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2022/04/23

俺の生まれはバルセロナ。

4月8日に東京宝塚劇場にて宙組公演「NEVER SAY GOODBYE」を見てきました。

新型コロナウィルスの影響で宝塚大劇場での上演回数が半減して、私が見ることができたのは千秋楽を含めて3公演。
そして東京公演はこの1回きりの観劇となりました。

ジョルジュ(真風涼帆さん)については先に感想を書きましたのでそのほかの感想をと思いますが、書き出すと終わりが見えないほど次々に湧いてくるものがあるので、時代背景に想いを馳せながらムラと印象が変わったなと思ったことを交えながら書いていきたいと思います。

まずプロローグのエンリケ(奈央麗斗さん)がヴィセント(芹香斗亜さん)にそっくり!とびっくりしました。
おじいさん似だったのねー。
ムラではそれほど思わなかった気がします。東京公演ではお化粧や髪型で寄せてきたのかな。(もしかするとムラで私が気づいていなかっただけなこともあり得ますが)
ペギー(潤花ちゃん)もおばあさんにそっくりだし笑、紛れもなく2人の孫なんだなぁと思いました。
こうして孫たちがスペインの地で邂逅できてよかったなぁとしみじみしました。

物語ののち反乱軍が勝利してフランコ独裁政権になったスペインの地を、キャサリン(潤花ちゃん)は二度と踏むことはできなくて、ヴィセントに会うこともジョルジュ(真風涼帆さん)の最期について話を聴くこともできなかったことを思うと、こうして2人が平和な時代を生きて会えて話していることが感動でした。
これもフランコ独裁政権が終わったから実現したことなんだなぁ。

ペギーが言っている1992年のバルセロナ・オリンピック、開催当時はよくわかってはいなかったんだけどそれでも歴史的なことが起きているんだなぁと思ったものです。
そこにはたくさんの人びとの想いが詰まっていたんだなぁ。

余談ですが、その開会式ではフレディ・マーキュリーがバルセロナ出身のオペラ歌手モンセラート・カバリエと一緒に歌うはずだったんですよね。前年に亡くなってしまわなければ・・
オリンピックの公式サイトにフレディ・マーキュリーとカバリエが歌っている楽曲「バロセロナ」を使用したモンタージュビデオがあったのでリンクしておきます。
ビデオにはジョルジュたちが過ごしたサグラダファミリアの1992年当時の映像や、バルセロナオリンピックスタジアムも映っています。
このスタジアムは、1936年の人民オリンピックに使用されるはずだったものを改修したのだそうです。ヴィセントやビル(瑠風輝さん)たちがこの場所でリハーサルしたんだなぁ。
(こちらも→ Freddie Mercury ft. Montserrat Caballe - Barcelona (Live in Olimpiada Cultural)  )

初演の時は、世界史の中の出来事だなぁという捉え方しかしていなかったと思うのですが、2022年のいまのこの世界情勢の中だからこそ1992年のバルセロナの人びとの歓喜の意味に想いを馳せることができる気がします。
そんないまこの時に見る「NEVER SAY GOODBYE」となりました。

物語は1936年に遡り、舞台はきな臭いヨーロッパとは遠く離れたアメリカ、ハリウッドのクラブ「ココナツ・グルーヴ」。
前年には「TOP HAT」同年にはチャップリンの「モダン・タイムス」が公開されたそんな時代なんですね。
(「TOP HAT」では英米と南欧との格差が感じ取れますし、「モダン・タイムス」は労働者をただの歯車として消費する資本主義社会を批判的に描いているように見えます)

新作映画の製作発表パーティに集うセレブたち。そして紹介される出演者や関係者たち。
そのなかにラジオ・バルセロナのプロデューサーのパオロ・カルレス(松風輝さん)がいて、当時誕生したばかりの社会主義国スペイン共和国について歌い、海の向こうのヨーロッパでは労働者が国を動かす時代が到来したことを示唆。

私はパオロさんが片頬を上げて哂うのが好きで、見るたびに出た出たこれこれとニヤニヤしました。
人好きのする気さくな笑顔を相手に見せながら、見せていない方で哂ってる。同時に2つの顔をして同時に2つのことを考えているみたい。
言葉巧みに都合の悪い真実についてはすっとぼけて相手にとって耳障りの良い話を滔々としてその気にさせる。→スタイン氏(寿つかささん)はすっかりその気。
どんなピンチも言葉の言い換え、発想の転換で切り抜けていきそう。
いかにもやり手興行師な風情。いいキャラ作っているなーと思います。

時代の空気はハリウッドの若者たちにも影響を与えていて、キャサリンや仕事仲間のピーター(春瀬央季さん)も純粋に社会主義思想に理想を抱いているみたいで、ピーターはユニオンを作ろうと持ち掛けて仲間から渋い顔をされているし、キャサリンはそんな仲間たちに「情けない」と檄を飛ばしている。

この場面は都会に集う若い知識人のリアルが感じられるなぁと思いました。不満はこぼすけれど実際に行動を促されると尻込みしてしまう。とてもよくわかります。
彼らが歌い継ぐ洗練されたメロディもアメリカだなぁと思いました。こういう曲調は舞台がスペインに移ると聴けなくなるので噛みしめて聴きました。

そしてキャサリンが自分を鼓舞する勇ましい「ハッ!」が好き。この無謀で理想を食べて生きているキラキラしたかんじは嫌いじゃないなぁと。むしろ微笑ましくてフフッと笑ってしまいました。
当時の彼らにとって、ヨーロッパの情勢はどんなふうに映っていたのかな。自分たちとはかけ離れた遠い海の向こうの出来事? それとも共感? この頃はまさかスペインで内戦が起きるとは思っていなかったのだろうな。(だからこそマークたち一行もロケの下見を名目に物見遊山でスペインまで行ったのだろうし)

アニータ役の瀬戸花まりさんは歌うまさんなのは知っていましたが、ムラで見た時は曲調と声質が合っていないかなと思っていました。初演の毬穂えりなさんがとても豊かな声音で素晴らしかったので、どうしてもその記憶が呼び起こされて。
でも東京のアニータは歌い方から変わったみたいで、とても深みのある歌声が素晴らしくて聞き惚れました。
アジトをみつけてあげたり、ヴィセントの実家の片づけを手伝ったり、かと思うとキャサリンに出国の手配をしてあげたり、彼女が味方についていなかったら、彼らはもっと早くに破綻していたんじゃないかしら。
キリっとした頼もしさもあるのに、セリフのないところでは愛おしそうな眼差しでジョルジュたちをみつめているのもいいなと思います。
そもそもどうして彼女はジョルジュたちと行動をともにしているのかなと想像してしまいます。

テレサ役の水音志保さんは「夢千鳥」につづいての抜擢かな。ここ数年気になる娘役さんだったのでキャスト表にテレサとあるのを見てとても嬉しかったです。
2番手の芹香さんに寄り添っても遜色ないし、愛されている女性のきらめきや自分の踊りで生きていく強さとしなやかさも見て取れてとても好きでした。
美原志帆さんや音波みのりさんみたいな綺麗なお姉さま役ができる人になって、これからも楽しませてもらえたら嬉しいです。

キャスト表を見て楽しみにしていたもう1人、ラパッショナリア役の留依蒔世さん。歌声の迫力さすがでした。
ムラでの初見の時は、娘役さんのキーがちょっと苦しそうかな?と思ったのですが、ムラ千秋楽そして東京とどんどん声が安定して迫力が増していたので、東京千秋楽にはどうなっているのかと思います。(私はライビュでしか聞けないのが残念)
歌もさることながら、娘役さんたちを率いて、そして男役さんたちに交じっての市街戦も女性としてカッコよくて素敵でした。
フィナーレでもとてもしなやかで力強い娘役ダンスを披露していて、見応えのあるパフォーマーぶりで魅了されました。宙組になくてはならない存在だと思います。

そしてバルセロナ市長役の若翔りつさん。市長の内戦勃発を知らせる歌は初演では風莉じんさんの歌唱力に驚いた記憶がありますが、若翔さんもぶれることなく素晴らしかったです。こんなに歌える人とは知りませんでした。
「バルセロナの悲劇」でラパッショナリア役の留依蒔世さんと一緒に歌うところは聞いていて高揚しました。歌うまさんが合わさるとこうなるの??と。
あの場面はコーラスも最高で、その押し寄せるような歌声のうねりに涙を流して聴いていました。

故郷バルセロナを愛するヴィセントのソロ曲「俺にはできない」は、初演の「それでーもーおーれはのーこるー大切なーものをまーもるーためー」のほうがインパクトあって(いろんな意味で)わかりやすかったなぁと思います。
初演でヴィセントは脳みそ筋肉だけど愛すべき人、と強くインプットされている私はムラの初見で大いに混乱してしまいました。

ヴィセントは初演では2番手の役にしてはそこまで大きな役という印象ではなかったので(アギラールのほうが2番手っぽい役だなと思っていました)、ベテラン2番手芹香斗亜さんのために書き足しされるんじゃないかなーと思っていたのですが、場面として大きな書き足しはされていなかったようでした。
いちばん変わったと思ったのはソロ曲「俺にはできない」が、メロディも歌詞も別物になっていたこと。
ほかはココナツ・グルーヴの登場の場面で「オーレ!」と決めポーズをするだけだったところで、1フレーズ歌が入ったとかそんな感じ。戦場の場面が増えてくれたらいいなぁなんて思っていたのですが。

場面を増やさないかわりに、芹香さんのためにソロ曲で銀橋を渡ることにしたのだなと思うんですけど(初演では銀橋は渡っていないので)、そうするためには初演のナンバーでは長さが足りないし、芹香さんの歌唱力を活かすべくワイルドホーン氏に歌いあげ系の新曲を書いてもらったのだろうな。
曲のタイトルはそのまま、メロディアスな曲調に。歌詞も内容はほぼそのまま言葉数が倍以上増えてより抒情的に、感傷的になっていました。
そのためヴィセントという人が謎な人物になったように私には感じられました。

あの場面は、闘牛士たちがバックヤードで「闘牛の中心地のセビリアが反乱軍の手に落ちた」「俺たち闘牛士はこれからどうなる」と喧々囂々と言い合って「闘牛を続けるためになんとかして南部へ行こう」という話で纏まりつつある中で、ベンチに座ったままずっと黙りこくっていたヴィセントが「俺の生まれはバルセロナ」「俺は残る二度と闘牛できなくても」と闘牛士仲間と行動を共にしないで1人残ってバルセロナで反乱軍と戦う決意を言い放つんですよね。

「敵と味方か」ともヴィセントは言ってる。
闘牛士というのは王侯貴族や伝統と深く結びついている職業なのでしょう。
反乱軍は、社会主義国となったスペインで既得権益を失ってしまった王侯貴族や教会、ブルジョワたちに支持されて勢力を強めていったわけで、闘牛士たちはそうした反乱軍を支持する人びとの庇護下に入るために南部へ下ろうとしているということなのではと思います。
だからヴィセントの「俺にはできない」に繋がるんだと思うんですが、脚本上それに少しも言及しないので1人ヒロイックな妄想に耽って歌っているみたいな印象をうけてしまいました。

ヴィセントってジョルジュのことを子や孫に語り継ぎ、その命ともいえるカメラを、ジョルジュとキャサリンのあいだに宿った命に連なる孫のペギーに受け継ぐとても意味深いところを担うなど、ファンクションとしての役割は重要なのに、人物の肉付けや整合性に粗さが否めない描かれ方をしているので演じる芹香さんも作り上げるのに苦労したのではないかな。

セビリアはフランコ将軍たちが蜂起したモロッコからは目と鼻の先のスペイン南部の都市で、バルセロナはスペイン北部のフランス国境と接したカタルーニャ地方にある都市。整備された道路を通ってもおよそ1000Kmちかい道程。(Google map調べ)
セビリア生まれのファン(真名瀬みらさん)をはじめ、ホアキン(秋音光さん)、ラモン(秋奈るいさん)、カルロス(水香依千さん)、アントニオ(穂稀せりさん)、ペドロ(雪輝れんやさん)たちは、無事に戦火を掻い潜って南部に辿り着けたのでしょうか。

彼らにはイデオロギーなどどうでもよくて、純粋に人生を懸けた闘牛をつづけたいという一途な気持ちで命を懸けた行動を余儀なくされている。
どこをとっても戦争は残酷だと思います。
たとえそこに英雄がいたとしても美談にしてはいけないものだと思います。

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2022/04/17

ぼくはデラシネ。

4月8日に東京宝塚劇場にて宙組公演「NEVER SAY GOODBYE」を見てきました。

当初は東京公演の観劇は予定していなかったのですが、宝塚大劇場公演の上演日数が半減し私の観劇回数も大幅に減ってしまうとわかったので慌てて友の会の先行にエントリー。辛うじて1公演当選したので日帰り遠征と相成りました。

4月2日の東京公演初日から1週間ほどたったところでしたが、ムラの千秋楽より一段と凄いことになっていました。
舞台の上の誰もがこの瞬間に命を懸けている。そんな気迫を感じる舞台でした。

東京宝塚劇場はたしか昨年末にリニューアル工事をしたとのことですが、音響設備も変わったのかな?
セリフやソロ曲の聴こえが凄くいいなと思いました。逆にコーラスになると音を絞り過ぎてるんじゃないかな?と思うところも時々。
それでもどのコーラスナンバーも素晴らしくて、これを浴びるために来たのだと何度も舞台に向かって拝みたい気持ちになりました。
「バルセロナの悲劇」では歌声のうねりに圧倒されて気づくと涙が出ていました。

2幕のサンジョルディの祭り場面のジョルジュ(真風涼帆さん)とキャサリン(潤花さん)のデュエットダンスも息をのむほど美しくて光の中に溶けていってしまいそう・・と思っていたら自分の涙で滲んでいたせいでした。
舞台上の人びとに心を振るわせられどおしの観劇でした。

ジョルジュはココナツ・グルーヴで登場するときの雰囲気がムラで見た時と変わっていた気がしました。
足取りも軽やかで、真風さんには珍しく“チャラい”。銀橋でのソロの歌い方も変わった気がします。
都会のプレイボーイ感がすごく出ていて初演の和央ようかさんに寄っているかんじがしました。
それと真風さんかなり痩せられたかな?とも。

最初は軽くて軟派な印象だった彼が、ワルシャワの貧しい街角で育ち、内緒で故郷を飛び出しウィーンで苦学の末に賞をとり・・という思いがけない過去を語る効果はてきめん。知らず知らずその熱唱に引き込まれて聴き入っていました。ムラではこんなに歌詞を噛みしめて聴いてなかったな。

自分を根無し草だという彼にキャサリンが心をゆるしはじめているのも手に取るようにわかりました。これは恋に堕ちはじめているな。
と感じ入っているところに、さりげなく「ピーターって彼氏?」って訊いているのが耳に入ってきて、コノヒトハー!?ってなりました。
そういうところよね。カメラの腕ももちろん凄いんでしょうが、むしろ女性の扱いで上り詰めた人なんだなと思いました。
プレイボーイが生業みたいになっちゃっているんだな。
「ぼくはデラシネ」と過去の話をするのも手口だわね。マリブビーチに誘うのも。常套手段。

キャサリンはすっかり魅入られてしまっているみたいだなぁ。ジョルジュには彼女みたいな純粋な女性をぽうっとさせるのは朝飯前みたい。
そのくせ愛を鼻で嗤うような態度をとる。愛も女性も彼には重要ではない、とるに足らない人生のおまけみたいなものなんだろうなと思いました。
すくなくともこのときはそう感じていそう。

ムラで見た時に釈然としなかったのが、こんなに時代の先を行くような知的な人がなぜカメラを武器に持ち替えてヴィセント(芹香斗亜さん)たちと一緒に異国で戦う決意をするのかということでした。
結果あんまりジョルジュに好い印象を抱けなくて、今回もそうなるのかなと思ったのですが。豈図らんや。。。

今回感じたのは、彼は懸命に生きている1人の人間なんだなということでした。
「どんなに赤くルージュを引いても僕のこの眼は騙せない」
というけれど自分自身についてはどうなのかしら。
彼が自分を作らない女性に惹かれるのは、彼自身が自分を覆い隠して生きているからじゃないのかな。
あなたが女性に求めていることは、そのまま自分に求めていることなんじゃないの?と思いました。

見た目に反して、本当は田舎育ちのナイーブな人なんじゃないかな。とも感じて。
パリで出逢ったエレン(天彩峰里さん)は彼にはパリよりももっと都会から来た華やかで思ったことを臆せず口にする「自分を作らない人」に見えたのではないかしら。そんな彼女が魅力的に映ったのは肯ける気がします。

彼はとても苦労をしてきて生き抜くために過剰適応してしまった人に思えました。
そして時代の最先端を生きる都会的な人物に擬態していたのじゃないかな。
息を吐くようにキザにふるまったり口説き文句に近いことをさらりと言ったりと、とても優秀な人なので完璧に擬態できてしまっているけれど、心の奥の翳りが彼を苦しくさせているのではないかなとその姿を追いながら思いました。
それが彼の「人生の真実」探しにつながっているのかな。

そんな時にキャサリンに出逢ってしまった。
自分が涼しい笑顔の裏で誤魔化していることをずけずけと口にする女性。怒りの感情を素直に出せて、やりたいと思うことに猪突猛進できる人。そんなふうに生きて来れた人。
ジョルジュが彼女に惹かれるのもまた肯けました。
彼女の中に別の人生を生きてきた自分を見ているような眩しさを感じてる?
「おなじものを見ようとする」ことにこだわる理由も見えたような気がしました。
彼女はやっと出会えた自分、半身を得た感覚なんだろうなぁ。
そりゃあフィジカル的にも精神的にも高揚してしまうよなぁ。
「ぼくは君に出会うために生まれてきた」 
もう天国から音楽が降り注いでいましたね。

彼女との間に自他の区別がなくなっている状態のところに、彼女が彼女自身の意思で彼が望んでいないことをしようとする。
そりゃあ混乱してしまうよなぁ。このときの彼にとって彼女は自分なんだから。
いっときも離れがたい気持ちなのはわかります。彼女が自分とおなじテンションじゃないことに狼狽えるのも。
それを「男のエゴか」とか言っちゃうから誤解を招く。
ジョルジュが抱いているその気持ちには男も女もないものだから。自他を同一視して闇に落ちてしまうことはたとえば親子やファンとアイドルの間にも起こるものだから。
人は苦しみもがきながら他人も傷つけてしまう。

田舎の閉塞感に耐えきれずに都会に夢をもとめて飛び出したけれど、本当の自分の居場所をみつけられないまま自分を根無し草だと感じている。
そんな彼が、キャサリンに出会いその魂の中に、本来の自分を見出し取り戻す。
そうして自分の中にあった、無意識に蓋をしていた祖国と残してきた家族への罪悪感が、祖国ポーランドとおなじようにロシアとドイツの板挟みになっているスペインで戦っているヴィセントたちの姿をレンズを通して見ているうちに、かたちを成してきたのかなぁと思いました。
その贖いをしないと自分に筋を通すことができない。
祖国ポーランドを侵略しようとするナチスドイツ。
そのナチスドイツから軍事力の支援を受けてスペイン共和国を武力攻撃するフランコ将軍率いる反乱軍と戦うことは、彼にとって贖罪として整合性のとれることなんだろうなぁと思いました。
そこに自分自身の生きる意味を見出してしまった。
見た目のクールでリベラルな都会人とはかけ離れた、泥臭くてエモい人だったんだな。本来は。
他人も自分も欺いて生きてきて、このスペインでようやく真実の自分に辿り着いた。

彼は「人格者」でも聖人君主でもない。
迷える羊がやっと自分が属する群れをみつけたんだな。
「もうデラシネじゃあない」

「そしてその真実を共有できる君というひとに出会えた」
ちょっと待って? 
相変わらず自他の区別がついていないんだなぁ。
そのロジックはキャサリンを納得させるためのものではなくて、自分が満足するためのものだなぁ。

言われる側としては、そんな説明でどうして別れなくちゃいけないのか。になると思うんだけど。
でも彼を愛していて、デラシネであることがジョルジュの痛みだったことを知っているキャサリンには、やっと自分の生きる意味をみつけたというジョルジュを止めることはできないのだろうなぁ。
ホスピタリティ溢れるこの潤花ちゃんキャサリンは、彼を笑顔で見送ることが彼にとっての救いだという思いで受け入れたんだろうなぁと見ていて思いました。
その懐の深さに泣けました。

けっきょく自分の進む道を彼女にゆるされたことでジョルジュは救われたのだろうな。
あの瞬間がジョルジュには宝物なのだろうな。(キャサリンにはこれからの辛い現実のはじまりの瞬間だと思うけれど)

最後の最後まで女性に甘やかされて行ってしまった。
大人になって誰かを受容するのではなく少年の心のままで。
それともこれからの数か月で彼もまた誰かの心を受け容れ救ったかしら。
描かれていない時間をあれやこれやと想像してしまいます。

もう1人、ジョルジュが傷つけた女性エレン(天彩峰里ちゃん)。
彼の女性の好みは一貫して「自分を作らない人」だったのだろうと思います。
エレンもきっと心のままを口にし態度に出す人で、そういうところが眩しくて惹かれたのじゃないかなと思うけれども、でも彼女もまたハリウッドの美人女優という世間から求められる存在に擬態している人なのかもとも思います。
もしかしてエレンとジョルジュは似た者同士なんじゃないかなと。
だから一緒にいるのが辛くなったのじゃない?と。

そんなエレンの「真実」との乖離に彼が勝手にモヤっているところに、キャサリンに出遭ってしまったのだなぁ。
「あのひとのどこがわたしよりいいの?」と正面から問い質すエレンは、自分を作らない素敵な人だと思うけど。
そのプライドも素敵。
この再演のエレンが私はとっても好きで、会って話してみたいなぁ。一緒に大ジョルジュディスり大会を開催したいなぁと思ったりします。
キャサリンも参加してくれるなら大歓迎。

もしジョルジュがキャサリンとともに帰国して一緒に暮らしたとしても、彼があのまんまだったらいずれ大喧嘩になったんじゃないかな。
でも共に暮らして彼も彼女もすこしずつ変わって、しあわせに生涯を終える未来もあったはずだけど。
いま思うのは、どの選択もまちがいじゃない。
懸命に生きた人びとの物語だったなということです。

(感想を書いていたらあまりに長くなってしまったので、ジョルジュについてだけを残しました。ほかの部分はまたまとめられたらいいなぁ。でも千秋楽までに終わるかな・・)

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2021/09/30

新しい冒険へ。

9月26日東京宝塚劇場にて宙組公演シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-」「Délicieux!-甘美なる巴里-」千秋楽を見てきました。

やはり東京宝塚劇場には魔法があるようです。
「シャーロック・ホームズ」の登場人物たちの独唱がとても胸に響きました。音楽のテンポが心地よかったです。
モリアーティに夢の中で追い詰めら
れるシーンもエコーが強めにかかって幻想シーンだとわかりやすくなっていました。
回数を重ねることで役者同士の芝居の方向性も定まるのかセリフの間や強弱なども微調整されたかんじですごくハマっていてノーストレスで物語世界を堪能しました。

221Bの「退屈だ~~」の場面で、真風ホームズがやっていた「退屈だお化け」ってなんなんですかね笑。ずんワトスンに無茶ぶりしたかと思ったら「私が退屈だ大魔王だ」ってなんなんなん???笑。ぜんぜんわからなかったけれど面白かったです笑。
そしてそれを受けてのららハドスンさんの「プンプン大魔王だからね」が可愛くて可愛くて。

221Bに過去の依頼人が押し掛ける場面、退団者の七生眞希さんのマシューズ内務大臣のまわりを秋音ソールズベリー首相閣下たちがぐるぐるして順々にハグしてました。七生マシューズ身動きとれず為すがまま笑。うんそういうところだよねって思いました。
この場面はオペラグラスを使っていたので全体を把握していないのですが、もしかして同じく退団する遥羽ららちゃんも皆からハグされていたのかな。

ラストの退団者の美月悠さんの牧師さまと星月梨旺さん七生眞希さんの墓守のところに日雇い労働者に扮した真風ホームズさんがスコップを担いで近づく場面では、ムラの千秋楽とおなじく真風さんが東京宝塚劇場の土?を掘って3人に渡していたんですけど、さらに何かキラッとする小さなものを3人お1人お1人に渡してらっしゃいました。
オペラグラスで見ても私の座席(1階下手)からはよく見えなかったのですが、1シリング銀貨じゃないかなと教えていただきました。
たしかに白っぽくて小さくて丸くてキラッとしてたし、真風さんの摘み方もそんなかんじだなと思いました。なにより冒頭でイレギュラーズに1シリングずつ渡していた時と同じ変装をしていますし。
まぁ真相は退団者の皆さまのみが知る、かなぁ。(もう知る手立てがないのが寂しいです)
ムラでの初見のときは、退団する人が墓守って??と戸惑ったのですが、最後の公演で真風さんと自由に交流できる場面を作ってくれて、生田先生ありがとうございましたという気持ちです。

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2021/09/24

ひとりひとりの人と人が生きた軌跡が見えてくる。

9月14日と15日に東京宝塚劇場にて宙組公演シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-」「Délicieux!-甘美なる巴里-」を見てきました。

東京宝塚劇場のサイズのせいなのか音響のせいなのか、大劇場公演で数回見ているのでお芝居もショーも見どころがわかった状態だからか、東京宝塚劇場には特別な魔法があるのかなと思うくらい、ひたすらパフォーマンスを愉しむことができて2日間3公演があっという間でした。

初っ端から真風ホームズが歌うテーマ曲「鎖の一環」の歌詞が心に沁みました。なんだろうとてもせつない。薄暗いロンドンの閉塞感と情景が目に浮かびました。
そして1人ひとりのキャラクターがとても愛おしかったです。

シャーロックが滝の上で戦っている時、ワトソンはあんなに彼の身を心配しているんですね。アイリーンより心配してるんじゃないかな。(アイリーンは後ろ向きだからよくわからないのもあるけど)
滝から落ちた時には気の毒なくらいに嘆いていて、あれは絶対心の傷として引き摺ると思いました。カウンセリングが必要な状態では。あのままほうっておいていいのかな。メアリーが癒してくれるのかな。(でもメアリーも・・と考えてしまう)

とぼけたホームズ兄弟も好きでした。どことなく似ている気がするシャーロックとマイクロフト。真風さんと凛城きらさん、同期なんですよね。
凛城さんはこの公演をさいごに宙組生じゃなくなってしまうんだなぁ。「ベルばら」のダグー大佐のキャラ作りが好きだったなぁ。ある時期の宙組は元雪組生がお芝居を支えているんじゃないかと思うほど彼女たちが突出してて、そのうちのメンバーだったんですよね。
(雪組生は初日からキャラを作ってくるのが巧いと思っているのですが、潤花ちゃんにもその片鱗が
うかがえて私の心の中の雪組リスペクトが発動しました)
「サンクチュアリ」のギーズ公も印象的でした。そして「神々の土地」の美しくて繊細で茨の棘の上に立っているような痛々しいアレクサンドラ皇后の衝撃は忘れられません。
どこか一歩退いたようなクールな印象がありつつ面白さと端正さを兼ね備えた凛城さんが演じるマイクロフトは今作私の中のベストアクトです。
専科異動第1作目「プロミセス・プロミセス」※見れたらいいなぁ(※完全に勘違いしていましたが、凛城さんは全国ツアーでした💦 全ツは行きます!!!)「NEVER SAY GOODBYE」にも出演してほしいなぁ※※。(ジョルジュたちと行動を共にするラジオバルセロナのパオロを凛城さんでどうでしょう小池先生 ※※残念ながらこの願いは叶わずでした・・涙)

あんなに優秀な部下を揃えておいて間の抜けた失敗をするモリアーティも好き。
世界を支配しようとする彼はマッドサイエンティストの類なんでしょうか。兄のモリアーティ大佐の動機や目的はなんなんだろう。弟よりはよほどまともな人に見えるのに。陸軍大佐にまで出世しているのに。なぜ弟のいいなり? 溺愛? それとも弱みを握られているのでしょうか。これだという確信がないまま千秋楽になっちゃうのかな。
ムラの初見ではいろんな疑問が湧き、それも何度か見ているうちに一つ一つ納得できていったのですが、まさかこの疑問が最後まで残るとは思っていませんでした。

もう一つ残っていた疑問はレストレード警部がマイクロフトを撲ることでしたが、これはマイクロフトが女王陛下から直接お声を賜る政府高官にもかかわらず「偉そうに見えないという特殊能力の持ち主」というのと、フロックコートに勲章まで付けているマイクロフトを官僚と気づかないようなレストレードの「観察眼のなさゆえ」の複合的理由かなと思いました。これでは事件解決なんて無理。それで警部なのも不思議ですが。
あれでレストレードの進退に一切不問のマイクロフトは本当に「いい人」だなと思います。それが成立するマイクロフトなんですよね。


「デリシュー」はとにかくとってもとっても楽しかったです。愉しくて可愛くてせつなくて。
東京公演初見では、久しぶりに体感する生のショーに心が震えて、中詰めの「Amor Amor Amor」の歌詞で「・・決して忘れはしない」を耳にしたとたんにわわわわ~っと退団される方のことが浮かんできてそれからは何を見ても胸がいっぱいになってしまい、その後のキャンディーマンもI love Parisも虹色の薔薇も笑いながら涙という状態で、マスクをしていて良かったと思いました。

それから東京公演になっていちばん変わったのが「フォレノワール」のレザンちゃん(桜木みなとさん)かもと思いました。
のっけからプンスカしていて表情がとても可愛くて目が離せませんでした。ベラミの真風涼帆さんやアメリカンチェリーの潤花ちゃんに対してコロコロと表情が変わって、ムラよりコミカルに感じました。
大劇場公演で苦手だったのは、レザンちゃんが何を考えているのかわからない、というかわかりたくなかったからというのも大きかったかもしれません。
登場人物の気持ちを誰ひとりわかりたくなかった、そんな場面だったのが、ちょっとだけレザンちゃんが好きになることで紛れたかも。
それでもやっぱり誰かの尊厳を貶めるのはだめだと思うし、弱い立場にある人が尊厳を傷つけられていることを当たり前だと思ってしまうようなストーリーは受け入れ難いなと思います。

いろんなことを思ってたくさんのことを考えたこの公演もあと数日で終わってしまいます。
そして千秋楽を最後にもう宝塚の舞台では逢えなくなってしまう人も・・。
千秋楽まで何事もなく公演が続きますように。そして千秋楽は卒業する方々がしあわせな1日となりますように。

(2021/9/25 私の思い違いと最新ニュースを得て、※と ※※を書き足しました)

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2021/05/07

僕は怖い。

4月23日に東京宝塚劇場にて星組公演「ロミオとジュリエット」B日程を見てきました。

ムラでAB日程をそれぞれ見て、A日程はこの後ムラの千秋楽と東京の千秋楽をライブビューイングで見ることができるけれど、B日程はもう二度と見られないのかと思うと居ても立ってもいられず友の会にエントリーしたところ幸運にもチケットを手にすることができました。
(緊急事態宣言の再々発出により4/26以降の公演が中止となり、結果的に5/2にB日程の無観客上演のライブ配信をもう1度見ることができたのですが)

A日程とB日程、より宝塚度が高いのはA日程のほうだと思うのですが、B日程には私を中毒にさせる要素がありました。
愛ちゃん(愛月ひかるさん)の死はもちろんのことですが、礼真琴さんのロミオ、綺城ひか理さんのベンヴォーリオ、天華えまさんマーキューシオが作り出す関係性が好きでたまりませんでした。3人で歌う「世界の王」のハモリはとても心地よく、マーキューシオの「マブの女王」ベンヴォーリオの「どうやって伝えよう」そして皆で掛け合う「街で噂が」は、こんなふうに歌って聞かせてもらえるとはと。なんども聴きたくなるくらい好きです。
「決闘」はナンバー内のそれぞれのキャラクターの心情が、ムラで見た時よりもさらに鮮明に見える気がして、ロミオの気持ちを思うベンヴォーリオも見たいし、ティボルトにだけはムキになってしまうマーキューシオの狂気と挑発のぶつかりあいも見たいし、目が足りなくて困りました。

ロミオ、ベンヴォーリオ、マーキューシオの3人のバランス、モンタギュー家に連なる者とはいえバックボーンのちがう3人の若者がそれぞれに漠然とした不安や苛立ちを抱えてそこに存在する感じが好きでした。
“チーム・モンタギュー”としての絶秒な距離感。チームであることがいちばんのアイデンティティーであること。まだ社会的責任を負う必要のない青春の輝きと万能感のグルーヴ。それが綻びていくときの葛藤や希求や狂気、無力感。普遍的な懊悩を抱える若者像が胸に刺さりました。
私にとってそれが魅力でした。

それもみんな主演のロミオ役の礼真琴さんとジュリエット役の舞空瞳さんが安定の実力と魅力で舞台を引っ張っているからこそだと思います。
2人とも可愛らしくてピュアピュアしてて、夢見るロミオとロミオよりはちょっと現実的だけどやっぱり世間知らずなジュリエットの関係性が微笑ましくて、見ている私の頬は緩みっぱなしでマスクをしていて本当に良かったと思いました。
自分を16年間育ててくれた乳母さんが結婚していたことも思いつかないジュリエットの自分のことにしか興味がない若さが眩しくて。素直で我儘で自分がどれだけ守られているかも知らない舞空瞳さんのジュリエット像が大好きでした。

有沙瞳さんの乳母は宝塚大劇場で1か月前に見たときよりもさらに素晴らしくなっていて感動しました。彼女のジュリエットへの愛はどこまで深いのだろうと。
歌唱力のある娘役さんですが、ムラで見た時はさすがの有沙瞳さんでも乳母のアリアの音域の広さに苦労されているなぁと思ったのですが、東京公演では歌唱法を変えられたようで、余裕で歌いあげられているうえに情感が増していました。と同時に巧さに驕らず研鑽を怠らない姿勢に感銘をうけました。
キャピュレット卿役の天寿光希さんもムラとは歌唱法が変わったように感じました。娘に対して巧く愛情表現できない父親の心情がムラで見た時よりもより響いて胸が痛かったです。

基本的に関西での観劇が主なので、宝塚大劇場で1か月上演された公演を東京宝塚劇場で観劇する機会があるとそのパフォーマンスの深化に驚かされます。もっと頻繁に東京公演を観劇できたらどんなに良いだろうと思います。

じつは、今回の上京自体が昨年の2月の宙組公演「エル ハポン -イスパニアのサムライ- 」以来で、3月に観劇予定だった雪組公演「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」が公演中止となって以降ずっと東京公演の観劇を見送っていました。
今年の3月に第2回目の緊急事態宣言が解除され、以降はオリンピックに向けてワクチン接種もすすんで感染拡大も収まっていくのではないかという甘い見通しで今回の観劇を計画しました。
時節柄、空港も機内もホテルも細心の感染予防対策が取られ、私自身もできうる限りの感染予防を考え、公共交通機関の利用はラッシュ時を避け食事はすべてテイクアウトでホテルで1人で摂るようにしたのですが、まさかのまさか劇場であんなに会話が飛び交っているとは。
「会話はお控えください」と繰り返し繰り返しアナウンスされ、劇場スタッフの方々もいつもとはちがう強ばった表情で拡声器を使い会話を控えるように呼び掛けているのもかかわらず、ずっと談笑をやめない人たちがいて驚きました。
その会話を続けていることで周囲を不安にさせている事実を認識してほしいなと思いました。

帰宅後
第3回目の緊急事態宣言の発出により4/26以降の公演の中止が発表になり、予定していた宙組「恋千鳥」と「ホテルスヴィッツラハウス」、花組「アウグストゥス」の観劇が泡と消えて愕然としましたが、反面ホッとしたのも事実です。あの不安な客席に座らなくてよいのだと思うと。
どれだけ自分が注意していようとまったく気にしない人がおなじ空間に一緒にいるのだという現実。その不安が劇場から人びとの足を遠のかせてしまうかもしれないということをもっと重く受け止めてほしいと思います。
こんご公演が再開される折にはその不安が解消されていることを切に願います。

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2020/02/25

方々、さらばでござる。

2月12日と16日、東京宝塚劇場にて宙組公演「El Japón(エル ハポン) -イスパニアのサムライ-」と「アクアヴィーテ!!~生命の水~ 」を見てきました。
2月16日は千秋楽でした。東京宝塚劇場で千秋楽を観劇するのは、凰稀かなめさんの退団公演以来です。(近年はありがいたいことに映画館のライブビューイングで見させてもらっていますが・・時代は移り変わりゆきますです)

同公演は、宝塚大劇場で12月上旬に観劇して以来2か月ぶりの観劇でした。
待ち遠しくて、1月の終わりに観劇まであと何日かなぁと考えて、まだ半月以上も先なことに愕然としたりもしていました。
この公演は上演期間が1か月半と通常より長かったのでした(涙)。(「白夜の誓い」の時も1か月半だったので、東京の2月公演はそういう傾向なのでしょうか)

ということで待ちに待っての観劇の感想です。

「エルハポン」はストーリーの流れがすごくよくなっていると感じました。出演者全員の目指すところが1つになっていると。
そのうえで、それぞれの役の奥行きも感じられてとても面白く観劇しました。

いちばん変わった印象をうけたのは、星風まどかちゃん演じるカタリナかな。心の動きがすごく伝わってきました。
酒場でのシーン。いつもより声のトーンがちがうカタリナ。無理に明るくふるまおうとしているよう。
治道の帰国が近いことを知り1人ですべてを背負う覚悟でいるのかなぁ。でも寂しさは隠せないでいる。昔の幸せな頃を思い出したり。明るく自分に言い聞かせてみたり。揺れ動いている気持ちがすごく伝わってきました。

いつもは気丈なカタリナの弱さに触れた治道の戸惑い、心に湧き出す愛しさ、その思いゆえに彼女が笑みをとりもどすように柄でもないダンスを自らいざない(でもいつのまにかあっさり会得していた・・さすが剣士)、というそんなエモーショナルな流れが手に取るように見えて。
いつのまにか言葉はなくとも交わす目線とダンスとで心を通わすようになっていた治道とカタリナに涙しました。
そこから治道と訣しあらためて覚悟を決めたカタリナが歌うアリアのなんとも心に沁みること・・。2人の芝居がここまで来たのだなぁ。
真風さんは心を打つ芝居を自然にする人だなぁ。そして千秋楽にはずれなしの人だなぁと思います。
みちすじがちゃんと見えている人なんだろうなぁと思います。

主演の2人の芝居の深まり。そして2人とはちがうところで繰り広げられる人物たちの生き様、咆哮もさらに面白くなっていました。

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2019/12/04

おとぎ話の終わりは。

11月21日に東京宝塚劇場にて、花組公演「A Fairy Tale -青い薔薇の精-」と「シャルム!」を見てきました。
みりおちゃん(明日海りおさん)の宝塚最後の公演、はたしてチケットが手に入るのだろうかと思っていましたが、幸運にも友の会で当選して見納めすることができました。

お芝居「A Fairy Tale」は終演後、景子先生、これでもかと少女趣味をぶち込んで来ましたね(笑)と思って笑えてしまいました。
設定も舞台美術もセリフの端々も。過剰なほどに美しく清らで、自分が好まないものは世界観から排除してしまうそんな少女の夢。こそばゆいけど嫌いじゃないです。
本意でない政略結婚だったとはいえ、夫である相手に「あなたを愛したことなど一度もない」と言い切ってしまえるヒロインの強情な潔癖さ。これは遁世して夢見る少女小説家にでもなるしかありませんなと思ったらある意味正解で(笑)。
そういえば、寄宿学校でも授業中に妖精の絵を描いたり仕事を持ちたいなどと言ってクラスメイトの少女たちに引かれていたなぁ。夢想の中に生きてほかの少女たちからは孤立しているそんな子だったよね、シャーロット(華優希さん)は。
たぶん、このシャーロットというヒロインに共感する、あるいは自分を重ねてしまう宝塚ファンはすくなくないのではないかな。

なんだか笑えてしまったのはそんな心当たりが私にもあったからかなと思います。
そしてやっぱり終わりがハッピーエンドだったのも大きいかなと思います。(相変わらず権威主義で無神経なところがあるなぁ景子先生、、と思うところもありましたが。自分がハッピーでいるために踏みつけにしている存在に気づいてもいなさそうなところがあるなぁと。オールオッケーとは思えない部分が)

お芝居ラストのみりおエリュの振り向きざまの表情にいろんなものが過って見えたように思いますが、そのなかに悪戯好きのフェアリーの顔も見えた気がしました。
ああ、これもみりおちゃんが持っているもののひとつなんだなと思って、この期に及んで可笑しくなってしまったのもありました。
思い込み激しく一途に突き進んで破滅していく役がこのうえもなく似合っていたみりおちゃんですが、ほくそ笑む悪戯な妖精の顔もたしかに持っていたよなぁと。
端から見ていてちょっと辻褄が・・とか、えっこれで彼らが誰かのために生きていると思えるの・・とか、唖然とするストーリー運びであっても、心底から心を動かし嘘にならないところ、さすがだなぁと思いました。この純粋さがタカラジェンヌの鑑だなぁと。

この繊細な薔薇様が棲む世界を無邪気に愛した頃、遠く隔たり信じることが出来なかった頃、かけがえのないものと気づく頃。
妖精とは。
自分と重ねてみるとさまざま思うことが過るのは、みりおちゃんやそれぞれの役を演じきった花組の生徒さんたちの力によるものだったなぁと思います。いまの花組はすごく力のある組だなぁとしみじみ思います。芝居の良い組になりましたよねぇ。

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2019/07/31

教えて神さまほんとうの愛の在り処を。

7月12日に東京宝塚劇場にて宙組公演「オーシャンズ11」を見てきました。

前日に帝国劇場で「エリザベート」をマチソワ後に一緒に食事をしたヅカ友さんから、私がマチネを観劇している時に柚香光さんの花組次期トップスター就任決定の発表があったことを聞きました。
そっかぁ! 礼真琴さんに続いて95期から2人目のトップスターが誕生するんだなぁと。
そうえいば、琴ちゃん(礼真琴さん)の次期トップスター決定のニュースもムラの「オーシャンズ11」観劇中の幕間に知ったのだっけ。
あの時も95期凄いなぁと思ったのですが、その日帝劇で見た「エリザベート」の主演のちゃぴ(愛希れいかさん)も、マデレーネ役の内田美麗さん(麗奈ゆうさん)もヘレネ役の彩花まりさんも95期で、外部の舞台で95期大活躍中だなぁと思っていたばかりで、そこにさらに柚香さんのニュースで「95期凄い!」ともう何回目かわからないけど思ったのでした。

そして、その「オーシャンズ11」東京公演の感想を書こうと思っていた矢先に『FNSうたの夏まつり』という番組に出演した雪組の朝美絢さんの反響がすごくって、またも95期か・・・(笑)となっていたところで見つけた元宙組の朝央れんさんのこのツイートがぐっときました。

https://twitter.com/asao_ren_/status/1154347003666505728

朝央さんも95期。宙組公演「天は赤い河のほとり」で退団。
そうなんですよねぇ。95期が初舞台を踏んだ2009年はリーマンショック後の景気後退真っ只中。
初舞台公演中にパンデミック宣言された新型インフルエンザの国内初の感染者が神戸で確認され兵庫の小中高が臨時休校になるなどのニュースが毎日のように報じられてムラ界隈では外出を控える人々が多数、ムラ中のコンビニやドラッグストアからマスクが無くなる有り様で。そういう中で千秋楽を迎えた初舞台公演だったのでした。
そして2011年の東日本大震災・・・。宝塚の大変な冬の時代をその目で見て過ごしていた期でもあるんですよね、彼女たちは。

2階に一桁しか観客がいない劇場、1階の両サイドが空いている劇場で公演をしてきた彼女たち。
その公演にも通っていたファンがいるんです。
その時期を全力で公演していた先輩の生徒さんたちがいるから今があること。
その劇場になんども通っていたファンがいるから今があることを忘れないでいてと思います。

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2016/10/08

子どもに子どもは育てられない。

9月21日東京宝塚劇場にて宙組公演「エリザベート」を見てきました。
前後の祝日の影響か平日なのに11時と15時半公演の日だったので運よく2公演見ることができました。

博多座で東宝版「エリザベート」を見たあとだったのでどうしてもシシィにもの足りなさを感じてしまいました。宝塚版はトートが主役であちらはシシィが主役ですから仕方のないことですが。
とはいえ、みりおん(実咲凜音さん)は歌唱力も芝居も安定しているので安心して耳をゆだねることができるのは有難いなと思いました。

みりおんシシィは人を巻き込み国を巻き込むようなダイナミックなエゴイストではなくて比較的こぢんまりとしたエゴイスト。自分1人で抱えているかんじ。
15歳のときに抱いた自意識をそのままに60代まで生きたらそりゃあ生きづらいよねという感じでした。

結婚式翌日のゾフィーたちとの場面がとても好きでした。
「馬に乗ります」「ダメよ!」で一瞬ぽっかーんな間が可愛くて(笑)。ダメって言われるなんて思ってもいなかった感じが。
リヒテンシュタインに口を開けられるところもとても可愛いくてみりおんシシィのあの場面を見るのがムラの時から毎回楽しみでした。

ゾフィーもリヒテンシュタインもとても正しい。この田舎から来た娘をいかに皇后らしく教育しようかと初日の早朝から気負っているのに対して、なにもわかってなさそうなみりおんシシィ(笑)。
ここはみりおんが元来もっているチャーミングさがすごく出ているなぁと思いました。
その、世のおしゅうとめさん気質の人たちをイラッとさせちゃう性質がシシィにとてもマッチしていて見ていて小気味良かったです。
シシィとゾフィーの絡みをもっと見たいなぁと思いました。じっさいには2人が絡むのはこの場面だけなのですよね。

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2015/02/20

大地を吹き渡る風のように。

かなめさんが宝塚を卒業されて3日4日と経つにつれて
かなめさんロスに陥っています。

千秋楽終演後そして翌日は、それまでの狂騒の数日が無事に終わった
その安堵感と充実感でほゎんとしていたんですが…。

かなめさんについて書きたいことはたくさんあるのに、
いざ書こうと思うと手が止まってしまいます。

悲しいわけじゃないんだけどなぁ…。

 

思い起こすと「白夜の誓い」「PHOENIX宝塚!!」とも東京公演は
見ながらやたらと泣いていた気がします。
もともと泣くのが得意じゃないので、舞台を見て涙を流したことってあまりないのですが。
ハンカチで涙を拭きながらの観劇はとてもできない(慣れていない)
と気づいたので東京公演中の観劇はマスクで通してしまいました。

ラインハルト、エドモン、ルドルフ、バトラー、キャパ、オスカルそしてこのグスタフと
私がファンになって見てきたかなめさんの役たちが私の心を徐々に解していってくれて。
とうとうさよなら公演ではこんなことに…。
かなめさんが見せてくれる役たちには、そんな作用が私にはあった気がします。

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