すべての世代はその絶頂期において道を譲り若者を招き入れて良き日を分かち合わねばならない
11月11日に福岡サンパレスにてミュージカル「ニュージーズ」を見てきました。
この日は公演の大千穐楽で、ヒロインの星風まどかさんのお誕生日でした。
そもそもの観劇の動機は、星風まどかちゃんが地元に来る?!ならば見に行かねば!ということで、作品についてはほとんど知らないままでした。
幕が上がり、まず思ったのはみんな若い!ということ。よく動くなぁ、よく跳ぶなぁ!とまぁびっくり。
大勢で踊っている中にシスター姿の晴華みどりさんを見つけて嬉しかったです。相変わらず素敵だなぁと思いました。
劇場の女主人役に霧矢大夢さんも登場しておお~!っと思いました。懐深い役で謎の説得力がありました笑。
主演のジャック役の岩﨑大昇さん、声が良く出るなぁ。大きいなぁと思いました。
大千穐楽ということでカーテンコールのあとに登壇した演出の小池修一郎氏によると、この公演中にもさらに大きく育ったとのこと。役者としても体格の面でもってことかな。(肩幅50cmを超えたとか!)
磨けば光るポテンシャルと真ん中に立てる風格が備わっていて彼が出演する舞台をこれから私はきっといくつも見るようになるんだろうなぁと思いました。
そしてヒロインのキャサリン役の星風まどかさん、臆することなく舞台に立つ勇ましさも健在でうれしく思いました。
彼女がヒロインを演じた「アナスタシア」が大好きでしたし、宝塚在団中は本格的なミュージカルで歌い踊るまどかちゃんをもっと見たいと思っていたので、退団して間もなくこのように活躍している姿を見ることができてうれしいなぁと思いました。これからもっともっと舞台でのびのびと輝く姿を見られることを期待します。
加藤清史郎さん(ディヴィ役)も相変わらず巧いなぁと。これからどんな役者に成長していくのか楽しみだなぁと思いました。
クラッチ―役の横山賀三さんは初めて見る方でしたが、役柄も相まってかなり惹かれました。今後の出演作も見てみたいなぁと思います。
ニュージーズ(新聞少年たち)の存在はこの作品ではじめて知ったくらいに無知でしたが、ニューヨークも19世紀末の闇を抱えていたのだなぁと作品を見ながら思いました。工業化や人口流入による住宅不足や生活困窮者の増加、労働環境の問題。頼る者もなく自分の力で生きていくしかない子どもたちがたくさんいた時代なんだなぁ。
ニュージーズを窮地に追い込む敵として描かれるピューリッツァー(石川禅さん)ってピューリッツァー賞のピューリッツァーだよね? 勝手に高潔な人物のイメージを抱いていたけれど、なかなかのやり手実業家だったんだなぁとか。
同様にセオドア・ルーズベルト(増澤ノゾムさん)ってあの‟テディ”のルーズベルトだよね?と。大統領時代にはパナマ運河の件でピューリッツァーとやりあっていたよね? この作品ではまだ州知事なのでそれはこののちの話になるのかなぁとか。
歴史上の人物が物語の中で描かれる姿に興味を惹かれました。
セオドア・ルーズベルトがワシントンやジェファーソン、リンカーンと並んでアメリカ人に人気の理由がいまいちピンときていなかったのだけど、この作品に描かれる役どころで、なんとなくその理由がわかったような気がしました。
警察の汚職と戦ったり生活困窮者の問題に取り組んだ人として人々の記憶に残っているんだなぁ。
セオドア・ルーズベルトには格言が多いというか、民衆受けする格好の良いことを言う人だという印象があるので、劇中のセリフも「彼らしいなぁ」と思いました。
曰く「すべての世代はその絶頂期において道を譲り若者を招き入れて良き日を分かち合わねばならない」
自分の理想の人物になるために努力を惜しまず生きた人らしいなと思います。そういうところが尊敬されるのかなと思います。
同時にやっぱりそういう生き方ができる環境に生まれた人だよねとも思います。
ディズニー作品ゆえなのか、いくつかの綺麗事すぎる部分に「ふふん」と思ってしまう自分がいました。
作品の上ではピューリッツァーが悪者でセオドア・ルーズベルトが正義の人だけれど、ピューリッツァーがセオドア・ルーズベルトのやり方を批判するところはやっぱりジャーナリストらしくてなるほどと思いました。
大千穐楽の挨拶でピューリッツァー役の石川禅さんが、セオドア・ルーズベルトのこの言葉(すべての世代はその絶頂期において道を譲り若者を招き入れて良き日を分かち合わねばならない)を引用して、岩崎さんをはじめとする若い出演者の皆さんの未来に期待しご自分たち先達のなすべき道をお話をされ、霧矢さんや増澤さんたちがそれに肯いている様子が印象深かったです。
そして自身を含め舞台上にいる若い共演者たちにご期待くださいとこれから精進していくことを舞台で宣言する岩﨑さんの言葉に、時代は変わっていっているのだなぁとしみじみと思いました。
これからを担う若い舞台人の活躍に私も期待したいと清々しくも感慨深い思いに浸り、本邦のミュージカルの未来に明るい兆しを感じながら劇場を後にしました。