カテゴリー「♖ 観劇」の570件の記事

2026/01/15

「ボー・ブランメル~美しすぎた男~」

宝塚歌劇雪組大劇場公演「ボー・ブランメル~美しすぎた男~」「Prayer~祈り~」 12月2日 13:00

友の会で当選した席は旧料金最後のSS席でした。

「ボー・ブランメル」の大雑把な印象は、『もったいぶった見せかけの、
実体は限りなく俗物の物語』でした。
ボー・ブランメルという人物もそうだし、物語の運び方も。
生田作品にしばしば感じるモヤモヤの正体はこれかなと思いました。

冒頭の異様な舞台化粧と衣装のコロスと少年時代のブランメルと父の場面は、彼の人生の基盤となった王侯貴族社会へのルサンチマンの具現かなと思いましたが、そこから物語が膨らむわけではありませんでした。
昔の恋人ハリエットとよりを戻す場面を見ながら、王侯貴族たちの価値観を転倒させるような彼の美学も恋愛そのものには発揮されないのだなと思いました。
ボー・ブランメル自身、別に高尚なことを言っているわけではなくて、スノッブたちの価値観の中で頂点に立った人なので、感じた印象でまちがいないのかもしれません。
またも生田先生の思わせぶりにいらぬ期待を抱いてしまった自分自身に嫌気がさすといいますか、いい加減で惑わされるのをやめたいです涙。

劇中でブランメルが、自分の顔じゃなくて服装に目が留まったなら正解だ的なことを言っていましたが、朝美絢氏ですよ? 顔に目がいかないわけがないじゃないのと思ってしまいました。
瀬央ゆりあさん演じるプリンス・オブ・ウェールズが人が好い印象で、彼を失望させるのは胸が痛いなぁと思ったり。
演じる人への先入観が障りとなってストーリーに没入できていなかったのかもしれません。

夢白あやさん演じるヒロインのハリエットが鏡の前に立つ姿が息をのむほど美しかったのが記憶に残っています。
デボンシャー公爵夫人役の華純沙耶さんの所作やセリフ回し表情すべてが素敵で目が離せませんでした。(デボンシャー公爵夫人が皇太子の愛人だったというのは生田先生の創作ですよね?)

「Prayer」は大好きなタイプのショーでした。
冒頭からどの場面も好きでしたが、アフリカの場面の縣千さん、そして華純沙耶の身体表現に目が釘付けになりました。
日本の場面の衣装も素敵だなぁと印象に残っています。
そして圧巻だったのはやはり「オギヨンチャ」の掛け声の船の場です。雪組の皆さんの活き活きとした表情に活力をもらったような気がします。ピンクの衣装の天女役の妃華ゆきのさんにも笑顔にしていただきました(見ているだけで多幸感がありました笑)

東京公演は見に行けないのですが千秋楽ライブビューイングを見ようと思っています。
「ボー・ブランメル」をフラットな気持ちで見て(先入観を外して)、ショー「Prayer」をもう一度堪能したいです。
そして宙組配属のときから好きだった夢白あやさんのサヨナラショーを目に焼き付けたいと思います。

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2025/12/14

「SPY×FAMILY」

ミュージカル「SPY×FAMILY」(博多座) 11月30日 12:30

博多座の千秋楽を観劇しました。
原作は家族がアニメを見ていたのでおおよそ知っているかんじなのですが、子役の可愛らしさを全面に出したプロモーションにかなり抵抗があったこともあり、2023年の公演は見ていませんでした。
今回は宝塚退団後の和希そらさんを見たくて観劇を決めました。

アニメよりも大人っぽい真面目な仕上がりになっている印象を受けました。脚本演出のG2さんの良心を感じました笑。
原作はいろんな見方ができると思いますが、こういう読み解きも良いなと思いました。(ヒューマニズム強め)
森崎ウィンさん演じるロイド・フォージャーも和希そらさん演じるヨルも月野未羚さん演じるアーニャも、原作とはひとあじ違ってはいるのだけどそれも、これはこれでいいなと思いました。
森崎さんのロイドは冷徹感のなかにも甘さが強めで素敵でした。ヨルへの接し方もかなりスマート。独白ツッコミが面白かったです。
和希さんヨルは世間知らずのとぼけたとんちんかんなかんじに戦闘でのカッコ良さもあり掴みどころのない雰囲気に思わず笑いました。(ユーリとの場面は中の人ぜったいノリノリだと思いました)
月野未羚さんアーニャはセリフの間が最高で本当に心が読めているみたいでした。
瀧澤翼さんの思いっきり振り切ったユーリも面白かったです。
鈴木壮麻さんのヘンダーソン先生はヴィジュアルから何から完璧。
朝夏まなとさんのシルヴィアはフルメタル・レディの異名を持つクールさにどことなく漂うチャーミングさが加味されていて思わずふふっと笑ってしまいました。タグの付いたままのコートで踊るナンバーが大好きでした。
アンサンブルの方々もレベル高くて音楽的にもとても好きな作品でした。
(森崎さんと和希さんのハモりがなんともおしゃれに感じられて好きでした)

観劇したのは博多座千秋楽でしたが日曜日ということもあってか、お子様連れご家族連れが多かったです。上演前や幕間のロビーで聞こえてくる会話も観劇がはじめてらしき内容だったり。皆さんに良い観劇体験ができていると良いなと思いました。

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「マタ・ハリ」

ミュージカル「マタ・ハリ」(博多座) 11月2日 17:00


マタ・ハリ役の愛希れいかさんの千秋楽の公演を見ました。
女性スパイの代名詞「マタ・ハリ」の名前こそ知ってはいたものの、詳しいことは知らなかったので初演の頃から興味がありましたが未見でした。今回は博多座公演があるということ愛希れいかさんがマタ・ハリ役を演じるということで観劇を決めました。
3役がWキャストでしたが、マタ・ハリ/愛希れいかさん、ラドゥー/廣瀬友祐さん、アルマン/加藤和樹さんの回を観劇しました。

思っていた以上にしっかりとした筋立てで、想像以上にロマンティックでした(愛希さんと加藤さんの持ち味?)。
とても上質な舞台で満足感が高かったです。
マタ・ハリのダンスシーンは胸が震えました。
愛希さん、加藤さん、廣瀬さんともにミュージカルの舞台で活躍する姿を見始めて10年ほどになりますが、その頃に想像していた以上に素敵な大人の役者になっていたんだなぁと感じました。

これからもこの作品のような上質で大人のロマンを感じられる舞台をたくさん見られるといいなぁと思いました。

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2025/12/11

俺のために

11月18日と23日にシアター・ドラマシティにて宝塚歌劇花組公演「DEAN」を見てきました。
主演の極美慎さんにとっては花組生として初の出演作品であり、初の東上主演作品でもありました。23日はドラマシティ公演の千秋楽でした。

感想を書こうとするも、自分の中で折り合いがつかず手が止まってしまうということを繰り返していました。
まず自分のなかのジェームズ・ディーンへの固定観念と目の前の舞台を擦り合わせることに苦戦しました。容姿も含めてあまりに映画のディーンの印象が強烈に残っていたことにいまさらながら気づきました。何十年も昔に抱いた印象がアップデートもされないまま自分の中に残っていたことに。

ジェームズ・ディーンの実像について考えてみたこともなく、若い頃は称賛の対象という世間の評価を疑いもなく受け入れていた私にとって、目の前の舞台で演じられるディーンという若者像をどう受け取るべきかで戸惑いました。
決して意外なわけではなくて、若い時の自分だったらさすがディーンだと思ったかもしれないけれど、いまの私には彼の有害性が目についてしまいそのことに戸惑ったのかなと思います。

自分を高く見積もり、脆弱な自尊心を守るためには降板もバックレもする、端から信頼関係を築けない。異性に好まれる自覚はあるのであの手この手で自分のペースに巻き込み思い通りにしようとするも、相手に意思があると思っていないので自分に反する意思をつたえられると絶望する。
力の勾配の上にいるときはやりたい放題、下のときは悲愴な面持ちで抗う態度をとりながらも言いなりで、そこに付け込まれてしまう。
大丈夫? 容姿はとても良いけどでも・・。
そんな印象の1幕でした。
2幕でやっと人との信頼関係が築けてきたかなぁと思った矢先のエンド。
最後まで撮影中の野卑な態度を誇示はしても俳優として演技のプランニングなどの描写はなかったので生い立ちに苦悩がある青年が素材として巧く使われただけに思えました。(監督にトラウマを突かれて激高する姿が真に迫っていると映ったとして、それは映画として高評価であっても俳優の評価としては本人は満足できるものなのかな、などと)

「エデンの東」の移動遊園地の場面を再現するディーン役の極美慎さんとピア・アンジェリ役の美羽愛さんの主演ペアはとても宝塚的な夢夢しさでときめきました。こんごも見てみたいコンビでした。
2幕のニコラス・レイ(一之瀬航季さん)とのやりとりは他者と信頼関係を築きはじめたディーンが見えてほっとしました。
エリザベス・テイラー(三空凜花さん)と彼女の子育てやピアとのことについて話すディーンも好きでした。
18日に見た段階ではがんばっているなぁという印象だったベン役の希波らいとさんが千秋楽では頼もしく成長していて目を瞠りました。
クセのあるPR会社の社長役で、役作りに苦戦したのだろうなと思いますが、23日の千秋楽ではなんかいい感じにディーンとのきずなが見えるなぁと思いました。
長身同士の並びも映えて、思わず極美さんと希波さんで「銀河英雄伝説」のラインハルトとキルヒアイスを見てみたいなぁと思いました。

自動車事故の場面のあとのヴィラ・カプリの場面では、一瞬これは『ディーンを演じた俳優』が登場したのかと思いました。フィッツジェラルドを描いた「THE LAST PARTY」のように。
亡くなった人もディーンのもとから去っていった人も、彼の周りに一堂に会するまぼろしのパーティ。彼らに親しみを込めて話しかけるディーン。
これは誰が望んだ夢なのかな。
24歳で彼は急逝したけれどもっと長く生きていたらどんな俳優になっていたのだろうと思いました。
幼少期に受け取れなかったものを、大人になり与える側となった彼が心の中の寂しい子どもの彼に渡せていたらいいのになと思います。

ヴィラ・カプリの場面がおわるとすぐにはじまったフィナーレで、舞台に1人タキシードで佇むディーンが、テーブルの上のバラ1輪を手に取る場面がとても素敵でした。
これはジェームズ・ディーンが好きだったという「星の王子さま」のオマージュかな。(極美さんも「星の王子さま」が愛読書だとカーテンコールで挨拶されていました)
私にはあのバラは壊れやすかったディーンの自尊心ではなかったかと思えます。
そしてもう彼は大丈夫なんだ。あのフィナーレはそんな意味だったのではないかな。
花男の面目躍如たる(だと私が勝手に思っている)タキシードの男役群舞のセンターにいる極美さんが嬉しかったです。
そしていかにも花組の娘役と思わせる美羽愛さんとのデュエットダンスも夢のようでした。
本編は消化できないままではありましたがフィナーレで多幸感いっぱいになって劇場を後にした公演でした。

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2025/10/27

これでもわりと幸せなんで

9月30日と10月5日に宝塚大劇場にて宙組公演「PRINCE OF LEGEND」「BAYSIDE STAR」を見てきました。
(のろのろ感想を書いている間に10月21日の公演も見てきました)
宙組10代目トップスター桜木みなとさんの大劇場お披露目公演でした。

「PRINCE OF LEGEND」は、なんて贅沢なんだろうと思いました。
パフォーマーのスキルはもちろん、衣装や音楽や大道具小道具、照明etc.宝塚歌劇のリソースを湯水の如く使い、手加減せずに取り組んでいるから成立している作品だと思いました。このクオリティだからこそ面白く見られるのだと思います。

桜木さんが演じるのは財閥の御曹司の朱雀奏という役ですが、このキャラを受け容れられるのは桜木さんの演技力があってこそだと思います。
桜木さんが笑える愛されキャラに演じているからありえない設定に対しても心でツッコミを入れつつ楽しく見られましたが、ちょっと冷静になると果音(春乃さくらさん)は本当にこの人でいいのか?と(前日に見たばかりの「ダンサ・セレナータ」のイサアク的に)思いました。
ピュアすぎて資産もあっという間に溶かしそうだけど。なにより母親の洗脳から解けないままではこの先いろいろと齟齬が出そう。などと。
奏だけではないのですが、瞬発的な笑いと勢いで押し切っているなと思いました。

ヒロインの成瀬果音も、みじめに見えてしまったら見ていられないと思う役なのですが、春乃さんもその加減が巧いと思いました。
果音としての春乃さんの演技が好きだったから私は最後まで興味をもって投げ出さずに見ることができたのかもと思います。

主人公のライバル京極尊人役の水美舞斗さん、学園の理事長実相寺光彦役の愛すみれさん、ヒロインの隣人の美容師嵯峨沢ハル役の叶ゆうりさん。
3人とも組替え後初の宙組大劇場公演出演ですが、前から宙組にいたみたいに馴染んでいて意外でした。
個性的で強烈な役をさらにそれぞれが誇張して演じているので演者個人の背景を考える余地がなかったからかもしれません。全員そうなんですけど彼らも役に徹していて凄いです。

主にショーでなのですが、花組育ちの蘭寿とむさんや朝夏まなとさん、芹香斗亜さんも、組替え当初は「うわぁぁ花組だぁ」と思える眩しい『何か』にときめいた記憶があるのですが、今回の公演ではお芝居ショーともに、水美さんは自身の身体能力や明るい個性を活かした場面でセンターにいることが多くてそういう『何か』を感じている余地がなかった気がします。
ショーの黒燕尾でも同期の桜木さんへのまなざしなど、あたたかさに満ちた雰囲気が際立っていて、むしろ花育ちらしさは封印しているのかしらと思ったりもしました。

愛さんと叶さんはお芝居に雪組育ちらしい『何か』をかなり感じました。(それが何かと考察しだすと書ききれなくなるのでやめておきます)
ここ最近雪組を見る機会が少なかったので、愛さんも叶さんもこんなに頼もしい方たちなんだと新発見した気持ちになりました。これからの宙組になくてはならないメンバーになりそうだなと確信しました。
愛さんは宙組で見てもやはり大きいなという第一印象でした(娘役さんとして)。そのことも手伝ってか実相寺というフリーなキャラクターに説得力があるのが凄い。同期の桜木さん演じる奏の腰が引けるくらいの圧に笑いました。(桜木さんに代わって?実相寺の愛さんを拝みたい気持ちでした。ありがたやです)
叶さんはショーの黒燕尾のときの肘やフェイスラインのあたりに懐かしい宙組を感じました(作品でいうと「ネオ・ボヤージュ」あたり???)。
私は和央さん的な『何か』かなと思ったのですが、友人に話すと大和さんじゃない?と言われてそんな気もするような・・。これから徐々に解明していきたいと思います。

鷹翔千空さん演じる生徒会長綾小路葵は、作品中でも一二を争う奇人だと思いましたが、さすが鷹翔さん、というべきか?違和感なく奇人でした。(もしかして鷹翔さんが演じるから奇人なのかな???)
風変りな役だからこそ鷹翔さんの体幹の凄さを感じられたのかなと思いますし、歌ではシャウトまで聴けてよかったです。

癖が強い役が多くてそれぞれ衣装も学生役ということで制服姿が多い中(生徒会長なのに和装の綾小路さんはなんなんだろう??)、スーツ姿の英語教師役の風色日向さんは、その登場からしてピッカーンと光って目を惹きました。やはり男役のスーツは最高。
と思いきや、この人もまたやっぱり変な人でした。フィアンセの山野桜子さん(山吹ひばりさん)もあんなに素敵なのにやっぱりちょっとアレレ?

風変りな感覚の登場人物がひしめく中で、いちばん普通の学生っぽくていちばん普通の感覚なのは、亜音有星さん演じるヒロイン果音の後輩、天堂光輝かなと思いました。
とつぜん果音を挟んで京極兄弟の弟、京極竜(泉堂成さん)と3人で手をつないで『森のくまさん』を歌いだしたときはえっ?と思いましたけども。
じつをいうと作中でいちばん笑った大好きなシーンでした。
10月21日に観劇したときは亜音さんが体調不良で休演で、代役を聖吐亜さんが務めていました。
聖さんの光輝は弟感マシマシ。『未来を担う原石集団』感強めで5人のチームが粒ぞろいでまとまっている雰囲気がよかったのですが、『森のくまさん』は亜音さんの光輝がクセになっていたので、また亜音さんで見たいなぁと思っています。(千秋楽は復活されているみたいなのでたのしみです)

「PRINCE OF LEGEND」は登場人物の心理を考察するような作品ではありませんでしたが、宙組の未来を担うメンバーが活躍しているのを見ることができるのがよかったです。
京極竜役の泉堂成さん、奏の幼馴染で側近の久遠誠一郎役の大路りせさんの成長が見られたのが嬉しかったですし、おなじく奏の側近の鏑木元役の奈央麗斗さんがこんなにセリフを言っているのを見るのもはじめてな気がして新鮮で頼もしかったです。
新公学年の皆さんが頑張っている姿を見るのは心が弾みますし、新公を卒業した学年の皆さんはこんなにできる人ばかりなんだなぁと感じたのも嬉しかったです。

今回の大劇場公演から組替えしてきた娘役さん、二葉ゆゆさんは美容師ハルの常連客役として前髪をさわってセリフを言うだけでもうかわいいー♡と気分があがりましたし、生徒会の広報担当ミカエル初台役のきよら羽龍さんは噂に違わずなんでもできる娘役さんだなぁと感心しました。
小日向理々花(天彩峰里さん)率いる玄武高専王子研究部のガールズたちの場面が大好きで(なかでも湖々さくらさん演じる副部長の花巻こよみ氏にVIPをあげたいくらい目が離せませんでした)、チームプリンセスが名乗りをあげる場面も毎回わくわくして見ていました。
素敵な娘役さんたちも大渋滞してました。

男役も娘役も皆が輝く作品で楽しく見られて時にはこういう作品もいいなと思いました。
物申すことがあるとしたら、笑いや遊びが度を超すことがないように、ゾーニングしてこそ愉しめる遊びを白日の下に晒すような癖はほどほどでお願いしたいなぁということかな。宝塚歌劇が選ばれるのには、安心して守られるべき子どもたちと一緒に見ることができるからという理由もあると思いますので。
この作品をじゅうぶんに愉しんだら、次はこの贅沢なメンバーで人間ドラマも見てみたいなと思います。

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2025/10/12

手と手を取りあい未来へ

9月29日に梅田芸術劇場メインホールにて、宝塚歌劇星組全国ツアー公演「ダンサ・セレナータ」「Tiara Azul -Destino-II」を見てきました。
星組新トップスター暁千星さんと新トップ娘役の詩ちづるさんのトップお披露目プレ公演でした。

「ダンサ・セレナータ」は、正塚作品は別箱向きなのだなとあらためて実感する作品でした。好みの作品ではないと思っていたのですが、惹き込まれて見ていました。
初演よりも登場人物の関係性や時局などがわかりやすくなっていた気がします。

暁さん演じるイサアクと瑠風輝さん演じるホアキンの場面がとても印象的でした。
ずっと宙組が好きで見ているので、宙組育ちの男役さんが他組に混じった時に一際感じる独特の佇まいにときめくことが多々あるのですが、瑠風さんにもそれを大いに感じてときめきました。
具体的にどこが宙組育ちと感じるのか言い表すことは難しいのですが、長身に映える着こなしとか立ち姿はもちろん、目線の高さも特徴かなぁと思います。
瑠風さんと相対する暁さんも長身でしたので、いっそうその目線の高さが感じられたのかもしれません。
暁さんのイサアクに負けていない目をしたホアキンだったと思います。

正塚作品に登場する男性のなかにはモラハラやマンスプ臭が鼻につく人物がいて、イサアクもそのタイプだなぁと思ったのですが、暁さんが演じると嫌じゃないかもと思いました。
上からの命令口調が嫌だなと思ったりもするのですが、どこか隠せないやさしさが滲み出る人物だったので見ていて救われたのだと思います。
こういう態度になるのにはきっと訳があるにちがいないと思わせるものがありました。(じっさいにシビアな過去のある人だとわかって納得できました)
相手役のモニカを演じた詩ちづるさんがイサアクに対して委縮せずしっかり対峙していたのもよかったと思います。イサアクとモニカのバランス次第では見ていてつらかったかもしれません。
私にはとても良い塩梅の2人に感じられました。

植民地の独立運動に携わる者、秘密警察、それぞれに思惑を抱く軍人たち、革命前夜の混沌のなかで懸命に日常を生きるクラブダンサーたち。演者のひとりひとりがつくり出す時代性が物語に説得力を与えていたと思います。
その重苦しい雰囲気漂う中で張り詰めた気を抜いてくれるクラブの支配人フェルナンド(凛城きらさん)、イサアクの同僚ルイス(大希颯さん)、モニカの友人リタ(乙華菜乃さん)がいかにも正塚作品らしくて、またその役目をしっかりと担っていていいなぁと思いました。
イサアク役の暁さんとの絶妙なかけあいが面白いルイスを見ていて「ホテル・ステラマリス」のガイ・プレスコットを大希さんで見てみたいなぁなどと思いました。あの空気を読まないナチュラルボーンで風変りな人物を笑。
乙華さんはこのところ私の中で急上昇中の娘役さんなので活躍が嬉しかったです。正塚芝居独特の笑いの間をしっかりと表現されていてブラボー!と思いました。

星組で正塚作品を見るのは久しぶりでしたが、丁寧な芝居づくりと情熱、そしてダンサブルなショーシーンがとてもいまの星組に合っているなぁと思いました。

「Tiara Azul -Destino-II」は、大劇場で礼真琴さんと舞空瞳さんの主演コンビで上演された「Tiara Azul -Destino-」が大好きでしたので、新トップコンビ暁千星さんと詩ちづるさんでの続編がどうなるのか楽しみにしていましたが、これまたお2人にピッタリの楽しいショーで大好きになりました。

大劇場公演で2番手だった暁さんが演じたイグナシオ(作中でふられっぱなしでした笑)が、1年後のカルナバルシーズンに自分を見つめなおす旅から戻って来たという設定が面白いなと思いました。
物語のはじまりで礼さんが失恋の傷心を歌っていた曲を歌詞を替えて、こんどは娘役の詩さんが歌っているのも面白くて、これから暁さんのイグナシオと詩さんのクララがどういうラストを迎えるのか興味津々で見ていました。

星組新トップコンビは「すごく宝塚」だなぁという印象でした。身長差とバックハグにときめきました。
詩さんのちょっぴり勝気そうなクララをまるごと包み込む暁さんの包容力が少女漫画のようでした。
イグナシオとクララのふたりだけの夜明けのダンス、そしてフィナーレのデュエットダンス、それぞれ大劇場とはちがうストーリーになっていて、これから新トップコンビとして歩んでいく2人への愛がたっぷりで素敵でした。
タイトルにもなっているティアラは、今回はダンスのはじまりに暁さんが詩さんにつけてあげていて、ティアラをつけて踊るのも可愛いなと。「見上げてごらん夜の星を」の曲で幸せそうに踊る2人におもわずうるっとしてしまいました。

大劇場公演とおなじくショーの中盤は全力カルナバルでとにもかくにも踊りまくり。全国ツアー公演ということで客席降りもあったりしてさらに盛り上がりました。
私個人としては「こんなに激しく情熱的に踊っている瑠風さんをはじめて見たかも?!」と新鮮でした。
星組にとっても瑠風さん個人にとっても良い組替えになったんじゃないかなと思います。

お芝居でもショーでも踊りまくりの公演なのでこれで全国を回るのはなかなかに過酷だなと思いますが、どうか星組の皆さんが元気に千秋楽まで完走できますように。
私は1公演だけですが広島公演を見に行くことができるので、初日間もない梅田芸術劇場公演からの進化を楽しみにしています。

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2025/09/08

哀しみで女は殺せない

8月22日に梅田芸術劇場メインホールにてミュージカル「コレット」を見てきました。

地元の友人から誘っていただき公式HPを確認したところ、明日海りおさんが主演で花乃まりあさんのお名前も。これはぜひ見に来たいと思い、1遠征で雪組宝塚バウホール公演「ステップ・バイ・ミー」と合わせて見られるといいなぁと計画を立てました。
観劇が決まったあとで改めてキャスト陣を見直すと七海ひろきさんのお名前もあるではないですか。宝塚退団後の七海さんの舞台姿を見るのは2021年のエリザベート・ガラコンサート以来です。明日海トート、花乃シシィを見たくてコロナ収束前でしたが東急シアターオーブまで見に行った時のことを思い出しました。(幕が上がって舞台上に大月さゆさんの姿もみつけてさらにテンションがあがりました。89期が3人。エリザ・ガラコンにもマダム・ヴォルフで出演されてたなぁ)

・・と、ほぼキャスト目当てで見に行ったのですが、これがとても面白くて引き込まれる舞台でした。
オリジナル・ミュージカルというと真っ先に「スワンキング」が頭に浮かびちょっと心配もありました。女性キャラの描かれ方に共感できなかったのと音楽が真面目すぎるなぁと思った記憶があって。
「コレット」はその真逆で、明日海さん演じる主人公コレットはもちろん、ミッシー(七海ひろきさん)、メグ(花乃まりあさん)、シド(前田美波里さん)、ジョルジー(大月さゆさん)、シャルロット(可知寛子さん)、ボレール(コイタ奈央美さん)、イザベル(伊宮理恵さん)と登場する女性キャラが揃いも揃って個性的でイキイキとしているのがとても面白くて引き込まれて見てしまいました。
音楽もとてもおしゃれで気持ちが盛り上がりました。コレットが夢中で物語を書き付けるときのナンバーは明日海さんの魅力が眩しかったです。二度目の夫アンリ(吉野圭吾さん)の愛人イザベルのぶっとんだナンバーも印象的でした笑。どのナンバーも自然に心に入って来た気がします。
見終わってから「スワンキング」が「コレット」とおなじG2さんの脚本・演出で、音楽もおなじく荻野清子さんだったと知り不思議な気がしました。
「スワンキング」は頭では理解できても惹き込まれることがなかったのは、たとえ時代の先端をゆく気鋭の芸術家たちであっても19世紀の男性優位が当然の考え方に根付いたかれらの言動と、パターナリズムの下で無力化された女性の姿ばかり見せつけられたからかなぁと思ったりします。
一方「コレット」に登場する女性たちは、やはり20世紀初頭の男性優位の社会を生きてはいるのですが、女性1人で生きていけないのなら誰と生きるのかどう生きるのか、それぞれに自分で考え選んで生きているように見えました。

田舎育ちの世間知らず、夢見がちでありながらも行動力だけはある危なっかしい少女だったコレットが、パリでやり手の文筆家(ゴーストライターたちに自分の名前で小説を書かせている)ウィリー(今井朋彦さん)と結婚し、彼との生活や彼の仕事ぶりから人生や文学の学びを得ていき、自分を夢中にさせるものに打ち込み、タブーをものともせずに自分がやりたいと思う生き方を邁進していく姿はとても清々しく快かったです。明日海さんは物語に惹き込む力が凄いなぁと思いました。
夫に対抗するために夫の愛人シャルロット(可知さん)に教えを請う場面もとても魅力的でした。シャルロットもさいしょは面食らった様子だったのがだんだんコレットに惹き込まれ面白がってレクチャーしていくのが面白かったです。(こういうシスターフッドとても好きです)
アメリカ人のジョルジー(大月さん)とも彼女の誘惑のままに関係を持って悪びれないところ。けっきょくジョルジーはウィリーとも関係があり彼の思惑で動いていたというとってもベルエポック的なエピソードですが、爛れた感じになっていないのは演出の意図と明日海さんの持ち味なのかな。

男装の麗人ベルブーフ侯爵夫人で愛称ミッシー役の七海ひろきさんは声が宝塚時代とちがっていてちょっと驚きました。男役の声というより高めの若い男性の声に近いような。声優としても活動されているんだったなぁと退団後のキャリアに思いを馳せました。
男装姿も宝塚時代と変わらずスマートでカッコ良くて、まさに長身の元男役だった七海さんにぴったりのキャスティングだなぁと思いました。
ナポレオン3世の姪として公爵家に生まれ侯爵を夫としながら同性愛者として、さらに当時の社会規範では同性愛以上にタブーとされた男装を貫き好奇の目に晒されながらも堂々と自分の生き方を選択しているミッシー。
『ぬくぬくとした自由なんてどこにもありはしない/自由と孤独をひきかえに切り開いて歩く棘の道 』とコレットに歌いかける言葉が重かったです。コレットに多大な影響を与えた人だなぁと思いました。
生きる糧を得るために労働する必要のない人だからできることもあるのかと思いました。

コレットがウィリーのもとを飛び出したあと、コレットにとって代わろうとウィリーのパートナーとなったメグ(花乃さん)。
そもそもウィリーってそんなに魅力のある男性なのかなと思ってしまうのは生きている時代が私と彼女たちとではちがうからかな。社会的地位や立派な身なり、自信にあふれた言動は、パートナー選びが生きる手段である当時の女性から見たら魅力的なのかもしれないなぁ。
なによりメグはコレットがウィリー名義で書いた小説の主人公クローディーヌになりたい人なんだろうなぁと思いました。「クローディーヌ」はコレットが自分を投影した小説なので、つまりコレットになりたいのだろうなぁ。ウィリーをパートナーとしたのもそういうことかな。
自分がコレットに代わって彼女が居た場所に座り、さらにコレットよりも上位に見せようと悪戦苦闘。あの手この手でコレットを陥れようとする様はまるでアニメの敵役のようでコミカルで面白くチャーミングにも見えました。花乃さんが宝塚の宙組時代に演じた賞金稼ぎの役なども思い出して懐かしい気持ちにもなりました。(七海さんが主演の1人だった作品でした)(花乃さんははっちゃけると面白可愛いんですよね)
コレットを陥れる作戦自体はぜんぜん上手くいっていないのに、ウィリーもなんだか楽しそうだなと思いました。いい悪役コンビみたいでした。(ロケット団みたい笑)

コレットにとってのシャルロット、ジョルジー、そしてミッシーと、フィジカルな関係があるかどうかは抜きにして、彼女たちは新しい時代を生きる女性としてコレットが階段を上っていく先に仰ぎ見た道標のような同性なのだろうと思います。
メグにとってはコレットがそれにあたるのかもしれないと思いました。
でもコレットが臆することなく彼女たちの懐に正面から飛び込んでいき何某かを学びとるのに対して、メグはコレットに嫌がらせをすることでしかアプローチできないのだなぁ。憧れる気持ちを拗らせているように思いました。
19世紀から20世紀へと時代は移り行き、都市で生きる人々を取り巻く環境や意識が大きく変容していくなか、新しい時代の雛型としての女性像もない。それを探し続け先鋒を歩き続けた1人がコレットなのだろうなと思います。
それでいて尖り過ぎてもいない自然体でチャーミングなのは田舎で母親シド(前田美波里さん)の愛情をしっかりと受けて育ったからかななどと思いました。旧時代の女性でありながら娘を古い型に押し込めようとせず、コレットが舞台やレポタージュに追われて小説を書けないでいる時代でもずっと小説を書き続けるよう助言する姿を見ていると、娘の本質を知る母としてその人生の実りを願うと同時に、彼女にとってもコレットは希望なのかなぁと思ったりもしました。母としても、もしかして1人の女性としても。

20歳で14歳年上の文筆家ウィリーと結婚、彼のもとから飛び立ち、時代の社会規範から外れた女性たちに学んだのちは、年下の男性たちから愛されるようになるコレット。社会的に認められ、経済的基盤もできてギブすることができるようになると自ずとそうなってしまうのかな?
ミュージックホールのダンサー時代のファンであるエリオに、語り部で終盤に正体がわかるベルトラン。ともに大東立樹さんが演じていました。
親子ほど年上で自分に正直すぎる掴みどころのない女性に憧れ恋愛関係になるってどういう感覚でどういう気持ちなんだろうなと思いました。

いまから100年前、世の中の価値観が大きく変わる時代を生きたコレットの生き様が主演の明日海りおさんと脚本演出のG2さん音楽の荻野清子さんらの手によって鮮やかに興味深く描き出された作品でした。
大人の感覚のミュージカルという点も新鮮でした。
2025年のいま見られてとてもよかったなと思います。

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2025/08/31

チアーユーアップ!

8月21日に宝塚バウホールにて雪組公演「ステップ・バイ・ミー」を見てきました。
演出家菅谷元氏のデビュー作であり、雪組の注目の若手男役、華世京さんの初主演作でした。

華世京さんのことは入団当初から注目されている男役さんと認識していましたが、コロナ禍以降数えるほどしか雪組を見る機会がなかったため、なかなか舞台上の姿を認識できないでいました。それでも偶々見たCSの番組で物怖じしない明るい雰囲気に惹かれるものがありました。
その華世さんの初バウがいよいよ上演されると知り、これはぜひ見てみたいと思って観劇を決意(決意したからといって簡単に見られるわけではもちろんないですが運よくチケットを手にできました)。
ちょうど星組のあれやこれやや家族のことなどでてんやわんやしていて、前情報も頭に入れることなく観劇したのですが、とても引き込まれる舞台で見に来てよかったと心から思いました。
もとより雪組は上級生はもちろん、下級生もお芝居が巧いなぁと観劇のたびに思うのですが、今回さらにその印象が深まりました。

作品のタイプとしては、激動の時代を生きた人びとをドラマティックに描くという類いではなく、自身の課題や苦しみを抱えて日常を生きている人びとに起きた出来事を通じて、彼らがそれらをどう捉えてどんなふうに向き合っていくか。登場人物たちの心や人生を感じて私自身も背中を押されるような、日々のなにかを肯定的に受け取る糧にできるかもという作品だったと思います。
それだけに「見せる」ことが難しい作品だったと思うのですが、集中して見ることができたのは華世さんや演じた雪組生の力量と魅力によるところが大きいと思いました。
構成の配分も冴えていて、チアダンス、ハロウィーン、プロムなどキャッチ―なシーンの入れ込みが絶妙でまるでショーを見ているような感じで楽しかったです。
10年前の主人公の大学入学からその年のプロム(卒業ダンスパーティ)直前までの学生時代のシーンが展開していたのにそれがそのまま映画のワンシーンとして10年後の今につながる演出も面白いなぁと思いました。
入れ子になっているストーリーに戸惑うことなく見られたのは、演出の巧さと主演の華世さんをはじめとする演者の力量によるものだなぁと思いました。

主人公ユージーンを演じる華世さんは小顔でとてもスタイルがよく、常に目を惹く華やかさのある舞台姿で、はやくから注目されてきたのも肯けました(はっきり申しましてとてもタイプの等身バランスでした)。そのうえでお芝居もダンスも見る人を引き込む力があるバランス型の演者さんだなぁと思いました。
倦んだような厭世気味な現在の青年俳優の姿、恋にも青春にも怖いものなしのまっすぐな10年前の学生の姿(一方で家族の問題も抱えながら)を一瞬で演じ分ける華世さん。
10年前のユージーンの想い人リリーと今の映画の相手役エイミーを演じ分ける星沢ありささんも凄いなと思いました。リリーのときはちゃんとユージーンより年上に見えるんですよ。(華世さん演じるユージーンも彼女より下級生に見える!)と思っていたら連続したシーンなのにある一瞬でユージーンとは面識の浅いエイミーに見えちゃう。
華世さん研6、星沢さん研4? 嘘でしょう?という感じでした。

華純沙那さんが演じていたチアのキャプテンのジェシカが素敵でこちらも目が離せませんでした。強気にずんずん周りの人をチアしていく感じなんだけど弱みもあって(ベンのことが好き)。彼女のおかげで一歩前に踏み出せた人がたくさんいそうなのに(ユージーンもリリーも)自分のことになると奥手?みたいなそんなところも愛おしい人でした。
華純さんはそんなジェシカを本当に素敵に演じていていいなぁと思いました。チアダンスも最高でしたし(チア全員良かったです)、プロムで踊る時もちゃんとジェシカだし。ジェシカ大好きでした。
(華純さん気になって調べたら106期娘役さんなんだなぁ。最近好きになる娘役さんが106期ばかりで・・咲き香る時期なのかなぁ娘役さんの研6って)
エイミーの友人のサラ(愛陽みちさん)とアリソン(白綺華さん)もチアのメンバーも雪組は下級生まで娘役さんが芝居上手なんだなぁと思いました。

諏訪さきさんが演じたベンも良かったなぁと思います。存在(生き様)にメッセージがあって、諏訪さんがそれをちゃんと担ってたなぁと思います。
ユージーンの兄フレッド(眞ノ宮るいさん)もただの嫌われ役で終わらず内面の屈折や成長が見えるのが良いなぁと思いましたし、製薬会社勤務のジャック(咲城けいさん)も突き進んでいた道から降りる勇気があるの良いなぁと思いました。
ご都合主義に思わせない芝居や展開が心地よかったです。
大団円にまとめるのにけっこう端折っちゃったなと思うところもありましたし、やっぱり持つべきものは太い実家だなぁなんて思ったりもしましたが、実家が太い人にしかわからない苦悩もあるよねーと納得もしてしまうのは、演じる人たちがしっかりと埋めているものがあるからだなぁと思いました。専科の英真なおきさんに組長の奏乃はるとさん、真那春人さん、杏野このみさん、桜路薫さんと頼りになる上級生が担っているものも大きく、芝居に没入できた所以かなぁと思います。

若手の演者さんたちの未来に向かって身を正すまっすぐさや清々しさを浴びることができて、なおかつ新公学年の生徒さん主演作としてはかなりレベルの高い舞台を見ることができ、悦びと満足感いっぱいの観劇体験でした。
なにもわからない状態でほぼ直感で観劇を決めたのでしたが、アタリだったなとその時の自分を称賛したい気分です。
(こうなってくると雪組の下級生も応援したくなるな~と思いはじめていて、またまた自分で自分の首を絞めてしまった感もありますが・・遠征控えようと思っているのに・・)

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2025/08/25

軒端の梅よ春を忘るな

8月7日博多座にて、歌舞伎「刀剣乱舞 東鑑雪魔縁(あずまかがみゆきのみだれ)」「大喜利所作事 舞競花刀剣男士」を見てきました。
「刀剣乱舞」はミュージカルもストレートプレイも見たことがなく、ついていけるかな?と不安もありましたが、松也さんや獅童さんが出演されるので見てみようと思いました。

開演前には緞帳にどのような世界観の舞台であるかが文章にて映し出されていて観劇の助けになりました。また演者の方(舞台を見て「時間遡行軍」の方々と知る)が開演前の客席通路を扮装姿で練り歩き刀を構えて見せてくれたりとはじまる前から気持ちも盛り上がりました。
舞台の冒頭には名乗り?の場面もあり、キャラ立ちもはっきりしていたので登場人物がわからなくなることもなく、ストーリーも有名な鎌倉幕府3代将軍源実朝の暗殺に絡んだものなので、置いて行かれるということもなく愉しむことができました。

尾上松也さんが刀剣男士の年長者?の三日月宗近役と敵役の羅刹微塵の2役であること、河合雪之丞さんが小烏丸と北条政子、尾上左近さんが加州清光と実朝の御台倩子姫のそれぞれ2役なのもわかりましたが、陸奥守吉行役の中村歌昇さんが実朝を、同田貫正国役の中村鷹之資さんが公暁を演じていることは幕間に一緒にお茶をした方に教えていだたくまで気づきませんでした。
土佐訛りで粗野な雰囲気の陸奥守と公家好みで内向的な実朝を演じている方がまさか同一人物とは思いもよらず。
それを知ってからは、歌昇さん(陸奥守)につっけんどんな加州清光と歌昇さん(実朝)の身を案じる可憐な倩子姫のどちらも尾上左近さんが演じていることにときめきました。
クライマックスで舞台に雪積もる鶴岡八幡宮の大石段が登場した時は胸踊りました。大階段を見ると気分が盛り上がるのは宝塚ファンのさがでしょうか。

刀剣乱舞という新作歌舞伎を見て思ったのは、歌舞伎の所作の理解しやすさ、セリフの聞き取りやすさです。
初めて見る世界観をとてもわかりやすく見せてくれて置いていかれることがなかったのは歌舞伎が持っている力、決まり事や所作、セリフ回しのわかりやすさゆえのような気がします。

本編の「東鑑雪魔縁(あずまかがみゆきのみだれ)」の幕が降りると案内人の武彦さんと押彦さんのコンビが登場して、芝居の結末について(公郷と思しき修行僧について)とこれから始まる所作事について軽快に漫才のようなかけあいで説明されたのがとてもツボにはまりました。説明が終わるとスッと真顔になり所作事の後見に回られたのも素敵。

刀剣男士の演者が役のままで舞い踊る「大喜利所作事 舞競花刀剣男士(まいきそうはなのつわもの)」も見応えがありました。
髭切と膝丸が「三番叟」を踏む。揃いの浴衣に袖を通し、お国にちなんだ民謡を踊る―—同田貫正国のご当地熊本の民謡「おてもやん」のときにひときわ手拍子が大きかったのは九州ゆえかなと思ったり。
河合雪之丞さんの小烏丸の玉蟲、松也さんの三日月宗近の那須与一の物語の舞踊は二重に美味しい演目でした。
中村獅童さんの鬼丸国綱による白頭の獅子が2頭の赤頭を引き連れて激しく毛振りをする場面はこれぞ歌舞伎だなぁと、そして凄くロックだなぁと思いました。
新作狂言のあとに所作事(しかも役に扮しての)がフィナーレのようにあったことでいっそう世界観が身近に感じられて面白く愉しむことができました。
つぎは刀剣男士が歌舞伎役者に扮しなくてはならないなんらかの理由付けで刀剣男士による「義経千本桜」などを見てみたいななどと思いました。

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2025/07/27

つかの間のやすらぎ

7月20日に宝塚大劇場にて「悪魔城ドラキュラ」「愛, Love Revue!」を見てきました。
千秋楽にして初見でした。

「悪魔城ドラキュラ」は人気ゲームの宝塚歌劇化ということでしたが、プレイしたことがないゲームでしたし、正直なところ初見ではどのように愉しめばよいのかいまいちわからないまま終わってしまいました。

ビジュアルは最高でした。タカラジェンヌと宝塚スタッフのコスチューム&メイクの作り込みは想像の遥か上を突き抜けていくなぁと。
装飾過多なゴシック調のコスチュームが映えるタカラジェンヌの等身ときたら。
二次元から起こしたデコラティブなコスチュームを三次元の空気や重力をも味方につけて華麗に翻して踊る、立ち回る、舞台センターの主人公アルカード(永久輝せあさん)やリヒター(聖乃あすかさん)はもちろん、舞台後方の高みから厳然と見下ろすドラキュラさま(輝月ゆうまさん)も舞台端でポージングしているサキュバス(侑輝大弥さん)やマグヌス(希波らいとさん)はじめ、誰もが3Dのどこからみても隙なく美しい。これこそが宝塚だなぁと惚れ惚れしました。
そしてそれに加えてマリア役の星空美咲さんの歌声も。
近年のタカラジェンヌの実力レベルの向上には驚くばかりです。

世界観もドラマティックで宝塚に合っていて、演じている人たちもそれぞれのキャラクターとしての行動原理を理解してその思いを胸に舞台でその生を生きているのも伝わりました。
が、如何せんストーリーの構成が甘いというのかエピソードが弱いというのか、ゲームの1シーンやセリフの再現度は高いのだろうけれども人物の行動やそこにある葛藤がプロットをなぞっただけになっていて勿体ないなぁと思いました。
舞台セットもバウ公演のようで大劇場公演に期待するダイナミズムが希薄で、ほぼ演者頼りの印象でした。
宝塚歌劇、宝塚大劇場というリソースが活かしきれていないのが勿体なく思えて歯痒く感じました。
原作ゲームのファンで宝塚歌劇を初めてご覧になる方々に対して「宝塚、こんなもんじゃないっす」と弁明したくなるような、ただの宝塚ファンでしかないくせに謎の焦燥感が湧いてしまって、本当だったらもっと作品に没入していただろうものができなかったのかもしれません。私自身の煩悩ゆえの敗北かな。
そんな煩悩をひととおり通過して2度目からが愉しかったのだろうなと思いますが、1回しか観劇を予定していなくて残念です。
(東京公演の千秋楽ライブは楽しく鑑賞できるかな)

「愛, Love Revue!」は岡田敬二先生のロマンチック・レビューの23作目ということで、プロローグの宝塚の名曲「I LOVE REVUE」からはじまって、「初恋」「ラモーナ幻想」「愛の誘惑」「熱愛のボレロ」など時代を超えた懐かしい場面の連続で、その古めかしさをいまの生徒さんの感覚でパフォーマンスされるのが逆に新鮮に感じられました。
「愛の誘惑」の楽園の蛇さんの聖乃あすかさんの妖しい美しさに撃ち抜かれ、「熱愛のボレロ」の永久輝さんの三白眼に魅入られました。ラモーナの星空さんの歌声に安堵を感じるのも新鮮でした。

この3か月間主に星組「阿修羅城の瞳」に浸っていたこともあって、あらためて宝塚歌劇の振り幅の大きさを噛みしめています。
そしてどんなジャンルであってもビジュアル(演者自身も舞台美術も)が抜きんでていること、それこそが宝塚歌劇の真骨頂だなぁとも思います。
その中でも花組のビジュアルはハイレベルだと思いました。
この美しい花組に星組から極美慎さんが異動してくるんだなぁ。さらに目が幸せな組になっちゃうなぁと思うとこれからの花組公演も見逃せません。高齢の家族のこともあり遠征を減らす方向で考えているのだけどなぁ。困りました。(願わくはその如月の望月の頃)

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