カテゴリー「♕ 雪組」の27件の記事

2024/04/21

戦っていたの

4月14日に梅田芸術劇場メインホールにて宝塚歌劇雪組全国ツアー公演「仮面のロマネスク」と「Gato Bonito!!」を見てきました。

演じきった後の成長がたのしみ

全国ツアー公演ではありがちですが、柴田侑宏先生の作品を上演するには主要人物に役者が揃っていないなぁというのはやはり感じました。
恋愛巧者の主役の2人さえ出し抜くジェルクール伯爵の憎たらしいほどの自己評価の高さ「俺は出来る」感が、序盤の2人のやりとり(悪巧み)に説得力を与えるのだと思うのですが、ジェルクール役の咲城けいさんを頑張っているなぁと微笑ましく見つつ、いやいやいやこの役は「頑張っているなぁ」では期待値には届いていないんだなぁとも思いました。

2016/2017年に花組全国ツアー公演で2度上演された時は、主役の明日海りおさんより上級生の2番手(鳳月杏さん、瀬戸かずやさん)がいた頃だったので、いい塩梅にその二方がこのジェルクールに配役されていたんだったなとあらためて思いました。
とはいえそのほうが稀ではあるので、経験値の浅い人がいかにしてこの役をものにするのかというのが見ものでもあるのかなと思います。
臆せず自分の思う演技プランに沿って演じていると見えた咲城さんのポテンシャルは十分に感じられました。

彼女以外の下級生もおそらくここまでセリフがある役ははじめてなのかもと思える状態ではありましたが、このように実践で鍛えられるのが柴田作品の良さでもあるのかなと思います。お屋敷の下働きの3人組はこのツアーで芝居の間を自分のものにしていくだろうなと思いました。
この公演で卒業の千早真央さんが演じられるヴィクトワールはロベール(真那春人さん)とともにこの作品の要となる役で、2人の居方、眼差しがあるからメルトゥイユ侯爵夫人を多面的に見るきっかけにもなると思うので、卒業のその日まで役を深めて作品をより高めてほしいなと思いました。

私が観劇したのは初日から3日目。ツアー終盤のライブ配信ではどれだけ深化した芝居が見られるか、楽しみにしています。

2024年のいまだからこそ感じられた「仮面のロマネスク」

主役のヴァルモン子爵ジャン・ピエールが雪組2番手の朝美絢さん、ヒロインのメルトゥイユ侯爵夫人フランソワーズがトップ娘役の夢白あやさんという配役のバランスもあるのでしょうか、今回の「仮面のロマネスク」はなんだかいつもと違うなと思いながら見ていました。

法院長様(透真かずきさん)が自分の奥方を指して「これ」と言ったり、自分が留守のあいだ彼女をローズモンド邸に「預ける」と言うのを、「虎に翼」でいう「妻の無能力」の思想の一端だなぁと思ったりもしました。貞淑な妻とはこれを受け容れ弁えるのが当たり前で、トゥールベル夫人(希良々うみさん)もそういう人なのだろうなぁと。
いまの時代を生きているからこその目線で見ていたように思います。

ヴァルモンとメルトゥイユ侯爵夫人の「恋の駆け引き」感はそれほどでもなかった気がします。
お互い手玉に取りあっているという感じがあまりなかったというか、むしろ2人とも芯は真面目なんだなと。やっていることはあれですがどこかに一途さが見え隠れしていたような。
じゃあなんで2人はこんなことをしているの?と、いままであたりまえにわかっていると思っていたことがそうじゃないような新しい感覚の「仮面のロマネスク」だなぁという印象で、それはそれで面白く見ていたのですが、ラスト近くのメルトゥイユ侯爵夫人のセリフでハッとしました。
「私も戦っていたの」と独白する夢白メルトゥイユ夫人に。
このセリフの意味を今回ほどはっきりと感じたことはなかったなぁと思いました。彼女が何と戦っていたのかをこんなにはっきりと意識したのははじめてでした。

いままでは、それは仮面を被らないといられない彼女自身のプライドやおなじく本音を晒さないヴァルモンに対しての戦いのように漠然と思っていたのですが、「〇〇はかくあるべき」と縛り付ける世間とのあいだで駆け引きを挑み戦っていたのだとハッとしました。
女性は、既婚女性は、未亡人は、貴族は、(タカラジェンヌは)―――。
いまにも通じる戦いを彼女は続けていたんだなぁと、夢白メルトゥイユ夫人の誇り高い面(おもて)を見てそう感じました。

つねづね柴田先生は女性にやさしいなぁと私は思っています。
半世紀前の意味でいうところの「フェミニスト」。家父長制を大前提にしてその中で生きる女性に心を寄せ、彼女たちが生きやすい道を示そうとしてくれているのだなと感じます。
シャルドンヌ夫人(アルジェの男)やセシルの母ブランシャール夫人(愛羽あやねさん)のような弁えた年長の女性にどういう心持ちでいれば社会的無能力者とされる女性が苦しみ少なく心穏やかに生きられるかを説かせていたり、シャロン(琥珀色の雨に濡れて)やパメラ(フィレンツェに燃える)のような悪女と見做される女性の内心の純粋さを描いてみせて、そのように生きざるを得ない女性にやさしいなまざしを注いでいるように思います。

メルトゥイユ侯爵夫人もまたそういうキャラの1人だという認識でいたのですが、夢白メルトゥイユ夫人はこれまでとは違って見えました。
彼女は「そのように生きざるを得なかった」のではなく能動的に家父長制の価値観と戦っていた人だったのだと思いました。価値観に従ったふりをしながら壮絶に。
その覚悟をした人の顔だなぁと思いました。
2024年のいまだからこその視点を得て見えたものかもしれないし、演者もいまだからこそ湧き出づるものがあるのかもしれない。
おなじ脚本なのに演ずる人見る者のそれまでの積み重ねが、以前とは違うなにかを見せる。生で見ることに意味があるのだとしみじみと感じた演劇体験となりました。

美の圧に体感10分のショー

ショーは「Gato Bonito!!」。望海風斗さん主演で大劇場で上演された作品です。
生で見るのは初めてでしたが藤井大介先生らしさ満載でとても楽しかったです。

望海さんの時は相手役の真彩希帆さんともども「歌の圧」が印象的でしたが、この全国ツアーでは「美の圧」が凄まじかったです。
「私はマリア」で客席通路に佇む朝美絢さんにスポットが当たった瞬間、私が見たのは後ろ姿でしたが、その美しさに度肝を抜かれました。
ラテンの客席降りでは目の前で夢白あやさんと縣千さんが交差してあまりの美しき圧にどこを見るべきかと目が回り・・後になってなぜしっかりと網膜に焼き付けておかなかったのかと悔いることしきりです涙。
その後も美し過ぎるせいで人の心を煩わせてしまうことに悩む美しき猫様を堪能しあっという間に終わってしまいました。
楽し過ぎて美し過ぎて体感で10分のショーでした。
(もっと見て浴びていたかった―――!!)

お芝居もショーも余韻をかき集めてまたあの幸福感を欠片でも味わいたいと思える公演でした。
いまはただひたすらライブ配信を楽しみにしています。

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2024/02/04

ホームズは生きていた

2月1日に東京宝塚劇場にて雪組公演「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル」「FROZEN HOLIDAY」を見てきました。
昨年の11月に宝塚大劇場で見るはずの公演でしたが、中止になってしまったので1回限りの観劇になりました。

生田先生、アタマ沸いてる?

作者のコナン・ドイルと架空のシャーロック・ホームズの対話という興味深い発想に期待して見た「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル」は、生田先生アタマ沸いてる?という作品でした。
このかんじ、「Shakespeare 〜空に満つるは、尽きせぬ言の葉〜」の時と一緒だ・・期待が大きいとこうなるんだ・・涙。
生田先生の作品解説がすこぶる刺さって甚大な期待で見てしまい撃沈・・このパターンを何度か繰り返しています。
着眼や発想は面白そう!とっかかりも面白い!・・けれどいつしか行方知れずの迷作に・・迷い込んだ感覚に陥ってしまう。
今回、ポスターもプログラムも刺さりまくったためにその感覚が大きいです。
生田先生は自分ひとりで散々楽しんで、アウトプットする頃には飽きてしまうのかしら・・。

ルイーザやばいよ?

受け容れ難かったのは、過剰に妻にケアされて当然なドイルの感覚です。
妻ルイーザのあのテンションは心を病んでいるんじゃないかと思いました。
ひたすらドイルのことばかりに一生懸命で、彼を鼓舞するためにつねにハイテンションで明るく振舞い、彼ができない出版社との交渉にも出かけて、アルコール依存症で施設に入所しているドイルの父親にも会いに行き心を尽くす。そんな場面が次から次に織りなされていて。
家族的な幸福に恵まれなかったドイルの願いを知っているから。彼が医者であることより作家になりたいのを知っているから。本当に書きたいのはホームズシリーズではなく歴史小説なのを知っているから。
・・なのでしょうが、それにしても自分のことは一切捨て置いてドイルの希望を叶えることばかり。
いったいどうして?と思わずにいられませんでした。彼女の心の中には得体の知れない不安が巣食っているように見えました。まるでドイルの落ち込んだ顔を目にすることに強迫観念があるみたいに。
この人(ルイーザ)やばいよ・・?と思いながら見ていました。
いつかプツンといってしまうよ・・と。
(劇中で彼女自身については、日常のこともバックボーンにも一切触れられていないのも疑問でした)

精神がプツンといってしまう前に、ルイーザは病(結核?)に倒れてスイスに療養に行くことになりましたが、そこでもケアされるのは彼女ではなくてドイルのほう。
ドイルは彼女を療養させる資金は出しているのかもしれないけれど、彼女の心身のために何一つするではなく、反対にチアされてホームズシリーズを再開させる。
それがうまくいってルイーザの病気も完治して手を取り合って大団円??でしたが、これはもうドイルの妄想の世界だよねと思いました。
ルイーザが亡くなったことを認められない最後まで身勝手な人だったんじゃない?と。

家族に対してもおなじで、自分がほしかった家族的な幸福を再建するために豪華な容れ物を用意して、個々の気持ちはおかまいなしに呼び寄せようとする。
彼の夢を邪魔するでもなく自分の人生を生きている母親の立場も考えずに。

コンポジションは観客にお任せ

『現実を生きている人びとや、目の前にいる妻のこともまともに見もせず、対話もできず、妄想の中に生きているコナン・ドイル』を描きたい作品だったのかな?
シャーロック・ホームズたち、妻、父母、妹たち。物語を面白くしそうなピースをあちこちに置くだけ置いて、コンポジションは観客にまかせるパターン?
作者が散々ひとりで楽しんだ玩具を、ハイッどうぞ!こんどは君が好きなように楽しんでね!と渡されたようなそんな感覚になった作品でした。
役者も物語のピースも私には魅力的だっただけに戸惑いが大きいです。
(プログラムの彩風咲奈さんのドイル、どれもこれも好きです)
(次の作品解説にもまたわくわくして、こんどはと信じて見に行ってしまうんだろうなぁ)

「FROZEN HOLIDAY」

「FROZEN HOLIDAY」は雪組らしいピュアで美しいショーでしたが、雪に覆われた館のホリデーシーズンという縛りが強すぎて、各スターのもっと別の魅力も見たかったなぁと思いました。
時空を飛び越えてアジアンテイストな春節などもあったらよかったのになぁと。
夢白あやちゃんのいちごのショートケーキみたいなドレスがとても可愛かったです。
和希そら君の空気を操る感じが素敵でした。卒業さみしいです。

CAST

アーサー・コナン・ドイル(彩風咲奈) シャーロック・ホームズシリーズの作者
ルイーザ・ドイル(夢白あや) アーサー・コナン・ドイルの妻
シャーロック・ホームズ000(朝美 絢)ドイルの書いた小説の主人公
ハーバート・グリーンハウス・スミス(和希そら) 「ストランド・マガジン」の編集長

チャールズ・ドイル(奏乃はると) アーサー・コナン・ドイルの父
ヘンリー・シジヴィック(透真かずき) 心霊現象研究協会の現職の会長
ウィリアム・ブート(諏訪さき) 「ストランド・マガジン」の副編集長
ロティ・ドイル(野々花ひまり) アーサー・コナン・ドイルの妹
ミロ・デ・メイヤー教授(縣 千) 心霊現象研究協会に招かれてやってきたフランスの催眠術師
ビアトリス・エリザベス・B・ハリスン(音彩 唯) 「ストランド・マガジン」の編集部員
アーサー・バルフォア(華世 京) アイルランド問題担当大臣、心霊現象研究協会の会長

 

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2016/09/07

君が信じた僕をもう二度と見失いはしない。

8月10日昼夜2公演、梅田芸術劇場メインホールにて宝塚歌劇雪組公演「ローマの休日」を見てきました。

3週間以上経ってしまったので記憶があいまいですが書けるかぎりで感想を。

有名すぎるほど有名な映画の舞台化でどうなるのかな?と思っていたのですが、これが予想を超えてよかったです。
誰がやってもハードルが高いだろうと思いましたが、わけても長身のグレゴリー・ペックとあのオードリー・ヘブバーンを“ちぎみゆ”(=早霧せいなさんと咲妃みゆさんの雪組トップコンビ)でやるのは、持ち味的に遠い気がしていたのです。が、そこはさすがの“ちぎみゆ”。芝居で魅せてくれました。

1幕はけっこうドタバタ。
ジョー(早霧さん)に振り回されて気の毒な相棒アーヴィング(彩凪翔さん)とアン(咲妃さん)に一目惚れのイタリア人美容師のマリオ(月城かなとさん)が良い味を出してて目立っていました。

ときどきテンポが滞る気がしたのと、え?こんな生徒さんまでもがモブなの?ともったい気がしたりしましたが、わ~これ楽しい♪で一幕が終わりました。

2幕はうっかり涙ぽろぽろでした。
祈りの壁の場面からの主人公2人の心の近づき方が田渕先生ロマンチストだなぁと思いました。

現状に不満たらたらでなんとか世間を出し抜いてよい目をみてやろうという気持ちで生きていたジョーがアンに心を寄せていく過程で、自分の利益よりも誰かのためにという気持ちが芽生えているところが自然でした。
たぶんこの優しいジョーが本来の彼なんだろうな。幼い頃の彼はきっと心優しい子だったのだろうなと思いました。
そんな自分を取り戻せてよかったねと見ていて素直に思えました。

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2015/12/25

新世紀も愛と夢と。

12月20日(日)Tジョイ博多にて、『タカラヅカスペシャル2015-New Century, Next Dream-』16時の部のライブ中継を見てきました。

東京公演中の花組を除く、月、雪、星、宙と専科からの選抜メンバーが出演。
ことしは100周年等の縛りもなく、第1部は「愛」、第2部は「夢」をテーマに2000年以降に宝塚で上演された作品のナンバーを、いまをときめくスターが歌うという宝塚ファン歴10年余の私にとってとても楽しい構成となっていました。
新世紀の宝塚はこれまでどおり、愛と夢と、そして歌の力を大事にして未来に向かっていくのかなぁと思わせる内容でした。 また恒例の組ごとの公演にちなんだコント場面もハイクオリティでした(笑)。

トップさんたちのMCでは、退団を発表したばかりのまさお君(龍真咲さん)が話題の中心になっていました。
つとめて台本どおりに進行しようとするみっちゃん(北翔海莉さん)とまぁ様(朝夏まなとさん)に対して自由すぎるまさお君(笑)、そこを締めるどころか便乗する轟さん(笑)、台本どおりに進行しようとするもことごとくまさお君に粉砕させられてしまうちぎちゃん(早霧せいなさん)(笑)、といった印象をうけました。

一生懸命すぎて身振り手振り話の内容が大仰になってしまうちぎちゃんを華麗にスルーする轟さん(笑)。
それを同期としてフォローしようとする気持ちがあらぬ方向に饒舌になりすぎ余計可笑しなことになってるまさお君(笑)。
ちぎちゃん発端の2人ペアで手を合わせて作る『輪』をスルーする轟さんをとび超えて、ちぎちゃんと一緒に作るまさおちゃんとか。
けっきょく轟さんはノってくれなかったけど、みっちゃんとまぁ様はやってくれましたよね。

この一連のやりとりを見ながら、トップさんたちと轟さんとの学年差がここまで開きすぎると絡みにくいんじゃないかと感じました。
いくら轟さんがフレンドリーであってもこのメンバーで轟さんに生のリアクションを返すことができるのは、近年風共で相手役として共演したまさお君だけじゃないかなぁ。
それもまさお君のキャラだからこそできるんじゃないかと。もしまさお君がいなかったら・・・(寒)。
来年以降のタカスペ、どうなるんだろう。
トップさんたちが轟さんに遠慮して面白い返しの一つもできないMCなんて、客席から見てもつまらないだろうな。
そんなことも感じた宝塚新世紀のタカスペMCでもありました。

以下、プログラム順に曲名と出演者の覚書き。

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2015/12/09

\ ラ /。

11月28日(土)に福岡市民会館にて宝塚歌劇雪組全国ツアー公演「哀しみのコルドバ」と「ラ・エスメラルダ」を見てきました。

ショーの感想を書くつもりが1週間以上経ってしまって・・・。いまさらではありますが、自分のための覚書として思い出すままに書いてみます。

ショーで先ず楽しみにしていたのは、開演前に舞台上に現れる噂の『ラ』の電飾です。見ることができてうれしかったです。
ショーの開演前に舞台上に登場するオープニングセットはどの公演でも、これから始まる華麗でエキサイティングなひとときを期待させてくれるものですが、ことにこの「ラ・エスメラルダ」は大劇場上演中からオープニングのショータイトルの電飾が話題となっていて、私もこの目で見るのを楽しみにしていました。
全国ツアーでなくなってしまっていたらいやだな~と心配していたのですが、梅田のツアー初日にちゃんと登場することを聞いてうれしくて。
どの座席からが見やすいのかな?など頭の中でシュミレーションしてみたりしていました(^_^.)

この目で見たそれは、『ラ』と『エスメラルダ』のバランスといい字体といい、なるほど噂に違わず思わず笑顔になってしまうデザインで(笑)。同じように全ツでの初見を楽しみしていた人にも、何も知らずに見た人にも、それぞれの心を高揚させる効果があったようで、いつものオープニング待ちの客席とはちがう雰囲気が漂っていた気がします。

開演前にすっかりあたたまっていた客席を見て、これも一つの愛のかたちだなと。たのしみに着席して待っている観客に向けられた歓待の気持ち「おもてなしの心」(笑)を感じました。
そんな愛のつまったセットも、オープニングの音楽が始まるや、すすすと舞台の両袖に引き込まれてしまい、たったこれだけのためにあったのかと思うと、その心意気に感嘆しました。

電飾が袖に引っ込みオープニングナンバーとともに生徒さんたちの登場で、さあ楽しむぞ!と気持ちが前のめりに。
ヨシマサ先生×青木先生の元気なオープニングナンバーはちぎちゃん(早霧せいなさん)にぴったり。
初っ端から客席は手拍子で盛り上がりました。

つくづくとちぎちゃんのショーはたのしいなぁと思いました。
どんな役でも演じられるニュートラルな人よりも私は持ち味がはっきりしたジェンヌさんが好きだなぁ。
ショーで芸名でピカッと輝くちぎちゃんっていいなぁと思いました。
どの場面だか忘れましたが、ぜんぜん演出でもなんでもなく、たぶん狙ってもいないと思うんだけど、全力でものすごく高い見事な跳躍を見せたちぎちゃんに、あぁちぎちゃんだぁぁぁ\(^o^)/ととても心が浮き立ちました。
大人っぽい企みを見せる男役さんも大好きですが、こんなちぎちゃんも大好きです。
そしてだからショーって楽しいんだよねぇと思います。

それから、ゆうみちゃん(咲妃みゆちゃん)がとても溌剌と踊っているのが印象的でした。
お芝居とはうって変わって開放された感じで。博多座で見たショー「ファンシー・ガイ!」よりもこの元気なショーのほうがこのトップコンビに合っているかなと思います。
カルメンの場面でちぎちゃんを翻弄するゆうみカルメンものびのびとしていて新鮮に見えて心が躍りました。
私は娘役さんがイキイキと踊っている姿が好きです。その空気感もふくめて。

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2015/12/02

道を外れる権利。

Photo
11月28日(土)福岡市民会館にて、宝塚歌劇雪組全国ツアー公演「哀しみのコルドバ」と「ラ・エスメラルダ」を見てきました。

(ねたばれしています)

約5ヶ月ぶりに見る宝塚歌劇。昨年秋の就任以来、芝居で観客を魅了してきた早霧せいな&咲妃みゆトップコンビによる2度目の柴田作品の上演に期待を膨らませ心躍らせての観劇となりました。

柴田侑宏先生脚本の作品は、前途洋洋たる青年が運命の女性との出会いと己が立ち向かう現実に激しく感情を動かされ、その経験を経て大人の域に足を踏み入れるまでの模様を描いたものが多く、今回見た「哀しみのコルドバ」もそういった作品の一つだと思いますが、正直なところ主人公のエリオに大人を感じる瞬間を逃したままラストを迎えてしまいました。

酷い現実をつきつけられたエリオが自分が味わった苦しみをエバに味合わせた者は殺すと言い放つ場面など、自分の痛みにいっぱいいっぱいに見えたのですが、じっさいそれもわかるのですが、私としてはここで大人の男の凄みとか大きさが見たかったなぁと思いました。ちぎちゃん(早霧せいなさん)は見た目が少年的なのでそう感じたのかもしれませんが。

一度は命のやり取りにまで至った敵手ロメロがエリオに歩み寄るところも、ロメロの大きさが見える胸きゅんな一瞬でしたが、そこでもエリオのほうからの「何か」がもちょっと見えたらもっと胸バクな瞬間になったのにな。柴田作品の好敵手と交し合う「何か」が大好物なもので。

ちぎちゃんの真っ直ぐな魅力。正義とか友情とか絆のために一生懸命で、勇気が似合い、皆に笑顔と元気をくれる力。
それがこのエリオには壁になっているような気がしました。
何が正しいか、どれだけ人を傷つけるか、わかっていてもどうにもならない情念。それにどれだけ強く揺さぶられているか。いろいろな感情や観念がどろどろに混ざり合い冷えて固まる前のさまを。
その果てに最初は纏っていなかったもの――情熱の涯てを知った大人の憂いや凄みといったものを纏ってエリオは完結する気がするのです。

トップ就任以来、トップコンビにぴったりの作品が続いて、雪組のプロデュース力に羨望をこめて感歎していましたが、ここにきて持ち味に真逆の作品が。ちぎちゃん最大の難関がきたーーー!ってかんじかな。

でもそれはそれでファンには大きな課題に取り組み成長する生徒さんの姿を見守り追いかける至福の時間でもあるのですよね。
まさにそんなふうに贔屓がいる時間を過ごし、いまもまたその途上にいる私は思うのですが。

ツアーはまだはじまって1週間をすぎたところ、その持ち味に柴田作品の領域を加味しより大きく成長することを願う楽しみがある。このタイミングで意図的にこの作品を当ててきたのだとしたら、そのプロデュース力に感服します。
長い道程の途中には、道を外れることも意味があるかと思います。
ちぎちゃんも道を外れる権利がある(笑)

と話が長々と逸れてしまいましたが観劇の感想に戻ります。

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2015/06/04

そんなお前が妙にいじらしかったもんだ。

5月の博多座、雪組公演の感想をまだ書いております。
この人について書きたいと思う人が多すぎて書いていない人がまだいます。

今回の公演、ちぎみゆコンビをはじめとする雪組さんの芝居がほんとうに好きでした。
どの役にも見どころがある脚本だったというのも大きいと思いますが
その脚本にしっかりと応じた的確なお芝居と内面を見せてくれた雪組さんの力量も
すばらしかったなぁと思います。
そのうえであらためて、それぞれの役の性格付け、役割、必然性、見せ場が明確な
脚本演出っていいものだなぁとしみじみと思いました。

そして雪組さんとお芝居をした専科の花形ひかるさんもすてきでした。

ダンダラ模様の羽織を脱ぐ所作、袴を脱ぐ所作、着流し姿、座布団を返す所作。
いやんもう男前~~~

照葉さんの膝枕でくつろぐ姿や目線。
絵になるわ~~~と。

そんなビジュアルからうけるときめきもものすごかったですし、
この「星影の人」という作品における土方としての居方もまた
なんともいえずときめきました。

お芝居の最初のほうにあるセリフで、総司にむかって
その明るさで寂しさを紛らせていたのだろうと、
そんなお前が妙にいじらしかったもんだと言うセリフが、私の落涙ポイントの一つで
そのときの土方みつるさんのチギ田総司を見る目に愛しさがこもって温かくて
うるうるしながら見ていました。

その前の場面で、新参隊士たちに「局中法度」を読み上げていたときの
鬼の土方の厳しさを見せてからのこの場面なもので、なおさらに。

 

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2015/06/01

融通の利かない男だったとあきらめてくれ。

宝塚歌劇雪組博多座公演「星影の人」「ファンシー・ガイ!」の
初日、中日頃、千秋楽と計5回の公演を見たのですが、
見るたびに進化するのはもちろんでしたが、もっと見ていなかったなぁと
思わずにいられない公演でした。

博多座公演は、組を2つに分けて約半分の人数で公演するので
例年ですと、トップさんほか真ん中付近を集中して見てしまうのですが、
今回の雪組公演は、演目のせいもありますが、いつもよりもたくさんの人が
目に留まって、なんだか見ていてたいへんでした。
このメンバーに、だいもんやれーこちゃんやひとこちゃんも加わるとか・・・
雪組の充実振りたるや、怖ろしい・・・(@_@;)

 

3年前博多座で見た雪組の「フットルース」でこの先の方向性が気になった
きんぐ(蓮城まことさん)が、山崎丞としてとても大人っぽい芝居をされていて
なんだかとてもうれしかったです。
探索のため隊士の中で1人町人の身なりでふだんは柔和で腰の低い所作をしているのに
ひとたび敵とすれ違うときの眼の奥にさっと殺気が宿る瞬間を見るのが好きでした。

そんな隙のない出来る男なのに、総司にはつい気をゆるして口を滑らせてしまうところ。
手を叩いてお腹の底から笑ってしまうところ。
総司とどんな関係なのか、総司をどう思っているのかが見えて好きだったなぁ。

切腹を覚悟した山南さんの許へ明里さんを連れてくる場面は、総司といっしょに
「さすが山崎さんだ」と思いました
山南さんの目を見て彼の気持ちを読み取り、目で頷くところ。
黙って明里さんの塗り下駄を拾う所作。
ほんとうに良い芝居だったなぁ。

そんな所作のひとつひとつが私の心に染みました。
ほんとうに、宝塚時間ってすごいなぁ。
こんなにも成長する人を見せてくれるんだもん。

ショーでも面白いパフォーマーになられたなぁと思いました。
客席降りで目の前を通っていく生徒さんに呆然と手も足も出なくてしょぼん(´・_・`)な私に
微かにほほ笑んでくれたことは一生忘れないんだもん。
いい人だなぁ。

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2015/05/31

生きるときめき。

5月25日(月)博多座にて、宝塚歌劇雪組公演の楽日の2公演を見てきました。

「星影の人」は何回見ても感動しました。
さすが柴田先生だなぁと思いました。

ショー「ファンシー・ガイ」も、全場面の印象が似通っていて
場面ごとのコントラストが薄いかなとは思いますが(元々三木作品はそんなだし)
三木先生らしい趣味の作品でとても好きでした。

本公演とは出演者の人数が半分になってしまう博多座公演ですが、
お芝居もショーも、全員がはまっていたように思います。
誰がよかった!というより、皆がそれぞれによかった!という印象なので
なかなかどこを切り出して語るというのが難しいのですが・・・。

 

ちぎちゃん(早霧せいなさん)は本当に沖田総司がぴったりで。
殺伐とした時代に、その存在が皆の救いになっているんだなぁというのが納得でした。

玉勇さんとの再会のあとで総司が言う「星がきれいだなぁ」はなんど見ても落涙しました。
厳しい日常の中でみつけた、このほのかなときめきに、
戸惑いながらも表情を輝かせているさまがいじらしくてせつなくて。
一生懸命に「いま」を生きている清らかな若者の姿に。

玉勇さんとの逢引きのあとで、仲間がわらわら出てくるシーンも好きだったなぁ。
仲間は総司が大好きで、だからからかいたくて。
でも皆内心、ほんとうに総司を思って喜んでいるんだなぁって伝わってきて泣けてました。
そんな仲間のからかいに、もうっと膨れっ面になる総司の愛しいこと。
相互の愛情と信頼が、いいなぁと。
こんな「絆」を見たからこそ、このあとの展開に私は涙が抑えられなくなったんだなぁ。

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2015/05/16

お幸せどすなぁ、わかってくれるお人がいやはって。

5月12日(火)博多座にて宝塚雪組公演「星影の人」「ファンシーガイ」の
11時公演と15時半公演を見てきました。
初日に見て以来10日ぶりの観劇となりました。

「星影の人」は2公演ともやっぱり涙を堪えきれず。

この記事のタイトルは私の涙腺崩壊のきっかけとなる玉勇さんのセリフから。
正確には覚えていないので、まちがっているかもですが(^_^;)

(前記事の総司のセリフも 2年か3年→これから2年 に修正しました)

こんなかんじではありますが、どのセリフもどのセリフも私の琴線を掻き回しまくりでした。
二度三度と見るごとに、それまで気づかなかった登場人物たちの思いに気づけて
さらに感動が深まったり。

早苗さんは武家の娘だから、芸妓の玉勇さんのようにさりげなく婀娜なことも言えないし
八木家の下働きのおみよちゃんみたいに素直に態度に出すこともできないのだなぁ。
でもきっと、総司への想いは、2人に負けないくらい深いのだろうに…
「私は琴を嗜みますので時々は我が家へお立ち寄りください」と言うのが
精いっぱいな早苗さんがいじらしかったです。

山南さんが切腹せんがために襖の向こうへ行ってしまった場面。
その襖を呆然と見つめて佐藤君に話しかけられても振り向きもせずに応える井上さん。
佐藤君の求めに応じ初めて彼に隊士としての出動をゆるす、さっぱりとしたその声にも
なにかを堪えている色が滲んで……振り向いた瞳が濡れていて……
いつもは明るく溌剌と剣術の稽古と後輩のしごきに余念のない彼ですが
武士としての義と人としての情との狭間で自分を抑えているさまが胸に痛かったです。
彼、井上源三郎もまた日本を二分する難しい時代に青春を賭けて生きている若者なんだなぁと思うと涙が…。

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