カテゴリー「♖ 宝塚OG」の33件の記事

2024/06/09

未来がこわい

5月25日に博多座にてミュージカル「クロスロード」を見てきました。

やまみちゆかさんのパガニーニの漫画を面白く読んでいたので、パガニーニがどのように描かれているのだろうと興味津々で観劇しました。

まず思ったのは「ツインリードヴォーカルみたいだなぁ」ということです。中川晃教さんのアムドゥスキアスと相葉裕樹さん(Wキャスト)のパガニーニによる歌のバトルが繰り広げられている印象でした。
お2人以外も歌唱力に定評のある方々がキャスティングされていて、それぞれに難しい楽曲に立ち向かっている印象。
音楽に聞き惚れるというよりはスポーツ観戦のようなハラハラドキドキ感。歌い切ったパフォーマーに「よっしゃ!」と言いたくなる感覚でした。
いますこし楽曲に華やかさがあるともっと楽しめるのになぁと思いました。

才能があるゆえに自分の不出来がわかるのは辛いだろうなぁ。それをわかってもらえず期待される辛さも。パガニーニが闇落ちしてしまうのはわかる気がしました。
芸術に身を捧げて限りない高みを目指すのはある意味で悪魔と契約するようなものかなぁ。
ほかには誰もたどり着けない場所に1人で居るのは孤独だろうなぁなどと思って見ていました。

契約関係を結んだアムドゥスキアスとパガニーニはその後芸術的な問題で相反し、芸術とは音楽とは創造とはということがテーマになるのかな?と思っていたのですが、アムドゥスキアスとの契約は既定の演奏回数に達したらパガニーニの魂を自分のものにする、演奏は私(アムドゥスキアス)のためにだけに演奏する、ということで、なんか悪魔せこくない?と感じてしまいました。いやいやそもそも悪魔ってそういうものなのかな。
アーシャ(有沙瞳さん)の練習のために弾くのはカウントされるのに、母親が歌っていた子守歌を舞台で演奏するのはカウントされないというロジックもよくわからんなーと思いました。論理的に抜けがあるからこそ悪魔なのかな。
中川晃教さんはノリノリで楽しそうだなぁと思いました。

音楽的には凄いなと思いつつ、戯作としては期待ほどの面白味はなかったかなぁ。
とくにモヤったのはパガニーニと母親テレーザ(春野寿美礼さん)の関係性の描かれ方です。悪魔と対比させる母親という属性だけで存在していて生身の人間ではないなぁ。
テレーザの子どもはニコロ(パガニーニ)1人ではないし、子どもらを食べさせ育てなくてはいけないという現実のためには打算も必要だっただろうと思うのだけど、そういうことは見ようとしないし描かないんだなぁと思いました。
パガニーニのコンサートを後方の安価な席で見ているテレーザが隣に座ったアムドゥスキアスにわが子ニコロへの母の愛情を示す場面にはうるうるしましたが、そこに至るまでのテレーザの描かれ方がモヤりました。
娘であればこういう見方はしないだろうなと。これは息子にとって都合の良い物語だなぁと思いました。

パガニーニのパトロンであるイタリアの女大公であるエリザ(元榮菜摘さん)もまた都合良く描かれた登場人物だなぁと思いました。
ナポレオン・ボナパルトの妹である彼女に取り入ろうとする人びとに囲まれ傲慢に振る舞うこと、パガニーニの才能を気に入って独断で宮廷楽長に任命したり彼を兄ナポレオンに会わせようとすること。
決して望んだわけではない途方もない権力と立場を得たことと、それと引き換えに失ったものを惜しみ苛立つ心境はとてもわかるなぁと思いました。
パガニーニとの無責任でわがままな人間同士の男女の関係も、なににつけても「ナポレオン・ボナパルトの妹」であることに心の奥底で傷ついていることも伝わる人物でした。
良識を逸脱して人から陰口を叩かれる行動は一種の自傷行為だなぁと。
しかし、こんな闇深い内面を有した女性を登場させながら、「愛するがゆえに」彼に黙って自ら身を退く人物として描かれていたのががっかりでした。
いえ彼女の気持ちは痛いほどわかりました。がっかりだったのはそのことに気づいているのはアーシャだけで、パガニーニにはすこしも響いていないこと。
彼女から与えられるものはしっかり享受していながら、彼女の存在が不都合になったら、彼自身は与り知らぬかたちで彼女自ら退場しパガニーニは無傷のままなこと。
これってけっきょく母親テレーザのときと同じだなと思います。
彼女はパガニーニが都合よく放埓な性愛関係をもつために登場させた人物で、パガニーニと作劇にとって無用になったら退場させる、それでいいと思っている脚本にがっかりでした。

アーシャについてもおなじです。
気ままな猫を気ままに可愛がるように愛玩動物としての存在だなぁと。
すこし優しく接するとオーバーアクションで喜びを表現し、邪険に扱ってもなお彼だけを追いかけてくる存在。
彼が社会的に無責任で自堕落な行動をとってもそこを責めないし(女性関係にも口出ししない)、自己問答代わりの対話相手にもなってくれ、窮地を脱するヒントもくれる。そういうところはイマジナリーコンパニオンに近いともいえるかな。
面倒なことは求めず、彼が得意なことについての教えを請い、無条件に励まし彼自身を肯定してくれるとても都合の良い存在。
アーシャ自身のためではなくパガニーニのために存在する、それがアーシャでした。

パガニーニ自身はそんな都合の良い人びとたちに囲まれてケアされながらその誰とも向き合っていない。
彼女たちの人生なんてどうでもよい。
女性たちだけではなく、執事のアルマンド(山寺宏一さん、Wキャスト)ともそんな関係だったと思います。
これはパガニーニの姿に仮託したテイカーを描いた物語だったのかなとモヤモヤが残る観劇でした。

CAST

中川晃教 アムドゥスキアス
相葉裕樹 ニコロ・パガニーニ(Wキャスト)
有沙 瞳 アーシャ(Wキャスト)
元榮菜摘 エリザ・ボナパルト
坂元健児 コスタ/ベルリオーズ
山寺宏一 アルマンド(Wキャスト)
春乃寿美礼 テレーザ

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2024/05/13

ここにあなたはいます

4月27日に久留米シティプラザ ザ・グランドホールにてブロードウェイミュージカル「カム フロム アウェイ」を見てきました。

すごくアメリカ人好みな脚本だなということと、チケット代はほぼキャスト代だなというのが見終わった直後の率直な感想でした。
アイリッシュな音楽が心地よかったです。

別の9.11の物語

作品の舞台はカナダの大西洋側にあるニューファンドランド島の小さな町ガンダー。そこに見知らぬ人びとが大勢押し寄せることになる。
そこからはじまる物語でした。

その理由というのがあの「9.11」アメリカ同時多発テロ事件。
かつてない非常事態にアメリカ領空が閉鎖され、ヨーロッパ方面からアメリカに向かう航空機はこの島にあるガンダー国際空港に緊急着陸を命ぜられたのだそう。その数39機、乗員乗客総勢約7,000名。これは島民の人口とほぼおなじとのこと。

ガンダー国際空港は、いまみたいに航空機が無給油で長距離飛行できなかった時代に給油拠点として整備拡張された空港で、昔はたくさんの航空機が経由していたけれど、いまはその役目を終えた空港だそう。
そんな状況説明が冒頭で住民たちによって早口でされていました。
(客席で見ている私はそれを聞き取り理解するのに必死でした)

はじめは小さな田舎の町のコミュニティから。
これはいつもの顔ぶれなんだな。いつもの朝いつもの出勤いつものパブ。バスのストライキも。
いつものようにはじまり、いつものように1日が終わるはずだったんだな。
そんな1日がはじまったばかりという頃、まさに青天の霹靂のように島の人口とおなじ数の見知らぬ人びとを受け容れなくてはいけなくなった住民たち。
寝る処は?食事は?着替えは?ほかに困り事は? 短時間で現状を把握し、たくさんの決断をする。脳みそもフル回転カラダもフル回転。まさに非常事態にアドレナリンが放出されまくってるかんじ。
(主に島民ビューラ役の柚希礼音さんが笑)

さまざまな理由でアメリカ本土を目指して飛行機に乗っていた国籍もさまざまな乗客乗員たち。
さいしょはどうしてこの小さな町に緊急着陸しなくてはいけないかも知らされていなくて。
ようやくTVニュースであの映像を見た衝撃。世界はどうなってしまうのか。家族や知人は無事なのか。なにをするすべもなく自分はいつまでここに滞在しなくてはいけないのか。
わからないことだらけ知りたいことだらけで寝食そっちのけで用意された公衆電話に長い列を作る人びと。
スマホはなくSNSもない時代、海外との連絡方法は国際電話かPCによるメール、BBS、チャットだったと記憶しています。

そんな5日間を描いた舞台でした。

驚嘆の舞台展開とキャスト陣

舞台上の役者たちは1人で何役も演じるけれど、上着や被り物を変えるだけで衣装替えはなし。
セットは木々らしきものと椅子とテーブルくらい。
それを役者たちが演じながら動かして、パブに見立てたり飛行機の客席に見立てたり、秒単位で転換していく。
さまざまなきっかけで飛行機の客席になったりバスの中になったりパブになったり臨時宿泊所の学校になったり。
演じる人たちも大変だなと思うけれど、見ているほうも目まぐるしい。
セリフの内容と発声でいまこの役者は誰を演じているのか判断する。
技術と運動能力が高くてよほど訓練された人たちでなくてはできない舞台だなと思いました。
とにかく演者が皆凄い!と思わずにいられない作品で。そこを評価できるかどうかかなというのが見終わってすぐの印象でした。

ちいさな棘たち

見終わった時は「よかったね」「凄かったね」という感想しか浮かばなかったのですが、あとになってだんだんと「ああ!」という気づきがある作品でした。
見ている時に自分が感じた棘のようなもの(その時点では何かわからなかったもの)の正体や理由があとになってわかってきたように思います。

親切で行動的でタフな島民たちがこの緊急事態にとった行動はとても素晴らしいと思う一方で、私は善良なキリスト教徒的な同調圧力に息が詰まりそうでした。
時に善意の人びとほど恐ろしいものはない、そう感じたことがある人は、ここではひっそりと息を潜めて生きていくしかないのではとか。そんなことを思いながら見ていました。
感じないようにしていた喉の奥の小さな棘の違和感を思い出させられたようで。
乗客の中に見かけたラビ(吉原光夫さん)に小さい頃に島に来て以来一切伏せていた出自を語ったあのジューイッシュの人(橋本さとしさん)が、短い場面だったのに強く心に残っていました。

言葉がわからずパニックになるアフリカ系の乗客(加藤和樹さん、森公美子さん)とは、お互いが持っている異言語の聖書の一説を指さすことで心が通じる一方で、ムスリムのアリ(田代万里生さん)に向けられるまなざしがどんどん敵意と憎悪を孕んでいくのも怖かったです。
彼が国際的ホテルのマスターシェフだとわかって皆の態度があっさり溶解するのだけど、そうじゃなかったら?という疑問が最後まで拭えませんでした。自分たちが認める価値観の中に身を置いていない異教徒だったらどういう扱いを受けたのだろうと。

アメリカンエアライン初の女性機長ビバリー(濱田めぐみさん)のエピソードはとてもわかりやすく、共感するところも多々ありました。
拍手が起きるような大きなソロナンバーがあったのは彼女だけだったと思います。このキャラクターに託したい思いが、脚本を書いた人にはあるのだなぁと思いましたし、2020年代のいまだからこそ大きな声で歌い上げても受け容れられるのだなぁと。
この場面が、このストレートな主張が、そっくりそのまま30年前に上演できただろうか、それが果たしていまと同じように受け容れられただろうかと。
時代性を最も感じたところでした。

緊急着陸した大勢の乗客たちを臨時の宿泊所まで移動させなければいけないのに、その日は折悪しくバスがストライキ中。
バスの運転手で労働組合のリーダーであるガース(浦井健治さん)の交渉相手はガンダー町長(橋本さとしさん)だったのでバスは町営なのかな。
いつもの朝の情景の時から町長はあまり相手にしたくなさそうだったけど、航空機の緊急着陸が決まってからはもうとにかくバスを動かしたい一心でガースにバスを動かすことを要請。
でもガースだって組合員の生活がかかったストライキをしているのだから簡単に「はい」とは言えない。

舞台を見ている私は、彼に早くストライキを中止して運行を承諾してほしいと思っていて、そんな自分の気持ちに気づいてとても怖かったです。
「緊急事態」とはこういうことなんだと。
個人の意思や願いが通らなくなる。周りを囲む1人ひとりからの圧力によって悪条件の労働を強いられても文句を言えなくなる状況になるということなんだなと。
皆とおなじ方向を向いていないと、コミュニティが「善」としたことを一緒にしないと、非難の目を向けられる状況なんだなと。

町長の要請を承諾したガースの本心はわかりません。使命を感じたのか渋々なのか。そこを深掘りするようには演出されていなかったので。見ていてわかったのは、そうするしかないと思ったのだなということだけ。
バスの運転手たちも、それぞれに誇りをもってやったかもしれないし嫌々だったかもしれない。いろんな人がいたのだろうなというのが私の想像です。

見知らぬ滞在者たちのために5日間寝食も忘れてありとあらゆるリソースを提供した人びとが称賛されるのは肯けますが、誰一人報酬を受け取りませんでしたと強調するのはどうなのかなぁと思いました。
レジオン(在郷軍人会)に属するビューラ(柚希礼音さん)をはじめ登場するパワフルな島民にとってはエキサイティングな5日間だったかもしれないけれど、皆が皆おなじ熱量ではないだろうなぁと、私はここに登場しない人びとのことを考えていました。

私自身の経験から思うのですが、島民たちのこれは「他所から来た人びと(カムフロムアウェイズ)」をもてなす文化だと思いました。「スクリーチイン」などまさに。
都人は喜んで享受するけれど、それで心をゆるして移住しようものなら関係は一変する。
客人をもてなす陰で透明化されている人びと(属性)が必ずいることを経験上知っています。

フレンドリーな島民のもてなしに心をゆるしてその流儀を容易に受け容れることができるケビンT(浦井健治さん)に対して、どうしても溶け込むことができないケビンJ(田代万里生さん)も小さな棘の一つでした。
たった数日で心を開くのが難しい人もいるでしょう。
蟠りなく溶け込めるケビンTはきっと育ちが良い人なんだろうなぁ。
でもケビンJのように露悪的な言動で自分を鎧わずには人前に居られない人もいる。人と人との関係をスイスイ泳げる人もいれば、うまく泳げず溺れかけてしまう人もいる。

突然投げ込まれた大海原でどうにか浮いているのが精いっぱいのケビンJはケビンTにそばにいてほしいのに、泳ぎが得意なケビンTは1人でどんどん遠くへ泳いで行ってしまう。
ケビンTにはその失望感はわからないんだろうなぁ。それは責められることではないし、その後一緒に遠泳できそうなロビン(加藤和樹さん)を新しいパートナーにしているのを「ああそうだよねぇ、それがいいよねぇ」と思いました。
あのあとケビンJはどうしたかなぁ。あの出来事を契機に心新たに幸せに生きていたらいいなぁと思います。

安否がわからず心配し続けていた息子がWTCの崩落で命を落としていたことがわかった人(森公美子さん)、互いに国籍も生活環境も人生観もちがっていてこの出来事がなければ一生出遭うこともなかったはずなのに終に人生のパートナーになった2人(安蘭けいさん、石川禅さん)、はじめは取材相手に舐められるくらいのヒヨッコだったのに激動の濃い5日間の取材を1人で担い成長を遂げた新人リポーター(咲妃みゆさん)とか。
登場する人物は皆人生観が変わる5日間を経験をして。
乗客たちは見返りも求めず親身にもてなしてくれた島民に感謝の念を抱きながら島を去って、そこから数年後、ニューファンドランド島に集っていました。

あのときの感謝を伝えるため、変わらぬ友情を確かめるため、そしてあの島での経験から得た人生観・価値観などをベースに築いていった自分の「いま」を報告し合うために。
そんな彼らの幸せな報告に「良い話だったな」と思いつつも、私の心の奥には小さな抜けない棘が残りました。
ここに集い、あの経験から得たものを肯定的に語る彼らは似通った社会通念(現代の西洋思想)を共有する人びとなんだなぁということ。
彼らには見えていない人びとがいるんだよなぁということ。
(9.11以来深まっていった断絶の要因がここにもあるなぁということ)

これは決して人と人のハートウォーミングな物語というだけでは終わらない作品だったのだと思います。
あえてなのかどうなのか、日本人に理解しやすくしたせいなのか、脚本にはたくさんの課題が散りばめられているにもかかわらず焦点が絞られ過ぎているように見えたのが残念だなぁとも思います。
観劇後に思い起こしながら、これはとてつもない情報量でたくさんのことを示唆し考えさせられる作品だったのだと思いました。

そして、ほんとうはこの豪華キャストを集めて演る必要はない作品なのではないかと思うのだけど、このキャストでなくては興行が成り立たないのが本邦のエンタメ界の現実なのかもしれないなぁとも思いました。

CAST

安蘭けい ダイアン/クリスタル/ブレンダ/管制官/パイロット/乗客/地元住民/町役場職員
石川 禅 ニック/ダグ/パイロット/乗客/地元住民/町役場職員/アップルトン住民/心臓専門医
浦井健治 ケビンT/ガース/パイロット/乗客/地元住民/ブッシュ大統領/町役場職員/心臓専門医/CBCリポーター/動物たちの声
加藤和樹 ボブ/ムフムザ/地元住民/管制官/パイロット/乗客/町役場職員/ブリストル機長/心臓内科医/ロビン
咲妃みゆ ジャニス/客室乗務員/ブリトニー(ウォルマート店員)/乗客(パーティーガール含む)/地元住民/ヒンドゥー教徒/動物たちの声
シルビア・グラブ ボニー/マーサ/管制官/パイロット/乗客/町役場職員/地元住民/ヒンドゥー教徒/AI Jazeeraリポーター
田代万里生 ケビンJ/アリ/ドワイト/管制官/パイロット/乗客/地元住民/町役場職員/心臓内科医/BBCリポーター
橋本さとし クロード/エディ/テキサス人乗客/管制官/パイロット/乗客/地元住民/ブレンダの兄/ダーム(アップルトンの町長)/ガンボの町長/ルイスポートの町長/心臓内科医
濱田めぐみ ビバリー/アネット/管制官/乗客/地元住民/町役場職員
森 公美子 ハンナ/マージ―/ミッキー/管制官/パイロット/乗客(パーティーガール含む)/ムフムザの妻/地元住民/町役場職員/イスラム人乗客
柚希礼音 ビューラ/ドローレス/管制官/パイロット/乗客/地元住民/町役場職員/税関職員
吉原光夫 オズ/ジョーイ/マイケルズ先生/ラビ/テリー/マッティ/管制官/パイロット/乗客/地元住民/税関職員/心臓専門医のリーダー/CTVリポーター

スタンバイ:上條 駿 栗山絵美 湊 陽奈 安福 毅

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2024/04/04

生きている。

3月30日、キャナルシティ劇場に望海風斗ドラマティックコンサート『Hello,』に行きました。
幸せな気持ちと元気を持ち帰った気がします。

オープニングから、「POP STAR」「真夏の世の夢」「あゝ無情」とアップテンポの懐かしのヒットソングを伸びやかにノリノリに歌って客席の心を鷲掴みに。
これは楽しいコンサートになると客席全員が確信したところで・・まさかの「お祭りマンボ」笑。この歌ってこんなにグルーヴィーだった??こんなにドラマティックだったっけ???となんだか訳がわからないままに巻き込まれていて面白かったです。
博多では「わっしょい」ではなくて「おっしょい」らしいと小耳に挟んでこられたようで、謎の「おっしょーい!」「おっしょーい!!!」のコール&レスポンスにも笑いました。このコール&レスポンスはエンディングまで都度都度リプライズされて盛り上がりました。
(※じつは博多祇園山笠はタイムレースなので、「おっしょい」は最初だけで実際には短縮形の「オイサ!オイサ!」の連続なのですが笑)

観客の心をがっつり掴んだところで、なんとこんどはソフト帽をかぶりジャケットを羽織って「勝手にしやがれ」と「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」より「愛は枯れない」の男役メドレー。
望海さん曰く、雪組プレ100周年「Greatest Dream」に出演されて以来『男役スイッチを手に入れた』そうです笑。
斜に構えたら瞬時に切り替わるスイッチ、いいですねー笑。
こうして聴いてみると、男役の歌声といつもの歌声ってこんなにも違うんだと驚きました。(声帯の使っている場所がちがう?🤔)

つづく洋楽メドレーは、カーペンターズにABBAにスティーヴィー・ワンダーにプレスリー。
なんでも歌えて凄いし、リズム感も最高に良くて楽しかったです。ミクロの単位、刹那の単位までピタッときて(主観)もう気持ち良いったらなかったです。
とくに「ハウンドドッグ」はいままで生で聞いた中でいちばん好きかも! もう何を聴いても最高でたまりませんでした。

さらに好きだったのがこれに続く「摩天楼のジャングル」(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ)のクールなダンス。
からの「Love Can't Happen」(グランドホテル)は男爵の心情や舞台の情景が思い浮かんで涙が出そう。
そして「アマポーラ」。望海さんの繊細で豊かな声にうるうると感じ入っていたら・・あれ? もしかして望海さんの喉にエヘン虫?
困り顔になりながらも音は外さず、でも本当にヤバいみたいで、どうするのかなと思っていたら曲を止めることもなくメロディにのせて「♪(アマポーラ―)〽お水を飲ませて~」とセットの陰にお水を取りに行き歌の合間に数回給水。それでエヘン虫はいなくなったようですが戻しに行くタイミングがなかなかないみたいでペットボトルを手にしばし困惑顔・・そのうち諦めて小道具のようにスタイリッシュに持ってらっしゃいました(さすが)。
望海さんの様子がおかしいことに気づいたバンドマスターのキーボートの方も、望海さんの動きに合わせて演奏を止めずに繋いでいたのもさすがだなぁと。まさにライブだなぁと思いました。

次のナンバーは望海さんの持ち歌「Look at Me」でキャスト全員でにぎやかに盛り上がる場面でしたが、皆さん手に手に自分のペットボトルを持っていて、それに気づいた望海さんが「やさし~みんなやさし~」と感激されていたのが印象的でした。(本当に思わぬハプニングにドキドキされていたのでしょうね)

続いてのミュージカルナンバーのコーナーはアップスタイルにロングドレスのいでたちで、まずは「ジーザス・クライスト・スーパースター」のマグダラのマリアのナンバーから。
ミュージカルナンバーを歌う望海さんは、ポップスを歌う時とはまた違った迫力があり素晴らしかったです。
「ディア・エヴァン・ハンセン」から「Waving Through a Window」。この作品は知らなかったのですが、どこか心にひっかかるものがあったので見てみたいと思いました。
その次が今年主演されたオリジナルミュージカル作品「イザボー」から「Queen of the Beasts」、見ていない作品なのでどんな心情を歌っているんだろうなぁと思いながら聴きました。(今月早くもWOWOWで放送されるとか?)
そして「ドリームガールズ」の曲で「Listen」。じつはさらっと聴いてしまったのですが、舞台では歌われていなかった曲だとか??(わかってなかった・・汗)

アンコールはガラッと雰囲気が変わってTシャツにデニム姿で登場。
アンジェラ・アキさんから提供された楽曲「Breath」は、昨年宝塚で悲しい出来事があって以来抱え込んだ思いを書き付けてアンジェラさんにお渡しして、そこから書いていただいたものそうです。
明けない夜を過ごしている人への思いが込められているように私には感じられました。
そしてエルトン・ジョンの「Your Song」、あまりにも有名な。
『How wonderful life is while you're in the world』と歌う望海さんの歌声が心に深く沁みました。

さて、福岡公演にはスペシャルアンコールがありまして、歌う楽曲は「〇〇マン」か「〇〇アン」のどちらか、どいうことだったようですが、この回は「ドン・ジュアン」より「俺の名は」でした。
自分が演じた作品が再演されるのが夢だったそうで、今年この「ドン・ジュアン」と「Gato Bonito!!」が再演されるのが決まったことが嬉しいと語ってらっしゃいました。

望海さんの誠実さと温かさを感じて心の中をいっぱいにしてもらったおよそ100分のコンサートでした。

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2024/03/20

ヒールで1マイル歩いただけでわかったと思わないで

3月16日に博多座にて山崎育三郎さん主演のミュージカル「Tootsie」を見てきました。
とてもクオリティの高い舞台でした。

女性とキャリアのリアル

悩みながら傷つきながらも目指すものに対して一生懸命で正直、自然体な感性のジュリー(愛希れいかさん)がいいなぁと思いました。
役者を目指すなかで心の支えだった恋人が子どもを欲しがり別れを選択したことを語るくだりはせつなかったです。キャリアを積む時期と出産適齢期が重なる問題、キャリアを積みたい女性にとって二者択一を迫られる現実、その選択は子どもを持つ持たないだけではなく様々な問題に派生し愛情関係の清算に及ぶこともある。
キラキラのミュージカルコメディ然とした作品ながら、こういうリアルな問題から目を背けていないのがこの作品に関わる人たちを信用できるなと思いました。

役者の性別と役の性別がちがってもいいよね?

マイケル/ドロシー(山崎育三郎さん)については、ふだん宝塚歌劇や歌舞伎を見ているので、役者の性別と役の性別がちがっても人気が出たならどんどんやればいいやん?って思いました。
(役柄にもよりますが新派の女形は女性の役者に混じっても素敵だと思います)
なので「女性から役を奪った」という理屈には頭が???となりました。じゃあ女性だったら誰が演じてもいいのかっていうと違うわけだし。
このあたりの感覚はアメリカのショービズの世界とはちがうのかなぁ。
ただ役者自身が自分の身体の性別を偽るのはダメだと思います。

女性として生きること

言えるのは、マイケルはしばしのあいだでも女性として生きたからこそ気づいたことがいろいろあったんだなということ。
男性として女役を演じたのだったらこの気づきはなかったと思います。
そこにこの作品の面白さがあるのだと思いました。
女装して女性として存在していると相手に寄り添った考え方ができたのに、素の男性にもどると相手に対する認知が歪むのが不思議だなぁと思いました。マイケルに限らずロン(エハラマサヒロさん)もマックス(おばたのお兄さん)もですが、男性でいると目の前の人の意思を無視して話をすすめるようになるのはどうしてだろうと思いました。3人とも男性像としては、ちょっとステレオタイプに描かれ過ぎなのかもしれませんが。

サンディの生きづらさ

サンディ(昆夏美さん)は混乱しているなぁと思います。
一度インプットしたら上書きができなくて人生が大変になってしまっているみたい。俳優になる夢も人生のパートナーも。とっくに「これじゃない」と判断を下す段階は過ぎていると思うのに。それができないことが彼女自身を生き難くさせているみたいだなぁ。
さいごにマイケル以外の男性の魅力に気づいたことで、世界の見え方が変わったかな? これまでの自分の人生を踏まえ肥やしにして、幸福だと思える人生を歩めるといいなぁと思いました。なぜか応援したくなるキャラでした。

こんなふうにショービズの世界のみならず、現代にリアルにある問題を考えさせられる脚本はいいなぁと思いました。
変にストレスを感じることもなくて、ストーリーに没入できたのが満足度の高さに直結した気がします。

CAST

マイケル・ドーシー/ドロシー・マイケルズ(山崎育三郎)
ジュリー・ニコルズ(愛希れいか)
サンディ・レスター(昆 夏美)
ジェフ・スレーター(金井勇太)
マックス・ヴァン・ホーン(おばたのお兄さん)
ロン・カーライル(エハラマサヒロ)
スタン・フィールズ(羽場裕一)
リタ・マーシャル(キムラ緑子)

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2024/02/03

怪盗紳士現る!

博多座にてミュージカル・ピカレスク「LUPIN~カリオストロ伯爵夫人の秘密~」の1月22日初日と24日マチネ、そして28日千穐楽を見てきました。

豪華なキャストとスタッフによるライトなエンタメ

華やかな出演者+小池修一郎×ドーヴ・アチアによる新作ミュージカル、果たしてどのような作品になるのかと思いましたが、豪華な演者とスタッフによる遊び心満載のライトなエンタメというかんじの作品でした。
名場面やあっという仕掛けがあるという訳ではなく、演者のパフォーマンスを愉しむ趣向で面白かったです。
「純潔」連呼とか女性参政権運動の描写などは感覚が古い気がしてどう受け止めたらよいのか戸惑うところもありました。

私は古川雄大さん目当てで見に行ったのですが、私が見たかった古川君とはちょっと違ったかな。ミステリアスなゴシック・ロマンス的な雰囲気を期待していたのです。ご本人はとても楽しそうに演じられていて、だんだんと見ている私も愉しくなりました。
ほかの演者の皆さんも楽しそうで、これはそういうところを面白がって見る作品なんだなと思いました。

真彩希帆さんのクラリス最高

劇中でいちばんツボだったのは、真彩希帆さん演じるクラリスです。
3階から躊躇なく飛び降りたり、自分をめぐって美男2人が戦うのを目を皿のようにして見物してたり、特段活躍したわけでもないのに「財宝は君のものだ」と言われたら遠慮なく受け取っているのも、挙動のいちいちがツボにはまってしまって、クラリスいいわぁと思いました。
なにより彼女には未来に目的があるのがいいなと思いました。夢を叶えるにはお金が必要なのです。
ロマンスを夢見たりもするけれど恋愛依存ではなくて、自ら責任のあるポジションに就いて自分の人生を歩んでいるのが凄く好きでした。
原作とはちがってこのクラリスなら長生きしそう!きっと幸せになりそう!と見ていて楽しくなりました。
どのみちルパンはアバンチュール(冒険)をやめられないのだから、クラリスも自分がやりたいことに夢中になるのがいいよねと。
真彩希帆さんの明るい個性が活きている役でした。もちろん歌は抜群。

柚希礼音さんと真風涼帆さんのカリオストロ伯爵夫人

カリオストロ伯爵夫人ことジョジーヌ役は柚希礼音さんと真風涼帆さんのWキャスト。
柚希ジョジーヌは博多座公演は初日の1回のみの出演でチケットが手に入るかドキドキでしたが、幸運なことに見ることができました。
スワローテールを翻してルパンと踊ったり、ドレス姿でルパンにタンゴを教えたりするミステリアスな悪女で、華と存在感が半端ないちえさん(柚希さん)にピッタリの役だなぁと思いました。柚希ジョジーヌを見終わった後は、同じ役を真風さんが演じるのが想像ができないなぁと思ったのですが、真風さんは真風さんでまったくタイプの異なる色香の漂う魅惑的なジョジーヌでした。
柚希ジョジーヌはモーションが大胆でどこにいても目を惹くセレブリティなかんじで、真風ジョジーヌはどの角度から見てもエレガントなマダムな雰囲気がありました。
なにより2人ともとても大部屋俳優には見えません。ゆえによくも化けおったなぁと思いました。才能ありすぎ笑。

立石俊樹さんのボーマニャン

「世界をこの手に」と歌ういかにも小池作品の悪役らしいボーマニャンは博多座では立石俊樹さんがシングルで演じていました。
キャスト発表の時にいちばん驚いたのがこのボーマニャン役のお2人(もう1人は黒羽麻璃央さん)でした。ルパンよりずっと年上なイメージがあるボーマニャンに若手俳優さんがキャスティングされていたので。
ですが舞台を見ていたらすでにルパンは怪盗紳士として世間に名を馳せている設定だったので(20歳そこそこの若造ではない)合点がいきました。
小池作品らしく、古川ルパンの美しき敵役がボーマニャンという設定なんだなと。
立石俊樹さんは去年の「エリザベート」のナルシスティックに悩めるルドルフ役がお似合いの役者さんという認識だったので、ボーマニャン役で躊躇のない悪役を活き活きと演じられていてさいしょはびっくりしました。
さらにどこから湧いて出たのか怪しい手下たち(黒鷲団)を率いて「俺はルシファー 神に見放された・・」と歌いだしたときは、どどどうした?!と頭がついていきませんでした。いきなりそんなあなた。いったい過去に何があったのかと彼の過去が気になりすぎて初見はその後のストーリーを見失いかけました。
全編を通してかなりクラリスに執着はあるのだけど、でもそれは恋とか愛情とかではなさそうで、ではなぜ?と私なりに考えた結論としては、自分が大好きゆえにクラリスが自分を選ばない現状が受け入れられないのではと。そのクラリスが選んだ相手であるがゆえにルパンに対する敵対心も強烈なのかなとも思いました。自分をないがしろにするルパン(認知のゆがみ)を叩きのめさないと生きていられないのかなと。
エギュイーユ・クルーズでの古川ルパンとの決闘シーンはとてもカッコよくて見入ってしまいました。うん、絶対にあるべきシーンだなとしみじみ思いました。古川雄大さんと立石俊樹さんがキャスティングされている意味をしっかりと回収していたなと。
ボーマニャンが行動してくれなかったらクラリスの愛よりアバンチュール(財宝発見と伯爵夫人の誘惑)に奔った挙句にまんまとしてやられて無様を晒すところだったルパン。歪で華やかな敵役として、主人公の面目を保つ役割を果たしたボーマニャンは最後まで良い仕事をしていたと思います。

加藤清史郎さんのイジドールと小西遼生さんのホームズ

イジドール・ボードルレ役の加藤清史郎さん、非の打ち所がない良い役者さんでびっくりでした。
歌も良いし間も良いしセリフも明瞭だしすばしっこい身のこなしも・・ホームズ役の小西遼生さんとガニマール警部役の勝矢さんとの連係プレーもいつも面白くて信頼を寄せて見ることができる役者さんに出遭ったなぁと脳内メモリに記録しました。
小西遼生さん演じるシャーロック・ホームズは、ルパンシリーズに出てくるホームズ(ショルメ)よりかはドイルの原作に近い気がします。ベーカー街221Bのワトソンに電報を打っていたりしてましたしコカイン常用など本家のホームズに通じる符号が。自分を出し抜く悪女に惹かれるところも本家ホームズっぽいかなぁと思いました。
でもおマヌケなかんじは本家とは別物で、いつのまにかイジドール君とコンビとなっていて面白かったです。ルパンを永遠のライバルと見做して自らの女装についてもルパンとのクオリティの差を検証しているところとかも小西さんがいい味を付けていてくすりとさせられました。
クラリスとルパンの愛の抱擁を阻む自分勝手な決闘宣言も、クラリスといっしょに『え?』となりました笑。でもたしかに見たいルパン対ホームズ笑。本家ではボクシングにフェンシングの名手で日本武術にも通じているし、ルパンもボクシングと日本武術の使い手ですしね。
ルパンが主役だから勝利はルパンのはずと見ていたら、いいかんじに投げ飛ばされて・・大団円への布石、古に張られた仕掛けを回収という超重要な役割を果たすんですね。毎回ちゃんとあの位置に飛ばされるの凄いなぁと感心しました。

古川雄大さんのアルセーヌ・ルパン

古川雄大さんのルパン、登場は腰の曲がった考古学者のマシバン博士で声もおじいさん、デティーグ男爵家の夜会ではアメリカ帰りの実業家ヴァルメラで若干声が高めなキザ男、アジトでの本名のラウール・ダンドレジーの時はピュアな青年のよう、赤毛の新聞記者のエミールは腕まくりのあまり冴えない風貌で、カンカンダンサーのアネットの時は声もうんと高くてしぐさも可愛い女の子になりきり、そして伯爵夫人の誘惑をためらいもなく受け入れるアルセーヌ・ルパンといくつもの顔を見せていました。
母親のアンリエットのような清廉な令嬢タイプを前にした時だけ、クラリスが感じた少年のような純粋な人格が顔を出すのかも。とはいえアルセーヌ・ルパンの人格でいる時間の方が長いし、それ以外のさまざまな人格にも変貌してしまうし、ラウールでいる時間はほんのつかの間のような・・。
このルパンとクラリスが今後もおつきあいするなら、そのつかの間を愛して、それ以外の時は自分がやりたいことに夢中になっていたほうがクラリスらしくいられるよ、とおせっかいなことを思いました。
ルパンもきっとそんなクラリスが好きだよねと。アバンチュール(冒険)は絶対にやめられそうにないから。
クラリスもルパンの女装にすこぶる協力的だったり(彼が歌えないキーを舞台裏で歌ってあげてるし)、面白いことには前のめりですよね笑。ルパンの冒険譚も面白がって聞いていそう。悲劇が似合わない2人でとても素敵だなと思いました。

その他キャストと千穐楽カーテンコール

そういえば、フレンチカンカンの場面、女性参政権運動のご婦人方とフレンチカンカンのメンバーを合わせると女性キャストの人数が足りなくない??と不思議に思っていたところ、カンカンに男性キャストも混じってる??と気づいたのですが、女性参政権運動のご婦人方にも男性キャストが混じっていたんですね。いやちょっとそんな気配は感じていたのですが・・汗。
カッコイイ黒鷲団にも女性がいて、皆さんなんでもできて素敵だなと思いました。
そして20世紀騎士団は良いお声の持ち主にしかボーマニャンさんの入団許可がおりないのかなと。秘密のお話のはずなのに皆さん声が通り過ぎ・・笑。

千穐楽のカーテンコールでは最初から客席スタオベで、挨拶が長くなることを見越して古川君が着席を促したら、その横でぺたんと舞台上に座ってニコニコ古川君を見上げていた真彩希帆さんと小西遼生さんが可愛かったです笑。こんなお茶目ができる雰囲気のカンパニーなんだなぁと思いました。
そして千穐楽の1月28日はクラリスのパパ、デティーグ男爵役の宮川浩さんのお誕生日で還暦を迎えられたそうで、カーテンコールでは舞台と客席の皆でバースデーソングを歌いました。
宮川さんが帝劇の舞台に初めて立ったのが36年前、古川君が生まれた年だそうです。今年生まれた子が帝劇の舞台に立つまで自分も舞台に立ち続けると古川君が決意表明をされていました。
そんな古川君曰く『エモい』お話の流れから急に話しを振られた立石君、宮川さんへの思いをしっかりとお話されてて古川君的には苦笑だったようでした。(突然だから辞退されると予想されていたようです)
古川君のツッコミもよくわかってないようで場を『かっさらって』いた立石君、さすがだなぁと微笑ましかったです。舞台ではあんなに闇落ちしているボーマニャンを演じていた彼の素の雰囲気、そして宮川さんへの思いを知れて個人的には嬉しかったです。
こんなに和気あいあいとしたカンパニーで何か月も過ごして来られたのだなぁと思いました。

博多座の後は公演最終地で古川君の故郷でもある長野での公演が控えています。
公演日程発表時には長野公演に行く計画も立てたのですが、あれよと言う間に完売で諦めました。(真冬の公演でなければもっと真剣に計画したのに・・と思っていましたが長野公演千穐楽の配信が発表されて良かったです)
佳き大千穐楽を迎えられますように。

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2023/12/19

未来と引き換えに今を得たんだ

12月13日と14日に東京芸術劇場プレイハウスにてフレンチロックミュージカル「赤と黒」を見てきました。
今回は2泊3日で3演目の観劇旅行でしたので駆け足で感想を残しておこうと思います。

このフレンチロックミュージカル「赤と黒」は、主人公のジュリアンの生い立ちには触れられず、ナポレオンについてや世情についてもざっくりとしか言及されていないので、セリフや演者の表現からそれらを感じ理解していくことになるのですが、今回見た梅芸版ではジュリアンのセリフの中にあった「身の程知らず」という言葉がすべてに繋がっているようだと思いました。

ジュリアンはこの「身の程知らず」という言葉を幼い頃から何百回と言われて来たのではないかなぁと思いました。
本を読んでいるのが見つかった時、ラテン語を学んでいるのを知られた時、ふと憧れを口にした時、なにかに立ち向かおうとした時、等々。
なにをしても「身の程知らず」という罵倒がついてまわるそういう生い立ちを背負っている青年なんだなぁと。
それゆえ口を噤んで野心は心の奥底に秘め、注意深くそして誇り高く生きているんだなぁと思いました。
「身の程知らず」が原動力でもあるのかなと。それを実行していくことが。

町長家の家庭教師になること、町長夫人ルイーズと恋愛関係になること、由緒ある侯爵家の秘書となること、高慢な侯爵令嬢マチルドと恋愛関係になること・・ジュリアンにとってはどれもが「身の程知らず」な行いになるかと思います。これらのみならずジュリアンにとっては望むことすべて、生きることすべてが「身の程知らず」と思えるのかもとも思います。

そんなジュリアンが成し遂げた最高の「身の程知らず」が、真実ルイーズから愛されたという実感なのでは、と思いました。
騎士(シュヴァリエ)の称号を与えられ貴族に連なりラ・モール侯爵家の一員としてそののちも地位を上り詰め権力を手にすることのほうがよほど「身の程知らず」な野心に思えますが、ジュリアンにとってはそれと同等かそれ以上に「真実愛される」ということに価値があったのかなぁと、独房を訪ねてきたルイーズとの美しいシーンを見ていて思いました。
愛されなかった子どもが、いまこの瞬間満たされたのだなぁと。

ラストシーンは納得のようなせつなさのようななんともいえない感情を味わいつつ、作品全体から、いまもなお「身の程知らず」という概念が存在する世界への若い人の憤りのようなものも感じました。
それがこの梅芸版からうけた独自の印象でした。

東京芸術劇場プレイハウスに行くまで

フレンチロックミュージカル版の「赤と黒」は、礼真琴さん主演の宝塚歌劇星組版Blu-rayをお買い上げしてしまうくらいその楽曲が好きだったので、梅芸版の上演が発表され主演のジュリアン・ソレル役が三浦宏規さんと知ってこれはなんとしても見に行きたいなと思いました。
公演日程を確認すると梅田芸術劇場ドラマシティ公演が1月3日~9日。東京芸術劇場プレイハウス公演が12月8日~27日。
常なら関西公演に行くところですが、お正月休みは家族の帰省に対応しなくてはいけないし、お正月休み明けは有給も取りにくいので無理。
ということで、12月に人生初の東京芸術劇場に行く決意をしました。

蛇足ながら池袋は20年以上まえにサンシャインシティの某同人誌即売会に行ったのと3年前にヅカ友さんに某元ジェンヌさんのコラボカフェに連れて行ってもらったことがある程度という極めて不案内な状態でした。
池袋駅の改札を出てふと、3年前に案内してくださった方が「西口にあるのが東武百貨店、東口にあるのが西武百貨店」とおっしゃっていたことを思い出したことが、本当に役に立ちましたです涙。
あれがなかったら見当違いの方向に進んでいたかも。
ひたすら「TOBU」というロゴを横目に見て自分を励ましながら地下通路を進んで無事に劇場にたどり着くことができました。

演出他について

私にとってフレンチロックミュージカルの愉しみは、心躍る楽曲とそれを活かすヴォーカルとダンスのパフォーマンスです。
その点で礼真琴さんは最高。
そして三浦宏規さんもその歌唱力としなやかなダンスパフォーマンスできっと満足させてくれるにちがいない!と期待でいっぱいで観劇しました。

13日のソワレは席が1階前方の超端っこ。隣の席には布が掛けられていました。(見切れになるからかな?)
スピーカーが近いせいか音のバランスが悪くて、いまいち気持ちがのれませんでした。(心臓が圧迫されるような圧が・・)
ていうか三浦宏規さんの登場が思ったよりも少ない??
脳裏に宝塚版が残り過ぎて、自分で勝手に盛り上がろうとしたところで逸らされてしまう感覚に「え?」っとなってしまったりというのもあります。
演出がちがうのだから盛り上げる箇所がちがうのも当然なんですけど、初見はそれに適応できずもっと楽しめるはずなのにおかしいな?と不全感に陥ってしまっていたみたいです。

14日はとちり席のセンター。これはもう最高でした。
我ながら現金ですが前日の感想撤回でとても楽しめました。
音のバランスもよかったですし、アンサンブルの方たちのダンスパフォーマンスもそのセンターで踊る三浦宏規さんも正面から見るとその凄さがよくわかりました。
メインキャストが舞台中央の扉から登場してパフォーマンスがはじまる演出が多いので前日はそれが見えていなかったのだということに気づきました。
やはり何にも勝るセンター席です。
前日に一度観劇しており宝塚版との違いを体験できていたことも大きいのかもしれません。

宝塚版と梅芸版を両方見たうえで思うのは、宝塚版はキャラクターを象徴的にわかりやすく強調していたのだなということ、舞台美術や演出も上下奥行きを存分に使いダイナミックに派手にしていたのだなということです。
年齢層の偏った女性だけで演じる舞台なので美術、装置、衣装、メイクで演者を盛ることが求められるからだと思います。(宝塚ならではの裏方さんの力が不可欠)

対して梅芸版は舞台美術もシックでシンプル、衣装も落ち着いた色合いのコートやドレスで、自身の演技力で勝負する役者さんを引き立てるようになっているのだなと思いました。
シックだった壁がダンスパフォーマンスになると瞬間で深紅に変わったり、マチルドのキュートなドレスが彼女の動きでウエストあたりの素肌が見えたりと、細かな部分の意匠がキャラクターやパフォーマンスを光らせるのが素敵でした。
敬虔なレナール夫人の人柄を表現したような質素なドレスも夢咲ねねさんのスタイルの良さを引き立たせて見惚れる美しさで作品の上で納得でした。ジュリアンが知らず知らず惹かれ、ヴァルノ氏が羨みレナール氏が自慢に思う夫人なんだなぁと。

歴戦の巧者を集めたキャスト陣なので皆さん1人で場面を持たせられるし動かせる。役者さん自身のキャラクターもとても濃くて芝居部分はストプレを見ているようでした。
と思っていると内心を吐露するロックナンバーのヴォーカルがはじまる・・という感じで初見はそれも世界観に没入し難かった理由かもと思います。
方向性が見えなくて自分だけ置いて行かれたような心地になってしまったのかなとも思います。しかしその方向がわかって見ると個々のエネルギーの凄さとその集合体の素晴らしさに心躍りました。

まったくの私の主観ですけども、13日ソワレと14日マチネでは客席の雰囲気も異なっていた気がします。その雰囲気を察知する能力に長けた役者さんが13日ソワレは客席の反応を呼び起こすためにちょっとばかりやり過ぎなところがあったのではないかなと、14日マチネのすべてが転がるように滑らかに物語世界に引き込まれる舞台を見て思いました。

CAST

三浦宏規(ジュリアン・ソレル) あの愚直で熱い「キングダム」の信だった人とは思えないほどすっとしていて大人しそうで、でも内になにを秘めているかわからない複雑な雰囲気を醸し出すジュリアンでした。(体型まで変わった??) 打って変わって抑えていた思いを爆発させる歌とダンスでは熱い内面の葛藤を激しく表現していて心奪われました。もっと歌って踊ってほしかったなと。
夢咲ねね(ルイーズ・ド・レナール) 一見敬虔そうでお淑やかな中流階級のお手本みたいな女性っぽいけれど内には激しい面も持ち合わせているのがよくわかるレナール夫人でした。密告書を全否定でバシバシとレナール氏に指示する場面が好きでした。シンプルなドレスの立ち姿や身のこなしの繊細さはさすが。獄中のジュリアンとのキスはキラキラの粉が舞い落ちていました。
田村芽実(マチルド・ド・ラ・モール) 2幕冒頭の可愛いのにお下品な顔芸のダンスパフォーマンスがとっても好きでした。ジュリアンが窓から入ってくる時の「コケるとこだった」「コケてたじゃない」は毎回?アドリブ?プライドは高いけれど不安定な心が痛々しくていいなぁ。この公演にはなかったけれど処刑されたジュリアンの首を抱えて接吻するシーンも見てみたかったです。終演後に若い観客の方が「めいめい、また幸せになれなかったね」と話していらして「うんうん、ほんとに」と思いました。
東山光明(ムッシュー・ド・レナール) ブルジョワ(中流階級)の滑稽さと悲哀を象徴するとてもスノッブな人物でした。でも小説(舞台)じゃなかったらそんなに侮られる人物じゃないだろうになぁ。名士であるために努力してて、それが家族の幸せにつながっているのだし、現実を生き抜くって大変なことだよねぇと彼なりの思いを歌うナンバーに「うんうんわかるよ」と思いながら聞きました。原作者に意地悪されている人だなぁと思いました。
川口竜也(ラ・モール侯爵) ラ・モール侯爵とマチルドを見てマチルドは「父の娘」なんだなぁとつくづく思いました。「パパみたいになりたい」シシィのように。父の価値観を内含し、よりそれを尖らせていく娘。それによって父を喜ばせ父に可愛がられ自尊心を満足させるもその「蜜月」は永遠には続かず、世間的に結婚させようとする父親に戸惑う。父が尊ぶ価値観に沿って俗物たちを見下して永遠に愛されていたいのにそこから切り離そうとする父への失望と抵抗、いら立ちが2幕冒頭のマチルドの尊大な態度なんだろうなぁと。それを甘やかす父ラ・モール侯爵。もうねーと思いました。そんな父が誉めるジュリアンに関心がいくのは当然。娘が自分から離れていくことを嘆いていたけれど、違う違う裏切ったのはそちらが先ーと思いました。いかにも娘に愛されそうな無自覚に罪深いパパでした。
東山義久(ジェロニモ) あやしい、踊るとカッコイイ、妙な存在感のジェロニモさん。客席とのやりとりも担当。2幕のはじまり、14日マチネはお客さんの反応がよくて嬉しそうに見えました笑。もっとジュリアンと絡むのかなと思っていましたがそうでもなかった? 神学校のくだりがないので、パリで著名なジェロニモさんがジュリアンをラ・モール侯爵に紹介する役割なんですね。飄々としているけれどジュリアンの立場をいちばん理解している人なのかな。ジュリアンの死、ジュリアンの生き方に感銘を受けてもいるように思いました。そしてどう思うかと観客につきつけてもいる・・。
駒田一(ムッシュー・ヴァルノ) テナルディエだ。いやいやヴァルノさんだ。あ、テナルディエ。ちがうヴァルノさん。を心の中で何回も繰り返してしまいました笑。ジュリアンの運命を狂わせる策謀家なんだけど悪者とまでは言えないのかなぁ。嫌なやつではあるけれど。おそらくブルボン朝~フランス革命~ナポレオン時代~王政復古~ナポレオンの百日天下~第二次王政復古と怒涛のような時代を生き抜いている人だからこそ、自分の才能や立場を鑑みてなりふり構わず足掻かなくては生き残れないと悟っているのかな。ヴァルノ夫人(遠藤瑠美子さん)とのナンバーがなかなか難曲そうでしたが流石でした。

エリザ役の池尻香波さんもとても気になりました。これから活躍される方なのかな。

思い切ってはじめての東京芸術劇場まで出かけてよかったなぁと満足の観劇となりました。

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2023/07/23

これはチャンス。

6月24日にキャナルシティ劇場にてミュージカル「ファクトリー・ガールズ」を見てきました。

出演者の1人1人が素晴らしくて脚本もナンバーも良くて作品ファンになりました。
いつかまた再演される時があれば見てみたいと思います。
その時自分自身がどう思うかも含めて関心があります。

サラたち女性の工場労働者が言っていることもとても頷けましたし、サラたちのラディカルな思想と行動がこれまで自分が地道に活動してやっと得た賛同者とのあいだに軋轢を生むのではないかと懸念し葛藤するハリエットの気持ちもわかります。

企業や政治家のイメージアップのために女性の自己表現を利用し、しかし根本的には女性差別を利用している経営者と政治家は、サラたちが核心を突きだすとその口を塞ぐために卑劣な画策をはじめる。
彼らが漏らす残酷な本音や彼女たちの葛藤の一つ一つが今日もなおあるあるで膝を打ちたくなりました。

彼女たちよりも上の世代の女性(ラーコム夫人)の存在がまた綿々とつづく問題の根深さを浮き彫りにしていたと思います。
サラたちの思いを理解し背中を押してもいたのに、経営者や政治家に真っ向から立ち向かうとなるととたんに止めさせようと必死になる。そんなことをしたらどんな酷い目に遭わされるか、女性として長く生きた分その結果が容易に想像できてしまうから。惨い現実を身をもって知っているからこその葛藤と行動だと胸が詰りました。

家族からの性的虐待を受けていた女性の描き方にしても1つの典型に囚われず、心を開けず神経症的になる人も逆に性的魅力を利用して上昇していこうとする人も登場するのが凄いなぁと思いました。
本当にエピソードや人物の行動に無駄がなく意味があり効果的に描かれていて心のうちで唸るばかりでした。

舞台が1840年代前半ということにも驚きがありました。
シシィ(エリザベート)はまだバイエルンで父マックス公爵と大道芸人の真似事をして戯れていた頃。
フランスはシャルル10世(アルトワ伯)が1830年の7月革命で退位してブルジョワジーが推すルイ・オルレアンが王位に就いていた7月王政時代。
イタリア統一運動をはじめヨーロッパ各地で1848年革命が起きる前夜で、どこも国情が不安定な時代。

新しい概念が生まれて「民衆」「国民」が主体的に生きる自覚をもった時代だと頭で理解しているつもりでしたが、こうして目の前で肉声でその体温ある身体で感情を込めて表現されてはじめて自分に降りてくるものがあり、その感覚はなんとも言えないものでした。

歴史というと国政やそれに関わった有名な人のことを学ぶことはありますが、そこに生きる人々ことはなかなか考えることはなかったなぁと。
サラたちのように自分の人生を生きて芽生えた疑問に向きあい、行きついた信念を胸にいま在る問題を変えるために立ち上がった人々のこと。その1人ひとりに物語があったのだということを。

長い歴史の中で綿々とつづいてきた不平等さは問題が根深いゆえに彼女たちが起こした行動で一気に覆ったわけではないけれど、サラやサラと一緒に行動した彼女たちの一歩があったからこその今日なのだということ。現代の私たちにはあたりまえに取り除かれている苦しみを受け、抗ってくれた先人がいてくれたからこその今なのだということ(そんな勇敢な彼女たちは舞台となったマサチューセッツ州ローウェルだけではなくて世界のいたるところに居たのだということも)に思いを巡らせてそのことを噛みしめ、いま在る先人からの恩恵を易々と手放すわけにはいかないと思いました。

舞台と同年代にはヨーロッパをジャガイモ疫病菌が襲い、それがアイルランドに悲惨な大飢饉をもたらしたそうです。アイルランドからアメリカへの移民が増加したのもこの頃で。
劇中でも女性たちとともにアイルランド系の労働者が半分の賃金で酷使されていました。そういうことも織り込まれていることにあっと目が覚めるようでした。

ちなみに日本は天保年間。大飢饉から一揆や乱が起き、天保の改革による綱紀粛正と奢侈禁止でエンタメ(芝居小屋や寄席など)が厳しく取り締まられていた時代。
そんなことにも思いを致すとますます大切にしたいものはなにかを、それを守るために進んではいけない道はと考えさせられます。


観劇して感想を書きかけてから数週間経ってしまいいまさら続きを書くのもと躊躇いましたが、いつかまたこの作品を観劇した時に過去の自分が何を思ったかわかるように残しておこうと思いました。

<CAST>

サラ・バグリー(柚希礼音)
ハリエット・ファーリー(ソニン)
アビゲイル(実咲凜音)
ルーシー・ラーコム(清水くるみ)
マーシャ(平野綾)

ベンジャミン・カーティス(水田航生)
シェイマス(寺西拓人)
ヘプサベス(松原凜子)
グレイディーズ(谷口ゆうな)
フローリア(能條愛未)
アボット・ローレンス(原田優一)
ウィリアム・スクーラー(戸井勝海)
ラーコム夫人/オールドルーシー(春風ひとみ)

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2023/06/03

グッナイ誰かさん。

5月28日に博多座にてミュージカル「ザ・ミュージック・マン」を見てきました。

初めて見たはずだけど知ってる。そんなストーリーでした。
映画を見たことがあるのか翻案のなにかを見たことがあるのか。
閉塞感漂う田舎町に胡散臭い来訪者が滞在して町の雰囲気が好転するというストーリーに既視感があるのか。
騙る男とお堅い女性のロマンスも最近なんども見ている気がします。

1957年の初演当時「ウエストサイドストーリー」よりも多くの演劇賞を受賞したという作品紹介に期待したのだけど、そっかそうだよね。
胸を抉る社会派バッドエンドより皆が笑顔のハッピーエンドが多くの人に支持されたのね。
純朴で保守的なアメリカの物語に安心したい人たちに。
でもこれをハッピーエンドと思ってよいのか私には疑問でした。

主人公にしつこくつき纏われるヒロインが気の毒だったし、怒ると揶揄されるのもなんだかなだったし。
なにが目的かもわからない男性が娘のまわりをうろついているのを喜ぶ母親とか地獄だなと思いました。娘を早く結婚させたい、男と名の付くものと伴侶にさせたい、それがあるべき姿だと信じているらしくて。

南部が舞台の物語だと娘の親は相手の男性の属性や資産にこだわる印象があったのですが、このヒロインの母親にはそれが微塵もなくて、むしろそれが恐ろしくもありました。慎ましく夫や家族に愛情を尽くし結婚がもたらす苦労を受け容れそこに喜びを見出すのがあるべき姿だと信じているようで。とてもピューリタン的といいますか、アイオワ(中西部)が物語の舞台というのも関係があるのでしょうか。(劇中で母親はアイルランド系だと言っているのでカトリックかもしれないのだけど)。

まだ10歳くらいの少女でさえも自分に相応しい相手を狭い町の中で見繕って行動しているのもなんというかぞわぞわしました。「おやすみなさいを言う相手」がいないかもしれない未来を仮想して嘆いてみたり。
独身の女性は不幸だと小さいうちから刷り込まれているのだなぁ。そしてそんな町なのだなぁと。
それを前提にして見ていかないといけないのかと、物語の最初から気持ちが暗澹としてしまいました。

若い娘の関心事はいつプロポーズされるかで、既婚女性の娯楽は噂話。ヒロインが小説を読むことさえ不品行だと非難されるコミュニティ。
そんな狭くて閉塞感のある町で26歳で未婚のヒロインは変わり者と思われているし噂に尾ひれがついて不適切な過去があるとも囁かれている。
見ているだけで具合が悪くなりそうな世界観。
そういうところに風刺を込めて演出することも可能なのに、ふんわりで終わらせている。ヒロインが「まだ未婚」なことや別のキャラクターの恐妻ぶりで笑いが起きていることからしても、むしろその価値観を受容した上で見せているのだなと思いました。
だからこそ、ヒロインが主人公を受け容れたことがハッピーエンドだと受け止められるのだと思いました。
ヒロインが主体的に主人公に惹かれて愛していく様を描くこともできるはずなのに(途中でベクトルの方向が逆になっていくともっと楽しそうなのに)中途半端な気がして残念でした。

不寛容で閉塞感漂う町を図らずも詐欺師の主人公が変えていくというストーリーなのだけども。
変わったようで変わっていないんじゃないかなと見終わって思いました。
マーチングバンドを手に入れていまは活気づいたけれど価値観はそのままで。
主人公さえも取り込んで、町は元に戻っていきそう。そんな怖さを感じました。
詐欺に遭ったのは私かもとそんなもやもやが残りました。


ハロルド・ヒル教授(坂本昌行)
プレゼン能力が高くて人々に夢を見せるのが巧い。まさに夢を売る男。その夢の対価として相応しい金額ならこれはこれでOKなんじゃない?と思いました。いままで彼が嫌われてきたのは夢が最高潮に達した時にトンヅラ、売り逃げしていたからですよね。それらしい指導者を招聘できていたらこれは成功するビジネスモデルでは。
むしろこんな才能のある彼がこれまで詐欺をやっていたことが気になりました。きっかけとか動機とか。坂本さん演じるヒル教授は根っからの悪人には見えないのでなにか過去がありそうで、それを知りたく思いました。
約10年ぶりに見た坂本昌行さん、肩ひじ張らず自然体で主役なのが素敵。声が良くてセリフが聞きやすくて難しい歌もするっと歌えていまここに生きている人という感じでした。
とても真摯なものを感じさせる方で、この人が悪い人のはずがない絶対トンヅラなんてできるはずがないと思って見ていました。詐欺をしていたのは彼の方なのに、町に残った彼を糾弾する町の人々のほうが邪悪にすら思えた不思議。(彼に肩入れして見ていたからかな)

マリアン・パル―(花乃まりあ)
凛として透明感があって素敵な女性。彼女の価値観や生きる姿勢が周囲に理解されないのが気の毒で胸が痛みました。
詐欺を働く男性と譲れない理想がある女性。そんな2人が相手に何を見出したのかそこがわからず仕舞いだったのが残念だったなぁ。
ヒル教授の正体を暴こうとするカウエルを阻止しようとする場面、それまでのお堅い雰囲気からいきなりコミカルになるところが好きでした。(ちょっとWMWのエマを思い出してしまいニヤケました)
10年前博多座で「銀河英雄伝説」のユリアン役ではじめて知った花乃まりあさんをまた博多座で見ることができてうれしかったです。(あのときの美少年がこんなに素敵なヒロインに)

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2023/05/15

恩恵は次の者へ。

4月17日と21日に博多座にて舞台「キングダム」を見てきました。
すべてが「本気」で目を瞠る舞台でした。

「キングダム」は家族がアニメを見ているのをながらで聴いていたくらいの認識しかありません。
ずっと戦っているなーとかオウキ将軍は面白いしゃべり方をするなーとか途中でこれは秦の始皇帝がモデル?と気づいたり、その程度でした。
勇ましいことを言って命が何個あっても足りなそうとか。
(音声だけでしたので、さいしょのうちは別のアニメと区別がついていなかったかもと思います)
そんな中でもセイの邯鄲脱出のくだりやセイの母親のくだりなどは耳をそばだてた覚えがあります。
仲間のキャラクターが女の子なのを主人公だけが知らなかった話も、いま思えばキングダムだったんだなと思います。

その程度の知識しかないのに観劇しようと思った動機はキャストです。
人からびっくりされるほど若手俳優さんに疎いのですが、信役の三浦宏規さんは「ヘアスプレー」や「千と千尋の神隠し」でお芝居の間が気持ちよくて体の使い方がきれいな人だなぁという印象で、この方が主役なら見応えがあるのではと。
宝塚退団後の華優希さんや美弥るりかさんの活躍も見たいし、早乙女友貴さんも凄そう。
それに山口祐一郎さんの王騎って・・?という興味本位でした。

そんな状態ではありましたが、見たいキャストの日を選んでチケットを申し込みました。
(顔覚えがすこぶる悪いので、初めて見る作品は登場人物把握のためできるだけ知っている役者さんで見たいのです)
その後貸切公演を1公演追加で申し込みをしたのですが、確認するとほぼ同じキャストの回でした。
2回見るなら未知の役者さんでも大丈夫だったなぁ違うキャストも見たかったなぁなんて後の祭りです。

一抹の不安も覚えながらの初見でしたが、皆さんキャラ立ちが凄くて見分けがつかないなんてことはまったくの杞憂でした。
とにかく圧巻のパフォーマンス。登場人物それぞれの立場も状況もよくわかる脚本で集中して見ていたらあっという間に1幕が終わりました。
夥しい情報量なのにわかりやすいのが凄いなと。セリフ1つにも、そのキャラの一貫した思いや個性が織り込まれていて、そうそう信ってこういう人だよね、政ってこういうものを背負った人だよねとあらためて理解することができました。

そしてなにより役者の皆さんの表現力が素晴らしい。
身体表現、声。丁々発止の絶妙な間。舞台上で生きる人々が作り上げる空気に劇場全体が支配され息をのむ観劇体験となりました。

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2023/03/19

いまのおぬしとたたかうために。

3月18日に博多座にて「巌流島」を見てきました。

理屈っぽいチャンバラという印象でした。
武蔵と小次郎を戦わせるために設定を考え理屈を考えましたというかんじ。
最初から最後までボーイズクラブの理屈だなと。

社会性がなくこだわりの強い人物が主人公という昭和の任侠もののようなテイストで。
親も子も妻も存在せず自分の好きなことだけに打ち込むことができる世界。ある種の理想なのかな。
友か敵かの関係性。ホモソーシャル全開。男の絆バンザイの世界観。
ナルシシズムと自己満足。
そういったものが描かれていると思いました。

キャストのなかで唯一女性の凰稀かなめさんが2役で女性の役を演じていましたが、男たちの思想を肯定するために存在する役でがっかりしました。

セリフと殺陣で劇場空間を支配する横浜流星さんをはじめとする役者さんたちの能力は凄まじいなと思いましたが、それから舞台セットの代わりの映像も面白く全国のいろんなホールを回るのにこれはいいなぁと思いましたが、脚本的にはあまり語りたい舞台ではありませんでした。


<CAST>  (2023/03/20更新)

横浜流星(宮本武蔵)  侍らわぬ者。自己問答に周囲を巻き込む華が見事。リアル武芸者でした。
中村隼人(佐々木小次郎)侍らう者になろうとしてならない道を選んだ人。口跡とイントネーションが歌舞伎の人だなと思いました。スローモーションの殺陣が美しかったです。
猪野広樹(辰蔵) 自らの主を自らで選ぶ人。
荒井敦史(甲子松) どこにいても己が生きるべきスキマをみつける目敏さのある人。
田村心(伊都也) 己の良心に従う人。愛されて育った人なんだろうと思いました。
岐洲匠(英卯之助) 最終的に侍らうことに己の生き方を定めた人。つねに自分の美学を探している人のようでした。
押田岳(捨吉) 愛すべき可愛い人でした。ヒロイン的存在。
宇野結也(水澤伊兵衛) 静かな人かと思ったら実は怖い人でした。
俊藤光利(秋山玄斎/和尚) 俗で荒々しい野武士と仏に仕える和尚の物腰、同じ人とは気づきませんでした。
横山一敏(弥太右衛門/柳生宗矩) 宗矩の言葉に肯けました。
山口馬木也(藤井監物) 大変な食わせ者でした。
凰稀かなめ(おちさ/おくに) 人としての描かれ方がなおざりな気がしました。もっと葛藤を見たかったです。
才川コージ(望月甚太夫/大瀬戸隼人) 凄い跳躍を見た気がします。
武本悠佑(辻風一之進/細川忠利) きれいなお顔に思わず二度見してしまいました。

上川隆也  語り

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