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2025/05/12

近頃都に流行るもの

5月6日に宝塚大劇場にて星組公演「阿修羅城の瞳」「エスペラント!」を見てきました。

超絶人気のトップスター礼真琴さんの退団公演であり、また劇団☆新感線の人気作品「阿修羅城の瞳」の宝塚歌劇化ということも重なって、演目発表当時からチケット入手困難な公演となることはわかっていました。
わかってはいましたが、実際想像以上にとんでもないチケ難公演で、取次ぎも抽選もことごとく落選し初日が明けても1枚もチケットが確保できていない状態でした。そんななかGW中にチケトレでどうにか1枚入手できたので、GW最終日の人混みをかき分けて新幹線で日帰り観劇してきました。
座った席はほどよく見やすい列の1階センターで、もうこれっきり生で見ることは適わないかもしれないと思い、悔いが残らないようにと気を張って礼さんの姿を追いました。

「阿修羅城の瞳」は、3時間の新感線版を1時間半にまとめているので、なるほどここを端折るのかーそうだよねーここは削るよねーと納得しつつも、私はその端折られた部分が好きだったんだなーと思いました。
あえてお間抜けなカッコ悪いところを見せて油断させておいてのカッコ良さとか、劇団☆新感線の登場人物あるあるの振り幅を愉しんでいたんだなーと。
星組版はストーリー上重要ではなさそうな部分(お遊び的なところや芝居の元ネタを知っていると面白いところなど)を削って綺麗に収められているのだけど物足りなくもあったのは、その削った部分を私は愉しんで見ていたからかもしれないなと思いました。
とは言ってもその手のカッコ悪さとか笑いを私は宝塚に求めてはいないしなーとも思いました。

じっさいの出門とは真逆なのだけども「四谷怪談」の伊右衛門を見たくなるような、女性を口説かせたら凄そうと思える幸四郎(染五郎)さんの出門のこなれ感も新感線版の魅力でした。
が、礼さんにそれを求めるかというとそれも違って。じゃあ見たい礼さんって?などと自問したりも。

礼真琴さんの出門はひたすらカッコ良かったです。つばきに軽口を叩きながらも内に思いがあるところが見えたりもして。新感線版の純情(出門曰く純粋な欲望)とは異なる純情だなぁと。
初見だとどうしても記憶している新感線版との擦り合わせをしてしまって(これは私のさがゆえ)、礼さんならではの良さをしかと感じ取れなかった気がしてなりません(やはり1回では足りない! 2回目からなのです楽しくなってくるのは・・いつも・・)。

暁千星さんのつばきは、思っていた以上に色っぽくて驚きでした。
しなやかに踊って跳躍して拗ねている表情がとても可愛い・・と思っていた月組時代の印象から、拗らせた昏い役、本心を読ませないメタルフレームのメガネハンサムの役とだんだん大人っぽい役が似合ってきてドキドキしていましたが、まさかの女役でしかも色香を含んで礼さんにしな垂れたり、デュエットダンスのように大階段で礼さんと対峙してせめぎ合う役を演じることになるとは・・です。
新感線版の性的なものを感じさせるニュアンスは極力封印してギリギリ宝塚らしさを保っているところも難易度高いのではないかと思いました。

劇団☆新感線から男のロマンと幻想とノリを削いだらこうなるんだな。
というのとそこに如何にして演者が宝塚らしい潔さと美を加えるかが見ものの作品かなぁと思いました。
それを味わうのためには1回の観劇では全然足りないってことも切実に思いました。(というももの現時点でムラは0・東京公演の友の会3次で当選したチケット1枚しか確保できていない哀しみ・・)

新感線版でも好きだった桜姫ですが、詩ちづるさんの桜姫も可愛くてぶっ飛び方は新感線版には及びませんが、そこも宝塚にしてはかなりのぶっ飛び方で好きでした。
私が宝塚で見たいものを頑張っていたのが桜姫かなぁと思いました。(華やかで明るい照明をいっぱい浴びている感じ)
それから鬼が宝塚ならではのコンビネーションで見ものだなぁと思いました。(ぱっと見で誰だかわかったのは鳳花るりなさんだけだったのですが・・)

美稀千種さんの鶴屋南北、ひろ香祐さんの安倍晴明はエピソードや設定がほとんど削られてしまって、仕方がないとはいえ残念に思いました。(好きだったんですそこが・・)
いろいろ削られた結果、極美慎さん演じる邪空の動機や所業がぼやけてしまってスケールが小さくなったのも残念でした。宝塚では描きにくいところだったのでしょうけど、髪型と立ち廻り以外印象が薄くて。邪空のスケールが小さくなった分、毘沙門(天飛華音さん)と大黒(稀惺かずとさん)も割を食ってしまってもったいないなぁという印象でした。
雷王(碧海さりおさん)鳴王(夕陽真輝さん)震王(大希颯さん)の鬼御門三界衆はコミカルで可愛らしくてとても印象に残っています。

美惨、阿餓羅、吽餓羅を演じた小桜ほのかさん、白妙なつさん、紫りらさんは娘役としての高いスキルを備えた方々だけにもったいないというか惜しいというか。ビジュアルや衣装を宝塚化してはダメだったのかなぁと思ってしまいました。
鬼のビジュアルにしてもですが、やはり宝塚には見目好さを求めたくなります。
渡り巫女に華やかな場面をつくるとか、せっかく宝塚で見るのだから原作になくても絢爛豪華な場面はほしいなぁと。
そういうことにチケット代を払いたいなぁと思いました。

1回きりの観劇だったので深い部分まで味わうには至らず、自分勝手に摂取しようと思っていたものとの齟齬を解消しきれないままに終わっちゃったかなと思います。
もし2回めがあれば、ここからどう印象が変わったかを書き残してみたいなぁと。切に思っています。(新人公演は見られそうなのでそこで何か自分の中で見えるものが変わるかも?)

「エスペラント!」は好みのタイプのショーでした。
大勢で色とりどりのラテンっぽいダンスの場面、暁さん中心のバレエ的な場面、黒燕尾とドレス姿のボールルームダンスのような正統派なレビューの場面は音楽も好みで心が華やぎました。
海の場面はストーリーがあるんだろうなぁとは思いましたが、そこはあまり考えなくても華やかで楽しめました。
「阿修羅城~」で出ずっぱりだったせいか、退団公演のショーにしては礼さん出ずっぱりという印象がなかったのは意外だったなと思います。これまで見てきたショーがとにかく礼さんと相手役の舞空瞳さんが踊りまくっていた印象があるからでしょうか。
礼さんの黒燕尾のソロダンスの場面はもっと見ていたかったです。もっとと思っているうちに終わってしまうのがとても寂しかったです。
このショーもリピートすればするほど見どころがありそうで、1回じゃ足りないなぁと切に思いました。

お芝居ショーともに「もっと見たい!」というのがいちばんの感想で切実な願いかもしれません。

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