これでもわりと幸せなんで
9月30日と10月5日に宝塚大劇場にて宙組公演「PRINCE OF LEGEND」「BAYSIDE STAR」を見てきました。
(のろのろ感想を書いている間に10月21日の公演も見てきました)
宙組10代目トップスター桜木みなとさんの大劇場お披露目公演でした。
「PRINCE OF LEGEND」は、なんて贅沢なんだろうと思いました。
パフォーマーのスキルはもちろん、衣装や音楽や大道具小道具、照明etc.宝塚歌劇のリソースを湯水の如く使い、手加減せずに取り組んでいるから成立している作品だと思いました。このクオリティだからこそ面白く見られるのだと思います。
桜木さんが演じるのは財閥の御曹司の朱雀奏という役ですが、このキャラを受け容れられるのは桜木さんの演技力があってこそだと思います。
桜木さんが笑える愛されキャラに演じているからありえない設定に対しても心でツッコミを入れつつ楽しく見られましたが、ちょっと冷静になると果音(春乃さくらさん)は本当にこの人でいいのか?と(前日に見たばかりの「ダンサ・セレナータ」のイサアク的に)思いました。
ピュアすぎて資産もあっという間に溶かしそうだけど。なにより母親の洗脳から解けないままではこの先いろいろと齟齬が出そう。などと。
奏だけではないのですが、瞬発的な笑いと勢いで押し切っているなと思いました。
ヒロインの成瀬果音も、みじめに見えてしまったら見ていられないと思う役なのですが、春乃さんもその加減が巧いと思いました。
果音としての春乃さんの演技が好きだったから私は最後まで興味をもって投げ出さずに見ることができたのかもと思います。
主人公のライバル京極尊人役の水美舞斗さん、学園の理事長実相寺光彦役の愛すみれさん、ヒロインの隣人の美容師嵯峨沢ハル役の叶ゆうりさん。
3人とも組替え後初の宙組大劇場公演出演ですが、前から宙組にいたみたいに馴染んでいて意外でした。
個性的で強烈な役をさらにそれぞれが誇張して演じているので演者個人の背景を考える余地がなかったからかもしれません。全員そうなんですけど彼らも役に徹していて凄いです。
主にショーでなのですが、花組育ちの蘭寿とむさんや朝夏まなとさん、芹香斗亜さんも、組替え当初は「うわぁぁ花組だぁ」と思える眩しい『何か』にときめいた記憶があるのですが、今回の公演ではお芝居ショーともに、水美さんは自身の身体能力や明るい個性を活かした場面でセンターにいることが多くてそういう『何か』を感じている余地がなかった気がします。
ショーの黒燕尾でも同期の桜木さんへのまなざしなど、あたたかさに満ちた雰囲気が際立っていて、むしろ花育ちらしさは封印しているのかしらと思ったりもしました。
愛さんと叶さんはお芝居に雪組育ちらしい『何か』をかなり感じました。(それが何かと考察しだすと書ききれなくなるのでやめておきます)
ここ最近雪組を見る機会が少なかったので、愛さんも叶さんもこんなに頼もしい方たちなんだと新発見した気持ちになりました。これからの宙組になくてはならないメンバーになりそうだなと確信しました。
愛さんは宙組で見てもやはり大きいなという第一印象でした(娘役さんとして)。そのことも手伝ってか実相寺というフリーなキャラクターに説得力があるのが凄い。同期の桜木さん演じる奏の腰が引けるくらいの圧に笑いました。(桜木さんに代わって?実相寺の愛さんを拝みたい気持ちでした。ありがたやです)
叶さんはショーの黒燕尾のときの肘やフェイスラインのあたりに懐かしい宙組を感じました(作品でいうと「ネオ・ボヤージュ」あたり???)。
私は和央さん的な『何か』かなと思ったのですが、友人に話すと大和さんじゃない?と言われてそんな気もするような・・。これから徐々に解明していきたいと思います。
鷹翔千空さん演じる生徒会長綾小路葵は、作品中でも一二を争う奇人だと思いましたが、さすが鷹翔さん、というべきか?違和感なく奇人でした。(もしかして鷹翔さんが演じるから奇人なのかな???)
風変りな役だからこそ鷹翔さんの体幹の凄さを感じられたのかなと思いますし、歌ではシャウトまで聴けてよかったです。
癖が強い役が多くてそれぞれ衣装も学生役ということで制服姿が多い中(生徒会長なのに和装の綾小路さんはなんなんだろう??)、スーツ姿の英語教師役の風色日向さんは、その登場からしてピッカーンと光って目を惹きました。やはり男役のスーツは最高。
と思いきや、この人もまたやっぱり変な人でした。フィアンセの山野桜子さん(山吹ひばりさん)もあんなに素敵なのにやっぱりちょっとアレレ?
風変りな感覚の登場人物がひしめく中で、いちばん普通の学生っぽくていちばん普通の感覚なのは、亜音有星さん演じるヒロイン果音の後輩、天堂光輝かなと思いました。
とつぜん果音を挟んで京極兄弟の弟、京極竜(泉堂成さん)と3人で手をつないで『森のくまさん』を歌いだしたときはえっ?と思いましたけども。
じつをいうと作中でいちばん笑った大好きなシーンでした。
10月21日に観劇したときは亜音さんが体調不良で休演で、代役を聖吐亜さんが務めていました。
聖さんの光輝は弟感マシマシ。『未来を担う原石集団』感強めで5人のチームが粒ぞろいでまとまっている雰囲気がよかったのですが、『森のくまさん』は亜音さんの光輝がクセになっていたので、また亜音さんで見たいなぁと思っています。(千秋楽は復活されているみたいなのでたのしみです)
「PRINCE OF LEGEND」は登場人物の心理を考察するような作品ではありませんでしたが、宙組の未来を担うメンバーが活躍しているのを見ることができるのがよかったです。
京極竜役の泉堂成さん、奏の幼馴染で側近の久遠誠一郎役の大路りせさんの成長が見られたのが嬉しかったですし、おなじく奏の側近の鏑木元役の奈央麗斗さんがこんなにセリフを言っているのを見るのもはじめてな気がして新鮮で頼もしかったです。
新公学年の皆さんが頑張っている姿を見るのは心が弾みますし、新公を卒業した学年の皆さんはこんなにできる人ばかりなんだなぁと感じたのも嬉しかったです。
今回の大劇場公演から組替えしてきた娘役さん、二葉ゆゆさんは美容師ハルの常連客役として前髪をさわってセリフを言うだけでもうかわいいー♡と気分があがりましたし、生徒会の広報担当ミカエル初台役のきよら羽龍さんは噂に違わずなんでもできる娘役さんだなぁと感心しました。
小日向理々花(天彩峰里さん)率いる玄武高専王子研究部のガールズたちの場面が大好きで(なかでも湖々さくらさん演じる副部長の花巻こよみ氏にVIPをあげたいくらい目が離せませんでした)、チームプリンセスが名乗りをあげる場面も毎回わくわくして見ていました。
素敵な娘役さんたちも大渋滞してました。
男役も娘役も皆が輝く作品で楽しく見られて時にはこういう作品もいいなと思いました。
物申すことがあるとしたら、笑いや遊びが度を超すことがないように、ゾーニングしてこそ愉しめる遊びを白日の下に晒すような癖はほどほどでお願いしたいなぁということかな。宝塚歌劇が選ばれるのには、安心して守られるべき子どもたちと一緒に見ることができるからという理由もあると思いますので。
この作品をじゅうぶんに愉しんだら、次はこの贅沢なメンバーで人間ドラマも見てみたいなと思います。

