御意に。
「1789 -バスティーユの恋人たち- 」博多座公演の書きかけの感想をようやくアップです。
2人の【マリー】と2人の【オランプ】について。
凰稀かなめさんは、彼女の持ち味とは真逆の陽気で無邪気なマリーを緻密な芝居で表現していました。
ちょっとした間の取り方、視線や体の向きなど、凰稀さんならではの黄金ポイントを押さえていくのが私には心地がよくて、やはり私は凰稀さんのお芝居が好きなんだなぁと思いました。
仮面舞踏会でネッケル(磯部勉さん)の登場を国王陛下に知らせる『ネッケルが』が好きでした。
たった一言ですが、その一言から感じ取ることができる凰稀マリーの人柄が面白くて毎回楽しみでした。
ほかの人たちとはちがって自分におべっかを使わず小言(正論)を申し述べてくるこのスイス人の実業家出身の大臣を、マリーはいかに忌々しく思っているか。そんなネッケルを重用する国王ルイ16世陛下(増澤ノゾムさん)に対する不満が、その一言にじつに籠っている『ネッケルが』でした(笑)。
彼の話なんて聞きたくないとばかりに、さっさと彼に背を向けて蝶々の指輪を弄ってみたりあくびをしたり。不真面目で自分に正直なマリーが面白かったです。
そして彼女の国家予算並みの浪費額について咎め立てしてくるネッケル対して不貞腐れた気持ちが表情に現れる(笑)。
優雅な王妃様なのであからさまに品のない表情をするわけではないのだけど、これ、ぜったい不貞腐れてるとわかる彼女ならではの膨れ面。
それに気づいてしまうと見ていて楽しくてしょうがありませんでした。すましているようでじつは表情豊かなところが大好きでした。
(ラインハルトでもバトラーでもオスカルでも、人から非難されるときに浮かべる凰稀さんの表情が、私は大好物なのだなと思います。反論できずにいるけれども表情が内面を語っているかんじが。自尊心高めな人が無防備に傷ついている表情が)
そんな恵まれた人らしいこどもっぽさを持つ彼女が、我が子を亡くし、さらには信じていた人たちが自分から去って行き、当たり前にあると思っていたもの、持っていて当然だと信じて疑ったことのないものが、本当はそうではないと気づいてからの本来の賢明さが表出したあたりの凰稀さんのマリー像がとても魅力的でした。
なにもか失ってから彼女が気づいたものの中で、凰稀マリーにとって比重が大きいのが、国王ルイ16世の人柄の魅力、そして彼への静かで穏やかな愛情なのではないかなと思いました。
凰稀マリーの特徴として、オランプへの『本当に自分が愛するべき相手を見極めることが一番大切なのよ』という言葉に実感がこもっているように感じられたのは、彼女がけして理性だけでルイを選んだわけではなく、ルイに愛情を感じている自分のたしかな気持ちから来ていると思いました。
愛をもってさいごまで彼についていこうと決意していることが全身から伝わってくるようで、マリーとルイのやりとりと交わす視線に、マリーの母性とルイのまるでドギマギする初恋の少年のようなためらいが胸に沁みて何回見ても涙してしまいました。