カテゴリー「♖博多座」の120件の記事

2025/12/14

「SPY×FAMILY」

ミュージカル「SPY×FAMILY」(博多座) 11月30日 12:30

博多座の千秋楽を観劇しました。
原作は家族がアニメを見ていたのでおおよそ知っているかんじなのですが、子役の可愛らしさを全面に出したプロモーションにかなり抵抗があったこともあり、2023年の公演は見ていませんでした。
今回は宝塚退団後の和希そらさんを見たくて観劇を決めました。

アニメよりも大人っぽい真面目な仕上がりになっている印象を受けました。脚本演出のG2さんの良心を感じました笑。
原作はいろんな見方ができると思いますが、こういう読み解きも良いなと思いました。(ヒューマニズム強め)
森崎ウィンさん演じるロイド・フォージャーも和希そらさん演じるヨルも月野未羚さん演じるアーニャも、原作とはひとあじ違ってはいるのだけどそれも、これはこれでいいなと思いました。
森崎さんのロイドは冷徹感のなかにも甘さが強めで素敵でした。ヨルへの接し方もかなりスマート。独白ツッコミが面白かったです。
和希さんヨルは世間知らずのとぼけたとんちんかんなかんじに戦闘でのカッコ良さもあり掴みどころのない雰囲気に思わず笑いました。(ユーリとの場面は中の人ぜったいノリノリだと思いました)
月野未羚さんアーニャはセリフの間が最高で本当に心が読めているみたいでした。
瀧澤翼さんの思いっきり振り切ったユーリも面白かったです。
鈴木壮麻さんのヘンダーソン先生はヴィジュアルから何から完璧。
朝夏まなとさんのシルヴィアはフルメタル・レディの異名を持つクールさにどことなく漂うチャーミングさが加味されていて思わずふふっと笑ってしまいました。タグの付いたままのコートで踊るナンバーが大好きでした。
アンサンブルの方々もレベル高くて音楽的にもとても好きな作品でした。
(森崎さんと和希さんのハモりがなんともおしゃれに感じられて好きでした)

観劇したのは博多座千秋楽でしたが日曜日ということもあってか、お子様連れご家族連れが多かったです。上演前や幕間のロビーで聞こえてくる会話も観劇がはじめてらしき内容だったり。皆さんに良い観劇体験ができていると良いなと思いました。

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「マタ・ハリ」

ミュージカル「マタ・ハリ」(博多座) 11月2日 17:00


マタ・ハリ役の愛希れいかさんの千秋楽の公演を見ました。
女性スパイの代名詞「マタ・ハリ」の名前こそ知ってはいたものの、詳しいことは知らなかったので初演の頃から興味がありましたが未見でした。今回は博多座公演があるということ愛希れいかさんがマタ・ハリ役を演じるということで観劇を決めました。
3役がWキャストでしたが、マタ・ハリ/愛希れいかさん、ラドゥー/廣瀬友祐さん、アルマン/加藤和樹さんの回を観劇しました。

思っていた以上にしっかりとした筋立てで、想像以上にロマンティックでした(愛希さんと加藤さんの持ち味?)。
とても上質な舞台で満足感が高かったです。
マタ・ハリのダンスシーンは胸が震えました。
愛希さん、加藤さん、廣瀬さんともにミュージカルの舞台で活躍する姿を見始めて10年ほどになりますが、その頃に想像していた以上に素敵な大人の役者になっていたんだなぁと感じました。

これからもこの作品のような上質で大人のロマンを感じられる舞台をたくさん見られるといいなぁと思いました。

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2025/08/25

軒端の梅よ春を忘るな

8月7日博多座にて、歌舞伎「刀剣乱舞 東鑑雪魔縁(あずまかがみゆきのみだれ)」「大喜利所作事 舞競花刀剣男士」を見てきました。
「刀剣乱舞」はミュージカルもストレートプレイも見たことがなく、ついていけるかな?と不安もありましたが、松也さんや獅童さんが出演されるので見てみようと思いました。

開演前には緞帳にどのような世界観の舞台であるかが文章にて映し出されていて観劇の助けになりました。また演者の方(舞台を見て「時間遡行軍」の方々と知る)が開演前の客席通路を扮装姿で練り歩き刀を構えて見せてくれたりとはじまる前から気持ちも盛り上がりました。
舞台の冒頭には名乗り?の場面もあり、キャラ立ちもはっきりしていたので登場人物がわからなくなることもなく、ストーリーも有名な鎌倉幕府3代将軍源実朝の暗殺に絡んだものなので、置いて行かれるということもなく愉しむことができました。

尾上松也さんが刀剣男士の年長者?の三日月宗近役と敵役の羅刹微塵の2役であること、河合雪之丞さんが小烏丸と北条政子、尾上左近さんが加州清光と実朝の御台倩子姫のそれぞれ2役なのもわかりましたが、陸奥守吉行役の中村歌昇さんが実朝を、同田貫正国役の中村鷹之資さんが公暁を演じていることは幕間に一緒にお茶をした方に教えていだたくまで気づきませんでした。
土佐訛りで粗野な雰囲気の陸奥守と公家好みで内向的な実朝を演じている方がまさか同一人物とは思いもよらず。
それを知ってからは、歌昇さん(陸奥守)につっけんどんな加州清光と歌昇さん(実朝)の身を案じる可憐な倩子姫のどちらも尾上左近さんが演じていることにときめきました。
クライマックスで舞台に雪積もる鶴岡八幡宮の大石段が登場した時は胸踊りました。大階段を見ると気分が盛り上がるのは宝塚ファンのさがでしょうか。

刀剣乱舞という新作歌舞伎を見て思ったのは、歌舞伎の所作の理解しやすさ、セリフの聞き取りやすさです。
初めて見る世界観をとてもわかりやすく見せてくれて置いていかれることがなかったのは歌舞伎が持っている力、決まり事や所作、セリフ回しのわかりやすさゆえのような気がします。

本編の「東鑑雪魔縁(あずまかがみゆきのみだれ)」の幕が降りると案内人の武彦さんと押彦さんのコンビが登場して、芝居の結末について(公郷と思しき修行僧について)とこれから始まる所作事について軽快に漫才のようなかけあいで説明されたのがとてもツボにはまりました。説明が終わるとスッと真顔になり所作事の後見に回られたのも素敵。

刀剣男士の演者が役のままで舞い踊る「大喜利所作事 舞競花刀剣男士(まいきそうはなのつわもの)」も見応えがありました。
髭切と膝丸が「三番叟」を踏む。揃いの浴衣に袖を通し、お国にちなんだ民謡を踊る―—同田貫正国のご当地熊本の民謡「おてもやん」のときにひときわ手拍子が大きかったのは九州ゆえかなと思ったり。
河合雪之丞さんの小烏丸の玉蟲、松也さんの三日月宗近の那須与一の物語の舞踊は二重に美味しい演目でした。
中村獅童さんの鬼丸国綱による白頭の獅子が2頭の赤頭を引き連れて激しく毛振りをする場面はこれぞ歌舞伎だなぁと、そして凄くロックだなぁと思いました。
新作狂言のあとに所作事(しかも役に扮しての)がフィナーレのようにあったことでいっそう世界観が身近に感じられて面白く愉しむことができました。
つぎは刀剣男士が歌舞伎役者に扮しなくてはならないなんらかの理由付けで刀剣男士による「義経千本桜」などを見てみたいななどと思いました。

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2025/07/07

おびんちゃん

6月24日に六月博多座大歌舞伎(昼の部)を見てきました。

5月は星組観劇に関西まで数往復、地元ですが月組全国ツアー公演にも通うので、七之助さんは気になるけれど6月の観劇はお休みしようと決めて博多座会への申し込みはしていませんでした。
・・が、6月に入ってついついオンラインチケットを覗いてしまい、仕事がない日に1階特Bのとても見やすい席が空いているのを発見して思わずポチり。当初の決意はどこへやらで博多座へ行ってまいりました。

「双蝶々曲輪日記 引窓」「お祭り」「福叶神恋噺」ともに心にじんわりと効いてくる演目で見に来てよかったなと思いました。

「双蝶々曲輪日記 引窓」ではお幸とお早を演じられた中村梅花さんと中村鶴松さんの所作に見入っていました。どの所作にも意味が見て取れてしかも自然で凄いなぁと。
嫁のお早が「笑止」と笑うのを、姑のお幸が廓言葉を使ってはおかしいとたしなめる時の言い方がちっとも嫌味がなくて愛情深く聞こえるのもすごいなぁと思いました。
劇中お早は二度ほど「笑止」と笑ってその都度お幸は窘めるのだけど、そのやりとりが微笑ましくて素敵でした。
きっとこの日だけではなくて、お早とお幸は日々こんなやりとりをしているのだろうなぁと。うっかり出てしまうお早の廓言葉もお幸に気をゆるしてのことだろうなぁとも思いました。
色里の出身であることを絶対に表に出すまいというような強情ではなくて、朗らかに日々の仕事に勤しみ無邪気に笑うお早と、だめなことはきちんとたしなめながらお早のことを受け入れているお幸の関係が見ていて涼やかでした。
互いにリスペクトがあり思いやりと素直な心で居心地の良い家庭を営む2人の女性。
そんな幸せな情景を見ていたところに来訪者が。

訪れたのは5つで里子に出したお幸の息子でいまは濡髪という四股名で相撲取りとなっている長五郎(福之助さん)。
家父長制を生きるお幸の人生がそこにはありました。

いまより寿命が短く夫婦が1人の相手と生涯を連れ添うことはなかなか難しい時代。
出産後に病いに臥し子を遺して亡くなる女性も多く、そうして連れ合いを亡くした男性は家政の切り盛り、子の養育、自分も含めた家族のケアのために後妻を娶るのが義務のようなものだったかと。
継子や継母はめづらしいことではなかったでしょう。

お幸と先妻の子である与兵衛(橋之助さん)もまさにそういう関係で、お幸の愛情をうけて与兵衛は育ったのだろうなぁと思いました。
しかしお幸は後妻に入る前に5つまで育てた実の子を里子に出したと語っていました。連れ合いを亡くした女性が1人で子どもを育てる選択肢はほぼなかったのでしょう。
里子に出した手前、里親に遠慮して会いに行くこともできず、ようやく母子が会えたのは長五郎が成人して里親も亡くなった後、所用で出かけた大坂で偶然に。うれしさはいかばかりだっただろうと思うけれど、話をしただけで別れて戻って来たと。

その長五郎が自分を訪ねてきた。人を殺めて追われる身となって。お幸の気持ちを思うとせつなかったです。
長五郎を召し捕る役目を仰せつかったのが継子の与兵衛。代々郷代官を勤めてきた家に生まれて、本日ようやく晴れて郷代官に取り立てられたばかり。その初仕事が長五郎の召し捕りという。

お幸を思って夫を止めたいお早。
すべてを察してお幸のために初手柄を捨てて長五郎を逃がそうとする与兵衛。
与兵衛の気持ちに心打たれて自ら縄に掛かろうとする長五郎。
実の子と継子への思いに揺れるお幸。

実の子の長五郎に婚家と継子への義理を説かれて、よう言うてくれたと覚悟を決めて実子を縄に掛けようとするお幸。
母の情よりも婚家への義理を重んじなくてはいけない人生なのだなぁと思いました。
このお幸の気持ち、いまの世の若い人たちにもつたわるかしらと思いながら。
歌舞伎だからこそ味わえる世界観に浸れて良かったです。

「お祭り」は、ほろ酔い気分の鳶のお頭(勘九郎さん)が陽気にいなせに祭りに集う人びとと絡んでいく舞踊でした。
勘九郎さんや鶴松さんたちの身体能力にひたすら目を瞠りました。凄すぎる。あのバランスでどうしてあんなこと・・などと。
ひょっとこのお面で男っぽく踊っていた勘九郎さんが、おかめのお面をかぶったとたんに柔和な女性の所作で踊りだしたのに驚きました。
楽しく見ながら歌舞伎すごいなぁと思いました。

「福叶神恋噺」でも貧乏神のおびんちゃん役の七之助さんの所作に見入っていました。女方の所作ってなぜにこんなに美しくて魅了されるのだろうと思いながら。筋力かな。姉さん被りではたきをかけるだけでも素敵。流れるような所作の一連とスピード感も。ちょっとかっこいい。
掃除も洗濯も縫い物もどの所作もいつまでも見ていたいし、時折流れるご近所の三味線の音に合わせて思わず踊ってしまうところも可愛いし。おびんちゃん大好きだぁと心で何回も叫んでいました。
長屋のおかみさんたちに可愛がられるおびんちゃんの場面も好きだったなぁ。長屋の大家さんもだけどみんなとっても人が好い。
それに甘えっぱなしの辰五郎は感心しませんが。

おびんちゃんも貧乏神だけど本心は人をしあわせにしたくてしょうがないんだなと思いました。貧乏神には向かないよね、おびんちゃん。
そんなおびんちゃんを心配する貧乏神仲間?のすかんぴん(勘九郎さん)や貧乏神元締めのからっけつ(猿弥さん)もやさしいな。
富くじを当てちゃうなんてやっぱりおびんちゃんはそんじょそこらの貧乏神とはちょっとちがうな。(富くじは辰五郎のものだけど、おびんちゃんに憑かれたから当たったのではないかな)
福の神になったからには辰五郎など捨てておしまいなさいと思いました。
(辰五郎の改心がいまいち疑わしく思える私なのでした)
おびんちゃんと長屋のみんなが朗らかに笑って暮らせますように。

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2025/04/13

真にあなたはグレート

3月30日に博多座にて「マジシャンの憂鬱」「Jubilee」の千秋楽を見てきました。
初日と千秋楽を含め4公演を見ましたが、お芝居もショーもひたすらに心を委ねて楽しめた公演でした。

「マジシャンの憂鬱」は花組時代からショースターとして観客の心を自在に掌握してきた瀬奈じゅんさんがトップ3年目、歌唱力抜群のトップ娘役の彩乃かなみさんや下級生時代から実力を認められていた2番手の霧矢大夢さんをはじめとして役者が充実していた当時の月組に充てて作られた、難易度が高い作品だと思います。
舞台上で大事件が起きるわけでも恋愛模様がドラマティックに盛り上がるわけでもなく、過去にあったことや登場人物の心情を観客が理解することで笑いが起きたりほっこりとした感情を生む・・そんな作品でした。その機微がつたわらないと観客は何を見ているかわからないまま流れてしまう難しさがあると思います。

今回の博多座の演目が発表になったときは、新トップが就任したばかりの花組でハードルが高そうだなと思ったのですが、見事に演じきった今回の博多座メンバーには称賛の気持ちでいっぱいです。
こんなにストレスなしに見られた公演もなかなかないなぁと思います。正塚先生の作品なのになぁ。(マンスプ気味だったり女性の自尊心を傷つけてから持ち上げるなどする愛情表現が苦手なんです・・心を支配しやすそうなキャラをヒロインにするあたりも)

「マジ鬱」初演も若干そういうところもあった気がするのですが、17年ぶりの再演ではそれを感じずに見ることができて、なにがちがったのかなぁと考えましたが、やっぱりいちばんは2025年のいまの感覚を持つ生徒さんたちが演じたからではないかなぁと思っています。

だとするなら、おなじく正塚作品の「薔薇に降る雨」をいま演じたらどうなるのか見てみたいなぁ。とも思いました。
(あえて言わせてもらうと)主人公が「顔だけの最低男」だったあの作品が、2025年のいま上演されたらどんな感じになるのだろうと。
ヒロインにとっては過去も現在もキラキラした存在で、ビジネスパートナーには信頼されて、彼に助けられた人びとにはヒーロー的存在の主人公、そんな輝かしい主人公がフィアンセに対してはリアルに最低であるあるすぎて、下手な取り繕いもまたリアルで、その小さな綻びを前に佇む男女のなんともいえない空気が15年以上を経たいまも記憶に残っています。(おそらく作者の筆がいちばん走ったターンじゃないのかなぁ・・)
そのあたり、いまだったらどう見えるのかなぁと思ったりするのでした。
年経るゆえの愉しみとでもいいましょうか。
(フィアンセの名前がフランス人なのにヘレンだったりとか、いろいろツッコミたい作品でもあったのですが)
と・・世迷言はこれくらいにして今回の舞台の感想を・・。

永久輝せあさんは身のこなしのひとつひとつが美しいなぁと思いました。
お芝居では1910年代っぽいコスチューム(ダウントンアビーの初期くらいかな)、シルクハットにインバネスコートにスリーピース、ベルベットジャケットなどどれもがとてもお似合いでした。(宝塚のこの年代の衣装のバリエーションはほんとうにすごい!)
シャンドールがさりげなく柱(壁?)によりかかるポーズは毎回美しいなぁと惚れ惚れして見ていました。
ショーではザ・宝塚な夢夢しい衣装を着こなし(戴冠式でフレディ・マーキュリーが思い浮かんでしまったのはそのバレエ的な身のこなしゆえでしょうか・・)、黒燕尾でのターン、真っすぐに高く上がる脚。どの一瞬を切り取っても絵になるなぁと思いました。

星空美咲さんは歌声が絶品。
「マジシャンの憂鬱」は歌唱力抜群の彩乃かなみさんに向けて作曲された数々のナンバーを歌いこなす実力に感服でした。
そしてショーの戴冠式のシーンでの歌唱にも。
長身の娘役さんゆえドレスも映えて、堂々と舞台に立っている頼もしい姿には、「PRINCE OF ROSES」の初日の緊張の面持ちを記憶しているので、「こんなに立派になられて・・」と思わずにはいられませんでした。大劇場公演を見ていないので、トップ娘役として立派につとめあげている姿に感動したりして笑。

聖乃あすかさんがこんなにコメディエンヌだったとは知りませんでした。
近年私が花組で見た公演では、1人だけ時空の外にいてほかの登場人物とはセリフを交わさない役やシリアスな役を演じていたのでとても意外でした。
初見時、階段から登場したいかにもプリンス然とした姿に見惚れてしまったのですが、まさかそのエレガントな皇太子が・・。まさに殿下はパッショネイト笑。
可笑しみもありつつ皇太子妃をエスコートする姿はやはり甘やかで、記憶喪失の彼女への告白シーンにはじんわりと涙してしまいました。
ショーでもたくさん活躍されていて、とくに娘役さんたちの真ん中で美しく輝いていた姿が甘く鋭く印象的でした。
これからにますます期待したいなぁと思いました。

美羽愛さんはお芝居で皇太子妃として登場するまでにかなり時間がありましたが、パーティの客など別の役で舞台に出てくると思わずそのチャーミングな舞台姿を目で追っていました。
記憶を失った皇太子妃が精霊たちとカタコンベで踊る場面は儚くて可憐でと美しかったです。
記憶を失ったまま皇太子の聖乃あすかさんと愛情を交わす場面は名場面だなぁと思いました。
ショーでは極楽鳥として専科の高翔みず希さん凛城きらさんを翻弄するダンスが愛らしくて好きでした。

シャンドールの家の5人の居候たち。ラースロ役の羽立光来さんとジグモンド役の一之瀬航季さんは、舞台と客席の橋渡し的な存在でもあって、2人のセリフや慌てぶりで状況が理解できました。滑舌もよく良い仕事をされてました。
ラースロがシャンドールを気遣うヴェロニカのマネをするシーンはわかっていても可笑しくて楽しみでした。
舞台俳優のヤーノシュ役の侑輝大弥さんもいちいちセリフが芝居がかっていて面白かったです。お顔がはっきりして綺麗なのでモノクロのサイレント映画の俳優も向いているなぁと思いました。(ヴァレンティノみたいに人気が出そうだけど舞台俳優にこだわりがあるのかな)
占い師ギゼラ役の朝葉ことのさん、まずパーティでの歌声に聞き惚れました。グループ芝居でのセリフもいい塩梅で彼女の存在で良い感じにまとまっていて頼もしいなぁと思いました。
自称詩人というレオー役の天城れいんさんはかわいい雰囲気が役にぴったりだなぁと思いました。
シャンドールに別れのことばが言えない場面で、もうすこしシャンドールとの関係性が見えたらなぁと。(これはシャンドールの声かけにも言えるんだけど)
「自称詩人」でいつもメシのことばかり言っている・・それだけの情報でシャンドールに出会う(拾われる)までどんな生活をしていたのかとか勝手に想像できてしまったりして、あまたの空想をめぐらせすぎたかもしれません笑(想像ではちょっとランボーが入ってました)

専科の高翔さん、凛城さん、そして副組長の紫門ゆりやさんが芝居ではコミカルな間で楽しませてくれながら、パーティのシーンではまったく別の紳士の役としてとっても粋でロイヤルだったりするのもさすがだなぁと思いました。

下級生にいたるまで皆さんが素晴らしかったです。
私の脳内ではもうこれは「エリザベート」できちゃうんじゃない?ってなっていました。永久輝トート、星空シシィは当然。フランツは聖乃さん?(いやこんなに面白い殿下がやれるんだからルキーニもできちゃうんじゃない?)などなど。エルマー、マデレーネ、リヒテンシュタイン侯爵夫人、・・とどんどん脳内劇場がはじまって大変です。
いつか現実になる日がくるのでしょうか・・?

このメンバーに星組から極美慎さんも加わるのかと思うと花組眩しすぎない??と心配と期待でまた足を運ばずにいられなくなりそうです。

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2025/03/25

まさに殿下はパッショネイト

3月14日と20日に博多座にて宝塚歌劇花組博多座公演「マジシャンの憂鬱」「Jubilee」を見てきました。

お芝居もショーもやっぱり楽しい。
21日には遠方から観劇のために来福した友人たちと、ひとこちゃん(永久輝せあさん)が「ザ博多座」(博多座情報番組)で博多の楽しかった思い出として語っていた能古島にも行きました。
お天気も良くて菜の花がまもなく満開という感じでした。千秋楽の頃には島内のたくさんの桜が見頃になっているのではないかなと思います。
そのあとはお昼に博多駅で「めん鯛まぶし」を食べて新幹線と在来線に乗って門司港観光と盛りだくさんな大人の遠足を満喫しました。
地元に住んでいるけど知らないことばかりで誰よりもはしゃいでしまった気がします。遠方から友人が訪れる博多座公演は私にとって特別なイベントだとあらためて思いました。(来年はどの組が来てくれるのかなぁ)

さて肝心の公演についての感想です。
「マジシャンの憂鬱」は初日の硬さもなくなり、正塚作品特有のテンポ感もよくなっていっそう面白くなっていました。
正塚作品にありがちな「特性ゆえに自己肯定感低めのヒロインと彼女に対して支配的な面が垣間見える主人公」という関係性が初演ではもうすこし濃く感じられていた気がするのですが、星空美咲さんのヴェロニカは自分を顧みて落ち込むことはあってもそこまで自己肯定感が低くはなさそうだし、永久輝さんのシャンドールも相手の心を手玉にとるような感じが薄いので、わたし的には抵抗なく作品を楽しめた気がします。
人を食ったような抗いがたい魅力にあふれていた初演の瀬奈さんシャンドールと比較してしまうと博多座版はあっさりしている印象はあるのですが、そこが令和らしくて安心して見られるゆえんかなと思います。
初演の時は初演が最高だったけれど、いまはこの博多座版が好きだなと思います。

永久輝さんのシャンドールと聖乃あすかさん演じる皇太子ボルディジャールとの掛け合いもとても面白かったです。
さいしょは革新的で聡明な皇太子なのだなと思っていたら、場面を追うごとにちょっとあれ?となり、だんだん様子がおかしくなっていく感じが「気のせいではない」と確信した頃にはスパークしていて、くすくす笑いが大笑いへとエスカレーションしていくかんじがたまりませんでした。
2回目3回目の観劇ともなると「来るぞ来るぞ」というくすぐったさに耐えきれなくなる可笑しさで、「ボルディジャール待ち」とでもいう状態に陥っていました。
彼と礼儀正しくお付き合いできるシャンドールは本当に忍耐強くて紳士だなぁ。可笑しみはあるものの皇太子ボルディジャールもとても紳士で2人揃ってドタバタにも品があるのが素敵だなと思いました。

シャンドールもボルディジャールも自分の人生を一生懸命に生きている。ちょっと青臭さもあるのが博多座版ならではかな。まだまだたくさんの未知が2人の行く手には広がっている。そんな印象も受けました。
シャンドールとヴェロニカも、ボルディジャールと皇太子妃マレーク(美羽愛さん)も、それぞれに初々しさを感じるカップルだなぁとも思いました。
永久輝シャンドールの「好きですよ、あなたが」に(え?ええ?私?)となってるヴェロニカも愛おしいし、ボルディジャールの深い愛を感じて「このまま思い出すことができなくてもあなたを愛していていいですか」と尋ねる美羽マレークも愛おしくて、ふふふとなってしまいます。(きっと目尻がでろ~んとなっていると思います)

愛おしいといえば、ほかの人びととはテンポがちがう柴門ゆりやさん演じる司祭さんも。とてもおっとりとしていて驚いて大の字に気絶したり、そのテンポゆえ大事なことを言おうとしているのになかなか聞いてもらえなかったり・・。抜け目ない人びとの中でひとり俗世間とは異なる空気感を漂わせているのが面白かったです。この世界にはいろんな人が一緒に生きていて、いろんな価値観があるという正塚ワールドの人だなぁと思いました。
シャンドールの家に居候している友人たちも、ヴェロニカの同僚たちも、酒場にいる人びとも、貴族や王室に仕える人びとも、それぞれがちょっと個性的でちょっと利己的でそれぞれに自分の人生を生きているかんじも、正塚ワールドだなぁと思いました。

「Jubilee」もまた、舞台のひとりひとりがその瞬間「生きている」こと、舞台に立つことの歓びに満ちて、その命のエネルギーを浴びるような心ときめくショーでした。
クラシカルでありながら元気いっぱい、美しく崩さないダンスで魅了するのが永久輝さん率いる花組の特長になるのかなぁと思ったりもしました。
綺麗なターン、一直線に上がった脚。ひとりひとりが誰よりも高く、より美しくという矜持をもって舞台に立っているような、その姿が清々しくて惚れ惚れと見ていました。
生まれたばかりのこの永久輝さんを中心にした花組がこれからどのように円熟していくのか、その様を見届けたいなぁと思いました。

ことしの私の博多座花組公演観劇も残すところ千秋楽の1回となりました。
その後のロスがいまから思いやられます。
基本的に観劇は遠征のため組によっては縁遠くなりがちなのですが、こんごも花組を見つづけたいなと思いました。こんごだけに。(マジ鬱だけに)

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2025/03/14

欺き続ける孤独

3月8日に、宝塚歌劇花組博多座公演「マジシャンの憂鬱」「Jubilee」初日を観劇しました。
お芝居もショーもとても楽しくて幸せな時間でした。

「マジシャンの憂鬱」は、私が座った座席位置のせいもあるかもしれませんがさいしょのうちは音響が賑やかすぎて気になってしまったり、前の座席の方が片時もじっとしていないためにずっと視界を妨げられていたりでなかなか内容に集中できないでいたのですが、主人公のシャンドール(永久輝せあさん)が街角でヴェロニカ(星空美咲さん)に声をかけられたあたりから落ち着いて芝居を見ることができて、その後はさいごまで芝居やパフォーマンスを楽しく見ることができました。
正塚先生の作品はセリフを聞き逃さないことが大事なので、永久輝さんと星空さんの滑舌は聞き取りやすくて内容がすっと頭に入ってくるのがとてもよかったです。

初演の瀬奈じゅんさんのシャンドールはこなれ感と人を食ったような雰囲気が魅力的でしたが、永久輝さんのシャンドールは真面目だなという印象をうけました。ボルディジャールを放って逃げることは無理でしょうと。
初演の彩乃かなみさんのヴェロニカは重いものを背負っている気の毒な女性に感じていたけれど、星空さんのヴェロニカはさっぱりとしていて楽に見れたように思います。ちょっとズレている感じかとてもチャーミングでした。そのあたりはテイストが『令和』なのかなぁ。仕事に邁進する姿が素敵だなと感じました。そしてあの彩乃さんが歌ったナンバーを歌いこなしていることに頼もしいなぁ恐れ入ったなぁと思いました。

皇太子ボルディジャール役の聖乃あすかさんは滑舌は甘めでしたが、間や唐突な身体表現が面白くて独特な認知の仕方をするボルディジャールを魅力的に演じていて気がつくと引き込まれていました。
皇太子妃マレーク役の美羽愛さんは、カタコンベで登場した時のダンスが幻想的で目を奪われました。いつのまにかそこにいて心もとなく寄る辺ない風情にはアデルハイド(凛城きらさん)が庇護本能をかきたてられるのも納得でした。

墓守のシュトルムフェルド役の高翔みず希さんと妻のアデルハイド役の凛城きらさんは、ひと言発するだけで面白かったです。
じつはイメージ的に配役が逆(妻役が高翔さんで夫役が凛城さん)かと思っていたので登場のときはあれ?と驚きました。どちらでもできる専科のお2人凄いなぁと思いました。

細かい見どころがたくさんある作品なのでリピートが楽しそうです。

「Jubilee」は、大劇場や東京公演をご覧になった方々から良いショーだからお楽しみにと言われていたのですが、違わず華やかで心浮き立つ作品でした。
クラシックのアレンジ曲で構成されたショーでしたが、元気でカッコ良くてこれがいまの花組なんだなぁと。
若手の方々がダンスパートを目まぐるしいほど順々に踊っていく場面がよかったなぁと思います。
そしてやっぱり花娘の群舞はいいなぁ。一気に世界が爛漫と明るくなる気がします。なんでしょうねあれは。

個人的に初日を観劇するのは受け入れ態勢になるまでけっこう時間がかかる質なのですが、さいしょの強張りもあっという間に溶けてしまっていました。
見終わったとたんに次の観劇がたのしみ~と思いました。
いつもとはちがい、地元ならではの週1で観劇できる博多座公演期間を愉しみたいと思います。

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2025/02/24

真っ赤な嘘に染め上げろ

2月12日に博多座にて歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」を見てきました。

思っていた以上に新感線でした。
2007年版は見ていないんですが、この役は古田新太さんだな、高田聖子さんだな、粟根まことさんだろうな、と思ったり。

それに加えて、凄絶な立ち廻りや思わず見惚れてしまう所作、見得や六方、だんまり、人形振り、本水にさいごは宙乗りなど歌舞伎的演出が目白押しで、そこに大向こうもかかって、歌舞伎初心者の私には目を瞠る瞬間の連続でした。歌舞伎って凄いなあと感嘆しまくりでした。(一昨年見た「流白浪燦星(ルパン三世)」での愛之助さんのレクチャーがいまも歌舞伎を見る面白さをマシマシにしてくれています)

そしてやっぱり脚本に惚れ惚れしてしまうのは性かなぁ。
脚本も演出も演者もどこをとっても凄いなぁと感服しまくり。この打ちのめされるような満足感はなかなか味わえないなぁと大興奮、大満足の観劇体験でした。
歌舞伎って凄いエンタメだなぁと思いました。

松也さんのライ、幸四郎さんのサダミツの回だったのですが、ずっと幸四郎さんがいないなぁ・・と思っていて、さいごのさいごのカーテンコールでサダミツ登場時に背景の映像に幸四郎さんのお名前が出て、えええーっと驚きました。まんまとしてやられていました。
幸四郎さんがライをつとめる大千穐楽のライブ配信は平日だけれど見逃し配信もあるということなので購入しました。どんなライなのか楽しみです。
(けっきょく24日の松也さんのライブ配信も購入してしまって・・まんまとカモです・・)

松也さんのライは迫力が凄かったです。本当に剣に操られているように見えました。どういう体幹をしているんだろう・・。
口先では迎合しながら相手に顔が見えない向きで別の思惑がある表情を見せるのは「リチャード3世」ぽいなぁと思いました。
となると冒頭の3人の魔物(オボロ)に「王になる者」と言われるところが「マクベス」をリスペクトしているのかな。
歌舞伎以外の演劇にも挑戦してきた松也さんがいま、歌舞伎に誇りと充実感をもってこの舞台に立っている、そんな印象を受けました。

松也さんのライと尾上右近さんのキンタとの掛け合いもとても面白くて、シュテンの血人形の契りの意味がわかったときのライに僅かに動揺があったように見えたのは、端からシュテンと義兄弟の契りなどかわすつもりもなくて代わりにキンタの血をつかったことでキンタの命を危うくしたことを悟ってなのかな?
どんな相手も利用するし平然と騙し裏切ることもなんとも思っていないライだけど、ちょっとだけキンタに「あはれ」を感じているのかなぁと思いました。その本人さえ意識していないちょっとした「あはれ」が最終的に自滅につながるのがまたあはれでこの筋書きの痺れるところだなぁと思いました。
松也さんライと右近さんキンタの関係性がとても刺さったので、幸四郎さんのライとキンタではどうなるのだろうと興味がわいています。

時蔵さん演じるツナと坂東彌十郎さんのオオキミも好きだなぁと思いました。
時蔵さんのツナは女性性をほぼ封印した凛々しく美しい女性であるところがガツンと心を奪われました。すっとしたストイックな武人で女性で懊悩しがち。(まんまオスカルだな)それを女方が演じているところ。
(これまでもお嬢吉三や富姫や凜とした女方に心奪われていたから、ツナに惹かれるのは道理なのかな・・?)

オオキミは花道から登場のときから愛らしくて心掴まれました。「3人しかいないけど」もチャーミング。
玉座に上るため身を翻して打ちかけた着物を払う所作とタイミングがシキブともピタリと一緒で見惚れていました。
コミカルかと思いきやするっと様式美を決めるなど油断できない感じにぎゅっと心掴まれました。
坂東新悟さんが演じたシキブはじっさいに近くにいたら苦手なタイプだと思うのだけど、内に秘めたかなしみのようなものも感じて憎めない人だなぁと思いました。
そのかなしみというのは、ツナが感情を抑えているけれど心に嘘はないのとは対照的に、シキブは感情豊かに見せながら実は本心を隠して生きているからかなぁと思いました。そういうすごく女性ゆえな有り様にリアリティを感じてかなしくて憎めなかったのかなぁ。

観劇中のほぼどの瞬間も感動していてとても忙しかったです。演者のパフォーマンスにセリフに展開に。登場人物たちの名前にも。これってこういうこと? これってどういうこと? これって・・と。述べだすときりがないくらいに。とても面白かったです。

2月24日(松也さんライ千秋楽)と25日千穐楽(幸四郎さんライ)のライブ配信も購入したので、観劇中にこれは?あれは?と思っていたことを検証したり、ライが変わることでどうなるのかとか、また自分が何をどう思うのかとか、楽しみにしたいと思います。

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2025/01/27

きれいはきたない

1月13日に博多座にて、祝祭音楽劇「天保十二年のシェイクスピア」を見てきました。

とにかく醜悪。これほどの醜悪さをこれほどまでに情熱的に描こうとする理由はなんだろう。そこになにを見出そうとしているのだろうと思いました。

私も知っているシェイクスピア作品のセリフやシチュエーションがいくつもあって「あーこれは!」と思う楽しみがありました。東京公演を見た方からシェイクスピア作品を知っていると楽しめるとは聞いていましたが、こんなにたくさん織り込まれているとはとびっくりでした。私の知らない作品もたくさん散りばめられているんだろうなと思いました。

浦井健治さん演じる佐渡の三世次はリチャード3世だなぁと思いました。その見た目も。
私のリチャード3世のビジュアルイメージはBBCの「ホロウ・クラウン」のベネディクト・カンバーバッチですが、カンバーバッチも凄いなぁと思っていましたが、舞台上でずっとあの姿勢でどす黒い気を放つ浦井さんも凄いなぁと思いました。

三世次がこの世界を憎んでいるのはその見た目による拒絶や排除を受けつづけた過去があるから、ってことなのかな。登場したときからすでにこの世への憎悪で満ち満ちているかんじだったけれど。
きれいは汚い、汚いはきれいと、この世で価値あるとされるものを見下して嫌悪されるものを持ち上げて冷笑していないと生きていられない人だというのはわかりました。
そのくせ美しいおさちに横恋慕して彼女の夫を殺めたうえに自分の妻にして。おまえの美しさが悪いのだという理屈は自分勝手な男の常套句すぎて呆れました。

大貫勇輔さん演じるきじるしの王次はハムレットでロミオ。
母親のお文がああだからかもしれないけれども女性蔑視がひどすぎる。姿がすこぶる良いぶん罪深くて。お冬に対してあんまりすぎて引きました。
ああこれは、自分の姿がすこぶる良かったらこうやって女に報復してやるのにという作者の怨念が凝り固まった役でもあるのかな。
三世次とおなじで「すべて悪いのは女」なのだな。
それでいて好きな女性と相思相愛になったら浮かれまくってまわりが見えなくなってしまう。(女性を蔑視する人ほどその傾向があるのでとてもリアル)

天保12年という日本のエンタメの危機の時代を舞台にして、シェイクスピアの全作品のなにがしかを登場させた戯曲を描くという難業を成し遂げた凄さに唸り演者のレベルの高さに驚きつつも、なんでもかんでも性的なものにこじつけてそれがカッコイイとされていた昭和(戦後)の価値観と、女性にはなんでも無条件に受容する聖女と寝首を掻く悪女とどうでもいい女(はけ口にはする)しかいないかのような世界観にうんざりしてしまったのが正直なところでした。
いまこの作品を上演したかったのはどうして?と思わずにはいられませんでした。

CAST

佐渡の三世次/浦井健治
きじるしの王次/大貫勇輔
お光、おさち/唯月ふうか
お里/土井ケイト
よだれ牛の紋太、蝮の九郎治、ほか/阿部 裕
小見川の花平、笹川の繁蔵、ほか/玉置孝匡
お文/瀬奈じゅん
鰤の十兵衛、大前田の栄五郎、ほか/中村梅雀
尾瀬の幕兵衛/章 平
佐吉、ほか/猪野広樹
お冬、ほか/綾 凰華
浮舟太夫、ほか/福田えり
清滝の老婆、飯炊きのおこま婆/梅沢昌代
隊長/木場勝己
(1月13日博多座)

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2025/01/11

普通のとなり

1月6日に博多座にて「next to normal」を見てきました。
私にとっての2025年の初観劇です。(ちなみに2024年の観劇おさめは「モーツァルト!」でした)

望海風斗さんが博多座に来るなら見なくちゃと思ってチケットをとってから作品の概要を知りました。(1年に1度は博多で望海さんを見たいですよね)
双極性障害の女性の役だと知って俄然興味が湧いて観劇を楽しみにしていました。そういうミュージカルってあるんだ!?ってかんじで。

冒頭から躁状態のダイアナと振り回される家族の描写。これは家族も疲弊しそう。だけどなんだろうな違和感がぬぐえない。
舞台を見すすめながら、ダイアナが抱えている問題は双極性障害以外にあるのではないかなと思えてきました。なにかとても違和感。

夫のダンはダイアナをいつも通っているらしいクリニックに連れて行くけれど、そこのドクターは薬の説明ばかり。ダイアナ自身を診ているようには見えないし、ダイアナも治りたがっているように見えない。
戯曲的な誇張もあるのかもしれないけれど、このドクターはダイアナには合っていないんじゃないのかな。(っていうかこのドクターが合う患者がいるのかな。とにかく向精神薬がほしいという人なら歓迎だろうけど)

ダンはダイアナを治療に通わせたら良くなると思っているみたいだけど、そうじゃないんじゃないかな。
ダイアナは苦しんでいるようなんだけど治ろうとは思っていないみたいでそれも違和感。躁状態のときだからかのかもしれないけれど。
ダンの説得に、ダンの彼女のために良かれと思う気持ちに抗うすべがないままに医者にかかっているだけみたい。
家族を疲弊させている自覚はあると思うんだけど、治療して自分の感情を自分でコントロールして自身もふくめて家族のひとりひとりが憂いなく前向きに生きていけるようにしたいと思わないのかな。
かかっているドクターがよくないのは不幸だなと思うけれど。自分からドクターを替えるように動いたり、それについてダンと正面から話し合ったりはしないんだな。
筋道が見えない、先の見通しができない、それがダイアナが抱えている困難(障がい)そのものなのかもしれないけれども。それってダイアナだけの問題なのかな。

突然感情を爆発させたり、興奮したら自分の行動を止められなかったり(床にパンを拡げてサンドウィッチを作りまくったり)、その場にふさわしくないきわどい言葉を発したり、と異常行動といえばそうなんだけど、とんでもない浪費とか反社会的行為とか性的奔放でトラブルを起こしまくっているというわけではないみたいで。どういうきっかけでメンタルクリニックを受診したのかなとも思いました。
自分自身をやばいと自覚しているというよりは、抱えきれないもので心がいっぱいいっぱいなんじゃないの?と。
こうなるにいたった精神的負荷がなにかあるんじゃないのかなと。

と思っていたところ、ナタリーが言った兄は自分が生まれる前に亡くなっているという言葉にそういうことか!と思いました。
冒頭で18歳の息子から自分の昼間の行動について尋ねられたダイアナが思いつくままに答えたような内容を息子があっさり受け容れることに違和感があったし・・。
処方された向精神薬をトイレに流してしまうときにも都合よく現れてダイアナを唆していたし。
そうかイマジナリーサンだったのか。
ダイアナはなぜイマジナリーサンを生み出したのか、それが解けないと家族は前にすすめないような気がしました。

ダンは家族とは夫婦とは「かくあるべき」が強い人のように見えました。
「かくあるべき」から外れたことからは目を逸らす。息子ゲイブの死からも、本来のダイアナからも。(「かくあるべき」から外れた気分障害の妻には治療を勧めるのが夫として「かくあるべき」なのかな)
ダイアナは真実はとことん突き止めたい人なのではないかと思いました。原因や責任をはっきりとさせないと前にすすめない人なんじゃないかな。
それをしなかったから、その先にすすめなかったのかも。

ダイアナは若くして予期せぬ妊娠をしたことで人生が大きく変わってしまった。
妊娠出産という自分の体の変化を受け容れること、描いていた進路、歩むはずだった未来から外れて家事育児に専念することを受け容れること、そして扱い方もわからない赤ん坊の存在を受け容れること、を極めて短い数か月のあいだに一気に余儀なくされたのだろうなと思います。
ひとつひとつの変化を完全には受け容れきれないまま必死で育児をして、もはや自分のすべてになっていた生後8ヶ月の息子の死という現実に直面して、彼女にはもうそれを受け容れるキャパシティが残っていなかったのじゃないのかなと思いました。

夜通し泣きつづける我が子にパニックになってしまっていた彼女にダンは「大丈夫、きっと良くなる」と言ってなだめたのだろうと思いました。いま困難を抱える彼女にそう言っているように。
なにもわからず手探りで育児をしながら、幾度か医者にも相談して・・そのたびに心配ないと、乳児は泣くのが仕事だからとか乳児によくあるぐずりだとか言われていたのかなと思います。
(権威ある者の言葉に全責任を委ね自分では判断しないのがダンの癖のように思います)

ダイアナの母親は、少女の頃のダイアナのことを元気な子だったと言っていたそう。
娘のナタリーはダイアナに似ているのだと思いました。
ナタリーのようにダイアナも活発で才気に溢れ寝ることも惜しんでどんどん課題をやっつけてしまうような少女だったのかなと。
だからナタリーのことをダイアナはまっすぐに見ることができなかったのかもしれないなと思います。置き去りにした自分がそこにいるから。
ダイアナには置いてきた自分と向き合うことが必要なのじゃないかな。
置いてきた自分をいまの自分のなかに取り込んで、止まっていた鼓動を動かす作業が必要なのじゃないかなと思います。

抱えきれない目の前の問題に直面したときに「大丈夫、きっと良くなる」と根拠が稀薄でも自分にも家族にも言い聞かせて(難しいことは専門家に丸投げして判断を仰いで)有無を言わさず前にすすもうとするダンとは反対に、ダイアナは立ち止まって現実をしっかり自分で咀嚼して責任や根拠を明確にしたいタイプなのじゃないのかなと思いました。
ダンといるとダイアナは抱えきれないモヤモヤをいっぱい抱えてしまう気がします。ダンの長所ともいえる性質がダイアナと相性が悪そうです。
ここはいったん離れて、自分のことや、ダンについてや、息子や娘のことをいままでとはちがう目線で見て考えてみることがダイアナには必要なんだなと思いました。
だからこれは前向きなラストなんだなと。そう思いました。
普通じゃないけど普通のとなりで普通に生きようともがきながら生きている人びとが暮らしている。そうなんだよなぁと肯いてしまう作品でした。

CAST

ダイアナ/望海風斗
ゲイブ/甲斐翔真
ダン/渡辺大輔
ナタリー/小向なる
ヘンリー/吉高志音
ドクター・マッデン/ドクター・ファイン/中河内雅貴

(2025年1月6日博多座)

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