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2025年7月の4件の記事

2025/07/27

つかの間のやすらぎ

7月20日に宝塚大劇場にて「悪魔城ドラキュラ」「愛, Love Revue!」を見てきました。
千秋楽にして初見でした。

「悪魔城ドラキュラ」は人気ゲームの宝塚歌劇化ということでしたが、プレイしたことがないゲームでしたし、正直なところ初見ではどのように愉しめばよいのかいまいちわからないまま終わってしまいました。

ビジュアルは最高でした。タカラジェンヌと宝塚スタッフのコスチューム&メイクの作り込みは想像の遥か上を突き抜けていくなぁと。
装飾過多なゴシック調のコスチュームが映えるタカラジェンヌの等身ときたら。
二次元から起こしたデコラティブなコスチュームを三次元の空気や重力をも味方につけて華麗に翻して踊る、立ち回る、舞台センターの主人公アルカード(永久輝せあさん)やリヒター(聖乃あすかさん)はもちろん、舞台後方の高みから厳然と見下ろすドラキュラさま(輝月ゆうまさん)も舞台端でポージングしているサキュバス(侑輝大弥さん)やマグヌス(希波らいとさん)はじめ、誰もが3Dのどこからみても隙なく美しい。これこそが宝塚だなぁと惚れ惚れしました。
そしてそれに加えてマリア役の星空美咲さんの歌声も。
近年のタカラジェンヌの実力レベルの向上には驚くばかりです。

世界観もドラマティックで宝塚に合っていて、演じている人たちもそれぞれのキャラクターとしての行動原理を理解してその思いを胸に舞台でその生を生きているのも伝わりました。
が、如何せんストーリーの構成が甘いというのかエピソードが弱いというのか、ゲームの1シーンやセリフの再現度は高いのだろうけれども人物の行動やそこにある葛藤がプロットをなぞっただけになっていて勿体ないなぁと思いました。
舞台セットもバウ公演のようで大劇場公演に期待するダイナミズムが希薄で、ほぼ演者頼りの印象でした。
宝塚歌劇、宝塚大劇場というリソースが活かしきれていないのが勿体なく思えて歯痒く感じました。
原作ゲームのファンで宝塚歌劇を初めてご覧になる方々に対して「宝塚、こんなもんじゃないっす」と弁明したくなるような、ただの宝塚ファンでしかないくせに謎の焦燥感が湧いてしまって、本当だったらもっと作品に没入していただろうものができなかったのかもしれません。私自身の煩悩ゆえの敗北かな。
そんな煩悩をひととおり通過して2度目からが愉しかったのだろうなと思いますが、1回しか観劇を予定していなくて残念です。
(東京公演の千秋楽ライブは楽しく鑑賞できるかな)

「愛, Love Revue!」は岡田敬二先生のロマンチック・レビューの23作目ということで、プロローグの宝塚の名曲「I LOVE REVUE」からはじまって、「初恋」「ラモーナ幻想」「愛の誘惑」「熱愛のボレロ」など時代を超えた懐かしい場面の連続で、その古めかしさをいまの生徒さんの感覚でパフォーマンスされるのが逆に新鮮に感じられました。
「愛の誘惑」の楽園の蛇さんの聖乃あすかさんの妖しい美しさに撃ち抜かれ、「熱愛のボレロ」の永久輝さんの三白眼に魅入られました。ラモーナの星空さんの歌声に安堵を感じるのも新鮮でした。

この3か月間主に星組「阿修羅城の瞳」に浸っていたこともあって、あらためて宝塚歌劇の振り幅の大きさを噛みしめています。
そしてどんなジャンルであってもビジュアル(演者自身も舞台美術も)が抜きんでていること、それこそが宝塚歌劇の真骨頂だなぁとも思います。
その中でも花組のビジュアルはハイレベルだと思いました。
この美しい花組に星組から極美慎さんが異動してくるんだなぁ。さらに目が幸せな組になっちゃうなぁと思うとこれからの花組公演も見逃せません。高齢の家族のこともあり遠征を減らす方向で考えているのだけどなぁ。困りました。(願わくはその如月の望月の頃)

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2025/07/23

糸の芯まで真赤に染まる

7月2日と17日に東京宝塚劇場にて「阿修羅城の瞳」「エスペラント!」を見てきました。これで私の「阿修羅城の瞳」生観劇は最後になるだろうと思います。

最高のエンターテインメントでした。
どこまでゆくのかどこまで極めるのか礼真琴!と。セリフ回しも間合いも殺陣も歌も、見得を切るときのつま先から頭のてっぺんまでも、どこをとっても胸がすく爽快感。満足と納得のリフレイン。このレベルのタカラジェンヌに私はもう二度と出遭えないかもしれないなどと思うなど。奇跡を見ているような心地がしました。

星組生の集中力も凄まじいなと思いました。どこにも隙がない。
宝塚大劇場公演からいちばん変化を感じたのが邪空(極美慎さん)でした。出門(礼真琴さん)への執着が尋常ではない大きさで彼の内側で渦を巻いているのが感じられました。
銀橋でのソロナンバーはオケとも相俟ってとってもロックテイスト増し増しでよかったです。
おなじく宝塚大劇場公演で存在意義がいまいち薄いと感じた毘沙門(天飛華音さん)と大黒(稀惺かずとさん)の存在感が見違えるほどに増していたのにも驚きました。2人ともセリフのタイミングがすごく良くてコミカルな表現(アドリブ)も場面に添っていて楽しかったし、鬼に身体を乗っ取られているときの打って変わった表情、立ち姿も目を惹きました。

宝塚大劇場公演の初見でつばき役の暁千星さんに感じた躊躇のようなものも東京公演ではまったく消えていて、愛嬌と妖艶さと凄味がその身から溢れ出る暁さんゆえの紛う方なきつばきが存在していました。
礼さんの出門からつばきへの愛、つばきから出門への愛が宝塚大劇場公演で見た時よりもいっそう深まっていて、この愛があるからこそのこのドラマなんだと納得しかありませんでした。

「阿修羅城の瞳」を見てつくづく思うのは、星組の娘役の層の厚さでした。
前作までは星組のザ・プリンセスな舞空瞳さんがいて、彼女に心奪われていたこともあって気づいていなかった自分の迂闊さにデコピンしたい気持ち。星組には素晴らしい娘役さんがこんなにいたのだなと思い知った心地でした。
詩ちづるさん演ずる桜姫は宝塚大劇場よりもさらにパワーアップしていてもう見ていて楽しくて仕方がありませんでした。
17日は賀茂白丞(朝水りょうさん)南雀(蒼舞咲歩さん)が揃って「さしすせそ」「たちつてと」を「しゃししゅしぇしょ」「ちゃちちゅちぇちょ」に拗音化して話すのが可笑しくて(古語の発音っぽくもあり)、それがまさかの江戸っ子の桜姫や出門にも移ったりもして笑ってしまいました。

少女役の茉莉那ふみさんの巧さには目を瞠りました。芝居も歌も、出門に斬られる勢いで弧を描いて駒のように回転し倒れるところは吸い込まれるように見惚れていました。
笑死役の瑠璃花夏さんも逢魔が時に手鞠を抱えて佇む姿、無垢な声音で禍々しい童歌を歌うところ、無垢な声色が俄かに魔を帯びるところ、どれをとっても独特の雰囲気を纏っていて思わず見入ってしまいました。

この公演を最後に専科に異動となる美惨役の小桜ほのかさん、この公演で退団する阿餓羅役の白妙なつさん、吽餓羅役の紫りらさんの巧さ、娘役としては珍しく武器をもって戦う場面も見事に演じて頼もしくも感じるにつけ彼女たちが星組からいなくなるのは痛手だなぁと思います。
でも新人公演で鳳花るりなさん、瞳きらりさん、詩花すずさんがこの難しい3役をしっかりと勤めていたのを見て、星娘の気概、技術はしっかり受け継がれているのだなぁという感慨も覚えました。
そんな彼女たちが本公演では鬼や桜姫の侍女たちの中にいて、あの巧さでもいまの星組ではそうなるのだなぁという層の厚さを痛感しました。新人公演で桜姫役だった乙華菜乃さんもおなじくです。

ショー「エスペラント!」はやはり選曲が好きだなぁと思いました。
「ニカの夢」~「チュニジアの夜」~「The Shadow of Your Smile」のナンバーと男役のカッコ良さがたまらなく好きでした。
黒燕尾の男役と夜会服の娘役の「Stardust」~「Smile」もハッピーで大好物でした。
スタンダードナンバーをクールに歌い踊る近年のタカラジェンヌに惚れ惚れしています。
今回もハイレベルのパフォーマンスを軽々とこなす星組生に圧倒されていたらあっという間に終わってしまうショーでした。

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2025/07/08

甘くて弱くて美しい

7月1日に東急シアターオーブにて宝塚歌劇宙組公演「ZORRO」を見てきました。
宙組新トップスター桜木みなとさんのプレお披露目公演でした。
観劇していちばん印象に残ったことは、こんなにトップスターに遠慮がない宙組生をはじめて見た!でした。

宙組のトップスターといえば1998年組発足時の初代トップスター姿月あさとさんからはじまって先代の芹香斗亜さんまで全員が、『すでに他組で活躍していたスターが異動した宙組でトップに就任した』パターンでした。
桜木さんが10代目にして初の宙組配属宙組育ちのトップスターな訳ですが、ともに新人公演のお稽古をしてきた、あるいは番手スターとなるまでの成長の過程を身近で見てきた人がトップスターに就任すると組子はこんなかんじになるのかぁと思いました。

さて「ZORRO THE MUSICAL」についてですが、宙組生によるフラメンコのパフォーマンスが素晴らしい作品でしたが、物語にはいまいち入り込めませんでした。
声でわかりそうなものなのに察しの悪いヒロインだな。マスクのオンオフでの二面性を表現しているのだろうけど、一方は情けない腰巾着、もう片方はマスクで顔がわからないじゃ主人公にときめかないなぁ。などなど。
なぜそうなるの?という疑問が解決されないままに物語がすすむので釈然とせず、登場人物の感情にリアリティを感じることができませんでした。
いちばんリアリティを感じたのは、父親に見捨てられた敵役のラモン(瑠風輝さん)の心情だったかなぁ。

主役のディエゴに関しては、ロマの仲間と行動を共にしその人生観に触れて息苦しさから解放されたように見えるのに、恋人にはロマのイネスは選ばないんだなぁ。疑いもなく自分とおなじ支配階級の娘ルイサを選ぶんだなぁ。とそういうところもわだかまりを感じて推せない主人公でした。腰巾着をしている姿も必要以上にカッコ悪いのもあって。
そんなディエゴをかばって命を落とすイネスへのやるせなさばかりが募りました。心弱っている人をほうっておけない、ついついケアする立場にまわってしまうイネスに胸が痛くなったりしながらも登場人物のなかでいちばん好きでした。
自分をかばってイネスが亡くなったばかりなのに即ルイサと結ばれる展開もディエゴに惹かれなかった理由かもしれません。

好きだったところは、泉堂成さんのホアキンが登場するたびにいつも謎にかっこよかったこと。少年ディエゴの美星帆那さんと少年ラモンの梨恋あやめさんが可愛かったこと。幕開きの小春乃さよさんと嵐之真さんの歌。物乞いのときの不思議な歌(前回大劇場公演でお顔を覚えた風翔夕さんも歌ってた!)。フラメンコとジプシー・キングスを大勢で歌い踊るところ。1人ひとりが輝いていたところ。です。

パフォーマンスには満足で次回の大劇場公演が楽しみだなぁと思いました。
願わくは登場人物たち、そして演じている人たちにときめきが感じられる作品でありますようにと思います。

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2025/07/07

おびんちゃん

6月24日に六月博多座大歌舞伎(昼の部)を見てきました。

5月は星組観劇に関西まで数往復、地元ですが月組全国ツアー公演にも通うので、七之助さんは気になるけれど6月の観劇はお休みしようと決めて博多座会への申し込みはしていませんでした。
・・が、6月に入ってついついオンラインチケットを覗いてしまい、仕事がない日に1階特Bのとても見やすい席が空いているのを発見して思わずポチり。当初の決意はどこへやらで博多座へ行ってまいりました。

「双蝶々曲輪日記 引窓」「お祭り」「福叶神恋噺」ともに心にじんわりと効いてくる演目で見に来てよかったなと思いました。

「双蝶々曲輪日記 引窓」ではお幸とお早を演じられた中村梅花さんと中村鶴松さんの所作に見入っていました。どの所作にも意味が見て取れてしかも自然で凄いなぁと。
嫁のお早が「笑止」と笑うのを、姑のお幸が廓言葉を使ってはおかしいとたしなめる時の言い方がちっとも嫌味がなくて愛情深く聞こえるのもすごいなぁと思いました。
劇中お早は二度ほど「笑止」と笑ってその都度お幸は窘めるのだけど、そのやりとりが微笑ましくて素敵でした。
きっとこの日だけではなくて、お早とお幸は日々こんなやりとりをしているのだろうなぁと。うっかり出てしまうお早の廓言葉もお幸に気をゆるしてのことだろうなぁとも思いました。
色里の出身であることを絶対に表に出すまいというような強情ではなくて、朗らかに日々の仕事に勤しみ無邪気に笑うお早と、だめなことはきちんとたしなめながらお早のことを受け入れているお幸の関係が見ていて涼やかでした。
互いにリスペクトがあり思いやりと素直な心で居心地の良い家庭を営む2人の女性。
そんな幸せな情景を見ていたところに来訪者が。

訪れたのは5つで里子に出したお幸の息子でいまは濡髪という四股名で相撲取りとなっている長五郎(福之助さん)。
家父長制を生きるお幸の人生がそこにはありました。

いまより寿命が短く夫婦が1人の相手と生涯を連れ添うことはなかなか難しい時代。
出産後に病いに臥し子を遺して亡くなる女性も多く、そうして連れ合いを亡くした男性は家政の切り盛り、子の養育、自分も含めた家族のケアのために後妻を娶るのが義務のようなものだったかと。
継子や継母はめづらしいことではなかったでしょう。

お幸と先妻の子である与兵衛(橋之助さん)もまさにそういう関係で、お幸の愛情をうけて与兵衛は育ったのだろうなぁと思いました。
しかしお幸は後妻に入る前に5つまで育てた実の子を里子に出したと語っていました。連れ合いを亡くした女性が1人で子どもを育てる選択肢はほぼなかったのでしょう。
里子に出した手前、里親に遠慮して会いに行くこともできず、ようやく母子が会えたのは長五郎が成人して里親も亡くなった後、所用で出かけた大坂で偶然に。うれしさはいかばかりだっただろうと思うけれど、話をしただけで別れて戻って来たと。

その長五郎が自分を訪ねてきた。人を殺めて追われる身となって。お幸の気持ちを思うとせつなかったです。
長五郎を召し捕る役目を仰せつかったのが継子の与兵衛。代々郷代官を勤めてきた家に生まれて、本日ようやく晴れて郷代官に取り立てられたばかり。その初仕事が長五郎の召し捕りという。

お幸を思って夫を止めたいお早。
すべてを察してお幸のために初手柄を捨てて長五郎を逃がそうとする与兵衛。
与兵衛の気持ちに心打たれて自ら縄に掛かろうとする長五郎。
実の子と継子への思いに揺れるお幸。

実の子の長五郎に婚家と継子への義理を説かれて、よう言うてくれたと覚悟を決めて実子を縄に掛けようとするお幸。
母の情よりも婚家への義理を重んじなくてはいけない人生なのだなぁと思いました。
このお幸の気持ち、いまの世の若い人たちにもつたわるかしらと思いながら。
歌舞伎だからこそ味わえる世界観に浸れて良かったです。

「お祭り」は、ほろ酔い気分の鳶のお頭(勘九郎さん)が陽気にいなせに祭りに集う人びとと絡んでいく舞踊でした。
勘九郎さんや鶴松さんたちの身体能力にひたすら目を瞠りました。凄すぎる。あのバランスでどうしてあんなこと・・などと。
ひょっとこのお面で男っぽく踊っていた勘九郎さんが、おかめのお面をかぶったとたんに柔和な女性の所作で踊りだしたのに驚きました。
楽しく見ながら歌舞伎すごいなぁと思いました。

「福叶神恋噺」でも貧乏神のおびんちゃん役の七之助さんの所作に見入っていました。女方の所作ってなぜにこんなに美しくて魅了されるのだろうと思いながら。筋力かな。姉さん被りではたきをかけるだけでも素敵。流れるような所作の一連とスピード感も。ちょっとかっこいい。
掃除も洗濯も縫い物もどの所作もいつまでも見ていたいし、時折流れるご近所の三味線の音に合わせて思わず踊ってしまうところも可愛いし。おびんちゃん大好きだぁと心で何回も叫んでいました。
長屋のおかみさんたちに可愛がられるおびんちゃんの場面も好きだったなぁ。長屋の大家さんもだけどみんなとっても人が好い。
それに甘えっぱなしの辰五郎は感心しませんが。

おびんちゃんも貧乏神だけど本心は人をしあわせにしたくてしょうがないんだなと思いました。貧乏神には向かないよね、おびんちゃん。
そんなおびんちゃんを心配する貧乏神仲間?のすかんぴん(勘九郎さん)や貧乏神元締めのからっけつ(猿弥さん)もやさしいな。
富くじを当てちゃうなんてやっぱりおびんちゃんはそんじょそこらの貧乏神とはちょっとちがうな。(富くじは辰五郎のものだけど、おびんちゃんに憑かれたから当たったのではないかな)
福の神になったからには辰五郎など捨てておしまいなさいと思いました。
(辰五郎の改心がいまいち疑わしく思える私なのでした)
おびんちゃんと長屋のみんなが朗らかに笑って暮らせますように。

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