カテゴリー「♕ 星組」の61件の記事

2024/09/30

思いもしなかった

9月22日に宝塚大劇場にて星組公演「記憶にございません!」「Tiara Azul ーDestinoー」の千秋楽を見ることができました。
この公演で退団するトップ娘役舞空瞳さんのサヨナラショーも上演されました。

2階席から見えたもの

2週間ほど前に観劇したときよりお芝居のリアクションがだいぶかわったなという印象でした。ショーの濃度もマシマシ。
そして客席からの拍手や手拍子も熱い。さすが千秋楽!でした。

今回は2階席だったので前回の観劇では見えなかったところが見えたのが面白かったです。
「記憶にございません!」では、礼真琴さん演じる黒田総理と小桜ほのかさん演じる山西議員、舞空瞳さん演じる聡子と暁千星さん演じる井坂の2カップルが1番セリの上下で「連立合併」を歌う場面は、1階前方席からだとセリの上の舞空さんと暁さんが見づらかったのですが、2階からだととてもよく見えて、舞空さんこんなに暁さんに迫っとったんか!と可笑しくてついつい見入ってしまいました。聡子さんの舞空さん、ずいぶんと振り切ったお芝居だなぁとは思っていたのですが、ここまでとは。

この期に及んで水乃ゆり様に

「Tiara Azul」の暁さんがヤケ酒タンゴを踊る場面では、舞台奥に水乃ゆりさんが見えたので、これも1階席からは気づかなかったことなので目で追っていたら、ほかの娘役さんを誘ってテーブルでカッコよい仕草で話し込んでいる?!
こういう酒場の場面の娘役は男性(役)に媚びたりしな垂れかかったりするのが定番かと思っていたらなんと新鮮。ゆり様素敵です。
と思っていたら、やさぐれた暁さんがほかの男役さんと踊っていた詩ちづるさんを無理やりパートナーにして踊る一連の場面で、詩さんが暁さんを振り払って上手のテーブルに向かうと、そこにはテーブルに片手をつき一方の手を腰に当てたカッコイイ水乃ゆり様がいて、その御手が詩さんのお顔をつつんでナチュラルにキス?! 詩さんも合意というか2人アイコンタクトしてた?!(角度的にはっきりとはわかりませんでしたが、そんな雰囲気)もう目が釘付けでした。
ゆり様どういうキャラ設定なの。最後の最後にゆり様怖い・・汗。(千秋楽からのゆり様呼び)
水乃ゆりさんは私の星組観劇の愉しみの1つですが、もうさらにゆり様堕ちです。千秋楽にして・・どうしたらよいの涙。かっこよー。

「サリダ・デル・ソル(いつかまた)」の場面で退団者4人のピックアップの前に、舞空さんがフォーメーションの外側を走って舞台奥に行くとそこには水乃さんがいて、2人で両手を取り合って跳ねていたのも2階からよく見えて、それにもぐっときました。
これから星組の皆に見つめられて、客席の皆に見守られて退団していく者として踊る場面の直前で手を取り合って、そこにはどんな気持ちが交わされているんだろう。大好きな娘役さん2人がここからいなくなってしまうんだという思うさみしさも感じてたいへんエモい気持ちになりました。

礼さんの愛

サヨナラショーはどこをとっても感動だったのですが、「Midnight Girl Friend」(めぐり会いは再びnext generation)からの「運命に結ばれて」(ディミトリ)は涙腺が決壊しました。
そしてそこからの「The Next Generation」(めぐり会いは再び~)で、銀橋から舞台下手で礼さんに背中を押されて星組生全員と笑顔でハイタッチしていく舞空さんを、舞台下手に佇み見守っている礼さんの立ち姿がとてもあたたかくて愛情にあふれていて、その礼さんの姿にも涙してしまいました。
サヨナラショーの主役は舞空さんだから、彼女が絶対的に主役でいられるよう見守る姿が気遣いにあふれて礼さんらしいなぁと思いました。(愛月ひかるさんのサヨナラショーでもそうだったなぁと思いだしたりして・・)

お芝居もショーもとても多幸感が残る公演でしたが、さらにサヨナラショーも愛にあふれていて、幸福感で満たされた千秋楽でした。
宝塚を見たぞというキラキラとした夢見心地をこんなにも味わえたことに、星組生や演出家の先生、スタッフの皆さまにありがとうございますと思いました。

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2024/09/22

夢を語ることは勇気が必要

9月4日と5日に宝塚大劇場にて星組公演「記憶にございません!」「Tiara Azul ーDestinoー」を見てきました。
「Tiara Azul」は演出家竹田悠一郎先生の大劇場デビュー作品です。
そしてトップ娘役の舞空瞳さんがこの公演で退団されます。

「Tiara Azul ーDestinoー」はこれぞ宝塚!なラテンショーでした。
クラシカルでありつつ、いまの宝塚歌劇の照明や舞台機構、いまの星組生をよく知っている人が作った作品だなぁということも感じました。
宝塚への愛と宝塚ファンがうれしいあれこれが散りばめられて見ていてとてもワクワクしました。
いまは次回観劇が待ち遠しい気持ちでいっぱいです。

礼真琴さんの開演アナウンスの後、暗い銀橋にずんずんと迫り来る気配が。こ、これはあれの予感——!と思った瞬間、照明が点灯して一瞬にしてそこにはずらりと居並ぶタカラジェンヌが! なんという壮観。
(わ・目の前に極美さんが・・舞空瞳さんの笑顔がこんな近くに・・)
銀橋に人の気配を感じて、これはあれ(チョンパ)だと予測はできたのですが、実際に目の前に居並ぶタカラジェンヌを見ると驚きと歓喜で脳内が大洪水になりました。

かっこいい男役さんたちと舞空さんに 歓喜していたら、2番手の暁千星さんがステージ中央に娘役さんたちと登場でひゃぁあとなり、さらに高いセットの上には豪華絢爛なトップスター礼真琴さんが登場で高揚感がどんどんエスカレーション。オープニングからガツンと心を掴まれました。

お揃いの「Tiara Azul」とロゴの入ったTシャツで娘役さんたちと男役さんたちがそれぞれペアになって踊る場面は可愛いかったです。
いろんな雰囲気のペアのなかで舞空さんと暁さんのペアは・・あれ?笑。
程度はまちまちですがそれぞれ恋人らしくなっていくカップルのなか、誰よりも自信満々な暁さんは誰よりも長く手足を伸ばして舞空さんにアプローチ。彼女の心はもう自分のものとキラッキラに瞳を輝かせて愛嬌抜群。(小一時間前まで銀縁眼鏡でクールに構えていた人とおなじ人です笑 そしてまた憂いを纏ったやさぐれタンゴを踊る人です・・)
そんな暁さんの強い押しに釈然としない表情七変化の舞空さんがとても可愛いかったなぁ。ノリきれていない風なのに暁さんとめちゃ踊っていたのも逆にすごいなと思いました。
(それぞれに通しの役名があるのですが逆に書いていて混乱してしまうので芸名で書いています)

最悪の出会いから礼真琴さんと舞空さんが飛び込んだ色鮮やかな洋装店の場面も大好きでした。娘役さんたちがとても可愛い! カラフルな衣装を纏ったディスプレイのマネキンに扮した娘役さんもそれにちょっかいをかけている店員の小桜ほのかさん詩ちづるさんも。(こんなヴィヴィッドカラーの組み合わせを着こなせる人たちって・・)
ショップオーナーかマネジャーかのこれまたネオンカラーにネオンカラーを重ねたようなド派手な極美慎さんも見ものでした。(これでサマになっちゃうのって・・)
礼さん舞空さんにチョイスされたジャケットとドレスがさらに・・呆然でした。(・・これで街にいく設定よね・・?) どんな派手な衣装を着ても素敵なタカラジェンヌという存在の尊さに手を合わせたくなりました。

いよいよ始まったカルナバルは舞台全体が煌めき、動く舞台セットとパフォーマーのパッショナブルなダンスが次々に繰り出すさまは、順々に巡ってくるカルナバルの山車を見物しているようで興奮を覚えました。見どころが満載すぎて目と心で追うのが大変。
小桜ほのかさんと瑠璃花夏さんに挟まれて両手に花の碧海さりおさんが羨ましい!(しかもマチソワで最後に手を取る相手が違ったような・・・?)
男役さんたちに囲まれて水乃ゆりさんが踊る『スーパーゆり様タイム』はさながら極楽浄土の迦陵頻伽のような有難さでした。
カルナバルといえば!の娘役さんたちのコスチューム(タカラヅカナイズしているのでノープロブレム)踊りまくるトップコンビに暁さん、これぞラテンショーの中詰の盛り上がり!(客席降りもありました! 一斉にじゃなくてこれもチームごと?みたいな)
そして盛り上がりのままにロケットに突入。
中詰までがあっという間で、まだまだ先があるのにこんなに盛り上がって大丈夫かな?と心配してしまうほどでした。

こんなに盛り上がってどうなってしまうの?と思っていたら、あら?
場面はトップコンビのロマンティックな雰囲気に。カルナバルの日に出会って、カルナバルで盛り上がって、そこからこんなに可愛らしくなるのが新鮮。
若い清い爽やか。
でもそれを見て心穏やかではない暁さん。今日フラれたばかりなのに、自分をふった相手は今日出会ったばかりの人とフォーリンラブなんだもん。
やさぐれてやけ酒を呷る姿が色っぽい。
他人のパートナーにちょっかいを出したり、他人が飲んでいる酒瓶を横取りしたり。とっても態度が悪いのに、極美さんたちは怒ったりしなくてしょうがないなーって感じで。
そうそう男の人たちってフラれて荒む同性には優しいよねとやけにリアルを感じて微笑ましかったです。これはときめくブラザーフッド。
暁さん極美さんのまわりで小芝居する人たちも面白くて目が離せない。そしてやっぱり踊る暁さんはソリッドでかっこいい。
良い場面だなぁと思いました。さっきまであんなにド派手なお祭りだったのにこの落差がいいなぁ。

そんな暁さんの心も知らず礼さんと舞空さんは2人だけの世界。
このペアで踊るダンスが素晴らしくて隅々までうっとりしました。それまでとは打って変わって飾りのないシンプルな衣装と裸足。広い舞台の上を2人だけの息遣いで埋めていくような・・本当に魂が踊っているようでした。
「Ray」のカミソリデュエットダンスで度肝を抜かれて、凄いトップコンビが誕生したなぁと感動したことなども思い出されて、なんだか泣きそうになりました。

そこから小桜さんの歌からはじまり星組の仲間に囲まれた暁さんがセンターで歌い踊る場面でとうとう涙腺が決壊。なぜ涙が出るのかもわからないのだけど。不意に清らかなものに触れてしまったそんな感じでしょうか。
礼さん舞空さんも加わって、この公演で退団する4人がセンターで踊りそれを星組生が見守るように踊り・・。よくある場面かもしれませんが、けれどそこには普遍的に心を揺さぶるものが流れていました。それを探し当て新たに息を吹きかけるのも宝塚らしさなのではないかと思います。
歌詞、曲、ダンス、そしてパフォーマーのフィジカルと心と、すべてが相まってなんとも言えない空間ができていました。

皆の心が一つになり清々しく去った後、1人で銀橋で歌うのは極美さん。明日への固い決意を心に秘めた頼もしさが胸に響きました。
そして鮮やかなピンクのドレスを身に纏った娘役さんと礼さんのダンス場面。ここが大好きでした! ネオンカラーの照明が降り注ぐ中でお洒落で大人っぽい雰囲気で。すごく礼さんらしくて素敵な場面だなぁと思いました。

大階段の男役群舞のかっこいいことと言ったら。あの階段中央での手振りに心を掴まれ、礼さん中心ならではの抜け感に心がひょう〜〜と舞い上がり、続く暁さん中心のソリッドなダンスに見ているこちらの体温も上がりました。

『ことなこ』(礼さん舞空さん)最後のデュエットダンスはもう、これこそ「エモい」と言う言葉がピッタリの、こんな『ことなこ』を見てみたかったデュエットダンスでした。
いままでにないゆったりとした振り付けで優美に踊る2人。体のすべてを自在に使える2人だからこそのドリーミーなデュエットダンス。
そして銀橋で輝くティアラを舞空さんの頭に載せる礼さん、おとぎ話を絵画にしたような2人のシーンは見る人を夢見心地にする素敵な演出だなぁと思いました。

いったんカルナバルの最高潮で盛り上がった後で、等身大の青春(タカラジェンヌの等身大なので普通とは全然違いますが)を見せる流れが好きだったなぁと思います。その等身大の青春がキラキラしていてなんだか涙腺を刺激される感じがとてもエモーショナルで。
価値観の押し付けがない、奇を衒うのじゃなくて普遍的な素敵や感動を真面目に丁寧に積み上げてつくられた作品だったなぁと思います。それがいまの星組にぴったりで心に沁みるショーでした。
若さと清らかさと青春に乾杯。

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2024/09/11

夢を追いかけるよりも速く

9月4日と5日に宝塚大劇場にて星組公演「記憶にございません!」「Tiara Azul ーDestinoー」を見てきました。
この公演は星組トップ娘役舞空瞳さんの退団公演です。

「記憶にございません!」は三谷幸喜氏原作のコメディ映画を宝塚で舞台化した作品で、シチュエーションやキャラクターを楽しめる作品でした。
脚本演出には思うところもあるのですがそこを論うのは控えます。(私は石田作品でしばしば見られる1つの方面に擦り寄りおもねる一方でほかを蔑ろにする表現が苦手です)
ん?と思う要素に引っ張られずいい塩梅に演じていた礼真琴さんはじめ星組生の力に天晴れと思いました。

なかでも「これ、ほかの人が演じたらいたたまれなかったかも」と思ったのが山西あかね役の小桜ほのかさんです。
際どさと品の良さのギリギリ。チャーミングさも失わない。
嘘っぽいのに白々しくない、小桜さんならではのリアリティが光っていました。

鶴丸官房長官役の輝月ゆうまさんも凄いなと思いました。一癖も二癖もありそうな大物に見えながら政治哲学がない人物をいいかんじに演じていて、みんながこの人の何にひれ伏すのかが見えてくるのが面白かったです。
小野田治役のひろ香祐さんの怪演も凄かったです。石田先生、本当に演者に助けられているなと思いました。

ダークスーツに銀縁眼鏡の首相秘書官井坂役の暁千星さんは反則でした。鬼に金棒、男役に銀縁眼鏡。佇むだけで魂を抜かれそうでした。
フリーライター古郡役の極美慎さんは胡散臭さが立ち振る舞いから滲み出ていて、なるほど~と思わせる人物でした。
暁さん極美さんともに下級生時代から成長を期待していたお2人が作品の中でしっかりと役目を担っている姿は感慨ひとしおでした。

私が星組を見る動機の1つであった水乃ゆりさんが、ニュースキャスター近藤ボニータ役で卒業することも言葉にならない思いでした。
その優美なダンスや美しいドレス姿にうっとりさせられてきた水乃ゆりさんですが、これまであまり前面に出て滔々とセリフをしゃべる印象ではなかったので、脳裏に過去のいろんな役が浮かんできて涙ぐみそうになりました。さいごまでやりきって卒業してくださいと心から思います。
キャストが発表されたときに石田作品にありがちなセクシーコスプレ系の役だったらどうしようと内心心配していたのが杞憂に終わってよかったです。

主演の黒田啓介役の礼真琴さんは、コメディって運動神経だっけ?と思うくらい役が似合って笑わせてもらいました。運動神経と舞台センスに感服しました。
どの場面も間が素晴らしかったですが、なかでもレストランの場面が最高でした。息子役の稀惺かずとさんもなんともいえないタイミングが巧くて大好きな場面でした。

黒田首相夫人役の舞空瞳さん。夫との仲は冷え切っていて息子は反抗期、そのうえ夫の部下と不倫中⁈・・という星組のプリンセスの最後の役がこれ??ってかんじなのだけど、どんな役でもヒロインにしてしまう舞空さんは流石でした。(この顔芸はたしかにこれまでのキャリアのなせる技・・と思いました笑)
セーラー服で登場した時はさすがにギョッとしたのですが、それ以上にアレな方が登場したのですっかり飛んでしまいました。
井坂役の暁さんとのタンゴの場面(ICH KUSSE IHRE HAND , MADAME)はコミカルな振付ながら流石でやっぱり見入ってしまいました。
宝塚最後の公演で耐え忍ぶストレスフルな役ではなくて思いのままを口にして、問題はあれど愛されるべき人に求愛されて幸せそうなとびきりの笑顔で終われるのはよかったよねと思いました。

個人的にニュアンスが大好きだった鰐淵影虎お兄様役の碧海さりおさんとか、90年代にこういう議員秘書やニュースキャスターの女性いたよねと思う秘書官番場さん役の詩ちづるさん(案外将来都知事とかになっていたりして)など1人1人が個性的で、出演者が一丸となって作り上げた作品だなと思いました。

(ショーの感想は次で書きたいと思います)

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2024/06/16

倒せドラゴン

6月5日と6日に東急シアターオーブにて宝塚歌劇星組公演「BIG FISH」を見てきました。

東京のみの上演だったので観劇は難しいかなと思っていたのですが、おなじ原作の映画が好きだったのと、それを礼真琴さん主演で上演するのならやはり見てみたいと、思い切って上京することにしました。

礼真琴さんと星組メンバーのパフォーマンスに圧倒される

いやはや礼さんが凄いのは知っていましたが、ここまで凄いとは! 何を歌っても踊っても見ていて聴いていて心地よかったです。
いつもわくわくする未知の世界に連れて行ってくれる礼さん、その礼さんが演じるエドワード・ブルームの語る物語にどんどん引き込まれました。
彼の語りにわくわくするかウソっぽく感じて鼻白むかで見ているほうの気持ちはぜんぜん違うんじゃないかなと思います。

礼さん以外の出演者も歌も芝居も達者な人揃いで終始感嘆しながら見ることができました。
パフォーマンスに関してストレスなく見ることができたぶん物語そのものに没入することができたのですが、それゆえに心がざわつく箇所がいくつかありました。

映画よりもかなり保守的な脚本

原作となる小説は読んだことがないのですが、おなじ原作の映画に比べるとかなり保守的になっている印象を受けました。それは現代パートの女性の描かれ方と父の息子の関係性に濃く表れていたと思います。(映画よりもミュージカルのほうが10年も後に制作されているのに・・です)

小桜ほのかさん演じるサンドラが私はしんどかったです。
エドワードの自分語りに登場する若き日のサンドラ(詩ちづるさん)以上に夢物語のようなサンドラで。

映画を見ていて、カールが実際は5mではなくて2mの大男だったように、サンドラもエドワードが語る夢のような南部の美少女が、いまは現代を生きるリアルな妻であり母であることで私はホッとするところがあったのです。
小桜さんのサンドラは「カールが実際に5m、いやそれ以上の大男だった」くらいの夢夢しさでした。

1人の女性として現実を生きて、夫エドワードの言動に困ったり息子ウィルとのあいだで板挟みになりながらもエドワードを愛していることに揺るぎのない彼女の強さと人生の深みが滲むリアリティのあるサンドラとして「屋根はいらない」という比喩を聴きたかった。
小桜さんは実力のある娘役さんで、可愛らしい少女から「RRR」の悪辣な総督夫人までも見事に演じることができる方なので、きっと演出の意図通りに演じているのだと思います。
澄んだ美しい歌声で「私の中の2人」「屋根はいらない」を熱唱するサンドラはいまだに夢の中に閉ざされているように感じられて心がざわざわしました。(現実的な生活力は放棄して愛という依存で束縛する人だなぁと。『彼女には自分がいなければ』と思えるパートナーはそれがいいのだろうけど息子は・・)

星咲希さん演じるウィル(極美慎さん)の妻ジョセフィーンも見ていてだんだんしんどさを感じました。
世界を飛び回るTVジャーナリストの彼女がこんなマタニティドレスを選ぶのかな?とか、知的で相手をリスペクトし公正な感覚で夫やその家族に細やかな気遣いで接している彼女に対して誰もギブしていなくて、このままアラバマのこの家族の価値観に合わせていって大丈夫なのかなと。

身重なのに夫ウィルに対してひたすらギバーでいることもしんどかったです。妻というよりは母親のようでした。
ウィルには知的で彼の心を紐解く母親と夢々しいまま年を重ねた守ってやらなければならない母親の2人の母親がいるみたいでした。
自分のことで頭がいっぱいなウィルがジョセフィーンの優しさや有効なアドバイスを当たり前のように受け取ってその割に素っ気ないのも・・。もっと彼女のことをリスペクトしたらいいのにと思いました。

ジョセフィーンにしてもサンドラにしても現代パートの女性としてのリアリティに欠けるのは演じている彼女たちが宝塚の娘役ゆえというのもあるのかもしれません。
彼女たち宝塚の娘役が旧態依然の女性観を体現することから解放されないと、私は宝塚を見ること自体がしんどくなるだろうなと思いました。

父と息子

さらに物語全体に流れる「父と息子」の関係をことさらに特別視する雰囲気もしんどかったです。

「オフィスに閉じこもって仕事/俺にはとても無理さ/じっとしているのは死んでいるのと同じ」「芝刈りや料理や洗濯は向いてない俺じゃない」と、セールスの仕事で数週間家に帰らないエドワードが幼いウィルに向かって、自分が留守のあいだはお前が大黒柱として家と母親を守れと言うのもしんどかったです。自分はやりたいように生きて家に残す息子には呪いを掛けるんだと。
おそらく朝鮮戦争に召集されているのでエドワードは1930年代の生まれかなと思います。ジェンダー意識が強いのはこの世代の人なら普通かもしれませんが、2024年のいま舞台であえてこのセリフを使う必要があるのかな?と疑問でした。
なによりウィルが拗らせているのはこの父親のせいでしょう。

そんなウィルが、妻の妊婦健診につきあい超音波検査でお腹の子が「息子」であると知ったときの流れも胸がざわざわしました。
息子ってそんなに特別なんだ。
「父親と息子」の関係の構築はウィルにとって雲をつかむようなでも焦がれてやまない命題なんだろうなぁ。
満たされなかった子どもの自分を息子を介して満たしていこうとしているみたいだなと思いました。

ウィルの気持ちはとてもわかる気がしました。
エドワードは1対1ならとても面白くて素敵な父親だったけれど、成長して客観的な視点を持つと疑問も湧くし、世間を気にする視点を持つようになれば父親のことを恥ずかしく感じることもわかります。
でも根本は父親のことを好きだからこそ、そう思う自分が父親に対して申し訳なくなるジレンマもあるでしょう。つらいなと。

ウィルは賢い子どもだったし、優秀なまま大人になりいまは報道関係の職に就き世界中を回りニューヨークに住んでいる。
妻のジョセフィーンもおなじ業界の人で、結婚式の招待客も彼が交友関係をもった大学や業界の人びとなんだろうと思います。知的でリベラル寄りの。
そんな彼らに父親がどう思われるか・・? アラバマの片田舎でセールスマンをしながら家族を養ってきた父。いつもの荒唐無稽な自慢話さえしなければ彼には誇れる父親のはずです。
だからどうか自分の晴れ舞台である結婚式の場では黙っていてと願い、約束を取り付けたのに反故にされてしまった。
彼にとってはいちばんデリケートな話題を衆人の前で自分主体の話としてしまう父親に心底うんざりしてしまったよねと思いました。どうでもいい人ではない、本当は尊敬したい相手だからこそとても複雑なんだよねと。

映画だと老いて自分のホラ話の粗をさらに見え見えのホラ話で取り繕うみっともなく哀れにすら見える父親が、実は本当にビッグな人だったんだと認めることができた、そういう息子の心の救済の話だったんだ思うんですが、礼さんのエドワードは老いてもちっともみっともなくも哀れでもなく、むしろ素敵なので見る側が補正してしまって、少々ウィルに分が悪いなと感じました。

女の子もドラゴンと戦っていい

エドワードの語りパートの演出や各々の演者のパフォーマンスも面白くて楽しくて、殊に可愛い可愛い「アラバマの子羊」と「時が止まった」の流れが大好きでした。
憎々しいドン・プライス(蒼舞咲歩さん)や狼男のサーカス団長(碧海さりおさん)や大男カール(大希颯さん)、子ども時代のウィル(茉莉那ふみさん)などなど皆個性的でキャラが立ってて愛おしかったです。
弔問に現実の彼らが訪れるところはなんとも言えない気持ちになりました。
音楽はどれも素敵で時間が経っても口ずさんでしまうものばかり。
たのしいたのしいだけではないのが、きっとこの作品の魅力なのかなと思います。
深い作品だからこそ、いろんな見方で心に刻んでいていいよねと。

♪倒せドラゴン~城を攻めて~と反芻しつつ、女の子だってドラゴンと戦っていいんだぞ、戦わなくてもいいけど、と思いながら帰路に就きました。

CAST

エドワード・ブルーム/礼 真琴 どのナンバーも最高でした。礼さんの歌声で聴けて幸せでした。
ジェニー・ヒル/白妙 なつ 終盤からの出番ですが、その説得力たるや。さすがでした。
ベネット/ひろ香 祐 ブルーム家の家庭医でエドワードの友人。なんども聞いているエドワードの自慢話を面白がって笑ってくれる良い人でした。
サンドラ・ブルーム/小桜 ほのか 澄んだ美しい歌声に聞き惚れました。エドワードの声色をまねるところも巧いなぁと思いました。
ドン・プライス/蒼舞 咲歩 登場するたびに笑ってしまう間の良さ、コミカルで憎めない憎まれ役でした。
人魚/希沙 薫 優雅な手の動きに登場のたびに思わず見入ってしまいました。
ウィル・ブルーム/極美 慎 父への複雑な感情がよくわかりました。愛しているからこそわかりたいし理解してほしいんだなぁと。
エーモス・キャロウェイ/碧海 さりお 怪しくて胡散臭くて狼男になると愛おしくて大好きなキャラクターでした。
ザッキー・プライス/夕陽 真輝 お兄さんのドンの引っ付き虫で、いつも兄に倣って罵倒にもならない罵倒「魔女好き男めー」で去っていくのに笑いました。
魔女/都 優奈 凄く圧のある魔女でした。「RRR」に続いて歌声が聴けて嬉しかったです。
ジョセフィーン/星咲 希 こんなにセリフが多い役をされているのをはじめて見たかもしれないのですが、お芝居がとても巧い方でした。
ジェニー(若かりし頃)/鳳花 るりな 映画とはちがうところで登場するので、さいしょはあのジェニーとは気づいていませんでした。2度目に登場した時にあああー!となりました。歌もお上手だし、いろんな場面でアンサンブルで踊っているのも目にとまりました。
サンドラ(若かりし頃)/詩 ちづる 「アラバマの子羊」可愛かったー。ヤング・ウィルとエドワードを窘める場面もツボでした。
カール/大希 颯 エドワードと2人で旅に出るときのナンバーが好きでした。あの高さで姿勢で歌えるの凄いなぁと思いました。

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2024/01/23

ナートゥをご存知か?

1月16日と17日に宝塚大劇場にて星組公演「RRR×TAKA”R”AZUKA~√Bheem~」「VIOLETOPIA」を見てきました。

暁ラーマ事変

暁千星さん演じるラーマがカッコよすぎて大変です。
歩き方、体重の乗せ方、肩の上げ方下げ方、少し振り向く時、髭眉毛額後頭部横顔脚胸板、私の喜びのツボをすべて圧していかれる感じです。
どの動きも隙の無いソルジャーなのにビームといるときだけはラフなお兄さんなのも素敵です。
険しい表情の時と甘い瞳のギャップも危険です。
弓を弾く暁ラーマに射抜かれとどめを刺されました。
暁千星ラーマ事変です。
(自分で何を言っているのかよくわからない)

「Dosti」の尊さ

「Dosti」の尊さはその後の展開を知ればこそ。
2回目の観劇では泣きました。
諸行無常。
1回見た後だと礼真琴さん演じる“あの超人的なビーム”がラーマ兄貴に懐く姿がよりいっそう愛おしくなりました。
(礼さん相手に兄貴ぶっている暁さんがたまらないと騒ぐもう1人の私がうるさくて大変)

圧巻の「コムラム・ビーム」

礼さんビームが歌う「コムラム・ビーム」は圧巻でした。
表現力に震えました。
鞭打たれるたびに体を震わせ、あの体勢で、どうしてあんなに歌えるのかと。
ラーマの真実を知って覚醒後の長槍を投げる構えは、それだけで類稀な身体能力がわかる完璧な美しさでした。

天晴れの宝塚化

映画を見て、その綿密な脚本力とそれをなんとしても映像化しようとする強烈な意志に驚き、果たしてこれをどう舞台にするのだろうと思っていましたが、宝塚歌劇ならではの舞台美術・技術、そして演者の能力をもって見事に「宝塚化」したなぁと思います。

ビーム役の礼真琴さん、ラーマ役の暁千星さんの身体能力、歌唱力は言わずもがな。
冒頭のWATERRR男女の希沙薫さん水乃ゆりさんのダンスで「これは宝塚のRRRなんだなぁ」と印象付けてからの、深い森に心地よく響くマッリ役の瑠璃花夏さんの歌声で一気に心は「RRR」の世界へ。

スペクタクルな場面を水と火の群舞で表現されているのも、タイミングを計算された電飾もわくわくさせられました。
SINGERRRの美稀千種さんと都優奈さんが本当に良い仕事をされていて「RRR」を見ているのだという気持ちが盛り上がりました。
映画でビームとラーマの属性がそれぞれ水と火であったように、水と火それぞれのダンサーたちが2人の登場に合わせて心情や情景を表現するのも見応えがありました。
WATERRR女の水乃ゆりさんの優美で涼やかな表現と、FIRRRE女の鳳花るりなさんの目力のある力強さが対照的で目を引きました。

「インドの誇り」は薄め

映画で強く感じた「インドの誇り」は宝塚版では薄めに感じました。
映画ほどスコット総督(輝咲玲央さん)は憎々し気ではないし夫人のキャサリン(小桜ほのかさん)も残酷ではないので、英国の統治下で虐げられるインドの人々の印象が薄いからでしょうか。のちにインド独立運動の英雄となる2人の前日譚という印象はほぼないかなと。

「ナートゥ」の場面は映画では、白人の価値観が唯一無二で世界を統べるとばかりに得意げに西洋のダンスを踊って見せ、それを知らないインド人を貶める英国人に対して、自分たちの踊りで彼らの度肝を抜いて周囲を席巻し相手側の英国人女性たちの称賛の的になるという、英国に対するインドの誇りと高揚(とてもホモソーシャル的な勝利)が描かれているなと思いましたが、そこもふんわりになっていたように思います。
ビームを侮辱するジェイク(極美慎さん)の描かれ方が英国紳士の可笑しみを纏う憎めないやつ(というかむしろ愛すべきやつ)になっていることもあり、宝塚版では英国人全般の印象がそれほど悪くないのだと思います。ジェニー(舞空瞳さん)はもちろんだし。

そして上記のようにスコット提督夫妻がそこまで悪辣に見えないので、インドを支配する大英帝国の象徴であるスコット提督とその軍隊を相手に戦う2人というよりは、マッリという少女を救出するため個人的に共闘する2人という意味合いに変貌していました。
(ビームを主役においてラーマの過去がばっさり割愛されているのでそうなるよねと思います)
宝塚版でいちばん憎々し気なエドワード(碧海さりおさん)でさえもやっぱり憎めず「ほうほう言いよるな」とすら思ってしまうのは私がヅカファンゆえですかね。(さりおちゃん良いなぁ~としみじみ思ってました)
やはり全体を通して映画ほど残酷な場面がないからですよね。きっと。

「RRR」に嵌った俄か者の戯言

映画で個人的にツボだった場面がほぼすべて割愛されていたのはしょうがないかなぁ。しょうがないよねぇと思います。
水と森と大地とともに生きるゴーンド族のビームがそのへんの薬草でなんでも治してしまうのとか、ジェニーが話す英語がわからないところとか、虎さえ倒すビームがやたらと可愛いところのすべてとか。

映画では偽名を使って潜伏するビームを親身になって居候させ、ともに逃亡もしてくれる(ビームを当局に売るほうが簡単だし利益になるにもかかわらず)親切なムスリムの親方とその一家が描かれていましたが、宝塚版ではその親方(大輝真琴さん)とその一家がムスリムの装束ではなかったのが気になりました。
毒蛇の解毒もゴーンド族のビームよりも心得ていそうだし、やはりあの親方一家はムスリムではない設定なのかな。
ビームを匿うのがムスリムの人たちであることに意味があると思うのでその設定はなくしてほしくはないのですが。

それとシータがビームたちを助ける場面やラーマ王子とシータ姫の祠の前に腰かけるシータの場面がとても好きだったのですが(ようはシータが大好きだったんです)、ラーマを主役にしていないので割愛されてもしょうがないのかな。しょうがないとは思いつつもっとシータ(詩ちづるさん)に登場してほしかったのでした。
3時間の映画を1時間半の舞台にするのだから諦観大事。。

「映画を見ておいた方が宝塚版をより楽しめますよ」とアドバイスを受けて、そのためにだけに見たつもりなのにあまりにも緻密にできた脚本に目を瞠り、描かれる内容の社会性や細部に宿る気配りに感銘を受けたばかりの俄か者の戯言ですね。
宝塚歌劇で上演するにあたって日本ではなじみのないディテールを入れて観客を混乱させては意味がないですから。
映画でツボったところは映画で楽しもうと思います。
(Amazonプライムでレンタルして見たのですが、宝塚観劇後思わず購入してしまいました)

「ダウントンアビー」に登場するシュリンピーことフリントシャー侯爵(ローズの父)が高官としてインドに赴任するとかなんとか言っていたのがちょうどこの「RRR」の頃だなぁとか。スコット提督がナイトに叙勲されたパーティを開くってことは、彼は貴族の出身ではないのだなぁ。その彼が提督に登りつめたということはそうとうなやり手で本国に対してのアピールも凄かったんだろうなぁ。なんて思います。

「RRR」最高!!

舞台や映画を見ていろいろ考察するのもまた楽しいものです。
そんな機会を与えてくれたこと、なによりこの作品に出会わせてくれたことに感謝です。
そして映画の世界観を崩さず宝塚化し、楽しませてくれた星組と宝塚歌劇のスタッフに心からの敬意を。

「VIOLETOPIA」

併演のショー「VIOLETOPIA」は指田珠子先生の大劇場デビュー作でした。
指田ワールドが心地よかったです。
個人的にいちばん盛り上がったのは「ハイウェイ・スター」から「リストマニア」の場面です。
このナンバーを歌いこなし踊りこなすタカラジェンヌに時代は変わったなぁとしみじみしました。
礼真琴さんのヘビのダンスもとても印象的でした。
パレードで大羽根を背負って降りてきた暁千星さんを見ておもわず涙ぐむ幸せ(・・ただの1観客でしかないのに・・)これが宝塚だなぁ。

両演目とも浮世を忘れてとても楽しかったです。
宝塚歌劇に幸あれ。

CAST

コムラム・ビーム(礼 真琴)
ジェニー(舞空 瞳)
A・ラーマ・ラージュ(暁 千星)
ジェイク(極美 慎)

バッジュ/SINGERRR男(美稀千種)
ネハ(白妙なつ)
オム(大輝真琴)
スコット提督(輝咲玲央)
ペッダイヤ(天華えま)
キャサリン(小桜ほのか)
エドワード(碧海さりお)
ジャング(天飛華音)
シータ(詩ちづる)

ヴェンカテシュワルル(ひろ香祐)
ロキ(紫 りら)
ヴェンカタ(朝水りょう)
ステファニー(澪乃桜季)
FIRRRE男(夕渚りょう)
ジェームズ(天希ほまれ)
カマル(世晴あさ)
ユクタ(七星美妃)
ポピー(二條 華)
WATERRR男(希沙 薫)
ヘンリー(煌えりせ)
アヴァダニ(颯香 凜)
オリヴァー(夕陽真輝)
リリー(彩園ひな)
ルードラ(奏碧タケル)
SINGERRR女(都 優奈)
ロバート(鳳真斗愛)
WATERRR女(水乃ゆり)
マッリ(瑠璃花夏)
チャーリー(紘希柚葉)
アルジュン(碧音斗和)
カーター(御剣 海)
FIRRRE女(鳳花るりな)
ラッチュ(稀惺かずと)
ライアン(大希 颯)

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2023/11/12

みんながhappy!

10月31日と11月2日に博多座にて宝塚歌劇星組博多座公演 「ME AND MY GIRL」を見てきました。
この公演は主役のビルと遺言執行人のジョン卿を、専科の水美舞斗さんと星組2番手の暁千星さんが役替わりで演じていました。
10月31日の観劇はソワレで水美舞斗さんビルの千秋楽、11月2日は大千穐楽で暁千星さんがビルを演じていました。

お二方とも初日に比べると余裕綽々。アドリブも満載でした。
11月2日の千秋楽では次回大劇場公演「RRR」のPRがチョイチョイ入っていて期待を膨らませました。
どちらのビルもパーティのレッスンの場面などで小桜ほのかさん演じるディーン公爵夫人マリアに対していく通りものアドリブを仕掛けて思わず公爵夫人も笑いそうになっていました。

暁さんビルは公爵夫人が目を離した隙に机の下にするりと隠れてしまいました。落ち着きのないビルならやりそうです。
急に消えてしまったビルに小桜さんは内心とても焦ったようですが、公爵夫人としてビルを探し心配し叱責していた小桜さんはさすがでした。
小桜さんの公爵夫人は怒っていてもどこか可愛らしいところがあるのですが、急に隠れてしまったビルにプンプンしながらもちゃんと舞台にいたことに内心ほっとしている様子もうかがえてさらにチャーミングさが増していました。
ジョン卿が30年以上愛し続けた理由がよくわかりました。
私も公爵夫人がさらに好きになりました。

この博多座公演でビルの役替わりという世にも稀なものを見ることができましたが、演じる人によってこんなにも印象が変わるのだなぁとあらためて思いました。
多動で落ち着かなくて礼儀知らず、でもその人間的な魅力で人々を巻き込んでしまう水美ビル。
危なっかしくて悪戯っ子、内省的で人々との関わりによって気づきを得て変わっていく暁ビル。
そんな印象をうけました。

「私が考える理想のビル」にしっくり合ったのは水美さんですが、暁さんビルと舞空瞳さんサリーの対はこれはまた「私の理想の一対」で、けっきょくどちらも好き❤というのが結論です。

舞空瞳さんはこの個性の異なる2人のビルとそれぞれに心を通わせて、はつらつと陽気に愉快に登場し、健気でせつない心情を歌にのせ、最後はメイフェアレディに大変身というヒロインのサリーを魅力いっぱいに演じていてとても素敵でした。
泣きそうなのに「笑ってるのさ」と言うときのお芝居などなど、本当に表情ゆたかで見ていて胸がきゅんとしました。

ジェラルド役の天華えまさん、ジャッキー役の極美慎さん、パーチェスター役のひろ香祐さん、ジャスパー卿役の蒼舞咲歩さん・・と役のひとりひとりが予想以上にクオリティの高いパフォーマンスで最高にたのしかったです。

それから輝咲玲央さんが演じたヘザーセットがもうこれぞ英国貴族の邸の執事!という感じがして内心たいへん興奮しました。
口には出さないけれど目がものを言っているところとか。目に映る人物ひとりひとりについて、尊敬、愛情、侮蔑・・等々思うところがあるようだけど、それを匿しつつ慇懃な物腰で余計なことは一切言わないかんじがとてもプロフェッショナルで好き❤と思いました。

そういえば、ふつう支配階級の人は邸の執事のことは敬称なしで姓を呼ぶと思うんですが、ジャッキーは彼を「チャールズ」とファーストネームで呼んでいたのが、なにか意味があるのかなと気になりました。邸の人間ではないから? 世代的なもの? なぞです。
それからアドリブだったのか、誰かが「チャーリー」と呼んでいたようにも思います。
(ミーマイは次々に物語が展開していくので思考を止める暇がなくて記憶が曖昧になります・・汗)

あんまりヘザーセットが好きすぎて彼の周辺、彼の反応だけを見ていたい気持ちも湧きましたが、そんなことは無理!(登場人物ひとりひとりが面白くて目が足りない!)
でも叶うなら「ヘザーセットの一日」とか「ヘザーセットの一週間」とか彼の目線でお邸の人々を見てみたいです。
(スカイステージでやりませんか?)

ところでプログラムによると舞台はメイフェアのヘアフォード家の邸宅ということらしいのだけど、冒頭で招待客がトランクを積んだ車に乗り込んでヘアフォード邸での休日の滞在を楽しみにしていると歌っていたり、彼らが領地内でクリケットやテニスやガーデンパーティをしていたり、ビルが狩りや乗馬をしていること、階下にたくさんの使用人がいること、領地内にパブがあることなど(パブの客がビルのことをご領主様と呼んでいる)を見ると、舞台となるお屋敷「ヘアフォード・ホール」はロンドンの邸宅(タウンハウス)ではなくてロンドンから車で小一時間くらいの郊外のカントリーハウスだと思うんです。
たとえば「ダウントン・アビー」に使用されたハイクレア城みたいな。

上級階級といっても皆が皆、カントリーハウスを所有しているわけではないと思いますし、時代的(1930年代)にもカントリーハウスは手放してロンドンに常住している貴族も多いと思うんですが、ヘアフォード伯爵家は領地とそこに歴史ある屋敷を所有している由緒正しい貴族ということだと思います。

その継嗣が他人のポケットからモノを掏るのが特技というランベス育ちでコクニー訛りの行商人ときては、反発が強いのが本当だと思うんです。
ジョン卿が難色を示すのは当然だし、ジェラルドが繰り返しビルの訛りについて言及し我慢がならないと口にするのもまあそうだろうなぁと思うのです。

ですが、ビルの信じられない無作法さを見ても兄の息子なら伯爵に相応しい紳士になる(血筋が必ずものを言う)と公言する公爵夫人も凄いし、お金持ちの伯爵であれば無作法さは不問にできるジャッキーも凄いと思いました。
2人ともとてつもなく器の大きい寛容な心の持ち主なんじゃ・・? それこそ血筋?

ジャッキーのような英国の上流階級の娘にとって爵位と財産がある貴族の長男と結婚できるかどうかは人生の最重要課題。
なりふりかまわず「自分のことだけ考えて」行動するのは至極当然で、現代の受験や就活以上に一生を左右するシビアな問題なのですよね。
自分の力を100%発揮して幸福を掴もうと努力する心意気は立派だと思いました。
こんな彼女ならおそらくこの先の世界の変化にもついていけそうな気がします。仕事に就いても成功しそうです。

ビルだって「伯爵家を継ぎ愛するサリーと結婚してハッピーエンド」のその先は・・その領地やお屋敷を維持していくのはかなりの困難になりそうな時代です。
数年後には第二次世界大戦が勃発しますし英国もこの先いろいろな問題が待ち受けているわけで。
などど、ついつい暗いことも考えてしまいますが、ビルならなんでもやれそうだし、職業を持つことにも抵抗がないだろうし。セールスなんてお手の物じゃないかなと思います。
この時代にビルを第14代伯爵として迎えたことはヘアフォード家にとってなにより幸運といえるかもしれないなぁなんて想像しました。

サリーもジャッキーもたくましくて頼りになりそうです。
2人でメイフェアにブティックを共同経営したりしてたらいいなぁ。
あ、たぶんジェラルドは働いていないと思います・・笑。
でも彼は彼でなんとなくそこにいるだけでいいような・・誰かの対話の相手であったり時代を共有する仲間であったり、その存在が関わる人の安らぎになりそうだなと思います。なにより突っ走るジャッキーを引き留めたりは彼にしかできない役割じゃないかなと。

そんなふうに時が経ってもみんながハッピーでいたらいいなぁと想像しています。

2023年の10月に博多座でこの星組公演「ME AND MY GIRL」を見れたことはずっとずっと私の大切な思い出になると思います。

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2023/11/06

夢を見たの

10月25日と26日に宝塚バウホールにて星組公演「My Last Joke -虚構に生きる-」を見てきました。

天飛華音さんの初主演公演で主人公はエドガー・アラン・ポー、詩ちづるさんが彼の妻となるヒロインのヴァージニアを演じていました。
作演出は竹田悠一郎先生。場面ごとの登場人物たちの有様と言葉を追いながら読み解いていくような宝塚バウホールだからこそできる作品で、脚本は役者を得てはじめて命を宿すのだということがわかる公演でした。
手島恭子先生作曲の憂いを帯びた美しい音楽が舞台を包み込み物語世界に刹那の煌めきをつくり出していました。

肉親の縁に薄く愛着に問題を抱え誰とも信頼関係を築けぬまま、亡くなった母を理想化している青年の物語。
天飛さん演じるエドガー・アラン・ポーの印象は幼児性が抜けきれない癇癪持ち。
人としてしてはならないルールををすでに36破っています。とミーマイのディーン公爵夫人マリアの声が聞こえてきました。

相手に罪悪感を抱かせて行動や考えを支配してはいけません。
「離して」と言われたら離さなくてはいけません。
反論できないからといって癇癪を起こして怒鳴ってはいけません。
自死を示唆して恐喝してはいけません。
病に冒され心細がる妻を独りで放っておいてはいけません・・

独善的でどうしようもない人間でした。エドガー・アラン・ポーという人は。

エドガーに取り憑かれ命をすり減らしていくヴァージニアが不憫でなりませんでした。
最初は興味本位で近づいた年上の男性に手懐けられ、その寂しさに引き寄せられ、激しく責め立てられて彼の世界に取り込まれてしまう彼女が。
おそらく女手一つで娘を育てているヴァージニアの母マリアの心中を思うと心が痛みました。
彼女の真っ当な意見にも癇癪を起こし冷静な話もできない男に、まだまだ手許で愛しんでいたい年頃の娘を・・。委ねたくて委ねるのではないでしょう。

初見ではヒロインの母の心情に共鳴してしまい、エドガー・アラン・ポー、とんでもないやつだと思いました。
とはいえ娘の結婚相手を見つけるために観劇しているわけではないのだから、気持ちを新たに見てみようと翌日の観劇に臨みました。

2回目に見たエドガーも、やっぱりどうしようもない人でした。
恐ろしいほど幼くて純真で邪悪。

他人を陥れる企てに躊躇もなく、期待以上の才を発揮して相手を打ちのめしていました。
これには顔も人も好いロングフェローはひとたまりもない。豆鉄砲を食らった鳩みたいに立ち尽くすだけ。

初めて自分の領域に入り込んで来た人類であるヴァージニアを手放すことができず彼女が自分から離れることを恐れるあまりに無理な結婚をする、まるで孤独な冥王のようでした。

彼女を自分の世界に縛り付けておきながら自分の心の暗黒の淵から目を離すことができず現実の彼女を見ることができない。
ヴァージニアを伴侶に得たことでさらに彼の不安は大きくなってしまったみたいです。
喪失が耐えられなくて病に冒されたヴァージニアを抱きしめにも行けない。
ヴァージニアが彼に捧げる真の言葉も彼の耳には届かない。
かわいそうなヴァージニア。

物心ついてからずっとエドガーにとってのリアリティは憎しみや誹りや妬みに満ちた世界に立ち尽くす孤独で、愛とは儚く指の間からすり抜けるもの。
独りで見る夢の中にだけ在るものだったのかもしれません。
幼い頃に築けなかった愛着の関係が彼の人生に影を落としているように思いました。

幼い子どもが向き合うにはあまりに過酷な環境にいたから夢の世界、自分の内的世界に没入したのかもしれません。
夢想の中の母はやさしく儚く彼に微笑み彼に夢を見させる。
思い出を煌めくような言葉で書きつけておくことで自分の世界を作り出し、内的世界を広げて育っていった人なのではないかと思いました。

海原に浮かぶ砂上の机に向かい、ひとりペンを走らせている青年、そんな心の風景が浮かびました。
喪失の怯えに苛まれ続けた彼は、愛する人がこの世のものではなくなってやっと安心して愛せたのかもしれません。

誰しもが抱える心の奥に潜む影に怯えながらも目をそらさず見つめ続けた人だったのかなぁと舞台を見て考えました。
決して誉められはしない人生かもしれないけれど、だからと言って断罪して終わりにはできない。
そんなエドガー・アラン・ポーの魂の断片は、いまも世界のどこかで誰かの心に沁みているのだろうなと思います。

CAST

エドガー・アラン・ポー(天飛華音) 親切な脚本とはいえない分、天飛さんが繊細な芝居で時々の心情を表現しているのが凄いなぁと思いました。エドガーから感じられた幼さと純心は天飛さんに由来するものかもしれないなとも思います。いきなり感情を爆発させるところはびっくりでした。
ヴァージニア・クレム(詩ちづる) 生命力溢れる少女がおとなしい女性になってしまうのがせつなかったです。詩さんの透明感と安心感、すべてを包み込むような歌声が印象に残っています。
ルーファス・W・グリスウォルド(碧海さりお) 自分の感性に絶対的な自信があり創作物に対する見切りも異常に早い編集者。その裏には創作の苦しみを味わった経験と創作を続ける人への妬心もあるのかな。しかしそれゆえに素晴らしい創作物に出遭った時の衝撃も大きくそれを認めざるを得ない葛藤がある複雑な人物を碧海さんは絶妙に演じていました。個人的には「ベアタ・ベアトリクス」でダメダメな主人公を最後まで見捨てない好い人を演じていた碧海さんが真反対の役を演じられていた衝撃が大きかったです。
大鴉(鳳真斗愛) エドガーの心象が具現化したような役。登場が禍事の予兆であったり葛藤するエドガーの影のように踊ったり佇んだりという存在でした。セリフもない役でしたがその存在に自然と目が行き、とくに長い手足で禍々しくも美しく踊る姿には引き込まれて見てしまいました。
フランシス・S・オズグッド(瑠璃花夏) 自らも詩人でありエドガーが書く詩を心から愛しているという役どころ。現実のエドガーと恋愛したりともに暮らしたりすることがどれほど危ういことかを知っているくらい大人なのだと思いました。だからこそヴァージニアが心配なのだろうと思いますし、でもヴァージニアがエドガーの創作の源であることもわかっていて、エドガーの創作を愛しているゆえにエドガーから彼女を引き離すことができないのではないか、だから彼女がヴァージニアに寄り添うのは贖罪の意味もあるのかなと思いました。瑠璃さんの鈴の音のような声がとても心地よかったです。
ナサニエル・P・ウィリス(稀惺かずと) エドガーの同業者で理解者。エドガーとロングフェローとの文学的論争をけしかけたりする曲者でもあり、1840年代の米国文学界を簡単に説明する狂言回し役も担っていましたが、稀惺さんの流暢な説明セリフがとても聞き取りやすくてその口跡のよさ、話を聞かせる技量に驚きました。これからもさらに注目したいと思いました。
ヘンリー・W・ロングフェロー(大希颯) エドガーの同業者で顔も良い育ちも良い人物。グリスウォルドに気に入られて一躍有名人になったけれどもエドガーに一方的に批判されて豆鉄砲を食らった鳩のような顔がまた人の好さと育ちの良さを表していました。エドガーが「大鴉」で成功を収めたときも潔く負けを認め受容するところもまったく嫌味がない好人物に見える大希さんのお芝居がよかったです。

そのほかの演者の皆さんについても、それぞれが自分の役と向き合い作品世界での居方を考えて演じているのがつたわる舞台でした。
この経験はきっと実を結び次の作品につながるはずだと期待しています。
こういう作品を上演できることがバウホールという劇場が存在する意義なのだと思う公演でした。

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2023/10/23

離さないよこの手を‥

10月9日と13日に博多座にて宝塚歌劇星組公演「ME AND MY GIRL」を見てきました。
この公演は、主人公の下町育ちの青年ビルと遺言の執行人である貴族の紳士ジョン卿を、専科の水美舞斗さんと星組2番手の暁千星さんが役替わりで演じるのですが、それぞれの初日を見ることができました。

それぞれの初日

10月9日の正真正銘の初日。
きっと出演者全員が緊張していたことと思います。(開演に先立って理事長の挨拶もありましたし)
けれどそんなことを微塵も感じさせない素晴らしい舞台で、ミーマイってこんなに泣ける作品だったっけ?と驚きでした。

カーテンコールの水美さんの挨拶で、開演前にサリー役の舞空瞳さんと顔を見合わせて泣きそうになっていた話をされて、えっそうだったのかと思いました。
ハットトリックも懐中時計の出し方もとってもスムーズでステップも軽やか、これが初日かと思うくらいだったのに。
でも言われてみると、水美さんは緊張するとテンション高めに陽気になる人なのかも。
それが、じっとしているのが苦手で片時もなにかしていないといられなくて人をからかったり悪戯をしたりと表面上はふざけている(ふざけるしかない)けれど、本当はとても考えていて心優しいビルという人物造形と重なって、物語の本質をわかりやすくしていたのかもと思います。

逆に暁さんは緊張するとおとなしくなるタイプなのかなと思いました。
10月13日の役替わり初日では、さいしょのうちは少々ぎこちなさも感じましたし段取りが大変そうだなとも感じました。でもまっすぐにサリーを愛するビルでした。
敵わない相手にも真正直に打ちのめされて傷ついても一途にサリーを愛する健気なビルが涙を誘いました。
対立する公爵夫人やジョン卿に対しても無意識に甘えているところがあって、それがチャーミングだなぁと思いました。彼らが次第にビルを愛していくのがよくわかりました。
そんな彼に別れを覚悟した公爵夫人が呼び掛けた「ビル」がとても心に沁みました。

わかりやすい演出

以前のヴァージョンと比べて物語がとてもクリアになっているように感じました。(以前のヴァージョンって一体どれやねんですけど)

記憶ですと執事のヘザーセットあたりの英国らしい慇懃なセリフがあったと思いますしビルももっと無礼なことや皮肉を言っていた気がしますが、今回の公演ではそのあたりが控えめになって物語の核心を追いやすく、セリフやナンバーの一つ一つが心に沁みました。
ミュージカルコメディなので笑いも大事なのですが、今回はテーマを人が人に持つ愛にフォーカスしていたのがとても効いていたと思います。

英国の貴族社会の奇妙さや労働階級との対比が滑稽に描かれていることがこの作品の面白さでもありますが、本国では常識でも日本ではあまり知られていない事柄をネタにしたものやサリーたちが話しているコックニーについてなど、日本語で演じるにあたって何を削って何を残すか、どう表現するかは大事かなと思います。

また初演の頃は問題視されなかった差別的なジョークなどはカットが正解だと思いますし、宝塚歌劇は観客がオトナなリアクションを取りづらい演劇でもあることも踏まえての取捨選択も必要かと思います。
再演を重ねるごとにそういった部分が洗練されていくのか、今回は細かなところで引っ掛からずに観劇できました。
(ジャッキーのラスト近くのアレはギリギリかなぁ・・)

そのほかに「ONCE YOU LOSE YOUR HEART」をはじめ、以前から訳詞がおかしいとの指摘がある作品ですのでそこはどうするのかなと思っていましたが、そのままの歌詞で歌われていました。
今回は焦点を人と人との愛情に絞って、それ以外のところに引っ掛かりをつくらない芝居が功を奏したといいますか、各登場人物の心情に心を動かされる作品になっていたので歌詞に違和感を持たずにすみました。
原作に忠実というより歌詞に合わせた宝塚版らしい心のやりとりの作品になっているなと思いました。

ザ・ミュージカル

メインの3人(水美さん、暁さん、舞空さん)が現在の宝塚でも屈指のダンサーであることはもちろん知っていましたが、やはりダンスシーンは期待以上に素晴らしかったです。
また、この3人だけでなくアンサンブルもダンサー揃いなのにびっくりしました。
「街灯によりかかって」でビルの両サイドの男役さんたちのダンス。そのあとの娘役さんたちも加わったダンスシーンはとても素敵で、わぁミュージカルだー!と心躍りました。
主題歌のタップダンス、「ランベス・ウォーク」、「太陽が帽子をかぶってる」、公爵夫人とご先祖様たちの「ヘアフォードの歌」、ビルとジョン卿の「愛が世界を回らせる」どのダンスナンバーも愉しかったです。
ダンスだけではなくて歌も素晴らしくて、お屋敷の階下で使用人たちが歌う「英国紳士(English Gentleman)」のコーラスは気持ちがよかったです。
「ヘアフォードの歌」の公爵夫人マリア役の小桜ほのかさんにも聞きほれました。
総じて歌・ダンスのレベルが高いことも観劇後の満足感の高さにつながっていたと思います。

舞空瞳さんのサリー

舞空瞳さんが演じるサリーは、まず登場でたいへん元気でガサツな下町っ子という風情を前面に出していて、その後の物語の流れにメリハリをつけていてとてもよかったです。
ビルとの阿吽のやりとりに深い愛を感じました。
最初の印象とかちがい、じつは学校でもよく学んでいて、でも自分の境遇もよくわかっていてそれに相応しいふるまいをしている、とても聡明な女性なんだな思いました。
生まれ育った町を受け容れ、その町でビルと一緒に愛を育んで生きていこうと最善を尽くしているところだったのだろうに、いきなりその柱であった愛するビルがかけ離れた世界の人間になってしまった。
愛するビルに最良の人生を送ってもらいたい、そこには自分の居場所はないのだと自覚していく流れがとてもせつなかったです。

キャスト

ビル・スナイブン(水美舞斗/暁千星) 水美舞斗さんのビルは次から次へと思いつくものを口にするような落ち着きのなさがいかにもコメディアンらしいビルだなぁと思いました。するりと懐中時計を差し出すタイミングも絶妙。いつもひとをおちょくって馬耳東風みたいな彼が実は心の奥では傷つき真摯な思いを秘めていることがわかるところのギャップがよかったです。サンドイッチのハムの比喩の身の置きどころないせつなさが無性に沁みました。サリーが幸せでないと彼も幸せでいられない魂の結びつきを感じました。「街灯によりかかって」の後ろ向きのステップがとても洒脱で思わずステキ!と心で叫びました。
暁千星さんのビルは隠し事ができない真正直さが見えるビル。笑顔で振り払いながらもヘアフォード家の人々の言葉が刺さり揺れ動いているのが見えるビルでした。サリーと生家の人々両方のために最善を尽くしたいけれどどうしたら良いのか混乱した彼がせつなさといろんな形の愛を受け取りながらアイデンティティを再構築していく物語に見えました。サリーが笑うと彼も輝くサリーの表情が曇ると彼も曇る合わせ鏡のようなサリーとビル。「街灯によりかって」の幻想のデュエットダンスが夢のような2人でした。

サリー・スミス(舞空瞳) 登場時のインパクトがとても強いサリーでした。それは愛するビルのキャラに合わせたものなのだ、見かけよりずっと聡明な娘なのだとわかると懸命にガサツにふるまっている彼女がいっそう愛おしかったです。
それからフィナーレです。こういうフィナーレを見てみたかった!と思いました。ラインダンスのレディルージュ、そしてデュエットダンスの前のソロダンス、存在感が素晴らしかったです。水美さんとのペアの時のピンクのドレス姿の可愛らしさ、暁さんとペアの時のアイスブルーのドレス姿の気品。うっとりでした。

ジョン・トレメイン卿(水美舞斗/暁千星) 水美さんは頼りない感じがチャーミング。優しさと包容力を感じるジョン卿でした。ビルに向ける瞳もサリーに向ける瞳も温かくて、この瞳で何十年もマリアをみつめていたんだろうなぁと。
暁さんは予想外にダンディで厳しさもあるジョン卿でした。ロマンティックな物語を紡ぎそうな甘さも魅力的でした。いかにも貴族らしい上品な立ち振る舞いは月城かなとさんを彷彿させるところもあり月組で培ったものが活きているのかなと思いました。
どちらのジョン卿もビルとのブラザーフッドが楽しくて「愛が世界を回らせる」が最高でした。

ディーン公爵夫人マリア(小桜ほのか) 若めの公爵夫人ですが、宝塚版はビルも若いのでその叔母だとしたら40代くらいに見えたらいいのかも。なにより水美さん暁さんのジョン卿ともお似合いですし。小桜さんは声がとてもよくて「フェアフォードの歌」も素晴らしかったです。ビルとのパーティのレッスンで笑いを誘い、彼が出ていく決意をした時にいつも呼んでいる「ウィリアム」ではなく「ビル」と呼び掛けるのが涙を誘いました。ラストのウェディングドレスはチャーミングでとっても素敵でした。

ジャクリーン・カーストン(極美慎) 美しかったです。まずは極美さんにジャッキーをキャスティングしてくださったことに感謝。「美しい」と思うこの気持ちって何なんでしょうか。いつかは答えが出ることなのでしょうか。美しいとはなんぞと自分に問いかけるほど美しかったです。相手によって態度をコロコロと変える抜け目のなさ、でも嫌な女に見えないのは彼女が自分の人生を主体的に生きようと必死なのがわかるからでしょうか。結婚相手を間違えないことはとっても大切ですよね! 綺麗事で自分を誤魔化さないところにも惹かれるのかな。水美さんビルと暁さんビルによっても反応がちがうのも面白かったです。フィナーレのタンゴも眼福。水美さんとのペア、暁さんとのペアそれぞれ見られてラッキーでした。(ウィッグもそれぞれに違ってどちらも素敵でした)
今回は美しい娘役姿を堪能させていただきましたが、存在感や実力も着実に身に着けている極美さんの男役姿も楽しみになりました。

ジェラルド・ボリンブローク(天華えま) 労働は不名誉だと思っているいかにも貴族の子息。オナラブルという儀礼称号保持者なので(以前のヴァージョンだとセリフでそのことに触れていた気がするのだけど今回は言及がなかったような)彼自身に受け継ぐ爵位はないみたいだけど、なにか偶然が重なれば転がり込んでくる可能性も0ではない・・かな。でもほぼ可能性はないのでしょう。だから継嗣が行方不明のヘアフォード家の財産を狙っていたのにビルが現れてしまい目論見は水の泡。そのうえフィアンセまで取られてしまいそうという踏んだり蹴ったりの状況なんだけど、その割には自分から動いてなにかをしようとは思っていなさそうなのがジェラルドという人物の面白さかなぁ。(そもそもヘアフォード家の財産を狙っていたのもジャッキー主導で彼は口車にのせられていただけかも) いかにも英国の貴族社会の一隅にいそうな青年を天華さんがいい塩梅で演じていて面白かったです。
そんな彼が初めて主体的に行動したのが例のアレなんでしょうね。前時代的な価値観が反映されていてやっぱりうーん・・とは思います(ほかに替わる象徴的な行為があればと思うんですけど)。
フィナーレの冒頭で公爵夫人役の小桜ほのかさんと一緒に歌う主題歌が小粋で素敵でした。センスのある人がどんどん起用されるのはいいなぁと思います。

パーチェスター(ひろ香祐) とっても楽しい家付き弁護士さん。彼が歌い踊るとヘアフォードの皆さんも一緒に踊る不思議。弁護士さんも奇妙だけどヘアフォードの皆さんも変わってるなぁと思います。
ひろ香さん良い味出してるなぁと思いました。財産のある貴族にくっついて生きる彼には役に立っているアピールはとっても大事なことなんだろうなぁと思いました。
ところで彼のファーストネームは本当にセドリックなのか問題は解決しているんでしたっけ。あれはビルが勝手に言っていることなのかな?(本国版では役名がハーバート・パーチェスターになっているのがずっと気になっています)

ジャスパー・トリング卿(蒼舞咲歩) 蒼舞さんのジャスパー卿はセリフを発するタイミングが絶妙で独特の可笑しみを醸し出していました。ヘアフォード家に彼がいることの意味は大きいなと。彼の椅子はいつも用意されていて何をするわけでもないけれど若い人たちが自らに問いかけて答えを出していく場に居合わせるそんな存在のよう。相手によって態度を変えるわけでもなく、そもそも相手の属性に気が回っているふうでもない、誰の利害にもならない。それがいいのかなぁ。「泣いているのかね」「泣いてないよ」というサリーとの禅問答みたいなやりとりに毎度涙腺がやられます。

チャールズ・ヘザーセット(輝咲玲央) お屋敷の執事。お屋敷の皆さんが大騒ぎしていても寡黙に端正に佇んでいる様子が素敵でした。以前のヴァージョンだとなにか慇懃なセリフがあったような気がしますが今回はそれもなく由緒あるヘアフォード家を陰で支える頼りになる執事という印象が強かったです。

メインキャストはもちろん助演、アンサンブルキャストの1人1人の力が感じられる公演でした。
今月は宝塚バウホールにておなじ星組の別公演「My Last Joke-虚構に生きる-」も見に行く予定なので、次の「ME AND MY GIRL」観劇は公演日程の終盤になってしまうのですが、どれだけ進化しているか楽しみにしています。

 

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2023/10/10

私たちは正しい扱いをうけると心を動かされがちになるのです

10月9日、博多座に宝塚歌劇星組公演「ME AND MY GIRL」の初日を見に行きました。
開演に先立って歌劇団理事長より急逝された歌劇団生徒への哀悼の意とお客様に心配をおかけしていることについての謝罪、そして今後は出演者の心身に配慮して公演を行っていくこと、その判断のもと博多座公演については予定通りに上演することなどのお話がありました。

歌劇団には二度とこのようなことが起きないように従業者のメンタルヘルス対策にしっかりと取り組んでいただきたいですし、変えるべき体質は変えていただきたいと思います。

それと同時に私たち宝塚ファンの在り方も、団員のメンタルに深く関わっているということを認識して改めるべきことは改める必要があると考えます。
「タカラジェンヌなのに」「娘役なのに」「男役なのに」「下級生なのに」と属性についての過剰な理想を投影して青年期にある彼女たちの個々の人格を否定してはいないか。彼女たちの健全な成長を阻害してはいないかと。

『私たちは正しい扱いをうけると心を動かされがちになるのです』
「ME AND MY GIRL」のサリーの言葉の一つ一つが心に沁みる観劇でした。

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2023/08/13

朝まで歩こう肩を組み。

8月4日東京宝塚劇場にて星組公演「1789」を見てきました。

終演直後自分は成仏したんじゃないかなと思いました。
もしかして私は迦陵頻伽の聲を聞いていたんじゃないかなと。
これが法悦というものなのかな。
自分の語彙では表現できない満足感に脳がバグを起こしておりました。

数日経ち幾分冷静になってきたので感想を書こうとするのですが、やはりなかなか言葉がみつかりません。
刹那刹那に感じた技術的な凄さや舞台の上の1人1人から漲っていたものを表現する言葉を知らない自分にがっかりです。
でも感動を書き残しておきたいのでどうにか書いてみようと思います。

1か月ちょっと前に宝塚大劇場で見たものとは別物だと感じました。
あの時は大好きなナンバーをようやく自分の耳で生で聴けたことに心が震えましたが、今回は1つの作品としての完成度の高さに打ちのめされました。
舞台の上にいる1人1人から漲るものが凄まじかったです。
オケも宝塚大劇場よりもドラマティックで色っぽい印象でした。(音の聞こえ自体は大劇場の方がよかったのですが)

「ロミジュリ」初演を観劇してから13年(私は博多座で観劇)、タカラジェンヌがフレンチロックミュージカルをここまでアーティスティックに上演する日が来ようとは。頭を抱えたあの時には想像もできませんでした。

あの時は宝塚とフレンチロックとの音楽性のあまりの乖離に頭を抱えてしまったのでした。
宝塚には音楽性よりも「宝塚らしいもの」をという思いをいっそう強く抱き、以来宝塚で上演されるフレンチロックミュージカルには食指が動かなかったのですが、礼真琴さんなら・・とロックオペラ「モーツァルト」を見に行き「ロミジュリ」を見に行き、そのたしかな実力と感性に心酔し礼真琴さんの星組で「1789」が上演されることを熱望して、いまここ。
そしてこの満足感たるや。

でもこれはメインキャストだけが巧くてもどうにもならないことだということも実感しました。
この10余年で宝塚歌劇の音楽性が大きく変わったこと。下級生に至るまで1人1人の体にこのリズムが沁み込んでいるんだということをしみじみと感じました。
あの時無謀ともいえる挑戦をし宝塚ファンに衝撃を与えた初演「ロミジュリ」のメンバー・関係者の手探りの努力があってこそのいまなんだなぁということも強く思います。
さらに、宝塚の番手主義とは相容れない群像劇をそのヒエラルキーを崩してまでも上演した、2015年のあの「1789」月組初演があったからこそ。

すべてはあの一歩から。生みの苦しみを経て、綿々と積み重ねられた努力の末に結実した一つの公演がこの「1789」であり、そしてこれから生み出されていく作品なんだなぁと深く思います。

話を今回観劇した「1789」東京公演に戻します。
大劇場の観劇時にはもどかしく思ったところも、今回の観劇ではまったく感じませんでした。
それどころか期待以上のものを体感することができて感激もひとしお。

ラストのロナンのせり上がりも心の準備ができていたので問題なしでした。
座席の位置も関係があったのかもしれません。今回は1階の下手端っこだったので人権宣言をじっくり堪能してからロナンが登場した印象でした。(大劇場では2階最前センターだったので人権宣言が終わるか否かで目に入って来たのが大いに戸惑った原因ではと思います。座席位置大事)

礼真琴さんは私の快感のツボを全部圧していかれました。
こんなふうに歌って聞かせてもらえたらもう思い残すことはござらん・・です。
いえチケットさえあれば何回でも見たいし聞きたいですが。

父親を殺され農地を奪われて衝動的に故郷を飛び出したロナンが、若き革命家たちやともに働く印刷工たち、再会した妹、フェルゼン伯爵らを通じて成長しながら恋をし、憎しみや疑念、葛藤を抱きもがきながら成長していく様が手に取るように伝わり物語世界にどっぷりとはまりました。

「革命の兄弟」のロナンと、デムーランとロベスピエールとのやり取りは1人1人のキャラクターの違い、立ち位置、考え方、受け取り方の違いがよく見えました。
理想主義でロマンティストのデムーラン。懐疑的で原理主義のロベスピエール。

ロナンが「俺にも幸せ求める権利がある」と言えば「当然だ」と肯定するロペスピエール。
ロナンの「やりたい仕事につく権利がある」にはデムーランが「勿論だ」。
さらに「誰が誰を好きになってもかまわない」には前のめりに「その通りだ」と返すデムーランに対して反応薄めのロベスピエール笑。
さらに「自由と平等」でその違いが際立ちます。

ダントンは人情派で寛容、ファシリテーター的なところもある。デムーランとロベスピエールがかなり強烈なのでその努力が不発に終わることもあるみたい・・天華えまさん演じるこの作品のダントンはそんな立ち位置かな。
「パレ・ロワイヤル」はそんな彼がよくわかるナンバーだなぁと思います。
「氏素性なんて関係ない」「学問がなくてもかまわない」――その意味のリアルがわかっているのは実は革命家3人のうちではダントンだけなのではないかなと思いました。
だからソレーヌも彼の言葉に耳を傾けることができたんじゃないかな。
デムーランとロベスピエールがそのことを理解するのはもっと後、ロナンという存在に関わって現実を突きつけられ、その行動力と人々からの信頼を目の当たりにしてからだと思います。

「サ・イラ・モナムール」での恋人との関係も三者三様で面白かったです。
同じ理想を目指していることが大事なデムーランとリュシル。そばにいて共に戦うのが当たり前なダントンとソレーヌ。
危険行動に恋人を連れていく気がないロベスピエール。そもそも志を共有するという気がないのかな。また後顧の憂いは断ちたい人なのかなと。

私が「1789」が好きな理由はやはりこの革命家たちにワクワクさせられるからだと思いました。
革命家それぞれがセンターに立つナンバーが、その大勢のダンスパフォーマンスも含めて心が昂るところ、三者三様の個性がはっきりしてそれぞれに異なったロナンとの絡み方が面白いからなのだということを実感しました。

大劇場で喉を傷めている様子だった極美さんも難なく高音で歌い上げていて最高でした。
「誰のために踊らされているのか」のダンスパフォーマンスは舞台上の全員がいっそう力強くなっていて、見ていてドーパミン的幸福感が凄かったです。依存性が高いナンバーだなと再確認。

暁さんの朗々とした歌声と礼さんとのハモリも最高。
声が安定しているからこそフェイクも効いていて心地よかったです。

大劇場公演では大人しめに感じた有沙瞳さんのマリー・アントワネットも印象がまったく違いました。
1幕では誰よりも華やかで無邪気にチャーミングだったアントワネットが、2幕では動じない威厳を身に纏い質素なドレスを着ても存在感が滲み出ていました。自分自身の人生を自分で選び択る決意に溢れた「神様の裁き」は感動しました。

オランプは居方が難しい役なんだなとあらためて思いました。
猪突猛進でロナンの人生を変えてしまう、無茶ぶりで父親を危険に巻き込んでしまう。一歩間違うと反感をもたれてしまいそうなキャラを舞空瞳さんはいい塩梅で演じているなぁと思いました。
これこそがヒロイン力かなぁと。

東宝版を見ていた時にも思っていましたが、オランプは平民なんだろうかそれとも下級貴族なんだろうかと今回もやはり思いました。
姓にDuがつくので貴族かなと思っていたのですがアルトワ伯がオランプに銃を突き付けられた時に「平民に武器を持たせるとろくなことはない」と言うのがちょっと引っ掛かったり。

お父さんは中尉ということなので、平民から中尉なら出世した方だと思うし平民の中では裕福な部類かなと思うけれど、貴族なら年齢的にも中尉止まりだと名ばかりの底辺の貴族ってことになるなぁと。
いずれにしても娘に王太子の養育係ができるほどの教育を受けさせているのは凄いことだなと思います。
そしてアントワネットは意外とそういう倹しげで教養の高い人が好きですよね。
マリア・テレジアの教育の賜物でしょうか。

「神様の裁き」を歌うアントワネットの背後で戯れるルイ16世と子どもたち。この後のルイ・シャルルの運命を思うと、この愛らしいマリー・テレーズがのちにアルトワ伯以上に怖い人になるのだと思うとなんともやりきれない思いになりました。
(マリー・テレーズにとって母はどんな人だったのだろう・・)

瀬央ゆりあさん演じるアルトワ伯は、大劇場よりさらにクセの強い印象でした。
妖しくてシニカルで。
国王の孫で王太子の弟として生まれ、国王の末弟として育つってどんな感覚だったんだろうと思わず考えてしまいました。
アルトワ伯の人生にとても興味が湧きました。
それから今のこの瀬央ゆりあさんにオスカー・ワイルドの戯曲の主人公を演じてもらいたいなぁと思いました。田渕作品なんて面白そう。
(いやそれって「ザ・ジェントル・ライヤー」やんって思いますが、いまの瀬央さんの「ザ・ジェントル・ライアー」を見てみたいなぁと)

どの登場人物も魅力的で、この作品を上演する星組は幸運だなぁと思いました。
作品を引き寄せるのも実力のうちだなぁとも。

幸せな体験に感謝です。

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