笑うチカラ。
京極夏彦著「豆腐小僧その他」を読みました。
角川つばさ文庫というジュブナイル系の
文庫シリーズ用に書かれた「小説 豆富小僧」と
京極夏彦作オリジナル妖怪狂言の台本「豆腐小僧」「狐狗狸噺」
「新・死に神」と落後「死に神 remix」が収録されています。
巻末には、昨年お亡くなりになられた大藏流狂言方で
豆腐小僧を演じられた茂山千之丞さんの
「京極作品と狂言との“歴史的出会い”」も特別収録されています。
まず小説「豆富小僧」ですが、これも映画とはちがうお話です。
先に読了した「文庫版豆腐小僧双六道中ふりだし」と
最初と最後はおなじかな。
あちらは幕末時代、こちらの舞台は現代ですが。
ジュブナイルらしいわかりやすさと
ジュブナイルらしい大団円。
ジュブナイルだけど、妖怪とはなんぞやという著者の妖怪論は健在。
自分の役割を心得たラストのお豆富ちゃんにじわじわと涙でした。
映画のシナリオのラストには納得がいきませんでしたが
こちらは深く納得です。
だって、映画のラストだと妖怪の意味がないもの。
妖怪とは人間の知恵であり文化そのもの。
この世に生きることを受け入れるための装置。
自然や人の力の及ばないものを畏怖することを忘れ
思い上がった現代人への語りかけとも読める作品だと思います。
「双六道中ふりだし」を読んだ後だと、ストーリーの意味がよくわかります。
たぶん、これを読んで「双六道中ふりだし」を読むと、
この児童向けの小説の深さをさらに感じられるのではないでしょうか。