カテゴリー「 \ 宙 組 !!/」の257件の記事

2025/02/09

ただひとときは与えられ

1月21日22日そして28日に宝塚大劇場にて宙組公演「宝塚110年の恋のうた」「Razzle Dazzle」を見てきました。
21日はイープラスの貸切公演、28日はローソンチケットの貸切公演でした。

幸せな気持ちと言葉にならない思いで溢れる観劇となりました。
「宝塚100年の恋のうた」は芹香斗亜さん演じる藤原定家が桜木みなとさん演じる「八千代(春日野八千代さんの姿をした宝塚歌劇の化身?)」のいざないによって、過去からの宝塚歌劇の日本もの作品の登場人物となって宙組生たちとともに選りすぐりの名曲を歌い継いでいく作品でした。
芹香斗亜さんの狩衣姿や若衆姿やその美しい舞台姿に心に幸福感が溢れ出し、またその心地よい声に酔えば歌詞のひと言ひと言が心に沁みるそんな舞台でした。
名曲というのは物語を離れても折々のひとりひとりの心に寄り添うものなのだなと思いました。
ひたすらにキキちゃん(芹香斗亜さん)と宙組が美しくて愛おしかったです。

ことに「恋の曼荼羅(新源氏物語)」「琴時雨(夢浮橋)」「生きるときめき(星影の人)」はひたひたと心に浸みわたっていきました。
そしてこの作品の主題歌となる「定家葛」。和歌を読み上げる式子内親王役の春乃さくらさんのかくも美しい歌声に聞き惚れ、定家を演じる芹香さんとの切ない恋の重唱に言葉にならない気持ちが溢れて、私のこの気持ちもまた執心だなぁと思いました。

フィナーレの総踊りで桜木みなとさんが夢の間惜しき春なれば・・と歌う「花の舞拍子」も沁みました。桜木さんのたしかな表現力はこういう場面を引き立てるなぁと思いました。
酒井澄夫先生が紡ぐことばの儚くうつくしいこと。ただ聞き惚れるひとときのなんとしあわせなこと。
そして華やかに「花吹雪恋吹雪」で幕がおり、晴れ晴れとした心のそのずっと奥底に、もっと聞いていたかった ― まだまだこれでは足りないと叫ぶ声なき声が存在していました。
この執心のゆくえを季春のそのときまで見とどけていかねばと思っています。

「Razzle Dazzle」は盛りだくさんだった前物の日本ものレヴューのあとにふさわしい軽快な作品でした。
笑いありせつなさもあり、世間知らずで人生を軽んじているような自分本位な青年が自分とは異なる世界の異なる価値観で懸命に生きている人びととの出会いから確固たる自分の夢を見出していくストーリーは田渕先生の作品らしいなぁと思いました。
主人公の軽やかで洗練されたハリウッド一(いち)裕福な孤児レイモンドはその軽妙さも朗らかさも時折見せる寂しい顔も芹香さんの魅力にぴったりでした。
宙組の面々がこぞって芝居の間が良くてとてもよい作品に仕上がっていました。

とくに目を惹いたのはやはり女役に初挑戦の瑠風輝さん。『お騒がせ女優』の異名をとるシャーリーンという長身でゴージャスな映画スターの役でしたが『お騒がせ』と言われるも憎めないチャーミングさもきちんと表現されていて素敵だなぁと思いました。
「ハビロンの落日」の大階段を使ったクライマックスシーン撮影の場面の存在感と女役としての歌声の素晴らしさが秀逸でした。

もうひとり目を瞠ったのはレイモンド(芹香さん)の婚約者アビー役の天彩峰里さん。
レイモンドに対して高飛車だけれど、じつはもっともなことしか言っていないし、レイモンドのことも父親のことも心から考えている愛情深い女性なんだなと、そしてとても有能なんだなと。そういう女性であることがしっかりとつたわる芝居をする天彩さんにさすがだなぁと感心しました。
きっとレイモンドのことをほんとうに愛しているのだと思うし、きっとこれまでもずっとレイモンドが気づかないだけでアビーに助けられていたんじゃないかなと思いました。ほんとにもう、レイモンドったらコノヤロー!ですよね。あんなこと平気で言っちゃって。ドロシーとハッピーエンドはうれしいんだけど。

春乃さくらさん演じるヒロインのドロシーもまた幸せになってほしいなと思わせる素敵なキャラで、きっとレイモンドはさいしょに遇ったときから彼女に好意をいだいていたよねと思います。
桜木さん演じる映画スターのトニーも、鷹翔千空さん風色日向さん亜音有星さんたちが演じる映画のエキストラの面々もそれぞれに映画を愛していてそれに一生懸命に携わっているのがわかって、皆が愛するこの映画の世界がずっと守られますようにと心から思いました。
桜木さんのトニーを中心に映画に携わる人びとが歌う「Over the Rainbow」は感動的でした。

そういえば若翔りつさん演じる鬼軍曹とたとえられる怖い映画監督ハワードの役作りは芹香さんが新人公演で主演をつとめた「愛と青春の旅立ち」のオマージュかしらと思ったりも。(版権問題で見たことがないのですが映画のイメージで)
ひとりひとりのパフォーマンスも申し分なくこの充実したメンバーでこのミュージカルコメディが演じられる贅沢さを堪能しながらこんな舞台をもっともっと見たかったという思いが湧き出づるのをとめられませんでした。

日本物レヴューの後物のお芝居ということでハッピーエンドのあとに付いたフィナーレのショーがこれまた贅沢で素晴らしかったです。
さいしょの桜木みなとさん瑠風輝さんによる歌唱指導は、瑠風さんが本編にひきつづき女役のドレスで登場し歌唱もいつもの男役の声ではなく女役の歌声で。桜木さんとのハモりがそれはそれは心地よくて次回の大劇場公演ではもうこの2人のハモりは聞けなくなるのかと思うと遣る瀬無い思いでした。

大階段の真ん中でステキなドレスをまとった娘役さんたちに囲まれる芹香さんはおしゃれで華やか。KAORIaliveさんの振り付けがほんとうに似合う人だなぁとしみじみ。
男役群舞を率いて歌う「Fooling Good」も洗練されていてとても素敵。
芹香さんが去って桜木さん中心の男役群舞はまたちがった趣き。キレキレのダンスでキメる男役さんたちに思わずふふっとなりました。
そして芹香さん春乃さんのデュエットダンスは「Smoke Gets In Your Eyes 」。長身の2人のスタイルの良さと品の良さが際立って宙組らしい素敵なトップコンビだなぁと思いました。
ジャズが似合う芹香さんの雰囲気が私はとても好きでこんなフィナーレをもっと見ていたいと思いました。が、1月は自分の予定が合わずこの3回しか見られませんでした。(東京公演も1回分しかチケットがない状態です・・涙)
早く映像でこの美しさ儚さそして粋でおしゃれな宙組を繰り返し摂取したいと、いまはひたすらにBlu-rayの発売を待っています。

| | | コメント (0)

2024/11/15

運命ってやつにもう一度挑戦しようじゃないか

11月4日に鹿児島市の宝山ホールにて宙組全国ツアー公演「大海賊」と「Heat on Beat!」をマチソワしてきました。ツアーの大千秋楽でした。

素晴らしいパフォーマンス、それを余すところなく楽しもうとする客席の意気込み、圧巻の熱量が充満する空間を体験しました。
楽しくて幸せで忘れられない観劇になりました。

このところ宙組生に疎くなっていたのですが、お芝居ショーともに多くの出演者にセリフや見せ場のある作品で、それぞれの出演者がイキイキと演じている姿を見ることができて解像度が高まり、宙組を見る楽しみがまた増量しました。

ヒロインの義姉マリア役の湖々さくらさんの「与えられたものを受け取って」真摯に生きる年長の婦人としての威厳と慈愛をうかがわせる落ち着きのあるセリフ回しと歌。タカラヅカニュースのナビゲーターとしての姿には馴染みがあったものの、こんなお芝居をしてこんなふうに歌う人だったのだとのは初めて知ったように思います。

初見で主人公の母上の悪者に抵抗する際の身のこなしのキレにおっ?と思っていたらやはり水音志保さんで、それ以降ずっと美しい母上から目が離せずその美しい死に顔に見惚れている間に照明が落ちてはっと我に返る、というのを初見の福岡公演から繰り返していました。
ショーでもたくさん活躍されていて、なかでも「Fly me to the moon」を歌う芹香さんを天彩峰里さんと挟んでのおしゃれでキュートなダンスや「ジェラシー」での瑠風輝さんとのタンゴのペアは目が釘付けでした。

スキンヘッドにびっくりした輝ゆうさんの鉄砲玉は愛嬌たっぷりキャラでいつも仲間と面白いやりとりをして楽しませてくれました。
ちょっと斜に構えたネコザメ役の嵐之真さんは、サンタ・カタリーナ炎上の場面では前回の大劇場公演(ルグランエスカリエ)に引き続きソロで歌を聴かせてこれからも宙組の歌い手として注目したいなと思いました。
聞き耳役の真白悠希さんもルグランエスカリエに引き続きお芝居ショー共にやはり舞台センスで目を引きました。見ていてとても快感でした。

フレデリック役の泉堂成さんは、福岡サンパレスの感想にも書きましたが、歌唱力のある瑠風輝さん鷹翔千空さんとともにしっかりとハモっていてすごいなぁと思いました。これからの成長がますます楽しみです。
海賊たちをまとめる拝み屋役の鳳城のあんさん、最初は鳳城さんとは思わず上級生かなぁと思っていたほど荒くれ者の海賊たちをまとめる年長者の落ち着きと声の張りがあって、あとで鳳城さんと知ってびっくりしました。
まだ106期だとか。宙組に欠かせない存在に成長しそうでたのしみです。
ウミネコ役の渚ゆりさんも少年役が溌溂としてとても可愛くて愛でたい存在でした。どういう経緯で海賊に加わったのかも気になるし、海賊たちにも可愛がられているんだろうなと想像をめぐらせました。

コロナ禍では出演人数に制限が設けられていたり、昨年の出来事以降は公演ができない状況が続いたりでなかなか舞台に立つ機会を持てなかった彼女たちが、活き活きと役として舞台上で生きている姿を見られて嬉しく思いました。
見たかったものをやっと見ることができた。ブランクなど感じさせない素晴らしいパフォーマンスを。そのために重ねただろう努力や意志を尊く愛おしく思いました。

顔覚えがわるいので、一度にはたくさん覚えられないのですが、これからもっと下級生を覚えていきたいなと思えた公演でした。

同時期に公演されていたバウホール公演のほうは見ることができなかったのですが、この全国ツアー公演のメンバーにバウのメンバーも合わさった宙組の次回大劇場公演を心から楽しみにしています。
いまの宙組、これからの宙組が輝くことを願っています。

| | | コメント (0)

2024/11/04

You are all I long for

10月29日と30日に福岡サンパレスホールにて、宙組全国ツアー公演「大海賊」「Heat on Beat!」を見てきました。

お芝居ショーともに満足度の高い観劇になりました。
20数年前に宝塚を見はじめて以来、宝塚歌劇とは音楽性は求めずにそれ以外を楽しむものだとずっと思っていました。(それで充分幸福感を得ていました)
ですが近年その認識を覆される経験を幾度かして、今回の観劇で決定的にもう以前の宝塚とはちがうのだと理解しました。

歌い上げる楽曲で魅了するタカラジェンヌはこれまでも数多いましたが、ジャズやロックに関しては期待してはいけないんだなと思いつづけて幾星霜。それが礼真琴さんの星組にガツンと衝撃をうけ、いままた芹香斗亜さんの宙組に全方向から袋叩きにあった気分です。とても心地よい袋叩きでした。

瑠風輝さんと鷹翔千空さんのツインヴォーカル的なロックのハモりに脳からお汁がでるような快感を得、芹香さんの「Fly me to the moon」に泣きそうになりました。
トップスターから4番手までがそれぞれに自分の個性で歌える宙組のこの陣容をずっと私は待ちわびていたんだなぁと。
礼さん星組の壮大な力技に対して芹香さん宙組の抜け感。どちらも好き。そう思える幸せに泣けちゃう感覚。
これも過去からの数多のタカラジェンヌたちの積み重ねの上にあるんだと思うと感無量でした。
「大海賊」も「Heat  on Beat!」も私にそれを感じさせる演目でした。

私が宝塚にハマったのはちょうど紫吹淳さんが退団を発表されていた頃で、スカイステージでは数か月にわたり紫吹さん出演の舞台が放送されていました。
その流れで繰り返し見ていたのが紫吹さん主演の「大海賊」と「ジャズマニア」(「Heat  on Beat!」とおなじ三木章雄先生作演出)で、本公演、新人公演、全国ツアー公演版とそれぞれを飽きることなく見つづけていました。(当時は映像も粗くてTVのアスペクト比もいまより狭く、見えないものをいっしょうけんめい見ようとしていたなぁと思いだします笑)

時は流れて10年以上録画も見返していなかったのですが、瑠風さんのエドガーに初演の湖月わたるさんの表情が、鷹翔さんのロックウェルに大和悠河さんの声や表情が思い起こされるという不思議な感覚を得て我ながら驚きました。
「Heat  on Beat!」のどの場面だったか、芹香さんが手を叩いた瞬間に「あっこれ瀬奈さんだ!」と思ったのも不思議な感覚でした。
過去のタカラジェンヌから脈々とつづいているものがあるのだなぁとしみじみと思いました。

瑠風さんエドガーとその部下、鷹翔さんのロックウェルと泉堂成さんのフレデリックのトリオで「焼き尽くせ」と歌うナンバーは、あれ?この曲ってこんなにハモる曲だったっけ??もしかしてナンバー変わった???と自分の記憶を疑ったりもしました。
初見の終演後に、初演も再演も記憶されているファン友さんに訊ねたところ、ナンバーは同じとのこと。
2回め以降の観劇では、瑠風さん鷹翔さん泉堂さんのハモりにゾクゾクしながら「進化していく宝塚」に感慨を覚えました。

初演の大空祐飛さんのフレデリックは誇り高い青年貴族の雰囲気で、女王陛下の命によりエドガーの下で(おそらく家格はエドガーよりも上)渋々海賊行為を行っているプライドの高さがうかがえて、そのストイックな軍服姿も相まってなんともいえない魔力がありました。
野卑な大和ロックウェルに揶揄されてクールな面(おもて)が僅かに嫌悪に歪むのが私の中の悪い悦びを刺激して大いに性癖に刺さったことを、泉堂さんの可愛いフレデリックを見て鮮明に思い出しました。
泉堂さんのフレデリックは鷹翔ロックウェルに感情を手玉にとられて内心で地団駄を踏んでいるのを隠せずにいるところが可愛いなと思いました。鷹翔ロックウェルもついつい彼をかまわずにいられない感じなのかなと想像しました。
初演とは学年が逆転しているのと演者の個性も相まって、関係性がちがって見えたのが面白かったです。

「過去、そして現在」を感じ、いまと未来の宝塚を愉しみに思う気持ちと、かつての宝塚への愛とを味わうことができて、そんなところにも満たされたのかなぁと思います。
長年の宝塚ファンの方々はこういう楽しみも味わっていらっしゃるのかなと思ったり。

「Heat on Beat!」はどのシーンもクオリティの高い最高のショーで、いまの宙組でこのショーが見られて本当に良かったなぁ心から思いました。
同時に、でもこれで全員じゃないんだなぁと、しかもこれがいまの芹香さん率いる宙組最後の洋物ショーなんだなぁと思うと残念な気持ちにもなりました。
(田渕先生、どうか素敵なフィナーレをよろしくよろしくお願いします)

千秋楽の鹿児島公演を見に行くことができるので、このお芝居とショーを悔いのないように堪能して来ようと思います。

| | | コメント (0)

2024/09/01

儚さを抱きしめて

8月22日に東京宝塚劇場にて、宙組特別公演「 Le Grand Escalier」を見てきました。三井住友カード貸切公演でした。

航空性中耳炎から観劇

1公演だけの観劇なので飛行機で日帰りしたのですが、お盆前に罹患した新型コロナ感染症からの副鼻腔炎が治りきっていなかったせいか、機内で航空性中耳炎を起こしてしまい難聴状態での観劇となってしまいました。(新型コロナ感染症侮るなかれです💦)

症状としては世間の音がすべて遠く聞こえる感じだったので観劇に影響があるのではと心配だったのですが、劇場の音響の中で増幅された音は特に問題なく聞こえてほっとしました。(終演後に会った友人の声は記憶していた声と違って聞こえてあれ??となりました💦)

というわけなので私自身の聞こえのせいもあるかもしれませんが、前回(7/31と8/1)の観劇時よりも皆さん声がお疲れかも?と思いました。
瑠風さんが歌うのを聴くのは大劇場公演以来でしたが、「まことの愛」はとても慎重に歌われている印象でした。

芹香さんや春乃さんの歌も前回の観劇時よりも残響少なめに聞こえたのですが、やはりこれは私の聞こえの問題だったのでしょうか。それとも音響が変わったのか、はたまた座席位置のせいなのか。
考えても答えは出ないのですが、アコースティックぽいというか声の強弱など生っぽくてこれまでとちょっと違う響き方に聞こえて貴重なものが聴けた気がしました。

瑠風さんの復帰

今回の楽しみの一つは前回見られなかった瑠風さんを見ることでしたが、大劇場公演ぶりに見る瑠風さんが想像を超えて弾けていたのに驚きました。
「幸福を売る人」も「アイ・ラブ・レビュー」も大劇場とは全然ノリが違ってとても前のめりな印象、「マンハッタン不夜城」も軽快になってていいもの見たなぁと楽しかったです。
私の中で瑠風さんは真面目なイメージが強かったのですが今回で変わりました。これからもいろんな瑠風さんを見たいです。

春乃さくらさんに惹かれて

大劇場の舞台機構を使っての80分の特別公演ということもあって盛りだくさん、見どころ満載のショーでしたが、娘役さんたちの活躍がたくさん目に止まって見れば見るほど心躍りました。

トップ娘役が活躍する場面もいつにも増して多かった印象的ですが、春乃さくらさんの期待を裏切らないパフォーマンスとなにより舞台に幸せそうに立っているそのことにとても救われましたし幸せな気持ちになりました。
「HiGH&LOW」のKIDAで大好きになった娘役さんでしたが、この公演でさらにさらに大好きになりました。
どの場面の春乃さんにも惹かれましたが、公演を見るたびに好きになっていったのは「アイカランバ」です。
今回もセンターの扉からの登場で待ってました!と思いました。あの衣装の領布のようなものをひらひらさせるその動かし方が好きでリズムに乗る体の動かし方が好きで歌声、歌い方が好きで銀橋を渡るときの芹香さんとのコンタクトが好きで・・もう存在のすべてが好きでした。理屈を超えて。
なぜかこの場面の春乃さんを見ていると毎回遠野あすかさんを思い出したりもして。姿が似ているというのではないんですけど。

視線泥棒の鷹翔千空さん

ジャングルの蛇はもちろん、ずっと私の視線泥棒だった鷹翔千空さんの活躍も忘れることができません。瑠風さんの休演中はカーニバルの場面を出ずっぱりで盛り上げていたことも。
瑠風さんが復帰しての「アイ・ラブ・レビュー」は鷹翔さんのスウィング調の歌をまた聞くことができて、これこれこれを待っていたのよと思いました。
このクオリティの高いショーを支え、時に引っ張っていたのは間違いないと思います。

桜木みなとさんのクオリティ

桜木さんを芯にした場面のクオリティの高さも瞠目ものでした。終始レベルの高いパフォーマンスを見せていた桜木さんの存在があってこそのこのショーの満足度だと思います。
桜木さんセンターの作品(芝居もショーも)をこれからももっと見たいと切に切に思いました。

芹香斗亜さんと宙組

まだ芹香さんが新公を卒業するかしないかの頃のCSの対談番組で「怒るという感情がわからない」的なことを話していたことがいまでもずっと心に残っています。
個人の内面のことですのでその理由は分かりません。
ただ人前で演技をすることを生業にしている人にとってそれは大丈夫なの?と思い、それ以来なんだか気になるジェンヌさんでした。(私が見たのは初回放送から数年後かもしれません)
宙組に異動になった芹香さんは感情溢れる芝居をする人で、観客を楽しませることを自分も楽しんでいて、宙組の下級生を育てたいとも話すその姿に頼もしさも感じていました。
10代で入団して以来関わった様々な人の影響をうけて成長しいまの姿があるのだろうなと思いましたし、それをまた下級生に返すことで貢献していこうとしているのだろうなと、そんなふうに思いお披露目公演を楽しみにしていました。
今回の特別公演では、舞台の真ん中で力の限り歌い上げる姿、桜木さんとの絶妙なコンビネーション、それらをようやく見ることができたことに宝塚大劇場では言葉にならない感慨が溢れました。
そして東京公演ではそれを繰り返し見ることができる喜びを感じました。

あの頂へ

おなじ場所からおなじものを見ていたとしても人によって見えるものは違うのだと思います。
私が見て感じたものは私のもの。
90周年から100周年にかけて、100周年から110周年にかけて、1ファンとしても公演スケジュールがどんどんタイトになっていくのは感じていましたし、求められる技能がより高くなっていくのも感じていました。
それがどれほど劇団員やスタッフにストレスをかけていたか。
いま思えばそれは当たり前ではなかったのだと分かりますが、当時はタカラジェンヌってなんてすごい人たちなのだろうと称賛の気持ちで仰ぎ見ていたように思います。
それを知っているからこそ心の中が波立ちますが、その中でがんばってきた1人1人に心からの拍手を送ることでしか私は自分の言葉にし得ない気持ちを表すことができないと思いました。
いまここ(舞台)にいる人たちにも私がファンになって見てきたここにいない人たちにも送るつもりで精一杯の拍手をしてきました。
ここから高みを目指して頂を見つめる人たちへ。

| | | コメント (0)

2024/08/19

どんなときも

7月31日と8月1日に東京宝塚劇場にて宙組特別公演「Le Grand Escalier -ル・グラン・エスカリエ-」を見てきました。

大劇場公演から1ヶ月

31日マチネと1日は念願の2階席で、大劇場公演を見て気になっていたところ(BLUE ILLUSIONなどなど)気づかなかったこと、を見られて感激しました。
31日のソワレはイープラスの貸切公演。生まれてはじめてのスマチケにドキドキしながら入場しました。

大劇場公演から1か月ほどの時間をおいての観劇だったのでだいぶ冷静に見られた気がします。やはり大劇場公演のときは情緒がおかしなことになっていたようです。
冷静に見てもクオリティの高い見応えある公演であることにはまちがいありませんでした。
そしてあらためて観劇して、いのちに関するナンバーがたくさん歌われていたのだなぁと思いました。だからこそ心にくるものがたくさんあったのだろうと思いました。
帰宅後身内のシリアスな問題に対応したり、まさかの新型コロナ感染症を発症したりでしんどいことが続いたのですが、そんなときに口ずさめる歌があることで私自身メンタルが救われました。

瑠風輝さんの休演

この数日前から瑠風輝さんが体調不良で休演と公式サイトで発表されており、私が観劇した両日も休演のままでした。
その瑠風さんが抜けた大きな穴を宙組の面々が総力を挙げて埋めていて、図らずも宙組のもつ強みを示す結果になったなと思いました。
「まことの愛」を堂々と歌い上げていた風色日向さん。
「パリはシャンパン」の洒脱なパリィ!の真白悠希さん。
山吹ひばりさん美星帆那さんと銀橋を渡りながら歌っていた雪輝れんやさん。
中詰めを含むカーニバルの1章まるごと、もともとの出番に加えて瑠風さんの出番もぶっとおしで歌い踊りまくっていた鷹翔千空さん。
「マンハッタン不夜城」でダンディだった瑠風さんとは打って変わって身のこなしのチャラいダウンタウンボーイが陽気で面白かった亜音有星さん。
鷹翔さんと風色さんのちょっと可愛くなった「アイ・ラブ・レビュー」。
などとくに印象に残っています。

代役のために本来の出番とは違うところに出演する慌ただしさや緊張感のようなものはもちろん感じましたが、大劇場公演と比べて舞台上のみなさんの表情が和らいでいるようにも感じられました。
大劇場では時折顔を覗かせていた悲壮感も薄らいで、シーンの情感そのものを感じられた気がします。
私自身もいろんなものを昇華することができた観劇体験になったと思います。

あらためて宙組への想い

近年の週刊誌によるいくつかのタカラジェンヌのネガティブ報道から有料記事であっても購読したい熱心なファンがいる界隈として認知され、よりセンセーショナルな内容をもとめて噂の発信源を探られて、裏どりのない憶測や一方的な視点で誹謗中傷する記事が書かれファン心理が煽られた日々。その報道禍に何人ものタカラジェンヌや関係者が傷つけられてきたと思います。
反論する術を持たないが故に一方的に発信する側の言い分のみが真実のように語られる。
その渦中にあってひたすら芸に精進してきた彼女たちを目の当たりにして私は愛し続けること以外のことはできないと痛感しました。
変わりゆく時代の流れの中で沈むことなく宝塚歌劇が存続できたのは経営手腕に長けた創始者の存在も大きいけれど、なにより愛好家たちファンダムの支えがあったからこそだと思います。
そのファンの理想や夢の具現として存在してきたタカラジェンヌ。いつの間にか時代との齟齬が生じていたのに看過していたのは私たちファンも同じ。見るべきものから目を逸らして利己的な望みを叶えてくれる存在であることをもとめてきたファンにも担うべき責任があったと思います。そのことを忘れないようにしたいと舞台にいのち輝かせる彼女たちを見ながら心に刻みました。

2日間の観劇を終えて帰宅した翌日、瑠風さん復帰のアナウンスがありました。
あと1公演のみですが観劇する機会がありますので、大劇場公演以来の瑠風さんと復帰した彼女を迎えた宙組をしっかりと堪能し目に焼き付けたいと思います。

| | | コメント (0)

2024/07/14

召しませ花を

宝塚大劇場にて、6月25日と30日千秋楽の宙組特別公演「Le Grand Escalier -ル・グラン・エスカリエ-」を見てきました。

命の輝きに心ふるえました。
どの曲もどの曲も口ずさめるものばかり。
次々に繰り出されるナンバーごとに、かつてのタカラジェンヌを通して見た夢がオーバーラップして、懐かしさとともにいま舞台に立っているタカラジェンヌたちも長い長い宝塚歌劇の歴史を背負ってここにいるのだなぁとしみじみと思うそんな時間を過ごしました。
この世界観を作り上げてくださったサイトー先生にありがとうございますと心から思いました。

モン・パリ~Le Grand Escalier~パリ・メドレー~花詩集

「Le Grand Escalier(大階段)」というショータイトルの通り、幕開きから大階段を使った息もつかせぬ勢いで繰り出されるパリ・メドレーは「パリ祭@大劇場」ともいうべき圧巻の華やかさでした。
明るい照明に映えるトリコロールカラーの青白赤の衣装を纏った宙組タカラジェンヌたちの輝きに感動しました。
歌い継ぐ1人1人が表舞台に立っていなかった間も鍛錬を怠らなかったことをうかがわせる出来栄えで素晴らしかったです。
名曲が活きる演出も心が浮き立ちました。
この作品唯一のオリジナル曲であるテーマソングの「Le Grand Escalier」も吉田優子先生らしい如何にもな宝塚レヴューの主題歌でほどよいノスタルジアと安心感に浸って耳と心を委ねることができました。

エスカイヤ・ガールス

圧巻のパリ・メドレーにつづいて湖々さくらさん愛未サラさん美星帆那さんの娘役トリオで銀橋を歌い踊る「エスカイヤ・ガールス」は、そのキラキラに思わず涙でした。80分のショーだからできたのかなと思いますが、いままでこういう若手娘役さんの場面ってなかったなぁと。でもずっとこんな場面が見たかったんだと、頑張っている娘役さんたちが輝く場面があるのはいいなぁと思いました。

まことの愛(ダルレークの恋)

瑠風輝さんが上手からせり上がり銀橋を渡りながらの「まことの愛」(ダルレークの恋)は、辺りを払うような歌声にドラマティックな物語の情景が浮かび引き込まれました。
本舞台で踊っていた娘役さんたちの中から1人サッシュ(勲章)を付けたロイヤルな「ダルレークの恋」のヒロインと思しき天彩峰里さんが瑠風さんに駆け寄り銀橋でいだきあう演出もドラマティックで惚れ惚れしました。
瑠風さんも天彩さんも一瞬で世界観をつくり出せて素晴らしいなぁと思いました。

夜霧のモンマルトル

桜木みなとさんが中心で歌う「夜霧のモンマルトル」では、このナンバーといえば!のトップハット&ケインの紳士がズラリ。いい眺めでした。
下級生が多いせいか動きが若いなという印象をうけましたが、舞台に立ってこそ得るものがきっとあると思うので、大劇場公演の11日間を経て東京公演では臈闌けた紳士に変身しているといいなと楽しみです。
その中でなんとなく身のこなしが好きだなと思う人がいて目で追っていたのですが、列の移動の時に追い切れず誰だったのか確かめられませんでした。
(たぶんその後列から外れて歌っていた人だと思うので真白悠希さんかなと思うのですが、千秋楽は席が下手すぎてわからず・・)
東京公演ではあれが誰だったのかも確かめつつ、ほかの人たちももっと見たいと思います。

夢人~BLUE ILLUSION~ENDLESS DREAM

Jungleの場面はザ・サイトーワールド!! どこを見たらいいのか誰もかれもが魅力的であたまが噴火しそうでした。

まず美しく妖しい鳥さんと思しき4人の娘役さんたち。
これは「BLUE・MOON・BLUE」でいうところの"うさぎちゃん”たちですよね? サイトー作品につきもののアイドル的娘役さんたち。
登場とともに目を惹く水音志保さん、山吹ひばりさんの美しさ、そして今回おぼえた渚ゆりさん、結沙かのんさん。
彼女たちをずっと見ていたいのですが、蛇に扮した鷹翔千空さんが怪しすぎて妖しすぎて・・娘役さんたちに横抱きにリフトされたときのポーズはどういうこと?? あの体勢でブレることなく手は妖しく動いていて・・これなにごと?? 娘役さんたちも見たいのにどうしても鷹翔さんを目で追わずにいられない・・どちらも見たいのにと葛藤しました。
銀橋で美しい娘役さんたちを従えた鷹翔さんの蛇が旅人の芹香斗亜さんに絡む場面は脳内からなにかが溢れ出しました。
「夢人」ってピュアファンタジーのイメージだったのですが、こんなに妖艶な世界で歌われて・・あたまが混乱し追いつきませんでした。

そして「夢人」からの「BLUE ILLUSION」の前奏でさらにあたまがBarrrrrn。
「BLUE・MOON・BLUE」は宝塚歌劇にはまったばかりの頃に映像で見て衝撃をうけた大好きな作品で、そのナンバーを生で体験できる興奮と、「夢人」のあとにこの曲がおなじシーンでつづく驚きで、自分を落ち着かせるのが大変でした。
独特の世界観の舞台セットに照明に、舞台上の妖獣のみなさん、妖花のみなさん、鳥さん、蛇さん・・に情報処理が追いつきません。(3回見たのですが未だ全容がわからず・・) (大きな火の鳥?不死鳥?ガルーダ?が上がっていきましたよね??)
妖鳥の春乃さくらさんの妖しいまなざしにズキュン。
苦邪組七姉妹の悪い春乃さくらさんが大好きだったのでこの春乃さんに射抜かれました。(いつもニコニコしているイメージなので振り幅にやられるのかな)
春乃さんにあたる赤い照明、蛇の鷹翔さんにあたる緑の照明、どうなっているの???
このシーンはスカイステージの舞台裏番組でぜひ映像を見ながら解説してほしいです。
妖獣の男役さんたちのロングヘア―も新鮮に感じました。
「BLUE ILLUSION」を歌う妖獣の嵐之真さんもこんなにちゃんと意識して見たことがなかったので新鮮でした。宙組も歌える方がたくさんいるんだなぁなどといまさらなことに関心しました。
とはいうものの、誰か1人だけをまじまじと見ている余裕もなく、妖しい蛇の鷹翔さんに、芹香さんを誘う春乃さんに、美しい鳥たちに、妖しい歌声を響かせる花たちに、激しく飛び回る妖獣たちにと次々に目移りして目が回っていました。(これぞイリュージョン?)(東京公演では2階席から見れたらいいなぁ)

「BLUE ILLUSION」からの旅人芹香さんが歌う「ENDLESS DREAM」は、こんなに贅沢なことがあっていいのかと。20年前の自分におしえてあげたい気持ち。これをいまの宙組で見ているんだ・・と「いま」とこの場面に思い焦がれていた「過去」が自分のなかで幾度も行き来して憧れ立つ心地でした。

フィエスタ アイ・アイ・アイ

と・・しみじみと浸っている間もなく、亜音有星さん大路りせさん泉堂成さんがキラキラのラテンの衣装で陽気に歌い踊って銀橋を通っていきました。
ここからは底抜けに明るいラテンのシーンに。(展開が早いのもこの公演の特徴かな)

カルナバル・デ・リオ!!~ソル・エ・マル~シナーマン

「カルナバル・デ・リオ!!」(RIO DE VRAVO!!)で風色日向さんと山吹ひばりさんが、「ソル・エ・マル」(ノバ・ボサ・ノバ)で天彩峰里さん松風輝さん秋奈るいさんが銀橋を渡った後は、舞台センターから芹香さんが登場して「シナーマン」を熱唱。
楽曲1曲で長い尺をたっぷりもたせて観客の視線を一身に浴びる、「PAGAD/Sky Fantasy!」を見ることが叶わなかった私は、これぞトップスターな芹香さんの姿に感無量。芹香さんが歌い切った後は「ノバ・ボサ・ノバ」らしく全員で飛び跳ねて盛り上がって終わるのだろうと身構え?ていたら、曲調が変わって「黒きバラ」(花詩集)に。
ええ~~~なぜに~~?と思いながらも真名瀬みらさんの歌声に惹き込まれ・・これはこういうショーなんだなと。(ようやくわかってきました)

幸福を売る人~パッショネイト!~CONGA!!~Aye Carammba~サザンクロス・レビュー

「幸福を売る人」(華麗なる千拍子)を瑠風さんが軽やかに歌い銀橋を渡ると次は春乃さくらさんの「パッショネイト!」(パッショネイト宝塚!)でした。
春乃さんの全力「パッショネーイ!!!」には思わず頬が緩んでしまい、2回め3回めの観劇では来るぞ来るぞとこのシーンを待ちわびていました。あっという間の場面なんですけど笑。
そこからの桜木さんセンターの「CONGA!!」が最高。そこに芹香さん春乃さんが加わっての宙組ほぼ全員による「Aye Carammba」はまさに「祭り」のフィナーレのような熱い盛り上がりで、その熱い旋風に客席の私も巻き込まれたかのような陶酔の中詰めでした。
見ている私の息も上がりきって息切れしそうなところで「サザンクロス・レビュー」鷹翔さんと若手男役さんたちが中心だったと思います。
もちろんアップテンポでノリの良いラテンナンバーなのはまちがいないのだけど、あれ?この曲ってこんなにせつなかったっけ?と思いました。「サザンクロス・レビュー」では哀愁のナンバーといえば言わずと知れた「星の海」で「サザンクロス・レビュー」はノリノリのラテンナンバーという認識だったのですが。あれ?なんでこんなに沁みるんだろうと。明るいラテンナンバーなのに「CONGA!!」や「Aye Carammba」とはちがうどこか刹那的な・・「祭り」はいつか終わることを知る者の哀切とでも言ったらいいのか。これが草野ワールドなのかなぁ?
ラテンナンバーと言ってもこれだけ立て続けに聴くとそれぞれにちがうなぁ。派手派手でノリノリなだけじゃないんだなぁとこれまで思いもしないことを感じました。

ラ・ヴィオレテラ

あんなに上がっていた息はいつの間にか落ち着き、耳には春乃さんが歌う「ラ・ヴィオレテラ」(ラ・ベルたからづか)。
『召しませ花をすみれ花』—— 『よろこびの花いつか咲きましょうあなたの胸に』
もう言葉にならないもので胸がいっぱいでした。なにかが溶けていくよう。表現するってこういうこと?春乃さんと娘役さんたちの声に癒されました。
(ラテンの場面にいなかった娘役さんたち、ここに出ていたのね——とプログラムを見て気づきました)

エル・アモール

つづくのは哀愁をまとった風色日向さんの「エル・アモール」(哀しみのコルドバ)。
そういえば初見のときはこの「エル・アモール」の場面まで風色さんに気づいていなかったんですよね。なんかときどき知らない番手スターさんがいるなぁと(そんなわけない)。「エル・アモール」で風色さんじゃんって。
あまりに堂々とスター然としている人がいて知っている風色さんの印象と結びつけることができなかったといいますか・・私が知っている風色さんじゃない風色さんがいました。
この数か月間で最も成長を遂げた人かもしれません。

グラナダ~コルドバの光と影

「グラナダ」の前奏はやった!と思いました。若翔りつさんの歌もとてもよかったです。
踊るピカドールたちの背後にある紗幕からマタドール姿の桜木さんが登場したときはひゃほーーー!!と思いました。
ムレータと剣を操る桜木さん最高にかっこよかったです。
1人で歌う「コルドバの光と影」(哀しみのコルドバ)も惹き込まれて見て聴いていました。
闘牛自体はその残酷さに嫌悪感があるので複雑ではあったのですが、あまり残酷には描かれていなかったかなと思います。トロ(牡牛)役の鳳城のあんさんがビスチェ風の女性的な衣装だったのであれ?牝牛じゃないよね?とそれに気を取られたのもあるのかな。桜木さんのフォームの美しさに釘付けだったからかな。
(スペイン的場面はカッコ良くて大好きなんですが、必ず闘牛がセットになるので極力残酷にならない演出を希望です)

WELCOME TO MANHATTAN~ゴールデン・デイズ

「WELCOME TO MANHATTAN」(マンハッタン不夜城)もわぁこのナンバーが聴けるのかぁと気分が跳ねあがりました。
「BLUE・MOON・BLUE」もですが大和悠河さんが大好きだったので生で見ていない下級生時代の作品のナンバーを聴けるのは感無量でした。とくに「マンハッタン不夜城」は解像度が低い時代のスカイステージでしか見たことがなかったのでひとしおです。
芹香さんがとってもラフでカジュアルな服装で登場したのに驚きました。ダウンタウンボーイの設定なんですね。
春乃さんの赤ずきんちゃんみたいな魔法使いがキュートで、舞台上で大勢でわちゃわちゃとても楽しい場面でした。
そこからの「ゴールデン・デイズ」は感動でした。こんなに一言一言歌詞を噛み締めて聴いたことはなかったかも。

ザ・レビュー

「ゴールデン・デイズ」の盛り上がりに区切りがつくと下手から亜音有星さん大路りせさん山吹ひばりさんが登場。イントロは「ザ・レビュー」です。
この曲を聴くと「Amour de 99!!」が思い出され当時の宙組の情景が思い浮かびました。あの頃、そして今、綿々とつづく宝塚歌劇がここにあるのだなぁと朗らかに歌いながら銀橋を渡る3人の未来を思って心の中でエールを送っていました。

アイ・ラブ・レビュー~TAKARAZUKA FOREVER

続いて瑠風さんと鷹翔さんによる「アイ・ラブ・レビュー」(ザ・レビュー)。瑠風さんがクラシカルに歌い鷹翔さんが跳ねるようなリズムで歌う。同じ曲でも味が違って面白いなぁと思いました。表現力のある2人だからこそだなぁと。
銀橋から瑠風さん鷹翔さんの紹介ポーズを受けてはじまるラインダンスは「TAKARAZUKA FOREVER」(ザ・レビューⅡ)。いつになく1人1人の顔がよく見えるラインダンスだなぁと思ったのですが、私がいつもより見ていたのかなぁ。命がキラキラ輝くこの素晴らしい光景をいつまでも見ていられますようにと願いながら見ていて目が離せなかったのかもと思います。

愛の旅立ち~セ・マニフィーク~未来へ~世界に求む

「愛の旅立ち」(ザ・レビューⅢ)は目も耳も心もすべてを芹香さんに集中。ひとつひとつの言葉を表情を心の奥深くに染み込ませました。
しみじみとした場面から一転しての桜木みなとさんセンターの男役群舞「セ・マニフィーク」は圧巻でした。
この安定感。桜木さんもセンターで大人数を率いるに相応しい男役さんだなぁと思いました(宙組は実力者大渋滞だなぁ)。千秋楽の前髪とってもカッコ良くて釘付けでした。全員白の替わり燕尾服も目に眩しかったです。
つづく春乃さくらさんセンターの娘役場面も素敵でした。心にそよぐ涼風のよう。「夢を売る妖精」(夢を売る妖精たち)の春乃さんの澄んだ歌声が心のなにかを溶かすようで涙がでました。
春乃さんと歴代の宙組のトップ娘役たちの頼もしさがオーバーラップしてさらに涙腺が緩みました。
そこからの「未来へ」(エクスカリバー)のイントロで私の情緒はえらいことに。芹香さんを囲む宙組生の顔、顔、、、いまここにあるものすべてが。
そして「世界に求む」(王家に捧ぐ歌)のデュエットダンスでもう胸がいっぱいでした。
このときのカゲソロ、プログラムを確認したのですが志凪咲杜さん?108期??まったくのノーマークでした。オーディションで勝ち取ったのかなぁ。これから注目したいと思います。これからも宙組の下級生に活躍の場が与えられますように。

シトラスの風~宝塚メドレー

パレードのはじまりは、愛未サラさんエトワールの「シトラスの風」の主題歌から、階段降りは宝塚の名曲メドレーでした。
宙組の皆さんに精いっぱいの拍手を送りました。
千秋楽では組長の松風さん芹香さんの挨拶に拍手が鳴りやまず、芹香さんが長い長いおじきをされていたのが印象的でした。
花道ちかくの席だったのですが、カーテンコールのたびに居並ぶ下級生の笑顔にしあわせをもらえました。
どうぞこの宙組の皆さんが一歩ずつ前に進んでいけますようにと心から願いました。

観劇を終えて

観劇直後は胸がいっぱいで、この胸に溢れるものが何なのか、自分でもよくわからず文章にもできませんでした。
時間をおいてようやくここまで書くことができました。
いまいちばん思うのは、彼らは素晴らしい表現者である。ということです。

彼女たちに対していろんな人がそれぞれの立場からいろんなことを言われていますが、私には舞台から見えるものしかわかりません。
私はこの公演のパレードから見える宙組生の人員の少なさに心が痛みました。
この人数で大劇場公演を成功させるため1人1人に課せられた役目はどれだけ重いだろうと。
この1~2年はとくに上級生には単純に通常の倍とかそんな負荷がかかっていたのではないかと。常に余裕のない中で自分の役目を果たしながら人に指示をする指示されることがなにをもたらすものか想像すると胸が痛いです。
それを物理的に是正できなかった劇団の責任はもちろん感じますが、やらなくてはならないことは何がなんでもやらなくてはいけないと、物理的に無理なことでも心厳しく臨むべきだと教えてきた先達たちにも、同時にそれを是として過剰に求めたファンにも責任はあると思えてなりません。
また、自分が好ましくないと思うタカラジェンヌに対して憶測に憶測を重ねて不特定多数の人の目に触れる場所で誹謗しそれに同調するような向きがあるのをいまにおよんでも感じます。そんなファンのあり方がどれだけ彼女たちを追い詰めているかと思うとたまらなくなります。
彼女たちが無用に追い詰められストレスフルな状況下におかれることがないように。
これまでのトークやインタビューなどから窺い知れる彼女たちの芸の精進のために自分を律する強さが、どうか健やかな環境の下で発せられますように。どうかどうか健やかな心で精進できる環境でありますようにと心から願います。

この公演を観劇して、命はこんなにも眩しく輝くものなのだと感じました。
命がこんなにも輝くものだからこそ、それを手放すしかなかった人のことを忘れてはいけないのだと心から思います。

| | | コメント (0)

2023/11/20

完璧じゃない生きてくことは(Eres mi amor ―大切な人―)

11月14日付で宝塚歌劇団が発表した調査報告書を読みました。

さまざまなことが千々に思い巡らされ、文字にしようとしてもとてもまとめることができませんが、なにか一つを考えるごとに、これだけの放置状態であのとてつもない舞台をとてつもない数こなしていたんだなぁという驚きが心の中から溢れてきます。

「すみれコード」や「フェアリー」という呼称に代表されるような夢の世界にそぐわないからと「存在しないもの」「無いもの」とされていたもの。
それは彼女たちを守るためのものではなく彼女たちの人間としての尊厳そのものを犠牲にさせることだったとあらためて悟りダメージを受けています。
機関誌や専門チャンネル、お茶会などでの彼女たちの発言から断片的に感じるものはあったのにその本質を見ないようにしていた自分が情けないです。

阪急電鉄本体、そして歌劇団の運営側にとっても、彼女たちが命を燃やして頑張っていることは「勝手にやっていること」という認識だったのだなぁと報告書の文面を追いながら考えました。組織全体として俯瞰的な現状把握もなく意識改革もされず、無理が生じるたびに部分最適を繰り返してきた結果が一般社会の常識とはかけはなれた文化の形成につながり、そのことが彼女たちにますます負荷をかけ今回の出来事につながってしまったのだろうと推測して遣る瀬無い思いに心塞がれています。

世間一般から隔絶され放置された状況であれだけの数のあれだけのクオリティの公演(一つ間違うと危険を伴うパフォーマンス)をこなしていくために形成されたガラパゴス的文化はとうてい1人だけで担えるものではなく現場にいる人びとの途切れぬ協力があってこそのはず。
そこに過ちがあったことは間違いはないと考えますが、支え合うことでなんとか成り立っていたものがなにかをきっかけに崩壊してしまった。
それがなんだったのか。それを審らかにできなくては、この先の安全な公演も無理な気がしてなりません。
もちろんなによりも全構成員の意識改革が最優先だと思います。

罪の意識がなかろうと構成員の誰もが加害者であり被害者であり得たこと。
同時に彼女たちに身勝手な夢を託していたファンもまた加害の一端を担っていたことを認める必要があると思っています。

認めるにはつらいことがたくさんありますが、彼女たちが人として尊重されますよういまは心から願っています。

Eres mi amor ―大切な人―/星組公演「シークレットハンター」

 

| | | コメント (0)

2023/05/23

幻のヌベラージュ。

5月19日に東京宝塚劇場にて宙組公演「カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~」を見てきました。
ひと月前に宝塚大劇場で観劇していたので、過大な期待はせずに宝塚を楽しめたらいいなというつもりで臨みました。

バカラの場面など、大劇場公演では散漫に感じた箇所がイキイキとした場面に変わっていてやはり東京公演はいいなぁと思いました。
大勢口の場面が希薄な印象になってしまうのが宙組の悪い伝統だなぁと他の組を見た後など特に思います。
(「High&Low」の時は全くそんなことはなかったのですが)
私は宝塚大劇場での観劇がメインなので東京公演では良くなっているというのも、それはそれでなんだかなぁという気持ちになります。
このスロースターターな組気質が改善されることを切に願っています。

真風さんと潤花さんがパラシュートに乗っている場面は2人のこれまでを思うとやっぱりせつなくて、フィナーレのデュエットダンスは2人のあまりの美しさと輝きに気づいたら涙目になっていました。

演者が放つ刹那の輝きに感動はしたけれど、やはり作品自体はしっくりこないというか、引っ掛かるところがあって気持ちがうまく乗れませんでした。
プロローグの男役たちのスーツのダンスにはテンション爆上がりだったのに、場面が替わりジャマイカでボンドが女の子たちにマティーニとシガレットをもらい「サンキュー、ローズ、リリー」でやっぱりだめだこりゃになりました。
最初から最後まで気持ちのアップダウンが激しい作品でした。

マリンブルーのジャケットに白いパンツの伊出達の真風さんが若大将にしか見えない呪いにかかってしまったのは辛かったです。銀橋の歩き方もあの場面だけなんというかとても昭和で。作品の年代に合っているといえばそうなのかもしれないですが。スタイリッシュはどこに行ったん?と思いました。

デルフィーヌに対するボンドのセリフも
苦手でした。最初のとおりすがりのキスの場面から。どうだ俺は凄いんだぞとずっと言っているみたい。
ヒロインをもっと対等に対話ができる大人の女性に設定できなかったのかなぁ。ボンドが始終器の小さい男に見えて残念でした。

ムラで見た時よりもCIAのフェリックス・ライター役の紫藤りゅうさんの顔つきが変わったなと思いました。強くて正しいと自負する「アメリカの貴族」の末裔という印象。お金にものをいわせてストレートに物事を思い通りに動かす「世界のお坊ちゃま」。いかにも60年代のアメリカのイメージ。

対して瑠風輝さん演じるルネ・マティスが人が好すぎて英米に対して卑屈なのが気になりました。根は良い人でも時にはプライドの高さが垣間見えてほしいし卑屈ではなく皮肉に聞こえるくらいのエスプリがほしいな。
フェリックスの「マテリアル(物質・金)」とマティスの「エスプリ(精神・軽妙洒脱な知性)」の対比が見えてこそ、米仏の2人が配置されている意味があるのではないかと思います。
60年代はフランスにとって苦しい時代だけど人生の価値はお金だけではない、そんな矜持を人々は持っている。
「フランスは貧しいからこそ卑屈になることを拒否する」と戦後ドゴールは言ったそうですが(その高慢な気取り屋ぶりを実利主義者のルーズベルトは鼻で嗤ったとか)、ルネもまた内心に哲学と愛があるフランス人だと思いたいです。

トップコンビと長く組に貢献した組長さんの退団公演ということもあり、随所に過去作を彷彿とさせるセリフがあったり、演じる本人たちの関係性と照らし合わせて感傷的にさせる場面もあったのですが、作品として最も心に響いたのはミシェル役の桜木みなとさんが歌った歌(「夢醒めて」)でした。歌詞の言葉ひとつひとつが沁みました。
潤花さんが歌う「RED BLACK GREEN」も素直に胸にきました。

スメルシュの鷹翔千空さんはやっぱり身のこなしがカッコよくて、登場すると勝手に目が追っていました。
桜木みなとさん、鷹翔千空さん、花菱りずさんの役になりきった芝居が光って見えました。
(若翔りつさんもかなりの芝居巧者なのだけど役が残念すぎて)

ドクトル・ツバイシュタインの場面は東京でもこのままなのかーと残念に思いました。
ナチスに協力したドイツ人科学者が何をしたか、戦後その技術力を目当てに連合国側の米ソが何をしたか、そしてソ連が彼らに何をしたか。彼らの研究が戦後の世界になにをもたらしたか。そんなことが頭を過って。
易々とルシッフルのもとに行けるくらいだからソ連にとってもそれほど重要な人物じゃないよねとも思うし、実際そういう役だったんだけども思想が問題な人物なわけで、コミカルな仕立てにしているのがなおさらでとても無邪気に笑えませんしグロテスクに感じました。

皇帝ゲオルギーは立ち上がるとかも正直いらないよねと思います。ボンドのおじいさん設定も。アナグラムも別にあれでなくても。
退団者への餞の気持ちはわかるのですがよほど巧くやらないと世界観が壊れてしまうなぁと思いました。

イルカはやっぱり謎でした。
人命救助するイルカはいるけどイコール「イルカは人を愛する」とはならないと思うし。個体差だし知能が高い分残酷であったりもするし。なぜ急にジェイムズ・ボンドが夢見る夢子ちゃんみたいになるん?と。
理想をイルカに託してロマンを語っているの? でも私が真風さんのボンドに見たいロマンはそこじゃないんだなぁ。
同調するデルフィーヌもなかなかだなぁというか、ボンドがイルカの話題を出したらすかさず「私の名前はイルカって意味なの」と言い出したのは彼女だったし。そういう意味では2人とも夢見る夢子ちゃんでお似合いなのかも。
いや、ボンドは彼女のことをちゃんとリサーチしてて、名前に因んだイルカの話題を出すとすぐに食いついてくるとわかってやっている作戦に見えたらなるほどね~と思うのだけど、そうは見えない。案外本気ですよね。

真風さんは大人っぽい役が似合うと思われがちだけど、トニーやニコライ、フランツやローレンスなど純粋な青年役が素敵だと私は思っています。
今回のボンドみたいに人生経験の浅い女性をターゲットに見下している感じがする役は苦手だなぁ。おそらく私は小池先生のオリジナル作品の主人公が苦手なんだと思うのだけど、今回のボンドは究極に私が苦手な匂いがするのと真風さんはなぜかその私が苦手なところをより強調しちゃうんだろうなと思います。私に起因する問題だと思いますが。

「アナスタシア」のディミトリはいままで宝塚で見た主人公の中でも屈指で好きです。「神々の土地」のフェリックスも最高だったなぁ。麗しのルイ14世も好きだったし、屈折してたり変人だったりする真風さんの役も純粋な役と同じくらい好きです。
わたし的に、真風さんのラストがこの役なのが遣る瀬無いというのが引っ掛かっているのかなぁ。
もしかしたら私が見たかった真風さんの片鱗を今回の鷹翔千空さんに見出しているから鷹翔さんに釘付けになってしまうのかもしれないなぁ。
(これを書きながら録画していた2016年の宙組「バレンシアの熱い花」を見ているこの瞬間も真風さんのラモンのカッコよさに見惚れていました)

「007」だと期待しなければ、宝塚らしい退団公演だと思えましたし愛のある脚本だなとも感じました。
引っ掛かるところはあるけれど、真風さんが晴れやかに卒業されたらそれがいちばんだし。
と自分を納得させて劇場を出てスマホを開いたら、千秋楽の全世界配信のニュースが。
喜ばしいはずなのに手放しに喜べない。
最後の最後にやってくれるなぁ涙。

続きを読む "幻のヌベラージュ。"

| | | コメント (0)

2023/04/15

二度と同じ夢は見れない。

4月6日と7日に宝塚大劇場にて宙組公演「カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~」を見てきました。

正直唖然としました。
でもトップスターの退団公演ならこんなものなのかもしれません。
小池先生の作品だし世界の「007」ということで期待しすぎていたのかも。
でも甲斐先生&太田先生の音楽でこの盛り上がらなさはどういうこと?とは思います。
音楽だけはいつも裏切らなかったのになぁ。

トンチキなのはいいとしても設定があまりに稚拙だと物語に入り込めないなぁ。
ロマノフの継承に関する部分とマッドサイエンティストのところでうーんとなってしまいました。
(ロマノフ家の帝位継承が指名制??「大公女襲名」??大公女の戴冠式??「大公女陛下」??そもそもツァーリの娘か孫娘に生まれないと大公女にはなれないのじゃないの??と同日観劇した知人に疑問を投げかけたら「考えたら負け」との御達しが)
イルカの歌のロジックも謎でした。
歌唱指導にも使用するくらいなのでいちばん言いたいことなんですよね?
キキちゃん(芹香斗亜さん)どんな気持ちで歌っているのかなぁ。タカラジェンヌは偉大だなぁ。

岡田先生の場合は女豹だけど、小池先生の夢は女子大生なのかなぁ。
大学生、劇作家、社会活動家など知的でお堅い属性の女性を籠絡するの好きだなぁ。
などとストーリーとは関係のないことを考えながら見ていました。
脚本自体、設定を面白がって書いているというか、散りばめられた過去作の欠片に気づいてほしそうに書かれているようでした。
ロマノフとか、マリア皇太后とか、マッドサイエンティストとか、女子大生もそういう欠片の1つかな。
いっそホテルを建てたらよかったのになぁ。
というか007の設定、いる? とかいったら元も子もないか。

でも007、冷戦時代のスパイものの設定が活きている場面が見当たらなかったのも事実。
スパイものなのに全体にまったりしていてスリリングな場面もなかったし、せっかくパリに英米仏のエージェントが集まったのに、英国人らしさ米国人らしさフランス人らしさでクスリとさせるような場面もなくて。
ステレオタイプすぎるのは批判されるかもしれないけど、共通認知を有効に使って知的に表現するのも腕の見せ所なのになぁ。
そういうところがスパイものの面白さだし、そこに1960年代らしさも加わるととても素敵なのに。

スパイものらしい身のこなしが素敵だったのが、スメルシュ役の鷹翔千空さんでした。
ピストルを撃った時の反動がリアルで。良い筋肉の使い方だなぁと惚れ惚れしました。
ジェイムズ・ボンドのこともル・シッフルのことも容易に仕留めてしまえそうなのに、さぁというところ部下を助けに行っちゃうのがツボでした。(良い人♡)

緩急のある芝居で場面を面白くしていたのはミシェル役の桜木みなとさん。過激派の学生と言われるとそうなの?という設定だけど。
それからゲオルギー大公の妃役の花菱りずさん。彼女が大袈裟なくらいに芝居をしてくれたので飽きずに見られたかなと思います。
天彩峰里さんも歌、芝居の巧さが際立っていました。ル・シッフルの横暴さを堪える部下の顔と自分より下の者には鞭を揮って悪女ぶったりしたかと思うとコメディタッチで場面をすすめたり、いろんな顔を見せてさすがでした。

真風涼帆さんはいつもの真風涼帆さんとしてカッコよくて、潤花さんもいつもの潤花さんで華やかで、芹香斗亜さんはいつものチャーミングな悪役で。
役というよりキャリアを踏まえての男役、娘役としての魅力で見せる感じでした。
トップコンビのサヨナラ公演らしくてそれもいいか。それができるのがスターだもんね。(しかし新人公演の主演者にはハードル高そう)

「007」と思わなければ愉しくて、愛のある退団公演ともいえると思います。
舞台の上に出演者が大勢いる場面も多くて、2度目に2階から見た時は壮観で楽しかったです。パラシュートの場面も近く感じるし!
初見では舞台が近かったせいか楽しみ方がわからなかったのかもしれません。せっかく舞台上にいるのに「あなたナニ人?」な人も多くて、そういうところ1人1人が役のバックグラウンドを見せてくれたら退屈せず面白く見られそうです。

そしてなんだかんだと言いながら、真風さんと潤花さんがパラシュートで寄り添いながら歌う場面や、デュエットダンスには涙目になってしまいました。
この愛おしい時間にも限りがあるのだなぁと。
ムラではもう見れないので来月東京公演で1回のみ見納めしてきます。

続きを読む "二度と同じ夢は見れない。"

| | | コメント (0)

2023/01/16

Song For You.

2022年は宝塚の脆弱な部分が可視化されてしまったなと感じた年でした。

未成年の少女たちを集めて独特の価値観の中で育成する危うさ。
そして脚本力の弱さ。
どちらも人材の育成に関わることかと思います。

人こそ宝。
タカラジェンヌをはじめそこに働く人々が時代に沿った素養を培い更新していける場所でありますように。

大勢の人が本気で一つのことに向き合っていれば、衝突することもあれば反りが合わないと感じることもあると思います。一所懸命であればこそ。
その中で最良の解を見つけながら歩んで行っているであろう人たちを信じています。

たとえば、厳しさは愛情ととらえてストイックに上を目指している人にとっては当たり前のことや逆に許せないことがあると思いますが、けれどそうとらえる人ばかりではないはずで、それぞれにとっての当たり前や許せないことがあるのだということ。
いろんな考え方や価値観が存在する上で、各々が相手を尊重し信じて、力を合わせて一つのものを作りあげ、バトンをつないで新しい時代の宝塚を作って見せくれることが宝塚ファンとして私の願いです。

それから、コミュニケーション力のある人、発信力のある人の言葉や言動から憶測されたことのみが真実のように語り継がれて、そうでなかった人がずっと悪い印象のままなのも悲しいです。

劇団には時代に即して団員1人ひとりを守ってほしいと思います。
夢が見られなくなったらもうそれは宝塚じゃなくなってしまうから。

持ち場を与えられた各々がつねに良いパフォーマンスができる場所でありますように。

| | | コメント (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

宝塚 凰稀かなめがいた宙組 宝塚 大和悠河がいた宙組 \ 宙 組 !!/ ♕ 花組 ♕ 月組 ♕ 雪組 ♕ 星組 ♖ 観劇 ♖ 宝塚 ♖ 宝塚OG ♖ コンサート ♖ ストプレ ♖ ディナーショー ♖ フレンチロックミュージカル ♖ ミュージカル ♖ 劇団☆新感線 ♖ 宝塚大劇場 ♖ 東京宝塚劇場 ♖ 歌舞伎 ♖ 歌舞伎座 ♖ 狂言/能楽 ♖TBS赤坂ACTシアター ♖『1789』 ♖『エリザベート』 ♖『ベルサイユのばら』 ♖『ロミオとジュリエット』 ♖キャナルシティ劇場 ♖シアターBRAVA! ♖シアタークリエ ♖シアタードラマシティ ♖フェスティバルホール ♖三越劇場 ♖中日劇場 ♖久留米シティプラザ ザ・グランドホール ♖九州厚生年金会館 ♖佐賀市文化会館 ♖北九州ソレイユホール ♖北九州芸術劇場大ホール ♖博多座 ♖国際フォーラムCホール ♖大野城まどかぴあ大ホール ♖大阪城ホール ♖天王洲銀河劇場 ♖宝塚バウホール ♖宝塚観劇-全国ツアー ♖宝山ホール ♖帝国劇場 ♖広島文化学園HBGホール ♖御園座 ♖愛知県芸術劇場大ホール ♖新国立劇場中劇場 ♖新橋演舞場 ♖日本武道館 ♖日本青年館ホール ♖東京芸術劇場プレイハウス ♖東急シアターオーブ ♖梅田芸術劇場メインホール ♖渋谷区文化総合センター大和田さくらホール ♖熊本城ホール ♖熊本市民会館 ♖福岡サンパレス ♖福岡市民会館大ホール ♖青山円形劇場 ♖青山劇場 ♗ 宙組 白夜の誓い/Phoenix宝塚 ♗ 宙組 ベルサイユのばら-オスカル編- ♗ 宙組 ロバート・キャパ/シトラスの風 ♗ 宙組 風と共に去りぬ ♗ 宙組 うたかたの恋/Amour de 99 ♗ 宙組 モンテクリスト伯/Amour de 99 ♗ 宙組 銀河英雄伝説@TAKARAZUKA ♗ 雪組 ベルサイユのばら-フェルゼン編-特出 ♗宝塚宝石箱 ♘ 京極夏彦の本 ♘ 波津彬子の本 ♘ TONOの本 ♘ 本の話 おでかけ。 凰稀かなめ - ouki kaname 大和悠河- yamato yuga 大和悠河-宝塚時代 宝塚観劇iii- 薔薇に降る雨 + review 宝塚観劇iii- 外伝ベルばら-アンドレ編- + show(中日劇場) 宝塚観劇iii- Paradise Prince + review 宝塚観劇iii- 雨に唄えば(宙組) 宝塚観劇iii- 黎明の風 + review 宝塚観劇iii- バレンシアの熱い花 + show 宝塚観劇iii-A/L 宝塚観劇ii- 不滅の恋人たちへ 宝塚観劇ii-THE LAST PARTY(宙組) 宝塚観劇i- 維新回天・竜馬伝!+ review 宝塚観劇i- コパカバーナ(博多座) 宝塚観劇i- NEVER SAY GOODBYE 宝塚観劇i- 炎にくちづけを+ show 宝塚観劇i-ホテル ステラマリス+review 映画・TVドラマ 音楽