カテゴリー「♖ 観劇 」の431件の記事

2018/12/06

古い小さな傷痛むように懐かしさが込みあげてくる。

12月1日と2日に福岡市民会館にて宝塚歌劇花組全国ツアー公演「メランコリック・ジゴロ」と「EXCITER!! 2018」を見てきました。

主演の花組2番手スターの柚香光さん、そして助演の水美舞斗さん、ヒロイン格の華優希さんと舞空瞳さんを中心とした若さスパークリングな熱く楽しい公演でした。
貸切公演を含めて4公演見ることができましたが、飽きることなく楽しめました。(それどころかもっと見たいと思うほど・・・)
お芝居だけでなくショーでもうるうるとしてしまったんですが、これってなんなんでしょうね。
命の輝きをいっぱい見せていただいたような・・・そんな気持ちです。

「メランコリック・ジゴロ」は柚香さんと水美さんの同期コンビにとても合っていて掛け合いがとても面白かったです。ナンバー中のさりげないじゃれ合いも。

柚香ダニエルがふと見せる物憂げな表情に惹かれました。
ジゴロを気取って計算づくな生き方をしているようでも薄い皮膚の一枚下には繊細なものが流れていそう。
見る者の想像をかきたてる天性の魅力がある人だなぁと思いました。
オトナになりきれない余裕のなさ、その弱さを魅力にしてしまう人だなぁと。
ノスタルジックな主題歌を歌うときの純朴さと、身にまとったスマートな物憂さがミックスされてとても魅力的に感じられました。
歌詞を聴きながら、彼の過去を様々に想像していました。

計算高く生きようとしているけれどどうしてもお人好しなところが出てしまうダニエル。
ドライに割り切れるスタン。(たぶんそうでないとならない人生を生きてきたのだろうな)
田舎育ちのダニエルと都会育ちのスタンの対比がはっきり見えて面白かったです。

スタンはちゃっかりしてて一見薄情なことを言っているようだけど彼の言うことは一理あって、2人揃って捕まってしまうよりは、どちらか片方つまりスタンだけでも逃げて別動で問題解決にあたったほうが得策ですよね。
過剰な情けは掛けないのは信頼関係があってこそ。
ダニエルをわかっているからこそ任せるところは任せて自分のすべきことを冷静に見極めている。頭の回転が速い人なんだなと思います。
(とはいえ、まぁあれだけど・・笑)

水美スタンの軽妙さが面白くて好きでした。わかってて言っているのか無意識なのか?の絶妙なライン(笑)。
ちょっと危ない話やエキサイトメントな情報を持ち込んでくる陽気な友人の魅力。
柚香ダニエルと並ぶとお互いに魅力倍増でした。

「おまえ居直るとキツイな」というスタンの言葉が好き。
都会育ちな彼は世間慣れに関しては自分にアドバンテージを感じているんだろうな。
初心なところのあるダニエルに「世間ってもの」を教えてやるのは自分だと思っていそう。
でも、ダニエルのそのスレていない純なところを彼はけっこう好きなのではないかな。
おたがい自分にないものを持つ相手に魅かれあっているかんじ。
相手を認めつつも負けん気も発揮しあう同士。
2人の関係を探りながら見るのもたのしい作品でした。

マサツカ作品はややもするとマンスプレイングが鼻につくことがあって、この作品もまた相変わらず女は馬鹿だと思ってるよねーとは思うけれども、登場する男たちもまた主人公を含めてそれぞれが愚かな人間の1人として描かれているのが、人間への愛おしみと感じることができたような気がします。
答えを自分の中の常識の内に落とし込んでしまわない、問いかけは問いかけのままなのがいいのかなと思います。

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2018/11/14

あらしのよるに。

11月6日に博多座にて新作歌舞伎「あらしのよるに」を見てきました。

原作は読んでいましたから、まちがいなく泣いてしまうのはわかっていましたが・・・。
中村獅童さんのがぶがもう(涙)。
心の中で自分の抑揚で読んでいたものを芝居巧者に感情を込めてセリフにされてはもうどうしようもありませんでした。
見た目は強い狼なのに、心の中は優しいのが獅童さんのビジュアルにぴったり。
狼の本能として山羊のめいを食べたいと思うけれど、そんな自分を恥ずかしいと思い、たいせつなめいに嫌われるのではと身もだえして必死でがまんする姿。
自分はお腹をすかせているのに、めいが美味しい草をたくさん食べられるように見守ってあげる。
めいが安心して自分のそばにいられるように、本当の自分を面に出さぬように必死で耐えている優しさ。
「~やんす」という口癖はコミカルで自分を抑えようと身をよじる姿はせつないやら・・・。
記憶を失ってしまった場面での豹変ぶりはまさに役者さんだなぁと思いました。
(記憶がもどってホッとしました)

なにも知らぬげに無邪気にがぶを慕っていたように見えためいもまた、内心は狼であるがぶを怖いと思う自分を必死で抑えてなにも気にしていないように見せかけていて、そのことに深い罪悪感を覚えて悩んでいたことが3幕でわかって、それもまた心を揺さぶられて涙でした。
その気持ちは女性としてよくわかりました。
疑ってはいけないと思うのにちょっとした挙動に怯えてしまう気持ちとその罪悪感。
尾上松也さんのめいは、すごく中性的でそこがまたなんとも魅力的でした。

みい姫の中村米吉さんが愛らしいくも気高いお姫様で、登場するたびにいいなぁ♡となりました。
めいが打ち明けられない秘め事を持っているのを聴いた場面では、めいを信じて無理強いに告白させないフェアネスにいたく感心しました。
山羊の?上に立つに相応しい立派なお姫様。マイフェアレディ♡
みい姫の登場場面が楽しみでした。

客席には小さいお客様もちらほら見受けられ、客席降りではそんなお客様を可愛いお花に見立てて弄ってみたり。
近道と称して通路ではない客席と客席の間を無理やりに通って行ったり。
花道から小さいお客様をみつけて弄ったり。
がぶが義太夫の方に遊ばれたり。
客席を盛り上げ笑わせる演出やアドリブも満載でお子様が思わず立てる愛らしい笑い声も聞こえて微笑ましい空間になっていました。

絵本が原作でわかりやすい作品になっていましたが、見得を切ったり花道を飛び六方で引っ込んだりと、歌舞伎らしさもふんだんで、やはりこれは歌舞伎演目なんだなと思いました。
歌舞伎だからこその感情表現とこの獣たちの架空のお話の相性も抜群だなぁと思いました。

この作品を博多座で見ることができて本当によかったなと思いましたし、歌舞伎未経験なお若い方にぜひこの作品をすすめたいなと思いました。

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2018/11/10

なにかを探し迷い路をゆく。

11月4日と5日に宝塚大劇場にて、宙組公演「白鷺の城」と「異人たちのルネサンス」を見てきました。
5日は大劇場公演の千秋楽でした。

両作品とも、いつも見ている宝塚作品を思い描いていると初見で戸惑ってしまうところもあったのですが、4週間ぶりに見るとそんなことはまったくなくて、どっぷりと世界観に浸って見ていました。

「白鷺の城」は神泉苑のチョンパからなんだか涙涙で自分でも可笑しいくらい感動していました。
私はどうやら玉藻前(星風まどかさん)の心を勝手に想像してうるうるしてしまうようです。
吉備真備(真風涼帆さん)に恋をして遥々大陸から日本まで渡ってきたのに、気がついたら恋しい人はこの世にいなくて。
人で非ざるものが人に恋をして、けれども人とは生きる時間がちがっていて・・。そのせつなさ(涙)。
義長の最期を語る八重の姿にかつての自分を重ねて歌うところなどはたまらなくて。
葛の葉の場面もその心境を表す舞踊が涙を誘いました。
初っ端のチョンパの華やかさ、そして真風さんの安倍泰成の見目麗しさに心が大きく振り切ってしまい、さらにありえない美丈夫の吉備真備に魂が飛び出そうになってその居所が定まらなくなってしまっているせいか、その後はちょっと心を押されるだけで感情が高潮のように溢れてしまったのかもしれませんcoldsweats01

異種婚姻譚、転生譚というだけでも私は弱いのですが、こんなにも美しい人たち、美しい背景、せつない音楽でやられちゃあもう涙を垂れ流すほかにすべがありませんでした。
そして真風友景さんの包み込むような優しさ。たとえ恋しい相手であっても牙を剥いて見せる妖狐と知っていても心を開かせようと正面からみつめる瞳。
「あなたを手放さぬ」と言う強い意思に見ている私はドキリとさせられて。
そして玉藻がもうすこしで懐に入ってきそうなところで・・・。まるで1人異世界から来たようなほんと場違いな無三四めに~annoy

友景と玉藻は悲劇で終わったけれど、百年以上の時を経て平和な時代の市井の男女に生まれ変わって祭りの夜に出逢うとか(泣)。
ともに人で、年の頃もほどよくて、それだけで(涙)。この世の出会いは奇跡に満ちているのだなと。
戦でも謀でもなく、祭りに情熱を傾けられる至福。
そんな2人の手を、かつて泣く泣く息子を突き放さざるを得なかった母だった人と同じ面影の人がニッコニコで繋がせるとか。
胸がいっぱいで笑い泣きでした。


そして「異人たちのルネサンス」。届かない向こう側。
私がこの作品を好きなのは迷いの中にいて辿り着けていない人に共感するからかもしれないなと思いました。

自分のメインテーマがわからず彷徨いつづける天才。
完璧主義なのかな。愚直なまでに求道者で。
真理を追い求め作品に完成のピリオドをまだ打てないでいるようで。

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2018/10/29

好きなものは呪うか殺すか争うかしなければならないのよ。

10月29日に北九州芸術劇場にて「贋作 桜の森の満開の下」を見てきました。

出来の良い学生演劇を見たかんじ。
東京以外でこのような作品を上演し大ホールが満席になっていること。
妻夫木聡さん、深津絵里さん、天海祐希さん、古田新太さんといった豪華な俳優をキャスティングできること。
というような妙なところに感心してしまいました(^^;

見終わった感想は、明治以来この国で重宝されてきたインテリ文系男子の無責任さというものを妻夫木さんの耳男に久々に見た気がするなぁと。
夜長姫の修羅にあくがれ持ち上げるくせに、自分はさいごまでそれにつきあう覚悟がない。
それは本来彼自身が引き受けなくてはいけない修羅のはずなのに、逃げて。
自分の手には負えないものを他者に背負わせて自分は安全なところにいようとする。
そしていよいよ自分に降りかかってきたら、「ちゃちな人間世界がもたない」とかなんとかいう理由で彼女を刺し殺める。
「さよならの挨拶」もなしに。
(そのちゃちな人間世界を憎んでさえいたんじゃないのかな彼は)
ほんと身勝手だよなぁと。
(なにより昔はこういう主人公にめちゃくちゃ共感していたのになんでかふーんって感じてしまっている自分の変わりようにへーって感じといいますか・・)

耳男より古田新太さんが演じたマナコのほうが私は好きでした。
狡くても本質を見抜いて自分がやるべきと思うことをやっているから。
(でも同じ古田さんがやった役なら五右衛門のほうが何倍も好き)

天海祐希さんのオオアマはあれだけのために?と正直思いました。
さすがのオーラだなぁと思いましたけども。

夜長姫役の深津絵里さんがとても熱演で、彼女の存在感がこの作品を成り立たせているなぁと思いました。
が、あのキャラクター。話し方、身振りが私は苦手でした。
作演出の野田秀樹さんはこんなタイプがお好きなのなぁと冷めた目で見てしまいました(スミマセン)。

自意識過剰気味な作風、言葉遊びや海外文学ネタの挿入や90年代っぽい内輪ウケみたいなネタも私は苦手でした。
好きな人はそこが好きなのだと思うので、私の趣味嗜好と合わないってことだと思います。
つくづく私は、宝塚やいのうえ歌舞伎など、わかりやすい演劇が好きな人間なんだな(^^;と思い知った次第でした。

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2018/10/16

罪の中で生まれた私の産声。

10月8日と9日に宝塚大劇場にて宙組公演「白鷺の城」と「異人たちのルネサンス」を見てきました。

「異人たちのルネサンス」は悲しいお話だけどどこか優しさを感じるのが私は気に入っています。
あれは主役のレオナルドを演じる真風さんの持つ優しさなのかな。
どうしても受け付けない箇所というのがないので、役者の芝居を通して物語に入っていけます。
もっと上手く描く手法もあるかもしれないけれど、私にはなによりも描かんとしているものが胸に響くかどうかが大切な気がします。
(宝塚らしいパフォーマンスがもっと挿入されていたらなぁとは思いますが)

初見では、登場人物たちのそれぞれの心の闇を想像しながらストーリーを追うのが面白かったです。
演者の内面の在り方で物語が広がる作品だなぁと思いました。
カテリーナが「ゆるしを請う」子になった具体的なエピソードがなかったので、そこがいちばん妄想ポイントでした。
グイドが意図的にそう育てたってことだよねと見終わってからもぐるぐると考えました。

2回目の観劇では、登場人物たちの心がぐっと近く見えた気がして、初見にはなかった感動を覚えました。
天才の青春を見た感じ。
田渕先生の作品に共通しているのは心傷つきうずくまっている人が人との関わりを経て彼(女)なりに立ち上がり前に進もうとする姿が描かれていることだけど、あらためて私はそこに惹かれるのだなぁと思いました。

葛藤の中でレオナルド(真風涼帆さん)が自分が絵を描くことの意味を見つめ、かつての自分に重なる者に心を寄せ、他者に心を縛られ身動きできなくなっている想い人を解放したいともがく、その彼の心の動き、在り様に惹かれました。

登場人物たちの心の有り様や過去は、セリフよりもアリアの歌詞に込められていることが多く、初見では気づかなかったことに、2回目以降の観劇でその歌詞が頭に入ってくることで気づいたように思います。
その点では1回しか見ない人にはやさしくないかもと思います。

庶子の生まれで兄弟とは分け隔てをうけて育ち、またその才ゆえに家族からも気味悪がられたレオナルド。
そんな傷ついた少年レオナルドが前を向いて歩けるようになったのは、芸術や研究への没頭、そしてヴェロッキオ夫妻の愛情と工房の仲間の存在のおかげなんだろうなと。
それがわかるヴェロッキオ(松風輝さん)の場面が好きでした。
「その才能を邪魔する優しさなどもう棄ててしまえ」という優しさ。
このあたりが凄く田渕先生の作品らしいなと思いました。

いつも工房に集う皆の心とお腹を満たすことを気にかけている優しい奥さん(花音舞さん)も。
寂しい子どもにとって「食べていくかい?」と優しく声をかけてもらうほどうれしいことはないのじゃないかな。
立派な大人になったレオナルドにも同じように「食べていくかい?」と。
なにを考えているのかはわからなくても、なにか重いものをレオナルドが心に抱えていることがきっと彼女にはわかるのだなぁ。

そんな夫妻に彼の優しさも育まれていったのではないかな。
だからこそ彼はサライ(天彩峰里さん)のことを見捨てられないのだろうな。
そして立派に成人し芸術家として才能を発揮しているいまでも、彼の心の中にはかつての傷ついた少年が住んでいるのだろうなと思います。
だから彼はあの後もきっといつかサライをゆるすのだろうと思います。

彼がカテリーナの瞳の中になにを見たのか。3回の観劇では曖昧だったので、次回の観劇ではそこをしっかりと感じたいなと思いました。
彼が求める『少女』とはなんなのか。
わたし的にはいまの彼女をそのまま受け止めてあげてほしいと思ったのだけど、そういうこととはまたちがうことなのかな。
芸術家の目は、本質を見抜くということなのかな。

それにしても芸術家の要求は高度で多大だなぁと銀橋での独唱を聴いていて思いました(笑)。
だからこそ尋常ではない深い飢えと苦悩を抱えてしまうのかな。

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2018/10/15

醒むることなく微睡みつづけていたい。

10月8日と9日に宝塚大劇場にて宙組公演「白鷺の城」と「異人たちのルネサンス」を見てきました。

「白鷺の城」は大野拓史先生作で、宙組誕生以来初の日本物のショーでした。

初見の感想は、すごく大野先生!でした。
そこはかとなく中世の匂いが漂う感じ。
転生、そして白拍子に狐さんたち。耳!!!(強調)
幽玄だけどときどき可愛いモノたちが微笑みを誘うかんじ。

ストーリー仕立てなので舞踊をがっつりというわけではありませんでしたが、とにかく目にうれしい作品でした。
ことに唐の国の吉備真備の真風さんのビジュアル♡
くるくるパニエ♡
お人形にしていつまでも眺めていたい。上から下まで完璧に最高。うっとり。(日本語崩壊)

吉備真備にはじまり、いにしえから狐にまつわる伝説のある者たちが真風涼帆さんのビジュアルで生まれ変わるストーリー。
星風まどかちゃん演じる妖狐(妲己そして玉藻前)に出逢うために。
なかには栗林義長さんのように一度もまみえないままに、戦に果ててしまうせつない人も(涙)。
(だってその前の安倍泰成さんが殺生石に封印してしまったから、玉藻ちゃん出てこれない・・・)

だからか、その後の幸徳井友景さんは、なにがなんでも玉藻前に逢う気なんだな・・・。
前世の想いを受け継いでいくこと。夢に呼ばれるままにつきすすまんとするその衝動は、合理的に現実を生きている現代の私には理解しがたくもあるけれども、だからこそ夢物語として輝くのだなぁという不思議な説得力がありました。
理屈ではなくそうせずにはいられないものが真風さんの友景の中に見えました。

考えたら、玉藻前はなにも悪いことはしていない気がします。
何千年ものあいだ封じられていた結界を解いてくれた人を慕って日本までついてきただけ。

でも慕った相手は人間で、寿命の長さが妖狐の彼女たちとはちがうから、その人がいなくなってしまっても彼女は彼女で生きつづけなくてはいけなくて。
そしてたぶん眷属を養わなくてはいけない妖狐の長として権力者に近づいて寵愛されていたのかと。
ただ野干(けもの)の本性を制御することができなくて訝しがられてたり、彼女が放つ瘴気で側にいる人が体調を崩すとか、人間からしたら禍々しいことが起きて忌み嫌われてしまうのかなと。
(玉藻前にうつつを抜かして政をおろそかにしたり私情を入れたとしたらそれは上皇さまの勝手だし)

そんな折に間の悪いことに、かつて慕った人が転生したその相手に正体を見破られてしまって。
『見忘れるものかや』という言葉を憎々し気に言ってしまうのもきっと野干だから。
野干(けもの)である彼女は、自分の執着が愛だと気づいていなかったのか。もしくは愛し方がちがったのか。
慕う相手に牙を剥いてしまう。
そこが野干(けもの)の悲しい性。

そのことを、なんどかの転生の末に、友景は悟ったのではないかなと思いました。
手負いの獣がどうしたら心を開くか・・・。
今生こそは、玉藻に手傷を負わされても放すものかと・・・。
その友景の固い決意に彼の優しさを感じて、それが私にはいちばんキュンポイントでした。


さいしょ不思議だったのは、上総介広常や三浦介義純が玉藻前を弓矢で射ようとしたら、そんなものは効きもうさんとかなんとか言って泰成は止めるんだけど、無三四の刀で斬られたら玉藻は息絶えるんですよね。
そもそも私が知っている殺生石のお話では上総介と三浦介の矢刀で玉藻は絶命するのだけども。
つまり妖狐といえど弓矢で急所を突かれたら絶命してしまうのではと。

もしかして、泰成は彼らをたばかって玉藻をかばったのかな? つまりはそれはもしかしてグランデアモーレ?
あ、なんだ~。ようするにめっちゃラブラブですやん。

そもそも唐に留学中の吉備真備が妲己を憐れに思って、何千年ものあいだ封印されていた結界を解いちゃったのがはじまりですもんね。
それで日本に連れてきちゃったんですもんね。
愛の前には理屈はいらない。愛こそがジャスティス!ってお話なのですものね。

・・・みたいな能天気な気持ちで見ていたせいか2回目以降の観劇はとってもハッピーな気持ちで愉しんでしまいました(笑)。
ラストのみえこ先生(松本悠里さん)のあのニコニコ笑顔。あのお顏が私の心を象徴しているような気がします。

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2018/10/02

ひとの善意を信じすぎたこと。

9月15日と18日、そして24日に博多座にてミュージカル『マリー・アントワネット』を見てきました。

この作品はいつもとは異なり博多座で初日を迎えたのちに帝国劇場、そしてほかの劇場で上演されるとのこと。
2006年の初演を見た方によるとほぼ新作と言えるくらい登場人物から設定などなど変わっているそうです。
私の印象としては、お話がわかりやすい反面、物語の構造が単純でクンツェ&リーヴァイっぽさが薄いかな?と思ったのですが、新演出版としてあえてなのでしょうか。

15日は、マリー・アントワネット役の笹本玲奈さん、マルグリット・アルノー役の昆夏美さん、フェルセン伯爵役の古川雄大さん、ルイ16世役の原田優一さんの初日でした。
初見では、歌詞が半分も聞き取れなかったのが残念でしたが、ストーリー自体は複雑ではないのでセリフと芝居と歌詞半分で、内容は理解できました。
なによりも笹本玲奈さんのマリーが美しくて魅力的だったことが印象的でした。

とりわけ、印象的だったのがプチトリアノンのシーン。
のどかな田園風景を背景に草上に座る白い清楚なドレスとリボンがついた麦わら帽子姿の笹本マリーの輝くような美しさは、このまま絵画にしていつまでも見ていたい気持ちにさせられました。
ふわふわとした夢のような世界に身を置き、現実を知らず、他人の悪意を知らずに生きている世間知らずの王妃様。
フェルセン伯爵の諫め言の意味もわからなくて・・・。

もう一つ忘れられないシーンが、王女マリー・テレーズと王太子ルイ・シャルルを両脇に長椅子に腰掛けて父フランツ1世の子守唄を歌う場面。
背後からルイ16世が王女と王太子にウサギと帆船のおもちゃ(たぶん自作)を渡して喜ばせて。なんて幸福な家族の絵だろうと。
ルイ16世は王様なのに、いつも王妃のために長椅子を抱えて持ってきてくれるのだけど、それが自然すぎて(笑)。
2人が王と王妃でなければ・・・と思ったシーンでした。

革命の理想は一切描かれず、反国王派は権力への野望を原動力として王妃の醜聞を撒き散らして、生活苦に不満を持つ民衆を煽っていく者たちとして描かれていました。
そこに現実に不条理を感じて王妃を憎んでいるマルグリットが加担して物語がすすみました。

物語の中でマリーが犯した過ちは、国民の生活に関心を向けなかった無知とそれによる浪費と、母マリア・テレジアが嫌っていたロアン大司教を自らも嫌い彼女のプライドを傷つけた彼の誤解が許せず国王の処分に口を出したこと・・・くらいでしょうか。

2幕はマリーと国王一家が人びとの悪意の前に為す術もないさまを、マルグリットとともに見続けて・・・。
さいごは私が物語を咀嚼する間もなく、出演者全員が登場して「どうすれば変えられる」「その答えを出せるのは我ら」と歌い出したものだから、なんだか釈然としないまま終わってしまった感がありました。

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2018/09/13

御意に。

「1789 -バスティーユの恋人たち- 」博多座公演の書きかけの感想をようやくアップです。

2人の【マリー】と2人の【オランプ】について。


凰稀かなめさんは、彼女の持ち味とは真逆の陽気で無邪気なマリーを緻密な芝居で表現していました。
ちょっとした間の取り方、視線や体の向きなど、凰稀さんならではの黄金ポイントを押さえていくのが私には心地がよくて、やはり私は凰稀さんのお芝居が好きなんだなぁと思いました。

仮面舞踏会でネッケル(磯部勉さん)の登場を国王陛下に知らせる『ネッケルが』が好きでした。
たった一言ですが、その一言から感じ取ることができる凰稀マリーの人柄が面白くて毎回楽しみでした。

ほかの人たちとはちがって自分におべっかを使わず小言(正論)を申し述べてくるこのスイス人の実業家出身の大臣を、マリーはいかに忌々しく思っているか。そんなネッケルを重用する国王ルイ16世陛下(増澤ノゾムさん)に対する不満が、その一言にじつに籠っている『ネッケルが』でした(笑)。

彼の話なんて聞きたくないとばかりに、さっさと彼に背を向けて蝶々の指輪を弄ってみたりあくびをしたり。不真面目で自分に正直なマリーが面白かったです。
そして彼女の国家予算並みの浪費額について咎め立てしてくるネッケル対して不貞腐れた気持ちが表情に現れる(笑)。
優雅な王妃様なのであからさまに品のない表情をするわけではないのだけど、これ、ぜったい不貞腐れてるとわかる彼女ならではの膨れ面。
それに気づいてしまうと見ていて楽しくてしょうがありませんでした。すましているようでじつは表情豊かなところが大好きでした。

(ラインハルトでもバトラーでもオスカルでも、人から非難されるときに浮かべる凰稀さんの表情が、私は大好物なのだなと思います。反論できずにいるけれども表情が内面を語っているかんじが。自尊心高めな人が無防備に傷ついている表情が)

そんな恵まれた人らしいこどもっぽさを持つ彼女が、我が子を亡くし、さらには信じていた人たちが自分から去って行き、当たり前にあると思っていたもの、持っていて当然だと信じて疑ったことのないものが、本当はそうではないと気づいてからの本来の賢明さが表出したあたりの凰稀さんのマリー像がとても魅力的でした。

なにもか失ってから彼女が気づいたものの中で、凰稀マリーにとって比重が大きいのが、国王ルイ16世の人柄の魅力、そして彼への静かで穏やかな愛情なのではないかなと思いました。
凰稀マリーの特徴として、オランプへの『本当に自分が愛するべき相手を見極めることが一番大切なのよ』という言葉に実感がこもっているように感じられたのは、彼女がけして理性だけでルイを選んだわけではなく、ルイに愛情を感じている自分のたしかな気持ちから来ていると思いました。
愛をもってさいごまで彼についていこうと決意していることが全身から伝わってくるようで、マリーとルイのやりとりと交わす視線に、マリーの母性とルイのまるでドギマギする初恋の少年のようなためらいが胸に沁みて何回見ても涙してしまいました。

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2018/09/09

誰にも束縛されず自由に生きるの。

9月6日と7日に宝塚大劇場にて月組公演「エリザベート」を見てきました。
ちょうど役替わりの境目で、両方のルドルフを1回ずつ見ることができました。

期待以上に面白かったです。
とてもわかりやすく具体性が見えるエリザベートでした。
舞台センスの良い人たちが芝居で見せるエリザベートだなと思いました。

結婚式翌朝のシシィの「私だけに」に心の中で100万回肯きました。
この場面でこんなに納得できるなんて。

ゾフィーが強烈でなくても、フランツがシシィの心情に鈍感でも(むしろ今回のフランツはよく理解しているように見えました)、シシィには「あたりまえ」のことがもう窮屈で耐えられないのだと感じました。

世間からしたらどうしようもないワガママ女でしょう。
常識をわきまえ国母の責任を背負って生きてきたしゅうとめゾフィーの手にはとても負えない女性だと思いました。
まして彼女を心から愛しているフランツにはなおさら。
トートですら最後まで手を焼いてしまう。
そんな愛希れいかさん(ちゃぴちゃん)の自我の強いシシィが清々しくて、とっても好ましかったです。

「私だけに」の歌詞も内面の比喩ではなくて、ほんとうにそのまんまなのだと思いました。
ことの善悪なんかではない。正義感やモラルでは動かない。責任感も彼女を動かしはしない。
何ものにも束縛を受けずに「自由」に生きて行く ―― そう意志を固めた清々しさが全身から発せられる「私だけに」に私は心酔し、ただただ惹きつけられて見てしまいました。

シシィがこれだけ強いので、ほかの役が過剰にニュアンス付けをしなくても筋が通ってしまう。
もともとの楽曲、もともとのストーリーにかなり寄っているから頭の中を疑問符でいっぱいにすることがなく、ノンストレスで見られるエリザベートでした。

またほかの人びとも緩急のある芝居やセリフ回しで、カギとなる言葉、仕草、などがはっきりと印象づいてとてもわかりやすかったです。
とにもかくにも全部出し切る、というのではなく、引くところは引いている印象。
熱いパワーで圧倒されるという作風とは違う、とてもセンスの良いもの見ることができたと思いました。

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2018/08/28

いんへるの。

7月31日、宝塚大劇場にて花組公演「MESSIAH -異聞・天草四郎-」と「BEAUTIFUL GARDEN -百花繚乱-」を見ました。
同日の新人公演も見ることができました。

博多座の「あかねさす紫の花」であれほど夢中になった明日海りおさん主演のお芝居を楽しみに遠征したのですが。

「MESSIAH」は脚本がどうにもこうにもというかんじ。
3万7千もの人びとがなにゆえ死んでいったのか。
そこはすっとばして、ただ主人公を英雄にしたお話でした。
四郎に信仰がないことが全てを歪ませていると思いましたし、主人公が天草四郎である意味もキリシタンたちの物語である意味もなかったなと思いました。

見ていてなんども「それはないだろう」と思いましたが、とりわけありえないと思ったのは、藩の圧政に苦しむ天草のキリシタンに対して、彼らの信仰を全否定して四郎が蜂起を扇動したこと。
その四郎の言説に、キリシタンたちがたやすく感銘をうけて「メサイア!」と讃えだすところです。

地獄に堕ちることを恐れてなんになるのか。生きている人間さえ救えない神があなたがたを天国に導けるはずはない――― 四郎はそう言い切っていました。
死んだ後にはらいそに行ってなんになる。生きてこそではないかと。
四郎の言葉はまさしく悪魔の言葉です。

彼らの信仰をこてんぱんに貶しておいて、「神はいないのか?」と迷える彼らに、こんどはいきなり「神はいる!」と言い出す四郎。
あなたがたは漂着者である自分を救ってくれた。神にもできないことをしてくれたあながたの中にこそ神は宿っている――― と。
だから俺たちははらいそを築けるはずだ。皆が幸せになれる地を築こう。天草だけじゃなく島原の民にも呼び掛けて立ち上がろう!―――と。

凄い論法。凄いアジテーション。
これをあっさり受け入れ、「メサイア!」と讃えるキリシタンたち。――― これはどういう茶番かと思いました。

いったん相手の価値観をぶっ潰して、新たに途方もない考え方で上書きする。
それこそカルトのやり口。独裁者の手口ではないか。

扇動する四郎と、それを「メサイア」と讃える天草の民。
私にはとても気味の悪いものに映りました。

彼らがキリシタンだから、天草の民だから、そんな蒙昧な彼らを、海の向こうから漂着した四郎が啓蒙してやったということ?
その四郎の思いつきで3万7千もの領民が皆殺しになったことになるんですけど。

(それに地獄を「いんへるの」、天国を「はらいそ」と言っている人たちがなぜ救世主だけは英語読みの「メサイア」なんだろう)

誰かが四郎をメサイアにするために仕組んだという設定でも、いつかこの地に救い主が出現するという伝説が信じられていたという前提でもなく、信仰深いキリシタンとして描かれていた人々が、四郎のたったあれだけの言説で彼をメサイアと思いこむなんて、どれだけイノセントなの???

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