カテゴリー「♖ 宝塚OG」の31件の記事

2024/04/04

生きている。

3月30日、キャナルシティ劇場に望海風斗ドラマティックコンサート『Hello,』に行きました。
幸せな気持ちと元気を持ち帰った気がします。

オープニングから、「POP STAR」「真夏の世の夢」「あゝ無情」とアップテンポの懐かしのヒットソングを伸びやかにノリノリに歌って客席の心を鷲掴みに。
これは楽しいコンサートになると客席全員が確信したところで・・まさかの「お祭りマンボ」笑。この歌ってこんなにグルーヴィーだった??こんなにドラマティックだったっけ???となんだか訳がわからないままに巻き込まれていて面白かったです。
博多では「わっしょい」ではなくて「おっしょい」らしいと小耳に挟んでこられたようで、謎の「おっしょーい!」「おっしょーい!!!」のコール&レスポンスにも笑いました。このコール&レスポンスはエンディングまで都度都度リプライズされて盛り上がりました。
(※じつは博多祇園山笠はタイムレースなので、「おっしょい」は最初だけで実際には短縮形の「オイサ!オイサ!」の連続なのですが笑)

観客の心をがっつり掴んだところで、なんとこんどはソフト帽をかぶりジャケットを羽織って「勝手にしやがれ」と「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」より「愛は枯れない」の男役メドレー。
望海さん曰く、雪組プレ100周年「Greatest Dream」に出演されて以来『男役スイッチを手に入れた』そうです笑。
斜に構えたら瞬時に切り替わるスイッチ、いいですねー笑。
こうして聴いてみると、男役の歌声といつもの歌声ってこんなにも違うんだと驚きました。(声帯の使っている場所がちがう?🤔)

つづく洋楽メドレーは、カーペンターズにABBAにスティーヴィー・ワンダーにプレスリー。
なんでも歌えて凄いし、リズム感も最高に良くて楽しかったです。ミクロの単位、刹那の単位までピタッときて(主観)もう気持ち良いったらなかったです。
とくに「ハウンドドッグ」はいままで生で聞いた中でいちばん好きかも! もう何を聴いても最高でたまりませんでした。

さらに好きだったのがこれに続く「摩天楼のジャングル」(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ)のクールなダンス。
からの「Love Can't Happen」(グランドホテル)は男爵の心情や舞台の情景が思い浮かんで涙が出そう。
そして「アマポーラ」。望海さんの繊細で豊かな声にうるうると感じ入っていたら・・あれ? もしかして望海さんの喉にエヘン虫?
困り顔になりながらも音は外さず、でも本当にヤバいみたいで、どうするのかなと思っていたら曲を止めることもなくメロディにのせて「♪(アマポーラ―)〽お水を飲ませて~」とセットの陰にお水を取りに行き歌の合間に数回給水。それでエヘン虫はいなくなったようですが戻しに行くタイミングがなかなかないみたいでペットボトルを手にしばし困惑顔・・そのうち諦めて小道具のようにスタイリッシュに持ってらっしゃいました(さすが)。
望海さんの様子がおかしいことに気づいたバンドマスターのキーボートの方も、望海さんの動きに合わせて演奏を止めずに繋いでいたのもさすがだなぁと。まさにライブだなぁと思いました。

次のナンバーは望海さんの持ち歌「Look at Me」でキャスト全員でにぎやかに盛り上がる場面でしたが、皆さん手に手に自分のペットボトルを持っていて、それに気づいた望海さんが「やさし~みんなやさし~」と感激されていたのが印象的でした。(本当に思わぬハプニングにドキドキされていたのでしょうね)

続いてのミュージカルナンバーのコーナーはアップスタイルにロングドレスのいでたちで、まずは「ジーザス・クライスト・スーパースター」のマグダラのマリアのナンバーから。
ミュージカルナンバーを歌う望海さんは、ポップスを歌う時とはまた違った迫力があり素晴らしかったです。
「ディア・エヴァン・ハンセン」から「Waving Through a Window」。この作品は知らなかったのですが、どこか心にひっかかるものがあったので見てみたいと思いました。
その次が今年主演されたオリジナルミュージカル作品「イザボー」から「Queen of the Beasts」、見ていない作品なのでどんな心情を歌っているんだろうなぁと思いながら聴きました。(今月早くもWOWOWで放送されるとか?)
そして「ドリームガールズ」の曲で「Listen」。じつはさらっと聴いてしまったのですが、舞台では歌われていなかった曲だとか??(わかってなかった・・汗)

アンコールはガラッと雰囲気が変わってTシャツにデニム姿で登場。
アンジェラ・アキさんから提供された楽曲「Breath」は、昨年宝塚で悲しい出来事があって以来抱え込んだ思いを書き付けてアンジェラさんにお渡しして、そこから書いていただいたものそうです。
明けない夜を過ごしている人への思いが込められているように私には感じられました。
そしてエルトン・ジョンの「Your Song」、あまりにも有名な。
『How wonderful life is while you're in the world』と歌う望海さんの歌声が心に深く沁みました。

さて、福岡公演にはスペシャルアンコールがありまして、歌う楽曲は「〇〇マン」か「〇〇アン」のどちらか、どいうことだったようですが、この回は「ドン・ジュアン」より「俺の名は」でした。
自分が演じた作品が再演されるのが夢だったそうで、今年この「ドン・ジュアン」と「Gato Bonito!!」が再演されるのが決まったことが嬉しいと語ってらっしゃいました。

望海さんの誠実さと温かさを感じて心の中をいっぱいにしてもらったおよそ100分のコンサートでした。

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2024/03/20

ヒールで1マイル歩いただけでわかったと思わないで

3月16日に博多座にて山崎育三郎さん主演のミュージカル「Tootsie」を見てきました。
とてもクオリティの高い舞台でした。

女性とキャリアのリアル

悩みながら傷つきながらも目指すものに対して一生懸命で正直、自然体な感性のジュリー(愛希れいかさん)がいいなぁと思いました。
役者を目指すなかで心の支えだった恋人が子どもを欲しがり別れを選択したことを語るくだりはせつなかったです。キャリアを積む時期と出産適齢期が重なる問題、キャリアを積みたい女性にとって二者択一を迫られる現実、その選択は子どもを持つ持たないだけではなく様々な問題に派生し愛情関係の清算に及ぶこともある。
キラキラのミュージカルコメディ然とした作品ながら、こういうリアルな問題から目を背けていないのがこの作品に関わる人たちを信用できるなと思いました。

役者の性別と役の性別がちがってもいいよね?

マイケル/ドロシー(山崎育三郎さん)については、ふだん宝塚歌劇や歌舞伎を見ているので、役者の性別と役の性別がちがっても人気が出たならどんどんやればいいやん?って思いました。
(役柄にもよりますが新派の女形は女性の役者に混じっても素敵だと思います)
なので「女性から役を奪った」という理屈には頭が???となりました。じゃあ女性だったら誰が演じてもいいのかっていうと違うわけだし。
このあたりの感覚はアメリカのショービズの世界とはちがうのかなぁ。
ただ役者自身が自分の身体の性別を偽るのはダメだと思います。

女性として生きること

言えるのは、マイケルはしばしのあいだでも女性として生きたからこそ気づいたことがいろいろあったんだなということ。
男性として女役を演じたのだったらこの気づきはなかったと思います。
そこにこの作品の面白さがあるのだと思いました。
女装して女性として存在していると相手に寄り添った考え方ができたのに、素の男性にもどると相手に対する認知が歪むのが不思議だなぁと思いました。マイケルに限らずロン(エハラマサヒロさん)もマックス(おばたのお兄さん)もですが、男性でいると目の前の人の意思を無視して話をすすめるようになるのはどうしてだろうと思いました。3人とも男性像としては、ちょっとステレオタイプに描かれ過ぎなのかもしれませんが。

サンディの生きづらさ

サンディ(昆夏美さん)は混乱しているなぁと思います。
一度インプットしたら上書きができなくて人生が大変になってしまっているみたい。俳優になる夢も人生のパートナーも。とっくに「これじゃない」と判断を下す段階は過ぎていると思うのに。それができないことが彼女自身を生き難くさせているみたいだなぁ。
さいごにマイケル以外の男性の魅力に気づいたことで、世界の見え方が変わったかな? これまでの自分の人生を踏まえ肥やしにして、幸福だと思える人生を歩めるといいなぁと思いました。なぜか応援したくなるキャラでした。

こんなふうにショービズの世界のみならず、現代にリアルにある問題を考えさせられる脚本はいいなぁと思いました。
変にストレスを感じることもなくて、ストーリーに没入できたのが満足度の高さに直結した気がします。

CAST

マイケル・ドーシー/ドロシー・マイケルズ(山崎育三郎)
ジュリー・ニコルズ(愛希れいか)
サンディ・レスター(昆 夏美)
ジェフ・スレーター(金井勇太)
マックス・ヴァン・ホーン(おばたのお兄さん)
ロン・カーライル(エハラマサヒロ)
スタン・フィールズ(羽場裕一)
リタ・マーシャル(キムラ緑子)

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2024/02/03

怪盗紳士現る!

博多座にてミュージカル・ピカレスク「LUPIN~カリオストロ伯爵夫人の秘密~」の1月22日初日と24日マチネ、そして28日千穐楽を見てきました。

豪華なキャストとスタッフによるライトなエンタメ

華やかな出演者+小池修一郎×ドーヴ・アチアによる新作ミュージカル、果たしてどのような作品になるのかと思いましたが、豪華な演者とスタッフによる遊び心満載のライトなエンタメというかんじの作品でした。
名場面やあっという仕掛けがあるという訳ではなく、演者のパフォーマンスを愉しむ趣向で面白かったです。
「純潔」連呼とか女性参政権運動の描写などは感覚が古い気がしてどう受け止めたらよいのか戸惑うところもありました。

私は古川雄大さん目当てで見に行ったのですが、私が見たかった古川君とはちょっと違ったかな。ミステリアスなゴシック・ロマンス的な雰囲気を期待していたのです。ご本人はとても楽しそうに演じられていて、だんだんと見ている私も愉しくなりました。
ほかの演者の皆さんも楽しそうで、これはそういうところを面白がって見る作品なんだなと思いました。

真彩希帆さんのクラリス最高

劇中でいちばんツボだったのは、真彩希帆さん演じるクラリスです。
3階から躊躇なく飛び降りたり、自分をめぐって美男2人が戦うのを目を皿のようにして見物してたり、特段活躍したわけでもないのに「財宝は君のものだ」と言われたら遠慮なく受け取っているのも、挙動のいちいちがツボにはまってしまって、クラリスいいわぁと思いました。
なにより彼女には未来に目的があるのがいいなと思いました。夢を叶えるにはお金が必要なのです。
ロマンスを夢見たりもするけれど恋愛依存ではなくて、自ら責任のあるポジションに就いて自分の人生を歩んでいるのが凄く好きでした。
原作とはちがってこのクラリスなら長生きしそう!きっと幸せになりそう!と見ていて楽しくなりました。
どのみちルパンはアバンチュール(冒険)をやめられないのだから、クラリスも自分がやりたいことに夢中になるのがいいよねと。
真彩希帆さんの明るい個性が活きている役でした。もちろん歌は抜群。

柚希礼音さんと真風涼帆さんのカリオストロ伯爵夫人

カリオストロ伯爵夫人ことジョジーヌ役は柚希礼音さんと真風涼帆さんのWキャスト。
柚希ジョジーヌは博多座公演は初日の1回のみの出演でチケットが手に入るかドキドキでしたが、幸運なことに見ることができました。
スワローテールを翻してルパンと踊ったり、ドレス姿でルパンにタンゴを教えたりするミステリアスな悪女で、華と存在感が半端ないちえさん(柚希さん)にピッタリの役だなぁと思いました。柚希ジョジーヌを見終わった後は、同じ役を真風さんが演じるのが想像ができないなぁと思ったのですが、真風さんは真風さんでまったくタイプの異なる色香の漂う魅惑的なジョジーヌでした。
柚希ジョジーヌはモーションが大胆でどこにいても目を惹くセレブリティなかんじで、真風ジョジーヌはどの角度から見てもエレガントなマダムな雰囲気がありました。
なにより2人ともとても大部屋俳優には見えません。ゆえによくも化けおったなぁと思いました。才能ありすぎ笑。

立石俊樹さんのボーマニャン

「世界をこの手に」と歌ういかにも小池作品の悪役らしいボーマニャンは博多座では立石俊樹さんがシングルで演じていました。
キャスト発表の時にいちばん驚いたのがこのボーマニャン役のお2人(もう1人は黒羽麻璃央さん)でした。ルパンよりずっと年上なイメージがあるボーマニャンに若手俳優さんがキャスティングされていたので。
ですが舞台を見ていたらすでにルパンは怪盗紳士として世間に名を馳せている設定だったので(20歳そこそこの若造ではない)合点がいきました。
小池作品らしく、古川ルパンの美しき敵役がボーマニャンという設定なんだなと。
立石俊樹さんは去年の「エリザベート」のナルシスティックに悩めるルドルフ役がお似合いの役者さんという認識だったので、ボーマニャン役で躊躇のない悪役を活き活きと演じられていてさいしょはびっくりしました。
さらにどこから湧いて出たのか怪しい手下たち(黒鷲団)を率いて「俺はルシファー 神に見放された・・」と歌いだしたときは、どどどうした?!と頭がついていきませんでした。いきなりそんなあなた。いったい過去に何があったのかと彼の過去が気になりすぎて初見はその後のストーリーを見失いかけました。
全編を通してかなりクラリスに執着はあるのだけど、でもそれは恋とか愛情とかではなさそうで、ではなぜ?と私なりに考えた結論としては、自分が大好きゆえにクラリスが自分を選ばない現状が受け入れられないのではと。そのクラリスが選んだ相手であるがゆえにルパンに対する敵対心も強烈なのかなとも思いました。自分をないがしろにするルパン(認知のゆがみ)を叩きのめさないと生きていられないのかなと。
エギュイーユ・クルーズでの古川ルパンとの決闘シーンはとてもカッコよくて見入ってしまいました。うん、絶対にあるべきシーンだなとしみじみ思いました。古川雄大さんと立石俊樹さんがキャスティングされている意味をしっかりと回収していたなと。
ボーマニャンが行動してくれなかったらクラリスの愛よりアバンチュール(財宝発見と伯爵夫人の誘惑)に奔った挙句にまんまとしてやられて無様を晒すところだったルパン。歪で華やかな敵役として、主人公の面目を保つ役割を果たしたボーマニャンは最後まで良い仕事をしていたと思います。

加藤清史郎さんのイジドールと小西遼生さんのホームズ

イジドール・ボードルレ役の加藤清史郎さん、非の打ち所がない良い役者さんでびっくりでした。
歌も良いし間も良いしセリフも明瞭だしすばしっこい身のこなしも・・ホームズ役の小西遼生さんとガニマール警部役の勝矢さんとの連係プレーもいつも面白くて信頼を寄せて見ることができる役者さんに出遭ったなぁと脳内メモリに記録しました。
小西遼生さん演じるシャーロック・ホームズは、ルパンシリーズに出てくるホームズ(ショルメ)よりかはドイルの原作に近い気がします。ベーカー街221Bのワトソンに電報を打っていたりしてましたしコカイン常用など本家のホームズに通じる符号が。自分を出し抜く悪女に惹かれるところも本家ホームズっぽいかなぁと思いました。
でもおマヌケなかんじは本家とは別物で、いつのまにかイジドール君とコンビとなっていて面白かったです。ルパンを永遠のライバルと見做して自らの女装についてもルパンとのクオリティの差を検証しているところとかも小西さんがいい味を付けていてくすりとさせられました。
クラリスとルパンの愛の抱擁を阻む自分勝手な決闘宣言も、クラリスといっしょに『え?』となりました笑。でもたしかに見たいルパン対ホームズ笑。本家ではボクシングにフェンシングの名手で日本武術にも通じているし、ルパンもボクシングと日本武術の使い手ですしね。
ルパンが主役だから勝利はルパンのはずと見ていたら、いいかんじに投げ飛ばされて・・大団円への布石、古に張られた仕掛けを回収という超重要な役割を果たすんですね。毎回ちゃんとあの位置に飛ばされるの凄いなぁと感心しました。

古川雄大さんのアルセーヌ・ルパン

古川雄大さんのルパン、登場は腰の曲がった考古学者のマシバン博士で声もおじいさん、デティーグ男爵家の夜会ではアメリカ帰りの実業家ヴァルメラで若干声が高めなキザ男、アジトでの本名のラウール・ダンドレジーの時はピュアな青年のよう、赤毛の新聞記者のエミールは腕まくりのあまり冴えない風貌で、カンカンダンサーのアネットの時は声もうんと高くてしぐさも可愛い女の子になりきり、そして伯爵夫人の誘惑をためらいもなく受け入れるアルセーヌ・ルパンといくつもの顔を見せていました。
母親のアンリエットのような清廉な令嬢タイプを前にした時だけ、クラリスが感じた少年のような純粋な人格が顔を出すのかも。とはいえアルセーヌ・ルパンの人格でいる時間の方が長いし、それ以外のさまざまな人格にも変貌してしまうし、ラウールでいる時間はほんのつかの間のような・・。
このルパンとクラリスが今後もおつきあいするなら、そのつかの間を愛して、それ以外の時は自分がやりたいことに夢中になっていたほうがクラリスらしくいられるよ、とおせっかいなことを思いました。
ルパンもきっとそんなクラリスが好きだよねと。アバンチュール(冒険)は絶対にやめられそうにないから。
クラリスもルパンの女装にすこぶる協力的だったり(彼が歌えないキーを舞台裏で歌ってあげてるし)、面白いことには前のめりですよね笑。ルパンの冒険譚も面白がって聞いていそう。悲劇が似合わない2人でとても素敵だなと思いました。

その他キャストと千穐楽カーテンコール

そういえば、フレンチカンカンの場面、女性参政権運動のご婦人方とフレンチカンカンのメンバーを合わせると女性キャストの人数が足りなくない??と不思議に思っていたところ、カンカンに男性キャストも混じってる??と気づいたのですが、女性参政権運動のご婦人方にも男性キャストが混じっていたんですね。いやちょっとそんな気配は感じていたのですが・・汗。
カッコイイ黒鷲団にも女性がいて、皆さんなんでもできて素敵だなと思いました。
そして20世紀騎士団は良いお声の持ち主にしかボーマニャンさんの入団許可がおりないのかなと。秘密のお話のはずなのに皆さん声が通り過ぎ・・笑。

千穐楽のカーテンコールでは最初から客席スタオベで、挨拶が長くなることを見越して古川君が着席を促したら、その横でぺたんと舞台上に座ってニコニコ古川君を見上げていた真彩希帆さんと小西遼生さんが可愛かったです笑。こんなお茶目ができる雰囲気のカンパニーなんだなぁと思いました。
そして千穐楽の1月28日はクラリスのパパ、デティーグ男爵役の宮川浩さんのお誕生日で還暦を迎えられたそうで、カーテンコールでは舞台と客席の皆でバースデーソングを歌いました。
宮川さんが帝劇の舞台に初めて立ったのが36年前、古川君が生まれた年だそうです。今年生まれた子が帝劇の舞台に立つまで自分も舞台に立ち続けると古川君が決意表明をされていました。
そんな古川君曰く『エモい』お話の流れから急に話しを振られた立石君、宮川さんへの思いをしっかりとお話されてて古川君的には苦笑だったようでした。(突然だから辞退されると予想されていたようです)
古川君のツッコミもよくわかってないようで場を『かっさらって』いた立石君、さすがだなぁと微笑ましかったです。舞台ではあんなに闇落ちしているボーマニャンを演じていた彼の素の雰囲気、そして宮川さんへの思いを知れて個人的には嬉しかったです。
こんなに和気あいあいとしたカンパニーで何か月も過ごして来られたのだなぁと思いました。

博多座の後は公演最終地で古川君の故郷でもある長野での公演が控えています。
公演日程発表時には長野公演に行く計画も立てたのですが、あれよと言う間に完売で諦めました。(真冬の公演でなければもっと真剣に計画したのに・・と思っていましたが長野公演千穐楽の配信が発表されて良かったです)
佳き大千穐楽を迎えられますように。

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2023/12/19

未来と引き換えに今を得たんだ

12月13日と14日に東京芸術劇場プレイハウスにてフレンチロックミュージカル「赤と黒」を見てきました。
今回は2泊3日で3演目の観劇旅行でしたので駆け足で感想を残しておこうと思います。

このフレンチロックミュージカル「赤と黒」は、主人公のジュリアンの生い立ちには触れられず、ナポレオンについてや世情についてもざっくりとしか言及されていないので、セリフや演者の表現からそれらを感じ理解していくことになるのですが、今回見た梅芸版ではジュリアンのセリフの中にあった「身の程知らず」という言葉がすべてに繋がっているようだと思いました。

ジュリアンはこの「身の程知らず」という言葉を幼い頃から何百回と言われて来たのではないかなぁと思いました。
本を読んでいるのが見つかった時、ラテン語を学んでいるのを知られた時、ふと憧れを口にした時、なにかに立ち向かおうとした時、等々。
なにをしても「身の程知らず」という罵倒がついてまわるそういう生い立ちを背負っている青年なんだなぁと。
それゆえ口を噤んで野心は心の奥底に秘め、注意深くそして誇り高く生きているんだなぁと思いました。
「身の程知らず」が原動力でもあるのかなと。それを実行していくことが。

町長家の家庭教師になること、町長夫人ルイーズと恋愛関係になること、由緒ある侯爵家の秘書となること、高慢な侯爵令嬢マチルドと恋愛関係になること・・ジュリアンにとってはどれもが「身の程知らず」な行いになるかと思います。これらのみならずジュリアンにとっては望むことすべて、生きることすべてが「身の程知らず」と思えるのかもとも思います。

そんなジュリアンが成し遂げた最高の「身の程知らず」が、真実ルイーズから愛されたという実感なのでは、と思いました。
騎士(シュヴァリエ)の称号を与えられ貴族に連なりラ・モール侯爵家の一員としてそののちも地位を上り詰め権力を手にすることのほうがよほど「身の程知らず」な野心に思えますが、ジュリアンにとってはそれと同等かそれ以上に「真実愛される」ということに価値があったのかなぁと、独房を訪ねてきたルイーズとの美しいシーンを見ていて思いました。
愛されなかった子どもが、いまこの瞬間満たされたのだなぁと。

ラストシーンは納得のようなせつなさのようななんともいえない感情を味わいつつ、作品全体から、いまもなお「身の程知らず」という概念が存在する世界への若い人の憤りのようなものも感じました。
それがこの梅芸版からうけた独自の印象でした。

東京芸術劇場プレイハウスに行くまで

フレンチロックミュージカル版の「赤と黒」は、礼真琴さん主演の宝塚歌劇星組版Blu-rayをお買い上げしてしまうくらいその楽曲が好きだったので、梅芸版の上演が発表され主演のジュリアン・ソレル役が三浦宏規さんと知ってこれはなんとしても見に行きたいなと思いました。
公演日程を確認すると梅田芸術劇場ドラマシティ公演が1月3日~9日。東京芸術劇場プレイハウス公演が12月8日~27日。
常なら関西公演に行くところですが、お正月休みは家族の帰省に対応しなくてはいけないし、お正月休み明けは有給も取りにくいので無理。
ということで、12月に人生初の東京芸術劇場に行く決意をしました。

蛇足ながら池袋は20年以上まえにサンシャインシティの某同人誌即売会に行ったのと3年前にヅカ友さんに某元ジェンヌさんのコラボカフェに連れて行ってもらったことがある程度という極めて不案内な状態でした。
池袋駅の改札を出てふと、3年前に案内してくださった方が「西口にあるのが東武百貨店、東口にあるのが西武百貨店」とおっしゃっていたことを思い出したことが、本当に役に立ちましたです涙。
あれがなかったら見当違いの方向に進んでいたかも。
ひたすら「TOBU」というロゴを横目に見て自分を励ましながら地下通路を進んで無事に劇場にたどり着くことができました。

演出他について

私にとってフレンチロックミュージカルの愉しみは、心躍る楽曲とそれを活かすヴォーカルとダンスのパフォーマンスです。
その点で礼真琴さんは最高。
そして三浦宏規さんもその歌唱力としなやかなダンスパフォーマンスできっと満足させてくれるにちがいない!と期待でいっぱいで観劇しました。

13日のソワレは席が1階前方の超端っこ。隣の席には布が掛けられていました。(見切れになるからかな?)
スピーカーが近いせいか音のバランスが悪くて、いまいち気持ちがのれませんでした。(心臓が圧迫されるような圧が・・)
ていうか三浦宏規さんの登場が思ったよりも少ない??
脳裏に宝塚版が残り過ぎて、自分で勝手に盛り上がろうとしたところで逸らされてしまう感覚に「え?」っとなってしまったりというのもあります。
演出がちがうのだから盛り上げる箇所がちがうのも当然なんですけど、初見はそれに適応できずもっと楽しめるはずなのにおかしいな?と不全感に陥ってしまっていたみたいです。

14日はとちり席のセンター。これはもう最高でした。
我ながら現金ですが前日の感想撤回でとても楽しめました。
音のバランスもよかったですし、アンサンブルの方たちのダンスパフォーマンスもそのセンターで踊る三浦宏規さんも正面から見るとその凄さがよくわかりました。
メインキャストが舞台中央の扉から登場してパフォーマンスがはじまる演出が多いので前日はそれが見えていなかったのだということに気づきました。
やはり何にも勝るセンター席です。
前日に一度観劇しており宝塚版との違いを体験できていたことも大きいのかもしれません。

宝塚版と梅芸版を両方見たうえで思うのは、宝塚版はキャラクターを象徴的にわかりやすく強調していたのだなということ、舞台美術や演出も上下奥行きを存分に使いダイナミックに派手にしていたのだなということです。
年齢層の偏った女性だけで演じる舞台なので美術、装置、衣装、メイクで演者を盛ることが求められるからだと思います。(宝塚ならではの裏方さんの力が不可欠)

対して梅芸版は舞台美術もシックでシンプル、衣装も落ち着いた色合いのコートやドレスで、自身の演技力で勝負する役者さんを引き立てるようになっているのだなと思いました。
シックだった壁がダンスパフォーマンスになると瞬間で深紅に変わったり、マチルドのキュートなドレスが彼女の動きでウエストあたりの素肌が見えたりと、細かな部分の意匠がキャラクターやパフォーマンスを光らせるのが素敵でした。
敬虔なレナール夫人の人柄を表現したような質素なドレスも夢咲ねねさんのスタイルの良さを引き立たせて見惚れる美しさで作品の上で納得でした。ジュリアンが知らず知らず惹かれ、ヴァルノ氏が羨みレナール氏が自慢に思う夫人なんだなぁと。

歴戦の巧者を集めたキャスト陣なので皆さん1人で場面を持たせられるし動かせる。役者さん自身のキャラクターもとても濃くて芝居部分はストプレを見ているようでした。
と思っていると内心を吐露するロックナンバーのヴォーカルがはじまる・・という感じで初見はそれも世界観に没入し難かった理由かもと思います。
方向性が見えなくて自分だけ置いて行かれたような心地になってしまったのかなとも思います。しかしその方向がわかって見ると個々のエネルギーの凄さとその集合体の素晴らしさに心躍りました。

まったくの私の主観ですけども、13日ソワレと14日マチネでは客席の雰囲気も異なっていた気がします。その雰囲気を察知する能力に長けた役者さんが13日ソワレは客席の反応を呼び起こすためにちょっとばかりやり過ぎなところがあったのではないかなと、14日マチネのすべてが転がるように滑らかに物語世界に引き込まれる舞台を見て思いました。

CAST

三浦宏規(ジュリアン・ソレル) あの愚直で熱い「キングダム」の信だった人とは思えないほどすっとしていて大人しそうで、でも内になにを秘めているかわからない複雑な雰囲気を醸し出すジュリアンでした。(体型まで変わった??) 打って変わって抑えていた思いを爆発させる歌とダンスでは熱い内面の葛藤を激しく表現していて心奪われました。もっと歌って踊ってほしかったなと。
夢咲ねね(ルイーズ・ド・レナール) 一見敬虔そうでお淑やかな中流階級のお手本みたいな女性っぽいけれど内には激しい面も持ち合わせているのがよくわかるレナール夫人でした。密告書を全否定でバシバシとレナール氏に指示する場面が好きでした。シンプルなドレスの立ち姿や身のこなしの繊細さはさすが。獄中のジュリアンとのキスはキラキラの粉が舞い落ちていました。
田村芽実(マチルド・ド・ラ・モール) 2幕冒頭の可愛いのにお下品な顔芸のダンスパフォーマンスがとっても好きでした。ジュリアンが窓から入ってくる時の「コケるとこだった」「コケてたじゃない」は毎回?アドリブ?プライドは高いけれど不安定な心が痛々しくていいなぁ。この公演にはなかったけれど処刑されたジュリアンの首を抱えて接吻するシーンも見てみたかったです。終演後に若い観客の方が「めいめい、また幸せになれなかったね」と話していらして「うんうん、ほんとに」と思いました。
東山光明(ムッシュー・ド・レナール) ブルジョワ(中流階級)の滑稽さと悲哀を象徴するとてもスノッブな人物でした。でも小説(舞台)じゃなかったらそんなに侮られる人物じゃないだろうになぁ。名士であるために努力してて、それが家族の幸せにつながっているのだし、現実を生き抜くって大変なことだよねぇと彼なりの思いを歌うナンバーに「うんうんわかるよ」と思いながら聞きました。原作者に意地悪されている人だなぁと思いました。
川口竜也(ラ・モール侯爵) ラ・モール侯爵とマチルドを見てマチルドは「父の娘」なんだなぁとつくづく思いました。「パパみたいになりたい」シシィのように。父の価値観を内含し、よりそれを尖らせていく娘。それによって父を喜ばせ父に可愛がられ自尊心を満足させるもその「蜜月」は永遠には続かず、世間的に結婚させようとする父親に戸惑う。父が尊ぶ価値観に沿って俗物たちを見下して永遠に愛されていたいのにそこから切り離そうとする父への失望と抵抗、いら立ちが2幕冒頭のマチルドの尊大な態度なんだろうなぁと。それを甘やかす父ラ・モール侯爵。もうねーと思いました。そんな父が誉めるジュリアンに関心がいくのは当然。娘が自分から離れていくことを嘆いていたけれど、違う違う裏切ったのはそちらが先ーと思いました。いかにも娘に愛されそうな無自覚に罪深いパパでした。
東山義久(ジェロニモ) あやしい、踊るとカッコイイ、妙な存在感のジェロニモさん。客席とのやりとりも担当。2幕のはじまり、14日マチネはお客さんの反応がよくて嬉しそうに見えました笑。もっとジュリアンと絡むのかなと思っていましたがそうでもなかった? 神学校のくだりがないので、パリで著名なジェロニモさんがジュリアンをラ・モール侯爵に紹介する役割なんですね。飄々としているけれどジュリアンの立場をいちばん理解している人なのかな。ジュリアンの死、ジュリアンの生き方に感銘を受けてもいるように思いました。そしてどう思うかと観客につきつけてもいる・・。
駒田一(ムッシュー・ヴァルノ) テナルディエだ。いやいやヴァルノさんだ。あ、テナルディエ。ちがうヴァルノさん。を心の中で何回も繰り返してしまいました笑。ジュリアンの運命を狂わせる策謀家なんだけど悪者とまでは言えないのかなぁ。嫌なやつではあるけれど。おそらくブルボン朝~フランス革命~ナポレオン時代~王政復古~ナポレオンの百日天下~第二次王政復古と怒涛のような時代を生き抜いている人だからこそ、自分の才能や立場を鑑みてなりふり構わず足掻かなくては生き残れないと悟っているのかな。ヴァルノ夫人(遠藤瑠美子さん)とのナンバーがなかなか難曲そうでしたが流石でした。

エリザ役の池尻香波さんもとても気になりました。これから活躍される方なのかな。

思い切ってはじめての東京芸術劇場まで出かけてよかったなぁと満足の観劇となりました。

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2023/07/23

これはチャンス。

6月24日にキャナルシティ劇場にてミュージカル「ファクトリー・ガールズ」を見てきました。

出演者の1人1人が素晴らしくて脚本もナンバーも良くて作品ファンになりました。
いつかまた再演される時があれば見てみたいと思います。
その時自分自身がどう思うかも含めて関心があります。

サラたち女性の工場労働者が言っていることもとても頷けましたし、サラたちのラディカルな思想と行動がこれまで自分が地道に活動してやっと得た賛同者とのあいだに軋轢を生むのではないかと懸念し葛藤するハリエットの気持ちもわかります。

企業や政治家のイメージアップのために女性の自己表現を利用し、しかし根本的には女性差別を利用している経営者と政治家は、サラたちが核心を突きだすとその口を塞ぐために卑劣な画策をはじめる。
彼らが漏らす残酷な本音や彼女たちの葛藤の一つ一つが今日もなおあるあるで膝を打ちたくなりました。

彼女たちよりも上の世代の女性(ラーコム夫人)の存在がまた綿々とつづく問題の根深さを浮き彫りにしていたと思います。
サラたちの思いを理解し背中を押してもいたのに、経営者や政治家に真っ向から立ち向かうとなるととたんに止めさせようと必死になる。そんなことをしたらどんな酷い目に遭わされるか、女性として長く生きた分その結果が容易に想像できてしまうから。惨い現実を身をもって知っているからこその葛藤と行動だと胸が詰りました。

家族からの性的虐待を受けていた女性の描き方にしても1つの典型に囚われず、心を開けず神経症的になる人も逆に性的魅力を利用して上昇していこうとする人も登場するのが凄いなぁと思いました。
本当にエピソードや人物の行動に無駄がなく意味があり効果的に描かれていて心のうちで唸るばかりでした。

舞台が1840年代前半ということにも驚きがありました。
シシィ(エリザベート)はまだバイエルンで父マックス公爵と大道芸人の真似事をして戯れていた頃。
フランスはシャルル10世(アルトワ伯)が1830年の7月革命で退位してブルジョワジーが推すルイ・オルレアンが王位に就いていた7月王政時代。
イタリア統一運動をはじめヨーロッパ各地で1848年革命が起きる前夜で、どこも国情が不安定な時代。

新しい概念が生まれて「民衆」「国民」が主体的に生きる自覚をもった時代だと頭で理解しているつもりでしたが、こうして目の前で肉声でその体温ある身体で感情を込めて表現されてはじめて自分に降りてくるものがあり、その感覚はなんとも言えないものでした。

歴史というと国政やそれに関わった有名な人のことを学ぶことはありますが、そこに生きる人々ことはなかなか考えることはなかったなぁと。
サラたちのように自分の人生を生きて芽生えた疑問に向きあい、行きついた信念を胸にいま在る問題を変えるために立ち上がった人々のこと。その1人ひとりに物語があったのだということを。

長い歴史の中で綿々とつづいてきた不平等さは問題が根深いゆえに彼女たちが起こした行動で一気に覆ったわけではないけれど、サラやサラと一緒に行動した彼女たちの一歩があったからこその今日なのだということ。現代の私たちにはあたりまえに取り除かれている苦しみを受け、抗ってくれた先人がいてくれたからこその今なのだということ(そんな勇敢な彼女たちは舞台となったマサチューセッツ州ローウェルだけではなくて世界のいたるところに居たのだということも)に思いを巡らせてそのことを噛みしめ、いま在る先人からの恩恵を易々と手放すわけにはいかないと思いました。

舞台と同年代にはヨーロッパをジャガイモ疫病菌が襲い、それがアイルランドに悲惨な大飢饉をもたらしたそうです。アイルランドからアメリカへの移民が増加したのもこの頃で。
劇中でも女性たちとともにアイルランド系の労働者が半分の賃金で酷使されていました。そういうことも織り込まれていることにあっと目が覚めるようでした。

ちなみに日本は天保年間。大飢饉から一揆や乱が起き、天保の改革による綱紀粛正と奢侈禁止でエンタメ(芝居小屋や寄席など)が厳しく取り締まられていた時代。
そんなことにも思いを致すとますます大切にしたいものはなにかを、それを守るために進んではいけない道はと考えさせられます。


観劇して感想を書きかけてから数週間経ってしまいいまさら続きを書くのもと躊躇いましたが、いつかまたこの作品を観劇した時に過去の自分が何を思ったかわかるように残しておこうと思いました。

<CAST>

サラ・バグリー(柚希礼音)
ハリエット・ファーリー(ソニン)
アビゲイル(実咲凜音)
ルーシー・ラーコム(清水くるみ)
マーシャ(平野綾)

ベンジャミン・カーティス(水田航生)
シェイマス(寺西拓人)
ヘプサベス(松原凜子)
グレイディーズ(谷口ゆうな)
フローリア(能條愛未)
アボット・ローレンス(原田優一)
ウィリアム・スクーラー(戸井勝海)
ラーコム夫人/オールドルーシー(春風ひとみ)

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2023/06/03

グッナイ誰かさん。

5月28日に博多座にてミュージカル「ザ・ミュージック・マン」を見てきました。

初めて見たはずだけど知ってる。そんなストーリーでした。
映画を見たことがあるのか翻案のなにかを見たことがあるのか。
閉塞感漂う田舎町に胡散臭い来訪者が滞在して町の雰囲気が好転するというストーリーに既視感があるのか。
騙る男とお堅い女性のロマンスも最近なんども見ている気がします。

1957年の初演当時「ウエストサイドストーリー」よりも多くの演劇賞を受賞したという作品紹介に期待したのだけど、そっかそうだよね。
胸を抉る社会派バッドエンドより皆が笑顔のハッピーエンドが多くの人に支持されたのね。
純朴で保守的なアメリカの物語に安心したい人たちに。
でもこれをハッピーエンドと思ってよいのか私には疑問でした。

主人公にしつこくつき纏われるヒロインが気の毒だったし、怒ると揶揄されるのもなんだかなだったし。
なにが目的かもわからない男性が娘のまわりをうろついているのを喜ぶ母親とか地獄だなと思いました。娘を早く結婚させたい、男と名の付くものと伴侶にさせたい、それがあるべき姿だと信じているらしくて。

南部が舞台の物語だと娘の親は相手の男性の属性や資産にこだわる印象があったのですが、このヒロインの母親にはそれが微塵もなくて、むしろそれが恐ろしくもありました。慎ましく夫や家族に愛情を尽くし結婚がもたらす苦労を受け容れそこに喜びを見出すのがあるべき姿だと信じているようで。とてもピューリタン的といいますか、アイオワ(中西部)が物語の舞台というのも関係があるのでしょうか。(劇中で母親はアイルランド系だと言っているのでカトリックかもしれないのだけど)。

まだ10歳くらいの少女でさえも自分に相応しい相手を狭い町の中で見繕って行動しているのもなんというかぞわぞわしました。「おやすみなさいを言う相手」がいないかもしれない未来を仮想して嘆いてみたり。
独身の女性は不幸だと小さいうちから刷り込まれているのだなぁ。そしてそんな町なのだなぁと。
それを前提にして見ていかないといけないのかと、物語の最初から気持ちが暗澹としてしまいました。

若い娘の関心事はいつプロポーズされるかで、既婚女性の娯楽は噂話。ヒロインが小説を読むことさえ不品行だと非難されるコミュニティ。
そんな狭くて閉塞感のある町で26歳で未婚のヒロインは変わり者と思われているし噂に尾ひれがついて不適切な過去があるとも囁かれている。
見ているだけで具合が悪くなりそうな世界観。
そういうところに風刺を込めて演出することも可能なのに、ふんわりで終わらせている。ヒロインが「まだ未婚」なことや別のキャラクターの恐妻ぶりで笑いが起きていることからしても、むしろその価値観を受容した上で見せているのだなと思いました。
だからこそ、ヒロインが主人公を受け容れたことがハッピーエンドだと受け止められるのだと思いました。
ヒロインが主体的に主人公に惹かれて愛していく様を描くこともできるはずなのに(途中でベクトルの方向が逆になっていくともっと楽しそうなのに)中途半端な気がして残念でした。

不寛容で閉塞感漂う町を図らずも詐欺師の主人公が変えていくというストーリーなのだけども。
変わったようで変わっていないんじゃないかなと見終わって思いました。
マーチングバンドを手に入れていまは活気づいたけれど価値観はそのままで。
主人公さえも取り込んで、町は元に戻っていきそう。そんな怖さを感じました。
詐欺に遭ったのは私かもとそんなもやもやが残りました。


ハロルド・ヒル教授(坂本昌行)
プレゼン能力が高くて人々に夢を見せるのが巧い。まさに夢を売る男。その夢の対価として相応しい金額ならこれはこれでOKなんじゃない?と思いました。いままで彼が嫌われてきたのは夢が最高潮に達した時にトンヅラ、売り逃げしていたからですよね。それらしい指導者を招聘できていたらこれは成功するビジネスモデルでは。
むしろこんな才能のある彼がこれまで詐欺をやっていたことが気になりました。きっかけとか動機とか。坂本さん演じるヒル教授は根っからの悪人には見えないのでなにか過去がありそうで、それを知りたく思いました。
約10年ぶりに見た坂本昌行さん、肩ひじ張らず自然体で主役なのが素敵。声が良くてセリフが聞きやすくて難しい歌もするっと歌えていまここに生きている人という感じでした。
とても真摯なものを感じさせる方で、この人が悪い人のはずがない絶対トンヅラなんてできるはずがないと思って見ていました。詐欺をしていたのは彼の方なのに、町に残った彼を糾弾する町の人々のほうが邪悪にすら思えた不思議。(彼に肩入れして見ていたからかな)

マリアン・パル―(花乃まりあ)
凛として透明感があって素敵な女性。彼女の価値観や生きる姿勢が周囲に理解されないのが気の毒で胸が痛みました。
詐欺を働く男性と譲れない理想がある女性。そんな2人が相手に何を見出したのかそこがわからず仕舞いだったのが残念だったなぁ。
ヒル教授の正体を暴こうとするカウエルを阻止しようとする場面、それまでのお堅い雰囲気からいきなりコミカルになるところが好きでした。(ちょっとWMWのエマを思い出してしまいニヤケました)
10年前博多座で「銀河英雄伝説」のユリアン役ではじめて知った花乃まりあさんをまた博多座で見ることができてうれしかったです。(あのときの美少年がこんなに素敵なヒロインに)

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2023/05/15

恩恵は次の者へ。

4月17日と21日に博多座にて舞台「キングダム」を見てきました。
すべてが「本気」で目を瞠る舞台でした。

「キングダム」は家族がアニメを見ているのをながらで聴いていたくらいの認識しかありません。
ずっと戦っているなーとかオウキ将軍は面白いしゃべり方をするなーとか途中でこれは秦の始皇帝がモデル?と気づいたり、その程度でした。
勇ましいことを言って命が何個あっても足りなそうとか。
(音声だけでしたので、さいしょのうちは別のアニメと区別がついていなかったかもと思います)
そんな中でもセイの邯鄲脱出のくだりやセイの母親のくだりなどは耳をそばだてた覚えがあります。
仲間のキャラクターが女の子なのを主人公だけが知らなかった話も、いま思えばキングダムだったんだなと思います。

その程度の知識しかないのに観劇しようと思った動機はキャストです。
人からびっくりされるほど若手俳優さんに疎いのですが、信役の三浦宏規さんは「ヘアスプレー」や「千と千尋の神隠し」でお芝居の間が気持ちよくて体の使い方がきれいな人だなぁという印象で、この方が主役なら見応えがあるのではと。
宝塚退団後の華優希さんや美弥るりかさんの活躍も見たいし、早乙女友貴さんも凄そう。
それに山口祐一郎さんの王騎って・・?という興味本位でした。

そんな状態ではありましたが、見たいキャストの日を選んでチケットを申し込みました。
(顔覚えがすこぶる悪いので、初めて見る作品は登場人物把握のためできるだけ知っている役者さんで見たいのです)
その後貸切公演を1公演追加で申し込みをしたのですが、確認するとほぼ同じキャストの回でした。
2回見るなら未知の役者さんでも大丈夫だったなぁ違うキャストも見たかったなぁなんて後の祭りです。

一抹の不安も覚えながらの初見でしたが、皆さんキャラ立ちが凄くて見分けがつかないなんてことはまったくの杞憂でした。
とにかく圧巻のパフォーマンス。登場人物それぞれの立場も状況もよくわかる脚本で集中して見ていたらあっという間に1幕が終わりました。
夥しい情報量なのにわかりやすいのが凄いなと。セリフ1つにも、そのキャラの一貫した思いや個性が織り込まれていて、そうそう信ってこういう人だよね、政ってこういうものを背負った人だよねとあらためて理解することができました。

そしてなにより役者の皆さんの表現力が素晴らしい。
身体表現、声。丁々発止の絶妙な間。舞台上で生きる人々が作り上げる空気に劇場全体が支配され息をのむ観劇体験となりました。

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2023/03/19

いまのおぬしとたたかうために。

3月18日に博多座にて「巌流島」を見てきました。

理屈っぽいチャンバラという印象でした。
武蔵と小次郎を戦わせるために設定を考え理屈を考えましたというかんじ。
最初から最後までボーイズクラブの理屈だなと。

社会性がなくこだわりの強い人物が主人公という昭和の任侠もののようなテイストで。
親も子も妻も存在せず自分の好きなことだけに打ち込むことができる世界。ある種の理想なのかな。
友か敵かの関係性。ホモソーシャル全開。男の絆バンザイの世界観。
ナルシシズムと自己満足。
そういったものが描かれていると思いました。

キャストのなかで唯一女性の凰稀かなめさんが2役で女性の役を演じていましたが、男たちの思想を肯定するために存在する役でがっかりしました。

セリフと殺陣で劇場空間を支配する横浜流星さんをはじめとする役者さんたちの能力は凄まじいなと思いましたが、それから舞台セットの代わりの映像も面白く全国のいろんなホールを回るのにこれはいいなぁと思いましたが、脚本的にはあまり語りたい舞台ではありませんでした。


<CAST>  (2023/03/20更新)

横浜流星(宮本武蔵)  侍らわぬ者。自己問答に周囲を巻き込む華が見事。リアル武芸者でした。
中村隼人(佐々木小次郎)侍らう者になろうとしてならない道を選んだ人。口跡とイントネーションが歌舞伎の人だなと思いました。スローモーションの殺陣が美しかったです。
猪野広樹(辰蔵) 自らの主を自らで選ぶ人。
荒井敦史(甲子松) どこにいても己が生きるべきスキマをみつける目敏さのある人。
田村心(伊都也) 己の良心に従う人。愛されて育った人なんだろうと思いました。
岐洲匠(英卯之助) 最終的に侍らうことに己の生き方を定めた人。つねに自分の美学を探している人のようでした。
押田岳(捨吉) 愛すべき可愛い人でした。ヒロイン的存在。
宇野結也(水澤伊兵衛) 静かな人かと思ったら実は怖い人でした。
俊藤光利(秋山玄斎/和尚) 俗で荒々しい野武士と仏に仕える和尚の物腰、同じ人とは気づきませんでした。
横山一敏(弥太右衛門/柳生宗矩) 宗矩の言葉に肯けました。
山口馬木也(藤井監物) 大変な食わせ者でした。
凰稀かなめ(おちさ/おくに) 人としての描かれ方がなおざりな気がしました。もっと葛藤を見たかったです。
才川コージ(望月甚太夫/大瀬戸隼人) 凄い跳躍を見た気がします。
武本悠佑(辻風一之進/細川忠利) きれいなお顔に思わず二度見してしまいました。

上川隆也  語り

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2023/03/15

よか夢見んしゃい (and all you've got to do is dream)

3月14日に博多座にてミュージカル「DREAMGIRLS」を見てきました。

とにかく聴かせる作品、ハイレベルの歌唱力をもったパフォーマーたちによるパワフルでソウルフルな舞台でした。冒頭からセリフの一声の張りも凄くて思わず笑ってしまい期待が高まりました。
チアフルなステージナンバーからバックステージの言い争いの歌へと自然に、迫力の歌声はそのままで繋がっていくところなど凄かったです。
劇中ナンバーでは「Steppin' To The Bad Side」のノリが好きでした。

ストーリー的にはエピソード不足かなと思いました。それを補うためにか言葉攻めみたいになっている箇所がいくつかあったのが可笑しかったです。
ジミーがドラッグをやっていたというのも告白で初めて知ったし。
エフィの体調不良の理由も見終わってからあれってそうだったの?と。
ディーナがエフィに電話しようとしていたのも知らなかったよーだったし。だからラストでどんな気持ちでエフィと向かい合っているのかドキドキしました。
デビュー前からのメンバー3人の繋がりとか、エフィがディーナと仲違いする理由とか、和解に至るところとかの脚本的書き込みがもっとあると感動的なんだろうなと思うけど、ミュージカルナンバーの披露に重きを置いているので仕方がないのかな。
1幕終演後にお隣の方が涙を流していらして、曰く映画を見ているのでエフィの気持ちを思うと涙が出てしまったとのことでした。

最初のオーディションの時からエフィの歌声がR&Bに向いているパワフルで深みのある声なのがわかって、彼女がセンターなのも彼女がイニシアティブをとるのも(みんなが彼女の顔色をうかがうのも)理解できました。
そういうところからも、セリフよりパフォーマンスで客席を納得させる方向なのかなと。

グループのデビューにあたってカーティスがディーナをセンターにすると決めたという流れの時は、大丈夫かな?と思ったのですが、それまで地味に見えていたディーナなのに、センターで歌うとさすがの真ん中力だったのでたしかにセンターに立つべき人だったよねとそれも納得。
歌うときのふとしたキメとかちょっと腕を動かすだけでも華がありましたし、撮影シーンのスター仕草もさすがでした。個人的には背中の開いたドレスのバックスタイルがたいそう素敵で好きでした。
雰囲気もうちょっとセクシーでもいいのかなぁと思うけれど、ちょっとでも過剰になるとちがうキャラになりそうで作品にも影響してしまうから難しいのかな。

さらに万事控えめで和やかなローレルが唯一感情的に歌うソロナンバーも見せ場でした。
感情を表す声色も自由自在で、彼女が決して数合わせの3人目ではないということがわかる大切な場面だと思いました。

ドリームズのメンバーはもちろん、これだけの実力のあるメンバーが揃ってポップでソウルフルなナンバーを聴かせてくれる贅沢な時間だったなと思います。

物語の舞台は1960年代~70年代のアメリカ。
アフリカ系アメリカ人による音楽はR&Bチャートで上位に入っても全米ヒットチャートには入らない時代。
でもその曲が白人アーティストにカバーされると全米でヒットするなんてザラ。
それが悔しいカーティスは自分たちが作り自分たちが歌ったナンバーが全米チャートに入ることを夢見てディーナたちのガールズ・グループ「ドリームズ」をプロデュースする。
彼よりも前の世代の音楽マネージャーのマーティはそんなことは無理だ、長くやっていればわかるはずだと首を縦に振らない。それくらい根深く骨身に染みていることなんだとわかります。

もちろんいままで通りのやり方では無理で、相手が自分たちの音楽をパクるならその上をいってやるとばかりにあらゆる音楽番組のDJたちに自分たちの曲を流すように促す。
それって買収してるってことですよね。
そもそもディーナたちがオーディションに遅れた時も、ジミーのバックコーラスに着ける時も、カーティスが懐からチップを取り出して意を通していたから、そういうことをやる人なのはわかります。
でもどこまでがOKでどこからがNGなんだろう。やりすぎなかった者が生き残るってことなのかな。

そもそも売れるも売れないもプロデューサー次第ってことか。
運よくやり手のプロデューサーと巡り合えるかがすべての分け目なんだなぁ。
彼女たちはそれにうまく乗せられただけになってない?
意に沿わない者は爪弾きにすればそれでいいの?(不必要にエフィをわからず屋に描いていない?)

子どもっぽさ未熟さを売りにする本邦のアイドル商法にもげんなりするけど、見かけは大人っぽくても中身はまだ未熟な10代の女性に「キミは大人だ」と自己決定権を与えたふりをして大人の意のままに動かすやり方もどうなの?と思いました。(「うたかたの恋」をまだ引き摺ってる)
彼女たちが心に傷を負うのは彼女たちのせい?
舞台は無理やりにでもハッピーエンドにしちゃうけど。
私はこのビジネスのシステムに納得がいかないなぁと思いました。(今の話じゃないのはわかってるんだけど)
成功例の裏には星の数ほどのハッピーで終われない結末もあるのじゃないのと。

エンターテイナーが守られていないと彼らのパフォーマンスを心から愉しむのは難しいと、エンタメを愛する側としてバックヤードものを見るたびに思う昨今です。

さて、この日のカーテンコールで挨拶をする望海風斗さんが、「それでは皆さん――」と切り出し間をおいて「さようなら」で締めたので両側にいるキャストの皆さんがずっこけて、口々に望海さんになにやら。
そこにいる誰もが別の言葉が続くと思っていたので。
望海さん的には、「それでは皆さん」と言ってしまったら後に続く言葉は「さようなら」しかないのではないかと釈明されていましたが、キャストの皆さん的にはほら「ドリームガールズ」らしいやつとか博多らしいやつとかあるでしょうってかんじかな。こそこそとアドバイスされているのですが明確に望海さんに伝わらないみたい。
痺れを切らした?駒田一さんが客席に向かって「皆さんは耳を塞いでいてください」で舞台上で打ち合わせて(見え見えのバレバレですが)、皆さんで「よか夢見んしゃーい!」で幕となりました。

上質で心励まれるひとときをありがとうございました。

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2023/02/15

それでも私は命ゆだねる私だけに。

1月26日と30日に博多座にてミュージカル「エリザベート」を見てきました。
初日の数日後に観劇したときに感じた音響効果の違和感も気にならなくなり、千穐楽に向けての凄まじいくらいの熱と構築力に圧倒されました。
さらに1月30日ソワレの前楽と31日大千穐楽はライブ配信で見ることができました。

【26日マチネ】
  愛希シシィ古川トート田代フランツ甲斐ルドルフ涼風ゾフィー黒羽ルキーニ
【30日マチネ】
  花總シシィ井上トート田代フランツ立石ルドルフ涼風ゾフィー黒羽ルキーニ
【30日ソワレ】(配信)
  愛希シシィ井上トート佐藤フランツ立石ルドルフ涼風ゾフィー上山ルキーニ
【31日千穐楽】(配信)
  花總シシィ古川トート田代フランツ甲斐ルドルフ剣ゾフィー黒羽ルキーニ

生で見られなかった剣幸さんのゾフィーと上山竜治さんのルキーニも配信で見ることができました

コロナ禍で拡大、定着した文化ですがありがたいことです。

思い起こしてあらためて今回2022年版「エリザベート」はこれまでとはオケの感じが違っていたなと思います。
間とか余韻とかがあまりなくてサクサクと進んでいく印象。ロジカルでわかりやすい「エリザベート」でした。
これも時代の流れなのかな。

私はちょっとしたスキマの表情とか体の動きなど非言語的なところを楽しみたいので置いていかれそうになり、初見では戸惑っていたように思います。
大ナンバー後の拍手があるところはまだ呼吸の間があるのだけど、それ以外のところで息をつき終わる前に次にいってしまう忙しい感覚がありました。

特に井上トートの時は、ナンバーの中に歌のテクニックがてんこ盛りで体感時間があっという間でした。
ルドルフもあっさり死んでいたなぁと思いますし。
全体を通してこれまでに比べて若い「エリザベート」だったなぁと思います。

サクサクとわかりやすくロジカルになったことでいろいろと考えさせられること、気づかされることもありました。
まさに19世紀から20世紀へ時代が変換するときの軋轢を描いた作品なんだなぁということ。
あの時代の中央ヨーロッパで熾った火種が21世紀のいまも燻っているんだなぁフランツ・ヨーゼフの心労はいかばかりだったろうとか、プロイセンに対抗するためにゾフィーはバイエルン王家に連なる姪との縁組を画策したのだろうになぁとか、帝国主義(父)と自由主義思想(母)の狭間で苦悩しどちらからも見捨てられる皇太子ルドルフの心中とか。(味方と思っている人たちからも駒としか見られていない彼の現実を思うとなおのことつらい)

そして「生きる」ということは「死」に抗い続けるってことなんだなぁと。あらためて思いました。
個人を極めるってことはその「死」を常に意識するってことなんだなぁとも。
意識しているかしないかのちがいだけで、「死」はすぐ隣に佇んでいるものなんだなぁとも。こんな時代だからこそ強く感じた気がします。
(「死」に抗えないいのちがいかにたやすく消えてしまうかと思いを馳せて)

愛希れいかさんのシシィはナチュラルな人物造形が好きでした。
少女時代、
15歳のというちょっと難しいお年頃な感じも、一度自分を全否定された人が自尊心を取り戻し有頂天で慢心してる姿も愛おしい。
その慢心もひとときのものだと思うと抱きしめたくなるようなシシィでした。
「愛と死の輪舞」や「最後のダンス」ではトートやトートダンサーズとの重力がないかのような緩やかな、本当に糸で操られているかのようなモーションに釘付けになりました。(まさに「人形のように踊らされた私」ー)
腰かけようとしてルキーニに悪戯で椅子を引かれてしまう場面のあの姿勢から優雅に戻れるのも驚異的で大好きな瞬間でした。
一瞬たりとも目を離したくないシシィでしたが、ほかの方も見たいのでそれはとうぜん無理で。これはディスクを購入するしかないのか?と思案中です。

花總まりさんは永遠に宝塚らしいお姫様なんだなぁと思いました。
とてもわかりやすいお芝居と神々しさ。体が自由自在に少女から凛とした大人へそして老年期へと大きくも小さくも見える。
1幕ラストの振り返ったドレス姿は圧巻で。知っていたけど記憶をはるかに超えてそこに存在していました。
配信で見た大千穐楽、2幕は空間そのものが神がかっているように感じられました。万感の思いを込めた「私が踊る時」、モニター越しに見ている私もなぜか目に涙が溢れてきました。言葉では表せないなにかが伝わってくるのを感じました。
死(トート)が1人の人間に魅入られて予測不能に陥ってしまうことって本当にあるんだと。それを実感するシシィでした。
この素晴らしい役者が演じる素晴らしい役を見納めすることができて本当に幸せです。この記憶は永遠にとどめておきたいです。

古川雄大さんはこんな「死」が傍らにいたら思わず引き込まれてしまうなぁと思うトート閣下でした。怖いけれど魅惑的。正直に言うとシシィが羨ましいです。
古川トートと愛希シシィの「愛と死の輪舞」は夢見ていたそのもののような「愛と死の輪舞」でした。
「最後のダンス」はロックスターのようで心躍りました。
千穐楽の配信でどのシーンか忘れましたが凄いジャンプを決めているのを見て思わず変な声が出てしまいました。幻を見たのかと。
全編を通じて動機はシシィへの愛、そしてシシィとの同化なんじゃないかなと感じさせるトート閣下だなと思いました。

井上芳雄さんのトートは、プリミティブな思考がかたちを成したモノのようでした。
シシィを見て興味をもった瞬間が鮮やかにわかりましたが、アプローチ間違ってるよ~💦と思う、相手を怖がらせているのに、反応されるのがただただ嬉しいみたいな。コミュニケーションというものを知らない無知でイノセントな子供みたいなトート閣下でした。
前楽の配信では愛希シシィに全力で嫌がられているのがツボにはまってしまいました。
「死」という忌み嫌われるもの、しかしいつしか人が受け入れざるを得ないもの体現しているような。
シシィを追い詰めて追い詰めて、自分の腕の中でシシィの命が消える瞬間に愛というものを悟るみたいなちょっと悲しさを感じさせるトート閣下だったように思います。

ルドルフはお2人とも「エリザベート」で初めて見る役者さんでした。
立石俊樹さんのルドルフ
は夢見がちで高い理想にたどり着けなかった結果、現実に見切りをつけて、理想と心中するルドルフだなぁと思いました。
初見の古川トートとの時は、最後まで夢を見せてくれるトートに自分をゆだねて死出を選んだように見えました。その陶酔感が「うたかたの恋」のルドルフに近いなぁと。
チケット購入時はシシィとトートの組み合わせに頭がいっぱいでルドルフとの組み合わせを考えていなかったのですが、あとになって古川トートと立石ルドルフの組み合わせをもう1回見たかったなぁと思いました。
30日は井上トートとの組み合わせだったのですが、追い詰められ感が凄かったです。
「闇が広がる」でさんざん揺さぶりをかけられその気にさせられて、トートを信頼してからのあの失意はつらいなぁと思いました。

甲斐翔真さんのルドルフは、初見であの少年ルドルフがこんなに育って・・!と思ったのですが、次に見た時にはさらに大きく育っている印象でした。
鍛えた胸板から響く声が凄くて、井上トートとの「闇が広がる」はこんな元気な「闇広」は聞いたことがない!と新鮮でした。
古川トートとの組み合わせでは、死を寄せ付けない生命力を感じました。
そんな有望な皇太子がトートの画策により自由主義者たちの企てにまんまとはまっていくさまに、有能ゆえに正攻法しか知らない純粋さが徒となったのかなぁと。
そしてたとえ有能であっても時代の流れを押し返すことはできない厳しい現実を見せられたようでした。

ルキーニのお2人も「エリザベート」で初めて見る役者さんでした。
黒羽真璃央さんのキャスティングにはじめは驚きましたが、最初の観劇でお若いながら実力も備わっていて抜擢もなるほどなぁと思いました。
それから1週間を経ての観劇で、あれ?この間とは別のルキーニ?と見違えたほど濃い印象になっていてびっくりしました。表情、声色、仕草等々芝居の情報量が凄いことに。
コーラスの中での歌い方にもセンスを感じました。ルキーニにしては奇麗に歌いすぎるのかもと思わなくはないけれど好きだなぁと。
髭をつけてメイクを濃くして汚れた感じを出してもどこかスタイリッシュに見えるのも持ち味かな。
狂言回しのセンスがある人だなぁと、と同時に違う役でも見てみたいなと思いました。

上山竜治さんは配信でのみ見ることができたのですが、下卑たことろを強く出したルキーニで「偉そうなやつ」を憎んでいる生い立ちの納得感がありました。
作品全体を骨太に見せるルキーニで、黒羽さんとはまったくちがうこの個性もいいなぁと思いました。

若い時から貫禄のある佐藤隆紀さんのフランツ・ヨーゼフ。
年を重ねていくごとにどんどん立派な皇帝になっていき、他民族国家の国父として内政や外交問題に懸命に立ち向かっているのだろうなと思いました。
その歌声が真面目さと懐の深さを物語っているようでした。
そんな立派な人物でも家庭を治めることは難しいことなんだなぁとも。
家族の1人ひとりが強烈だものなぁ。とくに奥方と母上がだけど。
「夜のボート」もしみじみと聴き入りました。美しく歌声が重なるほどに悲しくなるなぁと。

田代万里生さんのフランツは歌ももちろん素晴らしいですが、芝居がとても好みでした。
若き皇帝時代の「却下!」が凄く好き。ちょっとした可笑しみを醸し出すところもお上手だなぁと。
シシィへの深い愛を感じさせるフランツ・ヨーゼフで、それが妻に届かないのが悲しくなりました。
ちがうのよ、エリザベートはそういう人ではないのよと。そういう彼女を愛してしまったがゆえの悲劇の皇帝だなぁと。むしろそういう彼女だから愛したのかなぁと思うとせつないです。

「宮廷でただ1人の男」という形容がピッタリの香寿たつきさんゾフィー。ブレのない信念と厳格さが際立っていました。
そうやって自分を律し威厳を保つことで息子を守り皇帝に育てあげた人なんだろうなぁ。
本当は息子や孫を溺愛したいけれど心を殺して厳しく接しようと努めているように見えた涼風真世さんのゾフィー。時折見せるお茶目さが好きでした。
息子からも愛され強い絆で結ばれて
いるという自信が支えの人のようだっただけに、息子から決別を言い渡された時のショックは計り知れず心が痛みました。
正しく間違いのない皇太后様に見えた剣幸さんのゾフィー。人生を懸けて守ってきた君主制、ハプスブルク帝国の崩壊、そして一族の非業の最期をその目で見ずにすんだことは幸せだったのかもと。
配信のみでしたが、感情的に芝居をしなくても伝わる威厳や悲しみが素晴らしいなぁと思いました。

原田慎一郎さんのマックス公爵はおしゃれで自由人で娘が憧れるパパだなぁと思いました。
そしてお声がとても良い。歌も抜群にお上手で素敵でした。コルフ島でのシシィとのナンバーが毎回楽しみでした。

未来優希さんのルドヴィカ、陽気で一生懸命に家族のために頑張っているお母さんという雰囲気でした。
美人で優秀で皇太后にまで上り詰めた姉との差を縮めようと頑張っている側面もあるのかなぁ。
家政に全く無関心な夫に困りながら対応しているのも、私の親世代の母親たち(高度成長期)とダブって滑稽味と痛々しさを感じて親近感を覚えました。
そして打って変わって発散するマダム・ヴォルフの迫力のある歌声は毎回聞いていて楽しかったです。

秋園美緒さんのリヒテンシュタイン公爵夫人は気品があって仕事ができて憧れです。あの皇太后とあの皇后のあいだで忠節を崩さず働けるなんて只者ではないです。
彼女が歌う「皇后の務め」大好きです。どこをとっても非の打ち所がない秋園リヒテンシュタイン様のファンです。
以前のプログラムには伯爵夫人と表記されていましたが、いつの間にか公爵夫人になっているんですね。
リヒテンシュタイン公妃が女官をするとも思えないし、おそらく女官長エステルハージ伯爵夫人(リヒテンシュタイン侯女マリア・ゾフィー・ヨーゼファ)のことかなぁと思うので、伯爵夫人が正しいのではと思います。(ちなみに現在の国名はリヒテンシュタイン公国だけどリヒテンシュタイン家は侯爵が正しいらしいです)
リヒテンシュタイン家にしてもエステルハージ家にしても名門には違いないので、高位の女性であることはまちがいないと思います。
生家にちなんで「リヒテンシュタイン」とこの作品では呼ばれているのかなと。

いつにもましてストーリーがクリアに見えたからが、役者さんたちがいくつもの役を演じられているのに気づいてそれも面白かったです。
貴族の夫人や令嬢だった人が娼婦を演じていたり、大司教様だった方がカフェで弾けていたり笑。
千穐楽にはそんな役者の方々にも愛着が湧いていました。
他の作品に出演されていたら注目したいと思いますし、また皆さんがこの「エリザベート」にそろっているのを見られたらいいなぁと心から思っています。

自分の年齢や境遇等々で見方や目線が変わっているのも面白くて、何度見ても飽きることがないのも凄いなぁと思います。できれば生涯見続けたい作品です。
次はいつ見ることができるでしょうか。

 

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