カテゴリー「♘ 京極夏彦の本」の21件の記事

2011/05/11

笑うチカラ。

京極夏彦著「豆腐小僧その他」を読みました。

角川つばさ文庫というジュブナイル系の
文庫シリーズ用に書かれた「小説 豆富小僧」と
京極夏彦作オリジナル妖怪狂言の台本「豆腐小僧」「狐狗狸噺」
「新・死に神」と落後「死に神 remix」が収録されています。

巻末には、昨年お亡くなりになられた大藏流狂言方で
豆腐小僧を演じられた茂山千之丞さんの
「京極作品と狂言との“歴史的出会い”」も特別収録されています。

まず小説「豆富小僧」ですが、これも映画とはちがうお話です。

先に読了した「文庫版豆腐小僧双六道中ふりだし」と
最初と最後はおなじかな。
あちらは幕末時代、こちらの舞台は現代ですが。

ジュブナイルらしいわかりやすさと
ジュブナイルらしい大団円。
ジュブナイルだけど、妖怪とはなんぞやという著者の妖怪論は健在。
自分の役割を心得たラストのお豆富ちゃんにじわじわと涙でした。

映画のシナリオのラストには納得がいきませんでしたが
こちらは深く納得です。
だって、映画のラストだと妖怪の意味がないもの。

妖怪とは人間の知恵であり文化そのもの。
この世に生きることを受け入れるための装置。

自然や人の力の及ばないものを畏怖することを忘れ
思い上がった現代人への語りかけとも読める作品だと思います。

「双六道中ふりだし」を読んだ後だと、ストーリーの意味がよくわかります。
たぶん、これを読んで「双六道中ふりだし」を読むと、
この児童向けの小説の深さをさらに感じられるのではないでしょうか。

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居ないから居るんです。

京極夏彦著「文庫版 豆腐小僧双六道中」を読みました。

妖怪とはなんぞやがぎゅっと詰まった1冊です。

人は見えないもの、概念や人の心のありさまを
自分なりに補完する。
おのれの知識や経験、願望に基づいて。

どうせなら、人が嫌な気持ちになるものよりも
笑顔になれる方向で補完できたらいいですよね。

誰かの見えない心を思い計る時も。
悪意ととらずに、良かれという思いを汲み取りたいものです。

ちなみに手前が所有いたしまする本は、
↑こんなに可愛い表紙ではございません。
いつもの如く、荒井良さんによるフィギュア?の写真の表紙です。
買ったときは、アニメ映画化されるとは知らなかったのです~

深くて可笑しくて理屈っぽいけど、すごくわかりやすい本です。
語り口が、とっても好きです。
こんな風に語れたらいいなぁと思います。

語り(地の文)からもとことん落とされまくり馬鹿にされまくるお豆腐ちゃんですが、
こんな展開でも、ラストはうるうるしちゃった私です。

著者のシリーズを読んでいる人なら、
著者がこれまでの著書で込めて来た思いが
この本にぎゅうっと詰まっているのがよくわかると思います。

巻末には、市川染五郎さんのお豆腐小僧愛に溢れた解説も入っています。
こんなに多くの人に愛されている妖怪もいないのではないでしょうか。

著者のファンの方にはもちろん
そうでない方にも、オススメしたい1冊です。

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2010/09/19

どすこい。

京極夏彦著、文庫版の『どすこい。』を読みました。
パロディ・・・なのかな。
いや。すごいの。すごいふざけてるー。
とにかく馬鹿馬鹿しい。けど読ませるんですよね。
それだけの筆力と情熱?があるっていうか。
ようするに、わけもわからず面白いです(笑)。

『四十七人の力士』
『すべてがデブになる』
『土リング俵・でぶせん』
『パラサイト・デブ』
『脂鬼』
『理油(意味不明)』
『ウロボロスの基礎代謝』
の7篇から成ります。

見覚えのあるようなタイトル(笑)。
といっても私は元ネタをどれも読んだことがないけど、愉しめました。
それぞれのストーリーが微妙~にリンクしているというか
作中人物が、別の話では語り手だったり、
別の物語の書名が登場したり、
さすがと思わせる伏線の巧さ。

名前を変えて登場する女性編集者のキャラがイキイキしてて好きでした。
作者、S度の高い女性に嬲られたい願望があるのかな(笑)。

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2010/09/04

すご。

京極夏彦著『覘き小平次』を読みました。
(ねたばれします)

いやもう。すごーい。
一日中押入れにこもって、ちょっとの隙間から世間・・・というか女房を覘いている男。
彼と彼をとりまく人間たち6人の心の奥底を、歌舞伎にもなった怪談を元ネタにして描き出してあるんですが、
それぞれの心が本当によくわかる・・・。
いわゆる“まっとう”な人なんて、誰一人いないのに。

それぞれに陰惨ともいえる過去があり、その誰とも関係のなさそうな過去が偶さかつながっていて、つながっていることに気づかないまま、今がすすんでいく。
つながっているからどうだってことじゃないんですよね。
歌舞伎なら、因縁話になるところでしょうけど
そうじゃないのが、京極本。

つながっていようが、それぞれの思い、思惑がまったく異なるから
かみ合うものでもない。
皆、己の中でしか生きちゃいない。

相変わらず、きっぱりと潔い、肚の据わった女性が登場するのが京極氏らしい。
またしても、その女性(お塚さん)に惚れる私・・・(^_^;)
小股の切れ上がったいい女。
彼女の過去も興味深かったです。

会ったこともない人の絵姿に惚れて、思い込みの一念で
何不自由ない家を飛び出す。
あるでしょ。こういうこと。

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2010/08/24

弔いを。

京極夏彦著『嗤う伊右衛門』を読みました。
(ねたばれします)

伊右衛門といえば、四谷怪談のお岩さんの旦那様。
歌舞伎では、奥さんであるお岩さんを離縁するために
謀を弄する酷い夫ですが、
この伊右衛門さんは、お岩さんへの純愛を貫く人です。

物語は、予想したとおりにすすみました。
でも、その予想どおりに話をすすめるためには、
そうとうの説得力が必要。
それを、ものの見事に書き上げられていて感歎しました。

どの人物の行動にも納得させられます。
伊右衛門の気持ちもわかるし、お岩さんの気持ちもわかる。
わかりたくない子殺しの女の気持ちも
世の中すべてが気に入らない傍若無人で悪辣な男の気持ちも
わかりたくないけどわかります。

人には、それぞれに思いがあり、動機がある。
この物語に出てくる人たちは、それを他人に伝える術をもっていない。
そんなふうに生まれ、育ってしまった。
だから、些細な事で気持ちが行き違う。
愛しい者を心のままに慈しむことができずに苦しむ。

人の気持ちが解れば解るほど、切り捨てる事、決着をつける事は難しい。

ただ1人生き残った男 ―― 御行の又市とともに
このかなしい愛し子たちに弔いを。

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2010/08/21

うつつの夢を夢のまことに。

現の夢を夢の真に―――

京極夏彦著「前巷説百物語」を読みました。

御行の又市が、御行装束に身を包むようになる前の
エピソード6篇、「寝肥」「周防大蟆」「二口女」「かみなり」
「山地乳」「旧鼠」で構成されています。

青臭い又市がたまりません。
こんな思いを重ねながら、後の又市ができあがったのだと思うと胸がいっぱいになります。

以下、ねたばれです。


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2010/07/10

DREAM ON...

京極夏彦氏の文庫版『後巷説百物語』を読みました。

  ―― 嘘をね、嘘と承知で信じ込む。
  ―― 煙に巻かれ霞に眩まされ、それでもいいと夢を見る。
  ―― これは夢だと知り乍ら、知ってい乍ら信じ込む、
  ―― 夢の中で生きるしか、
  健やかに生きる術はないんだと、御行の又市はそう言っていたという。
                  ―――(『風の神』より)

妖怪、あやかしは、人が心安らかに生きるためのシステムなんだなぁ。
人は弱く、この世は悲しく辛いから。
なにもかも思いのままに生きている人は、そうはいないから。

時代が変わったからといって、前時代の人々が突然皆いなくなって
さあ、今日から別の新しい人たちだけの世界になるという訳ではない。
時代は地続き。
人の思いも地続き。
それを、忘れてしまっているよね。現代を生きる私たちは。

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2010/06/22

引き際。

覚悟がある者の引き際は潔い。
その人と関わる者にとっては、せつないほどに・・・

そして諸事情で、自分で引き際を決められなかった者の
もの苦しさは・・・
苦しめるのは、大義名分を優先するがために思いが叶わなかった「自分の幽霊」か。

「生きるってな哀しいものよ。捨てちまうなァ未練が残る。溜め込みゃア重くなりやがる」

こんな“けり”しかなかったのかな。
当人たちにしかわからない心の闇か。

やるせない。
けれど、そんな人間の業をもいとおしむ物語。
―― 「老人火」 ――

京極夏彦氏の文庫版『続巷説百物語』を読みました。
「野鉄砲」「狐者異」「飛縁魔」「船幽霊」「死神 或いは七人みさき」「老人火」の
6つの逸話が収められた1冊です。
緻密な時間軸、伏線。
魅力のある登場人物たち。
そして大掛かりな仕掛け。
見事としかいいようがありません。

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2010/06/12

悲しいやねえ、人ってェのはさあ、

京極夏彦氏の文庫版『巷説百物語』を読みました。
栞や奥付などからみるに、2003年に購入したまま本棚に眠らせていたようです。
2003年――― この年の夏、私はキラキラしたものに魂を奪われてしまったのですよね。
以来、本が読めないカラダに。

それにしても、こんなに面白い本も読めないカラダだったとは。
役者は揃っているし、ストーリーは奇抜。
そういった読み物としての面白さだけではなく、
根底にある人間というものへの慈しみが、物語をより深めている気がします。
その慈しみは表面的なものだけではなくて、差別されるもの、
底辺に生きるものにもへだてなく。
果ては、けだものにも。

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2010/05/22

語ることで世界は嘘になる。

世界は「私」という密室のなかで窯変する。
各々が各々の物語を紡ぎ
同じ名前の登場人物も役割がちがう。性格もちがう。
目的も動機もちがう。

善人が悪人に。悪人が善人に。
物語を紡ぐ人の数だけ異なった人格が登場する。
異なった理由や異なった人生が語られる。
同じ人物のことなのに。

分冊文庫版『邪魅の雫(上中下巻)』を読みました。

コードネームは「しずく」―――っていうのに反応しました(笑)。
(しずくちゃん、どうしてるかなぁ)

今回は榎木津があまり登場しないのがちょっと残念。
でも―――さいごに

「かっこつけすぎ!」

榎木津は憧れの人だけど、あの眼で視られたくないなぁ。
私の中には邪まなものがいっぱい詰まっているから。

榎木津と戯伝写楽のおせいちゃん、
私にとっては、おなじステージにいる人たちです。

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