カテゴリー「♖博多座」の102件の記事

2018/08/10

腐ったはらわた抉り出す。

「1789 -バスティーユの恋人たち- 」博多座公演。
私の心にいろんなものを残していった公演でした。
書き始めると長くなってしまう感想を書き綴っていますが、そのつづきです。

上原理生さんの【ジョルジュ・ダントン】は初演よりも磊落さが増している印象を受けました。
初演ではイケメン革命家3人組といった大雑把な印象だったのですが、再演ではそれぞれの個性がはっきり見えて面白かったです。

初演から大好きだった「パレ・ロワイヤル」のナンバーですが、再演でますます好きになりました。
パレロワイヤルに集う娼婦や宿無しの人たちと分け隔てなく陽気に盃を酌み交わし、デムーランの小難しい演説の意味をわかりやすく楽しく語るダントンに、皆がポジティブな気持ちになっていく感じとか。

『人間であることに変わりない』。
それがダントンの一番の主張、そして理想なんだなぁと思いました。
ソレーヌが娼婦だろうと本気で好きになる。
『氏素性なんて関係ない。どんな育ちだろうと』

「自由と平等」でロナンが革命家3人の胸に突き立てた言葉にダントンもまた心を抉られている。
生まれや育ちが違う者同士が理解しあうというのは、なかなか難しい。同じ人間であっても。

『人は同じと信じていたいが現実も知っている』。
そう歌うダントンの表情や声にお腹の底に抑えているものを口にする辛さが滲み出ていると思いました。
理想と現実の狭間でいつも葛藤しているダントンの本当の姿が見えたような気がしました。
階層の違う人たちとも隔てなく付き合う優しい人だからこそ見てきた現実があるのだなぁ。

ソレーヌを傷つけずに一緒にいられるのも彼だからだろうなと思いました。
サイラモナムールでもダントンはいつもソレーヌを見守り庇おうとしているのが好きでした。
自分のことを顧みず飛び出して行きそうなソレーヌを。(無鉄砲は兄に似てるよね)

王宮から暇をもらいロナンのもとに駆けつけたオランプを、銃砲身の手入れをしながら見ているソレーヌとダントンの様子も好きでした。
初めて見る兄の恋人になんとなく面白くなさそうなソレーヌ(笑)。
ダントンがソレーヌに何と言っているのかはわからないのですが、だんだん口喧嘩っぽくなっている日があって・・・。
今日はいつにも増してソレーヌちゃん御機嫌斜めだなぁと面白かったです。
ダントンには本音を言えてあんなふうに甘えられるんだなぁと。
ダントンの包容力にじわりときました。
2人を見るのが好きで、でも2人でいる場面はほかにも見たい人たちがいる場面でもあって、ほんとうに目が足りなかったなぁ。

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2018/08/05

語りあう理想を口づけに重ねよう。

博多座「1789 -バスティーユの恋人たち- 」。とうとう大千秋楽も終わってしまいました。
関西遠征のため7月30日の大千秋楽は見ることができませんでしたが、追加したチケットで29日の加藤ロナン夢咲オランプの千秋楽を見ることができて本当によかったと思っています。
正直こんなにハマる予定ではなかったので、千秋楽とか考えていなかったのが悔やまれます。 

何度もリピートしたくなったのは、Wキャストの組み合わせが異なるごとに新鮮な感動があったこと。
そして「パレ・ロワイヤル」や「サ・イラ・モナムール」などのナンバーでそれぞれに息づく革命家たちをもっともっと見たくなっていったからかなと思います。
1つの場面に、1人1人に物凄い量の情報がつまっていてすべてを見切ってしまうことが出来なくて・・・。


渡辺大輔さんの【カミーユ・デムーラン】は初演の印象とあまりに違っていて驚きました。
初演では親しみやすいキャラクターだった気がしますが、再演では不器用なほどに真面目で折り目正しくて、多少なりとも後ろ暗いものを持つ凡人にはどこかとっつきにくいような眩しいデムーランになっていました。
力強く真っすぐに響く歌声がまたその印象を濃くしていたように思います。

自由と平等を説く持論にはひとかたならぬ自信があるけれども、なかなか民衆に耳を貸してもらえない。
その日の暮らしで精いっぱいな人々に自分の理想までたどり着けと激励しても、現実離れした話と鼻で笑われ受け流されてしまう。
そんな様子が1幕の「パレ・ロワイヤル」のナンバーでも見て取れました。

そんな彼の高尚な理想も、上原理生さん演じる【ジョルジュ・ダントン】が人懐っこく人々と安酒を酌み交わしながらわかりやすい言葉で語ると民衆の心に入っていく。
皆が笑顔になり、いつか一緒に世界を変えられる日が来るのではないかという希望に替わる。
その2人の対比がとても面白かったです。
デムーランにはダントンが、ダントンにはデムーランがいてこそ世界を変える力になるんだなぁと思いました。
すごく楽しいナンバーなのに、なぜか涙ぐんでしまうナンバーでした。

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2018/07/24

夜が呼んでる王座に就けと。

博多座で公演中の「1789 -バスティーユの恋人たち- 」にはまっております。
7月3日の初日から18日の凰稀かなめさん単独千秋楽の18日まで7公演見て、それでもまだ足りなくてチケットを追加しました。
自分の手持ちのチケットを見て、14日が加藤ロナンとねねオランプの見納めだったのかと思うと、やっぱりもう1度見ておかないと後悔しそうで・・・。
単独キャストの方々もWキャストの方々も全員好きで、どの組み合わせも好きという、わたくし的になかなかに稀有な公演で、バリエーションが多くて回数が足りないです。

この週末は凰稀さんを見に小倉まで行ってきて、それでちょっと冷静さを取り戻せて自分的にはたすかったのかもしれません。
いまは1週間のインターバルをあけてからの観劇を心待ちにしています。

さて、感動が多すぎて書ききれないからキャスト別に書いていこうという趣旨で前回はロナン・マズリエ役のお2人について書いて力尽きてしまっておりましたが、その続きを・・・。
ロナンときたらオランプなんですけど、私にはどうしても書いておきたい役があってそちらを先に。(心の中に溢れているものを出しておかないと落ち着かない(^^;)


そいうことで、ロナンの妹の【ソレーヌ・マズリエ】。
ソニンちゃんです。

初演からいちばん変わった印象を受けたのが、ソレーヌでした。
初演では世界観から浮いて見えるのが気になっていました。
けれども今回は、もうロナンの妹にしか見えない。加藤和樹君のときも小池徹平君のときも。
加藤ロナンが腰をかがめて妹に話しかけるのを見てきゃっ妹♡と思うし、小池ロナンと心配そうに並んでいる姿を見ると涙が出そうになります。
なんでこの子を置いていってしまうんだ?!というのはずっと思います。兄ちゃんひどいweep

「夜のプリンセス」も再演ではソレーヌの悲しみが深く感じられました。
すごく傷ついているんだ彼女は、男たちに・・・と思いました。
男たちが作った社会の不条理に、女性の価値を決めるダブルスタンダードに。
受け止めきれないほどの。
他に生きるすべのない娘に向けられる眼差しを思うとかなしい。
がんばってよく生きてきたと褒める人などまずいないでしょう。
そこまでして生きていることを蔑まれ死ねないことを咎められている感覚に心を殺されていく。
踊り終えたあとの魂が抜けたような人形のような表情を見ていると、こんなふうに自分を空っぽにしないと耐えられないような経験をしたのだろうと思ったりしました。
(ダントンだけは彼女によくがんばって生きてきたねと言ったにちがいないと信じています)

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2018/07/20

おまえのために必ず生きて帰る。

ミュージカル「1789-バスティーユの恋人たち-」博多座公演を、初日からマリー・アントワネット役の凰稀かなめさんの大千秋楽も含めて7公演見てきました。
台風の日、大雨特別警報が出た翌日、自身の体調不良(内耳性のめまい等)といろいろある中でしたが、メインキャストは全員見ることができました。
また7月14日のフランス革命記念日はスペシャルカーテンコールということで、客席全体でトリコロールに分けられたサイリウムを振ってお祭り気分を存分にたのしみました。

再演となった今年の「1789」。2016年の初演と楽曲は変わらないと思うのですが、格段に何かが変わったようでがっつりと心を掴まれてしまいました。
2回目の観劇を終えたところで我慢できずにリピーターズチケットで2公演増やしましたが、それでもまだまだ見たい気持ちがおさまりません。

初見では初演から出演のキャストの方々の進化に目を瞠りました。
渡辺大輔さんのデムーランはより理想を目指す人らしく端正で力強い人に。そしてこんなに声が良い人だったかしらと驚きました。
上原理生さんのダントンはより磊落に。隔てなく娼婦や無宿の人びとと付き合う懐の深さと人の好さが滲み出ていました。
初演の時はお2人ともイケメン3人組の1人という印象でしたが、今回は場面場面でナンバーの中で、役としての生き様が明確に見えて引き込まれました。

また再演から加わったキャストの方々も初演の方とは違う個性と魅力で惹きつけられました。
1公演1公演と見るたびに違う見どころに気づかされ、キャストの組み合わせが変わるごとに新たな発見がありました。
感想も感動もたくさんたくさん心に溢れかえっていますが、それをどう書いたら良いのか。メインキャストの3役はWキャストでもありましたし、ここは役名毎に書いていこうかと思います。

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2018/06/02

そうなることもそう遠いことではないかもしれませんよ。

宝塚歌劇花組博多座公演「あかねさす紫の花」と「Santé!!」、千秋楽を含めて7公演見ることができました。(当初の倍近くになっていました)
ライブビューイングもAB両パターン見ましたし(博多座公演のライビュなんて珍事)、この5月は博多座公演に浸った日々でした。

観劇するたびにさらにさらにと感動したこと思ったことが溜まっていくばかりで書けないまま日にちだけが経ってしまいました。
これまでに書いた人のこともさらにいろいろ書きたいのですが、収拾がつけられなくなるに決まっているので、今回は主に書いていない役ついての感想を残しておきたいと思います。


とうことで、天比古のことを。
ABパターンでまったく違った中大兄皇子と大海人皇子を見ることができましたが、天比古もまたABパターンではまったく違う印象でした。

柚香光さんの天比古は、ほんとうにもう額田王しか見えていない人でした。ほかのことは1ミリも。
心は浮世から遠く離れて、ただ額田に思い焦がれ寝食も忘れてしまうような。
けれども年月を経て再会した額田を見て、自分が思い描いていた理想はこの世には存在しないことを思い知り、これまでの自分の漂泊の人生の意味を見失って絶望したように見えました。
とてつもない暗闇に堕ちて光を見失っているいまだけれど、時が経ち憑物が落ちてしまえば息を吹き返し、また新たに己が希求する理想を彫り出す道を歩きはじめることができるかもしれない。
プロセスの途中にいる若き芸術家の印象をうけました。

こんな生活力のない芸術家肌の天比古を支える小月。
こういうダメな男性に惹かれる人いるよねぇと思って見ていました。
一緒に夢を見ているというよりはダメであればあるほど惹かれ支えたくなるある意味共依存関係だなと思いました。
(でも小月がいなくなってもまた誰かしらお世話をしたい女性が現れるんじゃないかなぁ。このタイプは)

鳳月杏さんの天比古は、現世の濁流の中でもがきながら唯一額田王を心の拠り所としている人のようでした。
額田だけがこの穢土から彼を救い出してくれるはずだった。
なのに成長し女性としての情念に身を焦がす額田を目の当たりにして、忽ちにして自分の菩薩を見失ったように見えました。
生きるよすがを失った彼がどうすれば蘇生できるのか想像できませんでした。
別人として生まれ変わる? 新たな信仰をみつける? 小月との生活に意味を見出して良い夫になる?

小月を演じた乙羽映見さんは三場の冒頭で物憂くしっとりと歌う歌がとても印象的でした。
惚れた相手に身を尽くす女性の姿に説得力がありました。

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2018/05/30

皇太弟とは次の天皇だ。

花組博多座公演「あかねさす紫の花」「Santé!!」が千秋楽が終わってしまい呆けているところに花組の11月以降の公演スケジュールが発表されて呆然としております。

そっかぁ。明日海さんは全ツではないのかぁ。また地元でお会いできると思ってしまっていたので残念です。
でも柚香さんに会えるのは確定したからうれしいな。
「メランコリック・ジゴロ」の2番手役スタンは誰になるのかな。ヒロインのフェリシアは誰だろう?

舞浜アンフィシアターの明日海さんの公演、気になるけどチケット難でとても見れないだろうなぁ。
花組DCとKAATはかちゃ(凪七瑠海さん)が主演なのかぁ。
蘭陵王は宝塚で見てみたい題材ではあったけど木村先生かぁ。サブタイトルの「美しすぎる武将」っていうのが・・・どうにかならないかな。

そして今後の人事の行方も気になるところ。
まぁ様(朝夏まなとさん)宙組が順調だったのは前任の凰稀さんからそのまま組を引き継げたことも大きいと思います。
組の2番手さんがすんなりトップになれないのにはその2番手さんにも事情(不安要素)がある訳で、その事情が猶予期間に払拭されれば問題ないのでしょうけど、不安要素を抱えたままで就任したとしたら順風満帆には行かないのは肯けます。
2番手さんに未だ不安要素があるのなら、それが払拭できるまで現トップさんにいていただくのがいちばん組のためにも延いては業績のためにも良いと思うのですよね。トップさんにも都合というものがあるかもしれませんけども。そこをWIN-WINにもっていくのがマネジメント側の手腕かと。

「あかねさす紫の花」で中大兄が大海人皇子に「皇太弟とは次の天皇だ」と言って、自分とともに政を為して行くことを求めるけれど、後日譚でいえば大海人皇子ではなく大友皇子に皇位を継承させようとして壬申の乱へとつながっていくのですよね。

中大兄に全幅の信頼を置いて「兄上は私にいずれ2人でこの国を治めていくことになる、よくものを見ておけと言っておられる」と額田に語って聞かせていた大海人皇子の輝くかんばせ。
最高権力者の苦しい胸の内を弟大海人に理解してもらいたくもそうはなりえず、「ばかものーーッ!!」と一喝したものの崩れそうになる表情を必死で堪えていた中大兄の弱音を吐くこともゆるされない孤独とかなしみ。
それらがいまだ鮮やかにまなこに焼き付いている現状で、この発表はなかなかきついものが。
(千秋楽の感想を書くつもりが飛んでしまうほどに。。。)

とりあえずは夏の大劇場公演「MESSIAH」と「Beautiful Garden -百花繚乱-」の観劇を増やせるか悩むことにします。
(家族が帰省する8月の遠征は難しいのだ。。。涙目)

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2018/05/24

射竦められていたというのもほんとうです。

5月17日、22日、23日に博多座にて宝塚歌劇花組公演「あかねさす紫の花」役替わりBパターンを見てきました。

主演の明日海りおさんの役が大海人皇子から中大兄に替わることで役の比重も変わり、セリフ、歌、場面もいろいろと変わっていました。

17日の初回の観劇時はまだAパターンの可哀想でたまらなかった明日海さんの大海人皇子の記憶が鮮やかに残っていて、中大兄の大海人への理不尽に気持ちがついていけなくて、また明らかにAパターンよりも額田が中大兄寄りで葛藤があまり見えないことに、心が混乱したまま観劇が終わってしまった気がします。
私のこの大海人皇子への気持ちのやり処は? Bパターンを好きになれるのかな。などと。

日を置いて22日の観劇時、私はガツンと衝撃をうけました。
どのあたりからかは定かではないのですが、気づいたら明日海さんの中大兄の目線に射すくめられていました。

有馬で中大兄が額田に心情を吐露する場面で、この人はとっても孤独な人なのだと思いました。
この華奢にも見える背中にどれだけ重荷を背負っているのだろうと。
有能さゆえに人の何十倍何百倍も責任を負い、決断し実行し、誹られもし反発もされ、その一本一本の矢を満身に受けてギリギリのところで踏みとどまっている誇り高い皇子がそこに見えました。
その皇子が、国を守り、治めていくために、自分の傍らにどうしても額田が必要だと言う。
その苦しい心のうちが伝わってきて、これはもう仕方のないことなのだと納得せざるを得ませんでした。

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2018/05/13

あらやっぱり紫草ですわ。

5月6日と9日に博多座にて宝塚花組公演「あかねさす紫の花」と「Santé!!」を見てきました。

今年の博多座はお芝居「あかねさす紫の花」が公演日程前半と後半で、トップスターの明日海りおさんが役替わりをするという異例の上演スタイルだったのですが、前半のAパターンは大型連休もあり前もって観劇予定を立てることが難しく、当初は9日だけの観劇予定でしたが、急遽6日も見ることができました。
そしてこの6日を最後にショー「Santé!!」の客席降りが出演者とスタッフに体調不良者が出たためという理由でなくなってしまい、通路側の席だった私はまさに奇跡的に明日海さんをはじめとする生徒の皆さんにハイタッチと“Santé!!”をしていただけました。
9日も“Santé!!”可能な席でしたがこういう事情でしたので舞台の上の皆さんに向けて“Santé!!”してきました。
(公演日程の後半で客席降りが復活すると良いのですが)

さてお芝居「あかねさす紫の花」のAパターン大海人皇子主役Ver.(明日海さん/大海人皇子、鳳月杏さん/中大兄皇子、柚香光さん/天比古)の感想です。

じつを言うと、6日に観劇した時には鳳月さんの中大兄がいまひとつ決まらない感じをうけました。
中大兄という役は、主演のトップスター明日海さんの大海人皇子を圧倒する大きさと、大海人という夫がありながらも額田王が惹かれてしまう魅力が必要な難役だと思うのですが、ちょっと説得力が弱いかなぁと思えました。
しかし9日に観劇したときには己をつよく信じて迷いを見せない中大兄がそこにいました。
彼は欲しいと思ったものを我慢してはいけない立場なのだなぁ。
欲しいものを手に入れていく強さが中大兄を中大兄たらしめているのだなと思いました。
だからこそ皆がいずれ彼が帝になる器と信じて「大兄」と呼びならわしているのだと思います。

そんな兄を誇らしく眩しく思い慕っていることがよくわかる明日海さんの大海人皇子でした。
彼もまた王者の器なのにそんなことは思いもしない様子でした。

仙名彩世さんの額田は自己実現と幸福な家庭生活の狭間で揺れ動く女性の心が見えてとても共感しやすかったです。
幼い頃から気が合い趣味が合い息もぴったりな相聞歌を交し合える相手。黙っていても心が通じ合う相手。そんな大海人皇子との幸福な家庭に生きる自分と、少女の頃からの夢、自分が絶対だと思う中大兄に認められ、宮中で才能を存分に発揮して人びとに尊ばれて生きる華やかな自分と、どちらを選ぶか。
(おそらく中大兄を拒めばキャリアを失うのは必然でしょう)
それがどれほど茨の道でも後者を選びたい気持ちを抑えきれない。
ただあまりにも大海人とは魂が近しくて心が引き千切られる辛さに懊悩する姿が得も言われぬ美しさでした。
『畝傍は困ったことだろう――』
素の自分がどれほど懊悩していようとも、公の儀式の場では凛として誰よりも華やかに美しく輝いている額田に、やはりこの人はこういう瞬間が好きなんだなと思いました。
仙名さんは役を深く解釈して的確に表現できる技量の持ち主なのだなとシーラの時にも思いましたが、今回もそう思いました。

明日海さんの大海人皇子はとにかく可哀想でなりませんでした。
鳳月さんの中大兄、仙名さんの額田に対するとやや感情過多な気もしますが、否応なく引き込まれます。
幼い頃より心から慕いどこまでも従うつもりの兄と、魂の片割れのように愛する額田との間で苦しみ、どちらも尊く大事だから狂うしかなかったのだと思えて。
罪は兄と額田にあって、彼には露ほどもないのに2人への想いがあればこそ狂うほどに悩み苦しまなくてはならなかったのだと。
ここまで深く大海人皇子を演じて見せた明日海さんの後にこの役を演じる柚香さんにはかなりハードルが高くなったなぁと思いますが、どんな大海人皇子を見せてもらえるか楽しみにも思います。

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2017/07/29

グリーンライト。

7月21日に博多座にてミュージカル「グレート・ギャツビー」を見てきました。

もっと少女趣味テイストでエモーショナルな作品を想像していたらちがっていました。
ここをピックアップするんだぁと思ったり。――アンダーグラウンドの描写に思いの外尺が割かれているなぁとか。
脚本演出の小池先生自身の男のロマンを投影したのかな?
ひたすらクールなギャツビーを描きたかったのかな。

ギャツビーが歌うナンバーはどれも難しくて見終わったらメロディも歌詞もあやふやで口ずさめるフレーズがありませんでした。
ストレートに心に届くナンバーがなかったなと思います。
歌えるキャスト向けの作品だなぁと思いましたが、さりとて井上芳雄さんにも合っていない印象も受けました。
もしかしたら井上さんは声の調子が悪い日だったのかも。あれっと思う箇所がありましたしガサガサしている印象だったので。
声質的にニック役の田代万里生さんのほうが合っていたかなと思います。
いずれにしても日本語に馴染みにくい印象でした。


井上芳雄さんのギャツビーは、軍隊に馴染みアンダーグラウンドで成功した、男の世界で成功し男の理論で生きている部分が印象づく人物になっていました。
脚本演出がそうなのだと思いますが、胡散臭さとか得体の知れなさがあまり感じられなくて、デリケートなところを掴まれる感じがしなかったなと思います。
哀しくなるような滑稽さとか困惑、イノセントなところが強調される瞬間を垣間見たかった気がします。
ピックアップされる場面からしても、そもそも小池先生が描きたかったギャツビーと私が見たいギャツビーが違ったってことかなと思います。

とてつもなく身の程知らずで有能な空想家で、その類まれな能力とはアンバランスな素朴さや迷惑なくらいな自信と小心さとかを私はギャツビーに見たかった気がします。
そんな彼が手に入れようとしたものは何なのか。

彼はデイジーが夢のような上流階級のお嬢さんだから恋をして、彼女に相応しい富を得たいま、彼女と結ばれることだけを考えている。
再会のシチュエーションにこだわったり。
デイジーという夢と一緒に夢の中に住まうことが彼の望みなのかな。―― そこにある幸福の本質とかはあまり考えていなくて。
彼女の立場とか気持ちとかは深く考えていなくて、彼女に嫌われたくないとは思って思慮深くはしているけど、自分と結ばれれば彼女は幸せになるはずということを疑いもなく信じている。
その夢の帰するところ―― を私は見たかったのだけど、夢の実現のために払った犠牲の部分を強調する脚本だったなぁと思います。

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2017/07/20

売れるものなら亭主でも。

7月10日博多座にて、「売らいでか!」を見てきました。

花登筐さんの脚本はよくできているなぁと思いますが、やはり背景や価値観が古くてうーんと思うところが多々ありました。
井上順さんがチャーミングだから見ていられたけれど山内杉雄はなかなか腹立たしい男性の典型だなぁと思います。
キャストの皆さんが達者で魅力的で、セリフの掛け合いが可笑しくて引き込まれて見ましたけど。

身勝手な亭主を売って胸がすくかな?
亭主を買った名家の奥様よりも成功して、お金の無心に来られて溜飲が下がるかな?
あんな旦那さんとまたよりを戻したいかな?
私ならないなぁと思いました。


舞台は昭和31年。まだテレビも普及していない時代。
娯楽は年に1度のお祭りと、噂話。そんな町。
女は夫や夫の親にものも言えない。
弟よりも兄が優遇され、名士は名士の顔を保つことがなによりも大切。
それがあたりまえの町。

山内杉雄(井上順)は現実から逃げている無責任な男の人。
「高嶺の花」である地元の名家の奥様に憧れているのでこの町を離れたくない。
妻と娘と母親との家族4人の生活を営むには給金が少ないけれど、いまの仕事は辞めたくはない。憧れの奥様とのつながりがなくなるから。
家計が苦しくて妻が窮状を訴えると逆上して怒鳴る。
母に甘やかされ妻に甘やかされ、5歳くらいの娘にまで甘やかされている人。
いるよね、こんなふうにありとあらゆる女性から甘やかされるタイプの男性・・。
井上順さんのなんだか憎めないチャーミングさはそれを納得させるなぁと思いました。

浜木綿子さん演じる山内なつ枝は無責任な夫に泣かされ、キツイおしゅうとめさんにイビられる女の人。
結婚6年目らしい。
身寄りのない香具師の娘だとかで、夫もその母親もどこにも行くところのない女だと見下しているんだなぁと思いました。
彼女自身はここで一生懸命に生きて行こうとぐっと我慢して、何年も前の夫のやさしかった記憶を大切に夫の愛情を信じて家計の助けにと組紐の内職に精を出している健気な女性で。
なんだかなぁって。こういうの見るとイライラしちゃうよねって夫婦のありさまです。

こんな町にずっと暮らして、これから先もこれよりほかに選択肢がないと思っている町の人びと。
そんな閉鎖的な町の空気に抗い上昇志向なのが、地元の名家が営む会社の支配人の弟の弘(小野寺丈)とその恋人のきく子(大和悠河)の2人。
2人の画策によって急展開を強いられる杉雄となつ枝夫婦の物語でした。

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