カテゴリー「♖ 観劇」の552件の記事

2025/05/01

あじゃらかもくれん

4月15日に福岡市民ホールにてミュージカル「昭和元禄 落語心中」を見てきました。

福岡市民ホールは、福岡市民会館を継承するホールとして今年の3月28日に開館したばかり。「落語心中」はこの福岡市民ホールではじめて上演されたミュージカルとなるそうです。

原作のコミックは10年以上前に単行本の表紙の八雲に惹かれて1巻目を購入したのですが、2巻目は読んでいませんでした。
年配の噺家さんの「あたし」などのやわらかい江戸言葉が好きなので八雲はとてもタイプでしたが、落語をあまり知らないのでいまいち漫画に描かれている落語シーンにピンときていなかったのだと思います。

それから幾星霜・・古川雄大さんの芝居冒頭の老年の八雲は思い描いていた八雲そのもので、その彼が高座にあがっているシーンを見てやっとイメージが掴めたように思います。これを機に2巻以降も読んでみようかなと思いました。
和物の古川さんもTVドラマ以外では見たことがなかったので和服で舞台に立つ古川さんを新鮮に感じました。着流しの後ろ姿に見惚れながら、このキャスティングを考えた人は天才!!と思いました。
若造の見習いの頃から徐々に真打ちにあがってシニア世代まで雰囲気とともに心の有り様も変わっているのがわかりその心のうちを考えるのが面白かったです。
ルパンとはあきらかに違う昭和の雰囲気のインバネスコートの後ろ姿もよかったです。(インバネスじゃなくてトンビだったのかも)

みよ吉役の明日海さんは憑依系のお芝居がさすがだなぁと思いました。
アフタートークで明日海さん自身はみよ吉とはまったく違うというお話をされていたので、その話にうんうんと頷きながら、それでもみよ吉になりきってしまう明日海さんって凄いなぁと思いました。
芸者姿もドレス姿も美しくてそこも「やはり明日海りおさんだなぁ」とあらためて思いました。

助六役の山崎育三郎さんはイキイキのびのびと助六(初太郎)を生きているなぁという印象でした。四国で自堕落に生活しているところなど本当にこの助六という役(人物)が好きなのだろうなぁと思いました。
この舞台にかける意気込みの強さも助六をとおして感じられました。
どうやっても敵わないと思わせられるカリスマ性を助六が見せてこそ、八雲(菊比古)が彼にとらわれ続けることに納得がゆく大変な役だからこその演じ甲斐みたいなものを存分に味わい尽くしながら演じてらっしゃるのかなぁと思いました。
助六が深まれば八雲も深まらないと釣り合わない、そんな難しさと面白さがある作品だなと。
助六と八雲という個性がまったく正反対の男2人を、山崎さんと古川さんというまた個性の異なる2人の俳優が演じる面白さを堪能することができました。

観劇した日はアフタートークショーがあり、助六役の山崎育三郎さん、明日海りおさん、古川雄大さん、与太郎役の黒羽麻璃央さんの4人が登壇されて、育三郎さんが司会役でトークを回されていましたが、えっ大丈夫?なお話をされたりして麻璃央さんを除く3人で円陣を組んで作戦会議?っぽいことをされたり、天然でボケてしまう古川君にツッコミを入れられたりとても楽しいトークショーでした。
4人のうち3人がトート(経験者)で4人ともロミオ(経験者)というお話もされていて、凄いメンバーだなぁと思いました。
次回の「エリザベート」では明日海さんがシシィ、育三郎さんと古川君がトートだなぁと思いながら、そこに麻璃央さんもルキーニで加わったらいいなぁと思いました。

こんなぜいたくなキャストとスタッフで日本のひとつの芸能を題材にしたミュージカルが創られたことが素晴らしいことだなぁと思います。

CAST

山崎育三郎 初太郎 のちに 二代目有楽亭助六
明日海理央 みよ吉
古川雄大  菊比古 のちに 八代目有楽亭八雲

黒羽麻璃央 与太郎
水谷果穂  小夏
金井勇太  松田
中村梅雀  師匠(七代目有楽亭八雲)

阿部裕   江戸落語協会会長
村井成仁  銀治

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2025/04/23

しのぶることのよわりもぞする

4月8日9日、18日に東京宝塚劇場にて宙組公演「宝塚110年の恋のうた」「Razzle Dazzle」を見てきました。

1月終わりの宝塚大劇場以来2か月半ぶりの宙組観劇でした。8日と18日は1階席、9日の三井住友カード貸切公演は2階席から観劇しました。
1階席で観劇した日はお芝居最後の客席降りでお名前を覚えたての下級生と触れ合うことができて楽しかったです。(2ヶ月半でお名前がわかる生徒さんが増えました!)

「宝塚110年の恋のうた」を見て宙組生の和物化粧が大劇場公演より格段に美しくなったなぁと思いました。
2018年の日本物レヴュー「白鷺の城」の男役さんたちは白塗りというよりも日本物のお芝居に近いお化粧だったので、今回のようなしゃべ化粧の宙組男役さんたちを見るのが新鮮で。
さすがに星組花組で日本物レヴューの経験がある芹香斗亜さんは大劇場公演から格別の美しさでしたが、次期トップの桜木みなとさんのお化粧(とくに目元)が以前よりも目を瞠るほど綺麗になっていて嬉しかったです。

大劇場公演で芹香さんが歌った「恋の曼陀羅」「琴時雨」と七夕の場面の一連がとても心に沁みて(鷹翔千秋さん水音志保さんの「恋の笹舟」風色日向さん山吹ひばりさんの「星逢一夜」がとくに好きでした)、東京公演観劇を待ちきれずBlu-rayも購入しましたが、18日の観劇では亜音有星さんの「砌(龍の宮物語)」に心奪われてしまいました。歌い方がかわったかしらと思うほど歌もとても胸に響きましたし、シケから滴るような色気、赤い口紅も目尻のラインも魅惑的でうわっと思ってそれからずっと亜音さんから目が離せなくなっていました。(大劇場のときからこんなでしたっけ・・?!)

日本物のレヴューはことさらに激しい動きがあるわけではないのだけれど、それだけに演者から醸し出される一瞬のきらめきによって見える世界が変わることがあるのだなと身をもって経験した気がします。(長らく宙組ファンなため日本物レヴューをリピート観劇する経験そのものがすくなくて気づかないでいままで過ごしてしまったかも)
宙組は組の立ち上げ前の香港公演以来20年以上日本物のレヴューの上演がなかったので、今回のショーは組ファンの私にとっても貴重な経験でした。
お化粧も含めて宝塚の日本物レヴューの華やかさや艶はほかではなかなか見られないものだと思いますので、この先もずっとつづいてほしいなぁと思います。

遠征中の4月8日の観劇後に演出家の谷正純先生の訃報を知ることとなり、芹香さんたち93期は谷先生の日本物レヴュー「さくら」で初舞台を踏んだのだったなぁと、その初舞台公演の後もののお芝居はこれまたトップスターの安蘭けいさん演じる主人公が騙し騙されるハッピーエンドのミュージカルコメディだったなぁと思ったり。
奇しくも初舞台公演とおなじく日本物レヴューと後もののハッピーエンドのミュージカルコメディで卒業していく芹香さんを思ってしみじみとあはれを感じたりしました。
去りゆく人びとが残してゆくものがこれから先の宝塚でも引き継がれていきますようにと願いました。

そしてあらためて芹香さんの退団公演が「Razzle Dazzle」で良かったなぁと思いました。
いまでも思い出すと涙ぐんでしまいそうになる「金色の砂漠」のジャー。自分が与えられる幸福と自分では与えられない幸福の狭間で平穏と秩序と愛のために彼が選んだ未来。
宙組デビューの「天は赤い河のほとり」でいまめくエジプトの将軍ラムセスの「ふたり並んでミイラになるまで」に心臓を射抜かれたこと。
2作目の「異人たちのルネサンス」以降はちょっとネジを巻きすぎたような役が多かったなぁという印象ですがそれもよき思い出。
そんないろいろが思い出されてこれが見納めなんだなぁと切なくもなりつつ、このとぼけた感じのレイモンドが愛おしくて、映画を愛する仲間たちに触発されて自分の未来を自分で決めていく彼を心で応援しながら、彼を応援するエキストラの仲間や彼と関わる人びとを愛しく思いながら、その思いを卒業していく芹香さんといま一緒に舞台に立っている宙組生に重ねて彼女たちのここからの未来が明るいものでありますようにと願っていました。

2階席に座った日はオペラグラスでラズルダズルのお客たちを見ると、それぞれがクラブの客として背景を持って舞台で小芝居をしている姿に目が離せなくなりました。上手側テーブルのレイモンド(芹香さん)たちを見なければと思うのに、ついついあちらのテーブルこちらのテーブル、階段の上やバーカウンターで談笑している人たちを隅々まで見てしまって・・もう目が足りない!となってしまいました。
映画撮影のシーンでもそうなのですが、舞台の上のひとりひとりが役として活き活きと演じている姿がストーリーの内容とも重なってなんだかとても幸せな気持ちでした。

お芝居終わりの客席降りでは、満面の笑みで両手タッチしてくれた生徒さんが「110年の恋のうた」の歌うま神社でソロで歌っていた風翔夕さんだ!とわかり、そのお隣は奈央麗斗さんだ!とわかる自分が嬉しかったです。
じつはここ数年でお顔がわかる生徒さんがたくさん卒業してしまい、もともと顔覚えが悪い私は一時大半の生徒さんがわからなくなってしまっていたのですが、またすこしずつお顔がわかるようになってきたことが嬉しくて。
別の日は背後で踊っていた風羽咲季さんに対して手を出そうとするもタイミングを逸しておたおたしていたにもかかわらず笑顔で応じてくださり、そのあまりのチャーミングさに頭のなかにお花が盛大に飛びまくりました。

「宝塚110年の恋のうた」の神がき(歌うま神社)の日替わりナンバーもいまの宙組生を知る貴重な機会となりました。
8日と9日は風翔夕さんが「My Life Your Life」(JIN-仁-)を、18日は天彩峰里さんと志凪咲杜さんが「石を割って咲く桜」(壬生義士伝)を歌っていました。
風翔夕さんはこの場面ではじめて認識したのですが、前述のようにその後の「Razzle Dazzle」の客席降りの際に、さっき歌うま神社で歌っていた生徒さんだと気づきお名前と顔を覚えることができました。
志凪咲杜さんは「Le Grand Escalier」のデュエットダンスで研3にしてカゲソロを歌っていた生徒さんとしてお名前だけは知っていたのですが、姿を認識したのははじめてでした。
天彩峰里さんはその次の祇園の場面でセンターでチョンパで現れるのを知っていたので、歌うま神社に登場すること自体に驚きました。その日の祇園の場面は天彩さんはセンターではなく下手前方に立ちチョンパになったので、なるほどこうするのかーと思いました。
芹香さんトップ時代の作品はたくさんの宙組生にスポットが当たるようになっていた気がします。おかげでまたあらたに生徒さんたちを知ることができました。日本物の経験とともにこれも芹香さんが宙組のためにのこしてくれたものだと思っています。

タカラジェンヌは役を演じる前にタカラジェンヌという虚構を演じているわけですが、その虚構を生きている時間が幸せと思える時間でありますように。
もうじき宝塚を卒業する芹香さん、水音志保さん、葵祐稀さんにも、宙組生の全員にもそう願っています。
そして卒業される3人のこれからに幸多からんことを。

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2025/04/13

真にあなたはグレート

3月30日に博多座にて「マジシャンの憂鬱」「Jubilee」の千秋楽を見てきました。
初日と千秋楽を含め4公演を見ましたが、お芝居もショーもひたすらに心を委ねて楽しめた公演でした。

「マジシャンの憂鬱」は花組時代からショースターとして観客の心を自在に掌握してきた瀬奈じゅんさんがトップ3年目、歌唱力抜群のトップ娘役の彩乃かなみさんや下級生時代から実力を認められていた2番手の霧矢大夢さんをはじめとして役者が充実していた当時の月組に充てて作られた、難易度が高い作品だと思います。
舞台上で大事件が起きるわけでも恋愛模様がドラマティックに盛り上がるわけでもなく、過去にあったことや登場人物の心情を観客が理解することで笑いが起きたりほっこりとした感情を生む・・そんな作品でした。その機微がつたわらないと観客は何を見ているかわからないまま流れてしまう難しさがあると思います。

今回の博多座の演目が発表になったときは、新トップが就任したばかりの花組でハードルが高そうだなと思ったのですが、見事に演じきった今回の博多座メンバーには称賛の気持ちでいっぱいです。
こんなにストレスなしに見られた公演もなかなかないなぁと思います。正塚先生の作品なのになぁ。(マンスプ気味だったり女性の自尊心を傷つけてから持ち上げるなどする愛情表現が苦手なんです・・心を支配しやすそうなキャラをヒロインにするあたりも)

「マジ鬱」初演も若干そういうところもあった気がするのですが、17年ぶりの再演ではそれを感じずに見ることができて、なにがちがったのかなぁと考えましたが、やっぱりいちばんは2025年のいまの感覚を持つ生徒さんたちが演じたからではないかなぁと思っています。

だとするなら、おなじく正塚作品の「薔薇に降る雨」をいま演じたらどうなるのか見てみたいなぁ。とも思いました。
(あえて言わせてもらうと)主人公が「顔だけの最低男」だったあの作品が、2025年のいま上演されたらどんな感じになるのだろうと。
ヒロインにとっては過去も現在もキラキラした存在で、ビジネスパートナーには信頼されて、彼に助けられた人びとにはヒーロー的存在の主人公、そんな輝かしい主人公がフィアンセに対してはリアルに最低であるあるすぎて、下手な取り繕いもまたリアルで、その小さな綻びを前に佇む男女のなんともいえない空気が15年以上を経たいまも記憶に残っています。(おそらく作者の筆がいちばん走ったターンじゃないのかなぁ・・)
そのあたり、いまだったらどう見えるのかなぁと思ったりするのでした。
年経るゆえの愉しみとでもいいましょうか。
(フィアンセの名前がフランス人なのにヘレンだったりとか、いろいろツッコミたい作品でもあったのですが)
と・・世迷言はこれくらいにして今回の舞台の感想を・・。

永久輝せあさんは身のこなしのひとつひとつが美しいなぁと思いました。
お芝居では1910年代っぽいコスチューム(ダウントンアビーの初期くらいかな)、シルクハットにインバネスコートにスリーピース、ベルベットジャケットなどどれもがとてもお似合いでした。(宝塚のこの年代の衣装のバリエーションはほんとうにすごい!)
シャンドールがさりげなく柱(壁?)によりかかるポーズは毎回美しいなぁと惚れ惚れして見ていました。
ショーではザ・宝塚な夢夢しい衣装を着こなし(戴冠式でフレディ・マーキュリーが思い浮かんでしまったのはそのバレエ的な身のこなしゆえでしょうか・・)、黒燕尾でのターン、真っすぐに高く上がる脚。どの一瞬を切り取っても絵になるなぁと思いました。

星空美咲さんは歌声が絶品。
「マジシャンの憂鬱」は歌唱力抜群の彩乃かなみさんに向けて作曲された数々のナンバーを歌いこなす実力に感服でした。
そしてショーの戴冠式のシーンでの歌唱にも。
長身の娘役さんゆえドレスも映えて、堂々と舞台に立っている頼もしい姿には、「PRINCE OF ROSES」の初日の緊張の面持ちを記憶しているので、「こんなに立派になられて・・」と思わずにはいられませんでした。大劇場公演を見ていないので、トップ娘役として立派につとめあげている姿に感動したりして笑。

聖乃あすかさんがこんなにコメディエンヌだったとは知りませんでした。
近年私が花組で見た公演では、1人だけ時空の外にいてほかの登場人物とはセリフを交わさない役やシリアスな役を演じていたのでとても意外でした。
初見時、階段から登場したいかにもプリンス然とした姿に見惚れてしまったのですが、まさかそのエレガントな皇太子が・・。まさに殿下はパッショネイト笑。
可笑しみもありつつ皇太子妃をエスコートする姿はやはり甘やかで、記憶喪失の彼女への告白シーンにはじんわりと涙してしまいました。
ショーでもたくさん活躍されていて、とくに娘役さんたちの真ん中で美しく輝いていた姿が甘く鋭く印象的でした。
これからにますます期待したいなぁと思いました。

美羽愛さんはお芝居で皇太子妃として登場するまでにかなり時間がありましたが、パーティの客など別の役で舞台に出てくると思わずそのチャーミングな舞台姿を目で追っていました。
記憶を失った皇太子妃が精霊たちとカタコンベで踊る場面は儚くて可憐でと美しかったです。
記憶を失ったまま皇太子の聖乃あすかさんと愛情を交わす場面は名場面だなぁと思いました。
ショーでは極楽鳥として専科の高翔みず希さん凛城きらさんを翻弄するダンスが愛らしくて好きでした。

シャンドールの家の5人の居候たち。ラースロ役の羽立光来さんとジグモンド役の一之瀬航季さんは、舞台と客席の橋渡し的な存在でもあって、2人のセリフや慌てぶりで状況が理解できました。滑舌もよく良い仕事をされてました。
ラースロがシャンドールを気遣うヴェロニカのマネをするシーンはわかっていても可笑しくて楽しみでした。
舞台俳優のヤーノシュ役の侑輝大弥さんもいちいちセリフが芝居がかっていて面白かったです。お顔がはっきりして綺麗なのでモノクロのサイレント映画の俳優も向いているなぁと思いました。(ヴァレンティノみたいに人気が出そうだけど舞台俳優にこだわりがあるのかな)
占い師ギゼラ役の朝葉ことのさん、まずパーティでの歌声に聞き惚れました。グループ芝居でのセリフもいい塩梅で彼女の存在で良い感じにまとまっていて頼もしいなぁと思いました。
自称詩人というレオー役の天城れいんさんはかわいい雰囲気が役にぴったりだなぁと思いました。
シャンドールに別れのことばが言えない場面で、もうすこしシャンドールとの関係性が見えたらなぁと。(これはシャンドールの声かけにも言えるんだけど)
「自称詩人」でいつもメシのことばかり言っている・・それだけの情報でシャンドールに出会う(拾われる)までどんな生活をしていたのかとか勝手に想像できてしまったりして、あまたの空想をめぐらせすぎたかもしれません笑(想像ではちょっとランボーが入ってました)

専科の高翔さん、凛城さん、そして副組長の紫門ゆりやさんが芝居ではコミカルな間で楽しませてくれながら、パーティのシーンではまったく別の紳士の役としてとっても粋でロイヤルだったりするのもさすがだなぁと思いました。

下級生にいたるまで皆さんが素晴らしかったです。
私の脳内ではもうこれは「エリザベート」できちゃうんじゃない?ってなっていました。永久輝トート、星空シシィは当然。フランツは聖乃さん?(いやこんなに面白い殿下がやれるんだからルキーニもできちゃうんじゃない?)などなど。エルマー、マデレーネ、リヒテンシュタイン侯爵夫人、・・とどんどん脳内劇場がはじまって大変です。
いつか現実になる日がくるのでしょうか・・?

このメンバーに星組から極美慎さんも加わるのかと思うと花組眩しすぎない??と心配と期待でまた足を運ばずにいられなくなりそうです。

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2025/03/25

まさに殿下はパッショネイト

3月14日と20日に博多座にて宝塚歌劇花組博多座公演「マジシャンの憂鬱」「Jubilee」を見てきました。

お芝居もショーもやっぱり楽しい。
21日には遠方から観劇のために来福した友人たちと、ひとこちゃん(永久輝せあさん)が「ザ博多座」(博多座情報番組)で博多の楽しかった思い出として語っていた能古島にも行きました。
お天気も良くて菜の花がまもなく満開という感じでした。千秋楽の頃には島内のたくさんの桜が見頃になっているのではないかなと思います。
そのあとはお昼に博多駅で「めん鯛まぶし」を食べて新幹線と在来線に乗って門司港観光と盛りだくさんな大人の遠足を満喫しました。
地元に住んでいるけど知らないことばかりで誰よりもはしゃいでしまった気がします。遠方から友人が訪れる博多座公演は私にとって特別なイベントだとあらためて思いました。(来年はどの組が来てくれるのかなぁ)

さて肝心の公演についての感想です。
「マジシャンの憂鬱」は初日の硬さもなくなり、正塚作品特有のテンポ感もよくなっていっそう面白くなっていました。
正塚作品にありがちな「特性ゆえに自己肯定感低めのヒロインと彼女に対して支配的な面が垣間見える主人公」という関係性が初演ではもうすこし濃く感じられていた気がするのですが、星空美咲さんのヴェロニカは自分を顧みて落ち込むことはあってもそこまで自己肯定感が低くはなさそうだし、永久輝さんのシャンドールも相手の心を手玉にとるような感じが薄いので、わたし的には抵抗なく作品を楽しめた気がします。
人を食ったような抗いがたい魅力にあふれていた初演の瀬奈さんシャンドールと比較してしまうと博多座版はあっさりしている印象はあるのですが、そこが令和らしくて安心して見られるゆえんかなと思います。
初演の時は初演が最高だったけれど、いまはこの博多座版が好きだなと思います。

永久輝さんのシャンドールと聖乃あすかさん演じる皇太子ボルディジャールとの掛け合いもとても面白かったです。
さいしょは革新的で聡明な皇太子なのだなと思っていたら、場面を追うごとにちょっとあれ?となり、だんだん様子がおかしくなっていく感じが「気のせいではない」と確信した頃にはスパークしていて、くすくす笑いが大笑いへとエスカレーションしていくかんじがたまりませんでした。
2回目3回目の観劇ともなると「来るぞ来るぞ」というくすぐったさに耐えきれなくなる可笑しさで、「ボルディジャール待ち」とでもいう状態に陥っていました。
彼と礼儀正しくお付き合いできるシャンドールは本当に忍耐強くて紳士だなぁ。可笑しみはあるものの皇太子ボルディジャールもとても紳士で2人揃ってドタバタにも品があるのが素敵だなと思いました。

シャンドールもボルディジャールも自分の人生を一生懸命に生きている。ちょっと青臭さもあるのが博多座版ならではかな。まだまだたくさんの未知が2人の行く手には広がっている。そんな印象も受けました。
シャンドールとヴェロニカも、ボルディジャールと皇太子妃マレーク(美羽愛さん)も、それぞれに初々しさを感じるカップルだなぁとも思いました。
永久輝シャンドールの「好きですよ、あなたが」に(え?ええ?私?)となってるヴェロニカも愛おしいし、ボルディジャールの深い愛を感じて「このまま思い出すことができなくてもあなたを愛していていいですか」と尋ねる美羽マレークも愛おしくて、ふふふとなってしまいます。(きっと目尻がでろ~んとなっていると思います)

愛おしいといえば、ほかの人びととはテンポがちがう柴門ゆりやさん演じる司祭さんも。とてもおっとりとしていて驚いて大の字に気絶したり、そのテンポゆえ大事なことを言おうとしているのになかなか聞いてもらえなかったり・・。抜け目ない人びとの中でひとり俗世間とは異なる空気感を漂わせているのが面白かったです。この世界にはいろんな人が一緒に生きていて、いろんな価値観があるという正塚ワールドの人だなぁと思いました。
シャンドールの家に居候している友人たちも、ヴェロニカの同僚たちも、酒場にいる人びとも、貴族や王室に仕える人びとも、それぞれがちょっと個性的でちょっと利己的でそれぞれに自分の人生を生きているかんじも、正塚ワールドだなぁと思いました。

「Jubilee」もまた、舞台のひとりひとりがその瞬間「生きている」こと、舞台に立つことの歓びに満ちて、その命のエネルギーを浴びるような心ときめくショーでした。
クラシカルでありながら元気いっぱい、美しく崩さないダンスで魅了するのが永久輝さん率いる花組の特長になるのかなぁと思ったりもしました。
綺麗なターン、一直線に上がった脚。ひとりひとりが誰よりも高く、より美しくという矜持をもって舞台に立っているような、その姿が清々しくて惚れ惚れと見ていました。
生まれたばかりのこの永久輝さんを中心にした花組がこれからどのように円熟していくのか、その様を見届けたいなぁと思いました。

ことしの私の博多座花組公演観劇も残すところ千秋楽の1回となりました。
その後のロスがいまから思いやられます。
基本的に観劇は遠征のため組によっては縁遠くなりがちなのですが、こんごも花組を見つづけたいなと思いました。こんごだけに。(マジ鬱だけに)

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2025/03/14

欺き続ける孤独

3月8日に、宝塚歌劇花組博多座公演「マジシャンの憂鬱」「Jubilee」初日を観劇しました。
お芝居もショーもとても楽しくて幸せな時間でした。

「マジシャンの憂鬱」は、私が座った座席位置のせいもあるかもしれませんがさいしょのうちは音響が賑やかすぎて気になってしまったり、前の座席の方が片時もじっとしていないためにずっと視界を妨げられていたりでなかなか内容に集中できないでいたのですが、主人公のシャンドール(永久輝せあさん)が街角でヴェロニカ(星空美咲さん)に声をかけられたあたりから落ち着いて芝居を見ることができて、その後はさいごまで芝居やパフォーマンスを楽しく見ることができました。
正塚先生の作品はセリフを聞き逃さないことが大事なので、永久輝さんと星空さんの滑舌は聞き取りやすくて内容がすっと頭に入ってくるのがとてもよかったです。

初演の瀬奈じゅんさんのシャンドールはこなれ感と人を食ったような雰囲気が魅力的でしたが、永久輝さんのシャンドールは真面目だなという印象をうけました。ボルディジャールを放って逃げることは無理でしょうと。
初演の彩乃かなみさんのヴェロニカは重いものを背負っている気の毒な女性に感じていたけれど、星空さんのヴェロニカはさっぱりとしていて楽に見れたように思います。ちょっとズレている感じかとてもチャーミングでした。そのあたりはテイストが『令和』なのかなぁ。仕事に邁進する姿が素敵だなと感じました。そしてあの彩乃さんが歌ったナンバーを歌いこなしていることに頼もしいなぁ恐れ入ったなぁと思いました。

皇太子ボルディジャール役の聖乃あすかさんは滑舌は甘めでしたが、間や唐突な身体表現が面白くて独特な認知の仕方をするボルディジャールを魅力的に演じていて気がつくと引き込まれていました。
皇太子妃マレーク役の美羽愛さんは、カタコンベで登場した時のダンスが幻想的で目を奪われました。いつのまにかそこにいて心もとなく寄る辺ない風情にはアデルハイド(凛城きらさん)が庇護本能をかきたてられるのも納得でした。

墓守のシュトルムフェルド役の高翔みず希さんと妻のアデルハイド役の凛城きらさんは、ひと言発するだけで面白かったです。
じつはイメージ的に配役が逆(妻役が高翔さんで夫役が凛城さん)かと思っていたので登場のときはあれ?と驚きました。どちらでもできる専科のお2人凄いなぁと思いました。

細かい見どころがたくさんある作品なのでリピートが楽しそうです。

「Jubilee」は、大劇場や東京公演をご覧になった方々から良いショーだからお楽しみにと言われていたのですが、違わず華やかで心浮き立つ作品でした。
クラシックのアレンジ曲で構成されたショーでしたが、元気でカッコ良くてこれがいまの花組なんだなぁと。
若手の方々がダンスパートを目まぐるしいほど順々に踊っていく場面がよかったなぁと思います。
そしてやっぱり花娘の群舞はいいなぁ。一気に世界が爛漫と明るくなる気がします。なんでしょうねあれは。

個人的に初日を観劇するのは受け入れ態勢になるまでけっこう時間がかかる質なのですが、さいしょの強張りもあっという間に溶けてしまっていました。
見終わったとたんに次の観劇がたのしみ~と思いました。
いつもとはちがい、地元ならではの週1で観劇できる博多座公演期間を愉しみたいと思います。

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2025/02/24

真っ赤な嘘に染め上げろ

2月12日に博多座にて歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」を見てきました。

思っていた以上に新感線でした。
2007年版は見ていないんですが、この役は古田新太さんだな、高田聖子さんだな、粟根まことさんだろうな、と思ったり。

それに加えて、凄絶な立ち廻りや思わず見惚れてしまう所作、見得や六方、だんまり、人形振り、本水にさいごは宙乗りなど歌舞伎的演出が目白押しで、そこに大向こうもかかって、歌舞伎初心者の私には目を瞠る瞬間の連続でした。歌舞伎って凄いなあと感嘆しまくりでした。(一昨年見た「流白浪燦星(ルパン三世)」での愛之助さんのレクチャーがいまも歌舞伎を見る面白さをマシマシにしてくれています)

そしてやっぱり脚本に惚れ惚れしてしまうのは性かなぁ。
脚本も演出も演者もどこをとっても凄いなぁと感服しまくり。この打ちのめされるような満足感はなかなか味わえないなぁと大興奮、大満足の観劇体験でした。
歌舞伎って凄いエンタメだなぁと思いました。

松也さんのライ、幸四郎さんのサダミツの回だったのですが、ずっと幸四郎さんがいないなぁ・・と思っていて、さいごのさいごのカーテンコールでサダミツ登場時に背景の映像に幸四郎さんのお名前が出て、えええーっと驚きました。まんまとしてやられていました。
幸四郎さんがライをつとめる大千穐楽のライブ配信は平日だけれど見逃し配信もあるということなので購入しました。どんなライなのか楽しみです。
(けっきょく24日の松也さんのライブ配信も購入してしまって・・まんまとカモです・・)

松也さんのライは迫力が凄かったです。本当に剣に操られているように見えました。どういう体幹をしているんだろう・・。
口先では迎合しながら相手に顔が見えない向きで別の思惑がある表情を見せるのは「リチャード3世」ぽいなぁと思いました。
となると冒頭の3人の魔物(オボロ)に「王になる者」と言われるところが「マクベス」をリスペクトしているのかな。
歌舞伎以外の演劇にも挑戦してきた松也さんがいま、歌舞伎に誇りと充実感をもってこの舞台に立っている、そんな印象を受けました。

松也さんのライと尾上右近さんのキンタとの掛け合いもとても面白くて、シュテンの血人形の契りの意味がわかったときのライに僅かに動揺があったように見えたのは、端からシュテンと義兄弟の契りなどかわすつもりもなくて代わりにキンタの血をつかったことでキンタの命を危うくしたことを悟ってなのかな?
どんな相手も利用するし平然と騙し裏切ることもなんとも思っていないライだけど、ちょっとだけキンタに「あはれ」を感じているのかなぁと思いました。その本人さえ意識していないちょっとした「あはれ」が最終的に自滅につながるのがまたあはれでこの筋書きの痺れるところだなぁと思いました。
松也さんライと右近さんキンタの関係性がとても刺さったので、幸四郎さんのライとキンタではどうなるのだろうと興味がわいています。

時蔵さん演じるツナと坂東彌十郎さんのオオキミも好きだなぁと思いました。
時蔵さんのツナは女性性をほぼ封印した凛々しく美しい女性であるところがガツンと心を奪われました。すっとしたストイックな武人で女性で懊悩しがち。(まんまオスカルだな)それを女方が演じているところ。
(これまでもお嬢吉三や富姫や凜とした女方に心奪われていたから、ツナに惹かれるのは道理なのかな・・?)

オオキミは花道から登場のときから愛らしくて心掴まれました。「3人しかいないけど」もチャーミング。
玉座に上るため身を翻して打ちかけた着物を払う所作とタイミングがシキブともピタリと一緒で見惚れていました。
コミカルかと思いきやするっと様式美を決めるなど油断できない感じにぎゅっと心掴まれました。
坂東新悟さんが演じたシキブはじっさいに近くにいたら苦手なタイプだと思うのだけど、内に秘めたかなしみのようなものも感じて憎めない人だなぁと思いました。
そのかなしみというのは、ツナが感情を抑えているけれど心に嘘はないのとは対照的に、シキブは感情豊かに見せながら実は本心を隠して生きているからかなぁと思いました。そういうすごく女性ゆえな有り様にリアリティを感じてかなしくて憎めなかったのかなぁ。

観劇中のほぼどの瞬間も感動していてとても忙しかったです。演者のパフォーマンスにセリフに展開に。登場人物たちの名前にも。これってこういうこと? これってどういうこと? これって・・と。述べだすときりがないくらいに。とても面白かったです。

2月24日(松也さんライ千秋楽)と25日千穐楽(幸四郎さんライ)のライブ配信も購入したので、観劇中にこれは?あれは?と思っていたことを検証したり、ライが変わることでどうなるのかとか、また自分が何をどう思うのかとか、楽しみにしたいと思います。

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2025/02/18

今は漕ぎ出でな

2月3日に宝塚バウホールにて星組公演「にぎたつの海に月出づ」をマチソワしてきました。
平松結有先生のデビュー作でした。

星組の美しい3番手極美慎さんの2度目のバウホール主演作、そしてヒロインは宝皇女(皇極=斉明天皇)と知りこれはぜひ見たいと思いました。
宝皇女はその出自から即位、そして死に至るまで(なんならその子や孫に至るまで)謎の多い女性で、かつて私はその周辺の記紀の記述をなんどもなんども読み返してああでもないこうでもないと考えていました。

物語は齢60代の斉明帝(詩ちづるさん)が百済に救援をおくる決意をするところからはじまりました。
どうして大国唐を敵に回してまでも百済を救援しようとしたのか、その理由がこれからの物語となるようです。

百済と倭国の連合軍は白村江にて大敗。
そこから場面は数十年さかのぼり極美さん演じる百済の留学生智積が若き頃の斉明帝=宝皇女(寶皇女)と宮中で遭遇。Boy Meets Girl的に物語が動き始めました。
思いつめた様子の宝、これから高貴な人との謁見の場に向かう智積、これからどうなっていくのだろうと思っていたところ・・。
「推古天皇のおなーりー」に思わずずっこけました。そ、そうかこれはこういうわかりやすい世界観でいくのだな、と気を取り直して。(生前なのに諡号で呼ばれるのね、あいわかりました)

宝の最初の夫である高向王(颯香凜さん)が引き立てられて出てきたときは、よもや宝塚で彼の名前を聴くことがあろうとはと感慨一入。
彼は用明天皇の孫で両親については記紀にも記載がない人だけれど、名(諱)が示す通り渡来系の高向氏と関係があると思われます。宝とのあいだに生まれた子の名前も「漢皇子(あやのみこ)」で同じく渡来系の東漢氏と関係が深かそうです。
宝自身も、母方から見ると蘇我系の血を引く用明天皇と推古天皇の同母弟である桜井皇子の孫にあたるのでこの婚姻は妥当なものだったのだろうと思います。
高向王とは死別なのか離別なのかは記紀にも書かれていませんが、そののち舒明天皇の皇后に立ち、さらには自らが天皇になることになろうとは、若い宝皇女は思いもしていなかったのではないかなぁと思います。
舒明天皇(田村皇子)自身も、血筋からは蘇我とは無縁のように思われますが、蘇我馬子の娘や推古帝の皇女を娶っていたことで時の趨勢が彼の味方についたのではないでしょうか。
最初の婚姻が短く終わった宝皇女や年齢的に不釣り合いではないかと思われる推古帝の第3皇女を娶っていたこと、采女が生んだ子を皇子として養育していることなど、そういう一つ一つが女性である推古帝には信頼に足ると思われていたのかもしれません。訳がありそうな皇女を任せられるくらいには。
そんな舒明天皇ですが体が丈夫ではなかったのか、たんに夫婦で温泉好きだったのか、たびたび有馬や道後の湯に行幸しています。宝皇女は天皇になってからも白浜の湯を気に入っていたみたいなので、皇后につきあってあげていたのかな? そのせいかはわかりませんが、そんな天皇のもとで気持ちが緩んだのか群卿らは出仕を怠けていたと書紀に書かれています。政は専ら蘇我大臣まかせになっていたようです。

さてしかしそういうことはここでは置いておいて、舞台では宝の最初の夫である高向王は女性(妻である宝)に暴力をふるった咎で盟神探湯(くかたち)にかけられようとしています。熱湯に手を入れて火傷をしなければ潔白という裁判です。
ん?妻に暴力をふるったら罪に問われる世界観なんだ。歴史物としては新鮮だなぁ。盟神探湯ってこの時代でもやっていたのかな。

熱湯に手を浸けられ火傷を負った高向王を見て、智積が大王の玉座に駆けのぼり薬箱を掠め取って高向王の手当てをしようとする。智積の師である観勒僧正(悠真倫さん)の機転によって咎を免れるけれど、推古天皇めちゃくちゃ寛大じゃない? 歴史物としてびっくりな展開にちょっと心がついていかない・・。これはファンタジイとして見たほうがいいのかな。

自分の歴史観との折り合いがつかず初見の観劇はかなり苦戦しました。
渡来僧観勒僧正が開いた学堂がお習字教室だったり(暦とか政とかを学ぶのではないんだ)皇族と農民の子が一緒に学んでいたり・・やっぱり歴史物語というよりもファンタジイ寄りで見た方がいいのね。

ところで智積という名前は平松先生の創作かと思いきや、皇極紀にその名前が2度出てきます。「大佐平」という臣民として最高位の身分の人で、最初は舒明帝崩御の年に「大佐平智積が死にました」という百済弔使の従者の言葉でいわゆる「ナレ死」。
ところが翌年皇極帝即位の年には百済の使者として宮廷で饗応されたという記述があり、死んだんじゃないんかーい!ってかんじです。
平松先生はそういう謎なところから名前を採用したのかなぁ。

設定に関してはファンタジイだと割り切って見るのがいいとはわかったのですが、心を通わせ愛し合い未婚で生んだ子の育児を全面的に担ってくれていたイクメンのジェントルラバー智積くんのことを、かんたんに讒言を信じて拒絶してしまう寶に、えっ?と思いました。彼を信じてかばってあげないの?
そしてもしやとは思っていたけれど、やっぱりその子は中大兄か。
田村皇子に対して自分との結婚の条件として未婚で生んだほかの男性の子を田村皇子の実子として育てるよう要求する寶にも引いたけれど、自分の血を引かない子を皇子(しかも大兄)として育てることを承諾する田村皇子にも、いくら恋に目が眩んだとはいえ皇統の自覚はないん?と思いました。(いちおう中大兄皇子=天智天皇の血統が現在までつづいていることになっているんだけど・・いいのかなそれで・・まぁ記紀自体が誰かに都合よく書かれたものだものなぁ・・)

瀬戸内海の熟田津(愛媛県松山市)から小舟で朝鮮半島の百済にたどり着くことなど万が一にもないでしょう。蘇我氏の謀によってそれを強いられる智積。この船出は死にゆくとおなじこと。
ここまで自分や自分の家族に誠意を尽くしてくれる智積の命乞いを、なぜ宝はもっと中大兄を我が子として育てることを田村皇子に要求したとおなじ圧をもってしようとしないのだろう。物語全編をとおしてちょいちょい私は宝の気持ちがわからなくなりました。この決定を覆すために奔走することもなく、どうしてその死出をかくもやすやすと受け容れてしまえるんだろう宝は。
自分のためにこれから死に向かう智積に対して「(百済で)待っていてくれますか」とか、それから20年後にあたりまえだけど彼は百済に帰国することはなかったと聞いて「まだ迷っているのですね」とか、詩的に表現されてもそれはないんじゃない?と。
「帰る国(百済)がなくなっては困るでしょうから」というセンチメンタルで百済救援を決意することも。自分がために独り大海に漂流し果ててしまった人の死でうまいこと言わないでと。私はずっと宝に腹を立てていたように思います。あまりにも自分本位に思えて。
智積は納得したうえだったのかもしれないけれど、それは納得せざるをえなく宝がしたからですよね。
私的な感傷で国運を賭けた戦をするのも苦しかった・・。このあと多くの人々が亡くなったり捕虜になったり、国防のために家族から引き離され遠く壱岐対馬筑紫の防人となり故郷に帰れず悲しい歌を詠んだりしているのだけどと。

というかんじで呆然としたまま初見は終わってしまったのですが、2回目の観劇ではそういうことは一切考えないようにしてイクメン智積くんの美しさをひたすらに堪能しました。その美しさに釣り合う実力を身につけた極美さんに惚れ惚れとしながら。宝皇女を愛しそうにみつめる立ち姿頭のてっぺんからつま先まではいにしえの少女漫画もかくやと。美しく舞台に立つことの尊さをしみじみと感じました。
若くて無分別ですらある宝皇女と老年の域にいる斉明天皇を演じ分ける詩ちづるさんの確かな実力。貴女のせいじゃんと思いつつも、かつて智積が乗った小舟と百済に向かう倭国水軍の船の大きさの違いを嘆く彼女に感情を揺さぶられました。

理性的な青年皇族だった田村皇子が内面の阿修羅を表出し嫉妬の炎を燃やす姿、そして良心の呵責にやつれた舒明天皇としての姿を演じて見せた稀惺かずとさんも目を瞠るものがありましたし、その舒明天皇や主役である智積を追い詰めていく 蘇我入鹿役の大希颯さんも悪役としての気迫が素晴らしかったです。(稀惺さんと大希さんとで「あかねさす紫の花」を見てみていなぁと思いました)

威厳と美しさに溢れ、宝皇女にすすむべき未来を示唆する推古天皇役の瑠璃花夏さんも重要な役どころを絶妙に演じているなぁと感嘆の思いでした。高貴な女性としての身のこなしも素敵だなぁと思いました。
輝咲玲央さん演じる蘇我蝦夷はもう、見るからに腹の黒い悪しき大臣の役作りで、この人が表に出てきたら誰も太刀打ちできないんじゃない?と思いました。彼のひと言により策略を巡らした入鹿によって舒明帝も智積もまんまとやられてしまって・・陰で物語を動かす人でした。

智積の親友で同じく百済からの留学生の覚従役の碧海さりおさんは頼もしかったです。舒明帝の遺勅を奪うために入鹿が放った追手に襲われる智積と宝皇女たちのまえに颯爽と登場して敵を斬り払う姿は惚れ惚れしました。
親友である智積をあのようなかたちで失わねばならなかった彼の心中は、その遣る瀬無さを思うと胸が痛みます。
凰陽さや華さん演じる宝皇女の弟軽皇子は癒しでした。その存在に和まされついつい目で追っていました。

鳳花るりなさん演じる小鈴は演じるのが難しいだろうなと思いました。智積と宝が袂を分かつきっかけをつくる大事な役なのだけれども設定があまりにファンタジイで。
着ているものにしても母親が仏教に帰依することにしても国で最高峰の支配階級の若者たちが集い学ぶ場に被支配民の子が混じる設定も、飛鳥時代の「百姓」としての解像度が粗いわりに、物語の進行上担っている役割が大きくて、プロットからあまり肉付けがされていない感じだなぁと思いました。でも作者の社会的な関心が投影されているようなところもあって、肉付けし出すとと収まりきらなくなりそうで、それを削る作業がまた膨大になりそうな役でもあるなぁと思いました。(そこが愉しさでもあるのでしょうけど)

小鈴が智積の日記を持ち出す動機として、「宝への嫉妬心を利用された」と描けば典型的でわかりやすくドラマになりそうではあるのだけれども、そうしなかったのが平松先生らしさなのかなぁと思いました。
そうであれば、そこに期待したいなぁと。私の世代では持ちえない新しい感覚の平松先生がこれから描かれていく物語のなかの別の「小鈴」をたのしみにしたいなぁと思います。
なによりもこのデビュー作で主役を魅力的に描ける才をお持ちだとわかりましたので(私が宝塚でいちばん望むことです)今後の作品も大いに楽しみです。
私は書紀にならって智積が宝皇女や皇子たちと愉快に宴会をしている夢を見ていたいと思います。素敵だったフィナーレを思い浮かべて。

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2025/02/09

ただひとときは与えられ

1月21日22日そして28日に宝塚大劇場にて宙組公演「宝塚110年の恋のうた」「Razzle Dazzle」を見てきました。
21日はイープラスの貸切公演、28日はローソンチケットの貸切公演でした。

幸せな気持ちと言葉にならない思いで溢れる観劇となりました。
「宝塚100年の恋のうた」は芹香斗亜さん演じる藤原定家が桜木みなとさん演じる「八千代(春日野八千代さんの姿をした宝塚歌劇の化身?)」のいざないによって、過去からの宝塚歌劇の日本もの作品の登場人物となって宙組生たちとともに選りすぐりの名曲を歌い継いでいく作品でした。
芹香斗亜さんの狩衣姿や若衆姿やその美しい舞台姿に心に幸福感が溢れ出し、またその心地よい声に酔えば歌詞のひと言ひと言が心に沁みるそんな舞台でした。
名曲というのは物語を離れても折々のひとりひとりの心に寄り添うものなのだなと思いました。
ひたすらにキキちゃん(芹香斗亜さん)と宙組が美しくて愛おしかったです。

ことに「恋の曼荼羅(新源氏物語)」「琴時雨(夢浮橋)」「生きるときめき(星影の人)」はひたひたと心に浸みわたっていきました。
そしてこの作品の主題歌となる「定家葛」。和歌を読み上げる式子内親王役の春乃さくらさんのかくも美しい歌声に聞き惚れ、定家を演じる芹香さんとの切ない恋の重唱に言葉にならない気持ちが溢れて、私のこの気持ちもまた執心だなぁと思いました。

フィナーレの総踊りで桜木みなとさんが夢の間惜しき春なれば・・と歌う「花の舞拍子」も沁みました。桜木さんのたしかな表現力はこういう場面を引き立てるなぁと思いました。
酒井澄夫先生が紡ぐことばの儚くうつくしいこと。ただ聞き惚れるひとときのなんとしあわせなこと。
そして華やかに「花吹雪恋吹雪」で幕がおり、晴れ晴れとした心のそのずっと奥底に、もっと聞いていたかった ― まだまだこれでは足りないと叫ぶ声なき声が存在していました。
この執心のゆくえを季春のそのときまで見とどけていかねばと思っています。

「Razzle Dazzle」は盛りだくさんだった前物の日本ものレヴューのあとにふさわしい軽快な作品でした。
笑いありせつなさもあり、世間知らずで人生を軽んじているような自分本位な青年が自分とは異なる世界の異なる価値観で懸命に生きている人びととの出会いから確固たる自分の夢を見出していくストーリーは田渕先生の作品らしいなぁと思いました。
主人公の軽やかで洗練されたハリウッド一(いち)裕福な孤児レイモンドはその軽妙さも朗らかさも時折見せる寂しい顔も芹香さんの魅力にぴったりでした。
宙組の面々がこぞって芝居の間が良くてとてもよい作品に仕上がっていました。

とくに目を惹いたのはやはり女役に初挑戦の瑠風輝さん。『お騒がせ女優』の異名をとるシャーリーンという長身でゴージャスな映画スターの役でしたが『お騒がせ』と言われるも憎めないチャーミングさもきちんと表現されていて素敵だなぁと思いました。
「ハビロンの落日」の大階段を使ったクライマックスシーン撮影の場面の存在感と女役としての歌声の素晴らしさが秀逸でした。

もうひとり目を瞠ったのはレイモンド(芹香さん)の婚約者アビー役の天彩峰里さん。
レイモンドに対して高飛車だけれど、じつはもっともなことしか言っていないし、レイモンドのことも父親のことも心から考えている愛情深い女性なんだなと、そしてとても有能なんだなと。そういう女性であることがしっかりとつたわる芝居をする天彩さんにさすがだなぁと感心しました。
きっとレイモンドのことをほんとうに愛しているのだと思うし、きっとこれまでもずっとレイモンドが気づかないだけでアビーに助けられていたんじゃないかなと思いました。ほんとにもう、レイモンドったらコノヤロー!ですよね。あんなこと平気で言っちゃって。ドロシーとハッピーエンドはうれしいんだけど。

春乃さくらさん演じるヒロインのドロシーもまた幸せになってほしいなと思わせる素敵なキャラで、きっとレイモンドはさいしょに遇ったときから彼女に好意をいだいていたよねと思います。
桜木さん演じる映画スターのトニーも、鷹翔千空さん風色日向さん亜音有星さんたちが演じる映画のエキストラの面々もそれぞれに映画を愛していてそれに一生懸命に携わっているのがわかって、皆が愛するこの映画の世界がずっと守られますようにと心から思いました。
桜木さんのトニーを中心に映画に携わる人びとが歌う「Over the Rainbow」は感動的でした。

そういえば若翔りつさん演じる鬼軍曹とたとえられる怖い映画監督ハワードの役作りは芹香さんが新人公演で主演をつとめた「愛と青春の旅立ち」のオマージュかしらと思ったりも。(版権問題で見たことがないのですが映画のイメージで)
ひとりひとりのパフォーマンスも申し分なくこの充実したメンバーでこのミュージカルコメディが演じられる贅沢さを堪能しながらこんな舞台をもっともっと見たかったという思いが湧き出づるのをとめられませんでした。

日本物レヴューの後物のお芝居ということでハッピーエンドのあとに付いたフィナーレのショーがこれまた贅沢で素晴らしかったです。
さいしょの桜木みなとさん瑠風輝さんによる歌唱指導は、瑠風さんが本編にひきつづき女役のドレスで登場し歌唱もいつもの男役の声ではなく女役の歌声で。桜木さんとのハモりがそれはそれは心地よくて次回の大劇場公演ではもうこの2人のハモりは聞けなくなるのかと思うと遣る瀬無い思いでした。

大階段の真ん中でステキなドレスをまとった娘役さんたちに囲まれる芹香さんはおしゃれで華やか。KAORIaliveさんの振り付けがほんとうに似合う人だなぁとしみじみ。
男役群舞を率いて歌う「Fooling Good」も洗練されていてとても素敵。
芹香さんが去って桜木さん中心の男役群舞はまたちがった趣き。キレキレのダンスでキメる男役さんたちに思わずふふっとなりました。
そして芹香さん春乃さんのデュエットダンスは「Smoke Gets In Your Eyes 」。長身の2人のスタイルの良さと品の良さが際立って宙組らしい素敵なトップコンビだなぁと思いました。
ジャズが似合う芹香さんの雰囲気が私はとても好きでこんなフィナーレをもっと見ていたいと思いました。が、1月は自分の予定が合わずこの3回しか見られませんでした。(東京公演も1回分しかチケットがない状態です・・涙)
早く映像でこの美しさ儚さそして粋でおしゃれな宙組を繰り返し摂取したいと、いまはひたすらにBlu-rayの発売を待っています。

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2025/02/05

This is me(唯一無二)/礼真琴 日本武道館コンサート

1月19日に日本武道館にて礼真琴コンサート「ANTHEM-アンセム-」を見てきました。

歌もダンスも破格の比類のなきタカラジェンヌ礼真琴さん、そのコンサートならばきっと凄い体験ができるだろうなと、これはぜひ行ってみたいと思うものの、日本武道館ってどうやって行けばいいの?会場はどんな感じ?といつも通う劇場とはちがうアウェイ感がハードルでした。

行きたい気持ちと不安で葛藤していたところ、かつて同じジェンヌさんを応援していた都内在住の知人がつい先ごろ礼真琴さんに激落ちしたと聞いて、とんとん拍子に一緒に行くことになり憂いなく武道館までたどり着けました。(知人は18日の初日も見ていたので中の雰囲気や内部の気温のことなども細かに教えてもらえてほんとうに助かりました! ちなみに彼女は全通でした)

コンサートは想像以上に素晴らしかったです。
不安の1つには、私は礼さんのCDも聞いていないし近年の流行りの歌などまったく知らないのだけど、その状態で楽しめるのかな?というのもあったのですが、まったくの杞憂に終わりました。じっさいコンサート前半で使用された宝塚以外の楽曲は知らない曲ばかりでしたが、礼さんと星組メンバーのグルーヴィーなパフォーマンスですべての楽曲を愉しんでいました。

とりわけ印象に残っているのは、副組長さん(白妙なつさん)の可愛さ。小桜ほのかさんのいつもとはちがうアイドルのような歌唱。ほんとうにタカラジェンヌってなんにだってなれちゃうんだなぁと思いながら。
礼さんと暁千星さんが向かい合い手を握り合って「ぼくたちは同じ星座だと信じてるから」と歌うナンバーはとてもエモーショナルで幸せな気持ちになりました。
トロッコにのってサインボールを投げまくりながら愉しそうに歌う礼さんも印象的でした。力いっぱい投げてもまったく声がブレないのは凄いなぁと思ったり。

日替わりのトークコーナーでは、その日選ばれしメンバー4人が「ANTHEM(応援歌)」に因んで、礼さんに背中を押されたエピソードを礼さんを前に礼さんのものまねをしながら披露するというもので、エピソードを披露するメンバーが礼さん役で、礼さんがそのエピソードを語る本人役になってて、そのやりとりも含めてとても面白かったです。(小桜ほのかさんだけは礼さんのものまねはされなかったのですが、それもまた小桜さんらしくて笑)
エピソード自体はとても真面目で「いい話」な内容なんですが、皆さんエンターテイナーだなぁと笑。
皆さんそれぞれにとても礼さんリスペクトなのがよくわかりましたが、とりわけ鳳真斗愛さんが熱狂的に礼さんフリークなのがじゅうぶんすぎるほどつたわりました笑。

後半の宝塚ナンバーのターンのさいしょは、星組のメンバーたちが1人ひとり、礼さんがかつて演じた役の扮装でその役のナンバーを歌いだし途中から礼さんと向かい合いみつめあってともに歌い、そして礼さんがひとりで歌い聴かせるという構成でとても胸が熱くなりました。下級生1人ひとりの礼さんへのリスペクトをひしひしと感じとれました。これは宝物になる経験だなぁと。
初々しい人もいれば、柳生十兵衛に扮した天飛華音さんなどは思わず「巧っ」と思うのですが、礼さんが歌いだすとやっぱり圧巻レベルで、しみじみと礼さんの凄さを感じる場面でもありました。

10数名の礼さんがかつて演じた役と絡んだ最後には皆で「BIG FISH」のナンバーを歌い上げて、そこからがらりと舞台が暗転。
礼さんが1人で「VIOLETOPIA」の孤独を歌い踊る場面は圧巻でした。暗転からライトが当たってそこには2階建てのセットに礼さんの演じた役に扮した星組メンバーたち。
さいごにすべてが愛おしいと歌う礼さん。
「VIOLETOPIA」という劇場の光と影を幻想的に描いたショーの終盤のソロダンスで使用されたナンバーゆえに、礼さんが演じた役の扮装をした星組メンバーを背景にして礼さんがその歌詞を歌う光景に鳥肌がたちました。
役たちと星組生たちと宝塚への礼さんの思いが重なって見えて・・。

つづく「ヴィランズ・メドレー」ともいえる場面も礼さんの悪い魅力炸裂で見ている私は魂がどこかに抜けて出でてました。
2~3曲で終わるのではなくて、「BIG FISH」の魔女の歌(都 優奈さん)や「ディミトリ」で礼さんと敵対したアヴァク(暁千星さん)のソロも含めて6曲ほどをとことん歌舞と舞台美術を駆使して見せる演出が素晴らしかったです。
はじまりの「バラ色の人生」(オーム・シャンティ・オーム)は咥え煙草で斜に構え酷薄な流し目の礼さんが最高にクールでした。
そして暁さんのレッドにティリアンとして対峙する「宿命」(エル・アルコン-鷹-)ではレッドを気魄で凌駕していくさまが圧巻でした。
「私から憎しいを奪うな」(モンテ・クリスト伯)はもう、うひょう~で。闇落ちした礼さんと礼さんをとりまく邪悪な雰囲気の星組メンバーズ。とりわけ礼さんにすがりつく天飛華音さんはいったい・・?! ほんとうにもうタカラジェンヌって何にでもなれちゃうんだなぁと思いました。
ここまで悪の華を見せながらも嫌悪感を抱かせないのも大優勝だなぁと思いました。
「マダム・ギロチン」(THE SCARLET PIMPERNEL)の振り付けはゾクゾク。とてもショーらしい振り付けで、コンサートならではの場面だなぁと思いました。

そしてそして礼真琴さんのトート。こんな「最後のダンス」を聴ける日がこようとは・・滂沱。
個人的に歌いあげ系のミュージカルナンバーが苦手なもので、こういう抜け感のある「最後のダンス」は大好物でした。
この体験から「死ぬまでに礼さんの『エリザベート』ガラ・コンサートを見たい(聴きたい)!」という夢ができました。(どうかどうかよろしくお願いします!)

つづく「栄光の日々」(THE SCARLET PIMPERNEL)のあとはまた宝塚以外のナンバーでしたが、とても元気をもらえる曲ばかりでした。
その中で「soul」という曲が礼さんが作詞したものだそう。

アンコールの1曲目は「星を継ぐ者」(龍星)。礼さんにとってとてもとても大切な曲を満を持して歌ってくれました。この曲を歌える喜びのような、いまだからこその礼さんの言葉にできない感情をかんじることができた気が勝手にしました。
そして「グレイテスト・ショーマン」の「This Is Me」。ラストにこの曲なのがまたなんとも言えない気持ちで聴きました。(これを礼さんが歌っているんだ・・いろんなことが思われて・・ことにこの数年の・・これは泣く・・)

こんな体験をこれから何回できるだろうと思うくらいの素晴らしい演出や振付や構成。そしてそれにじゅうぶんに応えた礼さんと星組生に心からの拍手を贈って高揚感に酔いながら武道館を後にしました。
さいしょはどうなるかと思った日帰り遠征でしたが、本当に実行してよかったと心から思いました。

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2025/01/27

きれいはきたない

1月13日に博多座にて、祝祭音楽劇「天保十二年のシェイクスピア」を見てきました。

とにかく醜悪。これほどの醜悪さをこれほどまでに情熱的に描こうとする理由はなんだろう。そこになにを見出そうとしているのだろうと思いました。

私も知っているシェイクスピア作品のセリフやシチュエーションがいくつもあって「あーこれは!」と思う楽しみがありました。東京公演を見た方からシェイクスピア作品を知っていると楽しめるとは聞いていましたが、こんなにたくさん織り込まれているとはとびっくりでした。私の知らない作品もたくさん散りばめられているんだろうなと思いました。

浦井健治さん演じる佐渡の三世次はリチャード3世だなぁと思いました。その見た目も。
私のリチャード3世のビジュアルイメージはBBCの「ホロウ・クラウン」のベネディクト・カンバーバッチですが、カンバーバッチも凄いなぁと思っていましたが、舞台上でずっとあの姿勢でどす黒い気を放つ浦井さんも凄いなぁと思いました。

三世次がこの世界を憎んでいるのはその見た目による拒絶や排除を受けつづけた過去があるから、ってことなのかな。登場したときからすでにこの世への憎悪で満ち満ちているかんじだったけれど。
きれいは汚い、汚いはきれいと、この世で価値あるとされるものを見下して嫌悪されるものを持ち上げて冷笑していないと生きていられない人だというのはわかりました。
そのくせ美しいおさちに横恋慕して彼女の夫を殺めたうえに自分の妻にして。おまえの美しさが悪いのだという理屈は自分勝手な男の常套句すぎて呆れました。

大貫勇輔さん演じるきじるしの王次はハムレットでロミオ。
母親のお文がああだからかもしれないけれども女性蔑視がひどすぎる。姿がすこぶる良いぶん罪深くて。お冬に対してあんまりすぎて引きました。
ああこれは、自分の姿がすこぶる良かったらこうやって女に報復してやるのにという作者の怨念が凝り固まった役でもあるのかな。
三世次とおなじで「すべて悪いのは女」なのだな。
それでいて好きな女性と相思相愛になったら浮かれまくってまわりが見えなくなってしまう。(女性を蔑視する人ほどその傾向があるのでとてもリアル)

天保12年という日本のエンタメの危機の時代を舞台にして、シェイクスピアの全作品のなにがしかを登場させた戯曲を描くという難業を成し遂げた凄さに唸り演者のレベルの高さに驚きつつも、なんでもかんでも性的なものにこじつけてそれがカッコイイとされていた昭和(戦後)の価値観と、女性にはなんでも無条件に受容する聖女と寝首を掻く悪女とどうでもいい女(はけ口にはする)しかいないかのような世界観にうんざりしてしまったのが正直なところでした。
いまこの作品を上演したかったのはどうして?と思わずにはいられませんでした。

CAST

佐渡の三世次/浦井健治
きじるしの王次/大貫勇輔
お光、おさち/唯月ふうか
お里/土井ケイト
よだれ牛の紋太、蝮の九郎治、ほか/阿部 裕
小見川の花平、笹川の繁蔵、ほか/玉置孝匡
お文/瀬奈じゅん
鰤の十兵衛、大前田の栄五郎、ほか/中村梅雀
尾瀬の幕兵衛/章 平
佐吉、ほか/猪野広樹
お冬、ほか/綾 凰華
浮舟太夫、ほか/福田えり
清滝の老婆、飯炊きのおこま婆/梅沢昌代
隊長/木場勝己
(1月13日博多座)

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