カテゴリー「♖ 宝塚」の479件の記事

2026/01/15

「ボー・ブランメル~美しすぎた男~」

宝塚歌劇雪組大劇場公演「ボー・ブランメル~美しすぎた男~」「Prayer~祈り~」 12月2日 13:00

友の会で当選した席は旧料金最後のSS席でした。

「ボー・ブランメル」の大雑把な印象は、『もったいぶった見せかけの、
実体は限りなく俗物の物語』でした。
ボー・ブランメルという人物もそうだし、物語の運び方も。
生田作品にしばしば感じるモヤモヤの正体はこれかなと思いました。

冒頭の異様な舞台化粧と衣装のコロスと少年時代のブランメルと父の場面は、彼の人生の基盤となった王侯貴族社会へのルサンチマンの具現かなと思いましたが、そこから物語が膨らむわけではありませんでした。
昔の恋人ハリエットとよりを戻す場面を見ながら、王侯貴族たちの価値観を転倒させるような彼の美学も恋愛そのものには発揮されないのだなと思いました。
ボー・ブランメル自身、別に高尚なことを言っているわけではなくて、スノッブたちの価値観の中で頂点に立った人なので、感じた印象でまちがいないのかもしれません。
またも生田先生の思わせぶりにいらぬ期待を抱いてしまった自分自身に嫌気がさすといいますか、いい加減で惑わされるのをやめたいです涙。

劇中でブランメルが、自分の顔じゃなくて服装に目が留まったなら正解だ的なことを言っていましたが、朝美絢氏ですよ? 顔に目がいかないわけがないじゃないのと思ってしまいました。
瀬央ゆりあさん演じるプリンス・オブ・ウェールズが人が好い印象で、彼を失望させるのは胸が痛いなぁと思ったり。
演じる人への先入観が障りとなってストーリーに没入できていなかったのかもしれません。

夢白あやさん演じるヒロインのハリエットが鏡の前に立つ姿が息をのむほど美しかったのが記憶に残っています。
デボンシャー公爵夫人役の華純沙耶さんの所作やセリフ回し表情すべてが素敵で目が離せませんでした。(デボンシャー公爵夫人が皇太子の愛人だったというのは生田先生の創作ですよね?)

「Prayer」は大好きなタイプのショーでした。
冒頭からどの場面も好きでしたが、アフリカの場面の縣千さん、そして華純沙耶の身体表現に目が釘付けになりました。
日本の場面の衣装も素敵だなぁと印象に残っています。
そして圧巻だったのはやはり「オギヨンチャ」の掛け声の船の場です。雪組の皆さんの活き活きとした表情に活力をもらったような気がします。ピンクの衣装の天女役の妃華ゆきのさんにも笑顔にしていただきました(見ているだけで多幸感がありました笑)

東京公演は見に行けないのですが千秋楽ライブビューイングを見ようと思っています。
「ボー・ブランメル」をフラットな気持ちで見て(先入観を外して)、ショー「Prayer」をもう一度堪能したいです。
そして宙組配属のときから好きだった夢白あやさんのサヨナラショーを目に焼き付けたいと思います。

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2025/12/11

俺のために

11月18日と23日にシアター・ドラマシティにて宝塚歌劇花組公演「DEAN」を見てきました。
主演の極美慎さんにとっては花組生として初の出演作品であり、初の東上主演作品でもありました。23日はドラマシティ公演の千秋楽でした。

感想を書こうとするも、自分の中で折り合いがつかず手が止まってしまうということを繰り返していました。
まず自分のなかのジェームズ・ディーンへの固定観念と目の前の舞台を擦り合わせることに苦戦しました。容姿も含めてあまりに映画のディーンの印象が強烈に残っていたことにいまさらながら気づきました。何十年も昔に抱いた印象がアップデートもされないまま自分の中に残っていたことに。

ジェームズ・ディーンの実像について考えてみたこともなく、若い頃は称賛の対象という世間の評価を疑いもなく受け入れていた私にとって、目の前の舞台で演じられるディーンという若者像をどう受け取るべきかで戸惑いました。
決して意外なわけではなくて、若い時の自分だったらさすがディーンだと思ったかもしれないけれど、いまの私には彼の有害性が目についてしまいそのことに戸惑ったのかなと思います。

自分を高く見積もり、脆弱な自尊心を守るためには降板もバックレもする、端から信頼関係を築けない。異性に好まれる自覚はあるのであの手この手で自分のペースに巻き込み思い通りにしようとするも、相手に意思があると思っていないので自分に反する意思をつたえられると絶望する。
力の勾配の上にいるときはやりたい放題、下のときは悲愴な面持ちで抗う態度をとりながらも言いなりで、そこに付け込まれてしまう。
大丈夫? 容姿はとても良いけどでも・・。
そんな印象の1幕でした。
2幕でやっと人との信頼関係が築けてきたかなぁと思った矢先のエンド。
最後まで撮影中の野卑な態度を誇示はしても俳優として演技のプランニングなどの描写はなかったので生い立ちに苦悩がある青年が素材として巧く使われただけに思えました。(監督にトラウマを突かれて激高する姿が真に迫っていると映ったとして、それは映画として高評価であっても俳優の評価としては本人は満足できるものなのかな、などと)

「エデンの東」の移動遊園地の場面を再現するディーン役の極美慎さんとピア・アンジェリ役の美羽愛さんの主演ペアはとても宝塚的な夢夢しさでときめきました。こんごも見てみたいコンビでした。
2幕のニコラス・レイ(一之瀬航季さん)とのやりとりは他者と信頼関係を築きはじめたディーンが見えてほっとしました。
エリザベス・テイラー(三空凜花さん)と彼女の子育てやピアとのことについて話すディーンも好きでした。
18日に見た段階ではがんばっているなぁという印象だったベン役の希波らいとさんが千秋楽では頼もしく成長していて目を瞠りました。
クセのあるPR会社の社長役で、役作りに苦戦したのだろうなと思いますが、23日の千秋楽ではなんかいい感じにディーンとのきずなが見えるなぁと思いました。
長身同士の並びも映えて、思わず極美さんと希波さんで「銀河英雄伝説」のラインハルトとキルヒアイスを見てみたいなぁと思いました。

自動車事故の場面のあとのヴィラ・カプリの場面では、一瞬これは『ディーンを演じた俳優』が登場したのかと思いました。フィッツジェラルドを描いた「THE LAST PARTY」のように。
亡くなった人もディーンのもとから去っていった人も、彼の周りに一堂に会するまぼろしのパーティ。彼らに親しみを込めて話しかけるディーン。
これは誰が望んだ夢なのかな。
24歳で彼は急逝したけれどもっと長く生きていたらどんな俳優になっていたのだろうと思いました。
幼少期に受け取れなかったものを、大人になり与える側となった彼が心の中の寂しい子どもの彼に渡せていたらいいのになと思います。

ヴィラ・カプリの場面がおわるとすぐにはじまったフィナーレで、舞台に1人タキシードで佇むディーンが、テーブルの上のバラ1輪を手に取る場面がとても素敵でした。
これはジェームズ・ディーンが好きだったという「星の王子さま」のオマージュかな。(極美さんも「星の王子さま」が愛読書だとカーテンコールで挨拶されていました)
私にはあのバラは壊れやすかったディーンの自尊心ではなかったかと思えます。
そしてもう彼は大丈夫なんだ。あのフィナーレはそんな意味だったのではないかな。
花男の面目躍如たる(だと私が勝手に思っている)タキシードの男役群舞のセンターにいる極美さんが嬉しかったです。
そしていかにも花組の娘役と思わせる美羽愛さんとのデュエットダンスも夢のようでした。
本編は消化できないままではありましたがフィナーレで多幸感いっぱいになって劇場を後にした公演でした。

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2025/10/27

これでもわりと幸せなんで

9月30日と10月5日に宝塚大劇場にて宙組公演「PRINCE OF LEGEND」「BAYSIDE STAR」を見てきました。
(のろのろ感想を書いている間に10月21日の公演も見てきました)
宙組10代目トップスター桜木みなとさんの大劇場お披露目公演でした。

「PRINCE OF LEGEND」は、なんて贅沢なんだろうと思いました。
パフォーマーのスキルはもちろん、衣装や音楽や大道具小道具、照明etc.宝塚歌劇のリソースを湯水の如く使い、手加減せずに取り組んでいるから成立している作品だと思いました。このクオリティだからこそ面白く見られるのだと思います。

桜木さんが演じるのは財閥の御曹司の朱雀奏という役ですが、このキャラを受け容れられるのは桜木さんの演技力があってこそだと思います。
桜木さんが笑える愛されキャラに演じているからありえない設定に対しても心でツッコミを入れつつ楽しく見られましたが、ちょっと冷静になると果音(春乃さくらさん)は本当にこの人でいいのか?と(前日に見たばかりの「ダンサ・セレナータ」のイサアク的に)思いました。
ピュアすぎて資産もあっという間に溶かしそうだけど。なにより母親の洗脳から解けないままではこの先いろいろと齟齬が出そう。などと。
奏だけではないのですが、瞬発的な笑いと勢いで押し切っているなと思いました。

ヒロインの成瀬果音も、みじめに見えてしまったら見ていられないと思う役なのですが、春乃さんもその加減が巧いと思いました。
果音としての春乃さんの演技が好きだったから私は最後まで興味をもって投げ出さずに見ることができたのかもと思います。

主人公のライバル京極尊人役の水美舞斗さん、学園の理事長実相寺光彦役の愛すみれさん、ヒロインの隣人の美容師嵯峨沢ハル役の叶ゆうりさん。
3人とも組替え後初の宙組大劇場公演出演ですが、前から宙組にいたみたいに馴染んでいて意外でした。
個性的で強烈な役をさらにそれぞれが誇張して演じているので演者個人の背景を考える余地がなかったからかもしれません。全員そうなんですけど彼らも役に徹していて凄いです。

主にショーでなのですが、花組育ちの蘭寿とむさんや朝夏まなとさん、芹香斗亜さんも、組替え当初は「うわぁぁ花組だぁ」と思える眩しい『何か』にときめいた記憶があるのですが、今回の公演ではお芝居ショーともに、水美さんは自身の身体能力や明るい個性を活かした場面でセンターにいることが多くてそういう『何か』を感じている余地がなかった気がします。
ショーの黒燕尾でも同期の桜木さんへのまなざしなど、あたたかさに満ちた雰囲気が際立っていて、むしろ花育ちらしさは封印しているのかしらと思ったりもしました。

愛さんと叶さんはお芝居に雪組育ちらしい『何か』をかなり感じました。(それが何かと考察しだすと書ききれなくなるのでやめておきます)
ここ最近雪組を見る機会が少なかったので、愛さんも叶さんもこんなに頼もしい方たちなんだと新発見した気持ちになりました。これからの宙組になくてはならないメンバーになりそうだなと確信しました。
愛さんは宙組で見てもやはり大きいなという第一印象でした(娘役さんとして)。そのことも手伝ってか実相寺というフリーなキャラクターに説得力があるのが凄い。同期の桜木さん演じる奏の腰が引けるくらいの圧に笑いました。(桜木さんに代わって?実相寺の愛さんを拝みたい気持ちでした。ありがたやです)
叶さんはショーの黒燕尾のときの肘やフェイスラインのあたりに懐かしい宙組を感じました(作品でいうと「ネオ・ボヤージュ」あたり???)。
私は和央さん的な『何か』かなと思ったのですが、友人に話すと大和さんじゃない?と言われてそんな気もするような・・。これから徐々に解明していきたいと思います。

鷹翔千空さん演じる生徒会長綾小路葵は、作品中でも一二を争う奇人だと思いましたが、さすが鷹翔さん、というべきか?違和感なく奇人でした。(もしかして鷹翔さんが演じるから奇人なのかな???)
風変りな役だからこそ鷹翔さんの体幹の凄さを感じられたのかなと思いますし、歌ではシャウトまで聴けてよかったです。

癖が強い役が多くてそれぞれ衣装も学生役ということで制服姿が多い中(生徒会長なのに和装の綾小路さんはなんなんだろう??)、スーツ姿の英語教師役の風色日向さんは、その登場からしてピッカーンと光って目を惹きました。やはり男役のスーツは最高。
と思いきや、この人もまたやっぱり変な人でした。フィアンセの山野桜子さん(山吹ひばりさん)もあんなに素敵なのにやっぱりちょっとアレレ?

風変りな感覚の登場人物がひしめく中で、いちばん普通の学生っぽくていちばん普通の感覚なのは、亜音有星さん演じるヒロイン果音の後輩、天堂光輝かなと思いました。
とつぜん果音を挟んで京極兄弟の弟、京極竜(泉堂成さん)と3人で手をつないで『森のくまさん』を歌いだしたときはえっ?と思いましたけども。
じつをいうと作中でいちばん笑った大好きなシーンでした。
10月21日に観劇したときは亜音さんが体調不良で休演で、代役を聖吐亜さんが務めていました。
聖さんの光輝は弟感マシマシ。『未来を担う原石集団』感強めで5人のチームが粒ぞろいでまとまっている雰囲気がよかったのですが、『森のくまさん』は亜音さんの光輝がクセになっていたので、また亜音さんで見たいなぁと思っています。(千秋楽は復活されているみたいなのでたのしみです)

「PRINCE OF LEGEND」は登場人物の心理を考察するような作品ではありませんでしたが、宙組の未来を担うメンバーが活躍しているのを見ることができるのがよかったです。
京極竜役の泉堂成さん、奏の幼馴染で側近の久遠誠一郎役の大路りせさんの成長が見られたのが嬉しかったですし、おなじく奏の側近の鏑木元役の奈央麗斗さんがこんなにセリフを言っているのを見るのもはじめてな気がして新鮮で頼もしかったです。
新公学年の皆さんが頑張っている姿を見るのは心が弾みますし、新公を卒業した学年の皆さんはこんなにできる人ばかりなんだなぁと感じたのも嬉しかったです。

今回の大劇場公演から組替えしてきた娘役さん、二葉ゆゆさんは美容師ハルの常連客役として前髪をさわってセリフを言うだけでもうかわいいー♡と気分があがりましたし、生徒会の広報担当ミカエル初台役のきよら羽龍さんは噂に違わずなんでもできる娘役さんだなぁと感心しました。
小日向理々花(天彩峰里さん)率いる玄武高専王子研究部のガールズたちの場面が大好きで(なかでも湖々さくらさん演じる副部長の花巻こよみ氏にVIPをあげたいくらい目が離せませんでした)、チームプリンセスが名乗りをあげる場面も毎回わくわくして見ていました。
素敵な娘役さんたちも大渋滞してました。

男役も娘役も皆が輝く作品で楽しく見られて時にはこういう作品もいいなと思いました。
物申すことがあるとしたら、笑いや遊びが度を超すことがないように、ゾーニングしてこそ愉しめる遊びを白日の下に晒すような癖はほどほどでお願いしたいなぁということかな。宝塚歌劇が選ばれるのには、安心して守られるべき子どもたちと一緒に見ることができるからという理由もあると思いますので。
この作品をじゅうぶんに愉しんだら、次はこの贅沢なメンバーで人間ドラマも見てみたいなと思います。

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2025/10/12

手と手を取りあい未来へ

9月29日に梅田芸術劇場メインホールにて、宝塚歌劇星組全国ツアー公演「ダンサ・セレナータ」「Tiara Azul -Destino-II」を見てきました。
星組新トップスター暁千星さんと新トップ娘役の詩ちづるさんのトップお披露目プレ公演でした。

「ダンサ・セレナータ」は、正塚作品は別箱向きなのだなとあらためて実感する作品でした。好みの作品ではないと思っていたのですが、惹き込まれて見ていました。
初演よりも登場人物の関係性や時局などがわかりやすくなっていた気がします。

暁さん演じるイサアクと瑠風輝さん演じるホアキンの場面がとても印象的でした。
ずっと宙組が好きで見ているので、宙組育ちの男役さんが他組に混じった時に一際感じる独特の佇まいにときめくことが多々あるのですが、瑠風さんにもそれを大いに感じてときめきました。
具体的にどこが宙組育ちと感じるのか言い表すことは難しいのですが、長身に映える着こなしとか立ち姿はもちろん、目線の高さも特徴かなぁと思います。
瑠風さんと相対する暁さんも長身でしたので、いっそうその目線の高さが感じられたのかもしれません。
暁さんのイサアクに負けていない目をしたホアキンだったと思います。

正塚作品に登場する男性のなかにはモラハラやマンスプ臭が鼻につく人物がいて、イサアクもそのタイプだなぁと思ったのですが、暁さんが演じると嫌じゃないかもと思いました。
上からの命令口調が嫌だなと思ったりもするのですが、どこか隠せないやさしさが滲み出る人物だったので見ていて救われたのだと思います。
こういう態度になるのにはきっと訳があるにちがいないと思わせるものがありました。(じっさいにシビアな過去のある人だとわかって納得できました)
相手役のモニカを演じた詩ちづるさんがイサアクに対して委縮せずしっかり対峙していたのもよかったと思います。イサアクとモニカのバランス次第では見ていてつらかったかもしれません。
私にはとても良い塩梅の2人に感じられました。

植民地の独立運動に携わる者、秘密警察、それぞれに思惑を抱く軍人たち、革命前夜の混沌のなかで懸命に日常を生きるクラブダンサーたち。演者のひとりひとりがつくり出す時代性が物語に説得力を与えていたと思います。
その重苦しい雰囲気漂う中で張り詰めた気を抜いてくれるクラブの支配人フェルナンド(凛城きらさん)、イサアクの同僚ルイス(大希颯さん)、モニカの友人リタ(乙華菜乃さん)がいかにも正塚作品らしくて、またその役目をしっかりと担っていていいなぁと思いました。
イサアク役の暁さんとの絶妙なかけあいが面白いルイスを見ていて「ホテル・ステラマリス」のガイ・プレスコットを大希さんで見てみたいなぁなどと思いました。あの空気を読まないナチュラルボーンで風変りな人物を笑。
乙華さんはこのところ私の中で急上昇中の娘役さんなので活躍が嬉しかったです。正塚芝居独特の笑いの間をしっかりと表現されていてブラボー!と思いました。

星組で正塚作品を見るのは久しぶりでしたが、丁寧な芝居づくりと情熱、そしてダンサブルなショーシーンがとてもいまの星組に合っているなぁと思いました。

「Tiara Azul -Destino-II」は、大劇場で礼真琴さんと舞空瞳さんの主演コンビで上演された「Tiara Azul -Destino-」が大好きでしたので、新トップコンビ暁千星さんと詩ちづるさんでの続編がどうなるのか楽しみにしていましたが、これまたお2人にピッタリの楽しいショーで大好きになりました。

大劇場公演で2番手だった暁さんが演じたイグナシオ(作中でふられっぱなしでした笑)が、1年後のカルナバルシーズンに自分を見つめなおす旅から戻って来たという設定が面白いなと思いました。
物語のはじまりで礼さんが失恋の傷心を歌っていた曲を歌詞を替えて、こんどは娘役の詩さんが歌っているのも面白くて、これから暁さんのイグナシオと詩さんのクララがどういうラストを迎えるのか興味津々で見ていました。

星組新トップコンビは「すごく宝塚」だなぁという印象でした。身長差とバックハグにときめきました。
詩さんのちょっぴり勝気そうなクララをまるごと包み込む暁さんの包容力が少女漫画のようでした。
イグナシオとクララのふたりだけの夜明けのダンス、そしてフィナーレのデュエットダンス、それぞれ大劇場とはちがうストーリーになっていて、これから新トップコンビとして歩んでいく2人への愛がたっぷりで素敵でした。
タイトルにもなっているティアラは、今回はダンスのはじまりに暁さんが詩さんにつけてあげていて、ティアラをつけて踊るのも可愛いなと。「見上げてごらん夜の星を」の曲で幸せそうに踊る2人におもわずうるっとしてしまいました。

大劇場公演とおなじくショーの中盤は全力カルナバルでとにもかくにも踊りまくり。全国ツアー公演ということで客席降りもあったりしてさらに盛り上がりました。
私個人としては「こんなに激しく情熱的に踊っている瑠風さんをはじめて見たかも?!」と新鮮でした。
星組にとっても瑠風さん個人にとっても良い組替えになったんじゃないかなと思います。

お芝居でもショーでも踊りまくりの公演なのでこれで全国を回るのはなかなかに過酷だなと思いますが、どうか星組の皆さんが元気に千秋楽まで完走できますように。
私は1公演だけですが広島公演を見に行くことができるので、初日間もない梅田芸術劇場公演からの進化を楽しみにしています。

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2025/08/31

チアーユーアップ!

8月21日に宝塚バウホールにて雪組公演「ステップ・バイ・ミー」を見てきました。
演出家菅谷元氏のデビュー作であり、雪組の注目の若手男役、華世京さんの初主演作でした。

華世京さんのことは入団当初から注目されている男役さんと認識していましたが、コロナ禍以降数えるほどしか雪組を見る機会がなかったため、なかなか舞台上の姿を認識できないでいました。それでも偶々見たCSの番組で物怖じしない明るい雰囲気に惹かれるものがありました。
その華世さんの初バウがいよいよ上演されると知り、これはぜひ見てみたいと思って観劇を決意(決意したからといって簡単に見られるわけではもちろんないですが運よくチケットを手にできました)。
ちょうど星組のあれやこれやや家族のことなどでてんやわんやしていて、前情報も頭に入れることなく観劇したのですが、とても引き込まれる舞台で見に来てよかったと心から思いました。
もとより雪組は上級生はもちろん、下級生もお芝居が巧いなぁと観劇のたびに思うのですが、今回さらにその印象が深まりました。

作品のタイプとしては、激動の時代を生きた人びとをドラマティックに描くという類いではなく、自身の課題や苦しみを抱えて日常を生きている人びとに起きた出来事を通じて、彼らがそれらをどう捉えてどんなふうに向き合っていくか。登場人物たちの心や人生を感じて私自身も背中を押されるような、日々のなにかを肯定的に受け取る糧にできるかもという作品だったと思います。
それだけに「見せる」ことが難しい作品だったと思うのですが、集中して見ることができたのは華世さんや演じた雪組生の力量と魅力によるところが大きいと思いました。
構成の配分も冴えていて、チアダンス、ハロウィーン、プロムなどキャッチ―なシーンの入れ込みが絶妙でまるでショーを見ているような感じで楽しかったです。
10年前の主人公の大学入学からその年のプロム(卒業ダンスパーティ)直前までの学生時代のシーンが展開していたのにそれがそのまま映画のワンシーンとして10年後の今につながる演出も面白いなぁと思いました。
入れ子になっているストーリーに戸惑うことなく見られたのは、演出の巧さと主演の華世さんをはじめとする演者の力量によるものだなぁと思いました。

主人公ユージーンを演じる華世さんは小顔でとてもスタイルがよく、常に目を惹く華やかさのある舞台姿で、はやくから注目されてきたのも肯けました(はっきり申しましてとてもタイプの等身バランスでした)。そのうえでお芝居もダンスも見る人を引き込む力があるバランス型の演者さんだなぁと思いました。
倦んだような厭世気味な現在の青年俳優の姿、恋にも青春にも怖いものなしのまっすぐな10年前の学生の姿(一方で家族の問題も抱えながら)を一瞬で演じ分ける華世さん。
10年前のユージーンの想い人リリーと今の映画の相手役エイミーを演じ分ける星沢ありささんも凄いなと思いました。リリーのときはちゃんとユージーンより年上に見えるんですよ。(華世さん演じるユージーンも彼女より下級生に見える!)と思っていたら連続したシーンなのにある一瞬でユージーンとは面識の浅いエイミーに見えちゃう。
華世さん研6、星沢さん研4? 嘘でしょう?という感じでした。

華純沙那さんが演じていたチアのキャプテンのジェシカが素敵でこちらも目が離せませんでした。強気にずんずん周りの人をチアしていく感じなんだけど弱みもあって(ベンのことが好き)。彼女のおかげで一歩前に踏み出せた人がたくさんいそうなのに(ユージーンもリリーも)自分のことになると奥手?みたいなそんなところも愛おしい人でした。
華純さんはそんなジェシカを本当に素敵に演じていていいなぁと思いました。チアダンスも最高でしたし(チア全員良かったです)、プロムで踊る時もちゃんとジェシカだし。ジェシカ大好きでした。
(華純さん気になって調べたら106期娘役さんなんだなぁ。最近好きになる娘役さんが106期ばかりで・・咲き香る時期なのかなぁ娘役さんの研6って)
エイミーの友人のサラ(愛陽みちさん)とアリソン(白綺華さん)もチアのメンバーも雪組は下級生まで娘役さんが芝居上手なんだなぁと思いました。

諏訪さきさんが演じたベンも良かったなぁと思います。存在(生き様)にメッセージがあって、諏訪さんがそれをちゃんと担ってたなぁと思います。
ユージーンの兄フレッド(眞ノ宮るいさん)もただの嫌われ役で終わらず内面の屈折や成長が見えるのが良いなぁと思いましたし、製薬会社勤務のジャック(咲城けいさん)も突き進んでいた道から降りる勇気があるの良いなぁと思いました。
ご都合主義に思わせない芝居や展開が心地よかったです。
大団円にまとめるのにけっこう端折っちゃったなと思うところもありましたし、やっぱり持つべきものは太い実家だなぁなんて思ったりもしましたが、実家が太い人にしかわからない苦悩もあるよねーと納得もしてしまうのは、演じる人たちがしっかりと埋めているものがあるからだなぁと思いました。専科の英真なおきさんに組長の奏乃はるとさん、真那春人さん、杏野このみさん、桜路薫さんと頼りになる上級生が担っているものも大きく、芝居に没入できた所以かなぁと思います。

若手の演者さんたちの未来に向かって身を正すまっすぐさや清々しさを浴びることができて、なおかつ新公学年の生徒さん主演作としてはかなりレベルの高い舞台を見ることができ、悦びと満足感いっぱいの観劇体験でした。
なにもわからない状態でほぼ直感で観劇を決めたのでしたが、アタリだったなとその時の自分を称賛したい気分です。
(こうなってくると雪組の下級生も応援したくなるな~と思いはじめていて、またまた自分で自分の首を絞めてしまった感もありますが・・遠征控えようと思っているのに・・)

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2025/07/27

つかの間のやすらぎ

7月20日に宝塚大劇場にて「悪魔城ドラキュラ」「愛, Love Revue!」を見てきました。
千秋楽にして初見でした。

「悪魔城ドラキュラ」は人気ゲームの宝塚歌劇化ということでしたが、プレイしたことがないゲームでしたし、正直なところ初見ではどのように愉しめばよいのかいまいちわからないまま終わってしまいました。

ビジュアルは最高でした。タカラジェンヌと宝塚スタッフのコスチューム&メイクの作り込みは想像の遥か上を突き抜けていくなぁと。
装飾過多なゴシック調のコスチュームが映えるタカラジェンヌの等身ときたら。
二次元から起こしたデコラティブなコスチュームを三次元の空気や重力をも味方につけて華麗に翻して踊る、立ち回る、舞台センターの主人公アルカード(永久輝せあさん)やリヒター(聖乃あすかさん)はもちろん、舞台後方の高みから厳然と見下ろすドラキュラさま(輝月ゆうまさん)も舞台端でポージングしているサキュバス(侑輝大弥さん)やマグヌス(希波らいとさん)はじめ、誰もが3Dのどこからみても隙なく美しい。これこそが宝塚だなぁと惚れ惚れしました。
そしてそれに加えてマリア役の星空美咲さんの歌声も。
近年のタカラジェンヌの実力レベルの向上には驚くばかりです。

世界観もドラマティックで宝塚に合っていて、演じている人たちもそれぞれのキャラクターとしての行動原理を理解してその思いを胸に舞台でその生を生きているのも伝わりました。
が、如何せんストーリーの構成が甘いというのかエピソードが弱いというのか、ゲームの1シーンやセリフの再現度は高いのだろうけれども人物の行動やそこにある葛藤がプロットをなぞっただけになっていて勿体ないなぁと思いました。
舞台セットもバウ公演のようで大劇場公演に期待するダイナミズムが希薄で、ほぼ演者頼りの印象でした。
宝塚歌劇、宝塚大劇場というリソースが活かしきれていないのが勿体なく思えて歯痒く感じました。
原作ゲームのファンで宝塚歌劇を初めてご覧になる方々に対して「宝塚、こんなもんじゃないっす」と弁明したくなるような、ただの宝塚ファンでしかないくせに謎の焦燥感が湧いてしまって、本当だったらもっと作品に没入していただろうものができなかったのかもしれません。私自身の煩悩ゆえの敗北かな。
そんな煩悩をひととおり通過して2度目からが愉しかったのだろうなと思いますが、1回しか観劇を予定していなくて残念です。
(東京公演の千秋楽ライブは楽しく鑑賞できるかな)

「愛, Love Revue!」は岡田敬二先生のロマンチック・レビューの23作目ということで、プロローグの宝塚の名曲「I LOVE REVUE」からはじまって、「初恋」「ラモーナ幻想」「愛の誘惑」「熱愛のボレロ」など時代を超えた懐かしい場面の連続で、その古めかしさをいまの生徒さんの感覚でパフォーマンスされるのが逆に新鮮に感じられました。
「愛の誘惑」の楽園の蛇さんの聖乃あすかさんの妖しい美しさに撃ち抜かれ、「熱愛のボレロ」の永久輝さんの三白眼に魅入られました。ラモーナの星空さんの歌声に安堵を感じるのも新鮮でした。

この3か月間主に星組「阿修羅城の瞳」に浸っていたこともあって、あらためて宝塚歌劇の振り幅の大きさを噛みしめています。
そしてどんなジャンルであってもビジュアル(演者自身も舞台美術も)が抜きんでていること、それこそが宝塚歌劇の真骨頂だなぁとも思います。
その中でも花組のビジュアルはハイレベルだと思いました。
この美しい花組に星組から極美慎さんが異動してくるんだなぁ。さらに目が幸せな組になっちゃうなぁと思うとこれからの花組公演も見逃せません。高齢の家族のこともあり遠征を減らす方向で考えているのだけどなぁ。困りました。(願わくはその如月の望月の頃)

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2025/07/23

糸の芯まで真赤に染まる

7月2日と17日に東京宝塚劇場にて「阿修羅城の瞳」「エスペラント!」を見てきました。これで私の「阿修羅城の瞳」生観劇は最後になるだろうと思います。

最高のエンターテインメントでした。
どこまでゆくのかどこまで極めるのか礼真琴!と。セリフ回しも間合いも殺陣も歌も、見得を切るときのつま先から頭のてっぺんまでも、どこをとっても胸がすく爽快感。満足と納得のリフレイン。このレベルのタカラジェンヌに私はもう二度と出遭えないかもしれないなどと思うなど。奇跡を見ているような心地がしました。

星組生の集中力も凄まじいなと思いました。どこにも隙がない。
宝塚大劇場公演からいちばん変化を感じたのが邪空(極美慎さん)でした。出門(礼真琴さん)への執着が尋常ではない大きさで彼の内側で渦を巻いているのが感じられました。
銀橋でのソロナンバーはオケとも相俟ってとってもロックテイスト増し増しでよかったです。
おなじく宝塚大劇場公演で存在意義がいまいち薄いと感じた毘沙門(天飛華音さん)と大黒(稀惺かずとさん)の存在感が見違えるほどに増していたのにも驚きました。2人ともセリフのタイミングがすごく良くてコミカルな表現(アドリブ)も場面に添っていて楽しかったし、鬼に身体を乗っ取られているときの打って変わった表情、立ち姿も目を惹きました。

宝塚大劇場公演の初見でつばき役の暁千星さんに感じた躊躇のようなものも東京公演ではまったく消えていて、愛嬌と妖艶さと凄味がその身から溢れ出る暁さんゆえの紛う方なきつばきが存在していました。
礼さんの出門からつばきへの愛、つばきから出門への愛が宝塚大劇場公演で見た時よりもいっそう深まっていて、この愛があるからこそのこのドラマなんだと納得しかありませんでした。

「阿修羅城の瞳」を見てつくづく思うのは、星組の娘役の層の厚さでした。
前作までは星組のザ・プリンセスな舞空瞳さんがいて、彼女に心奪われていたこともあって気づいていなかった自分の迂闊さにデコピンしたい気持ち。星組には素晴らしい娘役さんがこんなにいたのだなと思い知った心地でした。
詩ちづるさん演ずる桜姫は宝塚大劇場よりもさらにパワーアップしていてもう見ていて楽しくて仕方がありませんでした。
17日は賀茂白丞(朝水りょうさん)南雀(蒼舞咲歩さん)が揃って「さしすせそ」「たちつてと」を「しゃししゅしぇしょ」「ちゃちちゅちぇちょ」に拗音化して話すのが可笑しくて(古語の発音っぽくもあり)、それがまさかの江戸っ子の桜姫や出門にも移ったりもして笑ってしまいました。

少女役の茉莉那ふみさんの巧さには目を瞠りました。芝居も歌も、出門に斬られる勢いで弧を描いて駒のように回転し倒れるところは吸い込まれるように見惚れていました。
笑死役の瑠璃花夏さんも逢魔が時に手鞠を抱えて佇む姿、無垢な声音で禍々しい童歌を歌うところ、無垢な声色が俄かに魔を帯びるところ、どれをとっても独特の雰囲気を纏っていて思わず見入ってしまいました。

この公演を最後に専科に異動となる美惨役の小桜ほのかさん、この公演で退団する阿餓羅役の白妙なつさん、吽餓羅役の紫りらさんの巧さ、娘役としては珍しく武器をもって戦う場面も見事に演じて頼もしくも感じるにつけ彼女たちが星組からいなくなるのは痛手だなぁと思います。
でも新人公演で鳳花るりなさん、瞳きらりさん、詩花すずさんがこの難しい3役をしっかりと勤めていたのを見て、星娘の気概、技術はしっかり受け継がれているのだなぁという感慨も覚えました。
そんな彼女たちが本公演では鬼や桜姫の侍女たちの中にいて、あの巧さでもいまの星組ではそうなるのだなぁという層の厚さを痛感しました。新人公演で桜姫役だった乙華菜乃さんもおなじくです。

ショー「エスペラント!」はやはり選曲が好きだなぁと思いました。
「ニカの夢」~「チュニジアの夜」~「The Shadow of Your Smile」のナンバーと男役のカッコ良さがたまらなく好きでした。
黒燕尾の男役と夜会服の娘役の「Stardust」~「Smile」もハッピーで大好物でした。
スタンダードナンバーをクールに歌い踊る近年のタカラジェンヌに惚れ惚れしています。
今回もハイレベルのパフォーマンスを軽々とこなす星組生に圧倒されていたらあっという間に終わってしまうショーでした。

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2025/07/08

甘くて弱くて美しい

7月1日に東急シアターオーブにて宝塚歌劇宙組公演「ZORRO」を見てきました。
宙組新トップスター桜木みなとさんのプレお披露目公演でした。
観劇していちばん印象に残ったことは、こんなにトップスターに遠慮がない宙組生をはじめて見た!でした。

宙組のトップスターといえば1998年組発足時の初代トップスター姿月あさとさんからはじまって先代の芹香斗亜さんまで全員が、『すでに他組で活躍していたスターが異動した宙組でトップに就任した』パターンでした。
桜木さんが10代目にして初の宙組配属宙組育ちのトップスターな訳ですが、ともに新人公演のお稽古をしてきた、あるいは番手スターとなるまでの成長の過程を身近で見てきた人がトップスターに就任すると組子はこんなかんじになるのかぁと思いました。

さて「ZORRO THE MUSICAL」についてですが、宙組生によるフラメンコのパフォーマンスが素晴らしい作品でしたが、物語にはいまいち入り込めませんでした。
声でわかりそうなものなのに察しの悪いヒロインだな。マスクのオンオフでの二面性を表現しているのだろうけど、一方は情けない腰巾着、もう片方はマスクで顔がわからないじゃ主人公にときめかないなぁ。などなど。
なぜそうなるの?という疑問が解決されないままに物語がすすむので釈然とせず、登場人物の感情にリアリティを感じることができませんでした。
いちばんリアリティを感じたのは、父親に見捨てられた敵役のラモン(瑠風輝さん)の心情だったかなぁ。

主役のディエゴに関しては、ロマの仲間と行動を共にしその人生観に触れて息苦しさから解放されたように見えるのに、恋人にはロマのイネスは選ばないんだなぁ。疑いもなく自分とおなじ支配階級の娘ルイサを選ぶんだなぁ。とそういうところもわだかまりを感じて推せない主人公でした。腰巾着をしている姿も必要以上にカッコ悪いのもあって。
そんなディエゴをかばって命を落とすイネスへのやるせなさばかりが募りました。心弱っている人をほうっておけない、ついついケアする立場にまわってしまうイネスに胸が痛くなったりしながらも登場人物のなかでいちばん好きでした。
自分をかばってイネスが亡くなったばかりなのに即ルイサと結ばれる展開もディエゴに惹かれなかった理由かもしれません。

好きだったところは、泉堂成さんのホアキンが登場するたびにいつも謎にかっこよかったこと。少年ディエゴの美星帆那さんと少年ラモンの梨恋あやめさんが可愛かったこと。幕開きの小春乃さよさんと嵐之真さんの歌。物乞いのときの不思議な歌(前回大劇場公演でお顔を覚えた風翔夕さんも歌ってた!)。フラメンコとジプシー・キングスを大勢で歌い踊るところ。1人ひとりが輝いていたところ。です。

パフォーマンスには満足で次回の大劇場公演が楽しみだなぁと思いました。
願わくは登場人物たち、そして演じている人たちにときめきが感じられる作品でありますようにと思います。

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2025/06/06

われても末に

5月27日に念願の宝塚歌劇星組大劇場公演「阿修羅城の瞳」2回目を見ることができました。

1回目で原作との擦り合わせもしていましたし、新人公演も見ることができたので2回目の観劇は戸惑うことなく物語に入っていけました。
宝塚版「阿修羅城の瞳」を心から愉しめて最高の観劇体験でした。

5月6日にはじめて見たときは、新感線版ではセリフで語られていた部分が視覚化されていることに戸惑っていたように思います。

私は小説の映像化(舞台化)作品を見て戸惑ってしまうことがよくあります。ビジュアル化されたことで「あったもの」がなくなっていることに対して呆然としてしまうかんじです。
ビジュアル化されることでなくなるものってナニかというと・・行間とか概念とかとても私的なイマジナリーななにか? そんなもの自分が勝手に受け取って勝手に愉しんでいただけやんってかんじですが。勝手にあると思っていたものがない?ない?と探しあぐねているうちに終わってしまった・・みたいな感覚かな。
さいしょから原作小説と映画・舞台は別モノとして見るスキルを持てばよい話なのですが。なるべくそうしようと心がけてはいます。難しいですけど。

しかし「阿修羅城の瞳」はもともと舞台だったものなのでうっかりしていたといいますか。
あれ?あれ?ここで摂取していたものが・・?あれ?となってしまったんだと思います。

いま思うに、宝塚歌劇って視覚化に全力なんだなぁと。
一方で新感線(中島かずきさん&いのうえひでのりさん)は宝塚ほど視覚化に重きを置いていないのだなと思います。
個々のキャラクターの魅力、多面性、身体能力を存分に堪能できる演出。
生身の人間がどこまでやれるか。情報自体の視覚化よりもどれだけ観客をあっと言わせることができるか。そこに重きを置いた演出だったなと思います。
脚本としてはセリフの応酬、ひとつのセリフに詰まった情報量(声や目線、表情、言葉に幾重にも意味をもたせていたり、そこから派生するものが引き出しいっぱいに入っている・・など)を浴びて自分なりに摂取しながら展開していく物語を愉しむスタイルなのだなぁと。とても見ている最中に全部は受け取りきれないのだけど、あとからじんわり来る面白さもある。
私にとっては小説を読むのにちかいものがあったなぁと思います。いま思えばですけど。情景や背景、心情などはすべてセリフから読み取るかんじで。

その新感線らしさを存分に楽んだ「阿修羅城の瞳」だったからこそ、宝塚化された際に戸惑ったのだろうと思います。
想像であったものが徹底的に視覚化、具現化されていることに。
(ごちゃ混ぜを愉しんだ引き出しがきれいに整理されていることにも)
出演者の人数と舞台機構を駆使して過去も現在も瞬時に視覚化され、心情は詠唱となり舞踏のような振り付けとなって目の前で展開されていく。
新感線版を記憶にとどめたままだった私はそこに追いついていけなかったのかなと思います。
二度目の観劇でそれこそが宝塚歌劇の魅力だったことに気づきました。
それが好きで宝塚を見ている自分に無自覚だったことにも。

ここにきて、劇団☆新感線と宝塚歌劇のちがいを知ったかんじです。
宝塚歌劇の「阿修羅城の瞳」もとても面白かったです。
そのうえで新感線版は「業だなぁ」と思っていましたが、宝塚版は「愛だなぁ」と思いました。たいへんベタですが。

隠れ家で悪夢に逃げ惑い絶叫するつばき(暁千星さん)にかける出門(礼真琴さん)の声に含まれる愛情の深さにふるえました。

暁さんのつばきは、5月6日に見たときよりもさらに色っぽくなっていました。
中村座での出門との出会いの場面、渡り巫女たちと合流する場面など赤い麻の葉文様の着物姿、初見では見慣れないせいかほんのちょっと違和感があったのですが、27日はまったく違和感などなくてほんとうに粋で気風の良さが感じられる姐さんの風情で素敵だぁと心ときめきました。しかもほどよく色っぽいくていかにも訳アリ。これは惚れる・・。
さまざまな見地から5月初旬より出門とつばきの愛が深まっている気がしました。
宝塚版を「愛だなぁ」と思った所以です。

邪空(極美慎さん)はスケールが大きくなった印象でした。「俺を見ろ」の圧が凄かったです。
出門のいない鬼御門で副長として5年のあいだ、出門への妄執に取りつかれて生き、ついには魂を鬼に渡し自らが鬼に転生することも少しも厭わないまでになっていた邪空を知ったうえで、幕開きで出門と鬼を狩っている彼を見るとせつなさで胸が痛みました。こんなにも楽しげにいきいきと出門とともに刀を振るっていたのにと。
この執着も愛だなぁと思いました。

桜姫(詩ちづるさん)もパワーアップしていてますます大好きでした。
彼女の前向きすぎる行動もまた愛のなせる業ですよね。

愛の権化のような礼さんの出門とますます美しくなった暁さんのつばき。
東京公演ではどう進化していくのか楽しみです。

ショー「エスペラント!」も楽しかったです。
バレエの場面、極彩色のラテン、黒燕尾とイブニングドレス&オペラグローブの場面がとくに好きなのは初見と変わらずでした。

礼さんの黒燕尾のソロダンスの場面は案外長かったんだなぁと思いました。初見でもっと見たいと思ったので短かった印象だったのですが。
ただここから盛り上がるのかなと思ったところで終わってしまうので、もっと見たいと思うのは同じでした。

お芝居のほうでいろんなものをたくさん摂取したあとだったので、ショーも盛りだくさんだとつらかったかもしれず、よいバランスなのかもと思います。

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2025/06/01

夢かうつつか寝てかさめてか

5月22日23日に福岡サンパレスにて宝塚歌劇月組全国ツアー公演「花の業平」「PHOENIX RISING」を見てきました。

「花の業平」はずっと再演してほしいと思っていた作品でした。
潤花ちゃんの藤原高子を見たいなぁと切望していたのですが退団されてしまったので叶わず。それから1年以上の月日が流れて月組全国ツアー公演で上演されるとの発表に絶対に見に行きたいと勇んでチケットを申し込んで観劇日を心待ちにしていました。

主人公の在原業平役は一昨年宝塚大劇場で上演された「応天の門」でも業平を演じてお似合いだった鳳月杏さん。藤原基経役も同じく「応天の門」で同役を演じて好評だった風間柚乃さん。そしてヒロイン藤原高子役も「応天の門」で同役を演じた天紫珠李さん。
これだけでも関心と期待が膨らみます。

3公演観劇しましたが、見れば見るほど鳳月さんは業平がお似合い。
公達たちの噂で業平の女性遍歴エピソードをイマジナリーに舞踊にしている場面の鳳月さんが格別に好きでした。女性からの秋波を邪険にはできずに次々に浮名を流してしまうかんじ。たとえ色好みと口さがない人びとに笑われようと女性を悪者にしない主義が垣間見えるのが、だからこそ彼は女性に好かれるのだなぁと。そんなふうに見える鳳月さんは天性の業平だなぁと思いました。

初演は映像で見ていて、稔幸さん演じる業平に正義があり、香寿たつきさん演じる基経は悪、善の業平が悪の基経に苦しめられているといった印象をもっていました。お2人の持ち味もあると思いますが、私自身が物語を単純に見ていたのだろうといまは思います。自由恋愛こそ正義で政略結婚は悪、といったように。そのほかのいろいろも。
今回の月組版を見て業平を突き動かしているのはそれが正しいかどうかではなく、目の前の女性がしあわせそうであるかどうかなんだなぁと。結果正しくないとされる行いもするし、自業自得に陥ったりもする。現世を生きて、自分の身のうちから湧き出づるもの、悦びや悲しみに嘘がない人なのだなぁと思いました。

風間さんの基経も単純に悪い人とは見えなくて、権力を手にしなければ生きていけないところに身を置いている人なのだなぁと思って見ていました。まさにこれは「応天の門」を見ていた影響だと思います。
義嗣子として義父良房(英かおとさん)との関係には、藤原良相(柊木絢斗さん)と息子の常行(彩海せらさん)とのあいだに感じられたような気の置けない父と息子の関係とは異なる緊張感が感じられました。
業平が自分の情に正直に行動し、関わる相手にも情け深く接して、女性たちにはもちろん、仲間たちにも危険を冒しても力になってやりたいと思われるほど愛されるのに対して、理を優先して情けを抑制し、時に人を陥れるかわりに己の些細な瑕や落ち度を理由にいつだれに蹴落とされるかわからない人生を生きている基経の緊張感と孤独を感じました。

高子役の天紫珠李さんは初見では表情や声からの情報量が少なくてなにか物足りなく感じてしまったのですが、二度三度と見ているうちに内面から湧き出でる感情の迸りを感じられるようになってきて大好きな高子になりました。
自負の心が強くて外に向かって張り手をつくような瞬発力の高かった初演の星奈さんの高子(星奈さん高子の「わたくしの舞が下手だとおっしゃるの?!」が大好きでして・・)とはちがって、いちど受け止めてから反論するプライドは高いけれどもちょっと内向的なところがある高子だなぁと思いました。

市で商いの統領をしている梅若役の礼華はるさんは長身で総髪の立ち姿に存在感がありました(登場のたびに柚希礼音さんが浮かんでしまったのは自分でも不思議でした。なぜかなぁ)。
水干だか狩衣だかを気崩したアレンジもおしゃれで、セリフの掛け合いも粋な人だなぁと思いました。
花の宴の桜木の歌で盛り上がる場面で業平と歌い継ぎながら入れ替わる場面は毎回胸が逸りました。基経たちに顔を見られても涼しい表情を崩さないところなどこれは業平のために並ならぬ覚悟で臨んだのだなぁと思いました。

内裏に女官として潜入している女賊のあけび(彩みちるさん)と梅若との関係は、今回の月組版ならではですよね。
梅若の家には橘逸勢の書が掛けられていたとの業平の言葉や、あけびによると彼女が昔仕えていた貴族の御曹司だったとかなので、承和の変で排斥された橘氏のお血筋なのでしょうか。
そんな彼の過去を知るあけびの梅若への愛惜を含んだ思いがせつなくてキュンとしました。

彩さんのあけびは、権謀術数渦巻く宮中にあって登場するたびに客席を笑わせて物語のよいアクセントになっているなぁと思いました。初見では石茸丸(大楠てらさん)を彼女の弟だとは気づいていなくて、みちるちゃん大楠さんにひどいわーと思いました笑。
姉に言いたい放題言われて、でもちゃんと言いつけ通りに検非違使を巻く石茸丸は出来る子!と思いました。
とても仕事できる姉弟で。この先もしっかりと生きていけそうで安心のキャラでした。

藤原常行役の彩海せらさんはお美しいなぁと。心映えも眩しくて父親からも友人からも愛されているお花のような人だなぁと思いました。
和物のお化粧やふとした表情に月城かなとさんの名残を感じ、そんなせつなくてうれしい感情を呼び起こされるのも宝塚の良さだなぁと思いました。
彩海さんのこれからに注目していきたいなぁとあたらめて思いました。

伊勢の斎宮の恬子内親王(花妃舞音さん)と業平の逢瀬の場面は、初演ではえ、どういうこと?と、稔さんの業平にはそんなことはしてほしくないと思った気がするのですが、鳳月さんの業平にはそうだよねーそうするよねー業平はと思って見ていました。
花妃さんの恬子さまも、この恬子さまじゃしょうがないよねーと思ってしまう風情だったのもあるかと思います。初見のあとで気づいたのですが、花妃さんは「応天の門」で多美子だった人ですね。(多美子好きだったんです)
入内する高子との対面の場面は、初演ほどの緊張感はなかったかな。月組版はどちらかというとおなじ人を愛する2人のシスターフッドを強めに感じ、それはそれで好きでした。

春景(一輝翔琉さん)と若葉(乃々れいあさん)は微笑ましい一対でした。
一輝さんは初舞台の「Délicieux」で注目しこれからが楽しみだったので退団はとても残念です。(初舞台の「Délicieux」も「PHOENIX RISING」も野口先生のショーなんだなぁと・・)
伊勢からの帰り道にはこの公演で退団される一輝さんのためのセリフもあり寂しくもご卒業後の人生に幸あれかしと願いました。

「花の業平」を生で見たいという長年の希望が叶って本当に良かったです。全国ツアー版に向けての大野先生の書き直し部分も好きでした。
長年の願いが叶い満足したところで、やはりこの豪華絢爛な世界を回り舞台で見てみたいなぁという新たな欲が生まれてしまいました。
この願いが叶う日が来ますように・・!

「PHOENIX RISING」は楽しいショーでした。(大劇場では見ていないのでこの全国ツアーバージョンが初見でした)
作演出の野口先生はなんとしてもアモラルを入れずにはいられないのだなと思いながら見ていましたが、それもいい塩梅に収まっていてよかったです。
「SHANGHAI GIGOLO」の場面のSHANGHAI BIRD(相星旬さんと飛翔れいやさん)がとてつもなく刺さったのできっと思うつぼにハマってます笑。
ぞわっと鳥肌が立つ歌詞も相変わらずだなぁと。私は苦手ではあるものの、そこは好き嫌いの範疇かな。

デュエットダンス「永遠の月(月亮代表我的心)」が鳳月さんと天紫さんの雰囲気にとても合っていて素敵なシーンだなぁと思いました。彩海さんのカゲソロにもうっとりでした。
天紫さんが長い手足で伸びやかに踊る姿がすっとして品がよくてシルフィードのようでした。同じくすらりとした鳳月さんとのバランスが抜群でほかにないコンビだなぁと思いました。鳳月さんの色気を天紫さんがよい塩梅に中和しているような気もしました。(あり得ないですが鳳月さん♂と鳳月さん♀がコンビを組んだとしたらとんでもないアダルトな色気のトルネイドになってしまう気がするんです・・それはそれで見てみたい気もするのですが・・)

お芝居もショーも大満足で、やっぱり宝塚はいいなぁ。心洗われるなぁと思った2日間でした。
ここしばらく月組を観劇する機会がなかったのですが素敵な生徒さんを多数みつけたので大劇場に見に行きたいなぁと思いました。
(SHANGHAI BIRDの相星旬さんと飛翔れいやさん、客席降りで段差があったのにわざわざ覗き込んで微笑んでくれた花妃舞音さんもすごく気になっていてGUYS&DOLLSの新公が楽しみになりました←配信を心待ちにしています)

しあわせな時間が過ぎたいまは次の全国ツアーはどの組が地元に来てくれるのかなぁと早くも楽しみです。
(地方在住のため遠征回数を抑えたく全組見るのは控えようと思うのに・・全国ツアーがあるばかりにこうしてまた沼に足をとられてしまうのでした・・笑泣)

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