薄紫のとばりの向こう。
宝塚歌劇団星組の愛月ひかるさんが、宝塚を卒業される12月26日まで残り2週間を切りました。
私にとって愛ちゃん(愛月ひかるさん)は宙組のホープだと思っていた人で、専科への異動はショックが大きかったです。
いろいろ思い起こすと、愛ちゃんにはいろんな夢を見せてもらったし、いろんな感情を抱かせてもらったなぁと思います。
真風涼帆さんが宙組のトップになったら、愛ちゃんに「花の業平」の藤原基経役とか来ないかなぁぜひ博多座で♡と勝手に思い描いたりしていました。
そんな無邪気な空想をしている頃に発表された同期であり花組2番手のキキちゃん(芹香斗亜さん)の宙組異動も青天の霹靂でした。愛ちゃんは2番手じゃないんだなぁと。(時系列でいうとこちらが先ですね)
じっさいに真風さんトップお披露目公演「天は赤い河のほとり」を見てみるとキキちゃんの軽妙さがとても好きになり、同期でキキ業平&愛基経やらないかなぁ博多座で♡と無邪気に想像したりもしていました。(懲りない)
いま星組に異動して立派に2番手をつとめている愛ちゃんを見ていると、ここに至るまでの時間がもうすこし早ければちがった道もあったのかなぁなんて思ったりも。
とはいえいまの愛ちゃんの透明でやわらかな表情を見ると、もうどんな繰り言もいらない気がするのですが、ひとつだけ。
卒業に際してCSの番組やDS配信などで愛ちゃんがしきりに語っている、下級生時代にもっと上級生に教えを請えばよかったという思いについて。
それだよなぁと思うのです。
愛ちゃんがどうというのではなくて、宙組の気風が関係していたりするのかなぁ。
宙組は約20年前に既存の4組からメンバーが集められてできた組で、集まったメンバーが元の組ではこうだったと主張しあったら収集がつかなくなるので、皆で新たなルールをつくっていこうとしたと元組長さんたちがおっしゃっていたのを公式メディアで聴いたり読んだりしたことがあります。
それぞれが別の組で受けた指導が異なるために、組全体の和を優先しようとすると、上級生が下級生を強く指導するということができにくい環境になっているのが問題だと。
和央ようかさんトップ時代の雑誌等を読むと、トップさんと下級生たちが分け隔てなく遊びに行ったりして楽しそうだなぁと思っていました。反面、舞台では上級生と下級生(他組経験者と宙組育ち?)ではっきりと分かれていた印象も強かったです。
組替えしてきたスターさんが気づいた点を指摘されても、指摘を受ける側が慣れていなくて戸惑ったりでなかなか定着していかなかったのかなと思います。
貴城けいさんは1年足らずの在籍でしたが、「日本物の雪組」で学んだことを日本物に慣れない宙組の下級生たちに残していこうとされたようで、通りすがりの下級生のお化粧も気になれば指摘されていたそうです。
それに食いついていったのが早霧せいなさんと言われていて、現在唯一宙組出身でトップスターになった方なんですよね。
上級生のほうから積極的に教えていく組もあれば、「見て学ぶ」気風の組もあると聞きます。ちがいはあれど、それぞれの組ごとにスターの育て方、生み出し方として確立したものがあるように思います。
そのちがいで組替えした後に齟齬がおきることもあるのかもしれません。そこをどうしていくかが長年の課題だったのかな。
タカラジェンヌとして楽しく在籍することと、期待を受けてスターになるために強く意識付けさせられて競争社会の中で厳しくストイックに稽古に打ち込むことを両立させるのは大変だろうなと思います。
下級生時代から抜擢続きの人は自分自身が期待に応えるのに精いっぱいで下級生に目を配る余裕がないのかなという印象を受けることもありますが、そんな方も学年が上がり余裕が出るにつれて下級生に自分がもてるものを伝えようとされているなぁとうかがえるようになっていくのを感じます。
人にもよるし学年や立場にもよるし、いつでもどこでもウェルカムではないかもしれないけれど、そこにいるのは宝塚を愛している人なのだからきっと教えを請いに来た下級生を無下にはしないのではないかなと思うのですが、それが難しい環境だったのかなぁ。愛ちゃんの性格だけがそれを阻んでいたとも思えないなぁ。
DSで物怖じせずに自分からいろいろ発信してくる蒼舞咲歩さんを愛しげに見つめながら愛ちゃんは下級生時代の自分を思い起こしているのかなぁと思いました。
いまの下級生にとっての愛ちゃんがそうであるように、下級生時代の愛ちゃんが教えを請いたかった人も輝ける星のような存在で、こんなふうに自分にまなざしを向けてもらうことは難しいことだったのかなぁ。
素直じゃないなぁと思えて、そのくせ正直者の愛ちゃんが私は好きでしたけど。
愛ちゃんが蒼舞咲歩さんみたいな性格だったら史上最強だったかもしれません笑。なぎ倒していきそう。
明るくてガッツのある蒼舞さんも素敵ですが、蒼舞さんを見つめている愛ちゃんがやっぱり好きですよ私は。
話が蛇行していますが、愛ちゃんは愛ちゃんのままでやっぱり好きなのですが、これからの宙組について思いをめぐらせると。
現在の真風さんも就任5年目に入るベテラントップさんで、ほかのスターさんたちもそれぞれに自分の個性を極めてらっしゃって何があってもどーんと受け止めてくれそうな気がします。
下級生にとってはいまこそ伸びるチャンスかもしれないと思います。
どうかこの機を逃さずに宙組からたくさんのスターが生まれますようにと願ってやみません。
そして愛ちゃんが愛情を残していく星組も、これからも見続けていきたいです。
(私自身のリソースは限られているのですが・・)