと我に返る、というのを初見の福岡公演から繰り返していました。
ショーでもたくさん活躍されていて、なかでも「Fly me to the moon」を歌う芹香さんを天彩峰里さんと挟んでのおしゃれでキュートなダンスや「ジェラシー」での瑠風輝さんとのタンゴのペアは目が釘付けでした。

スキンヘッドにびっくりした輝ゆうさんの鉄砲玉は愛嬌たっぷりキャラでいつも仲間と面白いやりとりをして楽しませてくれました。
ちょっと斜に構えたネコザメ役の嵐之真さんは、サンタ・カタリーナ炎上の場面では前回の大劇場公演(ルグランエスカリエ)に引き続きソロで歌を聴かせてこれからも宙組の歌い手として注目したいなと思いました。
聞き耳役の真白悠希さんもルグランエスカリエに引き続きお芝居ショー共にやはり舞台センスで目を引きました。見ていてとても快感でした。

フレデリック役の泉堂成さんは、福岡サンパレスの感想にも書きましたが、歌唱力のある瑠風輝さん鷹翔千空さんとともにしっかりとハモっていてすごいなぁと思いました。これからの成長がますます楽しみです。
海賊たちをまとめる拝み屋役の鳳城のあんさん、最初は鳳城さんとは思わず上級生かなぁと思っていたほど荒くれ者の海賊たちをまとめる年長者の落ち着きと声の張りがあって、あとで鳳城さんと知ってびっくりしました。
まだ106期だとか。宙組に欠かせない存在に成長しそうでたのしみです。
ウミネコ役の渚ゆりさんも少年役が溌溂としてとても可愛くて愛でたい存在でした。どういう経緯で海賊に加わったのかも気になるし、海賊たちにも可愛がられているんだろうなと想像をめぐらせました。

コロナ禍では出演人数に制限が設けられていたり、昨年の出来事以降は公演ができない状況が続いたりでなかなか舞台に立つ機会を持てなかった彼女たちが、活き活きと役として舞台上で生きている姿を見られて嬉しく思いました。
見たかったものをやっと見ることができた。ブランクなど感じさせない素晴らしいパフォーマンスを。そのために重ねただろう努力や意志を尊く愛おしく思いました。

顔覚えがわるいので、一度にはたくさん覚えられないのですが、これからもっと下級生を覚えていきたいなと思えた公演でした。

同時期に公演されていたバウホール公演のほうは見ることができなかったのですが、この全国ツアー公演のメンバーにバウのメンバーも合わさった宙組の次回大劇場公演を心から楽しみにしています。
いまの宙組、これからの宙組が輝くことを願っています。

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2024/11/04

You are all I long for

10月29日と30日に福岡サンパレスホールにて、宙組全国ツアー公演「大海賊」「Heat on Beat!」を見てきました。

お芝居ショーともに満足度の高い観劇になりました。
20数年前に宝塚を見はじめて以来、宝塚歌劇とは音楽性は求めずにそれ以外を楽しむものだとずっと思っていました。(それで充分幸福感を得ていました)
ですが近年その認識を覆される経験を幾度かして、今回の観劇で決定的にもう以前の宝塚とはちがうのだと理解しました。

歌い上げる楽曲で魅了するタカラジェンヌはこれまでも数多いましたが、ジャズやロックに関しては期待してはいけないんだなと思いつづけて幾星霜。それが礼真琴さんの星組にガツンと衝撃をうけ、いままた芹香斗亜さんの宙組に全方向から袋叩きにあった気分です。とても心地よい袋叩きでした。

瑠風輝さんと鷹翔千空さんのツインヴォーカル的なロックのハモりに脳からお汁がでるような快感を得、芹香さんの「Fly me to the moon」に泣きそうになりました。
トップスターから4番手までがそれぞれに自分の個性で歌える宙組のこの陣容をずっと私は待ちわびていたんだなぁと。
礼さん星組の壮大な力技に対して芹香さん宙組の抜け感。どちらも好き。そう思える幸せに泣けちゃう感覚。
これも過去からの数多のタカラジェンヌたちの積み重ねの上にあるんだと思うと感無量でした。
「大海賊」も「Heat  on Beat!」も私にそれを感じさせる演目でした。

私が宝塚にハマったのはちょうど紫吹淳さんが退団を発表されていた頃で、スカイステージでは数か月にわたり紫吹さん出演の舞台が放送されていました。
その流れで繰り返し見ていたのが紫吹さん主演の「大海賊」と「ジャズマニア」(「Heat  on Beat!」とおなじ三木章雄先生作演出)で、本公演、新人公演、全国ツアー公演版とそれぞれを飽きることなく見つづけていました。(当時は映像も粗くてTVのアスペクト比もいまより狭く、見えないものをいっしょうけんめい見ようとしていたなぁと思いだします笑)

時は流れて10年以上録画も見返していなかったのですが、瑠風さんのエドガーに初演の湖月わたるさんの表情が、鷹翔さんのロックウェルに大和悠河さんの声や表情が思い起こされるという不思議な感覚を得て我ながら驚きました。
「Heat  on Beat!」のどの場面だったか、芹香さんが手を叩いた瞬間に「あっこれ瀬奈さんだ!」と思ったのも不思議な感覚でした。
過去のタカラジェンヌから脈々とつづいているものがあるのだなぁとしみじみと思いました。

瑠風さんエドガーとその部下、鷹翔さんのロックウェルと泉堂成さんのフレデリックのトリオで「焼き尽くせ」と歌うナンバーは、あれ?この曲ってこんなにハモる曲だったっけ??もしかしてナンバー変わった???と自分の記憶を疑ったりもしました。
初見の終演後に、初演も再演も記憶されているファン友さんに訊ねたところ、ナンバーは同じとのこと。
2回め以降の観劇では、瑠風さん鷹翔さん泉堂さんのハモりにゾクゾクしながら「進化していく宝塚」に感慨を覚えました。

初演の大空祐飛さんのフレデリックは誇り高い青年貴族の雰囲気で、女王陛下の命によりエドガーの下で(おそらく家格はエドガーよりも上)渋々海賊行為を行っているプライドの高さがうかがえて、そのストイックな軍服姿も相まってなんともいえない魔力がありました。
野卑な大和ロックウェルに揶揄されてクールな面(おもて)が僅かに嫌悪に歪むのが私の中の悪い悦びを刺激して大いに性癖に刺さったことを、泉堂さんの可愛いフレデリックを見て鮮明に思い出しました。
泉堂さんのフレデリックは鷹翔ロックウェルに感情を手玉にとられて内心で地団駄を踏んでいるのを隠せずにいるところが可愛いなと思いました。鷹翔ロックウェルもついつい彼をかまわずにいられない感じなのかなと想像しました。
初演とは学年が逆転しているのと演者の個性も相まって、関係性がちがって見えたのが面白かったです。

「過去、そして現在」を感じ、いまと未来の宝塚を愉しみに思う気持ちと、かつての宝塚への愛とを味わうことができて、そんなところにも満たされたのかなぁと思います。
長年の宝塚ファンの方々はこういう楽しみも味わっていらっしゃるのかなと思ったり。

「Heat on Beat!」はどのシーンもクオリティの高い最高のショーで、いまの宙組でこのショーが見られて本当に良かったなぁ心から思いました。
同時に、でもこれで全員じゃないんだなぁと、しかもこれがいまの芹香さん率いる宙組最後の洋物ショーなんだなぁと思うと残念な気持ちにもなりました。
(田渕先生、どうか素敵なフィナーレをよろしくよろしくお願いします)

千秋楽の鹿児島公演を見に行くことができるので、このお芝居とショーを悔いのないように堪能して来ようと思います。

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