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2025年10月の2件の記事

2025/10/27

これでもわりと幸せなんで

9月30日と10月5日に宝塚大劇場にて宙組公演「PRINCE OF LEGEND」「BAYSIDE STAR」を見てきました。
(のろのろ感想を書いている間に10月21日の公演も見てきました)
宙組10代目トップスター桜木みなとさんの大劇場お披露目公演でした。

「PRINCE OF LEGEND」は、なんて贅沢なんだろうと思いました。
パフォーマーのスキルはもちろん、衣装や音楽や大道具小道具、照明etc.宝塚歌劇のリソースを湯水の如く使い、手加減せずに取り組んでいるから成立している作品だと思いました。このクオリティだからこそ面白く見られるのだと思います。

桜木さんが演じるのは財閥の御曹司の朱雀奏という役ですが、このキャラを受け容れられるのは桜木さんの演技力があってこそだと思います。
桜木さんが笑える愛されキャラに演じているからありえない設定に対しても心でツッコミを入れつつ楽しく見られましたが、ちょっと冷静になると果音(春乃さくらさん)は本当にこの人でいいのか?と(前日に見たばかりの「ダンサ・セレナータ」のイサアク的に)思いました。
ピュアすぎて資産もあっという間に溶かしそうだけど。なにより母親の洗脳から解けないままではこの先いろいろと齟齬が出そう。などと。
奏だけではないのですが、瞬発的な笑いと勢いで押し切っているなと思いました。

ヒロインの成瀬果音も、みじめに見えてしまったら見ていられないと思う役なのですが、春乃さんもその加減が巧いと思いました。
果音としての春乃さんの演技が好きだったから私は最後まで興味をもって投げ出さずに見ることができたのかもと思います。

主人公のライバル京極尊人役の水美舞斗さん、学園の理事長実相寺光彦役の愛すみれさん、ヒロインの隣人の美容師嵯峨沢ハル役の叶ゆうりさん。
3人とも組替え後初の宙組大劇場公演出演ですが、前から宙組にいたみたいに馴染んでいて意外でした。
個性的で強烈な役をさらにそれぞれが誇張して演じているので演者個人の背景を考える余地がなかったからかもしれません。全員そうなんですけど彼らも役に徹していて凄いです。

主にショーでなのですが、花組育ちの蘭寿とむさんや朝夏まなとさん、芹香斗亜さんも、組替え当初は「うわぁぁ花組だぁ」と思える眩しい『何か』にときめいた記憶があるのですが、今回の公演ではお芝居ショーともに、水美さんは自身の身体能力や明るい個性を活かした場面でセンターにいることが多くてそういう『何か』を感じている余地がなかった気がします。
ショーの黒燕尾でも同期の桜木さんへのまなざしなど、あたたかさに満ちた雰囲気が際立っていて、むしろ花育ちらしさは封印しているのかしらと思ったりもしました。

愛さんと叶さんはお芝居に雪組育ちらしい『何か』をかなり感じました。(それが何かと考察しだすと書ききれなくなるのでやめておきます)
ここ最近雪組を見る機会が少なかったので、愛さんも叶さんもこんなに頼もしい方たちなんだと新発見した気持ちになりました。これからの宙組になくてはならないメンバーになりそうだなと確信しました。
愛さんは宙組で見てもやはり大きいなという第一印象でした(娘役さんとして)。そのことも手伝ってか実相寺というフリーなキャラクターに説得力があるのが凄い。同期の桜木さん演じる奏の腰が引けるくらいの圧に笑いました。(桜木さんに代わって?実相寺の愛さんを拝みたい気持ちでした。ありがたやです)
叶さんはショーの黒燕尾のときの肘やフェイスラインのあたりに懐かしい宙組を感じました(作品でいうと「ネオ・ボヤージュ」あたり???)。
私は和央さん的な『何か』かなと思ったのですが、友人に話すと大和さんじゃない?と言われてそんな気もするような・・。これから徐々に解明していきたいと思います。

鷹翔千空さん演じる生徒会長綾小路葵は、作品中でも一二を争う奇人だと思いましたが、さすが鷹翔さん、というべきか?違和感なく奇人でした。(もしかして鷹翔さんが演じるから奇人なのかな???)
風変りな役だからこそ鷹翔さんの体幹の凄さを感じられたのかなと思いますし、歌ではシャウトまで聴けてよかったです。

癖が強い役が多くてそれぞれ衣装も学生役ということで制服姿が多い中(生徒会長なのに和装の綾小路さんはなんなんだろう??)、スーツ姿の英語教師役の風色日向さんは、その登場からしてピッカーンと光って目を惹きました。やはり男役のスーツは最高。
と思いきや、この人もまたやっぱり変な人でした。フィアンセの山野桜子さん(山吹ひばりさん)もあんなに素敵なのにやっぱりちょっとアレレ?

風変りな感覚の登場人物がひしめく中で、いちばん普通の学生っぽくていちばん普通の感覚なのは、亜音有星さん演じるヒロイン果音の後輩、天堂光輝かなと思いました。
とつぜん果音を挟んで京極兄弟の弟、京極竜(泉堂成さん)と3人で手をつないで『森のくまさん』を歌いだしたときはえっ?と思いましたけども。
じつをいうと作中でいちばん笑った大好きなシーンでした。
10月21日に観劇したときは亜音さんが体調不良で休演で、代役を聖吐亜さんが務めていました。
聖さんの光輝は弟感マシマシ。『未来を担う原石集団』感強めで5人のチームが粒ぞろいでまとまっている雰囲気がよかったのですが、『森のくまさん』は亜音さんの光輝がクセになっていたので、また亜音さんで見たいなぁと思っています。(千秋楽は復活されているみたいなのでたのしみです)

「PRINCE OF LEGEND」は登場人物の心理を考察するような作品ではありませんでしたが、宙組の未来を担うメンバーが活躍しているのを見ることができるのがよかったです。
京極竜役の泉堂成さん、奏の幼馴染で側近の久遠誠一郎役の大路りせさんの成長が見られたのが嬉しかったですし、おなじく奏の側近の鏑木元役の奈央麗斗さんがこんなにセリフを言っているのを見るのもはじめてな気がして新鮮で頼もしかったです。
新公学年の皆さんが頑張っている姿を見るのは心が弾みますし、新公を卒業した学年の皆さんはこんなにできる人ばかりなんだなぁと感じたのも嬉しかったです。

今回の大劇場公演から組替えしてきた娘役さん、二葉ゆゆさんは美容師ハルの常連客役として前髪をさわってセリフを言うだけでもうかわいいー♡と気分があがりましたし、生徒会の広報担当ミカエル初台役のきよら羽龍さんは噂に違わずなんでもできる娘役さんだなぁと感心しました。
小日向理々花(天彩峰里さん)率いる玄武高専王子研究部のガールズたちの場面が大好きで(なかでも湖々さくらさん演じる副部長の花巻こよみ氏にVIPをあげたいくらい目が離せませんでした)、チームプリンセスが名乗りをあげる場面も毎回わくわくして見ていました。
素敵な娘役さんたちも大渋滞してました。

男役も娘役も皆が輝く作品で楽しく見られて時にはこういう作品もいいなと思いました。
物申すことがあるとしたら、笑いや遊びが度を超すことがないように、ゾーニングしてこそ愉しめる遊びを白日の下に晒すような癖はほどほどでお願いしたいなぁということかな。宝塚歌劇が選ばれるのには、安心して守られるべき子どもたちと一緒に見ることができるからという理由もあると思いますので。
この作品をじゅうぶんに愉しんだら、次はこの贅沢なメンバーで人間ドラマも見てみたいなと思います。

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2025/10/12

手と手を取りあい未来へ

9月29日に梅田芸術劇場メインホールにて、宝塚歌劇星組全国ツアー公演「ダンサ・セレナータ」「Tiara Azul -Destino-II」を見てきました。
星組新トップスター暁千星さんと新トップ娘役の詩ちづるさんのトップお披露目プレ公演でした。

「ダンサ・セレナータ」は、正塚作品は別箱向きなのだなとあらためて実感する作品でした。好みの作品ではないと思っていたのですが、惹き込まれて見ていました。
初演よりも登場人物の関係性や時局などがわかりやすくなっていた気がします。

暁さん演じるイサアクと瑠風輝さん演じるホアキンの場面がとても印象的でした。
ずっと宙組が好きで見ているので、宙組育ちの男役さんが他組に混じった時に一際感じる独特の佇まいにときめくことが多々あるのですが、瑠風さんにもそれを大いに感じてときめきました。
具体的にどこが宙組育ちと感じるのか言い表すことは難しいのですが、長身に映える着こなしとか立ち姿はもちろん、目線の高さも特徴かなぁと思います。
瑠風さんと相対する暁さんも長身でしたので、いっそうその目線の高さが感じられたのかもしれません。
暁さんのイサアクに負けていない目をしたホアキンだったと思います。

正塚作品に登場する男性のなかにはモラハラやマンスプ臭が鼻につく人物がいて、イサアクもそのタイプだなぁと思ったのですが、暁さんが演じると嫌じゃないかもと思いました。
上からの命令口調が嫌だなと思ったりもするのですが、どこか隠せないやさしさが滲み出る人物だったので見ていて救われたのだと思います。
こういう態度になるのにはきっと訳があるにちがいないと思わせるものがありました。(じっさいにシビアな過去のある人だとわかって納得できました)
相手役のモニカを演じた詩ちづるさんがイサアクに対して委縮せずしっかり対峙していたのもよかったと思います。イサアクとモニカのバランス次第では見ていてつらかったかもしれません。
私にはとても良い塩梅の2人に感じられました。

植民地の独立運動に携わる者、秘密警察、それぞれに思惑を抱く軍人たち、革命前夜の混沌のなかで懸命に日常を生きるクラブダンサーたち。演者のひとりひとりがつくり出す時代性が物語に説得力を与えていたと思います。
その重苦しい雰囲気漂う中で張り詰めた気を抜いてくれるクラブの支配人フェルナンド(凛城きらさん)、イサアクの同僚ルイス(大希颯さん)、モニカの友人リタ(乙華菜乃さん)がいかにも正塚作品らしくて、またその役目をしっかりと担っていていいなぁと思いました。
イサアク役の暁さんとの絶妙なかけあいが面白いルイスを見ていて「ホテル・ステラマリス」のガイ・プレスコットを大希さんで見てみたいなぁなどと思いました。あの空気を読まないナチュラルボーンで風変りな人物を笑。
乙華さんはこのところ私の中で急上昇中の娘役さんなので活躍が嬉しかったです。正塚芝居独特の笑いの間をしっかりと表現されていてブラボー!と思いました。

星組で正塚作品を見るのは久しぶりでしたが、丁寧な芝居づくりと情熱、そしてダンサブルなショーシーンがとてもいまの星組に合っているなぁと思いました。

「Tiara Azul -Destino-II」は、大劇場で礼真琴さんと舞空瞳さんの主演コンビで上演された「Tiara Azul -Destino-」が大好きでしたので、新トップコンビ暁千星さんと詩ちづるさんでの続編がどうなるのか楽しみにしていましたが、これまたお2人にピッタリの楽しいショーで大好きになりました。

大劇場公演で2番手だった暁さんが演じたイグナシオ(作中でふられっぱなしでした笑)が、1年後のカルナバルシーズンに自分を見つめなおす旅から戻って来たという設定が面白いなと思いました。
物語のはじまりで礼さんが失恋の傷心を歌っていた曲を歌詞を替えて、こんどは娘役の詩さんが歌っているのも面白くて、これから暁さんのイグナシオと詩さんのクララがどういうラストを迎えるのか興味津々で見ていました。

星組新トップコンビは「すごく宝塚」だなぁという印象でした。身長差とバックハグにときめきました。
詩さんのちょっぴり勝気そうなクララをまるごと包み込む暁さんの包容力が少女漫画のようでした。
イグナシオとクララのふたりだけの夜明けのダンス、そしてフィナーレのデュエットダンス、それぞれ大劇場とはちがうストーリーになっていて、これから新トップコンビとして歩んでいく2人への愛がたっぷりで素敵でした。
タイトルにもなっているティアラは、今回はダンスのはじまりに暁さんが詩さんにつけてあげていて、ティアラをつけて踊るのも可愛いなと。「見上げてごらん夜の星を」の曲で幸せそうに踊る2人におもわずうるっとしてしまいました。

大劇場公演とおなじくショーの中盤は全力カルナバルでとにもかくにも踊りまくり。全国ツアー公演ということで客席降りもあったりしてさらに盛り上がりました。
私個人としては「こんなに激しく情熱的に踊っている瑠風さんをはじめて見たかも?!」と新鮮でした。
星組にとっても瑠風さん個人にとっても良い組替えになったんじゃないかなと思います。

お芝居でもショーでも踊りまくりの公演なのでこれで全国を回るのはなかなかに過酷だなと思いますが、どうか星組の皆さんが元気に千秋楽まで完走できますように。
私は1公演だけですが広島公演を見に行くことができるので、初日間もない梅田芸術劇場公演からの進化を楽しみにしています。

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