カテゴリー「♖『エリザベート』」の19件の記事

2023/02/15

それでも私は命ゆだねる私だけに。

1月26日と30日に博多座にてミュージカル「エリザベート」を見てきました。
初日の数日後に観劇したときに感じた音響効果の違和感も気にならなくなり、千穐楽に向けての凄まじいくらいの熱と構築力に圧倒されました。
さらに1月30日ソワレの前楽と31日大千穐楽はライブ配信で見ることができました。

【26日マチネ】
  愛希シシィ古川トート田代フランツ甲斐ルドルフ涼風ゾフィー黒羽ルキーニ
【30日マチネ】
  花總シシィ井上トート田代フランツ立石ルドルフ涼風ゾフィー黒羽ルキーニ
【30日ソワレ】(配信)
  愛希シシィ井上トート佐藤フランツ立石ルドルフ涼風ゾフィー上山ルキーニ
【31日千穐楽】(配信)
  花總シシィ古川トート田代フランツ甲斐ルドルフ剣ゾフィー黒羽ルキーニ

生で見られなかった剣幸さんのゾフィーと上山竜治さんのルキーニも配信で見ることができました

コロナ禍で拡大、定着した文化ですがありがたいことです。

思い起こしてあらためて今回2022年版「エリザベート」はこれまでとはオケの感じが違っていたなと思います。
間とか余韻とかがあまりなくてサクサクと進んでいく印象。ロジカルでわかりやすい「エリザベート」でした。
これも時代の流れなのかな。

私はちょっとしたスキマの表情とか体の動きなど非言語的なところを楽しみたいので置いていかれそうになり、初見では戸惑っていたように思います。
大ナンバー後の拍手があるところはまだ呼吸の間があるのだけど、それ以外のところで息をつき終わる前に次にいってしまう忙しい感覚がありました。

特に井上トートの時は、ナンバーの中に歌のテクニックがてんこ盛りで体感時間があっという間でした。
ルドルフもあっさり死んでいたなぁと思いますし。
全体を通してこれまでに比べて若い「エリザベート」だったなぁと思います。

サクサクとわかりやすくロジカルになったことでいろいろと考えさせられること、気づかされることもありました。
まさに19世紀から20世紀へ時代が変換するときの軋轢を描いた作品なんだなぁということ。
あの時代の中央ヨーロッパで熾った火種が21世紀のいまも燻っているんだなぁフランツ・ヨーゼフの心労はいかばかりだったろうとか、プロイセンに対抗するためにゾフィーはバイエルン王家に連なる姪との縁組を画策したのだろうになぁとか、帝国主義(父)と自由主義思想(母)の狭間で苦悩しどちらからも見捨てられる皇太子ルドルフの心中とか。(味方と思っている人たちからも駒としか見られていない彼の現実を思うとなおのことつらい)

そして「生きる」ということは「死」に抗い続けるってことなんだなぁと。あらためて思いました。
個人を極めるってことはその「死」を常に意識するってことなんだなぁとも。
意識しているかしないかのちがいだけで、「死」はすぐ隣に佇んでいるものなんだなぁとも。こんな時代だからこそ強く感じた気がします。
(「死」に抗えないいのちがいかにたやすく消えてしまうかと思いを馳せて)

愛希れいかさんのシシィはナチュラルな人物造形が好きでした。
少女時代、
15歳のというちょっと難しいお年頃な感じも、一度自分を全否定された人が自尊心を取り戻し有頂天で慢心してる姿も愛おしい。
その慢心もひとときのものだと思うと抱きしめたくなるようなシシィでした。
「愛と死の輪舞」や「最後のダンス」ではトートやトートダンサーズとの重力がないかのような緩やかな、本当に糸で操られているかのようなモーションに釘付けになりました。(まさに「人形のように踊らされた私」ー)
腰かけようとしてルキーニに悪戯で椅子を引かれてしまう場面のあの姿勢から優雅に戻れるのも驚異的で大好きな瞬間でした。
一瞬たりとも目を離したくないシシィでしたが、ほかの方も見たいのでそれはとうぜん無理で。これはディスクを購入するしかないのか?と思案中です。

花總まりさんは永遠に宝塚らしいお姫様なんだなぁと思いました。
とてもわかりやすいお芝居と神々しさ。体が自由自在に少女から凛とした大人へそして老年期へと大きくも小さくも見える。
1幕ラストの振り返ったドレス姿は圧巻で。知っていたけど記憶をはるかに超えてそこに存在していました。
配信で見た大千穐楽、2幕は空間そのものが神がかっているように感じられました。万感の思いを込めた「私が踊る時」、モニター越しに見ている私もなぜか目に涙が溢れてきました。言葉では表せないなにかが伝わってくるのを感じました。
死(トート)が1人の人間に魅入られて予測不能に陥ってしまうことって本当にあるんだと。それを実感するシシィでした。
この素晴らしい役者が演じる素晴らしい役を見納めすることができて本当に幸せです。この記憶は永遠にとどめておきたいです。

古川雄大さんはこんな「死」が傍らにいたら思わず引き込まれてしまうなぁと思うトート閣下でした。怖いけれど魅惑的。正直に言うとシシィが羨ましいです。
古川トートと愛希シシィの「愛と死の輪舞」は夢見ていたそのもののような「愛と死の輪舞」でした。
「最後のダンス」はロックスターのようで心躍りました。
千穐楽の配信でどのシーンか忘れましたが凄いジャンプを決めているのを見て思わず変な声が出てしまいました。幻を見たのかと。
全編を通じて動機はシシィへの愛、そしてシシィとの同化なんじゃないかなと感じさせるトート閣下だなと思いました。

井上芳雄さんのトートは、プリミティブな思考がかたちを成したモノのようでした。
シシィを見て興味をもった瞬間が鮮やかにわかりましたが、アプローチ間違ってるよ~💦と思う、相手を怖がらせているのに、反応されるのがただただ嬉しいみたいな。コミュニケーションというものを知らない無知でイノセントな子供みたいなトート閣下でした。
前楽の配信では愛希シシィに全力で嫌がられているのがツボにはまってしまいました。
「死」という忌み嫌われるもの、しかしいつしか人が受け入れざるを得ないもの体現しているような。
シシィを追い詰めて追い詰めて、自分の腕の中でシシィの命が消える瞬間に愛というものを悟るみたいなちょっと悲しさを感じさせるトート閣下だったように思います。

ルドルフはお2人とも「エリザベート」で初めて見る役者さんでした。
立石俊樹さんのルドルフ
は夢見がちで高い理想にたどり着けなかった結果、現実に見切りをつけて、理想と心中するルドルフだなぁと思いました。
初見の古川トートとの時は、最後まで夢を見せてくれるトートに自分をゆだねて死出を選んだように見えました。その陶酔感が「うたかたの恋」のルドルフに近いなぁと。
チケット購入時はシシィとトートの組み合わせに頭がいっぱいでルドルフとの組み合わせを考えていなかったのですが、あとになって古川トートと立石ルドルフの組み合わせをもう1回見たかったなぁと思いました。
30日は井上トートとの組み合わせだったのですが、追い詰められ感が凄かったです。
「闇が広がる」でさんざん揺さぶりをかけられその気にさせられて、トートを信頼してからのあの失意はつらいなぁと思いました。

甲斐翔真さんのルドルフは、初見であの少年ルドルフがこんなに育って・・!と思ったのですが、次に見た時にはさらに大きく育っている印象でした。
鍛えた胸板から響く声が凄くて、井上トートとの「闇が広がる」はこんな元気な「闇広」は聞いたことがない!と新鮮でした。
古川トートとの組み合わせでは、死を寄せ付けない生命力を感じました。
そんな有望な皇太子がトートの画策により自由主義者たちの企てにまんまとはまっていくさまに、有能ゆえに正攻法しか知らない純粋さが徒となったのかなぁと。
そしてたとえ有能であっても時代の流れを押し返すことはできない厳しい現実を見せられたようでした。

ルキーニのお2人も「エリザベート」で初めて見る役者さんでした。
黒羽真璃央さんのキャスティングにはじめは驚きましたが、最初の観劇でお若いながら実力も備わっていて抜擢もなるほどなぁと思いました。
それから1週間を経ての観劇で、あれ?この間とは別のルキーニ?と見違えたほど濃い印象になっていてびっくりしました。表情、声色、仕草等々芝居の情報量が凄いことに。
コーラスの中での歌い方にもセンスを感じました。ルキーニにしては奇麗に歌いすぎるのかもと思わなくはないけれど好きだなぁと。
髭をつけてメイクを濃くして汚れた感じを出してもどこかスタイリッシュに見えるのも持ち味かな。
狂言回しのセンスがある人だなぁと、と同時に違う役でも見てみたいなと思いました。

上山竜治さんは配信でのみ見ることができたのですが、下卑たことろを強く出したルキーニで「偉そうなやつ」を憎んでいる生い立ちの納得感がありました。
作品全体を骨太に見せるルキーニで、黒羽さんとはまったくちがうこの個性もいいなぁと思いました。

若い時から貫禄のある佐藤隆紀さんのフランツ・ヨーゼフ。
年を重ねていくごとにどんどん立派な皇帝になっていき、他民族国家の国父として内政や外交問題に懸命に立ち向かっているのだろうなと思いました。
その歌声が真面目さと懐の深さを物語っているようでした。
そんな立派な人物でも家庭を治めることは難しいことなんだなぁとも。
家族の1人ひとりが強烈だものなぁ。とくに奥方と母上がだけど。
「夜のボート」もしみじみと聴き入りました。美しく歌声が重なるほどに悲しくなるなぁと。

田代万里生さんのフランツは歌ももちろん素晴らしいですが、芝居がとても好みでした。
若き皇帝時代の「却下!」が凄く好き。ちょっとした可笑しみを醸し出すところもお上手だなぁと。
シシィへの深い愛を感じさせるフランツ・ヨーゼフで、それが妻に届かないのが悲しくなりました。
ちがうのよ、エリザベートはそういう人ではないのよと。そういう彼女を愛してしまったがゆえの悲劇の皇帝だなぁと。むしろそういう彼女だから愛したのかなぁと思うとせつないです。

「宮廷でただ1人の男」という形容がピッタリの香寿たつきさんゾフィー。ブレのない信念と厳格さが際立っていました。
そうやって自分を律し威厳を保つことで息子を守り皇帝に育てあげた人なんだろうなぁ。
本当は息子や孫を溺愛したいけれど心を殺して厳しく接しようと努めているように見えた涼風真世さんのゾフィー。時折見せるお茶目さが好きでした。
息子からも愛され強い絆で結ばれて
いるという自信が支えの人のようだっただけに、息子から決別を言い渡された時のショックは計り知れず心が痛みました。
正しく間違いのない皇太后様に見えた剣幸さんのゾフィー。人生を懸けて守ってきた君主制、ハプスブルク帝国の崩壊、そして一族の非業の最期をその目で見ずにすんだことは幸せだったのかもと。
配信のみでしたが、感情的に芝居をしなくても伝わる威厳や悲しみが素晴らしいなぁと思いました。

原田慎一郎さんのマックス公爵はおしゃれで自由人で娘が憧れるパパだなぁと思いました。
そしてお声がとても良い。歌も抜群にお上手で素敵でした。コルフ島でのシシィとのナンバーが毎回楽しみでした。

未来優希さんのルドヴィカ、陽気で一生懸命に家族のために頑張っているお母さんという雰囲気でした。
美人で優秀で皇太后にまで上り詰めた姉との差を縮めようと頑張っている側面もあるのかなぁ。
家政に全く無関心な夫に困りながら対応しているのも、私の親世代の母親たち(高度成長期)とダブって滑稽味と痛々しさを感じて親近感を覚えました。
そして打って変わって発散するマダム・ヴォルフの迫力のある歌声は毎回聞いていて楽しかったです。

秋園美緒さんのリヒテンシュタイン公爵夫人は気品があって仕事ができて憧れです。あの皇太后とあの皇后のあいだで忠節を崩さず働けるなんて只者ではないです。
彼女が歌う「皇后の務め」大好きです。どこをとっても非の打ち所がない秋園リヒテンシュタイン様のファンです。
以前のプログラムには伯爵夫人と表記されていましたが、いつの間にか公爵夫人になっているんですね。
リヒテンシュタイン公妃が女官をするとも思えないし、おそらく女官長エステルハージ伯爵夫人(リヒテンシュタイン侯女マリア・ゾフィー・ヨーゼファ)のことかなぁと思うので、伯爵夫人が正しいのではと思います。(ちなみに現在の国名はリヒテンシュタイン公国だけどリヒテンシュタイン家は侯爵が正しいらしいです)
リヒテンシュタイン家にしてもエステルハージ家にしても名門には違いないので、高位の女性であることはまちがいないと思います。
生家にちなんで「リヒテンシュタイン」とこの作品では呼ばれているのかなと。

いつにもましてストーリーがクリアに見えたからが、役者さんたちがいくつもの役を演じられているのに気づいてそれも面白かったです。
貴族の夫人や令嬢だった人が娼婦を演じていたり、大司教様だった方がカフェで弾けていたり笑。
千穐楽にはそんな役者の方々にも愛着が湧いていました。
他の作品に出演されていたら注目したいと思いますし、また皆さんがこの「エリザベート」にそろっているのを見られたらいいなぁと心から思っています。

自分の年齢や境遇等々で見方や目線が変わっているのも面白くて、何度見ても飽きることがないのも凄いなぁと思います。できれば生涯見続けたい作品です。
次はいつ見ることができるでしょうか。

 

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2023/01/19

私を返して。

1月14日と17日に博多座にてミュージカル「エリザベート」を見てきました。

【14日(マチネ)】
  花總シシィ古川トート佐藤フランツ立石ルドルフ香寿ゾフィー黒羽ルキーニ
【17日(ソワレ)】
  花總シシィ井上トート田代フランツ甲斐ルドルフ香寿ゾフィー黒羽ルキーニ

直近だと2019年に帝劇で見ているのですが、今回のバージョンはすごくすっきりわかりやすく演出されているように感じました。
そのぶん、個人的に心地よかったノイズも消えてしまったような、なにか隙間が埋まりきっていない印象ももちました。
なんといえばいいのかわかりませんが、90年代的なもの、ベルリンの壁崩壊後のヨーロッパ的なものが感じられなくなった感。
脚本もわかりやすくなっていた印象で、この作品に限らず「言葉通り」が主流になっているのかなぁと。

オケやコーラスの重厚さが以前ほど感じられない気がしたのですが、コロナ禍と関係があったりするのでしょうか。減員? それとも座席位置や私の側に起因する問題でそう感じたのでしょうか。
逆にエコーが強すぎるのが違和感で、トートの声をマイクが拾いきれていないようなもったいない感じもありました。

14日の初見時、トート閣下のご登場シーンで頭上からワイヤーで降臨されるのを見てふと昨年見た「薔薇とサムライ」の天海祐希さんが脳裏に浮かんでしまったばっかりに、よからぬスイッチが入ってしまったのがわたし的敗因のような気もします。
物語に没頭しきれずどこか退いたところから見ていたかもしれません。
真っ白だった頃の私を返して・・涙。

また観劇できるはずなので、それまでに自分を調整しておかなくては。
このご時世、貴重な1公演1公演のはずなのに・・。

花總まりさんのシシィは愛らしい少女から大人の女性へそして晩年への変化が、わかってはいるつもりだったのですが、以前にも増して見事であらためて驚かされました。
予想を超えていました。
印象としてはとてもポジティブで自分を曝け出すことができるシシィでした。

古川雄大さんは2019年に見たときとはかなり雰囲気が変わって存在感のあるトートになっていました。
低血圧そうに(青い血を流すらしいから血圧はあるんですよね?)悠然として物事に無頓着そうなのにシシィにだけは執着するのが「愛と死の輪舞」って感じで、作品世界に漂う空気が凝って具現化したようなトート閣下だなぁと思いました。
小さなルドルフからさりげなくピストルを受け取り懐にしまうまでの一連、のちに成長したルドルフにそのピストルを渡すところなどのメタな小道具使いに見惚れてしまいました。ついふらふらとついて行ってしまいそうになるトート閣下でした。

佐藤隆紀さんのフランツ、そっかシシィってファザコンだったよねと。優し気なところに惹かれたのかな。
シシィの部屋の前の歌、いい声。あれでも扉を開けないシシィなのですね。
棘のない声といいますか包み込むような誰ともケンカしない声だなぁ。
夜のボートは劇中でもいちばんの感動ポイントでした。

立石俊樹さん、悲劇を待っているルドルフといいますか。このルドルフ、自分が悲劇が似合うことを知っているなと思いました。
追い詰められてイキイキしていると言ったら変ですが、悲嘆に浸っているなぁと。古川トートとの耽美な闇広ご馳走様でした♡

香寿たつきさんのゾフィーは正しくて厳しくて怖い印象。それが息子や孫のためだと心の底から信じているんですよねぇ。
強くなくては生きていられない場所で彼らは生きていくのだから。
安定の力強い歌声の頼もしいゾフィー様でした。

ルキーニの黒羽真璃央さん、ルキーニといえばベテランの役者さんの印象があったのでキャリアも年齢もお若い方がキャスティングされたことに最初は驚きでした。
実際に舞台で見て違和感もまったくなく演じこなしていることにも驚きを覚えましたが、考えたら実在のルキーニも犯行時は25歳だったのですよね。
無政府主義を信奉し、「偉そうなやつ」を暗殺して自分を誇示したかったのだろう若者の役を年齢が近い役者が演じるのは自然かも。その言動の支離滅裂さも、教え込まれたことを一途に情熱的に信奉し誰かを情熱的に憎むことができるのも若さゆえともいえるかもと納得でした。
そう仕向けられていることに気づかず万能感に浸っている感じも。彼は誰かに利用されたのかも・・?と思える余地があるのも。(この作品の世界観だとトート閣下がその黒幕ですが)
強烈なアクセントで狂気を印象付けるというよりは、若さゆえの万能感と自己陶酔と操られやすさを印象付けるルキーニだったかなと思います。


17日は、トート、フランツ、ルドルフが14日とは異なるキャストでした。

井上芳雄さんのトートは、アグレッシブに仕掛けてくる印象でかなり怖かったです。自分から矢面に立つトートだなと。
ルドルフを失って弱気になったシシィに「死なせて」と言われて傷ついたような顔をしていたのが印象的でした。愛されていないことがショックなのかな。強いシシィを求めているからかな。子どものようにイノセントで自分が望むままに行動するトート閣下なのかなと思いました。
井上トートは歌も楽しみだったのですが、エコーが効きすぎていてマイクが拾っていない声もあった気がしてそれがもったいないなぁと思いました。

田代万里生さんのフランツはトートへの対抗心が強いなぁというのがいちばんの印象です。シシィは私のものだ感が凄い。
彼女を裏切ったことをめちゃくちゃ後悔してそうだし、そのことで母をとても恨んでいそうだし、帰ってこないシシィのことをずっと思っていそう。
その割には息子にきつくて、そんなところは母に似ている気がするし。下手をすると息子にも嫉妬しそうなくらいだなぁと思いました。
こんなにシシィを愛しているのに拒まれてしまう「夜のボート」は胸が痛かったです。彼に脇目もふらずトートの胸に飛び込んでいくんだなぁシシィは・・涙。

甲斐翔真さんのルドルフは、めっちゃ育っとるやん!って思いました。こんなに大きくなって・・と。
ゾフィー様の言いつけを守って鍛錬したのかな~ 彼なりに一生懸命に国を思って行動しているよねと思いました。そんなところはゾフィー様の孫だなぁと。
井上トートの声をかき消さんばかりの音量の闇広がめちゃくちゃツボりました。こんな闇広(闇が広がる)ははじめて。勢いで突き進んでなにかよくわからないうちに勢いで自滅してしまうルドルフ。正義感が強かったのよねと思いました。
次は古川トートと甲斐ルドルフで見る予定なのですが、ちゃんと噛み合うのかどうなってしまうのか、いまから不安なような楽しみなような笑。

革命家の皆さんも一新で、背の高い方たちばかりでびっくりでした。
こうやってどんどん受け継がれていくんだなぁ。
博多座でアムネリス(宙組「王家に捧ぐ歌」)だった彩花まりさんが今回はヴィンディッシュ嬢で頑張っている姿を見れてうれしかったです。
おなじく元宙組だった華妃まいあさんの姿も退団後はじめて見ることができました。相変わらずスタイル良いなぁと。宙組で活躍していた彼女たちがまたエリザベートの世界で息づいている姿を見ることができて感無量です。
スタイルが良いといえば美麗さんのマデレーネも妖艶で素晴らしかったです。

次の観劇予定は1週間後なのですが、なにやら凄まじい寒波に見舞われるみたいで・・・。
大雪にさえならなければ大丈夫なはずなので、無事に観劇が叶いますように。
そして千秋楽まで止まることなく上演されますように。心の底から祈っています。

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2021/04/27

長い旅路の果てに掴んだ お前の愛。

4月22日に東急シアターオーブにて、「エリザベート TAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート」を見てきました。

花乃まりあさんがシシィを演じると知って、どうにかして見たいという思いと時節柄を慮る気持ちに揺れながら抽選に申し込み、幾たびかの先行抽選で辛うじて手にすることができたチケットを手に観劇が叶いました。
これまでエリザベートのガラコンを見たことがなく、そのコンセプトも概要もよくわかっていなかったのですが、キャストの豪華さにびっくり。明日海りおさんのトート! 北翔海莉さんのフランツ! ルキーニ役の望海風斗さんにいたっては宝塚退団後初の外部出演!! ルドルフは七海ひろきさん?! そりゃあチケットがなかなか取れないわけです。しかも宝塚のコスチュームで上演されるとは。
観劇が現実となって事の重大さに気づいた次第でした。

タカラジェンヌの愛し方には、その可能性を信じて見つづけていくというのもあると思いますが、その期待に応え尽くし夢を見せ尽くして卒業していく人もいれば、可能性を残したまま卒業していく人もいて、花乃まりあさんは私にとって後者のジェンヌさんでした。もっと彼女に夢を見ていたかったんです。
結論から言うと、本当に見に来てよかったと思いました。私の中のなにかが成仏できた感じがしました。偉大なる自己満足ですが。

娘役さんはとくにですが抜擢も早ければ卒業も早くて、人間的にも咲ききるまえに去っていかれるのがもったいないなぁと思うことがしばしば。
宝塚と言う閉じられた花園に適応することに命を費やしてやっとその目に映る世界が開けたかなぁと思う頃に卒業される。
宝塚とはそういうところと言われてしまうかもしれないけれど、その世界を愛するあまりに過剰な約束事を信じ込ませて囲いの中に押し込め私たちファンがその青春を消費する、それでいいのかなと心が痛くなることがあります。
いつも心のどこかに彼女たちへの申し訳なさがあるゆえにか卒業後のしあわせを切に祈らずにいられない。しあわせそうな姿に安心する。身勝手な想いです。

でもしかし。
私がそんな身勝手な罪悪感にとらわれているあいだも、宝塚の卒業生の皆さんはその命と芸を磨きつづけていたのだなと目が覚めるような素晴らしい舞台を見ることができました。

7年前、黄泉の貴公子の印象だった明日海りおさんは、いま堂々たる帝王でした。
中大兄やエドガーを経てのいまの明日海さんのトートなんだなぁと。経験を重ねることで同じ役を演じてもこんなに深みが増すんだなぁと思いました。
時間と空間を支配し、流し目ひとつで心を撃ち抜く威力に見ていてワクワクが止まりませんでした。このトート閣下大好き!となりました。
歌にも余裕が感じられて巧みに歌い方を変えたりされてました。ミルクのさいごの歌いあげ方も好きだったなぁ。

そしてすこしも悪びれることなく負の感情や悦びの感情を見せるトート閣下でした。
エリザベートに拒まれてこんなに傷ついた顔をするんだ。一瞬垣間見せるむうっと不貞腐れたような表情には見覚えが。この表情にいつも私はきゅんとしてしまうのです。
彼女を不幸に導く企みを巡らす時こんなに邪悪にほほ笑むんだ。そんなに彼女を愛しているんだと思うトート閣下でした。

自分から死に誘っておきながら「まだ私を愛してはいない!」とエリザベートを突き放す場面はいつも観劇しながらこれはどういうことだろうと考えてしまう場面なのですが、このガラコンではすんなりと腑に落ちていました。
それくらいエリザベートに愛されたがっているトートに見えました。
自分が望む完璧なかたちで愛されないとゆるせない我儘な駄々っ子のようなトート。すこしの瑕もゆるせず思い通りでないと傷つくトート。
私の性癖に刺さり過ぎるトート閣下でした。

そのトート閣下がエリザベートの愛を得て抱き寄せる時のなんと満足気なこと。ラストの昇天の場面でこんなにも自身が救われたように見えたトートを私は知りません。
ウン・グランデ・アモーレ!
死が人を、人が死をこんなにも愛し求めて結ばれたんだ——

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2019/07/22

誰のものでもない この私は。

7月11日帝国劇場にてミュージカル「エリザベート」を見てきました。

昨年新キャストに愛希れいかさんエリザベート、古川雄大さんトート、三浦涼介さんルドルフが発表になり、驚きとともになんとかして見たい気持ちが大きくなりました(これまでは帝劇のみの年は見送って博多座公演まで待っていました)。
1泊2日の東京滞在でメインキャストがかぶらない2公演を見て、宙組「オーシャンズ11」を見て、さらに家族のミッションも遂行できる唯一の平日ということで決めた旅程でしたが、自分の選択(ではなくて運の良さ?)を自慢したくなるような最高のマチソワができました。
【マチネ】愛希シシィ古川トート平方フランツ三浦ルドルフ剣ゾフィー成河ルキーニ
【ソワレ】花總シシィ井上トート田代フランツ京本ルドルフ涼風ゾフィー山﨑ルキーニ


昨年の宝塚歌劇月組公演「エリザベート」でちゃぴ(愛希さん)のシシィに心惹かれたのですが、やっぱり私はちゃぴのシシィが好きだなぁと今回観劇して思いました。
嫌なものは嫌(Nein!)という拒絶の強さだったりとか、自分の気持ちをなだめることが苦手そうなところとか。
人の言葉を都合よく信じてしまうところや期待とちがうと裏切りと捉えてしまう稚さやショックの大きさだったり。
裏を探らず表面に見えるものに真正面から対応して人間関係を険悪にしてしまうところとか。
いつもギリギリの細いロープの上を歩いて。自ら危険に早足で近づいて、潔いほど死と背中合わせな生き方しかできないところ。
もっと慎重に、もっと用心深く生きられたら、この人(シシィ)の人生はちがっていただろうにと思えてならないところ。
魂の叫びのような「私だけに」。彼女の真骨頂ともいえる「私が踊る時」。楽曲と芝居が面白いようにピタリとはまっていて。
1幕のちゃぴシシィは胸がすくくらい危機と隣り合わせで大胆で力強くて惚れ惚れと見ていました。

私はこのシシィが主体の物語が好きなんだなぁと思います。
生きるエネルギーに溢れて自我の塊のシシィが、つねに自分と相容れない誰か(何か)と取っ組み合いをするかのように闘い、自分の人生を生きて行くストーリー。
自分が望むままに行動することを否定され、受け入れ難くて泣き叫んでいるように見えたちゃぴシシィが「誰のものでもない、この私は」と自我に目覚めそれを肯定し、自分のやり方で自分の思い通りに人生を動かし勝ち誇る。
そして人生のピークから谷底へ滑落しまいと必死でしがみついている岩が一つまた一つ崩れ落ちるような後半の人生を蒼白の面持ちで生きつづける彼女の生き様の物語が。
けしてトートのせいで不幸になったのではない。
無意識に自らトートを傍らに呼び寄せているように見えるシシィでした。

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2018/09/09

誰にも束縛されず自由に生きるの。

9月6日と7日に宝塚大劇場にて月組公演「エリザベート」を見てきました。
ちょうど役替わりの境目で、両方のルドルフを1回ずつ見ることができました。

期待以上に面白かったです。
とてもわかりやすく具体性が見えるエリザベートでした。
舞台センスの良い人たちが芝居で見せるエリザベートだなと思いました。

結婚式翌朝のシシィの「私だけに」に心の中で100万回肯きました。
この場面でこんなに納得できるなんて。

ゾフィーが強烈でなくても、フランツがシシィの心情に鈍感でも(むしろ今回のフランツはよく理解しているように見えました)、シシィには「あたりまえ」のことがもう窮屈で耐えられないのだと感じました。

世間からしたらどうしようもないワガママ女でしょう。
常識をわきまえ国母の責任を背負って生きてきたしゅうとめゾフィーの手にはとても負えない女性だと思いました。
まして彼女を心から愛しているフランツにはなおさら。
トートですら最後まで手を焼いてしまう。
そんな愛希れいかさん(ちゃぴちゃん)の自我の強いシシィが清々しくて、とっても好ましかったです。

「私だけに」の歌詞も内面の比喩ではなくて、ほんとうにそのまんまなのだと思いました。
ことの善悪なんかではない。正義感やモラルでは動かない。責任感も彼女を動かしはしない。
何ものにも束縛を受けずに「自由」に生きて行く ―― そう意志を固めた清々しさが全身から発せられる「私だけに」に私は心酔し、ただただ惹きつけられて見てしまいました。

シシィがこれだけ強いので、ほかの役が過剰にニュアンス付けをしなくても筋が通ってしまう。
もともとの楽曲、もともとのストーリーにかなり寄っているから頭の中を疑問符でいっぱいにすることがなく、ノンストレスで見られるエリザベートでした。

またほかの人びとも緩急のある芝居やセリフ回しで、カギとなる言葉、仕草、などがはっきりと印象づいてとてもわかりやすかったです。
とにもかくにも全部出し切る、というのではなく、引くところは引いている印象。
熱いパワーで圧倒されるという作風とは違う、とてもセンスの良いもの見ることができたと思いました。

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2016/10/08

子どもに子どもは育てられない。

9月21日東京宝塚劇場にて宙組公演「エリザベート」を見てきました。
前後の祝日の影響か平日なのに11時と15時半公演の日だったので運よく2公演見ることができました。

博多座で東宝版「エリザベート」を見たあとだったのでどうしてもシシィにもの足りなさを感じてしまいました。宝塚版はトートが主役であちらはシシィが主役ですから仕方のないことですが。
とはいえ、みりおん(実咲凜音さん)は歌唱力も芝居も安定しているので安心して耳をゆだねることができるのは有難いなと思いました。

みりおんシシィは人を巻き込み国を巻き込むようなダイナミックなエゴイストではなくて比較的こぢんまりとしたエゴイスト。自分1人で抱えているかんじ。
15歳のときに抱いた自意識をそのままに60代まで生きたらそりゃあ生きづらいよねという感じでした。

結婚式翌日のゾフィーたちとの場面がとても好きでした。
「馬に乗ります」「ダメよ!」で一瞬ぽっかーんな間が可愛くて(笑)。ダメって言われるなんて思ってもいなかった感じが。
リヒテンシュタインに口を開けられるところもとても可愛いくてみりおんシシィのあの場面を見るのがムラの時から毎回楽しみでした。

ゾフィーもリヒテンシュタインもとても正しい。この田舎から来た娘をいかに皇后らしく教育しようかと初日の早朝から気負っているのに対して、なにもわかってなさそうなみりおんシシィ(笑)。
ここはみりおんが元来もっているチャーミングさがすごく出ているなぁと思いました。
その、世のおしゅうとめさん気質の人たちをイラッとさせちゃう性質がシシィにとてもマッチしていて見ていて小気味良かったです。
シシィとゾフィーの絡みをもっと見たいなぁと思いました。じっさいには2人が絡むのはこの場面だけなのですよね。

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2016/09/13

いちど私の目で見てくれたなら。

博多座で上演されたミュージカル「エリザベート」を千秋楽を含めて5公演見ることができました。
昨年から新演出になっているとのことでしたが、これがすごく好くてもっと見たかったです。

同時期に宝塚でも宙組が「エリザベート」を上演していて7月後半とお盆前はそちらに遠征し、博多座のエリザはお盆明けからしか見られなかったのがいまとなってはとても残念です。
今月も宝塚へ行く予定があるのに、梅芸に行くスケジュールを考えていなかったのも残念至極。
でも自分なりに考え抜いたスケジュールだったのだから涙をのみます。
またこのキャストで再演されるなら遠征も考えようと思います。
なによりも博多座での再演を祈ります・・・。

城田トートと成河ルキーニがとても好みでした。
シャウトするトートがずっと見たかった。
トートとルキーニのパートはロックで聴いてみたいという夢が叶ってしまった感。
なんとなくグラムの匂いを感じました。ご本人たちには意識はないと思いますが・・・

城田さんのトートは計り知れない感じが快感でした。
人でない存在であることをつよく感じさせるトートでした。
他者の目、他者の意思を意識して行動することが人間が人間であるゆえんだとすると、そんなものは端から持ち合わせない感じがしました。
荒々しく傍若無人で、飼いならされない野性。
知性はあるのになにかおそろしく無心な存在。

そしてその人に飼いならされない野性にエリザベートを感じました。
知性はあるのに他人の思いをくみ取れない性質。悪気はないけど思いやりのないところ。
群れで暮らす特性がエリザベートには備わっていない。
誰かに愛しまれようというつもりもそもそもなく、自分1人で生きて行こうという意思に貫かれた人。
花總さんのシシィからはそんな魂が感じられました。
少女時代のシシィがあんなに無邪気で愛らしいのも野生の仔の特徴だと思えば肯けるなぁと。

そんなシシィが深い孤独を意識するのは彼女に知性があるからだと思います。
みずから孤独を求めているのに孤独に苛まれる矛盾。
城田トートはシシィの人間関係による孤独ではなくて、彼女の本質による孤独を。彼女が彼女のままでこの世に生きることの苦痛を浮き彫りにしている気がしました。
その見つめる眼差しで。遠慮のない荒々しさで。

城田トートは花總シシィの“無意識”が具現化したもの。ある意味彼女の一部かもしれない。
“死”とは肉体の死ではなく、意識が無となることなのではないかなと。
そんなことを思わせるトートでした。

エリザベートをじぃっと凝視めるトートの昏い瞳。
彼の目にはエリザベートがどう見えるのだろう。どう映っているのだろう。
ここ(客席)で見ている私とはちがうものが見えているようで。その答えを私は安易に出したくはなくて。
ひたすらにそんな計り知れないトート閣下を見ているのが心地よかったです。

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2016/08/28

自分を殺してすべて王家に捧げること。

8月18日と23日、博多座にてミュージカル「エリザベート」を見ました。

2公演でトートとゾフィーの役替わりを見ることができました。
トートについては先に書きましたので、ソフィーの役替わりで感じたことを書いてみたいと思います。

18日のマチネは香寿たつきさんがゾフィー役でした。
この日のキャストは私がこれまで見たことがある「エリザベート」の中でもベストだと思える素晴らしいものでした。
ことに私はゾフィーにくぎ付けでした。
香寿さんの歌声は相変わらず素晴らしくて好きだなぁ。ゾフィーの歌はすごく彼女に合ってるなぁと思いました。
香寿さんが見せる強いゾフィー像は私が思い描くゾフィーそのものかそれ以上で、シシィが戦うべき「強固で古いしきたり」そのものに見えました。
とても理解しやすい世界観でした。

あまりにも香寿さんのゾフィー像が私の中でしっくりきたので、涼風さんのゾフィーを自分がどう思うのか正直ドキドキして23日マチネを見ました。

涼風さんのゾフィーはすっとした美しい女性でした。シシィに似ているなとも思いました。
なぜこんなに美しい人が美しいまま寡婦でい続けたのだろうとも。
いままで私が知っているゾフィー像とはちがうゾフィー像になんだか夢中で見ていました。

涼風ゾフィーは1人の女性としてシシィと対立しているように見えました。
息子について「私には隠さない」「強い絆で結ばれている」とシシィに誇らしげに言うゾフィーに私はかつて感じたことのない心のざわつきを覚えました。
フランツが「でも母の意見は君のためになるはずだ」とシシィに言ったのを聴いた瞬間、涼風ゾフィーの口角が優美に引きあがるのを見て思わずあっと思いました。このひとは女だと。これは女性として同性に勝利した笑みだ・・・。

ゾフィーもフランツもいままで何度も聞いてきたセリフを言っているのに、ゾフィーが変わるとフランツにもこれまでとはちがう一面が見えたような気がしました。
厳しく強い母に逆らえないというのとはちがう、彼の心の中にもこの母を守りたい気持ちがあるのでは、、、と。
ちょ、シシィ、これは手強いぞ。
母と息子の二十数年間の実在を感じてしまったというか。それに嫁いできたばかりのシシィは勝てないでいる。
シシィの戦いはここからのスタートだと思うと、ほんとうによく健闘したなと称えるばかりです。

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2016/08/25

自分のためにしたの。

8月18日と23日、博多座にてミュージカル「エリザベート」を見てきました。

やはり、シシィの描かれ方は東宝版のほうが好きだなぁ。彼女の本質がわかりやすく丁寧に描かれていて。
そして、宝塚版はシシィを中途半端にしてもトートに重きが置かれてるのだなぁとあらためて思いました。

花總さんのシシィは私が頭で考えなくても見ているだけで、彼女が何を求めている人なのかわかる。この世でこれほどまでに切実に自由を求めているという稀有な人物像をこんなにも自然に気負わず演じて見せることができることが凄い。
こういってはなんだけども、周囲がどんなふうに演じようともエリザベートとして揺るがないのが凄いなぁ。相対じゃなく絶対なのだ。絶対エリザベート感。なんなのだろうこれは。
実在したエリザベートの肖像とはちがって見た目は華奢な女性なのになぁ。


この東宝版の花總シシィを見ていて、彼女がもとめる『自由』とは「おのれの命を懸ける自由」なのだということがふっと心に入ってきました。
木登りをしたり綱渡りをしたり曲馬師のような乗馬をしたり、シシィはつねに冒険とスリルをもとめている。
『死』と隣り合わせの勝負を。トートを引き寄せているのはほかならぬ彼女自身なのだと。

皇太后ゾフィーとの戦いもハンガリーも彼女にとっては綱渡りと同じ命を懸けた真剣勝負。アドレナリンバシバシ。
子どもの頃からいつも彼女は『死』を傍らに綱渡りを続けている。懸命に生きるということはいつ『死』が迎えに来てもおかしくないということ。けれども絶対に『死』の思い通りにはならないという強い魂に支えられているということ。

そしてその『死』が顔を持ったら、城田トートや井上トートになるんだと。
なんだか深く納得できてしまったのです。この博多座エリザベートを見て。

彼女の人生はトートとの戦いそのものなのだと。
誰もが畏れる相手に怯むことなく挑みつづけるエリザベートに私は惹かれたのかも。

さいしょは木登り。それが宮廷の古いしきたりへの挑戦、ゾフィーとの戦いとなり。ハンガリーの件で自分を認めなかった人々を認めさせて。やがて夫の裏切り、身内の不幸、老い、孤独と彼女が戦うものは人生そのものに移り変わっていく。昔のようにかんたんに勝ち負けがつくものではない。

思い一つでもっと楽にもなれるのに、それを選ばず人生の苦しみ、受け入れ難い不条理と戦いつづける。誰のためでもなく自分のために。

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2016/08/17

いまに死にたいときがくる。

8月8日と9日宝塚大劇場にて宙組公演「エリザベート」を見てきました。

7月末に観劇したときの印象とはまるでちがう「エリザベート」でした。
場面から場面に地脈が通じてさいごにそれが吹き上がったような。
私はこの「エリザベート」がたまらなく好きになりました。

トートに躊躇がなくなり強くなった感じがしました。物語世界を支配している感じ。
唯一支配しきれないのがシシィなのだなと。

結婚式の翌朝、シシィの寝室に来襲するゾフィーのデフォルメ加減が絶妙でした。
リヒテンシュタインも女官たちもあくまでゾフィーの側にいる者たちなのだと見えるように演じられていて、宮廷でのシシィの孤立がはっきりと浮き彫りになったようでした。

フランツもシシィの気持ちを察することができず「母の意見は君のためになるはずさ」などと言う。
そのときのシシィの絶望感たるや ――― おなじセリフなのに、なぜこんなにも前回と180度ちがって見えたのだろうと不思議でした。

ゾフィーが支配する宮廷で孤立し、フランツも頼りにならないと絶望したシシィが「私だけに」と歌い始める心の流れがとても自然に感じられました。
短剣を見つけてからそれを鞘に納めて気絶するまでの流れ、緩急のつけ方が素晴らしくて引き込まれ鳥肌が立ちました。

気絶したシシィの手から短剣を取り上げて「返してやろうその命を――」と歌うトートはまだ余裕に満ちているように見えました。
これはあくまで小手調べのようなものでシシィを試しただけなのかも。
見ている私がそうであるようにトートの心のうちにもまた、シシィという他とは異質ななにかをもつ1人の少女に予測できない期待があるような、そんな感じを受けました。

まさに愛と死の輪舞の始まり――

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