カテゴリー「♖ 宝塚」の380件の記事

2021/01/30

一緒に見た夢を一緒に叶えよう。

1月28日と29日に宝塚バウホールにて花組公演「PRINCE OF ROSES-王冠に導かれし男-」を見てきました。

作品を見ているうちに登場する人物たちが主人公ヘンリー・テューダーに向けるその思いに、私は宝塚を愛する人々の思いを重ねていました。
フィナーレで出演メンバーを従えてセンターで踊る主演の聖乃あすかさんが、客席に目線をやり髪を掻き上げた瞬間、胸が震えて涙が溢れ出てしまった自分に驚きました。

自分をとりまく人々の思いを受け取って前に進もうとする主人公と、聖乃さんの初主演舞台を支えた出演者たちや客席からの思いを受け取っていまそこに存在する聖乃さんが重なり、またその彼女にこれまで見てきた宝塚のスターさんたちの姿が何重にも重なって見えた気がしました。

なんという美しさ、なんと眩い生命の輝きかと——
―― もしかして、1幕1場でヘンリー・テューダー(聖乃あすかさん)のかんばせを見たヘンリー6世(冴月瑠那さん)やジャスパー・テューダー(高翔みずきさん)、そしてトマス・スタンリー(一之瀬航季さん)が言っていたことは、私がいま見たこの光景に近いものがあるのかもしれないと。
人が夢を託し希望と仰ぐ人は、こういう人なのだろうなぁという納得の存在感を感じました。

この作品は、演出家竹田悠一郎先生のバウホールデビュー作でもありましたが、若者によるテーゼとロジックを見せてもらった気がするというのがいちばんの印象でした。
まだ荒削りで散らかった部分はありましたが、伝えたい思いをこれほどストレートに表現できることへの羨望も感じました。
そして経験値が高い人ならばきっと手を出さないだろう「薔薇戦争」という七面倒くさい題材に挑んだことも。(おかげでこの年齢になって勉強というものをする機会をいただきました笑)
それからフィナーレに大変心躍りましたので、ぜひショーを作ってほしいなと思いました。

年齢的に私は主人公の親世代の登場人物に気持ちを寄せがちだったのですが、若い世代の彼らに何を渡せるのだろうと考えてしまう作品でもありました。
できることならもっと自由を。少なくとも若者の夢や未来を搾取しないようにしなければと、作品とは関係のないことを思い至ったり。

聖乃あすかさんについては、じつはこれまでは素顔の美しい男役さんという程度の認識しかありませんでした。たぶん私の好みだろうなと思ってはいましたが笑。
「MESSIAH」の新人公演を見ているのですが、あの時は「舞空瞳ちゃん凄っっ!!!」で頭がいっぱいでその記憶しか・・汗。
本公演では去年の「はいからさんが通る」の蘭丸の美しさに釘付けになったことが記憶に新しいのですが、これほど舞台で堂々と眩しく存在できる方とは知りませんでした。

好きだったところは、聖乃さん演じるヘンリー・テューダーが、ヘンリー・スタッフォード(希波らいとさん)の死の悲しみを忘れないようにして前に進もうとするところ。それがあるから目指す未来が明確になるのだなぁと。
辛い過去に蓋をすることなく、自分への思いを残した人のその思いを受け取って、その思いとともに進んでいこうとする彼の器の大きさがまさに王者になるべき人のものだなぁと思いました。
それからブルターニュのイザベル(星空美咲さん)のもとに戻ったときの一連。包容力が凄すぎて。そこからシルキーにラブシーンへもっていくところはまさにプリンス。

そしてやっぱり花男♡と思わせるフィナーレの黒燕尾のダンスは洒脱で大好物でありました。あれをもっと見たいです。


イザベル役の星空美咲さんはリトルちゃぴちゃん(愛希れいかさん)といった見た目で少女らしい可憐さがあるヒロインでした。ドレス姿も素敵ですし「えっ」と一声発するだけでも納得のヒロイン感があり、これもまた天性の素質だなぁと思いました。そしてお歌がとても良かったです。

バッキンガム公ヘンリー・スタッフォード役の希波らいとさんの存在感も印象的でした。103期なんですか。本当でしょうか。赤い髪、赤いコスチューム、誰よりもひときわ長身、で舞台のどこにいてもすぐにわかりました。(初日の幕間に、お名前と「花より男子」のメインキャストだったことを教えていただきました)
自分の血筋を紹介する場面が面白くて客席の笑いが起きていたのも印象的でした。魅力のある方だなと思いました。

キレ者トマス・スタンリー役の一之瀬航季さんも聖乃さんと同期の100期ですか。本当でしょうか。お髭のおじさまがお似合いなのに。
いろんな登場人物と関わり物語を動かす役でしたが、存在感もお芝居も不安要素がまるでなくて100期の方とは思えませんでした。
というかもう100期以下の生徒さんたちが活躍される時代なんだなぁということに、瞠目するばかりです・・汗。

演出の竹田先生も100期生と同期なんですよね。いやはや。
宝塚歌劇の未来が楽しみになった舞台でした。

| | コメント (0)

2020/12/18

彼女を信じてくれてありがとうございます。

12月13日と14日に宝塚大劇場にて、宙組公演「アナスタシア」の前楽と千秋楽公演を見てきました。

約2週間ぶりの観劇でしたが、こんなにも深まるものなのかと驚きでした。
特に前楽はすべてがピッタリとはまった快感と夢見心地が途切れることなくラストシーンに導かれました。

ほんとうにあえて挙げるとすれば1か所だけ、1幕の終幕間際のヴラドのアドリブへの客席の笑い声が次のディミトリのセリフまで残ってしまったのが惜しかったことくらいでしょうか。時間にして何秒もないタイミングなんですけど、ほらやっぱりアーニャはアナスタシアでしょ?と確信できる私の好きなセリフに被ってしまったのが・・。でも客席が湧くのを禁ずるのは違うと思うし、さりげない言葉だから良いのであって語気を強めても興ざめだし、まさに舞台は生ものだなぁと思いました。でもほんとに一瞬現実に戻ったのはそこだけで、夢を見続けた3時間でした。

千秋楽は客席も雰囲気がちがったし、舞台の上も独特の緊張があった気がします。
ディミトリ(真風涼帆さん)がアーニャ(星風まどかちゃん)との別れを意識する歌を歌えば、私もつい「ああ大劇場で宙組のまどかちゃんを見るのも今日が最後なんだ・・寂しいなぁ」などと雑念が入ってしまい、前日のように無心で見ることができませんでした。
1幕で真風さんは喉をいかしてしまわれたのかな。前楽の方が声が自在に伸びていたと思います。慎重に音を置いて歌われていたようで、前楽よりもおとなしめなディミトリでした。そのぶんせつなさは千秋楽のほうが増して感じられた気がしますが私の気持ちのせいもあったかもしれません・・。

アーニャ役の星風まどかちゃんも、前楽はオールパーフェクトだったのに千秋楽は何回かセリフを噛んでいてこれも千秋楽かなぁと思いました。でもセリフを言いなおししてもダウンせずクオリティを保てるのは流石だなぁと思いました。これほど信頼できるパフォーマーはそうそういないなぁとあらためて星風まどかちゃんという存在の稀有さをおもいました。

ふりかえると1か月前にはじめて観劇して以来、ディミトリのことばかり考えています。
サンクトペテルブルクの路地裏で生きるストリートチルドレンだったんですよね。お父さんは強制収容所で亡くなり、お母さんはそのずっと前からいない。
この街で生き抜くには賢く抜け目なく立ち回らなくては。まともなことをしたって生きてはいけない。盗んだり人を騙したり。力のない子どもは捕まれば殴られたり蹴られたりはあたりまえ。自分を生かすので精一杯だったよね。

悪びれてはいるけれど、アーニャに出逢って、彼女をパリに連れて行くために一生懸命お金を作ろうとする姿は胸を締め付けました。人様のお財布からお札を抜いている姿も。そうしたって出国許可証を手に入れるだけのお金は作れないんですよね。それもとてもせつない。
ヴラドやアーニャに出逢わなければ、ディミトリも悪友たちとウォッカに溺れるしかない人生だったかもしれない・・・この街で。

親のいないストリートチルドレンだった彼が大公女様のプリンスになるというおとぎ話なんだなぁ、これは。

おとぎ話は自分で作ればよいと強がりを言っていたけれど。アーニャがダイヤモンドを持っていなかったら成立していないお話。

彼がアーニャを心から信じたから起きた奇跡の夢物語なんだなぁ。
そんなことが自分に起きるなんて少年の頃の彼は思いもしなかっただろうなぁ。ほかの誰かになれたらと、そんな無邪気な空想を少年だった彼も想い描いたことがあるのだろうかと、凍えてひもじい夜にどんな夢を見ていたのだろうと思うとせつなくてたまらなくなります。誰かの温もりの中にいた幸せな記憶はいつのことだったのだろうと。

ほんとうはアーニャが主人公の物語なのだろうけど、宝塚版だからこそのディミトリの比重が私は好きです。アナスタシアの過去ほどは彼の過去は描かれていないけれど、だからこそもっともっと彼のことを知りたいもどかしさはあるけれども。

でもそれも前楽と千秋楽にはみんな真風ディミトリに見ることができました。
彼が歌う歌詞が情景となってはっきりと見えた前楽、そして千秋楽でした。
「In A Crowd Of Thousands」で浮かび上がってきた痩せて汚れた少年と大公女様の邂逅。2人がともに記憶していたおなじ情景。
そしていま目の前で彼女に跪くディミトリの姿。幾度かつながりかけては消えた線と線が交わった奇跡の瞬間を私は目の当たりにしている——。
アーニャに出逢う前、少年の頃の思い出、アーニャに出逢ってから・・・どのディミトリも私は愛おしくてたまらなくて大好きです。

自分をみつけても手を振ったり笑いかけたりしてはだめだというディミトリの言葉に、千秋楽は専科に異動してしまうまどかちゃんと宙組に残る真風さんが重なって、たまらなくせつなくもなりました。こんなところでも雑念が・・・涙。
けれどあんなに鳥肌が立つほど息の合った「In A Crowd Of Thousands」を聴いたあとでは・・・。
このコンビだからこそのハーモニーを私はもう生では聴けないのだと思うと寂しさがぐっと押し寄せてきました。たぶんこの状況(コロナ禍)では私は東京まで公演を見に行くことは叶わないだろうから・・。
この作品を真風さんとまどかちゃんの主演で見ることができて良かったと思います。

続きを読む "彼女を信じてくれてありがとうございます。"

| | コメント (0)

2020/12/03

ロシアのねずみは賢くなけりゃ死ぬだけ。

11月24日に宝塚大劇場にて宙組公演「アナスタシア」を見てきました。

2週間前に見たときよりもさらに面白く感じました。
2幕のベッドサイドで歌われるディミトリとアーニャのデュエットなどはあまりに息ぴったりで鳥肌が立ちました。

そしてやっぱり私はディミトリの過去と現在が気になり物語から置いて行かれかけました。
親のいない少年がどうやっていままで生きてきたのかと・・・「My Peterburg」を歌う彼の心情はどういうものかと、思いをめぐらせているうちにナンバーが終わってしまう。同情させないところがディミトリらしいところなのだろうなと思うけれども。

落ち込んでいるアーニャにご褒美だと言ってオルゴールを手渡したり、彼女のために人形を買って荷物にしのばせてあげたりしているところを見ると、見かけによらずロマンティックな一面があるのだなと思います。
そんなことをしてあげている時の彼の心の中は、どんなにかあたたかだっただろうなとか、彼自身はそんなことを誰かにしてもらったことがあるのだろうかとか、考えずにいられませんでした。
彼の心の中の甘美な空想と彼が過ごしてきた現実を思うとせつなくて。

マリア皇太后に彼女を信じてもらえてはじめて褒美をもらった気分だと言うところは、彼のこれまでの人生にご褒美、プライズをもらえるような場面がはたしてどれだけあったのだろうと、そしてこの褒賞が彼にとってどんなに輝かしいものだろうと思って胸が熱くなりました。
お金をもらうよりも大切なものが彼の中にあること・・・。ペテルブルクの街で生きて行くために盗んだり騙したり殴られたり蹴られたりしていた少年を思うと。

自分が信じたアーニャを皇太后に認めてもらうことがご褒美。そんなディミトリの気持ちはジェンヌさんを応援する宝塚ファンにも似ているなと思いました。自分ではない誰かのために一生懸命になる気持ち。その人のしあわせを願う気持ち。その人が輝くことを誇りに思う気持ち。
宝塚ファンには入り待ち出待ちにお茶会があるけれど、ディミトリはこの先一切アーニャと関わらずに生きて行こうとしていたのですよね。それはとてもせつないなぁ。馬車の上から手を振ってもだめだぞと。

ディミトリに訪れたしあわせな結末を、ディミトリの中の少年にも語って聞かせてあげてほしいなと、そんなことを思いながらラストの家族写真を見ていました。

このハッピーエンドだけれどもどこかせつない物語。
今月のチケットがあと2回分あるのですが、どうぞ無事に見られますように。
しあわせな千秋楽を迎えられますようにと心から祈っています。

| | コメント (0)

2020/12/02

この新しい星の世界で。

11月25日に梅田芸術劇場メインホールにて宝塚歌劇星組公演「エル・アルコン-鷹-」「Ray-星の光線-」を見てきました。

「Ray-星の光線-」は大劇場公演を見たときも、奇をてらうことのないストレートな演出で、シンプルにこれでもかの素材勝負のショーだなと思いましたが、全国ツアーバージョンはさらにその色合いが濃くなっていました。
舞台装置はいたってシンプル。笑いも取りに来ない。ひたすらにソング&ダンスという構成でありながら、一時も飽きさせることなく楽しませてくれる琴ちゃん(礼真琴さん)は最高にエンターテイナーだなぁと思いました。
中村一徳先生のショーは選曲がとても好きなのですが、もとめられているパフォーマンスは宝塚歌劇では限界があるとずっと思っていました。それゆえタカラヅカナイズされたパフォーマンスこそを愉しむものだと思っていた私の先入観を、琴ちゃんは気持ちの良いほど裏切ってくれました。

オープニングにロックな主題歌でアジテートしていくのは中村一徳先生のショーの定番で、「Ray」もたがわずそのパターンなのですが、梅芸で見た「Ray」は、オープニングからえっこれは?と思わず前のめりにさせられる衝撃的ななにかがありました。
バックビートのノリ方がちがうのでしょうか。シンプルなソング&ダンスにはちがいないのですが、琴ちゃんをはじめとするメンバーが、ロックはロックに、ジャズはジャズとして歌って聞かせてくれるので、何曲歌い継いでも単調に感じることなく愉しむことができました。さらにこのカウントでこんなに踊る???ともはやあっけにとられる身体能力とリズム感を惜しげもなく披露してくれて、あっという間の55分でした。(体感としては15分くらい)琴ちゃんについていく星組メンバーも凄いと思いました。

それから星組会(ファンクラブ)がリードする手拍子がどのナンバーにも合わせてきて、一緒に手拍子することで私自身も舞台上の人たちが奏でるパフォーマンスに参加しているような気持ちになれてとても楽しかったことも記しておきたいと思います。
ホール中を満たす興奮。感染予防対策のため歓声1つある訳でもないのに、手拍子と拍手だけで、ここまで舞台と客席は一体となれるのだなと思いました。
それも見る者の心を動かすパフォーマンスがあればこそ。
琴ちゃん率いる星組の可能性の大きさを感じ、明るい未来を確信しました。

続きを読む "この新しい星の世界で。"

| | コメント (0)

2020/11/27

鷹は海をめざし海に生き海へ還る。

11月25日に梅田芸術劇場メインホールにて宝塚歌劇星組公演「エル・アルコン-鷹-」「Ray―星の光線-」を見てきました。

「エル・アルコン-鷹-」は、最初はスペクタクルな礼真琴さんの歌声に酔いしれ、舞空瞳さんの脅威のドレス姿と(なんでしょうあの身頃の小ささ!そして腰から下のスカートのバランス♡)どういう体幹があったらそのポーズを維持できるの?という美しい身のこなしにほわあぁぁぁん♡となり、ティリアンとギルダとしての2人のセリフの掛け合いもなかなか小気味よくて、これは期待♡と思って見ていたのですが、作品自体の描かれ方が途中からどうしても受け付なくなってしまいました。
大昔に原作ファンだったあの頃の大切なものを踏みにじられてしまったような気持ちになってしまって。
第二部のショー「Ray」が最高に素晴らしくてこれだけでチケット代以上の価値があり興奮して帰宅したのですが。
ショーの感想はのちほど書くつもりですが、ここではどうしても書かずにいられない大昔のファンの繰り言を。

このお芝居の原作が描かれた1970年代はいまよりずっと女性蔑視な考え方が生きていて、「はいからさんが通る」の青江冬星ではないけれど「女は泣く」「女はサボる」、即物的、数字が苦手、感情的、大局でものを見ることができない等々と文筆家の人たちでも普通に書ていた時代でした。人間的に負とされる部分を女性という属性の特徴だとされて、それを有していることを「女らしい」と見做されていた時代でした。『婦に長舌あるは是れ乱の階なり』—— 慎みのある女性が尊ばれるのは自分が劣っているという立場をわきまえて決して男性が為そうとすることの邪魔をしないから。
まだまだそんな空気が蔓延る時代に、新しい時代の風を感じて生きていた当時の少女たちの中には「女らしい」と言われることに蔑みの目で見られてるような居心地の悪さを感じる者も少なくなかったと思います。
そういう少女たちが既存の文学の中にはない生き方を少女漫画の中に探り求め支持したのが、女性に生まれて軍人として生きる主人公の物語や、少年同士の友愛を描いた物語、動乱の時代をたくましく生きる女性のロマンスなどではなかったかなと思います。現実にはとてもいないような女性に献身的な男性が登場するのもポイント。

そんな時代に、女性に都合が悪い男性たちを描いて人気を博したのが「エル・アルコン-鷹-」等の作者である青池保子先生でした。
その青池作品には「女性嫌悪」が根底にあるとずっと思っていましたが、それは当時の「女性らしさ」という概念に対する嫌悪ではなかったかといまにしてみると思うのです。大事な局面で泣き喚き、任務の邪魔をし、即物的で色恋にしか興味がないとされる存在=「女性」への。

齋藤吉正先生の作演出による宝塚歌劇の「エル・アルコン」は、その原作にある女性嫌悪の部分をさらに別な方向に煮詰めてしまったようないたたまれなさがありました。
それは本来の原作の方向とは真逆ではないかと思わずにいられませんでした。

また原作のティリアンは、野望のためには手段を択ばない敵役ではあれど、部下を信頼し傲慢な上司には激しく憤り(そのプンスカ具合が好きでした)、時には水夫と一緒になって肉体労働をして窮地を脱したり、幾度も死にかけるピンチにも遭う。部下に「死ぬなよ」と声を掛けることもあれば、彼なりに人を悼みもする(自分が殺めた者だったりするけれど)。
そんなエピソードのなかに、それでも野望を捨てない理由や冷酷な所業をやってのける理由が見出せる、感情的で人間らしい面もふんだんにある、激しさと冷たさのギャップが魅力的な人物でした。ですが舞台のティリアンは立派な衣装を着込んでしじゅう抑えた声で話す人物で、彼を魅力的に見せるエピソードを芝居で見せる場面はなく、かわりに寒々しいモノローグで誤魔化されていて、キャラクターとしてちっとも魅力的に思えませんでした。

いまでは「エル・アルコン」がシリーズの代表作であり代名詞ですが、世に出たのは、麗しの女装海賊キャプテン・レッド(ルミナス・レッド・ベネディクト)が主人公の「七つの海七つの空」が先でした。そしてそのレッドは、当時はまさに“言わずと知れた”レッド・ツェッペリンのヴォーカル、ロバート・プラントがモデルでした。
彼の部下にはツェッペリンのメンバー、ジョン・ボーナム、ジミー・ペイジ、ジョン・ポール・ジョーンズがモデルになっているキャラクターがいて、その関係性を面白がって読んでいた記憶があります。
あの頃の英米のロック・グループへの少女たちの熱狂は、その音楽性以外にも、もしかしてそれ以上に、「男性だけのグループの関係性」というものに憧れと夢を募らせた結果なのではないかと思います。問答無用に自分の属性が劣った一方とされてしまう男女の関係よりも、男性だけの盟友関係に夢を見たのではと。
そんな頭の中だけ、仲間内だけの空想が漫画という二次元の中で具現化されていることをどうして喜ばないでいられましょう。愉しまないでどうしましょう。そしてさらに性別を超えた装いや性別にこだわらないセクシュアリティのキャラクターたちが支持された理由も、おなじところに根があるのではないかと思います。その表現もいまとなってはアウトかもしれませんが。
この傾向はキャプテン・レッドの末裔とされるキャラクターたちが活躍する別作品「エロイカより愛をこめて」の初期により強いかな。
「七つの海七つの空」のほうは、イングランドの海賊たちがチームとなり、もうひとりの主役ティリアンが率いるスペイン無敵艦隊を敗るアルマダの海戦をクライマックスとする物語を紡いでいきます。

この「七つの海七つの空」には当時の少女漫画らしくちゃんとヒロインが登場します。それが貴族の娘ジュリエット、舞台では桜庭舞ちゃんが演じていましたが、私はこのジュリエットの登場でさ———っと醒めてしまいました。桜庭舞ちゃんは演出どおりにカンペキに演じただけだと思うのですが。
原作のジュリエットはあんな頭が弱そうな話し方をする女の子ではないし「お嫁さん」に憧れる子でもありません。あんなふうにハートの照明をあびて笑い者にされるようなキャラクターでもありません。
結婚よりも自由と夢と海賊に憧れる17歳。意に沿わない人の花嫁になるところを海賊に攫われて、さらにレッドたちに救われてみずから海賊見習いになる女の子。原作漫画を読んでいた頃は、レッドと仲間たち、ティリアンとニコラスがいれば満足で、正直ジュリエットは邪魔に思っていました。バンドの中の紅一点ってかんじで居方が難しい立ち位置だけど、彼女なりにレッドたちの役に立とうと懸命に生きて、ティリアンに一杯食わせたりもしてる。レッドに淡い恋心を抱きながらも、それよりも仲間として役割を果たすことで彼らの中に自分の居場所を作ろうとする子。いまになって考えると彼女の気持ちがよくわかる気がします。だからこそ、宝塚歌劇であんな描きかたをしてほしくなかったなと思うのです。
シグリットもペネロープもあの時代を女性として懸命に生きているキャラクターだと思うのだけど、舞台での描かれ方にはまるで愛を感じられませんでした。むしろ「女の浅知恵」とでも言いたげな描かれ方でした。
原作では、愛の言葉を囁きながら自分の腕の中で刺殺したペネロープの最期にティリアンはくちづけをしていたし、その遺体の処理を「できるだけきれいにしてやれ」と命令したり、けっして心のない人間というわけではなかったのに。
ただいつも彼は死と隣り合わせの運命に挑戦し続けていたから、他人にも死と隣り合わせの人生をその手で与えてしまう。だからといって人を人とも思わない人間では決してないと私は思います。

さらに最もショックだったのが、ギルダの描かれ方でした。
原作のギルダは、まさに「女にはできない」とされていたものをことごとくやってのけるキャラでした。身体中にある創傷、それまでの少女漫画にありがちだったリカちゃん体型ではなく、長身面長で首筋もしっかりとしたバービー体型、スカートを翻して剣を揮う女海賊。誰にも屈することなく、ティリアンとも互角に戦い、敗れ、すべてを失ってもなお、ティリアンの命を狙い続けた誇り高き女性。ティリアンは彼女の最期に敵将として心からの敬意を払っていたのに、舞台での詰まるところ女でしかないような描かれ方がとてもショックでした。
そしてとってつけたような原作にはない安っぽい子ども時代のエピソード。あんな蛇足を足すくらいなら、その尺をつかって原作のエピソードを描いてほしかったと思います。原作ものを手掛ける以上は逃げずにちゃんと向き合ってほしいと思います。

そしてキャプテン・レッドも幼く作り過ぎている気がしました。
幼い頃から義父に虐待を受け、その愛人たちに囲まれて育ち、みずからの境遇を自分の力で切り拓くために野望を胸に士官学校から海軍に入隊し権力に近づく道を選んだティリアンと、豪商の息子として両親に愛されオックスフォードの法科で学び、父親が反逆罪で処刑されてすべてを失うも、心に復讐を秘めて仲間と海賊として生きるキャプテン・レッド。
育った環境はちがえど、ともにアルマダの海戦時で20代半ば。
レッドもいつまでも世間知らずの若者ではないだろうし、1年のあいだに人間として逞しくなったレッドがティリアンと対峙するからこそ、ティリアンもより大きく見え、その生き方に説得力がでるのでは。
初演のキャストがどうしても年齢差があるように見えたのかもしれないけれど、初演が必ずしもベストではないのだから、いまのキャストといまの感覚で作品に向き合ってほしいなと思いました。

原作はどのキャラクターも心をもった人間として描かれていました。だからこそ読みごたえがあり私は(おそらく多くの人が)夢中になったのです。
冷酷といわれたティリアンにも心があり、なぜそうするのかという理由を見出すこともでき、心酔することができました。
舞台ではただただ非道な行いを重ねるだけになっていたのが残念でなりませんでした。

| | コメント (0)

2020/11/18

あの日の12月。

11月12日と13日に宝塚大劇場にて、宙組公演「アナスタシア」を見てきました。

アーニャ役の星風まどかちゃん、知ってはいたけれどほんとうに素晴らしいパフォーマーだなぁ。
開幕1週間にしてこの安定感。声の張り、伸び、コントロール。気持ちの良い歌声でした。

リトルアナスタシア役の天彩峰里ちゃんの愛らしいこと! ほんとうにそこにちいさなグランドプリンセスが存在していました。
祖母マリア皇太后(寿つかささん)に「私のいちばんのお気に入り」とハグされ、父ロシア皇帝ニコライⅡ世(瑠風輝さん)からも「今宵のさいしょのダンスの相手」としてエスコートされるなど大切に愛情を注がれて、尊重されて育ち培われた自尊心。それがのちの彼女につながっているなぁと思いました。

アナスタシアの長姉大公女オリガ役の愛海ひかるさん、娘役転向後のはじめての役でしたが笑顔輝く美人さんでドレスもよく似合って違和感なし(笑)。実咲凛音さんに面影が似ている気がしました。
次姉大公女タチアナ役の水音志保さん、宙組にこんな素敵な娘役さんがいたのか~♡ ほかの場面でもモブの中に素敵な娘役さんがいるな~と思うと彼女でした。大公女の豪華なドレス姿もとてもお似合いでした。これからどんどん注目したいです。

アナスタシアのすぐ上の姉大公女マリア役は、宙組にようこその潤花ちゃん。とても華があり目を惹きました。クラシカルな雰囲気もありお姫様役がぴったり。バレエの場面ではオデットとしてジークフリート役の亜音有星さんとの並びが夢夢しかったです。
白い生地に金の錦繍のドレスを纏ったこの三姉妹がとてもとても眼福で、私は目を離すことができませんでした。

アナスタシアの弟、幼い皇太子アレクセイ役は遥羽ららちゃん。アナスタシアの夢の中で語りかける場面はその鈴の音のような声と不思議な言葉が印象的でした。
そのアレクセイを平然とお姫様抱っこ?していたロマノフ家の鷹翔千空さん、涼しいお顏を少しも崩さずすごいなぁと思いました。
ニコライⅡ世役の瑠風輝さんも、リトルアナスタシアを(こちらはまさに)お姫様抱っこしていて、なんだかもうタカラヅカなんだけども、さらにその先の超タカラヅカといいますか、夢心地でした。

ロマノフ家のプリンスとして登場する4人の美麗な白軍服の男役さんは、秋音光さん、紫藤りゅうさん、留依蒔世さんそして鷹翔千空さん。大公女姉妹をエスコートする立ち姿も凛々しく優しく一滴の毒もなくこれはまさしくタカラヅカじゃなければどこで見るのかと。
このなかのいちばん若い人がドミトリー大公かな?と思ったけれど、彼は革命の時にはロシアを追放されていたのだっけ。
ではこのロマノフたちは、処刑された別の若き大公や公たちかなぁ。
まるで砂糖菓子のようにロマンチックなロマノフたちに陶然となりながら、その煌めきと幸福感がいっそうせつなくなりました。

彼らに富と幸福が集約されるシステムの陰で、お腹も心も満たされず凍えて走り回っていた少年がいたのよね。ペテルブルクの街で。(と心の中でもうひとりの私が囁きました)

続きを読む "あの日の12月。"

| | コメント (0)

2020/08/20

かんたんに言ってくれる。

8月18日にシアタードラマシティにて宝塚歌劇宙組公演「壮麗帝」千秋楽の2公演を見てきました。

プロローグから歌舞音曲に目と耳が喜ぶ公演でした。
数か月宝塚だけではなくすべての観劇から遠ざからずを得なかった身にはとても沁みました。
この1か月で見た「はいからさんが通る」「Flying SAPA」と比べても宝塚歌劇らしいお約束がふんだんにある作品で「私いま宝塚を見てる~」と実感しました。

初見は「宝塚」を見たことにただただ満足な私でしたが、脚本的にはエピソードの羅列というかロジックがないというか、こどもの話をうんうん、それで?と聴きながら、あ、ヤマもオチもナシか(笑)となるようなそんな感覚でした。
同じ回を見た方が終演後の感想で「年代記」とおっしゃっていたのですがまさにそれだなと思いました。
魅力ある役者たちが演じて見せる「歴史秘話ヒストリア」「ぜいたくな年代記」ですね。

皇帝が即位するとき継承権をもつ他の皇子を殺めるのがオスマンの慣習と聞かされたヒロインのヒュッレム(遥羽ららちゃん)が、慣習は改めればよいと、家族が仲良く暮らすのは素敵なことじゃありませんかと言って、心優しき皇帝スレイマン(桜木みなとさん)の心を動かしていました。
スレイマンも仲の良かった異母兄が自分のせいで殺されたから彼女の言葉が響くのだろうなぁ。

さあこれからどうするのかお手並み拝見!と思って見ていたんだけど。

次々に子どもをこさえるだけで、もしかして何もしていない・・・??
「可愛いなお前は」とか言われている場合じゃないですよ。

皇帝の側室は1人しか皇子を生まないのが慣習、何人も皇子を産めば同母の兄弟同士で殺し合うことになる、それでもいいのかと真意を母后ハフサ(凛城きらさん)に問いただされても、兄弟が仲良く助け合って国を治めればよいという以上のことは言わないヒュッレム、確実に我が子に迫っている危機について考えているのはそれだけ? と思いました。
とうぜんながら母后にわかってもらえなくて、ひとり「伝えたいことが言葉にできない」的なことを歌うけれど、すでにこの世に生まれた息子たちをどう守っていこうとしているのか、なにを訴え理解してもらいたいのか、それをつたえることを母として命懸けでやらないでどうするの?! 
(ていうかですよ、そのヒロインの思いなり覚悟なりを言葉に尽くして観客に見せるのが脚本家の仕事じゃないのかな~? 「言葉にできない」でわかってもらおうっていうのは観客に甘えすぎじゃない??とも思いました)

慣例を破りヒュッレムひとりを寵愛し次々に子を産ませているスレイマン。
子どもを多く作ればそれだけ殺される子どもが増える。そうならないための手立てはなにも講じていない。
子どもたちは成長し、寵妃ヒュッレムの一番目の息子の第二皇子が次期皇帝の有力候補と目されるようになると、とうぜん第一皇子の母マヒデブラン(秋音光さん)は危機感を募らせヒュッレムを毒殺しようとして露見。
スレイマンはマヒデブランと第一皇子を地方へ封じるも、それがゆくゆくの火種となって祭り上げられ反乱を起こした第一皇子を処刑するはめに陥る。
すべては自分が蒔いた種だ。寵妃の命が狙われるのも、自分が息子を処刑することになるのも。
そうならないためにある慣習なのに、それを破りながらなにも対処していないんだもの。

馴れ初めし頃、国境付近の小競り合いで故郷が被害を受け奴隷に売られたヒュッレムに同情し自分の責任だと言い、平和を望む彼女の言葉に肯きながら「国境のない世界をつくるために戦う」と言ったスレイマン。
その「戦う」は比喩でもなんでもなく、戦争をして領土を広げていくってことですよね。ヒュッレムの身にかつて起きたことを、さらにどんどん起こしていくって彼女にむかって宣言しているのですよね。
(ニコニコ聴いているヒュッレムもどうなの・・・汗)

対話になっていないのですよね。対話しているようで噛み合っていない。
たがいに耳の遠い祖母と大叔母の会話を聞いているような感覚に陥りました。(相槌を打ちながらそれぞれちがうことを話していたなぁ)

ともに育ち信頼していた大宰相イブラヒム(和希そらさん)があんなにかんたんに敵の奸計に堕ちるのもどうしても解せない。
なにかに囚われすぎて目が曇っていたの? そこを描いて見せてほしかったなぁ。

なんというか元ネタはドラマチックだから尺はあるけど、物語としては伝記よりもさらに浅くて軽い、抗いもせずなるようになった年代記だったなという感想です。

と言いながら、タカラジェンヌのパフォーマンスをおおいに愉しみ、プロローグのベリーダンス衣装のららちゃんに溶かされ、ハティージェの天彩峰里ちゃん可愛い~、こってぃ(鷹翔千空さん)悪~い、水音志保さん素敵、七生(眞希)さんほくろ~♡ 群舞のカズキソラッ! ハフサ様のお化粧で燕尾の凛城さん♡となり、ずんちゃん(桜木みなとさん)の挨拶に感動し満足して劇場を後にした私でした。

こうして文句も言いつつ心ときめかせつつ宝塚が見られるってことが、ほんとうにしあわせなことだと感じています。

| | コメント (0)

2020/08/13

どんな世界をつくるか競争ね、わたしたち。

究極の融和、ユートピア思想、それを渇望するわけ。
ちがいが争いを、分断を、不幸を招くと考えたから。
神の恵みが当たり前の人びとと明日には命がないかもしれない憐れなみなし子。

8月4日と5日、梅田芸術劇場メインホールにて宝塚歌劇宙組公演「FLYING SAPA -フライング サパ-」を見てきました。
以来ずっと心のうちでブコビッチ(汝鳥伶さん/穂稀せりさん)と対話をしているような気がします。
彼がめざしたもの。彼がわかってほしかったことを知りたくて。

ブコビッチと対話したオバク(真風涼帆さん)は宇宙へと冒険の旅に出ることを決意。
崩壊した共同体のシステムの再構築に関心を向ける人ではなく、未知をもとめて刺激的で外的リスクの多い人生をその足で歩いていきたい人なんだな。
たしかにそういう人だったと思います。SAPAの違法ホテルに目的地へ向かうでもなくぐずぐず停留していた人たちを一蹴したり、「自己責任」を口にして人助けは不本意そうだったし。レジスタンスとして活動していたのも誰かのため社会のためではなくブコビッチへの憎しみのため、それだけだったのじゃないかな。

その彼の無謀ともいえる旅にポルンカの人口の半分(15,000人?)の人びとが同行するというのがどうにも解せないのです。
いつの間にそれほどの人びとを束ねる艦長と認められる人になったのかな。
その15,000人とはどんな人たちなんだろう。タフで健康で夢のある人たちかしら。

私だったらオバクにはついていかないなぁと思います。福祉とか医療とかに感心がなさそうなリーダーだし。
ピカピカのキレイゴトと批判されても「誰も見捨てない」と言ったノア(芹香斗亜さん)とポルンカに残りたいなぁ。
ノアを批判したイエレナ(夢白あやさん)は「サーシャ(オバク)だったら」と言いかけたけど、オバクだったら「自分の身は自分で守れ」と言ったはずと言いたかったのかな。

そんなイエレナもオバクたちとは旅立たずポルンカに残るという。子どもが生まれるからと。それは口実かもしれないけれど、それが口実になるくらいには、子連れでは困難な旅ということなのだろうな。
誰でもが行ける旅じゃない。

そんな旅に行きたい人びと、行くことができる人びと・・・夢と自信に満ちた人びとを統率するオバクとともに旅立つミレナ(星風まどかちゃん)。
微笑ましいクーデターを起こしてポルンカに残り黴臭い民主主義とやらをやりなおすと宣言するイエレナ。ノアとともに。
それぞれに苦しみ自分を苛み抜いた2人がふたたび友情をわかち抱擁する場面が大好きでした。
「どんな世界をつくるか競争ね、私たち」と。
壮絶な15年間を過ごしてきた2人。愛についてはこれからたくさん学んでいくのだろうな。
そして憐れなみなし子ブコビッチと内なる対話を登場人物のだれかひとりでもいいのでしていてほしいな。ときどきは。

| | コメント (0)

2020/07/22

風に乗せて伝えよう変わらぬ気持ちを。

7月20日に宝塚大劇場にて花組公演「はいからさんが通る」を見てきました。

ようやく再開された宝塚公演の最初の演目、そして柚香光さんの大劇場トップお披露目公演。
私にとっては2月の星組公演以来の観劇・・と幾重にも待ちに待ったこの日でした。

れいちゃん(柚香光さん)の少尉のなんと素敵なこと。
指の先まで夢と薔薇と甘やかなものが詰まっているとしか思えない。
柚香光はタカラヅカでできています。

華ちゃん(華優希さん)演じる紅緒の愛らしさに頬が緩みました。
けなげさとその魂の強さに涙しました。
女子のおかれた立場の理不尽さに憤るもなにをどこからどうするべきかもわからなくて。
男の真似事をしてみたり八つ当たりをしてみたり強くならねばと気負ってみたり。
紅緒の忙しい気持ちにかつての少女は共感し愛おしく思いました。

そんな紅緒のとばっちりばかり受けている少尉なのだけど、彼が彼女を愛しいと思う気持ちが溢れんばかりにつたわり、そんな少尉もまた愛おしくてたまりませんでした。

異国の血を引く自分に向けられる周囲のまなざし、親に捨てられたと思う寂しさ、わけもなく自分がわるいのだと思うこども。
そんな自分を愛してくれる人たちに報いたいという思いが彼の生き方そのものになっているのも理解できてしまう。贖罪のために生きてしまう人・・。

そんな少尉を心の底から笑わせたのが紅緒なんだなぁと。
「あなたのせいよ!」と真っ向から食って掛かってくる女の子。それ自体は言いがかりでしかないけれど、はっきりと自分を主張する彼女が眩しく輝いて見えたのだろうなぁ。彼には絶対にもち得ないマインドをもっている女の子が。
そんな想像をめぐらせることができるれいちゃんの芝居がとても好きでした。
紅緒のことには少尉もほんの少しだけどエゴを出せるのだなぁと思えてうれしかったりもしました。

原作を読んでいた頃はこんなに少尉の気持ちを考えたことがなかったなぁと思ったり。
そもそもその頃のご贔屓は蘭丸と冬星さん、そして環さんだったなぁと思い出しました(笑)。
舞台で見る少尉と紅緒は、漫画で見ていた時よりもけなげさとせつなさが増していた印象でした。私が彼らよりうんと年上になったせいでしょうか。つい泣かされてしまうのは。
時代背景もなんだかリアルにかんじられました。ぜったいにあり得ない少女漫画の設定なのに・・。でもそこにリアルが見えたなぁ。

見ていると愛おしさが次から次へと溢れてきて、2人のお芝居に引き込まれていきました。

続きを読む "風に乗せて伝えよう変わらぬ気持ちを。"

| | コメント (0)

2020/02/25

方々、さらばでござる。

2月12日と16日、東京宝塚劇場にて宙組公演「El Japón(エル ハポン) -イスパニアのサムライ-」と「アクアヴィーテ!!~生命の水~ 」を見てきました。
2月16日は千秋楽でした。東京宝塚劇場で千秋楽を観劇するのは、凰稀かなめさんの退団公演以来です。(近年はありがいたいことに映画館のライブビューイングで見させてもらっていますが・・時代は移り変わりゆきますです)

同公演は、宝塚大劇場で12月上旬に観劇して以来2か月ぶりの観劇でした。
待ち遠しくて、1月の終わりに観劇まであと何日かなぁと考えて、まだ半月以上も先なことに愕然としたりもしていました。
この公演は上演期間が1か月半と通常より長かったのでした(涙)。(「白夜の誓い」の時も1か月半だったので、東京の2月公演はそういう傾向なのでしょうか)

ということで待ちに待っての観劇の感想です。

「エルハポン」はストーリーの流れがすごくよくなっていると感じました。出演者全員の目指すところが1つになっていると。
そのうえで、それぞれの役の奥行きも感じられてとても面白く観劇しました。

いちばん変わった印象をうけたのは、星風まどかちゃん演じるカタリナかな。心の動きがすごく伝わってきました。
酒場でのシーン。いつもより声のトーンがちがうカタリナ。無理に明るくふるまおうとしているよう。
治道の帰国が近いことを知り1人ですべてを背負う覚悟でいるのかなぁ。でも寂しさは隠せないでいる。昔の幸せな頃を思い出したり。明るく自分に言い聞かせてみたり。揺れ動いている気持ちがすごく伝わってきました。

いつもは気丈なカタリナの弱さに触れた治道の戸惑い、心に湧き出す愛しさ、その思いゆえに彼女が笑みをとりもどすように柄でもないダンスを自らいざない(でもいつのまにかあっさり会得していた・・さすが剣士)、というそんなエモーショナルな流れが手に取るように見えて。
いつのまにか言葉はなくとも交わす目線とダンスとで心を通わすようになっていた治道とカタリナに涙しました。
そこから治道と訣しあらためて覚悟を決めたカタリナが歌うアリアのなんとも心に沁みること・・。2人の芝居がここまで来たのだなぁ。
真風さんは心を打つ芝居を自然にする人だなぁ。そして千秋楽にはずれなしの人だなぁと思います。
みちすじがちゃんと見えている人なんだろうなぁと思います。

主演の2人の芝居の深まり。そして2人とはちがうところで繰り広げられる人物たちの生き様、咆哮もさらに面白くなっていました。

続きを読む "方々、さらばでござる。"

| | コメント (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

宝塚 凰稀かなめがいた宙組 宝塚 大和悠河がいた宙組 \ 宙 組 !!/ ♕ 花組 ♕ 月組 ♕ 雪組 ♕ 星組 ♖ 観劇 ♖ 宝塚 ♖ コンサート ♖ ストプレ ♖ ディナーショー ♖ ミュージカル ♖ 宝塚大劇場 ♖ 東京宝塚劇場 ♖ 歌舞伎 ♖ 狂言/能楽 ♖TBS赤坂ACTシアター ♖『エリザベート』 ♖『ベルサイユのばら』 ♖キャナルシティ劇場 ♖シアターBRAVA! ♖シアタークリエ ♖シアタードラマシティ ♖三越劇場 ♖中日劇場 ♖九州厚生年金会館 ♖佐賀市文化会館 ♖北九州ソレイユホール ♖北九州芸術劇場大ホール ♖博多座 ♖国際フォーラムCホール ♖大野城まどかぴあ大ホール ♖大阪城ホール ♖天王洲銀河劇場 ♖宝塚バウホール ♖宝塚観劇-全国ツアー ♖宝山ホール ♖帝国劇場 ♖広島文化学園HBGホール ♖御園座 ♖愛知県芸術劇場大ホール ♖新国立劇場中劇場 ♖日本青年館ホール ♖梅田芸術劇場メインホール ♖歌舞伎座 ♖渋谷区文化総合センター大和田さくらホール ♖熊本市民会館 ♖福岡サンパレス ♖福岡市民会館大ホール ♖青山円形劇場 ♖青山劇場 ♗ 宙組 白夜の誓い/Phoenix宝塚 ♗ 宙組 ベルサイユのばら-オスカル編- ♗ 宙組 ロバート・キャパ/シトラスの風 ♗ 宙組 風と共に去りぬ ♗ 宙組 うたかたの恋/Amour de 99 ♗ 宙組 モンテクリスト伯/Amour de 99 ♗ 宙組 銀河英雄伝説@TAKARAZUKA ♗ 雪組 ベルサイユのばら-フェルゼン編-特出 ♗宝塚宝石箱 ♘ 京極夏彦の本 ♘ 波津彬子の本 ♘ TONOの本 ♘ 本の話 おでかけ。 凰稀かなめ - ouki kaname 大和悠河- yamato yuga 大和悠河-宝塚時代 宝塚観劇iii- 薔薇に降る雨 + review 宝塚観劇iii- 外伝ベルばら-アンドレ編- + show(中日劇場) 宝塚観劇iii- Paradise Prince + review 宝塚観劇iii- 雨に唄えば(宙組) 宝塚観劇iii- 黎明の風 + review 宝塚観劇iii- バレンシアの熱い花 + show 宝塚観劇iii-A/L 宝塚観劇ii- 不滅の恋人たちへ 宝塚観劇ii-THE LAST PARTY(宙組) 宝塚観劇i- 維新回天・竜馬伝!+ review 宝塚観劇i- コパカバーナ(博多座) 宝塚観劇i- NEVER SAY GOODBYE 宝塚観劇i- 炎にくちづけを+ show 宝塚観劇i-ホテル ステラマリス+review 映画・TVドラマ 音楽