カテゴリー「♖ 宝塚OG」の10件の記事

2022/08/03

今夜は淑女で。

7月23日に博多座にてミュージカル「ガイズ&ドールズ」を見てきました。

本当なら7月20日が1回目の観劇になるはずだったのですが、まさかの開演15分前の公演中止発表で叶わず。
23日も幕が開くまではドキドキでした。

無事幕が上がり流れてくるオーバーチュア。
紗幕には懐かしの映画さながらにオープニングクレジットが映し出され、N.Y.の通りを行き交う登場人物たちのスタイリッシュなダンスに目がくぎづけ。
これからの数時間、どんな心地に浸れるのだろうという期待でいっぱいに。

宝塚にはまりたての頃に紫吹淳さんスカイの月組版をCS放送やDVDで繰り返し見ていた作品なのでどのナンバーも懐かしい。
でもその頃(20年前)から既に古臭い価値観が気になっていたので、今回どんなふうにアップデートされるのかな?と思っていました。

ダンスナンバーの振り付けがおしゃれ。オープニングでストリートを闊歩する女性ダンサーが矢庭にトゥで踊ったかと思うとまたすぐに歩き出したり。
GUYS(男性たち)のダンスはその筋力瞬発力に目を瞠り見せ方の妙に感嘆しました。

演者が伝道所の入り口ドアを開けて階段を下りると舞台装置がゆっくりと回転しながらせり上がって地階の伝道所内部が見える仕掛けにおおっと思いました。
逆に演者が階段を上がると地階はせり下がって伝道所の入り口だけに。
その舞台装置に合わせて階段を上がってそのまま盆から降りたりするの、タイミングが難しくないのかな。目が回らないの凄いなぁ。

振付、舞台装置はこれが2022年版か!という感じでしたが、ストーリーはそのままなんだな。20年前の月組版でヤバいと思った部分はさすがになかったけれど。
もっとたくさん笑う場面があったと思うんだけど、あえてなくしたのかなぁ。

そもそもなぜ笑うのかと言われると、女は結婚したいもの、男は縛られたくはないもの、というような「あたりまえ」とされていたものを登場人物たちがコミカルに表現したり絶妙に掠めたりするからだもんなぁ。
その「あたりまえ」はいまとなってはぼんやりとした幻影みたいなものだから、まずそれを思い起こすところからしないといけなくて。
その前提を思い起こすまでのちょっとしたタイムラグが積み重なって少しずつズレていって、なんだか私の中で嚙み合わなくなっていったかなと思います。
20年前だと笑えたところもスルーしてしまったようで、見ている私自身の感覚が変わったのだろうなぁ。

アデレイドが架空の子どもたちについて語る場面、ぜんぶで5人で性別は・・・長男の名前はあなたと同じネイサン云々。そのネイサンJr.はいま何をしているんだい?というネイサンのチャチ入れにもスラスラ答えるアデレイド。ネイサンJr.のフットボールの試合にも賭けときゃよかったとつぶやくこんな時でも頭の中は賭け事のネイサンのくだり、宝塚版ではテンポの良い掛け合いに反射的に笑ったのだけど、今回は、あれ??いまの場面あっさりだった???となりました。
翻訳のせいもあるのかもしれないけれど、言葉の意味が瞬時に頭に入らなくて笑い損なってしまったみたいでした。

シチュエーションはとても面白い作品だと思うのだけど。
そのシチュエーションとセリフの意味、掛け合いの妙が瞬時に伝わるかが肝心なのだと思います。
アメリカ人との感覚の違いもあるうえに、作られた頃と2022年の現在との感覚の違いもあるのかも。
舞台の笑いって共通認識があってこそだもんなぁ。
通しでやるよりコンサート形式のほうが楽しめるのかなぁ。ナンバーは大好きだし、この豪華メンバーだし。

ハバナのサラの明日海りおさんはベリキュートだったし、HOT BOXの望海風斗さんアデレイドはさすがのショーガールで楽しかったし。
そして何より「LUCK BE A LADY」や「SIT DOWN, YOU'RE ROCKING THE BOAT」のGUYSはめちゃめちゃクールでうひゃあでした。

Luck be a lady tonight —— 運命よ今夜は淑女でいてくれよ。
運命(Luck)を人は女神に喩えるけれど、神様だろうがなんだろうが、女性ならばみんな自分に好意を持って自分の思い通りになる、そう思っているのがこの物語の主人公、スカイ・マスターソン(井上芳雄さん)。
だからラストに可笑しみがあるというわけ。

そんなスカイだからこそ、ネイサン・デトロイト(浦井健治さん)にうっかりはめられて、救世軍の軍曹サラ・ブラウン(明日海りおさん)をハバナに連れていけるかという賭けにのってしまうんですよね。

女たらしのデートプランは完璧。N.Y.からハバナ(キューバ)までエアプレインでランチなんて。凄い!90年前のお話よね??ってなります。
彼女がランチの誘いに乗ってくれさえすれば、あとは成功したも同然。でもそこがいちばんの難関で。
とはいえ、そんなことも訳ないのがスカイ、なんだけど。

サラを口説きに伝道所に行って、入り口に書いてあるフレーズの引用元は「箴言」ではなく「イザヤ書」だと指摘する。
「箴言」だと言い張るサラだけど確かめるとでたらめでもなんでもなくて、スカイの言う通りなんですよね。
"罪びと”であるスカイに選りによって聖書について間違いを指摘されて、心穏やかではいられないサラ。ここにも常識との逆転が。
スカイ、只者ではないなってなるんですけど。

サラを連れて行ったハバナで、自分が飲ませたお酒のせいで酔っ払って羽目を外してしまった彼女といい感じになるのだけど、罪の意識を感じてしまうスカイ。
「良くないことだ」って罪びとの風上にもおけないセリフ。
天井知らずに賭けをするから仲間たちから「スカイ」と呼ばれる彼なのだけど、誰にも教えたことがない本名をはじめて彼女に教える。
それって掛値なしの「誠意」ですよね。「純愛」とも言うかも。ギャンブラーの中のギャンブラー、罪びとの中の罪びとが。

彼の本名オバディア(Obadiah、Ovadia)は旧約聖書に出てくる預言者の名前で、神のしもべ・崇拝者という意味。
もしかして彼は敬虔な信仰者の家庭に生まれ育ったのかも知れず(聖書に詳しいのもだからかも)、そんな彼がどうしてギャンブラーになったのか。やっぱり興味をそそる人ですスカイという人は。

オバディア(神のしもべ)と名付けられた聖書に精通してる青年が、長じて仲間に一目置かれるような罪深いギャンブラーになってて。
その彼が敬虔な女性を口説き落とす賭けに勝って1000ドル儲けるはずが、本気で恋をしてしまう。
そして彼女のために一世一代の賭けをする。クラップで彼が勝てば1ダース以上のギャンブラー仲間たちを伝道所に連れていく。負ければその1人1人に1000ドルずつ支払うと。
だから—— Luck be a lady tonight と。
このとき、スカイにとって運命(Luck)はサラの顔をしているのだろうなぁ。

果たして運命は彼に微笑みかけたのか。
本当の勝者は?

ラストはどう捉えたらいいのかな。微笑ましいこと? それとも皮肉なこと? どういう意味で笑ったらいいのだろう。
馬鹿か利口か、なんとでも言えばいい—— っていうのは宝塚版の歌詞だけど。
男(GUYS)ってこんなものだよねって笑っておけばいい?

すごく笑えて微笑ましい作品のはずなのだけど。
やっぱりいまの私の感覚とちがっていて。
考え込んでしまうなぁ。

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2022/07/22

見果てぬ夢へ。

7月17日にキャナルシティ劇場にて、ミュージカル「スワンキング」を見てきました。

あれは春3月。博多座で見た「笑う男」の余韻が残っているときに、Twitterのタイムラインに流れてきた舞台のビジュアルがふと目に留まったのでした。
最初はタイトルの「スワンキング」が「Swan King」だということにも気づかなくて、なんだろうこれは?と。たぶん夢咲ねねさんのビジュアルに私のなにかのセンサーが働いたのかな?と思います。

ねねちゃんエリザベート役じゃん。ルートヴィヒ2世とワーグナー?これは私の好きな世界観かも。
でもたいていの新作ミュージカルは福岡ではやらないもんねと見切ろうとしたのですが、試しにリンクを開いて公式サイトを見ると福岡公演があるではないですか。
もしかして見に行けるかも??

主演のルートヴィヒ2世役の橋本良亮さんについても知らなくて。役者さんに詳しい友人に訊くと「ジャニーズの人ですよ」とのこと。
これチケットどうやって取ったらいいのかな? 

そんなふうに偶々偶然に知って、手探り状態からはじまった観劇でした。

物語は興味深く面白かったです。
活字だけで読んでいた人間模様をドラマとして見ることができ、それぞれの人物のその時々の気持ちに思いを馳せることができました。
どちらかというとその俗物的な部分にフォーカスされた作品かなと思いました。
先々週偶々宝塚でフランツ・リストを描いた「巡礼の年」を見ることができたのですが、あちらはやはり宝塚らしい気高さの要素が強かったのかなとあらめて思いました。見ているときはけっこうリストのスノビズムがリアルだなと思ったのですが。

ワーグナー(別所哲也さん)については子どもの頃に音楽好きの亡父が語って聞かせてくれていた言葉がいろいろとよみがえってきました。
ワーグナーは音楽は素晴らしいが人物は褒められたものではない、などなど。
その言葉とそのときの父の表情にとても含みを感じて、長じてあれは彼のドイツ主義と反ユダヤ的思想について言っていたのかなと漠然と思っていましたが、もちろんそれもあるけれどもっと俗的な意味もあったのだろうなぁとこのミュージカルを見て思いました。
10代の頃の私はワーグナーとコージマ(梅田彩佳さん)の関係をロマンティックなものと考えていたのですが、そのイメージも覆りました。
人間だもの。こういうこともあるよねと思う2人でした。

そしてこういう俗っぽさは、ルートヴィヒ2世には耐えられなかっただろうなぁとも思いました。
美しい夢と崇高な理想を愛した彼には。わかるよわかるよその気持ち!と思いながら見ていました。
彼の生き方もまた褒められたものではないでしょうけど。
ルートヴィヒ2世にとっての正義は美しく調和した世界なのだと思いました。戦争なんてとても耐えられるものではない。
自身は美しい城を出て軍隊を指揮することはせず、それを弟のオットー(今江大地さん)に任せる。

兄と同じバイエルン王家の血を引くオットーもまた繊細な神経の持ち主で、無残な戦場の光景を目の当たりにして精神を病んでいく。
無責任な兄の犠牲者だなぁ。

もう1人ワーグナーの犠牲者として描かれていたのがビューロー(渡辺大輔さん)でした。
ワーグナーの音楽の高い芸術性に心酔するがゆえに妻を奪われ誇りをズタズタされてもワーグナーと決別することができない。その葛藤に長く苦しんでいる人物として描かれていました。
彼の視点から描かれたワーグナーたちを見てみたいなと思いました。

この作品にはルートヴィヒ2世やワーグナーをとりまく幾人かの女性が登場しましたが、描かれ方に奥行きがなくてつまらないなと思いました。
ゾフィー(堤梨菜さん)もテレーゼ(藤田奈那さん)もミンナ・プラーナー(彩橋みゆさん)もルドヴィカ(河合篤子さん)も、結婚したい若い女性、ひたすら献身する女性、浮気性の夫に悩まされる女性、そして娘を結婚させたい母親、というだけで。

フランツ・リストとダグー伯爵夫人マリーの血を引くコージマも、夫を発奮させる妻という役目に終始する女性。
むしろワーグナーの芸術性を支えた人なのではないかと思うけど、甘えたの夫を甘やかすだけの女性として描かれているように見えました。
コージマにしてもゾフィーやテレーゼ・フォン・バイエルンにしても音楽を愛し高い知性と教養を備えた人だと思うのだけどなぁ。そこには触れられないのだなぁ。

エリザベート役の夢咲ねねさんは期待通りの美しい立ち姿と存在感。ルートヴィヒ2世が憧れるに相応しい夢のような美しさで納得だったけれど、求められているのはそれだけなのかなと。

女性には憧れられる外側と男性を支えることだけを求められているような描かれ方でつまらないなというのと、音楽が真面目過ぎるというか艶っぽさが感じられなくて印象が薄かったのが残念でした。
再演があるとしたら、そのあたりを魅力的にしてほしいなぁと思いました。

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2022/07/15

奇人たちの晩餐会。

7月10日に博多座にて「奇人たちの晩餐会」を見ました。

ひたすら痛々しい舞台でした。
ピエール役の戸次重幸さんのぎっくり腰の演技が迫真で、とても痛そうで辛い。
笑い者にされるために呼ばれたとも知らず、ピエールを親切な人だと思い込んだまま度を超えた好意を寄せるフランソワ(片岡愛之助さん)を見ているのが心が痛い。
ピエールのイライラ、落ち込み、焦り、困惑、傷心、自暴自棄などの感情がリアルで、HSP傾向にある人には同じ空間にいるだけでしんどい舞台だなと思いました。(私だ)
フランソワがピエールの意図に気づいたときとかもう。

仲間の前でそうとは知らない人を笑い者にして、そうやってピエールは自分の何を守ろうとしているんだろうと考えたり。
そうまでして優越感を感じないといけない心の闇に引きずられそうになるし。
そうせずにいられないピエールがいちばん始末に負えない厄介な愚か者なんだろうと思うし。
とにかく見ていてしんどい。

ピエールの残酷な意図を知ってしまったのに、にもかかわらず傷心の彼を救おうとするフランソワに救われる気持ちになるけど、でもそれは見ている私が安堵したいがための身勝手とも思えて。
こんな夫のもとに戻ってクリスティーヌ(水夏希さん)は幸せになれるのかなと思うし。

やっぱりピエールは1人になって、フランソワに日常生活をぐちゃぐちゃにされながら、なんとなく2人で奇妙なつきあいをしていく未来がいいかなぁと思います。
意外と対等な関係になれそうな気もします。

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2022/05/20

カオナシ。

5月14日に博多座にて舞台「千と千尋の神隠し」を見てきました。イープラスの貸切公演でした。

まず客席に20~30代と思しき人が圧倒的に多いことに驚きました。
貸切公演だったことも関係あるのかもしれませんが、やはり演目ゆえかな。お子さんの姿もいつもより見かけました。
ふだん私が観劇する演目は40~50代がコア層なかんじなので、若い人がたくさん足を運ぶ演目は演劇の未来を明るくするなぁと思いました。

開演前に、博多座製作の「前のめりは後方席の視界を想像以上に遮ります」動画が映し出されたのも良き趣向だなと思いました。
毎公演アナウンスで注意されていることではありますが、それがどういうことで、どれくらい迷惑かは、ご存じない方も多いと思うので、開演前にこの動画を見ていると気をつけてもらえそうです。
観劇慣れしている方も初めての方も、皆が気持ちよく舞台を見られるようにこうした配慮はありがたいなと思いました。

この日時のキャストは、千尋=上白石萌音さん、ハク=三浦宏規さん、カオナシ=菅原小春さん、リン/千尋の母=咲妃みゆさん、釜爺=橋本さとしさん、湯婆婆/銭婆=朴路美さん、でした。
メインキャストの方もアンサンブルの方も最高のパフォーマーばかりで、音楽も演奏もほんとうに贅沢なものを見たなぁと思いました。

私は1階前方の席だったのですが、舞台装置の組まれ方、そこを行き来する演者さんやススワタリや呪詛の虫などのパペットの演出などは、2階席からのほうがよく見えるのかもと思いました。この作品は2階席の満足度が高いのではないかなと。
同一席種内での不公平感が少ないというのも大切な気がします。

原作のアニメはかなり昔に見たことがありますが、アニメよりも筋道がわかりやすい脚本・演出になっているようで、そうだったのかーと思いました。
アニメを見ていた時はあっちにこっちに気持ちが寄り道してしまって本筋が掴めていなかったのかなと思います。そういう寄り道が愉しみだった人には物足りなさもあるのかなとは思いました。

アニメのキャラクターをパペットで表現しているので、役者さんを見るのを楽しみにしている人はえっ?って思うのかなとも。
私はアニメでも大好きだった坊ネズミがハエドリに運ばれたり、ハエドリを乗せて歩いたりしているのを見られて楽しかったです。パペット使い巧いなぁ。本職ではなくアンサンブルの方が操っているんですよね。

ハクが龍の姿になった時、そして千尋とともに空を飛びながら自分の名前を思い出す場面を舞台ではどう表現するのだろうと思っていたのですが、人力とは!
歌舞伎の黒衣や狂言においての後見のように、アンサンブルの方々の力で空を飛んだり姿を変えたりしていて、こういう表現をするのかと膝を打ちました。
それがちっとも不自然に感じられないステージングが素晴らしいなと思いました。

千尋役の上白石萌音さんは、舞台に出ずっぱりで階段や梯子を上ったり下りたり舞台を駆け回ったりともの凄い体力と身体能力に驚きました。
ハクにおにぎりを渡される場面の張りつめていた糸が途切れた時の大泣きも凄い。
体の重心の掛け方使い方も子どものそれで、まさにアニメの千尋が抜け出てきたみたいで世界観に引き込まれました。
これぞまさに“恐ろしい子”。と思いました。

ハク役の三浦宏規さんはまず声が良いのと、龍の姿に変わり身する時に跳躍しての回転は目を瞠りました。2回転半以上回ったのじゃないかな。凄い。
彼があの白龍とイコールなのもすんなりと受け入れられました。

湯婆婆と銭婆役の朴路美さんも一声で全員が震えあがるような迫力とコミカルさが湯婆婆そのもの。同じ顔なのに銭婆になるとすっとした品が出て、坊ネズミやカオナシたちに対する慈愛に溢れていて素敵だなぁと思いました。

咲妃みゆさん、声がいいなぁ。千尋のお母さんのあの突き放した感じは、扱いにくい娘をもつ母のリアリティがありました。夫は子どもみたいな人だし、彼女が大人でいないと家庭が回らなさそう。
リンはアニメでもきっぱりと潔くて素敵な人だったけど、咲妃さんのリンも素敵な人でした。
いつかどこかで千尋とまた逢えたらいいなぁ。

カオナシ役の菅原小春さん、どうしたらこんな体の使い方ができるの? 不思議で思わず凝っと見てしまいました。
お面をかぶっているのに、そのお面に心模様が映って喜怒哀楽が見える気がするのも不思議。
銭婆にここに残って手助けをしてほしいと言われた時は、なんだかうれしそうに見えました。
カオナシとは何の暗喩なのか。現代に生きる人間の自我そのものなのかなぁ。などなどいろいろと考えてしまうキャラクターでした。

舞台化と聞いた時は、あのアニメだからこその表現を舞台でどう見せるのだろうと思っていたのですが、古典的ともいえる舞台の手法で描き切っていたことが清々しくもありました。
古来よりの演劇の奥深さやこれからの可能性も見ることができた気がします。
本邦の商業演劇に何某か新しい風が吹いたのかも。そんなことを考えながら帰路をたどりました。

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2022/03/23

OPEN YOUR EYES.

3月19日に博多座にて、ミュージカル「笑う男」を見てきました。

3年前に北九州ソレイユホールで日本初演を見て、とても惹かれるものがあったのですが消化不良も感じて、再演があったら見たいなぁと思っていました。

今回は博多座で上演されると知って公演日程を確認したところ、3回目の新型コロナワクチン接種や観劇遠征が重なる時期で前売りを買うことができないまま初日が開けてしまい、ワクチン接種の前日に「今日しかない」と意を決して博多座へ。当日券で観劇することができました。(2階前方ドセンのまったく私好みの席を買えてラッキーでした♡)
ワクチン接種後のぼんやりした頭でこれを書いています。

初演で惹かれたのは、山口祐一郎さんのウルシュス。そして夢咲ねねさんのデアでした。
この世界は残酷だと繰り返し言いながらもその言葉に反して、1人では生きる術をもたないデアを大切に育てるウルシュスの心のうちに惹かれました。
夢咲さんのデアは天使でした。猥雑な見世物小屋にいながら。見世物小屋の仲間たちもまた彼女を大切にしているのを見るのが泣きたくなるほど好きでした。

今回は博多座ということで、セリが上がり盆が回りとてもスペクタクルになっていました。
漠然と見えていた初演より、場面の見せどころがわかりやすくなったかなと思います。

とくにジョシアナ公爵(大塚千弘さん)の心の変遷がよく見えるようになったなぁと思いました。それによって本当の化け物は誰なのかがはっきり見えたなぁと。
なにもかもを持っていながら、自分の意に沿わないことを受け容れないとそれを享受できない苛立ち、自分が選べるものといったら火遊びの相手くらい。貴族社会の欺瞞を嫌悪しているのにそこから逃れられない。彼女はもっとも現代人の感覚に近い人だなと思いました。

吉野圭吾さんのデヴィッド・デイリー・ムーア卿も面白かったです。
彼はジョシアナ公爵が嫌悪しているものが欲しくてたまらない人なんだなぁ。庶子に生まれたばかりに手に入れられなかったものに執着してやまない人。そのためにはどんな卑劣な行為も正当化できてしまう。だって神様が恵んでくれなかったものを自分で手に入れてなにが悪いって思っていそう。神様への意趣返しの気持ちもあるのかも。
生まれながらにして手にしていた兄やジョシアナ公爵にはわからない気持ちかなと思いました。

石川禅さん演じるフェドロは、貴族たちに仕える身分でありながらどうやって彼らを思いのままに動かそうかと耽々と状況を見据えているのが面白いなぁと思いました。
自分に有利なカードを手に入れるためならなんだってするし、手に入れたカードは最大限に利用する。要らなくなったカードに情をかけることもない。単純な貴族たちを手玉にとって生き抜いていく人間なんだなぁ。はしこく慇懃に悪びれず裏切ったり味方になったり、すべては利で動いている。

富める側にいながらも心の飢えに喘ぐ人びとと、貧しくもいたわり合う見世物小屋の人びととの対比がそこには描かれているなと思いました。

ウルシュス(山口祐一郎さん)は、生まれの不幸や見た目の醜さを受け容れろと説く。
醜さを売り物にして、見る者の好奇心と優越感を満たし安堵と嘲笑をお金に換えて糧とする。

盲目のデア(真彩希帆さん)には彼らの見た目の醜さはわからない。彼らの心だけを見てその優しさに触れ1人1人を尊い人として接する。
おそらく醜い見た目ゆえに生まれた場所から弾き飛ばされてこの見世物小屋に辿り着いた彼らにとって、そんなデアは天使なのだと思いました。
白い衣を着せて髪を編んであげて。デアに自分には叶えられなかった夢を見ているのだと。デアが悲しむと彼らにとっては一大事。

そんな彼らの中で、グウィンプレン(浦井健治さん)だけは自分の見た目と自尊心の狭間で苦しんでいる。
それはウルシュスから愛情をかけて育てられたことと無関係ではないと思います。
そして目の前の美しいデアを愛しているから。
美しいデアに相応しい者になれるのではないかという夢を見てしまうからかなぁと思いました。
無残な現実から手の届かないところにある理想を求める姿は、とても若者らしくて愛おしくて悲しく思えました。

私は、ウルシュスとグウィンプレンが出逢った時の場面が大好きで、なんどもその場面の記憶を反芻してしまいます。
貨車を住処にし食べ物も満足にない1人暮らしのウルシュスのもとに飢えて凍えて辿り着いた子どものグウィンプレンに、鍋の中の腐ったじゃがいもを与えようとしたけれど、けっきょくは隠したパンを渡してしまう場面。
利己を考えて逡巡するけれど無慈悲になりきれないウルシュスがとても好きでした。
フェドロとは真逆だなぁと。
私にはウルシュスが希望に思えます。

ウルシュスが、この世界は残酷だ、自分以外は敵だ、信じられるのは自分だけと説くのは、彼なりの優しさなのだと思います。
グウィンプレンが他人に、人生に期待して傷つかないように、心を砕いて先回りして忠告しているのだと。
そういう彼自身が、グウィンプレンに無償の愛を注いで育ててきたのだから、彼の忠告はとても矛盾してる。
グウィンプレンに彼の忠告が実感できないのも当然だと思います。
極貧の暮らしだったけれど、愛されて育った子どもだったから。

ウルシュスのもとから飛び出して貴族社会に身を置いてみて、はじめてグウィンプレンは愛のない世界を知ったのだと思います。
愛を訴えても誰の心にも響かない虚しさを知ったのだと思います。
そして自分が育った場所がどれだけ愛と幸福に満ちていたかを。

自分の帰りを泣いて喜んでくれるウルシュス、仲間たち、そしてデア。
彼は愛されている。そのことがすべて。
自分の腕の中で逝ったデアを追うのはその幸福感ゆえなんだと思いました。

あなたに愛されてグウィンプレンもデアも幸せだったのだと、ウルシュスに伝えてあげたい。
そんな気持ちになるラストでした。

再再演があるならまた見に行きたいと思います。
貴族院の場面は、いま以上に彼ら貴族が醜悪に見える演出になるといいなぁ。この世界の残酷さがここに極まったくらいに。
グウィンプレンの心が一度屍になってしまうくらいに。
いっそうのブラッシュアップを期待したいと思います。

この地上がたくさんのウルシュスが生きる世界でありますように。

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2022/01/17

角をとってもらってこの子もやっとふつうになれたと思っているでしょう――「ガラスの動物園」

ことしの観劇初めは1月11日、博多座にて「ガラスの動物園」でした。

母親と姉弟。非常階段のあるアパートでの3人暮らし。
アップデートできない親が子どもたちを追い詰めている風景。
なるはずだった自分を娘に重ねて、息子にこうであってほしかった夫を重ねる母親。
自分が願うしあわせしか、娘にも息子にも願うことをゆるさない呪いをかけているよう。
現実を認めない親の願望が息苦しくて病みそう。
そんな作品でした。

麻実れいさん演じる母親アマンダは、本来陽気で生命力があってチャーミングな女性なのだろうということが十分にうかがえました。
たくさんの求婚者がいたことも嘘じゃない。「風と共に去りぬ」のスカーレットのように、きっとコケティッシュでホスピタリティ溢れるサザンベルだったのでしょう。
でもものごとはうまくいかない。魅力的な男性と結婚して幸せな妻となって暮らすはずだったのに。
輝かしい過去とすり抜けた幸せを、自分が娘時代を過ごした昔の南部のやりかたで娘のために手に入れようとしている滑稽さ。
計画をテキパキとこなす行動力も意志の強さも備えているのに。
そのパワーがぜんぶ子どもたちに向けられているのがしんどいなぁと思いました。
すべては子どもたちを深く愛しているゆえなのだろうけど、親子関係が密すぎて自分と子どもとの境界が曖昧で、だからあんな身勝手なことが言えちゃうんだろうなぁと思いました。
私にはとても耐えられない、気がおかしくなりそうな親子関係でした。

倉科カナさん演じる姉のローラは、人の感情にとても敏感な女性。
母と弟が言い争いになるとデザートを運んできたり自分の献身で空気を変えようとするような。
8歳で父親が家を出ていくまではずっと両親の諍いを聞いて育った娘なんだろうなと思いました。
父親が家を出ていっても母の愚痴は止まることはなかったでしょうし、子どもたちへの干渉はそれまで以上に増えたのではないかな。
狭いアパートでは引きこもる自室もなさそうで、ガラスの動物たちの会話に耳を傾けて彼女はつらい時間をやり過ごしたのではないかな。
彼女のお気に入りは13歳になるユニコーン。孤独なのにさびしいとも言わず、ふつうの馬たちとも仲良く暮らして言い争うこともないのだそう。
まるでローラ自身のことのようでもあるし、彼女の理想の世界なんだろうなぁと思いました。彼女が語るガラスの動物の話がとても好きでした。
ジムがそのユニコーンの角を誤って折ってしまっても責めもせずに、手術をうけたと思うことにすると言うシーンがとても印象的でした。
その前に、ほかの馬たちとおなじになったわとも言っていて。
健全でポジティブなジムのような人間には、人とちがうことは素晴らしく価値があることなのだろうけれど、ローラにとっては人とおなじである安堵に価値があるのだろうなと思います。

竪山隼太さん演じるジムはとてもポジティブでいい人だなぁと思いました。
自分の過去の栄光も挫折もきちんと分析できていて、それを話す時にも相手に変に気を遣わせない話術があって。
自分の夢や努力を臆せず語るときも、そのちょっと自惚れ屋なところも魅力的だと思いましたし、ローラを勇気づける会話には感動しました。
ローラにとってはそりゃあ眩しくて素敵な人に見えるだろうなぁと思いました。
人の話を聴く時の態度、会話のすすめ方、高校時代に人気者だったのが肯けます。
女性に対してはジェントルにふるまうという社会性も身に着けている人ですよね。たとえ話が退屈でもそんな素振りを見せない。興味のない話題の時はさりげなく話題を変えるとか会話術ももっている。
成功しようと思っている人はちがうなぁ。
ローラと好い雰囲気になっている時に、君が妹だったら自信の持ち方を教えてあげるのにと言っていて、あれ?妹?と思ったけれど、どんどん盛り上がっていって、ふうんと思っていたら・・え~そんな~でした。
現実的に計画を立てて着々と人生を歩んでいるポジティブな彼ですから、そりゃあ奥手なはずはないですよね。
それにしてもそれにしても・・・。作者に一杯食わされた感満載。
ものごと願うようにうまくはいかない、ですよね。

岡田将生さん演じるトムは、ストリーテラーから過去の自分になるときの切り替え、一瞬の真顔が印象的でした。
母と姉を養うためにやりたくない仕事をがまんして続けているのに、その母親に身勝手と非難されてつらいなぁと思いました。
16年前に父親が出て行って、トムはいま21歳。大学には行かずに仕事をしているみたいだけど、彼が働き出してせいぜい3年ほどだと思うのだけど、それまでこの一家はどうやって生計を立てていたのかな。絶対に彼が養わないといけないのかな。
家を出て行きたいけれど逡巡する理由は、やはり庇護が必要に思える姉の存在があるからなのかな。
あんな酷いことを言われても、やっぱり女手一つで自分たち姉弟を育ててきた母に対する拭いきれない愛着を感じているからかな。
姉のローラがガラスの動物園に逃げ込むように、彼も夕食後は息苦しいアパートから逃避して深夜まで映画観で過ごし、3時間の睡眠をとって出勤し職場では詩作に耽り、同僚のジムからはシェイクスピアと呼ばれていたりする。
いつか船員となって家を出ることを夢見ながら。
母の渾身の計画が破綻して、八つ当たり的に責められ酷いことを言われて口論になって。彼の父もこんなふうに言われた末に出て行ったのかなと思いました。

この追憶劇を見るかぎりでは、トムが家を飛び出すのは仕方のないことだと思えるのに、家を飛び出した彼が何年経っても姉の幻影から逃れられずに、こうして追憶を語らずにいられないのはどうしてだろう。
彼が語らないこと、彼が都合良く脚色したなにかがあるのかしら。
家族というものが不気味なものに思えて、なんともいえない後味の作品でした。

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2021/09/23

この青い星の上で。

9月19日に北九州芸術劇場大ホールにて「REON JACK4」を見てきました。
4年前「REON JACK2」を福岡市民会館で見てちえちゃん(柚希礼音さん)のパフォーマンスに感動。機会があれば次も見たいと思っていました。
その翌年開催された「REON JACK3」は残念ながら福岡公演がなく観劇することはなかったのですが、数年ぶりに「REON JACK4」が上演されると知り開催地を確認すると北九州があるではないですか。
これは見に行かねば。

YOSHIEさん(ストリートダンス)、宮尾俊太郎さん(バレエ)、クリスティアン・ロペスさん(タンゴ)というジャンルの異なるダンスのトップパフォーマーと全力で競演するちえちゃん、そして佐藤隆紀さんと「マタ・ハリ」のラドゥとアルマンで熱唱するちえちゃん。凄すぎん? もしかして私が思う以上にグレートでアメージングな人だったのねと焦りました。

ちえちゃんが宝塚の下級生や共演者からリスペクトされていること。その理由。わかってはいたけどわかっていなかった。
先日たまたま東京宝塚劇場の宙組公演でちえちゃんと観劇が被ったのですが、舞台上の皆さんがほんとうに嬉しそうで。いつもよりたくさんターンしてるよね?って思うくらいに。自分が見て憧れていた人に見てもらえたらそりゃあねと思ったのですが、その凄さを私はまだまだ理解していませんでした。(いまもだぶん全容の半分も理解していないはず)
まさに超弩級。踊るスーパードレッドノート。(←言ってみたかった笑)

でもちえちゃんが尊敬されるのは、パフォーマンスが凄いからってだけじゃないってことも、そのパフォーマンスから感じました。
ものごとに取り組む姿勢そのもの。その清廉さ誠実さひたむきさゆえに尊敬され愛されているのだということが。
どの共演者もその道を究めた方でちえちゃんよりも技術面では上をいく人たち。そういう方たちとそのジャンルで真っ向から競演しようとすること自体なかなかできることではないなぁと思うし、取り組む上でつねに本気で逃げがないところ。踊ることに対する喜びや愛、そして舞台の上のこの時間をどんなに大切にしているかがストレートに感じ取れて、感動しました。

その凄い人がファンのことを真摯に考えて公演を構成してくれているんですよね。そのことにも感動しました。
このコロナ禍でいかにして舞台の上から無言でいなければいけない観客とコミュニケーションをとるかに心を砕いているのも見て取れました。それゆえの自分ツッコミとか笑。

佐藤隆紀さんとのトークで、2人からの質問に対して客席がペンライトの色でレスポンスするというコーナー(?)で、佐藤さんと共演するとしたら①カルメンとホセ ②スカーレット・ピンパーネル(ショーヴランまたはマルグリットとロベスピエール)のどちらが見たいかという質問をすることに決まったのですが、佐藤さんが①の人は青を、と言った瞬間にちえちゃんから速攻で異議が入りました。
ちえちゃん的には最初が赤、次が青、とテッパンで決まっているんだそうです笑。(たしかに宝塚的にも正解な気がします笑笑)
そうそう、ちえちゃんってそうだったかも笑。自分の中の決まり事には厳格だったかも・・となんだか可笑しくて。
舞台上で自然体で存在するというか自分を飾らずに正直に出してくるところ?笑、好きだなぁと思いました。舞台上でも変わらぬ関西ことばとかも。

ここまで自分がずっと「ちえちゃん」と書いていることにも不思議な気持ちです。
「柚希さん」と書いちゃうと雲の上の人っぽくなりすぎて私の中で畏怖の念が勝って何も書けなくなってしまうから「ちえちゃん」になっちゃうのかな・・と自己分析。
別に「ちえちゃん」でも「柚希さん」でも尊敬の気持ちに変わりはないのですけど。「ちえちゃん」と(心の中で)呼べるのも魅力なのかなぁ彼女の。
真摯な努力の成果としての素晴らしいパフォーマンスと懼れずに正直な自分を見せられるところ。それがちえちゃんの魅力だなぁと思います。

SHUN先生振付のダンスは大人でかっこいいなと思いました。
とくにこれほどの大人なパフォーマーが揃うと圧巻だなぁ。1人1人のパフォーマーが洗練されているからこそでもあるなと。
求められれば最高をめざして突き進むアーティストをどこで止めるか判断するのは起用する側の責任だと思いました。
見る側としては最高のものを見たい。それには総合的なコンセプトを外れないこともまた重要。
「REON JACK4」はちえちゃんを通していまを生きる肯定的なメッセージがつたわってきました。
それぞれの場面がどういうコンセプトでどんなストーリーであるかはとても大事だと思います。弱い立場にある人が尊厳を傷つけられていることを当たり前だと思ってしまうストーリーを見たくはないので。

アンコールのナンバーの最後に出演者全員で歌われた「青い星の上で」に涙が出そうになりました。
昨年コロナ禍で一切の舞台がストップした時期にちえちゃんの呼びかけで宝塚OGの皆さんがリモートで歌い継いだ曲です。
なんでもない頃は聞き流してしまっていた歌詞が心に響きました。
大きな愛にあらためて気づかせてくれて心からありがとうと思いました。
そして、ちえちゃんの今後のますますのご活躍を期待しています。

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2021/08/25

街の灯りちらちら。

8月21日に北九州ソレイユホールの望海風斗コンサート「SPERO」に行きました。

登場時のフィンガーウェーブの望海さん、とてもお似合いでときめきました。
えっもしや?と思っていたらやっぱり「シャレード」のイントロダクションだったときは何かの血が滾りました。
「Misty」のジャズヴォーカルの表現力も素晴らしくて聞き惚れました。どんなジャンルでも自在にヴォーカルをコントロールできる人なんだなぁ。
望海さんトップ時代に「ジャズマニア」が見たいと思っていましたが、いまからでも見たい!とあらためて思いました。

ミュージカルナンバーはどれも圧巻でしたが、なかでも「星から降る金」は涙が出そうなくらい歌詞が胸に沁みました。
J-popの場面ではなんだか懐かしいメロディが・・。これ堺正章さんだっけ? ああこんな歌詞だったんだ。この詞(フレーズ)の後にこうくるんだ・・と。よく耳にした曲だったけれど、言葉のひとつひとつをこんなに耳で聞きとって情感を味わったことってなかったです。(あとで確認したのですが作詞は阿久悠さんなんですね)

MCで望海さんもおっしゃっていましたが、雪組トップスターになられてから博多座公演も西回りの全国ツアーもなかったのが残念でした。あったら通ったのになぁ。
コロナ禍のため「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」も「fff-フォルティッシッシモ-」もチケットを持っていた日に休演もしくは観劇を断念せざるをえなくて、縁がなかったのも本ッ当――に残念でした。
(退団直後にルキーニを演じられたエリザベート・ガラコンサートは幸運にも観劇できたのですけど、それだけに本当にあの現役時代の縁のなさはなんなのだろうと・・涙)

トップスター時代はご縁が薄かったのですが、これからさらに活躍されると思いますので、未来のご縁に期待します。
SPERO DUM SPIRO!
そして福岡でまたコンサートを! ぜひまたJAZZを歌ってください!

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2021/04/27

長い旅路の果てに掴んだ お前の愛。

4月22日に東急シアターオーブにて、「エリザベート TAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート」を見てきました。

花乃まりあさんがシシィを演じると知って、どうにかして見たいという思いと時節柄を慮る気持ちに揺れながら抽選に申し込み、幾たびかの先行抽選で辛うじて手にすることができたチケットを手に観劇が叶いました。
これまでエリザベートのガラコンを見たことがなく、そのコンセプトも概要もよくわかっていなかったのですが、キャストの豪華さにびっくり。明日海りおさんのトート! 北翔海莉さんのフランツ! ルキーニ役の望海風斗さんにいたっては宝塚退団後初の外部出演!! ルドルフは七海ひろきさん?! そりゃあチケットがなかなか取れないわけです。しかも宝塚のコスチュームで上演されるとは。
観劇が現実となって事の重大さに気づいた次第でした。

タカラジェンヌの愛し方には、その可能性を信じて見つづけていくというのもあると思いますが、その期待に応え尽くし夢を見せ尽くして卒業していく人もいれば、可能性を残したまま卒業していく人もいて、花乃まりあさんは私にとって後者のジェンヌさんでした。もっと彼女に夢を見ていたかったんです。
結論から言うと、本当に見に来てよかったと思いました。私の中のなにかが成仏できた感じがしました。偉大なる自己満足ですが。

娘役さんはとくにですが抜擢も早ければ卒業も早くて、人間的にも咲ききるまえに去っていかれるのがもったいないなぁと思うことがしばしば。
宝塚と言う閉じられた花園に適応することに命を費やしてやっとその目に映る世界が開けたかなぁと思う頃に卒業される。
宝塚とはそういうところと言われてしまうかもしれないけれど、その世界を愛するあまりに過剰な約束事を信じ込ませて囲いの中に押し込め私たちファンがその青春を消費する、それでいいのかなと心が痛くなることがあります。
いつも心のどこかに彼女たちへの申し訳なさがあるゆえにか卒業後のしあわせを切に祈らずにいられない。しあわせそうな姿に安心する。身勝手な想いです。

でもしかし。
私がそんな身勝手な罪悪感にとらわれているあいだも、宝塚の卒業生の皆さんはその命と芸を磨きつづけていたのだなと目が覚めるような素晴らしい舞台を見ることができました。

7年前、黄泉の貴公子の印象だった明日海りおさんは、いま堂々たる帝王でした。
中大兄やエドガーを経てのいまの明日海さんのトートなんだなぁと。経験を重ねることで同じ役を演じてもこんなに深みが増すんだなぁと思いました。
時間と空間を支配し、流し目ひとつで心を撃ち抜く威力に見ていてワクワクが止まりませんでした。このトート閣下大好き!となりました。
歌にも余裕が感じられて巧みに歌い方を変えたりされてました。ミルクのさいごの歌いあげ方も好きだったなぁ。

そしてすこしも悪びれることなく負の感情や悦びの感情を見せるトート閣下でした。
エリザベートに拒まれてこんなに傷ついた顔をするんだ。一瞬垣間見せるむうっと不貞腐れたような表情には見覚えが。この表情にいつも私はきゅんとしてしまうのです。
彼女を不幸に導く企みを巡らす時こんなに邪悪にほほ笑むんだ。そんなに彼女を愛しているんだと思うトート閣下でした。

自分から死に誘っておきながら「まだ私を愛してはいない!」とエリザベートを突き放す場面はいつも観劇しながらこれはどういうことだろうと考えてしまう場面なのですが、このガラコンではすんなりと腑に落ちていました。
それくらいエリザベートに愛されたがっているトートに見えました。
自分が望む完璧なかたちで愛されないとゆるせない我儘な駄々っ子のようなトート。すこしの瑕もゆるせず思い通りでないと傷つくトート。
私の性癖に刺さり過ぎるトート閣下でした。

そのトート閣下がエリザベートの愛を得て抱き寄せる時のなんと満足気なこと。ラストの昇天の場面でこんなにも自身が救われたように見えたトートを私は知りません。
ウン・グランデ・アモーレ!
死が人を、人が死をこんなにも愛し求めて結ばれたんだ——

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2021/01/12

ローマです。

Img_5688

2021年の初観劇は1月9日、博多座で上演のミュージカル「ローマの休日」でした。

ほんとうは前日1月8日のマチネを見るはずだったのですが、積雪によるバスの運休により地下鉄の駅に辿りつけず、またタクシーも出払っていてつかまえられず、雪道を徒歩で4km歩くことはできずに観劇できませんでした。
風雪の増す中小一時間雪だるまになりかけながらバスを待っていたのに、バス停を1つ1つまわられていたバス会社の方に運休を告げられ呆然・・。
数日前から大雪の予報が出ており、一緒に観劇する友人が山越えしてくるためずっと心配していたのですが、まさか私の方が身動きできなくなるとは・・・なにがおきるかわかりませんです。
(あとで考えたら、こんなときこそ配車アプリを使えばよかったのでした・・!)

なんとか帰宅して気を取り直し、博多座に電話をすると別日に振替えてくださるということで、翌日1月9日ソワレの観劇となりました。

楽しみにしていた「ローマの休日」は期待の大きさに対して、あれ?となったのは正直否めませんでした。
それほど映画を繰り返し見た人間ではないのですが、見せ方や見せるところがちがうんじゃないかと思いました。

アンとジョーの心が近づき変化していく過程、投げやりで口から出まかせだけで生きていたジョーの葛藤と変化していくさま、アーヴィングとの友情、王女をとりまく人びとの思い、そして自分がすべきことを自覚し覚悟を決めたアンの威厳とせつなさ・・それらをもっと感じたかったなぁと思ってしまいました。思っていたよりもあっさりしている印象でした。
見たいところはここからなのに・・の前でシーンが終わってしまって。演出と私の感覚が合わないといいますか。

全体的に熱量も伝わってこないなぁとも思いました。コロナ禍というのも関係があったのかもしれません。客席のリアクションも薄いなぁと感じましたし。笑いどころはたくさんあったにも関わらず・・笑い声も控えてしまうのはしょうがないのかな。(昨年の「ダンス・オブ・ヴァンパイア」や「シスター・アクト」みたいに客席参加型のフィナーレがついた作品のようにはいかないですよね。お祭り好きの博多座だけにリアクションを控えめにすると極端になってしまうのかな)

イタリア人の誇張の仕方も好い感じがしないなぁと思いました。
映画には製作当時のアメリカとイタリアの格差(戦勝国のアメリカに対し敗戦国であるイタリアは社会情勢も不安定)やアメリカ人に向けたローマの名所などが描かれていますが、いまこの時代に日本人がその当時のアメリカ人視点の誇張した“イタリア人”を演じるのは面白いと思えませんでした。イタリア人役の人びとがイタリア語らしきものを話す演出も、片言を話すのも、この作品のテーマを損なっていると思います。
主人公たちがローマの異邦人であることを表現するとしてももっとほかにやり方があるだろうにと思いました。

もっとロマンチックに、もっとエモーショナルに描けたはずだよなぁと思えてなりません。
アーヴィングの出し方も・・・。傍観者でいてほしいところで出張ったり、(内面的に)寄り添ってほしいところであっさりしていたり。
これはもう私とは感覚が合わないとしか。

朝夏まなとさんのアン王女は、コミカルな間がいいなと思いました。客席を向いてニカッと笑うところが私のツボでした。
ジョーのパジャマやガウンを着る場面は、映画だと袖や丈が長いのが萌えだったはずなんですが、朝夏さんはふつうに着てる(笑)。なんならガウンなんてカッコイイくらい。これはこれでこのアン王女もありかな。
大使館に戻って決意を述べる場面は、顔をあげ凛とした立ち姿に決意が見えて王位継承権第一位の王女様なんだろうなと思える気概が感じられて感動的でした。

加藤和樹さんのジョー・ブラッドレーは、思い通りにいかない人生を背負った男性像がリアルだなぁと思いました。なんでも適当で口から出まかせばかりで誠意の欠片もないような彼が、アーニャのために一獲千金のチャンスを手放す決意を大騒ぎする訳でもなく淡々とするところもリアルで好きでした。ほかの誰に気づかれなくともアン王女だけに向けられた友情に変えた恋心と誠意がつたわりました。

良い作品なんですよね。名作の名に恥じない。
だからこそ私の感覚と合わないのが残念でした。
あとやっぱり生オケは良いなと思いました。

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