しのぶることのよわりもぞする
4月8日9日、18日に東京宝塚劇場にて宙組公演「宝塚110年の恋のうた」「Razzle Dazzle」を見てきました。
1月終わりの宝塚大劇場以来2か月半ぶりの宙組観劇でした。8日と18日は1階席、9日の三井住友カード貸切公演は2階席から観劇しました。
1階席で観劇した日はお芝居最後の客席降りでお名前を覚えたての下級生と触れ合うことができて楽しかったです。(2ヶ月半でお名前がわかる生徒さんが増えました!)
「宝塚110年の恋のうた」を見て宙組生の和物化粧が大劇場公演より格段に美しくなったなぁと思いました。
2018年の日本物レヴュー「白鷺の城」の男役さんたちは白塗りというよりも日本物のお芝居に近いお化粧だったので、今回のようなしゃべ化粧の宙組男役さんたちを見るのが新鮮で。
さすがに星組花組で日本物レヴューの経験がある芹香斗亜さんは大劇場公演から格別の美しさでしたが、次期トップの桜木みなとさんのお化粧(とくに目元)が以前よりも目を瞠るほど綺麗になっていて嬉しかったです。
大劇場公演で芹香さんが歌った「恋の曼陀羅」「琴時雨」と七夕の場面の一連がとても心に沁みて(鷹翔千秋さん水音志保さんの「恋の笹舟」風色日向さん山吹ひばりさんの「星逢一夜」がとくに好きでした)、東京公演観劇を待ちきれずBlu-rayも購入しましたが、18日の観劇では亜音有星さんの「砌(龍の宮物語)」に心奪われてしまいました。歌い方がかわったかしらと思うほど歌もとても胸に響きましたし、シケから滴るような色気、赤い口紅も目尻のラインも魅惑的でうわっと思ってそれからずっと亜音さんから目が離せなくなっていました。(大劇場のときからこんなでしたっけ・・?!)
日本物のレヴューはことさらに激しい動きがあるわけではないのだけれど、それだけに演者から醸し出される一瞬のきらめきによって見える世界が変わることがあるのだなと身をもって経験した気がします。(長らく宙組ファンなため日本物レヴューをリピート観劇する経験そのものがすくなくて気づかないでいままで過ごしてしまったかも)
宙組は組の立ち上げ前の香港公演以来20年以上日本物のレヴューの上演がなかったので、今回のショーは組ファンの私にとっても貴重な経験でした。
お化粧も含めて宝塚の日本物レヴューの華やかさや艶はほかではなかなか見られないものだと思いますので、この先もずっとつづいてほしいなぁと思います。
遠征中の4月8日の観劇後に演出家の谷正純先生の訃報を知ることとなり、芹香さんたち93期は谷先生の日本物レヴュー「さくら」で初舞台を踏んだのだったなぁと、その初舞台公演の後もののお芝居はこれまたトップスターの安蘭けいさん演じる主人公が騙し騙されるハッピーエンドのミュージカルコメディだったなぁと思ったり。
奇しくも初舞台公演とおなじく日本物レヴューと後もののハッピーエンドのミュージカルコメディで卒業していく芹香さんを思ってしみじみとあはれを感じたりしました。
去りゆく人びとが残してゆくものがこれから先の宝塚でも引き継がれていきますようにと願いました。
そしてあらためて芹香さんの退団公演が「Razzle Dazzle」で良かったなぁと思いました。
いまでも思い出すと涙ぐんでしまいそうになる「金色の砂漠」のジャー。自分が与えられる幸福と自分では与えられない幸福の狭間で平穏と秩序と愛のために彼が選んだ未来。
宙組デビューの「天は赤い河のほとり」でいまめくエジプトの将軍ラムセスの「ふたり並んでミイラになるまで」に心臓を射抜かれたこと。
2作目の「異人たちのルネサンス」以降はちょっとネジを巻きすぎたような役が多かったなぁという印象ですがそれもよき思い出。
そんないろいろが思い出されてこれが見納めなんだなぁと切なくもなりつつ、このとぼけた感じのレイモンドが愛おしくて、映画を愛する仲間たちに触発されて自分の未来を自分で決めていく彼を心で応援しながら、彼を応援するエキストラの仲間や彼と関わる人びとを愛しく思いながら、その思いを卒業していく芹香さんといま一緒に舞台に立っている宙組生に重ねて彼女たちのここからの未来が明るいものでありますようにと願っていました。
2階席に座った日はオペラグラスでラズルダズルのお客たちを見ると、それぞれがクラブの客として背景を持って舞台で小芝居をしている姿に目が離せなくなりました。上手側テーブルのレイモンド(芹香さん)たちを見なければと思うのに、ついついあちらのテーブルこちらのテーブル、階段の上やバーカウンターで談笑している人たちを隅々まで見てしまって・・もう目が足りない!となってしまいました。
映画撮影のシーンでもそうなのですが、舞台の上のひとりひとりが役として活き活きと演じている姿がストーリーの内容とも重なってなんだかとても幸せな気持ちでした。
お芝居終わりの客席降りでは、満面の笑みで両手タッチしてくれた生徒さんが「110年の恋のうた」の歌うま神社でソロで歌っていた風翔夕さんだ!とわかり、そのお隣は奈央麗斗さんだ!とわかる自分が嬉しかったです。
じつはここ数年でお顔がわかる生徒さんがたくさん卒業してしまい、もともと顔覚えが悪い私は一時大半の生徒さんがわからなくなってしまっていたのですが、またすこしずつお顔がわかるようになってきたことが嬉しくて。
別の日は背後で踊っていた風羽咲季さんに対して手を出そうとするもタイミングを逸しておたおたしていたにもかかわらず笑顔で応じてくださり、そのあまりのチャーミングさに頭のなかにお花が盛大に飛びまくりました。
「宝塚110年の恋のうた」の神がき(歌うま神社)の日替わりナンバーもいまの宙組生を知る貴重な機会となりました。
8日と9日は風翔夕さんが「My Life Your Life」(JIN-仁-)を、18日は天彩峰里さんと志凪咲杜さんが「石を割って咲く桜」(壬生義士伝)を歌っていました。
風翔夕さんはこの場面ではじめて認識したのですが、前述のようにその後の「Razzle Dazzle」の客席降りの際に、さっき歌うま神社で歌っていた生徒さんだと気づきお名前と顔を覚えることができました。
志凪咲杜さんは「Le Grand Escalier」のデュエットダンスで研3にしてカゲソロを歌っていた生徒さんとしてお名前だけは知っていたのですが、姿を認識したのははじめてでした。
天彩峰里さんはその次の祇園の場面でセンターでチョンパで現れるのを知っていたので、歌うま神社に登場すること自体に驚きました。その日の祇園の場面は天彩さんはセンターではなく下手前方に立ちチョンパになったので、なるほどこうするのかーと思いました。
芹香さんトップ時代の作品はたくさんの宙組生にスポットが当たるようになっていた気がします。おかげでまたあらたに生徒さんたちを知ることができました。日本物の経験とともにこれも芹香さんが宙組のためにのこしてくれたものだと思っています。
タカラジェンヌは役を演じる前にタカラジェンヌという虚構を演じているわけですが、その虚構を生きている時間が幸せと思える時間でありますように。
もうじき宝塚を卒業する芹香さん、水音志保さん、葵祐稀さんにも、宙組生の全員にもそう願っています。
そして卒業される3人のこれからに幸多からんことを。
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