カテゴリー「♖ 宝塚」の425件の記事

2022/09/18

きっとやり遂げる。

400eac13b60a4e1585c74fe7520dbdd8 9月15日と16日に宝塚バウホールにて星組公演「ベアタ・ベアトリクス」を見てきました。
極美慎さんの初主演作であり演出家の熊倉飛鳥先生のデビュー作となる作品です。
なによりこの折柄、無事に観劇できてよかったです。

観劇前に付け焼刃で、ロセッティ、エヴァレット・ミレイ、エリザベス・シダルの絵画やエピソードを調べて臨んだのですが、この題材で希望を感じる作品になっていたのに驚きでした。
ロセッティの女性関係やリジー(エリザベス・シダル)の亡くなり方から悲劇性の強い作品になるのかなぁ。救いのある作品になっていたらいいなぁ。と思っていたもので。

男女の愛憎の部分を掘り下げるというかんじではなく、父親からの呪縛や権威に対する反発心、己の力量や優れた友に対する複雑な心情などといった青年が抱えるコンプレックスとブラザーフッドを素直に描いた作品になっていたと思います。
それがバウ初主演の極美さんに合っていたし、デビュー作らしいなぁ。若い作品だなぁと思いました。

C1699b459c8940a7b4cea9a63adb3f531幕は冒頭からテンポよく進行していく中で、あ、これ(付け焼刃で見たばかりの)あの絵を表現しているよね?と思うシーンが出てきて面白く見ました。
私が気づいた範囲では、エヴァレットの「ロレンツォとイザベラ」と「オフィーリア」、ロセッティの「プロセルピナ」そして「ベアタ・ベアトリクス」があったと思います。

F7981c0672a744e0aebdd8375571f06a「オフィーリア」の制作場面。
水辺の風景を現したと思われる幻想的なダンサーたち、そしてそこに浮かぶリジーが素敵でした。
天飛華音さん演じるエヴァレットの「オフィーリア」のモデルがロセッティの妻だったとは。
彼女はいろんな画家のモデルを務めた人気モデルだったようで。

B543ddba13384e189eb86248e693e3fb その人気モデルのリジー(小桜ほのかさん)を射止めたのがロセッティ。やっぱりイタリア男の血ですかねぇ。
私はその名前から勝手にロセッティはイタリア人画家だと思っていました。イタリア系の英国人だったんですね。ロイヤルアカデミー出身なんだ。
演じるのは極美慎さん。そりゃあモテモテだわ。納得でした。

「プロセルピナ」の場面はジェイン役の水乃ゆりさんに圧倒されました。
前作までの可憐な雰囲気とは打って変わった迫力で。
緑青のドレスを纏っての登場にこれはもしかして?と思っていたところ冥界の王とザクロと思しき果実が目に入り確信しました。
これはまちがいなくプロセルピナ(ペルセポネー)だと。

人生の半分を冥界に捕らわれたプロセルピナですが、青いドレスを脱ぎ捨てたとたんに能動的に獲物を捕らえる情熱のファムファタルへ。
捕らわれたのは?


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大変魅力的なジェインに一目惚れするのはさもあらん。それにしてもロセッティ、恋に積極的だなぁ。
その半分でも仲間に・・ってわけにはいかないか。いつも不憫なのは碧海さりおさん演じるウィル(ウィリアム・ホルマン・ハント)。いいやつだなぁ。

1幕目がとても詰め込まれていたので、これって1幕ものだったっけ?と錯覚しそうになりました。
2幕は時間が行き来しながらリジーを失ったあとのロセッティが描かれていました。

登場人物の1人ひとりが劇的なエピソードを持っている人たちなので、それを繋ぐだけでもドラマになるとは思うのですが、そこに何を映しこむのだろうと思っていたら、ああこれだったのか。

描きたい対象があるうちは、それを描き続ければよい。
捕らわれたものがあるならば、それを追い続けたらいい。
きっと希望が見出せる。
どうしてもそれに向き合えない時期もあるけれど、結局それが支えになるよね。
と、私はこの作品を見て思いました。

極美慎さん演じるロセッティ、これは何をしてもゆるしてしまうよねぇと思いました。悪戯っぽい笑顔がとても魅力的。
父親ガブリエーレ・ロセッティ(朝水りょうさん)はダンテを愛するあまりに息子にダンテと名付けてしまうようなイタリアからの亡命詩人でイタリア語の教授。
重いですよね。ダンテというファーストネームもその期待も。
彼もまたダンテが描いた久遠の美少女ベアトリーチェに憧れ、彼女を絵画に描くことを夢見て画家を目指した。
父親、ダンテ、ベアトリーチェ(ベアトリクス)が彼の人生を呪縛しているのだなぁ。

画家を志しロイヤルアカデミーオブアーツに入学するも劣等生でなかなか筆を握らなくなっていたロセッティが、退学処分をかけてどうしても絵を描かなければならなくなったときにモデルに切望したのが帽子屋で働くリジー(エリザベス・シダル)。
一目見て自分のベアトリーチェだと直感して即アタック。この行動力たるや。
それにもかかわらず・・・なにやってるのよ!と思うことばかりなのに、憎めないよねぇ。困ったもんです。

ロセッティのヘアスタイルがずっと西城秀樹みたいだなぁと思って見ていました。
きれいなお顔立ちなのでもっと顔回りスッキリのほうがいいなぁと思ったのですが、あれは熊倉先生の指示なのかな。
リジーが亡くなったのは30代でそれから2年後くらいに「ベアタ・ベアトリクス」を描いていると思うのだけど、エヴァレットが病室に訪ねてきたのもその頃の設定でしょうか。
としたら彼がロセッティと競って描くつもりの家族の絵というのは「はじめての説教」になるのかな。
エヴァレットの言葉と眼差しに心を動かされていくロセッティの表情がとても感動的でした。
いつも陽気にふるまうか自堕落に悪びれてごまかしてきた彼が、やっと素直な自分の心を語ることができたなぁ。

この場面のすぐ後のウィリアム・モリス(大希颯さん)のケルムスコット・マナーのシーンは、ロセッティが亡くなった1882年、その次の場面はケルムスコット・マナーにアトリエを構えた1870年。
1幕が19歳から30代で、2幕は30代、50代(ロセッティはいない)、40代と場面ごとに年齢が一気に増したり若返ったり。
その割にみんな見た目に変化がないなぁと思いましたが、こんなに場面ごとに年代が行ったり来たりするとメイク替えも難しいかな。(登場人物たちもほぼロセッティと同じ年齢)

天飛華音さん演じるエヴァレットは、見るからに優等生でロセッティたちとは毛並みがちがうのがよくわかりました。
そして優等生の彼だからこそ愛した人に一途に大胆な行動に突っ走ってしまうのだろうなと。それによって名誉もキャリアのすべてをも投げ捨てることになってしまっても。
彼が駆け落ちしたエフィー(瑠璃花夏さん)は彼のパトロンであるジョン・ラスキン(ひろ香祐さん)の妻ですが、劇中でも言っていたように12歳で求婚され19歳で結婚したものの夫婦関係は一切なかったそうです。(のちにラスキンは9歳の少女に魅了され彼女が16歳で求婚するというようにエフィーの時とおなじことを繰り返しています)
そういうエフィーの寂しさに共感したのかなぁと思いました。ロイヤルアカデミーに史上最年少で入学した彼もまた孤独な人だったのだろうなと。

天飛さんは舞台センスがある人だなぁと思いました。
「オフィーリア」の制作場面の鬼気迫る雰囲気。そしてロセッティの病室を訪ねる場面は引き込まれました。
彼女を見ていてなんとなく新公時代の音月桂さんぽいなぁと。そして極美慎さんがおなじく新公時代の凰稀かなめさんぽいなぁと思いました。
これからの2人がどんなふうに成長していくのか、見届けずにはいられない気持ちです。

小桜ほのかさん演じるリジーは、私がイメージしてたエリザベス・シダルとはタイプがちがう可愛らしい女性でした。
私は薬物を過剰摂取してしまうような不安定な女性のイメージを抱いていたので。
小桜さんのリジーはアニメの少女みたいというか、名前がおなじせいか話し方のせいか「黒執事」に登場するリジーみたいだなぁと思いました。
ロセッティを鼓舞する姿もとても健気でロセッティを支える良妻になりそうだけど、芸術家たちのミューズになるようなモデルと言われるとちがうような。
自我が見えない人だなぁとも思いました。おかげで物語がサクサク進んだともいえるかなぁ。

水乃ゆりさん演じるジェインは、脈絡とか関係なしにファムファタルと言われて納得してしまう存在感がありました。
ロセッティが惹かれてしまうのもしょうがないし、モリスがゆるしてしまうのも納得してしまう。
奇妙な関係、奇妙な存在に説得力があるのがいいなぁと思いました。
そしてジェインの夫があの(有名なテキスタイルの)ウィリアム・モリスとは知らなくて。お芝居の途中で気づいてそうだったのかぁ~!と思いました。
(知っていたらモリスのワンピースを着て観劇したのに~)

碧海さりおさん演じるウィルは、なんていい人なんだぁ~~~と思いました。
彼がいなかったらロセッティはどうなっていたか。
手のかかるロセッティをいつもいつも気にかけて心配してあげて、ロセッティが死にかけたときはずっとつきっきりだったのに、あの場はエヴァレットに譲って自分は表に出ないんだ。ほんとになんて気がいい人なの。
絵の才能もロセッティたちに勝るとも劣らないと思うんだけど、そこを誇示したりしないし。
ジョン・ラスキンを大大大尊敬しているところも垣間見えてふふっとなりました。愛すべき人だなぁと思います。

作品自体にも希望を感じましたが、星組の若手の人たちにも希望を感じた舞台でした。
極美さんは決して器用な人ではなさそうなのでこれから先も幾年もダメ出しをうけたりするんだろうと思いますが、それだけの素材をもっている人だと実感しましたし、それだけの期待をされている人なんだとも思いました。
これからの星組も見続けたいと思いました。

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2022/09/11

キミは黙ってるほうがステキだよ。

9月1日と2日に宝塚大劇場にて宙組公演「HiGH&LOW」「Capricciosa!!」を見てきました。

正直なところ「HiGH&LOW」 は私の趣味の範疇ではなく、原作ドラマも公演解説も見ないで観劇したのですが、これが意外にもう1回見に行けないかなぁと思うくらいに楽しめました。
舞台上で所狭しと飛び跳ねる宙組生を愛でることができる作品になっているのがよかったです。
いつもの宝塚の演目とはちがうせいもあるかもですが、100期以下の皆さんがイキイキと活躍しているように感じました。
一言でまとめると「目が足りない!」

開演前はヴェローナ(ロミ+ジュリ)みたいな世界観と思っていればいいのかな?と思っていたのですが、そこまで拗らせてはいなくて。
コブラ(真風涼帆さん)周辺の人々は邪気もなくて、ちゃんと勤労しててえらいねと思いました。親世代との関係も良好みたいだし。
「笑顔が可愛い得なやつ」(亜音有星さん)は私も好みです。
山王街=モンタギューと思えば、たしかに居心地が良さそうなのはわかる気はします。
敵の「舞踏会」に変装して潜入するのもロミジュリリスペクトですよね。

帰属意識に溢れた若者たちがチームごとにイズムやテリトリーを持っていて、互いに反目しあっているのはわかりました。90年代っぽくも感じました。
冒頭でコブラが言う「この街を守りたかっただけだ」とはなんだったんだろう。それはさいごまでわからず終いでした。

1回目の観劇はストーリーを追っていたのでえ?で終わってしまったのですが、2回目はこれはこういうパフォーマンスなんだと思って見ることで役になりきった彼らが舞台で
花を開かせる瞬間を目の中に収めることができて面白かったです。

潤花ちゃん演じるカナは、余命わずかと言いながら明るく元気にふるまうフレンドリーな女性で、潤花ちゃんはやっぱり可愛いなぁと心が潤いました。
小学生以来会ってなかった相手にいきなり「私死ぬの」って言うのはちょっと???でしたが。
あれはいま言わなくちゃって彼女なりに勇気を振り絞った結果なのかなぁ。でもすごく軽く宣っていて、絶対にシリアスにしたくないって決意の表れなのかな。

そして余命宣告されて「やりたいこと」っていうのがあれなんだなぁ。ほかのことを思い煩う必要がないくらい家族に愛されている人なんだなぁと思いました。
そんな愛されて育ち恵まれた人が、見捨てられた人々が棲む無名街の闇市で買い物をしたい♡と連れて行ってもらって嬉しそうにはしゃいでいる姿がぞわぞわしました。
そこで見て経験したことをワクワクした♡とニッコニコの彼女に困惑。私は野口先生の作品のこういうさりげなく挿入される描写が残酷でグロテスクに感じられて苦手なのだなぁ。

ロッキー(芹香斗亜さん)はちょっととぼけた雰囲気もあり紳士的なふるまいだけど一転して凄味のある人みたい。
舞台では上辺しか描かれていないけれど原作ではもっとイズムがある人なんだろうな。と勝手に思いました。
彼の舞踏会の客人や従業員を無個性にせずキャラクターをつけて見せてほしかったなぁ。エピソードがない分、1人ひとりの存在にストーリーを感じられたらいいのにと思いました。
ナンバー2役の風色日向さんは、カチッとした身なりとスマートな身のこなしながら得体の知れない雰囲気がよかったです。本家もこういう人なのかな。

スモーキー(桜木みなとさん)がとても心に刺さりました。
あの朧かながら存在感のあるなんともいえない雰囲気。異空間に迷い込んだような不思議な感覚に陥りました。
RUDE BOYSのナンバーがとても良かったです。歌が凄い。そして秋音光さんや優希しおんさんなど身体能力が高いメンバーによる同時多発的なパフォーマンス。本当に目が足りなくて、ぜったいに見逃してしまっていると思います涙。

お祭りの場面は着流しの浴衣姿の真風さんを見られてよかったです。
祭り太鼓も本格的で心が沸き立ちました。けど季節はいつなんだろう。浴衣だから夏祭り?? にしてはほかのシーンが夏っぽくないんだなぁ。
コブラは達磨一家が仕切っている祭りだとわかっていて出向いているのかな。だとしたらそうとうむちゃなリクエストを叶えてあげているんですね。カナのために。

殴り合いの場面を見ていると、アドレナリンと脳内麻薬物質に支配されてる状態だなぁさらに興奮状態を求めてエスカレートするやつやん。セルフコントロールが効く人ならいいけれど。と心配になりました。
コブラも限度ってものを知らないヤカラがいるって言っていたけど。

「キミは黙っているほうがステキだよ」というのはカナのセリフですが、これを「冷静さを保て」という意味だと自分に落とし込むコブラは深慮の人なんだなぁと思いました。
私には、カナは自分が聞きたくない言葉をコブラに言わせないためにそう言っているように思えたから。
でも状況を冷静に見る目こそが最良の生き残るすべだし、そんなコブラは決して暴力行為の依存症ではないのだなと思いました。

苦邪組のリン(留依蒔世さん)は5つのチームの本拠地に火を放ったりしてSWORDを敵に回して何か得することがあったのかな。
チーム同士で潰し合いをさせる方向でもっと緻密に計画実行すればよかったのに。いろいろ雑だなぁと思いました。
SWORDに火をつけて闘って敗れるまでがお仕事なんでしょうけど。なんか間尺に合わないなぁ。
宝塚オリジナルのチームらしいので、もうやりたい放題好き放題やっちゃって爪痕を残してほしいなと思いました。
春乃さくらさんをはじめとする七姉妹のチャイナドレスの着こなしがとても美しくて好きでした。
そういえばバイフー(小春乃さよさん)、メイナンツー(泉堂成さん)と、役名といい服装といい、苦邪組ってチャイニーズマフィアかなにかなのかな。

レディースの女の子たち。そんなにパワーに溢れているんだからもっと大きな夢が持てるよ。とは思うんだけど、それほどにここ(山王街)は居心地がいいのかなぁ。
女の子を傷つけるのは夜の街だけじゃないからなぁ。
純子さん(天彩峰里さん)も本気でなにがなんでも「コブラの女になってやる」っていうよりは、いまの状態でいることが大事なのかなと思いました。
仲間を気にかけてあげたりチームでいることが。
集まっているメンバーもどこかで寂しい思いをしてきた女の子たちなのかなと。

それぞれの登場人物たちの関係性を見る人の観点でさまざまに好きなように落し込んで愉しむ作品なのかなと思いました。


「Capricciosa!!」は大介先生のショーにしてはまったりしていた印象でした。
いつもだったら神妙にお芝居を見てショーで盛り上がるというのが定番ですが、今回は1幕目の「HiGH&LOW」 でアドレナリンをそうとう放出しちゃった後だったからでしょうか。
それぞれの場面は大介先生クオリティで楽しかったです。
チョンパはやっぱり良いですね。

宙組の歌上手さんたちが各所で活躍していた印象が強いです。
とくに天彩峰里さんが目立って活躍されていたように感じました。彼女が歌いだすと注目せずにいられません。
若翔りつさんと朝木陽彩さんのデュエットもこれ聞きたかったやつだぁと思いました。
留依蒔世さんはさすがのよい声。中詰めも、圧巻のエトワールも。退団されるのが残念でなりません。

私にとっての
心のスイーツ♡水音志保さんが目立つポジションにいたのがうれしかったです。
紫藤りゅうさんとのペア、2輪のバラのようで素敵でした。それから真風さん芹香さん桜木さんとのデュエットダンスの場面は組む相手ごとに異なった雰囲気を楽しめて至福でした。
「ミ・アモーレ」のドレスを翻すときのキュートな表情が鮮やかに記憶に残っています。

潤花ちゃんの笑顔には肯定されるような救われるような気持になります。まさに衆生を救う笑顔。
スカラ座の場面、白いドレスで真風さんと踊る姿は夢物語のようでした。
この場面はプリマドンナの春乃さくらさんも素敵でした。歌声も。

夢物語といえば、ヴェネツィアの場面も。
ゴンドリエーレ瑠風さんと帽子の美女桜木さんの絵がとても美しかったです。

「HiGH&LOW」の反動か、娘役さんたちに魅了されたショーでした。
宙組のすらりとして楚々と品の良い娘役さんたちを堪能しました。

スカラ座の場面からフィナーレに向けて、あれ?これは?と思う演出が心をざわつかせました。
まるで真風さんへのはなむけのような。
もしかして東京公演では客席の涙を誘うことになるのかしらと。

血潮が騒ぐというタイプの作品ではなかったけれど、パフォーマーの技量ともども質の良いショーという印象を受けました。
終演後のロビーの階段で「かっぷりちょ~ぉざ~ぁかっぷりちょ~ざ~♪」と小さな女の子が楽し気に歌いながら降りていた姿に遭遇し、良いショーだったのだと実感しました。
中詰めのお衣装が全体として見たときにのっぺりとしているように感じられていまいち気分が上がらなかったので、そこだけ改善されたらいいのになぁと思います。

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2022/07/13

アルルカンの哀しみ。

7月5日に宝塚大劇場にて花組公演「巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜」「Fashionable Empire」を見てきました。

予定では5日と6日はドラマシティで宙組公演「カルト・ワイン」を見るつもりでした。5日の夜はムラでヅカ友さんたちと合流してDVD鑑賞会も予定していました。
しかし数日前から台風4号の動きがあやしく新幹線に遅延が発生するかもしれない、どうしよう前泊したほうがいいかなとやきもきしていました。

4日午後の予報を見ると、どうやら台風4号は速度が遅く5日の移動に影響はなさそうなので予定通り5日の新幹線に乗ることに決め、その旨をヅカ友さんたちに連絡して安堵して・・翌朝は早めの出発だからとさくさく夕食とお風呂を終えてタブレットを開いてみると宝塚歌劇公式アカウントからLINEが・・・。

「公演関係者から新型コロナウィルスの陽性が確認されたため、7月5日(火)~7日(木)の公演を中止させていただきます。」

まさに天国から地獄の心境。呆然として言葉も出ませんでした。

折しもの台風接近により新幹線は手数料なしでキャンセルできる状況でした。どうしよう・・・。
数か月前から計画を立て楽しみにしていた観劇とDVD鑑賞会。鑑賞会だけでも参加する??
混乱する脳みそをほったらかしにして手は勝手に宝塚歌劇公式HPを開いていました。花組の5日の15時半公演は?がーん貸切公演じゃん。

いや待って。さらに検索の手をすすめると「ぴあ貸切」とな。これは渡りに舟かも。ことし宙組大劇場公演「NEVER SAY GOODBYE」が公演中止になったときにぴあ貸切のリセールを買って観劇した経験が。ぴあのサイトを開くと、あった~リセール。そのままぽちっと。
ヅカ友さんたちに「花組15時半を見ることにしたので遅れるけど参加します」と連絡。この数分の自分の行動力に驚き。ふだんは百万回逡巡するタイプなのに。

ということで急遽観劇した花組大劇場公演。
なんの下調べもしていなくて、「巡礼の年」はリストとショパンとサンドが出るのよね程度の予備知識で見たのですが、これが「すごく好きなやつ」でした。
こういう作品を待っていたんだと思えるほど。

リストとダグー伯爵夫人マリーとの関係は、昔父が持っていたクラシック全集のレコードについていた解説で知っている程度だったのですが、星風まどかさん演じるマリーは想像より純情で可愛らしい女性でした。

白皙の美男で突然雷に打たれたように発奮してそれまでの生き方を大きく変えるリストはイメージ通りで、その魂の変遷を全身で表現する柚香光さんに引き込まれました。
そして、肖像画のリストがなぜあのヘアスタイルだったか。彼がピアノを叩くと弧を描くように跳ね上がる麗しい髪束を見て合点しました。乱れる髪の毛さえも音楽的で神がかった美しさでした。
これは当時の女性たちも夢中になったにちがいない。もちろん私もなる、と。

その生涯を1時間半にどんな手をつかって収めるのだろうと思いましたが、駆け足ながらどんどん展開してここに収めたかーと思いました。
夢か現かの場面が効いていたなぁと思います。
リストが少年リストを受け入れる場面は胸にきました。お隣の見ず知らずの方が嗚咽を漏らされたのを聞かなかったら私も危なかったかも。

当時のパリで、ハンガリー出身の野心ある若者がどういう目で見られていたのかも想像できました。
そこには歴然とした格差の壁があったのだろうな。それを必死で乗り越えようとしたのだろう青年リスト。
彼のあのスタイルはそういうことだったのか。
自分を持て囃す他者を嘲笑うことで自尊心を保ち、返す刀で自分自身をも嘲笑っていたのだろうな。
それを見抜いて彼に突きつけたのがマリーだったんだなぁ。
そりゃあ居ても立っても居られないだろうな。

ちょっと意地悪な見方をしてしまうと、知られたくない彼自身の正体を暴いて自尊心を粉々にしたマリーを自分に夢中にさせることで自尊心を取り戻そうとした部分もあるのじゃないかな。
他でもない彼女が自分に夢中になっていることに意味があったのだろうなと思います。
自分のキラキラでも超絶技巧でもなく、精神的な部分で彼女を夢中にさせていることが重要ポイント。

パリを離れ、合わせ鏡のようにお互いだけを見つめることで満たされたかった。
彼女の中の自分を愛していたんだなぁと思います。

世間の批評から逃れて、自分だけを認めてくれる人と同じものを見て悦び同じものを嫌う蜜月に出現した小さな齟齬。
自分が受容しないものを受容するマリーに彼は傷ついたのだろうなと思います。
自分で自分を認めてやれないリストにとってマリーが彼だけを認めている、ということがあのとき彼のすべてだったんだなと思います。

14歳かそこらの彼が経験したことは、世界のすべてから拒絶されるに等しい出来事だったのだと思います。
そのトラウマをずっと引きずっている。
フランス人ではないこと。ハンガリー人であること。エリートではないこと。貧しさ。庇護されないこと。いつも遥か上にあるものを見て生きていること。

こどものような癇癪を起こすリストの葛藤に気づくのが、彼と似た境遇でもあるフレデリック・ショパン(水美舞斗さん)。
リストがもらえなかった神様からの贈り物をもらっている人。
そしてリストの野心と自尊心をよくわかって彼を焚きつけるジョルジュ・サンド(永久輝せあさん)。
良くも悪くも彼の野心とスノビズムを理解し、そのこどものような魂を愛している人。魂の半分。
マリー、ショパン、サンド。三者三様にそれぞれリストと同じ魂を持った人々だと思いました。
その人物配置が巧いなと。

最後まで自制心を保ったストーリー運びで、脱線しなかったのもよかったなと思います。
ダグー伯爵(飛龍つかささん)とラプリュナレド伯爵夫人(音くり寿さん)の役回りも効いていたなと思います。
もっと膨らませたい部分もいろいろあったと思うのですが、1時間半にまとめてあらゆる世代の観客に提供するには絞り込まないとだから。

私は聖乃あすかさんが演じたジラルダンという人が心に刺さって興味が湧いたのですが、そして星空美咲さん演じるデルフィーヌ・ゲーがどんな人なのかもっと知りたかったけど、本筋から逸れてしまうからこれでよかったのだと思いました。
(後で自分で調べたのですが、とても興味深い人物で、いつかこの2人の人物で作品を描いてもらえたらなぁと思いました)

彷徨えるリストに大切なことを気づかせるショパン、そして彼とサンドの会話。
30年後に再会したリストとマリーの対話。
このラストへの流れがとても好きでした。
彼は世界に愛されていたし、彼もこの世界を愛している。それに気づいてここにいるのだと思うと自然と涙が。
なによりもそれを証明するリストの少年たちへのまなざしが心に沁みました。

生田先生が作品に添える副題にはじめて共感できました。(「シェイクスピア」の頃から苦手だったのですが)
このリスト・フェレンツを3か月演じきったあとの柚香さんにどんな変化があるだろう。そんな楽しみを持てた作品に出会えた幸せを感じる観劇でした。

「Fashionable Empire」もビートの効いたちょっと懐かしい選曲がとても好きなショーでした。
この公演で退団する飛龍つかささんと音くり寿さんが同期の方たちに囲まれる場面は思わず感動でうるうる。
聖乃あすかさん中心の場面では、「ぴあ」「ぴあ」言っていた気がするのだけど聞き違いかな。ぴあ貸切だからかな。通常公演を見ていないのでわからないのですが、聖乃さんがくっさくキザっていてときめきました。男役楽しんでいるなぁ笑。

柚香さんと水美さんが競い合うように高速リフトをする場面もびっくりしたなぁ。
音くり寿さんと美風舞良さんが対で歌う場面も聞き惚れながらもう二度と聞けないなんてもったいないことだなぁと思いました。まだまだ聞ける機会があると思っていたのに。

永久輝さんのハスキーな歌声もとても色気があって好きでした。お芝居に引き続きこのショーでも一瞬女役をされていましたよね。男役に早変わった瞬間の開放的な得意顔にフフッとなりました。

フィナーレのデュエットダンスは、難易度のある振り付けを軽々とこなしながらもラブフルな雰囲気はこのコンビ(れいまど)ならでは。
スピーディーな展開で記憶が前後しているのですが、とても楽しめたショーでした。

24時間前にはまさか翌日自分が花組公演を見ているとは思いもしなかったのですが、見ることができてよかったなぁと心から思った公演でした。

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2022/06/04

夢見た大人じゃなくても。

5月24日に宝塚大劇場にて星組公演「めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人-」「Gran Cantante!!」を見てきました。
イープラスの貸切公演でした。

この公演は初日開けて数日後の4月26日にマチソワしたのですが、公演関係者に新型コロナウィルス陽性者が確認されたため4月30日より公演中止となっていました。
果たして2度目の観劇は叶うのか?と心配だったのですが5月19日より公演が再開され観劇することができました。

お芝居もショーも「礼真琴」を満喫。
「めぐり会い~」の銀橋でルーチェ(礼真琴さん)が
歌う「Love Detective」、これぞ礼真琴。でわくわくしました。

「めぐり会い~」は前回見た時よりも演じている皆さんが楽しんでいるのが伝わりました。
そして私はロナン(極美慎さん)が好きかも。忘れていたオタク心をくすぐられたみたいです

前回見た時はアニス(水乃ゆりさん)がツボり、今回はアニスに加えてロナンが刺さりまくりました。

親の言いなりになるように育てられてしまった人なんだなぁ。
親が示す価値以外を認められないように洗脳されて、それに当てはまらない人を見下すような人に。
オンブルパパ(綺城ひか理さん)めちゃストイックそうだもんなぁ。
フォション(ひろ香祐さん)みたいに、好きな時に好きなだけお菓子を食べる生活なんて考えられなかったんじゃないのかな。
ローウェル公(輝咲玲央さん)を筆頭にローウェル家とオンブル家では家風が違い過ぎるよねと思います。

コーラス王(朝水りょうさん)も大切な娘を預けるにあたって、悪者から命を守ることのみを要件とするならオンブル家が最適と思ったはずなのだけど、娘に甘々な父親の気持ちが加味された結果、ストイックなオンブル家に預けるにはしのびず、のびのびと笑顔いっぱいに成長できそうなノンキな親戚の家庭が最良と選択したのかなと思います。
その感覚こそがやっぱり、コーラス王とオーウェル公が血縁のゆえんでは?
オンブルパパは「血」というけど、血がつながっていれば良いというわけではなくて、血がつながっているゆえの価値観や性質の相似こそがこの決定をもたらした気がします。
オンブルパパには気の毒だけど・・・。

そんな報われないオンブルパパとオーウェル公とコーラス王の若い頃のスピンオフが見たくてうずうずしています。
この関係性に疼きます。
もちろんオルゴン伯爵やマダム・グラファイスも登場して。それにそれぞれの奥方たちもどんな女性か知りたいなぁ。

王女の侍女かと思いきや、剣術の使い手らしいアージュマンド(瑠璃花夏さん)はコーラス王が遣わした侍従兼武官かなにかなのかな。
王女にも自分で自分の身を守れるように剣術の指南もしているのですよね。
だから危急に及んでもアンジェリーク(舞空瞳さん)は果敢に道を開くことができた。
そんな自らの手で剣を振るって窮地を打開するアンジェリークとアージュマンドを目の前にして、ジュディス(小桜ほのかさん)はどんな気持ちだろうと思うと胸がきゅっとなりました。

軽い気持ちで見ることができて、笑いながらもキャラクターの心情を思い、時にはっとさせられたりうるうるさせられる作品に心が解されました。

ライトテイストなお芝居の後には、息つく暇もないような、これでもか、な“ザ礼真琴ショー”「グランカンタンテ」。
リミットなしの「礼真琴」のパフォーマンスが圧巻。
あまりに集中して見て聴いて感じて終演後はぐったり。良い意味で。

「ボニータ」をはじめどの楽曲も、こんなふうに歌って踊ってショーアップされたら本望でしょうと思いました。
礼さんに呼応するように、星組生のパフォーマンスも前回見た時よりもレベルアップした印象で、どの場面も見ごたえがありました。

終始クオリティの高いショーで大満足でしたが、個人的には「ニンジン娘」みたいな場面がもう1こくらいあってもいいかなぁ。とも思いました。
凄すぎて背筋が伸びすぎカチコチになってたので。(お芝居が「めぐり会い~」でよかった~~~)

でもこんなショーが見られるのもいまの星組だからこそ。
礼さんと星組を堪能出来て大満足。高揚して終演後に逢ったヅカ友さんに思いを語りまくってしまいました。
ここにありちゃん(暁千星さん)が加わるなんてもう。。想像しただけで見逃せない思いです。

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2022/05/27

たとえ悲しみでもいいから。

5月25日にシアター・ドラマシティにて宝塚歌劇月組公演「ブエノスアイレスの風」を見てきました。

演目が発表された時、若々しさが持ち味のありちゃん(暁千星さん)には合わないんじゃないかなと思ったのですが、豈図らんや。
反政府ゲリラとしての活動に青春のすべてを捧げ仲間を亡くし生き残り、心に癒えぬ傷を抱えて虚しさに抗いながらいまを受け容れて生きて行こうとする男を、ありちゃんは丁寧にそして真摯に演じてその人物の像と影を浮き彫りにしていました。
あのありちゃんが——!ときっと多くの人が思ったのではないかな。

歴代のニコラスとも違ったクセのない芝居で、セリフがすっと入ってくるかんじ。
初演は映像で繰り返し見た作品ですが、ありちゃんが演じることで気づけたニコラスの心情もありました。

当時は紫吹淳さんのカッコよさにひたすら痺れて、じつは物語のシチュエーションについてよくわかっていない部分もあったかも。
宝塚を見初めの頃で男役のカッコよさに耐性がないところにもってきて、あの煮凝りのような濃さを浴びてしまって思考力よりも感性で見てました。
紫吹さん独特の洗練された身のこなしから繰り出される溜め台詞に完全ノックアウトされてたと思います。
「友達が、」(カウントできるくらいの間)「・・・死んだんだ」。
ここだけ切り取って見たら堪らず爆笑してしまうかもしれないけれど、作品の流れの中に緊張感をつくり観客を自分に集中させてから一気に感情の堰を切る技量はお見事。
まさに「ザ・紫吹淳」の真骨頂でした。

あのニコラスを、ありちゃんがどう演じるのだろうと思っていたのですが、思いのほかナチュラルなニコラスで、感情の流れも物語の文脈もしっかり表現していて、腑に落ちること腑に落ちること。
初演の頃は、人間やその関係性の複雑さ曖昧さが模糊としていても、その割り切れなさこそが現実だとストレスを感じずに鑑賞していたけれど、いまはなるべくわかりやすくクリアに演じるのが時流なのかな。とも思いました。
(悲しみの感情さえ自己責任という言葉で突き放される時代だからなぁ)

マサツカ作品にたびたび出てくる「7年」。
がむしゃらに理想を貫こうと世の中との軋轢に身を削り生きていた「あの頃」と、交わしてきた幾多の約束や人間関係がしがらみとなり折り合いを探しながら生きる「今」。
世の中を俯瞰し「あの頃」を冷静に思い返せるようになる時間が「7年」なのかぁ。
ありちゃんのニコラスは風間柚乃さんのリカルドとともに「あの頃」の想像を掻き立てるニコラスでした。
青春を共に過ごし理想を求めて熱く突っ走っていたんだろうなぁ。

そしてマサツカ作品に描かれるのは「不如意でも生きて行く人びとの悲哀」。
思い通りに生きている人なんていない、それでも生きて行く。というのはあたりまえのことだった。
いつまでも自己実現を諦めずにいられる時代になった今、この物語に描かれる人びとに共感することができるのか。
そんな危惧も杞憂に終わり、ピンと張りつめた糸のような芝居に終始見入り、終幕と同時に心からの拍手を送りました。
ありちゃんと月組メンバーの真摯な芝居を見ることで忘れていたことを思い起こさせられた気がします。

ありちゃん、下級生時代は芝居が課題だったとは思えないくらいいい芝居をするようになったなぁ。
心に響く歌、そしてダンスはもちろん素晴らしくて、異動後の星組を見に行くのがいまから楽しみで仕方ありません。

カーテンコールの時にありちゃんが「月組の好きなところ」を挙げていましたが、下級生たちが自分なりに考えて芝居に取り組みそれを上級生が温かく見守っているところ、皆が芝居に真摯なところ、袖ではふざけているのに、と語っていたと思います。
この「ブエノスアイレスの風」でも感じた月組の地に足の着いた芝居をまた見に行きたいなと思いました。

 たとえ悲しみでもいいから
 生きていればお前に会えるだろう
 忘れることはないよ・・・

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2022/05/04

グランカンタンテ。

4月26日に宝塚大劇場にて星組公演「めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)-」「Gran Cantante(グラン カンタンテ)!!」をマチソワしてきました。

ショーはそのタイトルどおり、礼真琴さんが歌い歌い踊るショーでした。
懐かしいスペインものの柴田作品の主題歌や挿入歌を次々に歌い継いでいく場面は宝塚ファンとして心躍りました。
(わたし的にはタニウメで聴いたあの歌を、礼さんと美穂さんで聴いてることに妙なテンションの上がり方をしたり・・笑)
礼さんが大階段で「オンブラマイフ」を歌う場面は圧巻。
クオリティの高いショーを見たなぁ。これなら何回も見れるなぁ。と思いました。(といっても残るチケットはあと1枚なんですけど)

観劇から1週間たってしまったのですが、感想を書こうと思ったら、これが意外と細部を記憶していない・・涙。
全編スパニッシュだったせいかな。礼さんが凄かったのは間違いないんですけど。
鮮明に思い出せる場面は、瀬央ゆりあさんが銀橋で「ニンジン娘」を歌っていた場面。
瀬央さんの後ろで踊っていた極美慎さんの表情だったり。
それから礼さんが闘牛士の場面での牛さんの瀬央さんだったり。
ワッカのドレスの万里柚美さんだったり。太鼓を叩いてた華雪りらさんだったり。
天寿光希さんと音羽みのりさんが歌っている場面もあって、ああ退団されるんだなぁと思ったり。
フラメンコの掛け声がカッコイイと思ったり。
せり上がりして銀橋を渡る極美さんのお顏だったり。
見ている時は夢中で愉しんだんですが、場面の細部をほんとうに覚えていない自分に愕然。

ちょっと言い訳をさせてもらうと、「礼さんとその他大勢」か「礼さんと美穂圭子さんとその他大勢」なシーンが多くて、記憶力の弱い私には難易度が高くて・・。全編スパニッシュというのも記憶が混乱する原因かな。
礼さんだから成立してるショーだと思いますが、星組には素敵な人がいっぱいいたはずなのに、あまりピックアップされていなかった? されていたのに記憶がない?・・どっちだろう。
検証するためにも、もう1回見たいです。(どうか叶いますように・・涙)

美穂圭子さんの歌も素晴らしかったですが、ずっと歌われている印象で。ここぞという場面であの歌声を披露されるほうが記憶に残った気がします。
星組のいろんな人の歌声も聞きたかったなぁ。とくに娘役さんの。

パフォーマンスは本当に素晴らしかったのですが、礼さんと美穂さん以外のパフォーマーの顔があまり見えないショーだったかも・・と思いました。
でも、私の勘違いかもしれないので、もう1回絶対見たいです。
どうか早く公演が再開しますように。切に祈ります。

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2022/04/30

ハウダニット。

4月26日に宝塚大劇場にて星組公演「めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)-」「Gran Cantante(グラン カンタンテ)!!」をマチソワしてきました。

「めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)-」 (タイトル長いけど、どこを省いていいのかわからない!)は、2011年に柚希礼音さん主演で上演された「めぐり会いは再び」のシリーズ3作目で、2作目で登場した礼真琴さん演じる末っ子のルーチェの10年後を描いた作品になっていました。

1作目2作目は地方貴族オルゴン伯爵家のお嬢様の花婿選びの顛末を描いたものでしたが、今回はそのオルゴン家の次男で末っ子のルーチェが訳あって王女様の花婿選びに参加する物語。舞台を彼が住む王都に移して、なぜかスチームパンクの世界観に。この世界線では文明が発達するとこうなるってことかな。

今作の上演発表時にまず気になったのが、1・2作目に出てきた人たちはどうしているのかな?でした。
その気になる面々もちゃんと登場。
音羽みのりさん演じるレオニードがあの困難な恋を成就させてしっかり?ちゃっかり?オルゴン伯爵夫人になってた!(奇人のお兄様押し切られたか!)
持ち前の行動力は健在だし、なにより懐かしい姿が見られてうれしかったです。

万里柚美さん、役名が変わっている?と思ったら、リュシドールと再婚して伯爵夫人ではなくなったからか。お行儀指南というかもはや王家のご意見番ですね。
執事のユリウス(天寿光希さん)は変わらずオルゴン家に仕えてて安心しました。相変わらず女優がお好きなんだな。憧れのエメロード様(美穂圭子さん)にも会えてよかったです。

ていうか、あのエルモクラート(真風涼帆さん)が振り回されていた大女優のエメロード様はこの方だったのか!衝撃。(これは端から手玉にとられていたな)
当時モラトリアム全開だった彼はどうやら劇作家をやめて実家に戻り、いまや辺境伯のご領地を治めているらしい。
そしてそこには某弱小国第24王子の従者ケレス(芹香斗亜さん)がいるらしくて、人生なにかおきるかわかりませんねーという。
そんな細かいところも盛り込んでくれるのは、シリーズを見てきたファンにはうれしいです。
ただ一つだけ、オルゴン伯爵役で英真なおきさんが出演されていないのが本当に残念だなぁ。

さていつの世もどこの世も、都というのは若者が夢を抱いて屯しては失意を味わう場所らしくて。
ここでも萎んでしまいそうな夢を必死に守る若者や教わるべき先達を失い形骸に固執する者、大人や世間に傷ついて逃げ込んで来た者たちが戯れ言やため息を共有しあっている。
心に傷を抱えて前に進めないルーチェも。みんなこのままではいられないとわかっていながら子犬のようにグルーミングしあって巣穴の外をうかがっている。
そんなところから物語ははじまりました。

ストーリー運びは単純で、見ている観客は謎解きなどしなくても登場人物たちが勝手に王女様の正体も真犯人もバラしてくれる。それもけっこう早いうちに。
だから、あとは主人公たちがどうやって学びと覚悟を得て逃げていたものを受け容れるか、を見ていくことになるのだけど。

いちばんの見どころは役者のキャラ立ちだなぁと思いました。
でもそこがなかなか難しいのだなぁと。
私が初見で思ったのは、初演の方たちのキャラ立ちは尋常じゃなかったのだなぁということでした。
とはいえ、私が見たのは初日があけてまだ数日のところ。これから1人ひとりがどんどん個性を発揮していくともっと面白くなるはず!と思います。
このお芝居にかぎっては、意味もなくカッコイイとか、訳もなくラブリーとか、そういうのぜんぜんオッケーだと思うので。

オンブルのみなさんとか花婿候補のみなさんとか、もっともっと美味しくなると思いました。脚本にはそういう場面も用意してあるし。
力自慢の彼(役名お名前わからずすみません)とか騎士の彼(碧海さりおさんですよね)とか。自己紹介の伏線を回収する場面は見得を切るくらいの勢いでやっちゃってもいいのじゃないかなぁ。おお!あの人ね!って応援したいです。第128王子のリドル(咲城けいさん)は強いの?弱いの?笑。
オンブルの追手のみなさんも、せっかく銀橋を使うのだからもっと派手に照れてもいいような笑。
わちゃわちゃしてる場面が多いので、礼真琴とその他大勢にならないで芸名の自分をもっとアピールしてこ笑。と思いました。

私がいちばんもっと美味しくやれるはず、と思ったのは宰相オンブル(綺城ひか理さん)。
ギャップ萌えできるなんてこんなに美味しい役があるでしょうか。
最初はどれだけ憎々しく印象づけるか。
そこからの「気流の関係で機体が大きく揺れることが予想されます」的な気持ちを存分に味わわせることができるキャラ。
だって動機がアレですよ? こんなことで? こんなことある?みたいな。
なっ・・っ・・そんなにもコーラス王(朝水りょうさん)のことがっ???って見ていて照れちゃいました。
美味しくやれる余地がいっぱい残っていると思うんです。
あの脚本をどれだけ埋めたり足したりできるかが役者の手腕だし面白いところだと思います。
そしてラストのコーラス王には、オンブル様への愛をもっと見せてほしいなぁ。相思相愛よろしくお願いします。

息子のロナン(極美慎さん)も同じく。
もっといけ好かなくってもよろしくってよと思います。
オムツをしている時分から「向かうところ敵なし」だったみたいな印象を与える人に見えたらいいな。内心はどうあれ。
美貌はいうことなし。さらにもっと過剰なほどの自信を自分を守る鎧のように身にまとっているといいな。
でもほんとうは・・なんて。こんなに美味しく描かれているキャラがある?って思います。
でもでもどんなに健気な一面があろうとも小憎らしさだけは絶対に失わないで。それが最大の魅力だから♡

本来は宰相オンブルのようなキャラクターを得意とする輝咲玲央氏が今回は「ノンキな親戚」に回っているのも見どころだと思いました。
(オンブルがほんとに悪宰相なら輝咲さんにキャスティングされているのだろうなぁ)

ノンキな親戚チームはさすがだなと笑。
ローウェル公爵(輝咲玲央さん)、意地っ張りの若い2人を心配してこんな計画に手を染めるなんてほんとにノンキでお人好しなんだから。
しかも見込んで助言を求める相手があのレオニードだし。「国家機密」を担っているのにほんとうにお気楽な公爵様笑。
ローウェル公が能天気であればあるほど、オンブル様がムキ~ってなるのもわかる気がします。
王の甥ってだけでなんの取り柄もないくせに~!って。(ローウェル公がコーラス王の甥ってことは、王女様とはいとこ同士? コーラス王はずいぶん遅くに一人娘を授かったのだな。そりゃあ可愛くて心配もするかぁ)

フォションお兄様(ひろ香祐さん)はこんな方だったのかぁ。こりゃあかんたんに妹にクスリを盛られるなぁ笑。
クスリを盛られても目が覚めたら「爽やかな目覚めだわ♡」とかノンキに思っていそう。

こんな大らかで寛容な親戚に囲まれて育ったからレオニードも自分に正直に突き進める女性に育ったのだろうなぁ。
アンジェリーク(舞空瞳さん)も預けられたのがローウェル公でよかったのではないかな。
宰相のところだと窮屈で自由もなかったのじゃないかな。ルーチェとも出会えてなかったかも。

さてこの国では母親は早世しがちみたいで、コーラス家、オルゴン家もそうだったし、オンブル家も母親はどこ?でした。
新公外の星娘たちがひとまとめに花婿選びの審査員と仮プリ(仮のプリンセス)だったのは美味しくないなぁ。
顏覚えが致命的に苦手な私にはつらかったです。誰が誰だかになって。
といってもいまさら役は変わらないので、ならば星娘たるもの、半歩前へ押し出し強く主張してくださるとうれしいです。

中堅どころがわちゃわちゃしているなかで、105期が美味しいなと思いました。
双子のポルックス(詩ちづるさん)とカストル(稀惺かずとさん)、とっても可愛かったしお芝居もお上手だなぁと。
鳳花るりなさんも冒頭の回想シーンでの子ども時代のアルビレオ、お顏がよく見えてセリフも良いお声。(アルビレオは歌うまさんの役でしたね)
大希颯さんのフラーウスも、ルベル(天飛華音さん)やカエルレウス(奏碧タケルさん)と一緒の3人組で。双子と絡むところは長身が活きてました。

星組を見に行くと必ず目が吸い寄せられる水乃ゆりさん、今回はレグルス(瀬央ゆりあさん)、ティア(有沙瞳さん)、セシル(天華えまさん)と一緒に探偵事務所に屯するルーチェの大学時代からの友人アニス役。発明、実験、計算が大好きでかつちょっと生きづらそうなものを持っていそうなキャラが新鮮でした。ハネた三つ編み姿も可愛くて目がとろけました。

アージェマンド役の瑠璃花夏さんは、初演のリゼット役の白華れみちゃん味があってなんども目を凝らして見てしまいました。
(そしてそしてもしかしてまさかのアージェマンドがタイトルロール???笑)
可愛らしくてお芝居もお上手で良いキャラを出してて、これから注目したいなと思いました。

そしてけっきょく聖杯は怪盗ダアトに盗まれてしまったのですよね。
ダアトの正体と盗まれた聖杯のゆくえを追う物語は、いつか見ることができるのでしょうか。
その時は、バートル探偵事務所のみなさんと、ルーチェとアンジェリーク、そしてアージェマンドが活躍してくれるかなぁ。

終わってみるとみんなで大騒ぎした末に大団円という馬鹿馬鹿しいけど罪のない作品でした。
こんなお芝居を2500人もの観客が一緒に見てほっこり涙ぐんだり笑ったりしているって、なんて尊いんだろうとしみじみ思いました。

そしてこれを書いていた4月30日、公演関係者に新型コロナウィルス陽性者が確認されたということで公演中止となってしまいました。
宙組大劇場公演につづいて星組も・・・涙。
陽性になった方が罹患症状など残らず無事に復帰されますように。
一日も早い公演再開を心から祈っています。
(どうか2度目の観劇が叶いますように!)

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2022/04/23

俺の生まれはバルセロナ。

4月8日に東京宝塚劇場にて宙組公演「NEVER SAY GOODBYE」を見てきました。

新型コロナウィルスの影響で宝塚大劇場での上演回数が半減して、私が見ることができたのは千秋楽を含めて3公演。
そして東京公演はこの1回きりの観劇となりました。

ジョルジュ(真風涼帆さん)については先に感想を書きましたのでそのほかの感想をと思いますが、書き出すと終わりが見えないほど次々に湧いてくるものがあるので、時代背景に想いを馳せながらムラと印象が変わったなと思ったことを交えながら書いていきたいと思います。

まずプロローグのエンリケ(奈央麗斗さん)がヴィセント(芹香斗亜さん)にそっくり!とびっくりしました。
おじいさん似だったのねー。
ムラではそれほど思わなかった気がします。東京公演ではお化粧や髪型で寄せてきたのかな。(もしかするとムラで私が気づいていなかっただけなこともあり得ますが)
ペギー(潤花ちゃん)もおばあさんにそっくりだし笑、紛れもなく2人の孫なんだなぁと思いました。
こうして孫たちがスペインの地で邂逅できてよかったなぁとしみじみしました。

物語ののち反乱軍が勝利してフランコ独裁政権になったスペインの地を、キャサリン(潤花ちゃん)は二度と踏むことはできなくて、ヴィセントに会うこともジョルジュ(真風涼帆さん)の最期について話を聴くこともできなかったことを思うと、こうして2人が平和な時代を生きて会えて話していることが感動でした。
これもフランコ独裁政権が終わったから実現したことなんだなぁ。

ペギーが言っている1992年のバルセロナ・オリンピック、開催当時はよくわかってはいなかったんだけどそれでも歴史的なことが起きているんだなぁと思ったものです。
そこにはたくさんの人びとの想いが詰まっていたんだなぁ。

余談ですが、その開会式ではフレディ・マーキュリーがバルセロナ出身のオペラ歌手モンセラート・カバリエと一緒に歌うはずだったんですよね。前年に亡くなってしまわなければ・・
オリンピックの公式サイトにフレディ・マーキュリーとカバリエが歌っている楽曲「バロセロナ」を使用したモンタージュビデオがあったのでリンクしておきます。
ビデオにはジョルジュたちが過ごしたサグラダファミリアの1992年当時の映像や、バルセロナオリンピックスタジアムも映っています。
このスタジアムは、1936年の人民オリンピックに使用されるはずだったものを改修したのだそうです。ヴィセントやビル(瑠風輝さん)たちがこの場所でリハーサルしたんだなぁ。
(こちらも→ Freddie Mercury ft. Montserrat Caballe - Barcelona (Live in Olimpiada Cultural)  )

初演の時は、世界史の中の出来事だなぁという捉え方しかしていなかったと思うのですが、2022年のいまのこの世界情勢の中だからこそ1992年のバルセロナの人びとの歓喜の意味に想いを馳せることができる気がします。
そんないまこの時に見る「NEVER SAY GOODBYE」となりました。

物語は1936年に遡り、舞台はきな臭いヨーロッパとは遠く離れたアメリカ、ハリウッドのクラブ「ココナツ・グルーヴ」。
前年には「TOP HAT」同年にはチャップリンの「モダン・タイムス」が公開されたそんな時代なんですね。
(「TOP HAT」では英米と南欧との格差が感じ取れますし、「モダン・タイムス」は労働者をただの歯車として消費する資本主義社会を批判的に描いているように見えます)

新作映画の製作発表パーティに集うセレブたち。そして紹介される出演者や関係者たち。
そのなかにラジオ・バルセロナのプロデューサーのパオロ・カルレス(松風輝さん)がいて、当時誕生したばかりの社会主義国スペイン共和国について歌い、海の向こうのヨーロッパでは労働者が国を動かす時代が到来したことを示唆。

私はパオロさんが片頬を上げて哂うのが好きで、見るたびに出た出たこれこれとニヤニヤしました。
人好きのする気さくな笑顔を相手に見せながら、見せていない方で哂ってる。同時に2つの顔をして同時に2つのことを考えているみたい。
言葉巧みに都合の悪い真実についてはすっとぼけて相手にとって耳障りの良い話を滔々としてその気にさせる。→スタイン氏(寿つかささん)はすっかりその気。
どんなピンチも言葉の言い換え、発想の転換で切り抜けていきそう。
いかにもやり手興行師な風情。いいキャラ作っているなーと思います。

時代の空気はハリウッドの若者たちにも影響を与えていて、キャサリンや仕事仲間のピーター(春瀬央季さん)も純粋に社会主義思想に理想を抱いているみたいで、ピーターはユニオンを作ろうと持ち掛けて仲間から渋い顔をされているし、キャサリンはそんな仲間たちに「情けない」と檄を飛ばしている。

この場面は都会に集う若い知識人のリアルが感じられるなぁと思いました。不満はこぼすけれど実際に行動を促されると尻込みしてしまう。とてもよくわかります。
彼らが歌い継ぐ洗練されたメロディもアメリカだなぁと思いました。こういう曲調は舞台がスペインに移ると聴けなくなるので噛みしめて聴きました。

そしてキャサリンが自分を鼓舞する勇ましい「ハッ!」が好き。この無謀で理想を食べて生きているキラキラしたかんじは嫌いじゃないなぁと。むしろ微笑ましくてフフッと笑ってしまいました。
当時の彼らにとって、ヨーロッパの情勢はどんなふうに映っていたのかな。自分たちとはかけ離れた遠い海の向こうの出来事? それとも共感? この頃はまさかスペインで内戦が起きるとは思っていなかったのだろうな。(だからこそマークたち一行もロケの下見を名目に物見遊山でスペインまで行ったのだろうし)

アニータ役の瀬戸花まりさんは歌うまさんなのは知っていましたが、ムラで見た時は曲調と声質が合っていないかなと思っていました。初演の毬穂えりなさんがとても豊かな声音で素晴らしかったので、どうしてもその記憶が呼び起こされて。
でも東京のアニータは歌い方から変わったみたいで、とても深みのある歌声が素晴らしくて聞き惚れました。
アジトをみつけてあげたり、ヴィセントの実家の片づけを手伝ったり、かと思うとキャサリンに出国の手配をしてあげたり、彼女が味方についていなかったら、彼らはもっと早くに破綻していたんじゃないかしら。
キリっとした頼もしさもあるのに、セリフのないところでは愛おしそうな眼差しでジョルジュたちをみつめているのもいいなと思います。
そもそもどうして彼女はジョルジュたちと行動をともにしているのかなと想像してしまいます。

テレサ役の水音志保さんは「夢千鳥」につづいての抜擢かな。ここ数年気になる娘役さんだったのでキャスト表にテレサとあるのを見てとても嬉しかったです。
2番手の芹香さんに寄り添っても遜色ないし、愛されている女性のきらめきや自分の踊りで生きていく強さとしなやかさも見て取れてとても好きでした。
美原志帆さんや音波みのりさんみたいな綺麗なお姉さま役ができる人になって、これからも楽しませてもらえたら嬉しいです。

キャスト表を見て楽しみにしていたもう1人、ラパッショナリア役の留依蒔世さん。歌声の迫力さすがでした。
ムラでの初見の時は、娘役さんのキーがちょっと苦しそうかな?と思ったのですが、ムラ千秋楽そして東京とどんどん声が安定して迫力が増していたので、東京千秋楽にはどうなっているのかと思います。(私はライビュでしか聞けないのが残念)
歌もさることながら、娘役さんたちを率いて、そして男役さんたちに交じっての市街戦も女性としてカッコよくて素敵でした。
フィナーレでもとてもしなやかで力強い娘役ダンスを披露していて、見応えのあるパフォーマーぶりで魅了されました。宙組になくてはならない存在だと思います。

そしてバルセロナ市長役の若翔りつさん。市長の内戦勃発を知らせる歌は初演では風莉じんさんの歌唱力に驚いた記憶がありますが、若翔さんもぶれることなく素晴らしかったです。こんなに歌える人とは知りませんでした。
「バルセロナの悲劇」でラパッショナリア役の留依蒔世さんと一緒に歌うところは聞いていて高揚しました。歌うまさんが合わさるとこうなるの??と。
あの場面はコーラスも最高で、その押し寄せるような歌声のうねりに涙を流して聴いていました。

故郷バルセロナを愛するヴィセントのソロ曲「俺にはできない」は、初演の「それでーもーおーれはのーこるー大切なーものをまーもるーためー」のほうがインパクトあって(いろんな意味で)わかりやすかったなぁと思います。
初演でヴィセントは脳みそ筋肉だけど愛すべき人、と強くインプットされている私はムラの初見で大いに混乱してしまいました。

ヴィセントは初演では2番手の役にしてはそこまで大きな役という印象ではなかったので(アギラールのほうが2番手っぽい役だなと思っていました)、ベテラン2番手芹香斗亜さんのために書き足しされるんじゃないかなーと思っていたのですが、場面として大きな書き足しはされていなかったようでした。
いちばん変わったと思ったのはソロ曲「俺にはできない」が、メロディも歌詞も別物になっていたこと。
ほかはココナツ・グルーヴの登場の場面で「オーレ!」と決めポーズをするだけだったところで、1フレーズ歌が入ったとかそんな感じ。戦場の場面が増えてくれたらいいなぁなんて思っていたのですが。

場面を増やさないかわりに、芹香さんのためにソロ曲で銀橋を渡ることにしたのだなと思うんですけど(初演では銀橋は渡っていないので)、そうするためには初演のナンバーでは長さが足りないし、芹香さんの歌唱力を活かすべくワイルドホーン氏に歌いあげ系の新曲を書いてもらったのだろうな。
曲のタイトルはそのまま、メロディアスな曲調に。歌詞も内容はほぼそのまま言葉数が倍以上増えてより抒情的に、感傷的になっていました。
そのためヴィセントという人が謎な人物になったように私には感じられました。

あの場面は、闘牛士たちがバックヤードで「闘牛の中心地のセビリアが反乱軍の手に落ちた」「俺たち闘牛士はこれからどうなる」と喧々囂々と言い合って「闘牛を続けるためになんとかして南部へ行こう」という話で纏まりつつある中で、ベンチに座ったままずっと黙りこくっていたヴィセントが「俺の生まれはバルセロナ」「俺は残る二度と闘牛できなくても」と闘牛士仲間と行動を共にしないで1人残ってバルセロナで反乱軍と戦う決意を言い放つんですよね。

「敵と味方か」ともヴィセントは言ってる。
闘牛士というのは王侯貴族や伝統と深く結びついている職業なのでしょう。
反乱軍は、社会主義国となったスペインで既得権益を失ってしまった王侯貴族や教会、ブルジョワたちに支持されて勢力を強めていったわけで、闘牛士たちはそうした反乱軍を支持する人びとの庇護下に入るために南部へ下ろうとしているということなのではと思います。
だからヴィセントの「俺にはできない」に繋がるんだと思うんですが、脚本上それに少しも言及しないので1人ヒロイックな妄想に耽って歌っているみたいな印象をうけてしまいました。

ヴィセントってジョルジュのことを子や孫に語り継ぎ、その命ともいえるカメラを、ジョルジュとキャサリンのあいだに宿った命に連なる孫のペギーに受け継ぐとても意味深いところを担うなど、ファンクションとしての役割は重要なのに、人物の肉付けや整合性に粗さが否めない描かれ方をしているので演じる芹香さんも作り上げるのに苦労したのではないかな。

セビリアはフランコ将軍たちが蜂起したモロッコからは目と鼻の先のスペイン南部の都市で、バルセロナはスペイン北部のフランス国境と接したカタルーニャ地方にある都市。整備された道路を通ってもおよそ1000Kmちかい道程。(Google map調べ)
セビリア生まれのファン(真名瀬みらさん)をはじめ、ホアキン(秋音光さん)、ラモン(秋奈るいさん)、カルロス(水香依千さん)、アントニオ(穂稀せりさん)、ペドロ(雪輝れんやさん)たちは、無事に戦火を掻い潜って南部に辿り着けたのでしょうか。

彼らにはイデオロギーなどどうでもよくて、純粋に人生を懸けた闘牛をつづけたいという一途な気持ちで命を懸けた行動を余儀なくされている。
どこをとっても戦争は残酷だと思います。
たとえそこに英雄がいたとしても美談にしてはいけないものだと思います。

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2022/04/17

ぼくはデラシネ。

4月8日に東京宝塚劇場にて宙組公演「NEVER SAY GOODBYE」を見てきました。

当初は東京公演の観劇は予定していなかったのですが、宝塚大劇場公演の上演日数が半減し私の観劇回数も大幅に減ってしまうとわかったので慌てて友の会の先行にエントリー。辛うじて1公演当選したので日帰り遠征と相成りました。

4月2日の東京公演初日から1週間ほどたったところでしたが、ムラの千秋楽より一段と凄いことになっていました。
舞台の上の誰もがこの瞬間に命を懸けている。そんな気迫を感じる舞台でした。

東京宝塚劇場はたしか昨年末にリニューアル工事をしたとのことですが、音響設備も変わったのかな?
セリフやソロ曲の聴こえが凄くいいなと思いました。逆にコーラスになると音を絞り過ぎてるんじゃないかな?と思うところも時々。
それでもどのコーラスナンバーも素晴らしくて、これを浴びるために来たのだと何度も舞台に向かって拝みたい気持ちになりました。
「バルセロナの悲劇」では歌声のうねりに圧倒されて気づくと涙が出ていました。

2幕のサンジョルディの祭り場面のジョルジュ(真風涼帆さん)とキャサリン(潤花さん)のデュエットダンスも息をのむほど美しくて光の中に溶けていってしまいそう・・と思っていたら自分の涙で滲んでいたせいでした。
舞台上の人びとに心を振るわせられどおしの観劇でした。

ジョルジュはココナツ・グルーヴで登場するときの雰囲気がムラで見た時と変わっていた気がしました。
足取りも軽やかで、真風さんには珍しく“チャラい”。銀橋でのソロの歌い方も変わった気がします。
都会のプレイボーイ感がすごく出ていて初演の和央ようかさんに寄っているかんじがしました。
それと真風さんかなり痩せられたかな?とも。

最初は軽くて軟派な印象だった彼が、ワルシャワの貧しい街角で育ち、内緒で故郷を飛び出しウィーンで苦学の末に賞をとり・・という思いがけない過去を語る効果はてきめん。知らず知らずその熱唱に引き込まれて聴き入っていました。ムラではこんなに歌詞を噛みしめて聴いてなかったな。

自分を根無し草だという彼にキャサリンが心をゆるしはじめているのも手に取るようにわかりました。これは恋に堕ちはじめているな。
と感じ入っているところに、さりげなく「ピーターって彼氏?」って訊いているのが耳に入ってきて、コノヒトハー!?ってなりました。
そういうところよね。カメラの腕ももちろん凄いんでしょうが、むしろ女性の扱いで上り詰めた人なんだなと思いました。
プレイボーイが生業みたいになっちゃっているんだな。
「ぼくはデラシネ」と過去の話をするのも手口だわね。マリブビーチに誘うのも。常套手段。

キャサリンはすっかり魅入られてしまっているみたいだなぁ。ジョルジュには彼女みたいな純粋な女性をぽうっとさせるのは朝飯前みたい。
そのくせ愛を鼻で嗤うような態度をとる。愛も女性も彼には重要ではない、とるに足らない人生のおまけみたいなものなんだろうなと思いました。
すくなくともこのときはそう感じていそう。

ムラで見た時に釈然としなかったのが、こんなに時代の先を行くような知的な人がなぜカメラを武器に持ち替えてヴィセント(芹香斗亜さん)たちと一緒に異国で戦う決意をするのかということでした。
結果あんまりジョルジュに好い印象を抱けなくて、今回もそうなるのかなと思ったのですが。豈図らんや。。。

今回感じたのは、彼は懸命に生きている1人の人間なんだなということでした。
「どんなに赤くルージュを引いても僕のこの眼は騙せない」
というけれど自分自身についてはどうなのかしら。
彼が自分を作らない女性に惹かれるのは、彼自身が自分を覆い隠して生きているからじゃないのかな。
あなたが女性に求めていることは、そのまま自分に求めていることなんじゃないの?と思いました。

見た目に反して、本当は田舎育ちのナイーブな人なんじゃないかな。とも感じて。
パリで出逢ったエレン(天彩峰里さん)は彼にはパリよりももっと都会から来た華やかで思ったことを臆せず口にする「自分を作らない人」に見えたのではないかしら。そんな彼女が魅力的に映ったのは肯ける気がします。

彼はとても苦労をしてきて生き抜くために過剰適応してしまった人に思えました。
そして時代の最先端を生きる都会的な人物に擬態していたのじゃないかな。
息を吐くようにキザにふるまったり口説き文句に近いことをさらりと言ったりと、とても優秀な人なので完璧に擬態できてしまっているけれど、心の奥の翳りが彼を苦しくさせているのではないかなとその姿を追いながら思いました。
それが彼の「人生の真実」探しにつながっているのかな。

そんな時にキャサリンに出逢ってしまった。
自分が涼しい笑顔の裏で誤魔化していることをずけずけと口にする女性。怒りの感情を素直に出せて、やりたいと思うことに猪突猛進できる人。そんなふうに生きて来れた人。
ジョルジュが彼女に惹かれるのもまた肯けました。
彼女の中に別の人生を生きてきた自分を見ているような眩しさを感じてる?
「おなじものを見ようとする」ことにこだわる理由も見えたような気がしました。
彼女はやっと出会えた自分、半身を得た感覚なんだろうなぁ。
そりゃあフィジカル的にも精神的にも高揚してしまうよなぁ。
「ぼくは君に出会うために生まれてきた」 
もう天国から音楽が降り注いでいましたね。

彼女との間に自他の区別がなくなっている状態のところに、彼女が彼女自身の意思で彼が望んでいないことをしようとする。
そりゃあ混乱してしまうよなぁ。このときの彼にとって彼女は自分なんだから。
いっときも離れがたい気持ちなのはわかります。彼女が自分とおなじテンションじゃないことに狼狽えるのも。
それを「男のエゴか」とか言っちゃうから誤解を招く。
ジョルジュが抱いているその気持ちには男も女もないものだから。自他を同一視して闇に落ちてしまうことはたとえば親子やファンとアイドルの間にも起こるものだから。
人は苦しみもがきながら他人も傷つけてしまう。

田舎の閉塞感に耐えきれずに都会に夢をもとめて飛び出したけれど、本当の自分の居場所をみつけられないまま自分を根無し草だと感じている。
そんな彼が、キャサリンに出会いその魂の中に、本来の自分を見出し取り戻す。
そうして自分の中にあった、無意識に蓋をしていた祖国と残してきた家族への罪悪感が、祖国ポーランドとおなじようにロシアとドイツの板挟みになっているスペインで戦っているヴィセントたちの姿をレンズを通して見ているうちに、かたちを成してきたのかなぁと思いました。
その贖いをしないと自分に筋を通すことができない。
祖国ポーランドを侵略しようとするナチスドイツ。
そのナチスドイツから軍事力の支援を受けてスペイン共和国を武力攻撃するフランコ将軍率いる反乱軍と戦うことは、彼にとって贖罪として整合性のとれることなんだろうなぁと思いました。
そこに自分自身の生きる意味を見出してしまった。
見た目のクールでリベラルな都会人とはかけ離れた、泥臭くてエモい人だったんだな。本来は。
他人も自分も欺いて生きてきて、このスペインでようやく真実の自分に辿り着いた。

彼は「人格者」でも聖人君主でもない。
迷える羊がやっと自分が属する群れをみつけたんだな。
「もうデラシネじゃあない」

「そしてその真実を共有できる君というひとに出会えた」
ちょっと待って? 
相変わらず自他の区別がついていないんだなぁ。
そのロジックはキャサリンを納得させるためのものではなくて、自分が満足するためのものだなぁ。

言われる側としては、そんな説明でどうして別れなくちゃいけないのか。になると思うんだけど。
でも彼を愛していて、デラシネであることがジョルジュの痛みだったことを知っているキャサリンには、やっと自分の生きる意味をみつけたというジョルジュを止めることはできないのだろうなぁ。
ホスピタリティ溢れるこの潤花ちゃんキャサリンは、彼を笑顔で見送ることが彼にとっての救いだという思いで受け入れたんだろうなぁと見ていて思いました。
その懐の深さに泣けました。

けっきょく自分の進む道を彼女にゆるされたことでジョルジュは救われたのだろうな。
あの瞬間がジョルジュには宝物なのだろうな。(キャサリンにはこれからの辛い現実のはじまりの瞬間だと思うけれど)

最後の最後まで女性に甘やかされて行ってしまった。
大人になって誰かを受容するのではなく少年の心のままで。
それともこれからの数か月で彼もまた誰かの心を受け容れ救ったかしら。
描かれていない時間をあれやこれやと想像してしまいます。

もう1人、ジョルジュが傷つけた女性エレン(天彩峰里ちゃん)。
彼の女性の好みは一貫して「自分を作らない人」だったのだろうと思います。
エレンもきっと心のままを口にし態度に出す人で、そういうところが眩しくて惹かれたのじゃないかなと思うけれども、でも彼女もまたハリウッドの美人女優という世間から求められる存在に擬態している人なのかもとも思います。
もしかしてエレンとジョルジュは似た者同士なんじゃないかなと。
だから一緒にいるのが辛くなったのじゃない?と。

そんなエレンの「真実」との乖離に彼が勝手にモヤっているところに、キャサリンに出遭ってしまったのだなぁ。
「あのひとのどこがわたしよりいいの?」と正面から問い質すエレンは、自分を作らない素敵な人だと思うけど。
そのプライドも素敵。
この再演のエレンが私はとっても好きで、会って話してみたいなぁ。一緒に大ジョルジュディスり大会を開催したいなぁと思ったりします。
キャサリンも参加してくれるなら大歓迎。

もしジョルジュがキャサリンとともに帰国して一緒に暮らしたとしても、彼があのまんまだったらいずれ大喧嘩になったんじゃないかな。
でも共に暮らして彼も彼女もすこしずつ変わって、しあわせに生涯を終える未来もあったはずだけど。
いま思うのは、どの選択もまちがいじゃない。
懸命に生きた人びとの物語だったなということです。

(感想を書いていたらあまりに長くなってしまったので、ジョルジュについてだけを残しました。ほかの部分はまたまとめられたらいいなぁ。でも千秋楽までに終わるかな・・)

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2022/04/10

俺たちだけの罪。

3月30日にシアター・ドラマシティにて宝塚歌劇花組公演「冬霞の巴里」をマチソワしてきました。
上階とは真逆の世界が繰り広げられていました。

公演に先駆けて公式hpにアップされた主演の永久輝せあさんのビジュアルに心臓を撃ち抜かれて観劇を楽しみにしていました。
まずは会場に入ってすぐに公演プログラムを購入。ページを開いた瞬間に視界が歪んだような? へんな脳内物質でた? という感覚に。
巻頭そして巻末の永久輝さんに魅入られて魂を抜かれそうな気がして、閉じては開き開いては閉じて眺めました。

幕が上がるとまずエリーニュスたちのビジュアルに目が釘付け。
耽美なクラウンみたいなメイク、シルバーアッシュ系の髪色、そして白地に血飛沫を浴びたようなプリントの衣装。いかにも人外のもののような身のこなし。
こういう世界観か!と体温があがる感覚がありました。

そういえば、本作の作演出の指田珠子先生がデビュー作として手掛けた星組の「龍の宮物語」も、これはCSで見たのですが、水怪たちのビジュアルと人ではない身のこなしに目が離せなかったことを思い出しました。
ことばでは表現しにくい快感と悍ましさのあわいにある感覚を引き摺りだされるような、なんともいえないところを表現する方みたいだなぁ。

「龍の宮物語」は『ネムキ』みたいだなぁと思ったのですが、「冬霞の巴里」は往年の『花とゆめ』の巻末あたりで読んだ作品っぽいかなとも思いました。(巻頭カラーとかではない、マニアックだけど一定の支持者もいるような)
少女漫画的なビジュアルを具現化したような世界観。これぞ宝塚歌劇でやるべき世界だと思います。
見終わった後には森川久美先生の短編漫画の読後感にも似た余韻が。

そしてあたらめて演出家の頭の中にあるイメージを具現化する宝塚のスタッフさんたちって凄いなぁと思いました。
その世界観に違和感なく息づくタカラジェンヌも。
役名からお顏を確認しようとプログラムを開くも、主演と10名のキャスト以外はホワイトタイや淡色のドレスでキラキラと微笑んでいる他作品と共通で使用するスチール写真が掲載されているので、花組初級者の私は混乱するばかりでした。(作品によってこうも変わるのかと驚きでした)
エリーニュスの中で歌が素晴らしかったのは咲乃深音さんかなぁ。

舞台メイクでいうと、主人公のオクターヴをはじめとするブルジョワ階級の人々は綺麗な宝塚メイクで、下町の下宿に棲む人々は目のまわりなどのシャドウの濃い独特のメイクだったのも不思議な世界観でした。
漫画でいうなら作画が違うかんじ。2人の描き手が1つの作品を描いているみたいな。
下宿の人びとの会話は演劇的で生き生きしているように感じられ、ブルジョワの人びとの会話は嘘っぽいような、そんな感じもうけました。
それはオクターヴに見えている世界観と関係があるのかなとも思いますが、彼の実家の人びとがどこか焦点がぶれているようでもどかしさもおぼえました。

この作品はギリシャ悲劇をモチーフにしているということなので、オクターヴ(永久輝せあ)=オレステス、アンブル(星空美咲)=エレクトラ、イネス(琴美うらら)=イピゲネイア、オーギュスト(和海しょう)=アガメムノン、クロエ(紫門ゆりや)=クリュタイムネストラ、ギョーム(飛龍つかさ)=アイギストスに相当するのだと思います。
元ネタではそれぞれが壮絶な生い立ちや罪を抱えており復讐の連鎖に至る理由もわかるのですが、この作品では親世代の罪やオクターヴとアンブルの受けた仕打ちなどがそれほど凄絶なものとして語られていなくて、ぼんやりしてしまったかな。

あのようにオクターヴを復讐に駆り立てるのが、姉のアンブルだと面白いのになぁと思います。
母親と叔父の会話を聴いてもにわかには信じられなかった幼いオクターヴに、彼らの罪を確信させたのはアンブルだったのでは。
それはどうしてか、彼女が母親を憎む理由が描かれていたらなぁと。
彼女のオクターヴへの執着の意味がキラリと光るともっと面白くなるのになぁと。
オクターヴのラストのセリフも生きてくるかと。

オクターヴ役の永久輝せあさん、まずはそのビジュアルで心臓を射抜かれました。
19世紀のデカダンがこれほど似合うとは。
世界観に合わせた芝居ができる人なんだな。どんどん物語世界に引き込まれました。
オクターヴというキャラは本来の永久輝さんが醸し出す雰囲気よりも内面的に子どもっぽい面があるので、そこを調和させるのが難しいところのように思いましたが、そこも巧く演じていて。
私は姉のアンブルに素直にタイを結んでもらう場面がとても好きでした。強がっているけど甘えん坊。それでもってあのビジュアル。かなりくすぐられました。
目が利くし、雰囲気のある良い芝居をするし、身のこなしも美しくてこれからが本当にたのしみな人だなと思いました。
彼女でオスカー・ワイルドの耽美な世界を見てみたいと思いました。

アンブル役の星空美咲さん、この学年でこの作品でこの永久輝さんの姉の役とは。かなりのハードルだったと思います。
彼女の初ヒロイン作品「PRINCE OF ROSES」のドキドキの初日を見ているので、今回はまずその堂々とした居住まいに目を瞠りました。頼もしくなったなぁ。
たとえばこの役をもっと上級生の娘役さん(私がイメージしているのは伶美うららさんですが)が演じたら、作品の雰囲気ががらりと変わるのではないかと思いました。ヒロインで作品の雰囲気が変わりそうな重要な役どころ。
星空さんが演じることでより少女漫画風になったなと思いました。
セリフの言い方一つでもっと意味を持たせられるんじゃないかなと思う場面があったのと、表情がワンパターンになりがちなのでもっといろんな顔が見られるといいなぁと思いました。(難しい言葉を言うとき険しい顏になりがちかな)
とはいえ彼女にしか演じられない雰囲気のアンブルで良かったなと思います。

ヴァランタン役の聖乃あすかさん、初主演作「PRINCE OF ROSES」のキラキラと光の中を歩んでいくヘンリーが彼女の持ち味にぴったりだったのだけど、それとはまるで逆の役どころ。
これが新境地で素晴らしかったです。含みのあるセリフも巧いなと思いました。永久輝さんとの芝居の相性も良いみたい。
クライマックスシーンの晩餐での迫真の演技が凄くよかったです。新事実を突きつけられたオクターヴの狼狽をテーブルの陰で嘲笑っていたのが印象的でした。
「黄土の奔流」の葉宗明みたいな役を彼女で見てみたくなりました。

クロエ役の紫門ゆりやさん、まずプログラムの写真に釘付けになりました。
名香智子先生が描く美女の雰囲気。とても少女漫画的。
男役が演じる女役だからなのか劇中でもいわくありげな貴婦人の雰囲気で、雰囲気こそが要のこの作品に重要な存在感を示していると思いました。

ギョーム役の飛龍つかささんも難しい役どころを大健闘。
最初からどういう人物なのかがわかりやす過ぎてもダメな役でその塩梅が難しそう。
それはクロエ、そして峰果とわさん演じるブノワも同様かな。
ギョームとブノワは2人でいる時は見分けがつくのですがちょっと似た感じだったので、ブノワが1人で登場する時に初見では少々混乱しました。モノクルを掛けるとか特徴的なアイテムで見分けが容易だとよかったなと思います。

エルミーヌ役の愛蘭みこさん、ただの世間知らずで明るいお嬢様ではない片鱗を見せているのが好きでした。
知らぬはミッシェル(希波らいとさん)ばかりなり??
純粋で真っ直ぐだからこそ、真っ直ぐに傷つくミッシェル。彼の持つ聖のエネルギーで未来を変えていけることを願わずにいられませんでした。

ジャコブ役の一樹千尋さんは、さすがの芝居。こんなふうにセリフに意味を含ませられるんだなぁ。
下宿の女将ルナール夫人役の美風舞良さんも良い味出ていて宙組時代より好きかも。(宙組時代はヒステリックな役が多かったのが持ち味に合わなかったのかな)
お2人ともいかにも「演劇」ってかんじ。舞台メイクもとても印象的で素敵でした。

作品としては、雰囲気やそれっぽさを愉しむかんじでそれ以上ではなかったけれど、その雰囲気が私にはたまりませんでした。
いずれ何かどえらい作品を見せてもらえそうで、指田先生には期待したいと思います。

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