カテゴリー「♖ 宝塚」の225件の記事

2019/12/04

おとぎ話の終わりは。

11月21日に東京宝塚劇場にて、花組公演「A Fairy Tale -青い薔薇の精-」と「シャルム!」を見てきました。
みりおちゃん(明日海りおさん)の宝塚最後の公演、はたしてチケットが手に入るのだろうかと思っていましたが、幸運にも友の会で当選して見納めすることができました。

お芝居「A Fairy Tale」は終演後、景子先生、これでもかと少女趣味をぶち込んで来ましたね(笑)と思って笑えてしまいました。
設定も舞台美術もセリフの端々も。過剰なほどに美しく清らで、自分が好まないものは世界観から排除してしまうそんな少女の夢。こそばゆいけど嫌いじゃないです。
本意でない政略結婚だったとはいえ、夫である相手に「あなたを愛したことなど一度もない」と言い切ってしまえるヒロインの強情な潔癖さ。これは遁世して夢見る少女小説家にでもなるしかありませんなと思ったらある意味正解で(笑)。
そういえば、寄宿学校でも授業中に妖精の絵を描いたり仕事を持ちたいなどと言ってクラスメイトの少女たちに引かれていたなぁ。夢想の中に生きてほかの少女たちからは孤立しているそんな子だったよね、シャーロット(華優希さん)は。
たぶん、このシャーロットというヒロインに共感する、あるいは自分を重ねてしまう宝塚ファンはすくなくないのではないかな。

なんだか笑えてしまったのはそんな心当たりが私にもあったからかなと思います。
そしてやっぱり終わりがハッピーエンドだったのも大きいかなと思います。(相変わらず権威主義で無神経なところがあるなぁ景子先生、、と思うところもありましたが。自分がハッピーでいるために踏みつけにしている存在に気づいてもいなさそうなところがあるなぁと。オールオッケーとは思えない部分が)

お芝居ラストのみりおエリュの振り向きざまの表情にいろんなものが過って見えたように思いますが、そのなかに悪戯好きのフェアリーの顔も見えた気がしました。
ああ、これもみりおちゃんが持っているもののひとつなんだなと思って、この期に及んで可笑しくなってしまったのもありました。
思い込み激しく一途に突き進んで破滅していく役がこのうえもなく似合っていたみりおちゃんですが、ほくそ笑む悪戯な妖精の顔もたしかに持っていたよなぁと。
端から見ていてちょっと辻褄が・・とか、えっこれで彼らが誰かのために生きていると思えるの・・とか、唖然とするストーリー運びであっても、心底から心を動かし嘘にならないところ、さすがだなぁと思いました。この純粋さがタカラジェンヌの鑑だなぁと。

この繊細な薔薇様が棲む世界を無邪気に愛した頃、遠く隔たり信じることが出来なかった頃、かけがえのないものと気づく頃。
妖精とは。
自分と重ねてみるとさまざま思うことが過るのは、みりおちゃんやそれぞれの役を演じきった花組の生徒さんたちの力によるものだったなぁと思います。いまの花組はすごく力のある組だなぁとしみじみ思います。芝居の良い組になりましたよねぇ。

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2019/12/02

薔薇の上で眠る。

11月23日に梅田芸術劇場メインホールにて、宝塚歌劇星組公演「ロックオペラ モーツァルト」を見てきました。

星組さん、こんなに歌が上手なんだとびっくり。私のなかではいわゆる“美貌枠”の生徒さんも、実力ある方々に引き上げられてか思ってた以上に歌えてて、これから星組さんを見に行ったらこのレベルの舞台が楽しめるってことかとポテンシャルの高さにわくわくしました。

作品自体は、私(わたくし)的にはあまり好みではありませんでした。
花組宙組の大劇場公演を見たあとだったのもあるかもしれませんが、やはり私は宝塚らしい舞台が見たいのだとあらためて思いました。

全体的に邪悪さも華も希薄で下世話さが強調されてて、宝塚でもなければロックでもないなぁと。
モーツァルトは卑俗な男なんだとは思うけども同時に愛される魅力もあると思うのだけど。
なんというか、モーツァルトには才能しか愛すべきところはないような印象を受けて、それはどうなの?と。
才能だけを愛されてほんとうの自分を愛されない孤独っていうのは芸術家あるあるだとは思うけど、彼もまた孤独なアーティストなんだろうけど、見ている観客には彼の愛すべき魅力がつたわるように描かれていてほしいなと思いました。

彼のピュアさ、信じやすさ、エキセントリックさ、身勝手さ、喜び、悲しみ・・・それらに心震わせられたかったなぁ。
孤独はすごく感じました。

世界観が矮小でスケールが小さく感じたのはなんでだろう。帰路ではそれをぐるぐる考えました。
親子間の愛情も姉妹間の確執も、どれも浅くしか描かれていないから、役者がやりようがないのではないかな。
なぜ、いまなおモーツァルトの人生が描かれ、人びとがそれに共感するのか。
とくにロックオペラとして描かれ、支持を得ているのはなぜか。
その答えとなるものとは真逆ななにかが散見されて楽しめなかったのではないかなぁと思います。
楽曲本来の活かし方次第ではそれも挽回できたかもしれないけれど、そもそも宝塚はそこは得意分野じゃないからなぁ。だからこそ、ストーリーの作り方が大事なんだけどなぁ。

1幕ラストの舞空瞳さんのダンスが印象的で幕間の脳内はその残像で埋め尽くされました。
フィナーレも素晴らしかったです。紫藤りゅうさんと極美慎さんのダンス場面は最高に好みでした(笑)。
そしてデュエットダンス! こんな心高鳴るデュエットダンスはひさびさに見るかもしれない。(コムまー以来かも???)
礼真琴さんと舞空瞳さんの新トップコンビを心から祝福した瞬間でした。
これからどんな作品を見られるのかたのしみです。

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2019/11/29

血路はこの手で開く。

11月22日と23日に、宝塚大劇場にて宙組公演「El Japón(エル ハポン) -イスパニアのサムライ-」と「アクアヴィーテ(aquavitae)!!~生命の水~ 」を見てきました。

「エルハポン」は日本物と洋物の両方の宝塚を楽しめる作品でした。つまり真風涼帆氏の魅力を二倍堪能できるってわけです。
なにを着てもお似合いの真風さん。登場後一瞬にして脱ぎ捨てるためにだけに着用したと思われる菊花の縫取りのマントとか!(笑)。

初日があけて1週間足らずだったのですが、作品全体の目線が定まっていないような印象をうけました。まだ演者の皆さんのエネルギーがどこに向かっているのか行方知れずというか。盛り上がりのないまま大団円になっちゃった?という印象。
真風さん演じる治道が、おのれの死に方をさがしているような気持ちに抑揚の少ない役のせいもあるかもしれないけれど、台詞が単調に聞こえて心に引っ掛かって来ないと言いますか。
藤乃(遥羽ららちゃん)との場面がいちばん好きだなぁと思ったのは、たぶんこの時の治道の気持ちがいちばんリアルに伝わってきたからかなぁと思います。
過去の場面と現在とで、治道の心情にもっと緩急がつくといいのになぁと思いました。

いちばん心動かされたのは、治道がカタリナ(星風まどかちゃん)をドン・フェルディナンド(英真なおきさん)の館から救出する場面でした。
あのときもこんなふうに愛しいひとの手を取って、敵から護り戦い、血路を開きたかったよね・・・。
かつて叶わず残した悔いを、いまこのとき実現できている彼の姿にきゅんとしました。一度は死んだ彼の心が息を吹き返す瞬間を見ているようで。
生きていたら、昔の自分ができなかったことができる日がくる。それを希望と呼びたいと。
ラストシーンにもその希望がかんじられて温かいものが心にひたひたと満ちてくるようでした。エリアル(桜木みなとさん)も藤九郎(和希そらさん)もきっと今日の自分が持っていないものに手が届く日がくるよねと。

願わくば、まどかちゃん演じるカタリナに最愛の夫を亡くした女性の憂いとか漂う情感とかあるといいのになぁと思いました。元気に働く宿屋の女将さんなんだよなぁ。
それから、肌を黒く塗り過ぎな気がしました。どういうルーツの女性だろう。

治道とカタリナ、とおく東の最果てから辿り着いたサムライとスペインの街道筋の宿屋の女将、まったくかけ離れた文化や死生観をもっているはずなのに、内側にはたがいに通ずる悲しみや虚しさを抱いている・・・。そのたがいの心のうちを見つめ合う視線が見えたら良かったなぁ。
喪服を脱ぐ決意をするところ、治道と街で逢うときの気持ち、彼女のなかの頑なな花蕾が段階を経てほころんでいくような色めきが見えたらなぁと思いました。
なにゆえ誰がためにフェルディナンドのもとへ行こうとしているのか。しめっぽい女性に演じないところは好きだったけど、ただ正義感の強い勇ましい女性に見えてはつまらないなぁと。
ラストで、彼女は心から治道とともに生きたいのかな、打算じゃないのかなと疑ってしまったのですよね。それじゃああまりに治道が間抜けに見えてしまうから。そんなことはないと思いたい。

それと今回のお芝居、ショーを通じてなのだけど音響が悪く感じました。
お芝居では効果音がやけに大きく響いて、逆にセリフがマイクに乗らず聞き取りにくくかんじました。
セリフが単調に聞こえたのはそのせいもあるのかも。ニュアンスの変化を拾いきれていなかったのではと思いました。
2公演、ぜんぜん別の席でそうかんじたのですが・・・。気のせいかな。

お話自体は好きなので、細部に引っ掛からずにお芝居をたのしめますように。(あのラストはなんどでも見たいです)

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2019/10/26

死ぬまで一緒だ。

宝塚歌劇宙組全国ツアー公演のショー「NICE GUY!!」は、初演の頃は宝塚をあまり見ていない時期で、生で観劇したことがありませんでした。
のちにCSで放送された時に宙組&大介先生のショーだ♡と期待して見始めたのですが、どうしても受け付けない場面がさいしょのほうにあり挫折してしまった思い出があります。

全国ツアー公演の演目が発表された時には、そのまま上演して大丈夫なのかしらと心配したのですが、その場面は新場面に替わっていて、苦手だった場面がなくなってあらためて生で見ると男役のカッコよさが満載で、再演が熱望されていたのも肯けました。

『NICE GUY!!』つまりテーマはズバリ男役!!という潔いコンセプトどおり、青木先生によるキャッチーな主題歌で男役がカッコよく歌い踊り、かつ笑っちゃうほどのキザを競うように見せつけられて目が足りませんでした。ショーの最初から客席降りも織り交ぜられ畳みかけるように心を掴まれてからパレードまで、毎回あっという間だった気がします。

ショーの副題に「Sによる法則」とあるように、歌詞のサビの部分がSではじまるフレーズになっているんですよね(ということは、初演はYではじまるフレーズだったのかな)。その歌詞がけっこう笑わせにかかっているなと(笑)。あ、もしかして私がキザに直面すると笑っちゃう性質だから笑ってしまうだけで笑わせるつもりではないのかな。でも「死ぬまで一緒だ」と微笑みながら歌う真風さんを見たら笑っちゃうしか。この現実を私はどう受け止めたらいいのか。ありえないものを見ているなと。
現実じゃないものがそこに在る。
嘘も本当にしちゃう力。それこそスターたるゆえん。

たくさんの幸せな嘘で成り立っている宝塚においては、嘘だってわかっていても信じさせてしまう魔力があってこそ、トップスターなのだなと真風さんを見ていると思います。
真風さんを見るたびに、「だまされないぞ」「だまされるものか」と心で唱えている私です。気を許したら一巻の終わりだと思っています。
だまされてはそれを打ち消し、だまされては打ち消すを繰り返しているうちに終幕となり、夢のつづきをまた見たいと思ってしまうのだと思います。
真風さんには気をつけよう。危険すぎる。

トップコンビの真風涼帆さんと星風まどかちゃんの痴話げんかの場面も大好きでした。
調子に乗ってカッコつけまくる真風さんの前場とのギャップがツボ。長身さんだからコミカルなポーズがなおさら独特のハマり具合でたまりません(笑)。
そしてまどかちゃんの「涼帆のせいよ!」(笑)。トップスター様を呼び捨て?!(これを言わさんがためのあえてのこのキャラ設定とシチュエーションですか大介先生??)
現実では絶対にありえない、これも嘘の世界。(見ているほうがドキドキ)
―― 嘘の中にある真実がほのかに見える感じにドキドキしたのかもしれません。
一歩まちがえたら悪趣味になりかねないけど、まどかちゃんの一生懸命なプロ根性と真風さんの器の大きさをご当地ネタとともに楽しめる場面でした。
このバランスが魅力のコンビだなぁと。
真風さんのホールド力がいまの宙組のベースだなぁとつよく感じる場面でした。

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2019/09/26

将来のために。

9月8日に熊本市民会館、9月14日、15日、16日に福岡市民会館にて宝塚歌劇宙組公演「追憶のバルセロナ」「NICE GUY!!」を見てきました。

観劇の翌日には熊本城を観光しました。ボランティアの方にガイドをしていただき有意義な時間となりました。しかしとても暑い日でした(笑)。
復興中の熊本城の様子を間近に見ることができる加藤神社には、加藤清正の生前の口ぐせだという「後の世のため」という幟がはためいていて、前日「追憶のバルセロナ」で真風さんが演じていたフランシスコが芹香アントニオと誓い合っていた「将来のために」という言葉に通じるなぁと感慨深かったです。熊本城復興のために尽力している人びとや真風さんが熊本出身ということとも合わせていろいろ思わずにはいられませんでした。
(初演では退団される絵麻緒ゆうさんと成瀬こうきさんが交し合っていたセリフでもあるんですよね。正塚先生はここになにを込めたかったのかなぁとか考えてしまう印象的なセリフでした)

「追憶のバルセロナ」において、フランシスコ(真風涼帆さん)とイサベル(星風まどかさん)の関係とおなじくらい好きなのが、フランシスコとアントニオ(芹香斗亜さん)の関係です。
アントニオの考え方、立場がこの作品の世界観や作者の内心を表現していると思います。どうするべきか、なにを大切にして生きるべきかという問い。
無二の親友でありながら考え方が異なってしまった2人ですが、心からの信頼があればこそ、相手とはちがう考えをぶつけ合える2人の関係が好きでした。

命を懸ければなんでも守れると純粋な情熱に身を任せ戦争に赴いた若い2人が、現実の戦争の辛酸をなめ、1人は現実的な手段で生き残り、裏切者の汚名を着る覚悟で人命を救うために奔走する。
また1人は瀕死のところをロマの人びとに助けられ、社会の底辺で虐げられながらも仲間との強い絆のもと逞しく生きるその生き方に触れ(「ロマの女なんかどうにでもなると思ってやがる」のは決してフランス兵だけではないでしょう)、自分も草の根から人民に呼びかけ同志を増やし、ゲリラ的戦術でフランスの支配からスペインを取り戻す道を選ぶ。
再会するも考え方も生き方も対立する立場になっていた2人。けれど当時のフランスはとうにアントニオが共感した共和制や人道思想が通じる国ではなくヨーロッパ中を征服戦争によって蹂躙、支配しようとする国となっており、それを身をもって知ったアントニオもまたフランシスコと手を結びフランスに抗戦する立場に転ずる。

――というのが2人の生き方のおおまかな変遷かなと思うのですが、アントニオのセリフがバルセロナの状況を表し、またはフランシスコの心を大きく揺さぶるものでもあるのでとても重要だと思うのですが、芹香さんの滑舌が心配になるレベルで不安定なのが気になりました。これからますます重責を負う立場の人ですし将来を望まれている人だから放置せず専門家に相談されていたらよいけど・・・。
「妻になにをした!」というアントニオの咎めを聞いたフランシスコのマスクの下の表情が変わる瞬間が好きだったので、毎回あのセリフが明瞭に響くことを願っていました。
親友を思って歌う新曲はとても良かったです。歌唱力も雰囲気も。歌う時のシリアスめな表情が知的なかんじですてきでした。スマートかつ内心に憂いを秘める役が芹香さんにぴったりだなぁと。
歌がメインの作品なら不安はないのですよね。
個人的には、真風さんと芹香さんで「メランコリック・ジゴロ」や「愛するには短すぎる」などのバディ感のある、正塚先生の軽快なコメディを見てみたいと思っているので滑舌が改善されるといいなと思います。

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2019/09/20

それが惚れるってことじゃないのか。

9月8日に熊本市民会館、9月14日、15日、16日に福岡市民会館にて宝塚歌劇宙組公演「追憶のバルセロナ」「NICE GUY!!」を見てきました。

「追憶のバルセロナ」は正塚先生の作品としては珍しいコスチュームプレイで個人的に好きな作品でもあり、いまの宙組での再演はうれしかったです。
正塚作品独特の間やセリフでありながら現代劇ではなく時代物であることが、いつもよりさらに難易度を上げているかんじで、熊本で見た時はいまひとつ力不足かなと思う部分もあったのですが、1週間後の福岡公演ではそれもかなりこなれて、タカラジェンヌの吸収力と成長は凄いなとあらためて思う次第でした。

往年の柴田作品に対するオマージュでもありつつ、正塚先生世代独特の価値観も随所に見える作品だなぁと、そこに私は惹かれるのかなぁと思いました。
ロマのロベルトに言わせている『惚れた相手が行きたいならそれがどんな所でも一緒に行こうとするんじゃないのか。それが惚れるってことじゃないのか』とか。往年の柴田先生の作品を見て蟠っていたところに刺さってくるのですよね。
おとぎ話だよねとも思うし、戦後生まれの浅薄な理想かもしれないけど。でもそこが好きです。
理想はいつかかたちになるかもしれない。そんな希望が抱ける世界が好きです。

柴田先生の作品ならばきっと「酒場の女」と「良家の令嬢」という属性で分けられたそれぞれの女性は、その垣根の中から決して外へ出たりはしない。
青年貴族である主人公は、市井にある時は片方の属性の女性と燃えるような恋愛をして、みずからの本懐を遂げたのちは心を切り裂いてでもその熱情を断ち、戻るべき場所=もう片方の女性が属する場所へと戻っていく。
主人公目線からすれば、貴族の継嗣に生まれた者が、青春という刹那の時間を生きたのちに、生まれた時から授けられた重責を背負う覚悟をもつまでの心の軌跡を描いたということになるのかもしれないけれど、ヒロインを思うと私は釈然とはしないのです。
『私にはずっと結婚を待たせている心優しい許嫁がいる』と予防線を張って付き合い始めるとか、女性にランクをつけているからこそできるわけで。いまの時代にこういうものを見せられてどう思えというのかと。これがかつての男のロマンなのかとか? 主人公もつらいよねとか?
たしかに一瞬憂いを帯びた美しいお顏にだまされはしましたけど。でももう無理。(完全に「バレンシアの熱い花」を想定中)
かつての名作も、いま上演するなら内容は吟味してほしいと思います。
でもそうは言いつつ、往年の柴田作品ほどのクオリティの脚本が書ける人が現時点でいるかというと難しいのだろうなぁ。

ゆえに、こんなふうに次の世代の作家がオマージュやリメイクをする試みは面白い実を結ぶやもしれないなと思います。
この「追憶のバルセロナ」も初演は17年前。『ずっとそばにいてくれ、それがお前の力だ』『自分のことのようにあんたを思ってる』―― いまならこれが男女逆でもいいのになぁと思ったりもします。でも正塚先生だからそれはないな。いつか若手の女性作家さんの手で描かれる日が来るといいな。

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2019/07/31

教えて神さまほんとうの愛の在り処を。

7月12日に東京宝塚劇場にて宙組公演「オーシャンズ11」を見てきました。

前日に帝国劇場で「エリザベート」をマチソワ後に一緒に食事をしたヅカ友さんから、私がマチネを観劇している時に柚香光さんの花組次期トップスター就任決定の発表があったことを聞きました。
そっかぁ! 礼真琴さんに続いて95期から2人目のトップスターが誕生するんだなぁと。
そうえいば、琴ちゃん(礼真琴さん)の次期トップスター決定のニュースもムラの「オーシャンズ11」観劇中の幕間に知ったのだっけ。
あの時も95期凄いなぁと思ったのですが、その日帝劇で見た「エリザベート」の主演のちゃぴ(愛希れいかさん)も、マデレーネ役の内田美麗さん(麗奈ゆうさん)もヘレネ役の彩花まりさんも95期で、外部の舞台で95期大活躍中だなぁと思っていたばかりで、そこにさらに柚香さんのニュースで「95期凄い!」ともう何回目かわからないけど思ったのでした。

そして、その「オーシャンズ11」東京公演の感想を書こうと思っていた矢先に『FNSうたの夏まつり』という番組に出演した雪組の朝美絢さんの反響がすごくって、またも95期か・・・(笑)となっていたところで見つけた元宙組の朝央れんさんのこのツイートがぐっときました。

https://twitter.com/asao_ren_/status/1154347003666505728

朝央さんも95期。宙組公演「天は赤い河のほとり」で退団。
そうなんですよねぇ。95期が初舞台を踏んだ2009年はリーマンショック後の景気後退真っ只中。
初舞台公演中にパンデミック宣言された新型インフルエンザの国内初の感染者が神戸で確認され兵庫の小中高が臨時休校になるなどのニュースが毎日のように報じられてムラ界隈では外出を控える人々が多数、ムラ中のコンビニやドラッグストアからマスクが無くなる有り様で。そういう中で千秋楽を迎えた初舞台公演だったのでした。
そして2011年の東日本大震災・・・。宝塚の大変な冬の時代をその目で見て過ごしていた期でもあるんですよね、彼女たちは。

2階に一桁しか観客がいない劇場、1階の両サイドが空いている劇場で公演をしてきた彼女たち。
その公演にも通っていたファンがいるんです。
その時期を全力で公演していた先輩の生徒さんたちがいるから今があること。
その劇場になんども通っていたファンがいるから今があることを忘れないでいてと思います。

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2019/05/27

風が吹けば当てるかもしれない。

5月23日に宝塚大劇場にて、宙組公演「オーシャンズ11」を見てきました。
繰り返してしまいますが感動作ではないけど見て損はない楽しい作品だなぁと思いました。
かっこいい男役さんたちを見られるというのがなんといっても美味しいなぁと。

真風さんはお化粧が綺麗だなぁ。それに表情が大人っぽくてかっこいいなぁ。と思いました。
ほんと、求められている自分をわかっている人だよねぇ。自己プロデュース力が凄い。
ラスティががんがん行っている時はスッと引いたり。場を読むよねぇ。
テスが一生懸命に訴えている時は口を挟まず言い終わるまで待つ。・・みたいなところ好きです。
(私の頭の中で真風さんとダニー・オーシャンが区別できなくなっていました・・笑)
なんというか、真風ダニーは女性を鼻で笑ったりしないところが素敵だよねぇと思います。
抑制が効いているところが大人っぽくて色気があるなぁと。紳士だよねぇ。
・・・いやいやちょっと待って。紳士的でも詐欺師だった。気をつけなくちゃ。

人間的な魅力は半端ないけれど、冷静に考えたら前途ある若者たちを詐欺仲間に引きずり込もうとしたり、まだ人生経験の浅いピュアな女性に自分の価値観を押し付け判断力を揺るがせてコントロールしようとするろくでもない人じゃないの。
本能に従えと言うのも勝算があるからですよね。自分の雄の魅力に自信あり。相手に対する効力が自分にはあると確信あり。
そんな自信を持ち続けていられるのも、自分の力量を発揮する場数をいくども踏んできた経験があるからだろうなぁ。
でもほんとうにそうなのか。ダニーにだって結果はわかりはしないから常に一か八かの賭けであることには間違いはないのか。
確実性と不確実性の狭間でどんな顔でいられるか。そんなとき内心はどうあれ揺るぎなく存在して見せるところがダニーの魅力なんだなぁ。
いやだけど、その賭けに出る前に打てる手(心理戦)は打っているところはやっぱり駆け引き上手の勝負師なんだなぁ。
「風が吹けば当てるかもしれない」――― 風吹かせちゃうでしょ、自分で。
まだ若くて己の判断力に揺らぎのあるテスが勝てる相手ではないのよ。
なのに自分で選ばせた結果にしちゃうところが詐欺師の本領。ほんと用心しなくちゃ。
その人詐欺師のままけっきょくなにも変わっていないのよと誰かテスに教えてあげてほしい。
・・て余計なお世話か。彼女が場数を踏んでなんとかするしかないのかも。

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2019/05/15

愛はどこにいる。

5月9日に広島文化学園HBGホールにて、宝塚歌劇星組全国ツアー公演「アルジェの男」「ESTRELLAS~星たち~」を見てきました。
専科に異動になった愛ちゃん(愛月ひかるさん)の出演が発表になってから観劇遠征を思い立ち、チケットの手配に走ったのも遅かったし、初めてのホールでもあったのでどうなることかと思いましたが、行って本当によかったです。
(広島駅に着いて食べたお好み焼きも柑橘のパフェもお土産のお菓子〈ひとつぶのマスカット〉もめちゃめちゃ美味しくてまた食べたい!広島に行きたい!と夢見ています。まさに美味しい観劇遠征でした♡)

「アルジェの男」はさすが柴田先生の脚本という面白さと、星組メンバーの芝居力が活きて見応えがありました。
いまの感覚で見ると、登場する女性たちがそろいも揃って男性たちに都合がよいなぁと思えるのですが、書かれた当時を考えると、宝塚らしく柴田先生らしく破格に女性に優しい、女性たちへの愛おしみの気持ちのこめた作品だったのだろうなぁとも感じます。

往年の柴田作品には、酸いも甘いも噛み分けた賢夫人たちがしばしば登場しますが、「アルジェの男」にもボランジュ総督夫人(白妙なつさん)とシャルドンヌ夫人(万里柚美さん)という2人の大人の女性が登場します。
男性社会の中で確固とした居場所を築きひとかどの紳士に一目置かれる、タイプの異なる2人の女性は、こういう風に賢く男性に愛されれば女性は幸せになれると示しているようにも感じました。(いまこれが新作だと噴飯ものですが・・苦笑)
1974年の少女時代の私がこの作品を見たらそのようなメッセージを受け取っただろうなぁと思います。
そしてそれが柴田先生の女性たちへの愛なのだろうなぁと思いました。

「バレンシアの熱い花」に登場するマルガリータが大人になったらボランジュ夫人のようになるのかなぁ。イサベラが紆余曲折の末にシャルドンヌ夫人のようになる可能性もあるのかなぁなんて想像したりもしました。
「バレンシアの熱い花」の初演が1976年。まさに当時の柴田先生の理想の女性像なのだろうなぁと思ったり。半世紀近い歳月を経ての上演といのはいろんな感慨を呼び起こさせるものだなぁと思いました。
いまの少女たちにはどんなメッセージになっているのでしょう。訊いてみたい気もします。

主役のジュリアンを演じた礼真琴さん。やはり歌を聴かせるなぁと思いました。聴いていて心が高揚する歌い手さんだなと。
いまを感じさせるというのか、はしるようなクセになるような歌でした。それがジュリアンという若者の生き方に合っていたような気がします。

孤児で気にかけてくれる大人もいない。悪さをすることで仲間と連帯しているような若者。「コロシ(殺人)」と「タタキ(強盗)」以外はなんでもやったと豪語する。頭も良いし口も立つ(女の子に対しても)血気も腕力もある。でもこのままではいずれ街角で野垂れ死ぬだろうそんな若者。
そのことを彼自身がいちばんわかっているのだろうなと。そうはなりたくない。だから荒唐無稽とも思える野望を抱いているのだなと。そこからはじまる物語でした。
このままで終わるには知能もプライドも高い。けれどそのポケットにはなにもない。――With no love in our souls and no money in our coats(R.Stones)だなぁって。
野望が唯一の拠り所なんだろうなぁと思いました。

そんな若者が偶然にもチャンスを掴む。仲間たちに揶揄され袋叩きにも遭いながら信念のもと歯を食いしばって下積みから上を目指しているその眼光。綺麗事が言える身分ではない。利用できるものはなんでも利用しなくては目指すところへは辿り着けないとわかっている。礼真琴さんが見せてくれるジュリアンを非難する気にはとてもなれませんでした。
都会の裕福な家庭に育っていたら、心に闇を抱えることもなく自らの才能を発揮できていたのだろうに。

そしてパリで出逢う彼とは境遇のちがう若者たち。エリザベート、ミッシェル、ルイ、アナベル・・・。
彼らがあたりまえに手にしているものはすべて、彼にとっては自ら勝ち取っていくもの。
彼には、彼らが自分と同じ人間とは思えていないふしがあるような気がしました。彼らに共感すべき心を見出していないような。彼らの感情とは手玉にとり利用するためのもの。成り上がるための道具でしかないんだなぁと。

ボランジュの期待に応えるべく黙々と仕事に精を出し、自分が目指すところへ向かって着々とプランを練り実行していくジュリアン。愛を知らないジュリアン。
一緒に働いているミッシェル(紫藤りゅうさん)とはすこしずつ何かが芽生えてきているのかな?と思えていたその矢先に。
過去と現在が交錯し、過去のためにいまが砕かれようとして、いまのために過去を抹殺しようとして。
ついには自分がやったことの報いを受ける。
そのまえに一瞬でもサビーヌによって愛がいまここにあると知ったことが救いかなぁ。やっとジュリアンの空虚は埋まったのだろうなぁと思えたことが。
でもサビーヌの気持ちを思うとやりきれないなぁ。

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2019/04/28

夢を売る側に。

4月25日に宝塚大劇場にて宙組公演「オーシャンズ11」を見てきました。
この公演は、105期生の初舞台公演でもありました。

11時公演の幕間に礼真琴さんの星組次期トップ就任の発表を知り、2幕の初舞台ロケットを見ながら10年前のちょうどいまごろ私は95期生のロケットを見ていたんだなぁと、あの頃の初舞台生からトップスターが生まれる時が来たのだなぁと感慨深いものが込みあげてきました。
フィナーレでは、宙組95期現役生のずんちゃん(桜木みなとさん)、ゆいちぃ(実羚淳さん)、まりなちゃん(七生眞希さん)がクールに男役ナンバーを踊っている姿があり、10年という月日がこれほどにタカラジェンヌを・・・とさらに勝手に感動しておりました。

「オーシャンズ11」は、ストーリー自体は単純でとりたてて感動作ではないけれどノリの良いナンバーと男役のかっこよさを堪能できる嬉しい作品でした。
宙組にはいかしたいい男(役)がこんなにいたんだ。私が気づかない間に・・・。(なんで気づかないかといったら・・・まぁその)
下級生にいたるまでスーツやタキシードを着てキザったり自分なりの男役に果敢に向き合っている姿は清々しくも微笑ましくも頼もしくもありました。
数年後の姿が楽しみだなぁと思いました。そしてこの先の10年も私は宝塚を見づづけていられるのかなぁなどと感傷的になってみたり。

歌、ダンス、容姿、芝居・・・etc.etc.夢を売るタカラジェンヌが魅せてくれるものは様々ですが、この作品をもっとも引き立てているものは役者それぞれの「男役(娘役)としての魅力」だと思います。1人1人いかにキャラ立ちして自分の個性と絡めて魅力的に演じるかが肝だなぁと。
容姿・役作りに個性がある人ほど美味しいなと。それで明暗が分かれてるなぁというのが、初日から6日目に私が見た印象でした。
すでに爆発している人、いろいろ試して楽しんでいる人、掴みかけて試行錯誤しているように見える人・・・。

主演のダニー役の真風さんのさすがの男役力。
ユニセックスで妖しく美しい魅力を感じる男役さんは何人も覚えがあるけれど、男性のしなやかな色気を感じさせる男役さんはなかなか稀かと思います。それをまさに真風さんに感じました。
いつも余裕綽々に見える彼がテスにだけは必死が見えたりうっかり焦ってしまうところ、天を仰ぎ見るようなしぐさ、すこし崩した姿勢、テスに対して前かがみなところ・・・いちいちカッコイイ♡と思いました。

キキちゃん(芹香斗亜さん)ラスティのこの路線は美味しいなと思いました。
口数多くて調子よくて真風さんとのバディ感がいいなと。こういうタイプはちょっと真面目にものを言うとかんたんに株があがるのよ(笑)。
いいところをさらっていく役だけど、それをちゃんとものにしているから美味しいのだなぁと思います。
そういえば組内正2番手がラスティを演じるのは初なのだっけ。真風ダニーとの銀橋の掛け合いは新ナンバー、フィナーレの小池作品名物の歌唱指導と、過去のラスティ役より見せ場が増えていて瞠目。

ずんちゃん(桜木みなとさん)のベネディクトはこれまでになく苦戦しているかもと思いました。
テスに裏の顔を見破られて豹変した時の歌はクセがあってとっても良かったです。
そこにいたるまでのキャラクターの輪郭がはっきり見えなかったなぁと。

繊細な表情を見せるところはさすがなのだけども、その前段階の胡散臭さが薄いから神経質さだけが際立ってしまうかんじかな。
見せ場である「夢を売る男」の場面が公務員のように見えてしまったのだけど、シングルのスーツのせいもあるかなぁ。
アメリカの成功者って見た目をとても重視して自己プロデュースしているイメージがあるので、自分の弱点が見えるスーツは選ばない気がするのだけど。自分をどう見せたいのか謎だなぁこの人は・・・と思いました。
若々しく輝いて見せたいのか、安定感のあるマッチョに見せたいのか、スマートでインテリジェンスに見せたいのか。
何歳くらいの何系のアメリカ人の設定なのかな。浅黒い肌の意味はどういうことかな。名前からすると父系は英語圏の白人っぽいけど、ほかの遺伝子も入っている設定かな。
なにを原動力にのしあがってきた人なのかな? ギャンブル好きの父と陰で泣いていた母に対してどれほどの感情を持っているのか。それはネガティブなものなのか。愛着か軽蔑か。
ダニーにスロットマシンを揶揄されて「最高の機材を揃えているんだ」反論するところなど、凄くベネディクトのコンプレックスが現れているセリフだと思うけど、そこに違和感なく繋がると良いなと思います。
ダイアナに押し切られているのもどういう関係?と思いました。ダイアナのどこに魅力を感じているのか。名声? 要求がはっきりしたところ?
そしてなぜテスに執着しているのか。トロフィーワイフをほしがるマッチョには見えないし。(そもそもまどかちゃんのテスの魅力が明確じゃなかったのもあるけど)
「うーん、この人がわからない・・・」で1回目の観劇が終わってしまったので、次回の観劇でどう変わっているのか楽しみにしていようと思います。

ヒロインのテス役の星風まどかちゃんもまだまだいまいちキャラクターがはっきり見えなかったなぁと思います。
エコプリンセスはあのようなドレスを好んで着るだろうか?と思いました。そもそもまどかちゃんはねねちゃん(夢咲ねねさん)ではないのだから、まどかちゃんに似合うドレスで魅了してほしいなぁとも思いました。
健康的なミニのセパレーツとかベビードール風とかのほうが似合うんじゃないのかなぁ。手足が長いから。ラストの白いレースのドレスは素敵に見えました。
11時公演のフィナーレのデュエットダンスで、真風さんがまどかちゃんの顔に掛かっていた何かをほほ笑みながらとってあげていたのがとてもステキで、真風さんのこういう表情を見せてくれるまかまどコンビはやっぱり良いなぁとときめきました。

11メンバー以外のカジノの客たちもディーラーたちもエルチョクロもほんとに魅力があって目が足りなかったです。
自分の見せ方を知っている上級生はさすがでしたし、これからの生徒さんたちにとっては自分の見せ方を学べる良い機会なんじゃないかなぁと思いました。そういう意味では次回の観劇、リピートが楽しみな作品だなぁと思います。この作品後の次回作にそれがどう活きるかも。
愉しくて作品を通じて役者さんたちのポテンシャルを感じられてわくわくするという点で、この作品が宙組にあたってよかったなぁと思いました。

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