You are all I long for
10月29日と30日に福岡サンパレスホールにて、宙組全国ツアー公演「大海賊」「Heat on Beat!」を見てきました。
お芝居ショーともに満足度の高い観劇になりました。
20数年前に宝塚を見はじめて以来、宝塚歌劇とは音楽性は求めずにそれ以外を楽しむものだとずっと思っていました。(それで充分幸福感を得ていました)
ですが近年その認識を覆される経験を幾度かして、今回の観劇で決定的にもう以前の宝塚とはちがうのだと理解しました。
歌い上げる楽曲で魅了するタカラジェンヌはこれまでも数多いましたが、ジャズやロックに関しては期待してはいけないんだなと思いつづけて幾星霜。それが礼真琴さんの星組にガツンと衝撃をうけ、いままた芹香斗亜さんの宙組に全方向から袋叩きにあった気分です。とても心地よい袋叩きでした。
瑠風輝さんと鷹翔千空さんのツインヴォーカル的なロックのハモりに脳からお汁がでるような快感を得、芹香さんの「Fly me to the moon」に泣きそうになりました。
トップスターから4番手までがそれぞれに自分の個性で歌える宙組のこの陣容をずっと私は待ちわびていたんだなぁと。
礼さん星組の壮大な力技に対して芹香さん宙組の抜け感。どちらも好き。そう思える幸せに泣けちゃう感覚。
これも過去からの数多のタカラジェンヌたちの積み重ねの上にあるんだと思うと感無量でした。
「大海賊」も「Heat on Beat!」も私にそれを感じさせる演目でした。
私が宝塚にハマったのはちょうど紫吹淳さんが退団を発表されていた頃で、スカイステージでは数か月にわたり紫吹さん出演の舞台が放送されていました。
その流れで繰り返し見ていたのが紫吹さん主演の「大海賊」と「ジャズマニア」(「Heat on Beat!」とおなじ三木章雄先生作演出)で、本公演、新人公演、全国ツアー公演版とそれぞれを飽きることなく見つづけていました。(当時は映像も粗くてTVのアスペクト比もいまより狭く、見えないものをいっしょうけんめい見ようとしていたなぁと思いだします笑)
時は流れて10年以上録画も見返していなかったのですが、瑠風さんのエドガーに初演の湖月わたるさんの表情が、鷹翔さんのロックウェルに大和悠河さんの声や表情が思い起こされるという不思議な感覚を得て我ながら驚きました。
「Heat on Beat!」のどの場面だったか、芹香さんが手を叩いた瞬間に「あっこれ瀬奈さんだ!」と思ったのも不思議な感覚でした。
過去のタカラジェンヌから脈々とつづいているものがあるのだなぁとしみじみと思いました。
瑠風さんエドガーとその部下、鷹翔さんのロックウェルと泉堂成さんのフレデリックのトリオで「焼き尽くせ」と歌うナンバーは、あれ?この曲ってこんなにハモる曲だったっけ??もしかしてナンバー変わった???と自分の記憶を疑ったりもしました。
初見の終演後に、初演も再演も記憶されているファン友さんに訊ねたところ、ナンバーは同じとのこと。
2回め以降の観劇では、瑠風さん鷹翔さん泉堂さんのハモりにゾクゾクしながら「進化していく宝塚」に感慨を覚えました。
初演の大空祐飛さんのフレデリックは誇り高い青年貴族の雰囲気で、女王陛下の命によりエドガーの下で(おそらく家格はエドガーよりも上)渋々海賊行為を行っているプライドの高さがうかがえて、そのストイックな軍服姿も相まってなんともいえない魔力がありました。
野卑な大和ロックウェルに揶揄されてクールな面(おもて)が僅かに嫌悪に歪むのが私の中の悪い悦びを刺激して大いに性癖に刺さったことを、泉堂さんの可愛いフレデリックを見て鮮明に思い出しました。
泉堂さんのフレデリックは鷹翔ロックウェルに感情を手玉にとられて内心で地団駄を踏んでいるのを隠せずにいるところが可愛いなと思いました。鷹翔ロックウェルもついつい彼をかまわずにいられない感じなのかなと想像しました。
初演とは学年が逆転しているのと演者の個性も相まって、関係性がちがって見えたのが面白かったです。
「過去、そして現在」を感じ、いまと未来の宝塚を愉しみに思う気持ちと、かつての宝塚への愛とを味わうことができて、そんなところにも満たされたのかなぁと思います。
長年の宝塚ファンの方々はこういう楽しみも味わっていらっしゃるのかなと思ったり。
「Heat on Beat!」はどのシーンもクオリティの高い最高のショーで、いまの宙組でこのショーが見られて本当に良かったなぁ心から思いました。
同時に、でもこれで全員じゃないんだなぁと、しかもこれがいまの芹香さん率いる宙組最後の洋物ショーなんだなぁと思うと残念な気持ちにもなりました。
(田渕先生、どうか素敵なフィナーレをよろしくよろしくお願いします)
千秋楽の鹿児島公演を見に行くことができるので、このお芝居とショーを悔いのないように堪能して来ようと思います。
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