カテゴリー「♖ ストプレ」の4件の記事

2016/02/19

悪足掻きをやめねぇから面白い。

1月22日(金)三越劇場にて初春新派公演「糸桜」を見てきました。
新派に大和悠河さんが出演、波乃久里子さんと共演というトピックに観劇前からわくわくしていました。

「糸桜」は、歌舞伎の狂言作者河竹黙阿弥の娘糸女と、彼女の養子で演劇学者の繁俊、その妻のみつを描いた「作者の家」(河竹登志夫著)を原作とした劇団新派の新作。私にはなじみのない世界の話と思っていたのですが、劇中で波乃久里子さん演じる糸女が泉鏡花を褒めたり(新派の代表作となる戯曲をたくさん生んだ作家ですからね)、みつの嫁入り道具一式が日本橋三越で揃えたものと披露されるセリフがあったりして(まさにその日本橋三越にある劇場での上演!)、そうかこの地で生きていた人たちのことなのだなぁと距離が縮まった気がしました。

新派の方たちのお芝居は短いセリフでも意味や感情がすっと伝わってくるのが良いなぁと思いました。
ダイナミックな舞台転換や歌舞や見得を切ったりも一切無く、簡単な大道具と生活感のある小道具の中でセリフと繊細な動きで心のリアリズムを見せる芝居に、歌舞伎界出身の市川月乃助さんと宝塚出身の悠河さんが挑んだわけですが、やはりそれぞれの出身から身についたものが見え隠れする。体当たりで演じているからこそ湧き出づるもの、それもまたこの作品の味のような気がして、なんともいえない思いが見ている私の心に広がりました。
1幕さいごのあたりで、月乃助さん演じる繁俊と悠河さん演じるみつが、おたがいさまと、すこしずつ夫婦になっていきましょうと向かい合う場面では、2人の役の境遇と役者として生き様が二重写しとなり、思わずほろりと涙が出てしまいました。

この作品から新派に入団する決断をされた月乃助さんの心にあるリアルが、繁俊という役を通じて発せられているようにも感じました。
裕福でありながらも荒れた家庭で居所なく育ったみつは、この縁談を機に新しい環境で自分の居場所を作っていこうとしている。そこは豊かな実家とは正反対の質素な作者の家で、さらに姑の糸女はとてもクセがあるし夫はその糸女の養子で彼女に逆らえない。そんな面倒な家の中にあってもうじうじせずにさっぱりとしている。もちろん思うことも言いたいこともあるだろうけど、自分の役目を一つ一つものにしてこの家を自分の居場所にしようとしている。そんなみつの様子もまた、宝塚時代からいまに至る悠河さんの姿勢と重なって私にはとても感慨深かったです。

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2015/09/27

元のもくあみとならんとの心なり。


河竹登志夫著『黙阿弥』(講談社文芸文庫)を読みました。

なぜ二代目河竹新七が『黙阿弥』と名を改めたのか。
旧幕時代から明治半ばの移り変わる時代の中を歌舞伎の狂言作家として生きた河竹黙阿弥の心の奥の真の思いを、黙阿弥の孫である著者がたくさんの資料を読み込んで解き明かす本でした。

本邦の演劇(歌舞伎)を西洋の先進国のように上流の人びとが観賞する高雅で社会的地位の高いものにしようと新政府のお偉方が「演劇改良」の名の下に、彼の脚本演出にお門違いな口出しをする。
さらには、彼の役者の意向を汲み宛書をするやり方を「俳優の奴隷」と指弾し、歌舞伎の様式にのっとった時代物を「無学」と蔑む。
それでも歯向かうことはせず忍従を貫く黙阿弥さん。

一つには、人気狂言作家となるまでに、同じ作家や役者、座元などといった人びととの人間関係にもまれてきた彼自身の経験から、相手の気持ちに副い、他人との諍いを避け、慎重に用心深く生きるということが処世術として身についていたこともあると思う。(役者に親切、見物に親切、座元に親切の「三親切」が彼の金科玉条だったそう)

もう一つはやはり時代かなぁと。
武士たちが攘夷だ佐幕だ勤皇だと国の頂をかけて争っていても、江戸の町人や芝居小屋の人びとにしてみたら、将軍の世から天子様の世に変わろうと顔色を窺う相手が変わるだけのことで、時代に応じた商売をしていくのはいたっていつもどおりのことなんだなぁと。
どんなに羽振りのよい役者でも、お上のご機嫌を損ねたら家は潰され家財は壊され、お江戸追放の憂き目。抗えない身分制度の中で生きてきた人びとの感覚が黙阿弥さんにも備わっているのだなと。
「俳優の奴隷」だの「無学」だのと見下されても、狂言作者である以上はいまをときめく権力者に歯向かったりはしない。芝居を守ること小屋を守ることは何にも替えられない大切なことだから、それがなくなっては狂言作家として生きられないから。職業が即ちアイディンティティーそのものの時代の人なんだなぁと。

けれど、そんな人前で感情を露わにし激昂することのない彼であっても、内心は思うところがあったに違いない。
それこそ一字一句にもこだわる江戸狂言作家としての矜持や美学が。
芝居のわからぬ政治家や学者の先生方こそ何ものぞと。
いまは黙っているけれど、いつかまた私でなければならない日がくるならばと。
隠居名の「黙阿弥」に込められた彼の真意――『元のもくあみとならんとの心なり』。
なるほどなぁと納得でした。

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2015/08/28

生きるよすが。

Minaminosimani

8月25日(火)キャナルシティ劇場にて「南の島に雪が降る」を見ました。

前日より台風直撃の予報で、JRも西鉄の電車・バスともに始発から運行見合わせ。
私は16時公演を観劇予定だったので、12時過ぎにバスが動き出したのを確認してレインコートを着て出かけましたが、時刻表はないも同然でバスは遅れ放題。バスを待つ間にびしょ濡れ。
「ふつうの約束ならキャンセルする状況だよなぁ~」と思いつつ会場へ必死に向かう自分が可笑しかったです。
ここのところ不調でアドレナリンが出ない~~~bearingなんて言っていたのに見たい舞台のためなら出るよねアドレナリン(笑)。

そこまでして行った甲斐のある舞台でした。
丁々発止のセリフのやりとりに引き込まれました。派手な舞台ではありませんが、出演者の皆さんのちから、物語(本)のちから、言葉のちからに飲み込まれた3時間でした。

劇中劇の「瞼の母」で、別れのラストになるはずの忠太郎と母を「会わせてやってくれ」と希う兵士たちの故郷の母を重ねる気持ちに応えて、舞台上で急遽ラストを変えるエピソード、知ってはいましたが目の当たりにすると涙が溢れて止められませんでした。

そしてラストに舞台に舞う紙ふぶきの雪 ―― 二度と日本に帰れないかもしれない兵士たちにそれを見せようとするマノクワリ劇団の団員皆の思いがそのまま出演者の皆さんの思いとなっていることがつたわってきました。
あの時代のあの場所の兵隊さんたちに見せようとされているのじゃないかと思いました。
演じる皆さんの芝居のちからはもちろんなのですが、それ以上に演じている皆さんの思いがその情景を増幅させているようでした。
たぶん目を瞑っても、その状況と気持ちがつたわったのではないかと思います。
1人1人の役者さんのこの作品に向ける真摯で特別な気持ちが感じられた気がしました。

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2015/04/22

どんな世の中になってもあの花だけは咲き続けますのやろな。

Sasame4月10日、大阪の上本町にある新歌舞伎座で『細雪』を見てきました。

長女の鶴子を高橋惠子さんが
次女の幸子を賀来千香子さんが
三女の雪子を水野真紀さんが
四女の妙子を大和悠河さんが演じていました。

遥か昔、この細雪の世界が大好きでした。
その想像でしかなかった世界が色と光を纏い形となって目の前にありました。
すべてが美しくて。

こんな話し方だったんだなぁ…。

正確な船場言葉のイントネーションを再現されているのかは私にはわかりません。
(奇しくも物語の舞台である蒔岡の本家があったとされる上本町にある劇場での
上演で、幸子役の賀来千賀子さんもアフタートークでそのことを気にされていました)
でも音になって聴こえるだけでも私は感動でした。

原作は作者の奥方がモデルといわれる次女の幸子と三女の雪子寄りの物語になっていて
昔読んだ時には、長女の鶴子と四女の妙子については
あまり良い印象ではなかったのですが、
この舞台では、鶴子と妙子にも愛情が注がれているように感じました。

ああ。鶴子はこんな思いでいたのだなぁ。
妙子はこんなふうに思っていたのだなぁと。
そう思いながら、彼女たちに思い入れながら観ることができました。

旧幕時代から続く船場の裕福な商家に育った価値観を譲れない鶴子。
家の全盛期の記憶はなく格式に縛られるのを嫌い“何か”をつねに求めつづける妙子。
「ふぅん」しか言わなくても周りが自分の良いようにしてくれると思っている雪子。
妹たちに振り回され姉からは責められその狭間でつねに誰かの心配をしている幸子。

それぞれの個性、それぞれの立ち位置がはっきりと見えました。

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