カテゴリー「♖宝塚観劇-全国ツアー」の40件の記事

2021/12/14

この世のすべてを愛し続けたかった。

12月3日4日5日、福岡市民会館にて宝塚歌劇宙組全国ツアー公演「バロンの末裔」「アクアヴィーテ!!」を見てきました。
(の感想のつづきです)

「バロンの末裔」では初見の熊本公演で真風涼帆さん演じるローレンスに一目惚れ。
オスカー・ワイルドの作品に出てきそうな優雅で憂鬱そうで滑稽なほど貴族的、独特のテンポ感の美青年で、浮世離れしているかと思えば冗談も言う。「キャサリーーン、こまどりの巣をみつけたよーー」は身悶えするほど好きでした。

20世紀初頭、没落していく貴族も珍しくなかった中で、キャサリン(潤花ちゃん)も言うようにその領地や屋敷をこの若さで相続し維持していたローレンスの大変さは並大抵ではなかっただろうなと思います。
それこそ世間知らずの貴族を騙して財産を奪い取ってやろうとする輩は後を絶たない、そんな時代背景のお話。
相続税や維持費、生活費の捻出のために土地を切り崩し美術品を売却したり、慣れない事業に手を出したり。
莫大な持参金のために貴族たちがアメリカ人の富豪の令嬢たちと結婚していた時代でもあります。

ローレンスも領地を守るために富豪の令嬢と結婚するという選択肢もあったかもしれない。
でもそうはしたくなかったのだろうと思います。キャサリンとともに生きていくことが、彼の唯一の夢だったから。
持参金を期待できるわけでもないキャサリン(むしろ彼女の父はローレンスの援助をあてにしている)と生きて行くにはどうしたらよいか、誠実でロマンティストな彼は頭を悩ませただろうと思います。
そこを会計士のローバック(秋音光さん)に付け込まれてしまった・・。

自分の失敗で財産をすべて手放さなければならないとなった彼をいちばん苦しませたのは、もうキャサリンと手を携えて生きていくことができなくなった現実だと思います。
双子の弟エドワード(真風涼帆さんの2役)が帰郷して目にしたのは、心労で倒れて現実逃避しているローレンス。
その様子にエドワードはカリカリしていたけど、私はローレンスをかばいたくてしょうがなかったです。
貴族のおぼっちゃま育ちの現実とちぐはぐなところが滑稽であり悲しくて、それにどう考えてもこの幾年は彼の現実のほうが大変だっただろうと思えたから。(真風さんの長髪姿が大好物というのはおいておいても・・)

  いまもなお甦るのは 煌びやかなあの頃
  すぎていく時間さえもが 光り輝いていた
  愛する君と2人で 素晴らしいあの世界に
  手を携えて生きていくと うたがいもなく信じた
  やがては君と2人で 美しいあの世界に
  眠りのように朽ち果てると 無邪気に信じ続けた
  この世のすべてを 愛し続けたかった
  君が生きている この世界を

甘くてペシミスティックな歌詞を毎公演噛みしめて聴いていました。

かつてエドワードが家を出たときの心境、彼がキャサリンに想いを寄せていたことをローレンスが少しも察せなかったとは思えないのです。
それゆえ家の問題を弟には相談しづらかったのではないかと推察します。
この状況で弟の力を借りるということは、キャサリンの身の上についても彼なりに思案し尽くしているのではと思えて。
楽観的に未来を語るキャサリンに、君は一文無しになるということがどういうことかわかっていないと反論する彼にはもう彼女との未来を夢見ることができなくなっているのだなと思いましたし、現実逃避をしているように見えるのも、もし彼女が弟を選んだとしても2人が罪悪感を抱かなくてもよいようにダメダメを装っているのかとさえ思いました。(身贔屓すぎるかな)

エドワードにとっては愚昧なくせにすべてを持っている兄に見えるのかもしれないけれど、領地や屋敷を守り、そこに暮らす人々を守るという義務から逃げずに生きてきた人で、それらは彼が自ら望んだものではなく生まれながらに課せられたもの。夢といえばキャサリンと穏やかに暮らしていくこと。
そのキャサリンを失おうとしている彼が無気力になってしまっても責めるなんてできなくて。
エドワードもつらいかもしれないけど、ローレンスはもっとつらい立場なのだと思って。この悪夢を引き起こした原因はほかならぬ彼によるものなのだから。

幼い頃、洞窟の探検中に蝙蝠に驚いてキャサリンを置いて逃げ帰ってしまった後、きっと彼は自己嫌悪に陥ってしまっただろうなと思います。
キャサリンをおぶって帰ってきたエドワードを見ていっそう落ち込んだかもと思います。
その謝罪を込めて大切な宝物をエドワードにあげたりしたかもしれない。でもそれはエドワードにとってはつまらないものですっかり忘れ去られているかもとか。エドワードの知らないところで、彼の代わりに叱られたりしたかもしれないとか。
そんな想像をして勝手にローレンスにきゅんとしたりしていました。なんとなくそういう自己犠牲的なところがありそうで。
キャサリンに、たとえ君の想いが私に向けられていなくても私は君を愛し祝福することができると告げる彼を見ていると、やっぱりそうだよね、わかっていたよねと思います。

兄弟ゆえのおたがいの行き違いやわだかまりが、今回のことで解けていたらいいなと思いました。
祝賀パーティーでのエドワードを見ているときっとわかってくれたという気がしています。
キャサリンもローレンスのそんな優しさに気づいているから、彼の妻になろうと思えたのではないかと思います。
それは激しい情熱とはちがうかもしれないけれど、穏やかで深い愛情でむすばれている2人なんだと確信が持てました。
それぞれにせつないけれど、やっぱり私には3人にとってのハッピーエンドに思えました。

それにしても、好きな顔に挟まれて過ごしたキャサリンは幸せ者だなぁと思いました。
好きな顔だけど異なる美点をもつ2人に想われて。なんていうパラダイスかと。
まさしく夢ですね。
これからも、たまに帰郷するエドワードからローレンスへのあてつけのように贈り物をされたり賛美されたりしそうだし。
どんなお手紙の内容なのか、知りたいなぁと思います。

この後に起きる第一次世界大戦や世界恐慌でスコットランドも揺さぶられることになると思いますが、ローレンスたち、ことにキャッスルホテルで働くヘンリー(亜音有星さん)やスティーブンソン(優希しおんさん)たち若者は大丈夫かしら。
ウィリアム(瑠風輝さん)の銀行はどうなってしまうのかしら。
そして軍人のエドワードやリチャード(桜木みなとさん)は無事かしらと、その後の彼らを思って心配にもなったりします。
それくらい、作中の登場人物のひとりひとりに愛着のわく作品でした。
こんな舞台を見ることができて、ほんとうによかったです。

| | コメント (0)

2021/12/08

この世界のうつくしさ人の素晴らしさ。

12月3日4日5日、福岡市民会館にて宝塚歌劇宙組公演「バロンの末裔」「アクアヴィーテ!!」を見てきました。

ほんとうなら去年の秋に博多座で宙組が公演するはずだったのだけどコロナ禍で中止となってしまってとても悲しかったです。
ショーはきっと「アクアヴィーテ!!」にちがいないと公式グッズのグラスもその時に使えるようにはりきって保管して、心底楽しみにしていたので心底がっかりしてました。
今年の11月~12月の全国ツアー公演が発表されてからは、ひたすら中止にならないことを祈っていたので、無事に公演が開催されてほんとうにうれしかったです。
全国ツアー公演の愉しみのひとつである客席降りもいまはできない状況なので、持参した公式グラスでうれしい気持ちと福岡へようこその歓迎の気持ちを込めて客席からエアーで乾杯させていただきました。

福岡市民会館は博多座ができるより前の1970年代から宝塚歌劇の定期公演が上演されてきたホールで、客席がワンスロープになっており客席降りの演出で2階・3階が置いてきぼりにならないのが嬉しいのですが(以前の公演では真風さんか3階席まで来られたことも)、築50年以上の建物のためロビーの狭さやお手洗いの数に不都合もあり、例年だとなんとかイベントスタッフの方々で入場の列、お手洗いの列を捌いていた状況だったと思うのですが、今年は3日間の公演の初日はこれ大丈夫なのかなと心配なほどいろんなシーンで混みあっていました。
最終日はだいぶよくなっていたので、これもコロナ禍で公演中止が続いたことの弊害だろうなぁと思いました。(例年だと春と秋の2回宝塚を上演しているのでノウハウが引き継がれていたのかな)
こんなふうにいろんなところで引き継がれてきたノウハウが途絶えたりしているのだろうなぁ。(お茶会や入り出待ちなどはどうなるのかなぁ)
ちなみにですが、2024年に福岡市民会館は現在工事中の須崎公園の場所に建て替え移転するそうです。

「バロンの末裔」は熊本公演で見た1週間前よりさらにブラッシュアップされて、正塚先生の作品世界で皆がイキイキと息づいていました。皆それぞれに自分勝手で健気で変人で愛おしかったです。

そして見終わったあとに、気持ちが晴れやかになるというかモヤモヤがすっきりする作品になっているなぁと思いました。それはわたし的には意外でもありました。

15年以上前宝塚ファンになりたての頃に初演を映像で見た時は、エドワードがズルイ気がしてモヤモヤしていたのを覚えています。
辛い決断はなにもかもキャサリンにさせちゃうんだと思って。あんなに追い詰めて。
重い現実はキャサリンに背負わせて自分は去って行ってしまうんだと思って。
キャサリンの心情とか、彼女とローレンスの未来とかを、とても悲観的に見ていたんだと思います。

それがいま、2021年版を見終わったら、みんなモヤモヤが晴れてよかったねーという気持ちになっていました。
皆がそれぞれに何かを乗り越えて心の居場所がステップアップしたように思えたのです。

キャサリンに対して無一文になったローレンスを支えて生きていける訳がないとエドワードが言う場面、いやいやその人なら大丈夫じゃないかなと反論したくなりました。潤花ちゃんのキャサリンは生きる力に溢れているように見えたから。
きっと1人で奮闘するのではなくて、領民たちや人びとの手助けを上手に受けながらやっていけそうと。エドワードだって助けるにきまってる。

熊本公演を見て以来、エドワードよりローレンス派だったんですけど、4日のソワレでこの場面のエドワードの子どもっぽい不貞腐れたような顔に気づいて、あ、エドワードは彼女に自分の理想のキャサリンでいてくれなくちゃ嫌だと駄々を捏ねているんだと思いました。
彼はキャサリンや兄に対して、思い通りにならなかった貴族のしきたりや世の中に対して、それらを愛しているからこそ、こどものように拗ねているんだと気づいて、なんだかきゅんとして愛おしい気持ちになりました。(やばいセンサーが働いてる)

こどもの頃、驚いて逃げたローレンスに対してキャサリンをおぶって帰ったりしたのは、無意識に自分を認められたいと、自分の入るスキマをつねに探していたこどもだったからだろうと思いました。
なにも言わずとも皆が先回りをして思い通りになっていく兄と、言わなくては気づいてもらえない自分、というようにこどもの彼には見えていたのだろうと思います。
けど言えないだろう?と。自分がワガママを言えば、自分が愛する世界が壊れてしまうだろうと。そう思って家を出て行ってしまったのだろうなと思います。

そんな彼が、兄が倒れたという報せに故郷に帰って見れば、なつかしい人びとが変わらずそこにいて、大切だからこそ諦めた人や風や大地のなつかしい香りがそこにあり、けれどそのすべてを持っていたはずの兄はそれらをすべてを失う寸前で。
この自分が育った故郷の大地がそこに暮らす彼らともども失われてしまうという現実に直面してそれに本気で対峙することで、彼はひとつひとつのかけがえのなさに気づけたのだろうと思います。
そのなかには、兄ローレンスが自分が故郷を離れているあいだもたゆまずこの家や領土を守ってきた事実も含まれているのじゃないかな。たまに帰る自分とはちがい日々そこに暮らし守っている兄、守ってきた人びとのことに思い至ることができたのじゃないかなと思います。

それにやっぱりエドワードは、愛する人が息づく世界を愛したい人なんだと思います。
そこに自分がいれば最高なんだろうけど、その愛する世界を壊すくらいなら自分はそこにいなくてもよい人なんだろうと。一時の激情に流されそうになることはあっても、思いとどまれる。
ローレンスの夢が愛するキャサリンとともに暮らし、彼女が生きているこの世界のすべてを愛することというのと似ているけれど微妙に異なる。同じ顔でも立場の違いで責任も求めれることも違い、メンタルも変わるのかな。

ローレンスとキャサリンが穏やかに笑っているところに、自分はいつでも帰っていけることが彼の望んでいる幸福なのではないかと思いました。
それがいつからかははっきりとはわからないけれど、きっと3人で領地を駆け回っていたこどもの時にはそうだったのではないかと。
愛する人びとが笑って暮らしている世界をそのままのかたちで守りたい、とても保守的な人なんだなと思います。守られる側じゃなくて守る側になりたい人なんだな。そして守ったものを眺めて幸せになれる人なんだろうな。
キャサリンもそれに気づいたし、エドワード自身も気づいたのではないかなと。だから2人ともモヤモヤが晴れたのではないかなと思います。

たまに帰郷して、たくましく生きるキャサリンたちと相変わらずなローレンスの顔を見てなつかしみ、英国人的な皮肉を言ったりローレンスの前でわざとキャサリンを喜ばせたりして、彼らへの愛をたしかめたりしてほしいな。
5日のマチソワはそんなことを想像しながら真風さんのローレンスとエドワードを見ていました。

 ここに生まれ 人の世の なにもかもを知った
 この世界の美しさ 人の素晴らしさ
 忘れることはない

(エドワードのことばかり書いてしまったので、次はローレンスやキャサリンやほかの人びとについて書きたいです。皆大好きだったので)

| | コメント (0)

2021/11/28

胸にしみる故郷のなつかしい香り。

11月25日に熊本城ホールにて宝塚歌劇宙組公演「バロンの末裔」「アクアヴィーテ!!」ソワレを見てきました。

熊本城ホールは2019年にこけら落としされた新しいホールで、1階後方席でも見やすくセリフも聞き取りやすかったです。お手洗いも多めで30分の幕間も余裕がありました。バスターミナルの上にあるのでアクセスもよくて次の熊本公演もここだといいなぁと思いました。

そして熊本は言わずと知れた宙組トップスター真風涼帆さんの故郷。2019年に続いての凱旋公演ともいえる公演でした。
今回は新しい相手役さんの地元お披露目ともいえるかも。
劇中で歌われていた故郷を思う歌に真風さん自身が重なって、またこの数年に見舞われた熊本の苦難と復興への道のりが重なって見えて胸が熱くなりました。

「バロンの末裔」は映像を繰り返し見ていた作品で、けっこう覚えているものだなぁと思いつつ観劇しました。生で見たことがなかったので再演で見ることができて嬉しかったです。
正塚先生の作品なのでテンポにメリハリがつくともっとよくなるなぁと思いました。来月福岡でも観劇するので深化しているといいなと思います。

真風さんの双子の演じ分け面白かったです。(星組でも愛ちゃんが双子を演じていたのでそれを思い出してよけいに楽しくなりました)
舞台上でエドワードからローレンスに切り替えて演じ分けるのは凄いなぁと思いました。(それぞれの影武者は春瀬央季さんと鳳城のあんさんが演じられていたんですね)

双子のうち私は案外ローレンスが好きでした。
自分のことよりも家のこと、屋敷の使用人たちのこと、領民のことを考えるように育てられた人なんだと思います。男爵家の跡継ぎとして。
彼が投機に手を出したのも、信頼している会計士に勧められるがままに家や領民のため、そしてキャサリンのためを考えたことで、決して私欲のためではないと思いますし、失敗してもまだ取り戻せますと繰り返し言われるままに深みにはまっていったのじゃないかなぁ。
彼だって屋敷を出て別の世界で生きられる弟エドワードを羨ましく思ったこともあるんじゃないかな。口には出さなくても。

というわけで、もっと憂いを帯びたハンサムに演じてくれてもいいのに~~というのが不満です笑。あの浮世離れ感はとても好きですが。さらにもっとと。
オスカー・ワイルドの小説に出てきそうなやつれた貴族的な美男子を造形してほしいなぁ。恥ずかしがらすにぜひ♡ ペンより重いものを持ったことがないようななにかというと蒼白になるような。
キャサリンだって結婚してもいいと思っているくらいだから、エドワードに勝るとも劣らぬ魅力があるのだと私は信じています。

エドワードはかっこいいけどふつう~~と思いました。
石炭がなかったら彼にもどうしようもなかったし。
弟の立場として失望も味わい、家のことも領地のことも、キャサリンのことも自分のものではないと見切ってローレンスにすべて委ねて屋敷を出たのだろうと思います。それがわかっているローレンスも弟においそれと相談はできなかったのではないかなと思います。
それゆえ自分がやってしまったことをわかっているローレンスはキャサリンが弟を選んでも、2人がそのことに罪悪感を抱かないですむようにダメ男を装っているのではないかと思ったりもするのです。(とことんローレンス贔屓)

結局兄が倒れた報せをうけて故郷に帰ってみて、窮地に立たされた兄と想い人、なつかしい使用人たちの顔を見て、彼らと領地のために初めて本気で奔走することで、エドワードは故郷と故郷の人びとのかけがえのなさに気づくことができたんじゃないかな。
屋敷を出た頃はいろいろあって失意で忘れていたかもしれないけれど、ローレンスが自分にしてくれた様々なことも思い出したりしたのじゃないかな。
自分の立場からしか見ていなかったことや、ローレンスが家や使用人や領地のためにしていたことに気づけたりしたのじゃないかな。と思うのです。

潤花ちゃんが演じるキャサリンは生きる力に溢れてて逞しそうで、きっとホテルにたくさんの人を呼べそうな気がして、彼女の選択は決して間違っていないと思えて、未来は明るい気がしました。
古風でハンサムな当主の男爵と美人で華やかな男爵夫人はホテルの名物になりそうだし、銀行家とも対等に渡り合っていけそう。ホテルはきっと繁盛するはず。
エドワードは自分の人生を築いていったらいいと思います。美しい故郷は兄夫婦が守っているから。

とラストも湿っぽくならずに見ていました。

潤花ちゃんはこういう役が似合うなぁと思いました。
しっかりローレンスを支えてホテルを繁盛させそうなキャサリンでした。
彼女を見ていると希望を感じました。(つい数日前に元伯爵夫人が料亭の女将として奮闘し守り抜いた旧柳川藩主立花邸御花に行ってきたばかりなのでイメージがダブったのかもしれません。伯爵令嬢 立花文子
ローレンスはいつの間にか論文を書いてたりして、それが評価されて叙勲されたりして。(妄想)
ローレンスとキャサリンとエドワードに、ルイ16世とマリー・アントワネットとフェルゼン伯爵みを感じました。

桜木みなとさんは間が良くてリチャードが成り立っているなぁと思いました。もっと爪痕を残してもいいんだぞと思いましたが、これからでしょうか。
ヘレン役の山吹ひばりちゃんとのペアが可愛らしかったです。

瑠風輝さんは若き頭取ウィリアムのフェアな精神がよく出ていて良かったです。役としては不足はないのだけどあとすこしスター的ななにかがあったらなぁと思いました。

鷹翔千空さんはウィリアムの秘書ブリンクリーとしてその場にいることを愉しんでいる感じがしました。もっとはっちゃけたいのかなぁと思うけど、こちらもまだ様子見かなぁ。

全体的に皆芝居が真面目だなぁという印象を受けました。もっとキャラクターになりきって変人になってもいいのじゃないかなぁ。
皆それぞれに変なところがあったり自分勝手だったりするけれど、愛しい。そういうお話だと思うので。
11/21に梅田で初日を迎えてから九州初上陸の地だったのでまだ芝居が硬いのかなと思いました。来週末は福岡公演を見る予定なので役としてもっともっと自由に演じているといいなと愉しみにしています。

さすがだなと思ったのが寿つかささん。ボールトン家の執事ジョージ役として必要以上に分を弁えた感じが滑稽で、メイド長のミセス・サーティーズ(小春乃さよさん)と面白い一対という感じでした。

それから、銀行の創業者でウィリアムの父トーマス役の凛城きらさんが作品の世界観の中で好き勝手に存在している感じで光っていました。秘書のシャーロット(愛未サラさん)とはなかなか良いペアでした。
美しい顧客イングリット(水音志保さん)との場面がとっても好きでした。

お屋敷で働き始めたばかり(フットマン見習い?)のヘンリー役の亜音有星さんがのびのびと演じているのが好印象でした。ヘンリーは美味しい役だと知ってはいたけれど(初演新公では大和悠河さんが演じてた)、知ってた以上に美味しい役でした。主役のエドワードとヒロインのキャサリンの間を取り持ったりして。ラストも気が利いてて。


ショー「アクアヴィーテ!!」は2019~2020年に宙組で上演された作品なので、ついついもういない人を探していました。
私が座っていた席からオペラグラスを使うとセンターより上手が見やすかったのですが、鷹翔さん亜音さんが生き生きと輝いて見えました。
そしてオペラグラスの視界にお名前はわからないけど素敵な下級生が幾人も。

瑠風さんの脇に出てくる美脚の黒いアマーミ、春瀬央季さんともう1人は琥南まことさんだったんですね。美しくて眼福でした。
それから寿さんが従えている2人、大路りせさん泉堂成さんも美少年系で素敵でした。
黒燕尾で見た綺麗な方は誰だったのかな。スモーキーナイトの場面にも白い衣装のフィーストの中にも綺麗な方がいたと思うのですが、同じ人なのか別の人なのか。福岡公演で答え合わせできたらいいな。
それにしてもいつの間にこんなに綺麗な男役さんが増えていたんでしょうか??

綺麗な方といえば水音志保さんに目が奪われがちでした。幕開きから春瀬さんと美男美女で踊られていて眼福。
そして2019年当時は組長さんがされいたパート副組長さんがされていたパート、はたまたあの方がされていたパートをこの方がされる時代になったんだなーと宝塚歌劇における2年の歳月の進み方の速さを実感しました。
そして2年前は客席降りのタカラジェンヌさんたちとグラスを合わせてはしゃいでいたのになぁと。世の中の変化を実感しました。(通路側の席だったのに・・涙目)

そうそう。「アクアヴィーテ!!」といえば!の3人のスターが甘い言葉を囁いて客席の反応を愉しむ場面では、瑠風さんはドライヤーに桜木さんはピアスに真風さんは枕になりたがっていました。
熊本公演だったせいか、瑠風さんは「あなたの髪は熊本の太平燕のように」、桜木さんは「あなたの耳は熊本のいきなり団子のように」、真風さんは「あなたのおでこは熊本の馬刺しのように」と喩えてらっしゃいましたが、ここはご当地アドリブになっているのかな。福岡ではなにに喩えられるのかも愉しみです。

ウィスキーが蒸留、熟成されていく場面は、大劇場公演より人数は少ないもののさらに洗練されていて美しくてとても感動的でした。
桜木さんと潤花ちゃんのリフトも素敵。

熊本まで日帰りでソワレ観劇はしんどいかなぁなんて思ったりもしていたのですが、行って良かったです。
つぎはいよいよ福岡公演観劇。
最高の時間になりますように!

| | コメント (0)

2019/10/26

死ぬまで一緒だ。

宝塚歌劇宙組全国ツアー公演のショー「NICE GUY!!」は、初演の頃は宝塚をあまり見ていない時期で、生で観劇したことがありませんでした。
のちにCSで放送された時に宙組&大介先生のショーだ♡と期待して見始めたのですが、どうしても受け付けない場面がさいしょのほうにあり挫折してしまった思い出があります。

全国ツアー公演の演目が発表された時には、そのまま上演して大丈夫なのかしらと心配したのですが、その場面は新場面に替わっていて、苦手だった場面がなくなってあらためて生で見ると男役のカッコよさが満載で、再演が熱望されていたのも肯けました。

『NICE GUY!!』つまりテーマはズバリ男役!!という潔いコンセプトどおり、青木先生によるキャッチーな主題歌で男役がカッコよく歌い踊り、かつ笑っちゃうほどのキザを競うように見せつけられて目が足りませんでした。ショーの最初から客席降りも織り交ぜられ畳みかけるように心を掴まれてからパレードまで、毎回あっという間だった気がします。

ショーの副題に「Sによる法則」とあるように、歌詞のサビの部分がSではじまるフレーズになっているんですよね(ということは、初演はYではじまるフレーズだったのかな)。その歌詞がけっこう笑わせにかかっているなと(笑)。あ、もしかして私がキザに直面すると笑っちゃう性質だから笑ってしまうだけで笑わせるつもりではないのかな。でも「死ぬまで一緒だ」と微笑みながら歌う真風さんを見たら笑っちゃうしか。この現実を私はどう受け止めたらいいのか。ありえないものを見ているなと。
現実じゃないものがそこに在る。
嘘も本当にしちゃう力。それこそスターたるゆえん。

たくさんの幸せな嘘で成り立っている宝塚においては、嘘だってわかっていても信じさせてしまう魔力があってこそ、トップスターなのだなと真風さんを見ていると思います。
真風さんを見るたびに、「だまされないぞ」「だまされるものか」と心で唱えている私です。気を許したら一巻の終わりだと思っています。
だまされてはそれを打ち消し、だまされては打ち消すを繰り返しているうちに終幕となり、夢のつづきをまた見たいと思ってしまうのだと思います。
真風さんには気をつけよう。危険すぎる。

トップコンビの真風涼帆さんと星風まどかちゃんの痴話げんかの場面も大好きでした。
調子に乗ってカッコつけまくる真風さんの前場とのギャップがツボ。長身さんだからコミカルなポーズがなおさら独特のハマり具合でたまりません(笑)。
そしてまどかちゃんの「涼帆のせいよ!」(笑)。トップスター様を呼び捨て?!(これを言わさんがためのあえてのこのキャラ設定とシチュエーションですか大介先生??)
現実では絶対にありえない、これも嘘の世界。(見ているほうがドキドキ)
―― 嘘の中にある真実がほのかに見える感じにドキドキしたのかもしれません。
一歩まちがえたら悪趣味になりかねないけど、まどかちゃんの一生懸命なプロ根性と真風さんの器の大きさをご当地ネタとともに楽しめる場面でした。
このバランスが魅力のコンビだなぁと。
真風さんのホールド力がいまの宙組のベースだなぁとつよく感じる場面でした。

続きを読む "死ぬまで一緒だ。"

| | コメント (0)

2019/09/26

将来のために。

9月8日に熊本市民会館、9月14日、15日、16日に福岡市民会館にて宝塚歌劇宙組公演「追憶のバルセロナ」「NICE GUY!!」を見てきました。

観劇の翌日には熊本城を観光しました。ボランティアの方にガイドをしていただき有意義な時間となりました。しかしとても暑い日でした(笑)。
復興中の熊本城の様子を間近に見ることができる加藤神社には、加藤清正の生前の口ぐせだという「後の世のため」という幟がはためいていて、前日「追憶のバルセロナ」で真風さんが演じていたフランシスコが芹香アントニオと誓い合っていた「将来のために」という言葉に通じるなぁと感慨深かったです。熊本城復興のために尽力している人びとや真風さんが熊本出身ということとも合わせていろいろ思わずにはいられませんでした。
(初演では退団される絵麻緒ゆうさんと成瀬こうきさんが交し合っていたセリフでもあるんですよね。正塚先生はここになにを込めたかったのかなぁとか考えてしまう印象的なセリフでした)

「追憶のバルセロナ」において、フランシスコ(真風涼帆さん)とイサベル(星風まどかさん)の関係とおなじくらい好きなのが、フランシスコとアントニオ(芹香斗亜さん)の関係です。
アントニオの考え方、立場がこの作品の世界観や作者の内心を表現していると思います。どうするべきか、なにを大切にして生きるべきかという問い。
無二の親友でありながら考え方が異なってしまった2人ですが、心からの信頼があればこそ、相手とはちがう考えをぶつけ合える2人の関係が好きでした。

命を懸ければなんでも守れると純粋な情熱に身を任せ戦争に赴いた若い2人が、現実の戦争の辛酸をなめ、1人は現実的な手段で生き残り、裏切者の汚名を着る覚悟で人命を救うために奔走する。
また1人は瀕死のところをロマの人びとに助けられ、社会の底辺で虐げられながらも仲間との強い絆のもと逞しく生きるその生き方に触れ(「ロマの女なんかどうにでもなると思ってやがる」のは決してフランス兵だけではないでしょう)、自分も草の根から人民に呼びかけ同志を増やし、ゲリラ的戦術でフランスの支配からスペインを取り戻す道を選ぶ。
再会するも考え方も生き方も対立する立場になっていた2人。けれど当時のフランスはとうにアントニオが共感した共和制や人道思想が通じる国ではなくヨーロッパ中を征服戦争によって蹂躙、支配しようとする国となっており、それを身をもって知ったアントニオもまたフランシスコと手を結びフランスに抗戦する立場に転ずる。

――というのが2人の生き方のおおまかな変遷かなと思うのですが、アントニオのセリフがバルセロナの状況を表し、またはフランシスコの心を大きく揺さぶるものでもあるのでとても重要だと思うのですが、芹香さんの滑舌が心配になるレベルで不安定なのが気になりました。これからますます重責を負う立場の人ですし将来を望まれている人だから放置せず専門家に相談されていたらよいけど・・・。
「妻になにをした!」というアントニオの咎めを聞いたフランシスコのマスクの下の表情が変わる瞬間が好きだったので、毎回あのセリフが明瞭に響くことを願っていました。
親友を思って歌う新曲はとても良かったです。歌唱力も雰囲気も。歌う時のシリアスめな表情が知的なかんじですてきでした。スマートかつ内心に憂いを秘める役が芹香さんにぴったりだなぁと。
歌がメインの作品なら不安はないのですよね。
個人的には、真風さんと芹香さんで「メランコリック・ジゴロ」や「愛するには短すぎる」などのバディ感のある、正塚先生の軽快なコメディを見てみたいと思っているので滑舌が改善されるといいなと思います。

続きを読む "将来のために。"

| | コメント (0)

2019/09/20

それが惚れるってことじゃないのか。

9月8日に熊本市民会館、9月14日、15日、16日に福岡市民会館にて宝塚歌劇宙組公演「追憶のバルセロナ」「NICE GUY!!」を見てきました。

「追憶のバルセロナ」は正塚先生の作品としては珍しいコスチュームプレイで個人的に好きな作品でもあり、いまの宙組での再演はうれしかったです。
正塚作品独特の間やセリフでありながら現代劇ではなく時代物であることが、いつもよりさらに難易度を上げているかんじで、熊本で見た時はいまひとつ力不足かなと思う部分もあったのですが、1週間後の福岡公演ではそれもかなりこなれて、タカラジェンヌの吸収力と成長は凄いなとあらためて思う次第でした。

往年の柴田作品に対するオマージュでもありつつ、正塚先生世代独特の価値観も随所に見える作品だなぁと、そこに私は惹かれるのかなぁと思いました。
ロマのロベルトに言わせている『惚れた相手が行きたいならそれがどんな所でも一緒に行こうとするんじゃないのか。それが惚れるってことじゃないのか』とか。往年の柴田先生の作品を見て蟠っていたところに刺さってくるのですよね。
おとぎ話だよねとも思うし、戦後生まれの浅薄な理想かもしれないけど。でもそこが好きです。
理想はいつかかたちになるかもしれない。そんな希望が抱ける世界が好きです。

柴田先生の作品ならばきっと「酒場の女」と「良家の令嬢」という属性で分けられたそれぞれの女性は、その垣根の中から決して外へ出たりはしない。
青年貴族である主人公は、市井にある時は片方の属性の女性と燃えるような恋愛をして、みずからの本懐を遂げたのちは心を切り裂いてでもその熱情を断ち、戻るべき場所=もう片方の女性が属する場所へと戻っていく。
主人公目線からすれば、貴族の継嗣に生まれた者が、青春という刹那の時間を生きたのちに、生まれた時から授けられた重責を背負う覚悟をもつまでの心の軌跡を描いたということになるのかもしれないけれど、ヒロインを思うと私は釈然とはしないのです。
『私にはずっと結婚を待たせている心優しい許嫁がいる』と予防線を張って付き合い始めるとか、女性にランクをつけているからこそできるわけで。いまの時代にこういうものを見せられてどう思えというのかと。これがかつての男のロマンなのかとか? 主人公もつらいよねとか?
たしかに一瞬憂いを帯びた美しいお顏にだまされはしましたけど。でももう無理。(完全に「バレンシアの熱い花」を想定中)
かつての名作も、いま上演するなら内容は吟味してほしいと思います。
でもそうは言いつつ、往年の柴田作品ほどのクオリティの脚本が書ける人が現時点でいるかというと難しいのだろうなぁ。

ゆえに、こんなふうに次の世代の作家がオマージュやリメイクをする試みは面白い実を結ぶやもしれないなと思います。
この「追憶のバルセロナ」も初演は17年前。『ずっとそばにいてくれ、それがお前の力だ』『自分のことのようにあんたを思ってる』―― いまならこれが男女逆でもいいのになぁと思ったりもします。でも正塚先生だからそれはないな。いつか若手の女性作家さんの手で描かれる日が来るといいな。

続きを読む "それが惚れるってことじゃないのか。"

| | コメント (0)

2019/05/15

愛はどこにいる。

5月9日に広島文化学園HBGホールにて、宝塚歌劇星組全国ツアー公演「アルジェの男」「ESTRELLAS~星たち~」を見てきました。
専科に異動になった愛ちゃん(愛月ひかるさん)の出演が発表になってから観劇遠征を思い立ち、チケットの手配に走ったのも遅かったし、初めてのホールでもあったのでどうなることかと思いましたが、行って本当によかったです。
(広島駅に着いて食べたお好み焼きも柑橘のパフェもお土産のお菓子〈ひとつぶのマスカット〉もめちゃめちゃ美味しくてまた食べたい!広島に行きたい!と夢見ています。まさに美味しい観劇遠征でした♡)

「アルジェの男」はさすが柴田先生の脚本という面白さと、星組メンバーの芝居力が活きて見応えがありました。
いまの感覚で見ると、登場する女性たちがそろいも揃って男性たちに都合がよいなぁと思えるのですが、書かれた当時を考えると、宝塚らしく柴田先生らしく破格に女性に優しい、女性たちへの愛おしみの気持ちのこめた作品だったのだろうなぁとも感じます。

往年の柴田作品には、酸いも甘いも噛み分けた賢夫人たちがしばしば登場しますが、「アルジェの男」にもボランジュ総督夫人(白妙なつさん)とシャルドンヌ夫人(万里柚美さん)という2人の大人の女性が登場します。
男性社会の中で確固とした居場所を築きひとかどの紳士に一目置かれる、タイプの異なる2人の女性は、こういう風に賢く男性に愛されれば女性は幸せになれると示しているようにも感じました。(いまこれが新作だと噴飯ものですが・・苦笑)
1974年の少女時代の私がこの作品を見たらそのようなメッセージを受け取っただろうなぁと思います。
そしてそれが柴田先生の女性たちへの愛なのだろうなぁと思いました。

「バレンシアの熱い花」に登場するマルガリータが大人になったらボランジュ夫人のようになるのかなぁ。イサベラが紆余曲折の末にシャルドンヌ夫人のようになる可能性もあるのかなぁなんて想像したりもしました。
「バレンシアの熱い花」の初演が1976年。まさに当時の柴田先生の理想の女性像なのだろうなぁと思ったり。半世紀近い歳月を経ての上演といのはいろんな感慨を呼び起こさせるものだなぁと思いました。
いまの少女たちにはどんなメッセージになっているのでしょう。訊いてみたい気もします。

主役のジュリアンを演じた礼真琴さん。やはり歌を聴かせるなぁと思いました。聴いていて心が高揚する歌い手さんだなと。
いまを感じさせるというのか、はしるようなクセになるような歌でした。それがジュリアンという若者の生き方に合っていたような気がします。

孤児で気にかけてくれる大人もいない。悪さをすることで仲間と連帯しているような若者。「コロシ(殺人)」と「タタキ(強盗)」以外はなんでもやったと豪語する。頭も良いし口も立つ(女の子に対しても)血気も腕力もある。でもこのままではいずれ街角で野垂れ死ぬだろうそんな若者。
そのことを彼自身がいちばんわかっているのだろうなと。そうはなりたくない。だから荒唐無稽とも思える野望を抱いているのだなと。そこからはじまる物語でした。
このままで終わるには知能もプライドも高い。けれどそのポケットにはなにもない。――With no love in our souls and no money in our coats(R.Stones)だなぁって。
野望が唯一の拠り所なんだろうなぁと思いました。

そんな若者が偶然にもチャンスを掴む。仲間たちに揶揄され袋叩きにも遭いながら信念のもと歯を食いしばって下積みから上を目指しているその眼光。綺麗事が言える身分ではない。利用できるものはなんでも利用しなくては目指すところへは辿り着けないとわかっている。礼真琴さんが見せてくれるジュリアンを非難する気にはとてもなれませんでした。
都会の裕福な家庭に育っていたら、心に闇を抱えることもなく自らの才能を発揮できていたのだろうに。

そしてパリで出逢う彼とは境遇のちがう若者たち。エリザベート、ミッシェル、ルイ、アナベル・・・。
彼らがあたりまえに手にしているものはすべて、彼にとっては自ら勝ち取っていくもの。
彼には、彼らが自分と同じ人間とは思えていないふしがあるような気がしました。彼らに共感すべき心を見出していないような。彼らの感情とは手玉にとり利用するためのもの。成り上がるための道具でしかないんだなぁと。

ボランジュの期待に応えるべく黙々と仕事に精を出し、自分が目指すところへ向かって着々とプランを練り実行していくジュリアン。愛を知らないジュリアン。
一緒に働いているミッシェル(紫藤りゅうさん)とはすこしずつ何かが芽生えてきているのかな?と思えていたその矢先に。
過去と現在が交錯し、過去のためにいまが砕かれようとして、いまのために過去を抹殺しようとして。
ついには自分がやったことの報いを受ける。
そのまえに一瞬でもサビーヌによって愛がいまここにあると知ったことが救いかなぁ。やっとジュリアンの空虚は埋まったのだろうなぁと思えたことが。
でもサビーヌの気持ちを思うとやりきれないなぁ。

続きを読む "愛はどこにいる。"

| | コメント (0)

2018/12/06

古い小さな傷痛むように懐かしさが込みあげてくる。

12月1日と2日に福岡市民会館にて宝塚歌劇花組全国ツアー公演「メランコリック・ジゴロ」と「EXCITER!! 2018」を見てきました。

主演の花組2番手スターの柚香光さん、そして助演の水美舞斗さん、ヒロイン格の華優希さんと舞空瞳さんを中心とした若さスパークリングな熱く楽しい公演でした。
貸切公演を含めて4公演見ることができましたが、飽きることなく楽しめました。(それどころかもっと見たいと思うほど・・・)
お芝居だけでなくショーでもうるうるとしてしまったんですが、これってなんなんでしょうね。
命の輝きをいっぱい見せていただいたような・・・そんな気持ちです。

「メランコリック・ジゴロ」は柚香さんと水美さんの同期コンビにとても合っていて掛け合いがとても面白かったです。ナンバー中のさりげないじゃれ合いも。

柚香ダニエルがふと見せる物憂げな表情に惹かれました。
ジゴロを気取って計算づくな生き方をしているようでも薄い皮膚の一枚下には繊細なものが流れていそう。
見る者の想像をかきたてる天性の魅力がある人だなぁと思いました。
オトナになりきれない余裕のなさ、その弱さを魅力にしてしまう人だなぁと。
ノスタルジックな主題歌を歌うときの純朴さと、身にまとったスマートな物憂さがミックスされてとても魅力的に感じられました。
歌詞を聴きながら、彼の過去を様々に想像していました。

計算高く生きようとしているけれどどうしてもお人好しなところが出てしまうダニエル。
ドライに割り切れるスタン。(たぶんそうでないとならない人生を生きてきたのだろうな)
田舎育ちのダニエルと都会育ちのスタンの対比がはっきり見えて面白かったです。

スタンはちゃっかりしてて一見薄情なことを言っているようだけど彼の言うことは一理あって、2人揃って捕まってしまうよりは、どちらか片方つまりスタンだけでも逃げて別動で問題解決にあたったほうが得策ですよね。
過剰な情けは掛けないのは信頼関係があってこそ。
ダニエルをわかっているからこそ任せるところは任せて自分のすべきことを冷静に見極めている。頭の回転が速い人なんだなと思います。
(とはいえ、まぁあれだけど・・笑)

水美スタンの軽妙さが面白くて好きでした。わかってて言っているのか無意識なのか?の絶妙なライン(笑)。
ちょっと危ない話やエキサイトメントな情報を持ち込んでくる陽気な友人の魅力。
柚香ダニエルと並ぶとお互いに魅力倍増でした。

「おまえ居直るとキツイな」というスタンの言葉が好き。
都会育ちな彼は世間慣れに関しては自分にアドバンテージを感じているんだろうな。
初心なところのあるダニエルに「世間ってもの」を教えてやるのは自分だと思っていそう。
でも、ダニエルのそのスレていない純なところを彼はけっこう好きなのではないかな。
おたがい自分にないものを持つ相手に魅かれあっているかんじ。
相手を認めつつも負けん気も発揮しあう同士。
2人の関係を探りながら見るのもたのしい作品でした。

マサツカ作品はややもするとマンスプレイングが鼻につくことがあって、この作品もまた相変わらず女は馬鹿だと思ってるよねーとは思うけれども、登場する男たちもまた主人公を含めてそれぞれが愚かな人間の1人として描かれているのが、人間への愛おしみと感じることができたような気がします。
答えを自分の中の常識の内に落とし込んでしまわない、問いかけは問いかけのままなのがいいのかなと思います。

続きを読む "古い小さな傷痛むように懐かしさが込みあげてくる。"

| | コメント (0)

2017/12/09

あの瞬きに導かれ。

12月2日と3日、福岡市民会館にて宝塚歌劇月組公演「鳳凰伝」と「CRYSTAL TAKARAZUKA」を見てきました。

「鳳凰伝」。楽しみで仕方ありませんでした。
まずバラクは誰?と思いましたよね。れいこちゃん(月城かなとさん)か、いいではないか、楽しみだなと思いましたよ(笑)。

脚本の部分で物を申したいところもあるのですが、それでもこの作品が好きだなとあらためて思いました。
主演のカラフ役の珠城りょうさんが歌う主題歌にしみじみと聞き入りました。
甲斐先生の曲はいいなぁ。盛り上がるなぁ。木村先生の歌詞もいいなぁ。木村先生なのになぁ。

カラフは実感を求めてさすらっている若者なんだなぁ。
かつての華々しい凱旋も彼には熱き血潮を滾らせるものではなかったのだなぁ。

初演の和央ようかさんのカラフは、圧倒的なビジュアルと比類なき実力のある男、なにもかもがこの世界と乖離している自己を感じずにはいられず、世界との齟齬を埋める何かに出逢うことを夢見ている男に見えていました。
どうしようもなく孤独に生まれついた人だなぁと。
そして、いずれ世界を手に入れる男だぁと。
ゼリムもタマルも心から彼を慕っているけれども、彼らでは彼の心を埋められない。
そんな彼が対等でいられる唯一の男が、バラク。
この人と対になるのはもうトゥーランドットしかないよねと思えるカラフでした。

その初演のイメージとはまったく異なる珠城さんのカラフを読み解くように見るのはとても面白かったです。
珠城さんのカラフは内面が若い印象をうけました。若くて清々しいカラフでした。
孤高ではない。世界を信じている人だなぁという印象を受けました。
国は滅ぼされてしまったけれど不幸ではない。
ただ恵まれていた過去に実感がないのだなぁと。
愛情深い父の存在、自分を心から慕うゼリムやタマルのような人びとが他にもきっとたくさんいて。
皆が自分によくしてくれて、皆を大事にも思っていて。だから感謝の言葉も素直に発せられて。
慈愛に満ちた世界に育ち、うたがいもなく幸福であったのだろうけれど、それゆえに心から渇望するものがない。
恵まれた環境を失ってもそれを惜しいとも思わないでいる青年、それが珠城カラフだなと思いました。

そんな彼の目に飛び込んで来た星。
初めてその熱い血潮を滾らせたもの。
手に入れること以外考えられない希望。
彼に「いま生きている自分」「いのち」を感じさせたもの。
それがトゥーランドットなのだなぁと思いました。

続きを読む "あの瞬きに導かれ。"

| | コメント (0)

2017/03/30

うっとりします。

3月25日、福岡市民会館にて宝塚歌劇花組公演「仮面のロマネスク」とショー「Exciter!! 2017」を見てきました。

みりおちゃん(明日海りおさん)、頼もしいトップさんになったなぁと思いました。
すごく充実している感じが伝わってきました。

新トップ娘役の仙名彩世さんは明日海さんと並ぶと『絵柄』がちがう印象でした。
(仙名さんは花郁悠紀子さんが描く女性っぽいなぁと思いました)
ヒロイン芝居を封印してきた弊害なのかもしれないけれど、芝居が固い印象でした。
作品のヒロインとして心が閃く一瞬が見えるように、見せる芝居を期待したいです。

「仮面のロマネスク」はあらためて復古王政時代の描き方に惚れ惚れしました。
貴族たち、ブルジョワたち、庶民たち。自然に語られるそれぞれの立場からのセリフが時代を表現してて。
貴族階級の中にも異なる立ち位置がさりげなく描かれていて。
それが物語の主題ではないのだけど、確実に登場人物たちの心に影を落としているから物語が運ばれていくのだなぁとわかる。凄いなぁと思います。

そして、やはり柴田先生の作品は娘役を選ぶなぁと思いました。
なぜだかはわかりませんが、メルトゥイユは人間不信なところがありますよね。
だから人を試してしまう。
ヴァルモンの態度に本当は傷ついているし嫉妬もしているけれど、世間や男性を見下して自分はさも打算で生きているように見せかけることで自分の弱いところ、自分の本心を押し隠そうとする彼女独特の矜持がある。
そんな強がりが魅力的で愛しくて、宝塚にはまりたての頃にCS放送で見た初演のメルトゥイユに私は心を掴まれました。
そのちょっとした可愛らしさが今回のメルトゥイユには感じられなかったな。

ヴァルモンが感じているはずの彼女の仮面に隠された魅力を私も感じたかったなぁと思いました。
そこが感じられないとヴァルモンがただの美貌だけの浮気おとこに見えてしまうから。
ヴァルモンの動機になりうるメルトゥイユかどうかが大事だと思います。

また今回はどういうわけか零落した子爵家を持ち直したヴァルモンの影の苦労や仮面に隠したメルトゥイユへの愛が印象づかなくて、結果的に女誑しぶりだけが強調されてしまったような気がします。
メルトゥイユにもヴァルモンにも仮面に押し隠している真の部分がある。
それが仄見えた一瞬にはっとさせられるから、その仮面を今生の別れとなるかもしれないギリギリのところで外すラストシーンが感動的なのになぁ。
2人の「あなたがいたから」という繊細で久しい想いが優美なロマネスクになった瞬間のなんともいわれぬ感動を味わいたかったな。

と思ってしまうのも、“初演信者”ゆえかもしれません。(しかも映像の)
ハードルが高くなってしまってる自覚が大いにあります。
いろいろ言いながらも見たいんですよね
見たくもない作品や出演者ならはなから見ないですもん(笑)

続きを読む "うっとりします。"

| | コメント (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

宝塚 凰稀かなめがいた宙組 宝塚 大和悠河がいた宙組 \ 宙 組 !!/ ♕ 花組 ♕ 月組 ♕ 雪組 ♕ 星組 ♖ 観劇 ♖ 宝塚 ♖ 宝塚OG ♖ コンサート ♖ ストプレ ♖ ディナーショー ♖ ミュージカル ♖ 宝塚大劇場 ♖ 東京宝塚劇場 ♖ 歌舞伎 ♖ 狂言/能楽 ♖TBS赤坂ACTシアター ♖『1789』 ♖『エリザベート』 ♖『ベルサイユのばら』 ♖『ロミオとジュリエット』 ♖キャナルシティ劇場 ♖シアターBRAVA! ♖シアタークリエ ♖シアタードラマシティ ♖三越劇場 ♖中日劇場 ♖久留米シティプラザ ザ・グランドホール ♖九州厚生年金会館 ♖佐賀市文化会館 ♖北九州ソレイユホール ♖北九州芸術劇場大ホール ♖博多座 ♖国際フォーラムCホール ♖大野城まどかぴあ大ホール ♖大阪城ホール ♖天王洲銀河劇場 ♖宝塚バウホール ♖宝塚観劇-全国ツアー ♖宝山ホール ♖帝国劇場 ♖広島文化学園HBGホール ♖御園座 ♖愛知県芸術劇場大ホール ♖新国立劇場中劇場 ♖日本青年館ホール ♖東急シアターオーブ ♖梅田芸術劇場メインホール ♖歌舞伎座 ♖渋谷区文化総合センター大和田さくらホール ♖熊本城ホール ♖熊本市民会館 ♖福岡サンパレス ♖福岡市民会館大ホール ♖青山円形劇場 ♖青山劇場 ♗ 宙組 白夜の誓い/Phoenix宝塚 ♗ 宙組 ベルサイユのばら-オスカル編- ♗ 宙組 ロバート・キャパ/シトラスの風 ♗ 宙組 風と共に去りぬ ♗ 宙組 うたかたの恋/Amour de 99 ♗ 宙組 モンテクリスト伯/Amour de 99 ♗ 宙組 銀河英雄伝説@TAKARAZUKA ♗ 雪組 ベルサイユのばら-フェルゼン編-特出 ♗宝塚宝石箱 ♘ 京極夏彦の本 ♘ 波津彬子の本 ♘ TONOの本 ♘ 本の話 おでかけ。 凰稀かなめ - ouki kaname 大和悠河- yamato yuga 大和悠河-宝塚時代 宝塚観劇iii- 薔薇に降る雨 + review 宝塚観劇iii- 外伝ベルばら-アンドレ編- + show(中日劇場) 宝塚観劇iii- Paradise Prince + review 宝塚観劇iii- 雨に唄えば(宙組) 宝塚観劇iii- 黎明の風 + review 宝塚観劇iii- バレンシアの熱い花 + show 宝塚観劇iii-A/L 宝塚観劇ii- 不滅の恋人たちへ 宝塚観劇ii-THE LAST PARTY(宙組) 宝塚観劇i- 維新回天・竜馬伝!+ review 宝塚観劇i- コパカバーナ(博多座) 宝塚観劇i- NEVER SAY GOODBYE 宝塚観劇i- 炎にくちづけを+ show 宝塚観劇i-ホテル ステラマリス+review 映画・TVドラマ 音楽