胸にしみる故郷のなつかしい香り。
11月25日に熊本城ホールにて宝塚歌劇宙組公演「バロンの末裔」「アクアヴィーテ!!」ソワレを見てきました。
熊本城ホールは2019年にこけら落としされた新しいホールで、1階後方席でも見やすくセリフも聞き取りやすかったです。お手洗いも多めで30分の幕間も余裕がありました。バスターミナルの上にあるのでアクセスもよくて次の熊本公演もここだといいなぁと思いました。
そして熊本は言わずと知れた宙組トップスター真風涼帆さんの故郷。2019年に続いての凱旋公演ともいえる公演でした。
今回は新しい相手役さんの地元お披露目ともいえるかも。
劇中で歌われていた故郷を思う歌に真風さん自身が重なって、またこの数年に見舞われた熊本の苦難と復興への道のりが重なって見えて胸が熱くなりました。
「バロンの末裔」は映像を繰り返し見ていた作品で、けっこう覚えているものだなぁと思いつつ観劇しました。生で見たことがなかったので再演で見ることができて嬉しかったです。
正塚先生の作品なのでテンポにメリハリがつくともっとよくなるなぁと思いました。来月福岡でも観劇するので深化しているといいなと思います。
真風さんの双子の演じ分け面白かったです。(星組でも愛ちゃんが双子を演じていたのでそれを思い出してよけいに楽しくなりました)
舞台上でエドワードからローレンスに切り替えて演じ分けるのは凄いなぁと思いました。(それぞれの影武者は春瀬央季さんと鳳城のあんさんが演じられていたんですね)
双子のうち私は案外ローレンスが好きでした。
自分のことよりも家のこと、屋敷の使用人たちのこと、領民のことを考えるように育てられた人なんだと思います。男爵家の跡継ぎとして。
彼が投機に手を出したのも、信頼している会計士に勧められるがままに家や領民のため、そしてキャサリンのためを考えたことで、決して私欲のためではないと思いますし、失敗してもまだ取り戻せますと繰り返し言われるままに深みにはまっていったのじゃないかなぁ。
彼だって屋敷を出て別の世界で生きられる弟エドワードを羨ましく思ったこともあるんじゃないかな。口には出さなくても。
というわけで、もっと憂いを帯びたハンサムに演じてくれてもいいのに~~というのが不満です笑。あの浮世離れ感はとても好きですが。さらにもっとと。
オスカー・ワイルドの小説に出てきそうなやつれた貴族的な美男子を造形してほしいなぁ。恥ずかしがらすにぜひ♡ ペンより重いものを持ったことがないようななにかというと蒼白になるような。
キャサリンだって結婚してもいいと思っているくらいだから、エドワードに勝るとも劣らぬ魅力があるのだと私は信じています。
エドワードはかっこいいけどふつう~~と思いました。
石炭がなかったら彼にもどうしようもなかったし。
弟の立場として失望も味わい、家のことも領地のことも、キャサリンのことも自分のものではないと見切ってローレンスにすべて委ねて屋敷を出たのだろうと思います。それがわかっているローレンスも弟においそれと相談はできなかったのではないかなと思います。
それゆえ自分がやってしまったことをわかっているローレンスはキャサリンが弟を選んでも、2人がそのことに罪悪感を抱かないですむようにダメ男を装っているのではないかと思ったりもするのです。(とことんローレンス贔屓)
結局兄が倒れた報せをうけて故郷に帰ってみて、窮地に立たされた兄と想い人、なつかしい使用人たちの顔を見て、彼らと領地のために初めて本気で奔走することで、エドワードは故郷と故郷の人びとのかけがえのなさに気づくことができたんじゃないかな。
屋敷を出た頃はいろいろあって失意で忘れていたかもしれないけれど、ローレンスが自分にしてくれた様々なことも思い出したりしたのじゃないかな。
自分の立場からしか見ていなかったことや、ローレンスが家や使用人や領地のためにしていたことに気づけたりしたのじゃないかな。と思うのです。
潤花ちゃんが演じるキャサリンは生きる力に溢れてて逞しそうで、きっとホテルにたくさんの人を呼べそうな気がして、彼女の選択は決して間違っていないと思えて、未来は明るい気がしました。
古風でハンサムな当主の男爵と美人で華やかな男爵夫人はホテルの名物になりそうだし、銀行家とも対等に渡り合っていけそう。ホテルはきっと繁盛するはず。
エドワードは自分の人生を築いていったらいいと思います。美しい故郷は兄夫婦が守っているから。
とラストも湿っぽくならずに見ていました。
潤花ちゃんはこういう役が似合うなぁと思いました。
しっかりローレンスを支えてホテルを繁盛させそうなキャサリンでした。
彼女を見ていると希望を感じました。(つい数日前に元伯爵夫人が料亭の女将として奮闘し守り抜いた旧柳川藩主立花邸御花に行ってきたばかりなのでイメージがダブったのかもしれません。伯爵令嬢 立花文子)
ローレンスはいつの間にか論文を書いてたりして、それが評価されて叙勲されたりして。(妄想)
ローレンスとキャサリンとエドワードに、ルイ16世とマリー・アントワネットとフェルゼン伯爵みを感じました。
桜木みなとさんは間が良くてリチャードが成り立っているなぁと思いました。もっと爪痕を残してもいいんだぞと思いましたが、これからでしょうか。
ヘレン役の山吹ひばりちゃんとのペアが可愛らしかったです。
瑠風輝さんは若き頭取ウィリアムのフェアな精神がよく出ていて良かったです。役としては不足はないのだけどあとすこしスター的ななにかがあったらなぁと思いました。
鷹翔千空さんはウィリアムの秘書ブリンクリーとしてその場にいることを愉しんでいる感じがしました。もっとはっちゃけたいのかなぁと思うけど、こちらもまだ様子見かなぁ。
全体的に皆芝居が真面目だなぁという印象を受けました。もっとキャラクターになりきって変人になってもいいのじゃないかなぁ。
皆それぞれに変なところがあったり自分勝手だったりするけれど、愛しい。そういうお話だと思うので。
11/21に梅田で初日を迎えてから九州初上陸の地だったのでまだ芝居が硬いのかなと思いました。来週末は福岡公演を見る予定なので役としてもっともっと自由に演じているといいなと愉しみにしています。
さすがだなと思ったのが寿つかささん。ボールトン家の執事ジョージ役として必要以上に分を弁えた感じが滑稽で、メイド長のミセス・サーティーズ(小春乃さよさん)と面白い一対という感じでした。
それから、銀行の創業者でウィリアムの父トーマス役の凛城きらさんが作品の世界観の中で好き勝手に存在している感じで光っていました。秘書のシャーロット(愛未サラさん)とはなかなか良いペアでした。
美しい顧客イングリット(水音志保さん)との場面がとっても好きでした。
お屋敷で働き始めたばかり(フットマン見習い?)のヘンリー役の亜音有星さんがのびのびと演じているのが好印象でした。ヘンリーは美味しい役だと知ってはいたけれど(初演新公では大和悠河さんが演じてた)、知ってた以上に美味しい役でした。主役のエドワードとヒロインのキャサリンの間を取り持ったりして。ラストも気が利いてて。
ショー「アクアヴィーテ!!」は2019~2020年に宙組で上演された作品なので、ついついもういない人を探していました。
私が座っていた席からオペラグラスを使うとセンターより上手が見やすかったのですが、鷹翔さん亜音さんが生き生きと輝いて見えました。
そしてオペラグラスの視界にお名前はわからないけど素敵な下級生が幾人も。
瑠風さんの脇に出てくる美脚の黒いアマーミ、春瀬央季さんともう1人は琥南まことさんだったんですね。美しくて眼福でした。
それから寿さんが従えている2人、大路りせさん泉堂成さんも美少年系で素敵でした。
黒燕尾で見た綺麗な方は誰だったのかな。スモーキーナイトの場面にも白い衣装のフィーストの中にも綺麗な方がいたと思うのですが、同じ人なのか別の人なのか。福岡公演で答え合わせできたらいいな。
それにしてもいつの間にこんなに綺麗な男役さんが増えていたんでしょうか??
綺麗な方といえば水音志保さんに目が奪われがちでした。幕開きから春瀬さんと美男美女で踊られていて眼福。
そして2019年当時は組長さんがされいたパート副組長さんがされていたパート、はたまたあの方がされていたパートをこの方がされる時代になったんだなーと宝塚歌劇における2年の歳月の進み方の速さを実感しました。
そして2年前は客席降りのタカラジェンヌさんたちとグラスを合わせてはしゃいでいたのになぁと。世の中の変化を実感しました。(通路側の席だったのに・・涙目)
そうそう。「アクアヴィーテ!!」といえば!の3人のスターが甘い言葉を囁いて客席の反応を愉しむ場面では、瑠風さんはドライヤーに桜木さんはピアスに真風さんは枕になりたがっていました。
熊本公演だったせいか、瑠風さんは「あなたの髪は熊本の太平燕のように」、桜木さんは「あなたの耳は熊本のいきなり団子のように」、真風さんは「あなたのおでこは熊本の馬刺しのように」と喩えてらっしゃいましたが、ここはご当地アドリブになっているのかな。福岡ではなにに喩えられるのかも愉しみです。
ウィスキーが蒸留、熟成されていく場面は、大劇場公演より人数は少ないもののさらに洗練されていて美しくてとても感動的でした。
桜木さんと潤花ちゃんのリフトも素敵。
熊本まで日帰りでソワレ観劇はしんどいかなぁなんて思ったりもしていたのですが、行って良かったです。
つぎはいよいよ福岡公演観劇。
最高の時間になりますように!