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2025/02/18

今は漕ぎ出でな

2月3日に宝塚バウホールにて星組公演「にぎたつの海に月出づ」をマチソワしてきました。
平松結有先生のデビュー作でした。

星組の美しい3番手極美慎さんの2度目のバウホール主演作、そしてヒロインは宝皇女(皇極=斉明天皇)と知りこれはぜひ見たいと思いました。
宝皇女はその出自から即位、そして死に至るまで(なんならその子や孫に至るまで)謎の多い女性で、かつて私はその周辺の記紀の記述をなんどもなんども読み返してああでもないこうでもないと考えていました。

物語は齢60代の斉明帝(詩ちづるさん)が百済に救援をおくる決意をするところからはじまりました。
どうして大国唐を敵に回してまでも百済を救援しようとしたのか、その理由がこれからの物語となるようです。

百済と倭国の連合軍は白村江にて大敗。
そこから場面は数十年さかのぼり極美さん演じる百済の留学生智積が若き頃の斉明帝=宝皇女(寶皇女)と宮中で遭遇。Boy Meets Girl的に物語が動き始めました。
思いつめた様子の宝、これから高貴な人との謁見の場に向かう智積、これからどうなっていくのだろうと思っていたところ・・。
「推古天皇のおなーりー」に思わずずっこけました。そ、そうかこれはこういうわかりやすい世界観でいくのだな、と気を取り直して。(生前なのに諡号で呼ばれるのね、あいわかりました)

宝の最初の夫である高向王(颯香凜さん)が引き立てられて出てきたときは、よもや宝塚で彼の名前を聴くことがあろうとはと感慨一入。
彼は用明天皇の孫で両親については記紀にも記載がない人だけれど、名(諱)が示す通り渡来系の高向氏と関係があると思われます。宝とのあいだに生まれた子の名前も「漢皇子(あやのみこ)」で同じく渡来系の東漢氏と関係が深かそうです。
宝自身も、母方から見ると蘇我系の血を引く用明天皇と推古天皇の同母弟である桜井皇子の孫にあたるのでこの婚姻は妥当なものだったのだろうと思います。
高向王とは死別なのか離別なのかは記紀にも書かれていませんが、そののち舒明天皇の皇后に立ち、さらには自らが天皇になることになろうとは、若い宝皇女は思いもしていなかったのではないかなぁと思います。
舒明天皇(田村皇子)自身も、血筋からは蘇我とは無縁のように思われますが、蘇我馬子の娘や推古帝の皇女を娶っていたことで時の趨勢が彼の味方についたのではないでしょうか。
最初の婚姻が短く終わった宝皇女や年齢的に不釣り合いではないかと思われる推古帝の第3皇女を娶っていたこと、采女が生んだ子を皇子として養育していることなど、そういう一つ一つが女性である推古帝には信頼に足ると思われていたのかもしれません。訳がありそうな皇女を任せられるくらいには。
そんな舒明天皇ですが体が丈夫ではなかったのか、たんに夫婦で温泉好きだったのか、たびたび有馬や道後の湯に行幸しています。宝皇女は天皇になってからも白浜の湯を気に入っていたみたいなので、皇后につきあってあげていたのかな? そのせいかはわかりませんが、そんな天皇のもとで気持ちが緩んだのか群卿らは出仕を怠けていたと書紀に書かれています。政は専ら蘇我大臣まかせになっていたようです。

さてしかしそういうことはここでは置いておいて、舞台では宝の最初の夫である高向王は女性(妻である宝)に暴力をふるった咎で盟神探湯(くかたち)にかけられようとしています。熱湯に手を入れて火傷をしなければ潔白という裁判です。
ん?妻に暴力をふるったら罪に問われる世界観なんだ。歴史物としては新鮮だなぁ。盟神探湯ってこの時代でもやっていたのかな。

熱湯に手を浸けられ火傷を負った高向王を見て、智積が大王の玉座に駆けのぼり薬箱を掠め取って高向王の手当てをしようとする。智積の師である観勒僧正(悠真倫さん)の機転によって咎を免れるけれど、推古天皇めちゃくちゃ寛大じゃない? 歴史物としてびっくりな展開にちょっと心がついていかない・・。これはファンタジイとして見たほうがいいのかな。

自分の歴史観との折り合いがつかず初見の観劇はかなり苦戦しました。
渡来僧観勒僧正が開いた学堂がお習字教室だったり(暦とか政とかを学ぶのではないんだ)皇族と農民の子が一緒に学んでいたり・・やっぱり歴史物語というよりもファンタジイ寄りで見た方がいいのね。

ところで智積という名前は平松先生の創作かと思いきや、皇極紀にその名前が2度出てきます。「大佐平」という臣民として最高位の身分の人で、最初は舒明帝崩御の年に「大佐平智積が死にました」という百済弔使の従者の言葉でいわゆる「ナレ死」。
ところが翌年皇極帝即位の年には百済の使者として宮廷で饗応されたという記述があり、死んだんじゃないんかーい!ってかんじです。
平松先生はそういう謎なところから名前を採用したのかなぁ。

設定に関してはファンタジイだと割り切って見るのがいいとはわかったのですが、心を通わせ愛し合い未婚で生んだ子の育児を全面的に担ってくれていたイクメンのジェントルラバー智積くんのことを、かんたんに讒言を信じて拒絶してしまう寶に、えっ?と思いました。彼を信じてかばってあげないの?
そしてもしやとは思っていたけれど、やっぱりその子は中大兄か。
田村皇子に対して自分との結婚の条件として未婚で生んだほかの男性の子を田村皇子の実子として育てるよう要求する寶にも引いたけれど、自分の血を引かない子を皇子(しかも大兄)として育てることを承諾する田村皇子にも、いくら恋に目が眩んだとはいえ皇統の自覚はないん?と思いました。(いちおう中大兄皇子=天智天皇の血統が現在までつづいていることになっているんだけど・・いいのかなそれで・・まぁ記紀自体が誰かに都合よく書かれたものだものなぁ・・)

瀬戸内海の熟田津(愛媛県松山市)から小舟で朝鮮半島の百済にたどり着くことなど万が一にもないでしょう。蘇我氏の謀によってそれを強いられる智積。この船出は死にゆくとおなじこと。
ここまで自分や自分の家族に誠意を尽くしてくれる智積の命乞いを、なぜ宝はもっと中大兄を我が子として育てることを田村皇子に要求したとおなじ圧をもってしようとしないのだろう。物語全編をとおしてちょいちょい私は宝の気持ちがわからなくなりました。この決定を覆すために奔走することもなく、どうしてその死出をかくもやすやすと受け容れてしまえるんだろう宝は。
自分のためにこれから死に向かう智積に対して「(百済で)待っていてくれますか」とか、それから20年後にあたりまえだけど彼は百済に帰国することはなかったと聞いて「まだ迷っているのですね」とか、詩的に表現されてもそれはないんじゃない?と。
「帰る国(百済)がなくなっては困るでしょうから」というセンチメンタルで百済救援を決意することも。自分がために独り大海に漂流し果ててしまった人の死でうまいこと言わないでと。私はずっと宝に腹を立てていたように思います。あまりにも自分本位に思えて。
智積は納得したうえだったのかもしれないけれど、それは納得せざるをえなく宝がしたからですよね。
私的な感傷で国運を賭けた戦をするのも苦しかった・・。このあと多くの人々が亡くなったり捕虜になったり、国防のために家族から引き離され遠く壱岐対馬筑紫の防人となり故郷に帰れず悲しい歌を詠んだりしているのだけどと。

というかんじで呆然としたまま初見は終わってしまったのですが、2回目の観劇ではそういうことは一切考えないようにしてイクメン智積くんの美しさをひたすらに堪能しました。その美しさに釣り合う実力を身につけた極美さんに惚れ惚れとしながら。宝皇女を愛しそうにみつめる立ち姿頭のてっぺんからつま先まではいにしえの少女漫画もかくやと。美しく舞台に立つことの尊さをしみじみと感じました。
若くて無分別ですらある宝皇女と老年の域にいる斉明天皇を演じ分ける詩ちづるさんの確かな実力。貴女のせいじゃんと思いつつも、かつて智積が乗った小舟と百済に向かう倭国水軍の船の大きさの違いを嘆く彼女に感情を揺さぶられました。

理性的な青年皇族だった田村皇子が内面の阿修羅を表出し嫉妬の炎を燃やす姿、そして良心の呵責にやつれた舒明天皇としての姿を演じて見せた稀惺かずとさんも目を瞠るものがありましたし、その舒明天皇や主役である智積を追い詰めていく 蘇我入鹿役の大希颯さんも悪役としての気迫が素晴らしかったです。(稀惺さんと大希さんとで「あかねさす紫の花」を見てみていなぁと思いました)

威厳と美しさに溢れ、宝皇女にすすむべき未来を示唆する推古天皇役の瑠璃花夏さんも重要な役どころを絶妙に演じているなぁと感嘆の思いでした。高貴な女性としての身のこなしも素敵だなぁと思いました。
輝咲玲央さん演じる蘇我蝦夷はもう、見るからに腹の黒い悪しき大臣の役作りで、この人が表に出てきたら誰も太刀打ちできないんじゃない?と思いました。彼のひと言により策略を巡らした入鹿によって舒明帝も智積もまんまとやられてしまって・・陰で物語を動かす人でした。

智積の親友で同じく百済からの留学生の覚従役の碧海さりおさんは頼もしかったです。舒明帝の遺勅を奪うために入鹿が放った追手に襲われる智積と宝皇女たちのまえに颯爽と登場して敵を斬り払う姿は惚れ惚れしました。
親友である智積をあのようなかたちで失わねばならなかった彼の心中は、その遣る瀬無さを思うと胸が痛みます。
凰陽さや華さん演じる宝皇女の弟軽皇子は癒しでした。その存在に和まされついつい目で追っていました。

鳳花るりなさん演じる小鈴は演じるのが難しいだろうなと思いました。智積と宝が袂を分かつきっかけをつくる大事な役なのだけれども設定があまりにファンタジイで。
着ているものにしても母親が仏教に帰依することにしても国で最高峰の支配階級の若者たちが集い学ぶ場に被支配民の子が混じる設定も、飛鳥時代の「百姓」としての解像度が粗いわりに、物語の進行上担っている役割が大きくて、プロットからあまり肉付けがされていない感じだなぁと思いました。でも作者の社会的な関心が投影されているようなところもあって、肉付けし出すとと収まりきらなくなりそうで、それを削る作業がまた膨大になりそうな役でもあるなぁと思いました。(そこが愉しさでもあるのでしょうけど)

小鈴が智積の日記を持ち出す動機として、「宝への嫉妬心を利用された」と描けば典型的でわかりやすくドラマになりそうではあるのだけれども、そうしなかったのが平松先生らしさなのかなぁと思いました。
そうであれば、そこに期待したいなぁと。私の世代では持ちえない新しい感覚の平松先生がこれから描かれていく物語のなかの別の「小鈴」をたのしみにしたいなぁと思います。
なによりもこのデビュー作で主役を魅力的に描ける才をお持ちだとわかりましたので(私が宝塚でいちばん望むことです)今後の作品も大いに楽しみです。
私は書紀にならって智積が宝皇女や皇子たちと愉快に宴会をしている夢を見ていたいと思います。素敵だったフィナーレを思い浮かべて。

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2025/02/09

ただひとときは与えられ

1月21日22日そして28日に宝塚大劇場にて宙組公演「宝塚110年の恋のうた」「Razzle Dazzle」を見てきました。
21日はイープラスの貸切公演、28日はローソンチケットの貸切公演でした。

幸せな気持ちと言葉にならない思いで溢れる観劇となりました。
「宝塚100年の恋のうた」は芹香斗亜さん演じる藤原定家が桜木みなとさん演じる「八千代(春日野八千代さんの姿をした宝塚歌劇の化身?)」のいざないによって、過去からの宝塚歌劇の日本もの作品の登場人物となって宙組生たちとともに選りすぐりの名曲を歌い継いでいく作品でした。
芹香斗亜さんの狩衣姿や若衆姿やその美しい舞台姿に心に幸福感が溢れ出し、またその心地よい声に酔えば歌詞のひと言ひと言が心に沁みるそんな舞台でした。
名曲というのは物語を離れても折々のひとりひとりの心に寄り添うものなのだなと思いました。
ひたすらにキキちゃん(芹香斗亜さん)と宙組が美しくて愛おしかったです。

ことに「恋の曼荼羅(新源氏物語)」「琴時雨(夢浮橋)」「生きるときめき(星影の人)」はひたひたと心に浸みわたっていきました。
そしてこの作品の主題歌となる「定家葛」。和歌を読み上げる式子内親王役の春乃さくらさんのかくも美しい歌声に聞き惚れ、定家を演じる芹香さんとの切ない恋の重唱に言葉にならない気持ちが溢れて、私のこの気持ちもまた執心だなぁと思いました。

フィナーレの総踊りで桜木みなとさんが夢の間惜しき春なれば・・と歌う「花の舞拍子」も沁みました。桜木さんのたしかな表現力はこういう場面を引き立てるなぁと思いました。
酒井澄夫先生が紡ぐことばの儚くうつくしいこと。ただ聞き惚れるひとときのなんとしあわせなこと。
そして華やかに「花吹雪恋吹雪」で幕がおり、晴れ晴れとした心のそのずっと奥底に、もっと聞いていたかった ― まだまだこれでは足りないと叫ぶ声なき声が存在していました。
この執心のゆくえを季春のそのときまで見とどけていかねばと思っています。

「Razzle Dazzle」は盛りだくさんだった前物の日本ものレヴューのあとにふさわしい軽快な作品でした。
笑いありせつなさもあり、世間知らずで人生を軽んじているような自分本位な青年が自分とは異なる世界の異なる価値観で懸命に生きている人びととの出会いから確固たる自分の夢を見出していくストーリーは田渕先生の作品らしいなぁと思いました。
主人公の軽やかで洗練されたハリウッド一(いち)裕福な孤児レイモンドはその軽妙さも朗らかさも時折見せる寂しい顔も芹香さんの魅力にぴったりでした。
宙組の面々がこぞって芝居の間が良くてとてもよい作品に仕上がっていました。

とくに目を惹いたのはやはり女役に初挑戦の瑠風輝さん。『お騒がせ女優』の異名をとるシャーリーンという長身でゴージャスな映画スターの役でしたが『お騒がせ』と言われるも憎めないチャーミングさもきちんと表現されていて素敵だなぁと思いました。
「ハビロンの落日」の大階段を使ったクライマックスシーン撮影の場面の存在感と女役としての歌声の素晴らしさが秀逸でした。

もうひとり目を瞠ったのはレイモンド(芹香さん)の婚約者アビー役の天彩峰里さん。
レイモンドに対して高飛車だけれど、じつはもっともなことしか言っていないし、レイモンドのことも父親のことも心から考えている愛情深い女性なんだなと、そしてとても有能なんだなと。そういう女性であることがしっかりとつたわる芝居をする天彩さんにさすがだなぁと感心しました。
きっとレイモンドのことをほんとうに愛しているのだと思うし、きっとこれまでもずっとレイモンドが気づかないだけでアビーに助けられていたんじゃないかなと思いました。ほんとにもう、レイモンドったらコノヤロー!ですよね。あんなこと平気で言っちゃって。ドロシーとハッピーエンドはうれしいんだけど。

春乃さくらさん演じるヒロインのドロシーもまた幸せになってほしいなと思わせる素敵なキャラで、きっとレイモンドはさいしょに遇ったときから彼女に好意をいだいていたよねと思います。
桜木さん演じる映画スターのトニーも、鷹翔千空さん風色日向さん亜音有星さんたちが演じる映画のエキストラの面々もそれぞれに映画を愛していてそれに一生懸命に携わっているのがわかって、皆が愛するこの映画の世界がずっと守られますようにと心から思いました。
桜木さんのトニーを中心に映画に携わる人びとが歌う「Over the Rainbow」は感動的でした。

そういえば若翔りつさん演じる鬼軍曹とたとえられる怖い映画監督ハワードの役作りは芹香さんが新人公演で主演をつとめた「愛と青春の旅立ち」のオマージュかしらと思ったりも。(版権問題で見たことがないのですが映画のイメージで)
ひとりひとりのパフォーマンスも申し分なくこの充実したメンバーでこのミュージカルコメディが演じられる贅沢さを堪能しながらこんな舞台をもっともっと見たかったという思いが湧き出づるのをとめられませんでした。

日本物レヴューの後物のお芝居ということでハッピーエンドのあとに付いたフィナーレのショーがこれまた贅沢で素晴らしかったです。
さいしょの桜木みなとさん瑠風輝さんによる歌唱指導は、瑠風さんが本編にひきつづき女役のドレスで登場し歌唱もいつもの男役の声ではなく女役の歌声で。桜木さんとのハモりがそれはそれは心地よくて次回の大劇場公演ではもうこの2人のハモりは聞けなくなるのかと思うと遣る瀬無い思いでした。

大階段の真ん中でステキなドレスをまとった娘役さんたちに囲まれる芹香さんはおしゃれで華やか。KAORIaliveさんの振り付けがほんとうに似合う人だなぁとしみじみ。
男役群舞を率いて歌う「Fooling Good」も洗練されていてとても素敵。
芹香さんが去って桜木さん中心の男役群舞はまたちがった趣き。キレキレのダンスでキメる男役さんたちに思わずふふっとなりました。
そして芹香さん春乃さんのデュエットダンスは「Smoke Gets In Your Eyes 」。長身の2人のスタイルの良さと品の良さが際立って宙組らしい素敵なトップコンビだなぁと思いました。
ジャズが似合う芹香さんの雰囲気が私はとても好きでこんなフィナーレをもっと見ていたいと思いました。が、1月は自分の予定が合わずこの3回しか見られませんでした。(東京公演も1回分しかチケットがない状態です・・涙)
早く映像でこの美しさ儚さそして粋でおしゃれな宙組を繰り返し摂取したいと、いまはひたすらにBlu-rayの発売を待っています。

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2025/02/05

This is me(唯一無二)/礼真琴 日本武道館コンサート

1月19日に日本武道館にて礼真琴コンサート「ANTHEM-アンセム-」を見てきました。

歌もダンスも破格の比類のなきタカラジェンヌ礼真琴さん、そのコンサートならばきっと凄い体験ができるだろうなと、これはぜひ行ってみたいと思うものの、日本武道館ってどうやって行けばいいの?会場はどんな感じ?といつも通う劇場とはちがうアウェイ感がハードルでした。

行きたい気持ちと不安で葛藤していたところ、かつて同じジェンヌさんを応援していた都内在住の知人がつい先ごろ礼真琴さんに激落ちしたと聞いて、とんとん拍子に一緒に行くことになり憂いなく武道館までたどり着けました。(知人は18日の初日も見ていたので中の雰囲気や内部の気温のことなども細かに教えてもらえてほんとうに助かりました! ちなみに彼女は全通でした)

コンサートは想像以上に素晴らしかったです。
不安の1つには、私は礼さんのCDも聞いていないし近年の流行りの歌などまったく知らないのだけど、その状態で楽しめるのかな?というのもあったのですが、まったくの杞憂に終わりました。じっさいコンサート前半で使用された宝塚以外の楽曲は知らない曲ばかりでしたが、礼さんと星組メンバーのグルーヴィーなパフォーマンスですべての楽曲を愉しんでいました。

とりわけ印象に残っているのは、副組長さん(白妙なつさん)の可愛さ。小桜ほのかさんのいつもとはちがうアイドルのような歌唱。ほんとうにタカラジェンヌってなんにだってなれちゃうんだなぁと思いながら。
礼さんと暁千星さんが向かい合い手を握り合って「ぼくたちは同じ星座だと信じてるから」と歌うナンバーはとてもエモーショナルで幸せな気持ちになりました。
トロッコにのってサインボールを投げまくりながら愉しそうに歌う礼さんも印象的でした。力いっぱい投げてもまったく声がブレないのは凄いなぁと思ったり。

日替わりのトークコーナーでは、その日選ばれしメンバー4人が「ANTHEM(応援歌)」に因んで、礼さんに背中を押されたエピソードを礼さんを前に礼さんのものまねをしながら披露するというもので、エピソードを披露するメンバーが礼さん役で、礼さんがそのエピソードを語る本人役になってて、そのやりとりも含めてとても面白かったです。(小桜ほのかさんだけは礼さんのものまねはされなかったのですが、それもまた小桜さんらしくて笑)
エピソード自体はとても真面目で「いい話」な内容なんですが、皆さんエンターテイナーだなぁと笑。
皆さんそれぞれにとても礼さんリスペクトなのがよくわかりましたが、とりわけ鳳真斗愛さんが熱狂的に礼さんフリークなのがじゅうぶんすぎるほどつたわりました笑。

後半の宝塚ナンバーのターンのさいしょは、星組のメンバーたちが1人ひとり、礼さんがかつて演じた役の扮装でその役のナンバーを歌いだし途中から礼さんと向かい合いみつめあってともに歌い、そして礼さんがひとりで歌い聴かせるという構成でとても胸が熱くなりました。下級生1人ひとりの礼さんへのリスペクトをひしひしと感じとれました。これは宝物になる経験だなぁと。
初々しい人もいれば、柳生十兵衛に扮した天飛華音さんなどは思わず「巧っ」と思うのですが、礼さんが歌いだすとやっぱり圧巻レベルで、しみじみと礼さんの凄さを感じる場面でもありました。

10数名の礼さんがかつて演じた役と絡んだ最後には皆で「BIG FISH」のナンバーを歌い上げて、そこからがらりと舞台が暗転。
礼さんが1人で「VIOLETOPIA」の孤独を歌い踊る場面は圧巻でした。暗転からライトが当たってそこには2階建てのセットに礼さんの演じた役に扮した星組メンバーたち。
さいごにすべてが愛おしいと歌う礼さん。
「VIOLETOPIA」という劇場の光と影を幻想的に描いたショーの終盤のソロダンスで使用されたナンバーゆえに、礼さんが演じた役の扮装をした星組メンバーを背景にして礼さんがその歌詞を歌う光景に鳥肌がたちました。
役たちと星組生たちと宝塚への礼さんの思いが重なって見えて・・。

つづく「ヴィランズ・メドレー」ともいえる場面も礼さんの悪い魅力炸裂で見ている私は魂がどこかに抜けて出でてました。
2~3曲で終わるのではなくて、「BIG FISH」の魔女の歌(都 優奈さん)や「ディミトリ」で礼さんと敵対したアヴァク(暁千星さん)のソロも含めて6曲ほどをとことん歌舞と舞台美術を駆使して見せる演出が素晴らしかったです。
はじまりの「バラ色の人生」(オーム・シャンティ・オーム)は咥え煙草で斜に構え酷薄な流し目の礼さんが最高にクールでした。
そして暁さんのレッドにティリアンとして対峙する「宿命」(エル・アルコン-鷹-)ではレッドを気魄で凌駕していくさまが圧巻でした。
「私から憎しいを奪うな」(モンテ・クリスト伯)はもう、うひょう~で。闇落ちした礼さんと礼さんをとりまく邪悪な雰囲気の星組メンバーズ。とりわけ礼さんにすがりつく天飛華音さんはいったい・・?! ほんとうにもうタカラジェンヌって何にでもなれちゃうんだなぁと思いました。
ここまで悪の華を見せながらも嫌悪感を抱かせないのも大優勝だなぁと思いました。
「マダム・ギロチン」(THE SCARLET PIMPERNEL)の振り付けはゾクゾク。とてもショーらしい振り付けで、コンサートならではの場面だなぁと思いました。

そしてそして礼真琴さんのトート。こんな「最後のダンス」を聴ける日がこようとは・・滂沱。
個人的に歌いあげ系のミュージカルナンバーが苦手なもので、こういう抜け感のある「最後のダンス」は大好物でした。
この体験から「死ぬまでに礼さんの『エリザベート』ガラ・コンサートを見たい(聴きたい)!」という夢ができました。(どうかどうかよろしくお願いします!)

つづく「栄光の日々」(THE SCARLET PIMPERNEL)のあとはまた宝塚以外のナンバーでしたが、とても元気をもらえる曲ばかりでした。
その中で「soul」という曲が礼さんが作詞したものだそう。

アンコールの1曲目は「星を継ぐ者」(龍星)。礼さんにとってとてもとても大切な曲を満を持して歌ってくれました。この曲を歌える喜びのような、いまだからこその礼さんの言葉にできない感情をかんじることができた気が勝手にしました。
そして「グレイテスト・ショーマン」の「This Is Me」。ラストにこの曲なのがまたなんとも言えない気持ちで聴きました。(これを礼さんが歌っているんだ・・いろんなことが思われて・・ことにこの数年の・・これは泣く・・)

こんな体験をこれから何回できるだろうと思うくらいの素晴らしい演出や振付や構成。そしてそれにじゅうぶんに応えた礼さんと星組生に心からの拍手を贈って高揚感に酔いながら武道館を後にしました。
さいしょはどうなるかと思った日帰り遠征でしたが、本当に実行してよかったと心から思いました。

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2024/12/09

この道が未来へと続いているから

11月20日に東京宝塚劇場にて星組公演「記憶にございません!」「Tiara Azul ーDestinoー」を見てきました。
9月22日の宝塚大劇場の千秋楽以来の観劇でした。
(その後12月1日に地元映画館にて東京宝塚劇場公演千秋楽のライブビューイングを見たのでその感想も混じります)

「記憶にございません」は開幕早々の黒田総理役の礼真琴さんのこれでもかという眼つきの悪い様子にうけました。ムラ(宝塚大劇場)ではここまで悪くなかったのにと思って。
記憶を失くして以降の彼の態度が真逆になるのがとても面白かったです。逆にこんなに誠実で人のよさそうな人がどうしてあんなに悪い人になっていたの??とそちらのストーリーが気になりました笑。

官僚の皆さんもいっそう誇張された芝居になっていてそれぞれのキャラクターを生きているかんじが面白かったです。いかにも星組だなぁと思いました。
演じている人びとが頑張っているだけに、ムラの観劇時から引っ掛かっている脚本上のあれこれが惜しいなぁと思わずにいられませんでした。
海難事故の犠牲者を「海の藻屑」というのはモズクの言い間違い以前に大臣の発言としてデリカシーに欠ける気がして笑えませんでした。

熊本のご当地アイドルが登場する意味も、彼女たちが投票を呼びかける仕事を請けて活動しているところまでは理解するとしても、特定の議員や政党の街頭演説に現れるのは変だなぁと思いました。
生活保護受給についての表現、特定の人物(国)にあてこすっているようなセリフやミソジニー臭いセリフなど一方におもねり訳知りに他方を踏みつけるセリフがどうにも苦手でした。

柳先生との場面も初歩から政治を学びなおしたいという黒田総理の真面目な一面が描写できればそれで良いと思うのだけど、論点ずらしなことをよいことを言っている風情で言い出す柳先生とそれに同調する秘書たちにモヤりました。
「負けて得とれ」は納得しているわけではないという思いが根底にあるわけで、議論を諦めて受容したフリをするのは不誠実だろうと思いました。もちろん交渉事においては必要な局面はあるとは思いますけども。
納得もしていないし相手の言も軽く考えているからまたすぐに蒸し返す。
いつまで経ってもハラスメントを自覚しないのもこんな人だろうと思いました。

書き出すとあれもこれもになってしまいますが観劇中はなるべくスルーを心がけて楽しみました。
やはり筋の運びや場面の配分はさすがだなぁと思います。
レストランでの家族の会話は何回見ても面白かったです。3人ともセリフの間が絶妙。瞬発力があって快感でいつまでも見ていたいラリーでした。

「Tiara Azul ーDestinoー」も何度見てもワクワクしてどの場面も大好きであっという間のショーでした。
銀橋の板付きチョンパの幕開きからもう大好き。いや幕開きの前に銀橋にタカラジェンヌたちが集まってくるところからそわそわとして好き。
2番手の暁千星さんが出て来て継いでトップスターの礼真琴さんが高い装置の上に登場するそのエスカレーション感がわくわくして好き。
極美慎さんオーナーのブティックの場面がぜんぶ好き。詩ちづるさんのドレス姿が可愛くて好き。ミュージカルみたいなダンスシーンが好き。

山車がどんどん迫ってくるようなカルナバルの場面の一連がぜんぶ好き。客席降りで踊るタカラジェンヌにわくわく。
心を寄せ合う礼さんと舞空瞳さんのシーンから、それを見た暁さんが夜の店でヤケ酒をあおってタンゴの場面になる流れが大好き。店内の人間模様に視線を奪われるかんじも好きでした。
礼さんと舞空さんの裸足のダンスに心がふるえました。舞空さんの表情がせつなくて礼さんの表情がやさしくて。
サリダデルソルの小桜ほのかさんの歌に涙腺をやられて、希望に満ちた星組生の表情、躍動感あるダンスに涙して、退団する4名をしっかりと目に焼き付けることができる場面が大好きでした。

礼さんを中心に娘役さんたちと踊る場面は、礼さんの歌もダンスもグルーヴ感最高でした。もっと尺がほしいくらい。娘役さんたちもかっこよかったです。ドレスの色と照明も印象的な場面でした。
男役群舞は皆キザが過ぎて思わず笑っちゃいました毎回。お芝居の松爺だったとは思えない金髪のイケメンの天希ほまれさんととても気持ちよさそうに踊っている蒼舞咲歩さんに目を奪われていた記憶があります。

デュエットダンスの前に大階段を1人で降りてくる舞空瞳さんは豪華な生地とレースでふくらんだドレスを纏っているにもかかわらずまったく重さを感じさせない足取り・・というか水面をすーっと進む白鳥のようでこのうえなくアメイジングでした。
銀橋で礼さんによってティアラを戴く姿を客席の皆で見守る演出はなんど見ても素敵で、星のティアラを冠したプリンセスとして私たちの記憶に刻まれたのだなぁと思いました。

千秋楽は映画館でライブビューイングを見たのですが、サヨナラショーはやはり構成が素晴らしいなぁと思いました。
トップ娘役の単独サヨナラショーで、相手役のトップスターがここまで絡む構成はなかなかないのではないかと思いました。ファンが見たいのはこういうロマンティックな世界観だと思います。
「めぐり会いは再び~」の『ミッドナイトガールフレンド』からの「ディミトリ」の『運命に結ばれて』の流れは涙を誘われました。
ラストナンバーになる『The Next Generation!』(めぐり会いは再び~)はライブビューイングの画面では星組生とハイタッチしていく舞空さんが映し出されていたけれど、大劇場で見た舞空さんと星組生をあたたかいまなざしで見つめていた礼さんを思い出して、いまこの時も舞空さんと星組生たちを見守っている礼さんが舞台袖にいるのだなと思いながら感極まっていました。
サヨナラショーそして大階段での退団の挨拶、カーテンコールでの言葉、礼さんと並んで緞帳前でしあわせそうに言葉を紡ぐ舞空さんの姿・・さいごのさいごまで心にあたたかいものが満ち満ちた千秋楽でした。

それから・・場面が前後してしまいますが、ショーで極美慎さんが銀橋で未来への決意を歌うナンバーが、いつもは極美さんのこれからの道に思いを馳せながら聴いていたのですが、なぜか千秋楽だけは作演出の竹田先生の心情のように聞こえました。孤独の闇を払い大劇場デビュー作を世に送り出して決意もあらたに自分の道を歩んでいく若い演出家のこれからに心からのエールを送りたく思いました。
タカラジェンヌのみならず演出家の先生にまで親心?になっていくのも、宝塚ファンの通るさだめなのかなと思いつつ・・笑。

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2024/11/15

運命ってやつにもう一度挑戦しようじゃないか

11月4日に鹿児島市の宝山ホールにて宙組全国ツアー公演「大海賊」と「Heat on Beat!」をマチソワしてきました。ツアーの大千秋楽でした。

素晴らしいパフォーマンス、それを余すところなく楽しもうとする客席の意気込み、圧巻の熱量が充満する空間を体験しました。
楽しくて幸せで忘れられない観劇になりました。

このところ宙組生に疎くなっていたのですが、お芝居ショーともに多くの出演者にセリフや見せ場のある作品で、それぞれの出演者がイキイキと演じている姿を見ることができて解像度が高まり、宙組を見る楽しみがまた増量しました。

ヒロインの義姉マリア役の湖々さくらさんの「与えられたものを受け取って」真摯に生きる年長の婦人としての威厳と慈愛をうかがわせる落ち着きのあるセリフ回しと歌。タカラヅカニュースのナビゲーターとしての姿には馴染みがあったものの、こんなお芝居をしてこんなふうに歌う人だったのだとのは初めて知ったように思います。

初見で主人公の母上の悪者に抵抗する際の身のこなしのキレにおっ?と思っていたらやはり水音志保さんで、それ以降ずっと美しい母上から目が離せずその美しい死に顔に見惚れている間に照明が落ちてはっと我に返る、というのを初見の福岡公演から繰り返していました。
ショーでもたくさん活躍されていて、なかでも「Fly me to the moon」を歌う芹香さんを天彩峰里さんと挟んでのおしゃれでキュートなダンスや「ジェラシー」での瑠風輝さんとのタンゴのペアは目が釘付けでした。

スキンヘッドにびっくりした輝ゆうさんの鉄砲玉は愛嬌たっぷりキャラでいつも仲間と面白いやりとりをして楽しませてくれました。
ちょっと斜に構えたネコザメ役の嵐之真さんは、サンタ・カタリーナ炎上の場面では前回の大劇場公演(ルグランエスカリエ)に引き続きソロで歌を聴かせてこれからも宙組の歌い手として注目したいなと思いました。
聞き耳役の真白悠希さんもルグランエスカリエに引き続きお芝居ショー共にやはり舞台センスで目を引きました。見ていてとても快感でした。

フレデリック役の泉堂成さんは、福岡サンパレスの感想にも書きましたが、歌唱力のある瑠風輝さん鷹翔千空さんとともにしっかりとハモっていてすごいなぁと思いました。これからの成長がますます楽しみです。
海賊たちをまとめる拝み屋役の鳳城のあんさん、最初は鳳城さんとは思わず上級生かなぁと思っていたほど荒くれ者の海賊たちをまとめる年長者の落ち着きと声の張りがあって、あとで鳳城さんと知ってびっくりしました。
まだ106期だとか。宙組に欠かせない存在に成長しそうでたのしみです。
ウミネコ役の渚ゆりさんも少年役が溌溂としてとても可愛くて愛でたい存在でした。どういう経緯で海賊に加わったのかも気になるし、海賊たちにも可愛がられているんだろうなと想像をめぐらせました。

コロナ禍では出演人数に制限が設けられていたり、昨年の出来事以降は公演ができない状況が続いたりでなかなか舞台に立つ機会を持てなかった彼女たちが、活き活きと役として舞台上で生きている姿を見られて嬉しく思いました。
見たかったものをやっと見ることができた。ブランクなど感じさせない素晴らしいパフォーマンスを。そのために重ねただろう努力や意志を尊く愛おしく思いました。

顔覚えがわるいので、一度にはたくさん覚えられないのですが、これからもっと下級生を覚えていきたいなと思えた公演でした。

同時期に公演されていたバウホール公演のほうは見ることができなかったのですが、この全国ツアー公演のメンバーにバウのメンバーも合わさった宙組の次回大劇場公演を心から楽しみにしています。
いまの宙組、これからの宙組が輝くことを願っています。

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2024/11/04

You are all I long for

10月29日と30日に福岡サンパレスホールにて、宙組全国ツアー公演「大海賊」「Heat on Beat!」を見てきました。

お芝居ショーともに満足度の高い観劇になりました。
20数年前に宝塚を見はじめて以来、宝塚歌劇とは音楽性は求めずにそれ以外を楽しむものだとずっと思っていました。(それで充分幸福感を得ていました)
ですが近年その認識を覆される経験を幾度かして、今回の観劇で決定的にもう以前の宝塚とはちがうのだと理解しました。

歌い上げる楽曲で魅了するタカラジェンヌはこれまでも数多いましたが、ジャズやロックに関しては期待してはいけないんだなと思いつづけて幾星霜。それが礼真琴さんの星組にガツンと衝撃をうけ、いままた芹香斗亜さんの宙組に全方向から袋叩きにあった気分です。とても心地よい袋叩きでした。

瑠風輝さんと鷹翔千空さんのツインヴォーカル的なロックのハモりに脳からお汁がでるような快感を得、芹香さんの「Fly me to the moon」に泣きそうになりました。
トップスターから4番手までがそれぞれに自分の個性で歌える宙組のこの陣容をずっと私は待ちわびていたんだなぁと。
礼さん星組の壮大な力技に対して芹香さん宙組の抜け感。どちらも好き。そう思える幸せに泣けちゃう感覚。
これも過去からの数多のタカラジェンヌたちの積み重ねの上にあるんだと思うと感無量でした。
「大海賊」も「Heat  on Beat!」も私にそれを感じさせる演目でした。

私が宝塚にハマったのはちょうど紫吹淳さんが退団を発表されていた頃で、スカイステージでは数か月にわたり紫吹さん出演の舞台が放送されていました。
その流れで繰り返し見ていたのが紫吹さん主演の「大海賊」と「ジャズマニア」(「Heat  on Beat!」とおなじ三木章雄先生作演出)で、本公演、新人公演、全国ツアー公演版とそれぞれを飽きることなく見つづけていました。(当時は映像も粗くてTVのアスペクト比もいまより狭く、見えないものをいっしょうけんめい見ようとしていたなぁと思いだします笑)

時は流れて10年以上録画も見返していなかったのですが、瑠風さんのエドガーに初演の湖月わたるさんの表情が、鷹翔さんのロックウェルに大和悠河さんの声や表情が思い起こされるという不思議な感覚を得て我ながら驚きました。
「Heat  on Beat!」のどの場面だったか、芹香さんが手を叩いた瞬間に「あっこれ瀬奈さんだ!」と思ったのも不思議な感覚でした。
過去のタカラジェンヌから脈々とつづいているものがあるのだなぁとしみじみと思いました。

瑠風さんエドガーとその部下、鷹翔さんのロックウェルと泉堂成さんのフレデリックのトリオで「焼き尽くせ」と歌うナンバーは、あれ?この曲ってこんなにハモる曲だったっけ??もしかしてナンバー変わった???と自分の記憶を疑ったりもしました。
初見の終演後に、初演も再演も記憶されているファン友さんに訊ねたところ、ナンバーは同じとのこと。
2回め以降の観劇では、瑠風さん鷹翔さん泉堂さんのハモりにゾクゾクしながら「進化していく宝塚」に感慨を覚えました。

初演の大空祐飛さんのフレデリックは誇り高い青年貴族の雰囲気で、女王陛下の命によりエドガーの下で(おそらく家格はエドガーよりも上)渋々海賊行為を行っているプライドの高さがうかがえて、そのストイックな軍服姿も相まってなんともいえない魔力がありました。
野卑な大和ロックウェルに揶揄されてクールな面(おもて)が僅かに嫌悪に歪むのが私の中の悪い悦びを刺激して大いに性癖に刺さったことを、泉堂さんの可愛いフレデリックを見て鮮明に思い出しました。
泉堂さんのフレデリックは鷹翔ロックウェルに感情を手玉にとられて内心で地団駄を踏んでいるのを隠せずにいるところが可愛いなと思いました。鷹翔ロックウェルもついつい彼をかまわずにいられない感じなのかなと想像しました。
初演とは学年が逆転しているのと演者の個性も相まって、関係性がちがって見えたのが面白かったです。

「過去、そして現在」を感じ、いまと未来の宝塚を愉しみに思う気持ちと、かつての宝塚への愛とを味わうことができて、そんなところにも満たされたのかなぁと思います。
長年の宝塚ファンの方々はこういう楽しみも味わっていらっしゃるのかなと思ったり。

「Heat on Beat!」はどのシーンもクオリティの高い最高のショーで、いまの宙組でこのショーが見られて本当に良かったなぁ心から思いました。
同時に、でもこれで全員じゃないんだなぁと、しかもこれがいまの芹香さん率いる宙組最後の洋物ショーなんだなぁと思うと残念な気持ちにもなりました。
(田渕先生、どうか素敵なフィナーレをよろしくよろしくお願いします)

千秋楽の鹿児島公演を見に行くことができるので、このお芝居とショーを悔いのないように堪能して来ようと思います。

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2024/09/30

思いもしなかった

9月22日に宝塚大劇場にて星組公演「記憶にございません!」「Tiara Azul ーDestinoー」の千秋楽を見ることができました。
この公演で退団するトップ娘役舞空瞳さんのサヨナラショーも上演されました。

2階席から見えたもの

2週間ほど前に観劇したときよりお芝居のリアクションがだいぶかわったなという印象でした。ショーの濃度もマシマシ。
そして客席からの拍手や手拍子も熱い。さすが千秋楽!でした。

今回は2階席だったので前回の観劇では見えなかったところが見えたのが面白かったです。
「記憶にございません!」では、礼真琴さん演じる黒田総理と小桜ほのかさん演じる山西議員、舞空瞳さん演じる聡子と暁千星さん演じる井坂の2カップルが1番セリの上下で「連立合併」を歌う場面は、1階前方席からだとセリの上の舞空さんと暁さんが見づらかったのですが、2階からだととてもよく見えて、舞空さんこんなに暁さんに迫っとったんか!と可笑しくてついつい見入ってしまいました。聡子さんの舞空さん、ずいぶんと振り切ったお芝居だなぁとは思っていたのですが、ここまでとは。

この期に及んで水乃ゆり様に

「Tiara Azul」の暁さんがヤケ酒タンゴを踊る場面では、舞台奥に水乃ゆりさんが見えたので、これも1階席からは気づかなかったことなので目で追っていたら、ほかの娘役さんを誘ってテーブルでカッコよい仕草で話し込んでいる?!
こういう酒場の場面の娘役は男性(役)に媚びたりしな垂れかかったりするのが定番かと思っていたらなんと新鮮。ゆり様素敵です。
と思っていたら、やさぐれた暁さんがほかの男役さんと踊っていた詩ちづるさんを無理やりパートナーにして踊る一連の場面で、詩さんが暁さんを振り払って上手のテーブルに向かうと、そこにはテーブルに片手をつき一方の手を腰に当てたカッコイイ水乃ゆり様がいて、その御手が詩さんのお顔をつつんでナチュラルにキス?! 詩さんも合意というか2人アイコンタクトしてた?!(角度的にはっきりとはわかりませんでしたが、そんな雰囲気)もう目が釘付けでした。
ゆり様どういうキャラ設定なの。最後の最後にゆり様怖い・・汗。(千秋楽からのゆり様呼び)
水乃ゆりさんは私の星組観劇の愉しみの1つですが、もうさらにゆり様堕ちです。千秋楽にして・・どうしたらよいの涙。かっこよー。

「サリダ・デル・ソル(いつかまた)」の場面で退団者4人のピックアップの前に、舞空さんがフォーメーションの外側を走って舞台奥に行くとそこには水乃さんがいて、2人で両手を取り合って跳ねていたのも2階からよく見えて、それにもぐっときました。
これから星組の皆に見つめられて、客席の皆に見守られて退団していく者として踊る場面の直前で手を取り合って、そこにはどんな気持ちが交わされているんだろう。大好きな娘役さん2人がここからいなくなってしまうんだという思うさみしさも感じてたいへんエモい気持ちになりました。

礼さんの愛

サヨナラショーはどこをとっても感動だったのですが、「Midnight Girl Friend」(めぐり会いは再びnext generation)からの「運命に結ばれて」(ディミトリ)は涙腺が決壊しました。
そしてそこからの「The Next Generation」(めぐり会いは再び~)で、銀橋から舞台下手で礼さんに背中を押されて星組生全員と笑顔でハイタッチしていく舞空さんを、舞台下手に佇み見守っている礼さんの立ち姿がとてもあたたかくて愛情にあふれていて、その礼さんの姿にも涙してしまいました。
サヨナラショーの主役は舞空さんだから、彼女が絶対的に主役でいられるよう見守る姿が気遣いにあふれて礼さんらしいなぁと思いました。(愛月ひかるさんのサヨナラショーでもそうだったなぁと思いだしたりして・・)

お芝居もショーもとても多幸感が残る公演でしたが、さらにサヨナラショーも愛にあふれていて、幸福感で満たされた千秋楽でした。
宝塚を見たぞというキラキラとした夢見心地をこんなにも味わえたことに、星組生や演出家の先生、スタッフの皆さまにありがとうございますと思いました。

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2024/09/22

夢を語ることは勇気が必要

9月4日と5日に宝塚大劇場にて星組公演「記憶にございません!」「Tiara Azul ーDestinoー」を見てきました。
「Tiara Azul」は演出家竹田悠一郎先生の大劇場デビュー作品です。
そしてトップ娘役の舞空瞳さんがこの公演で退団されます。

「Tiara Azul ーDestinoー」はこれぞ宝塚!なラテンショーでした。
クラシカルでありつつ、いまの宝塚歌劇の照明や舞台機構、いまの星組生をよく知っている人が作った作品だなぁということも感じました。
宝塚への愛と宝塚ファンがうれしいあれこれが散りばめられて見ていてとてもワクワクしました。
いまは次回観劇が待ち遠しい気持ちでいっぱいです。

礼真琴さんの開演アナウンスの後、暗い銀橋にずんずんと迫り来る気配が。こ、これはあれの予感——!と思った瞬間、照明が点灯して一瞬にしてそこにはずらりと居並ぶタカラジェンヌが! なんという壮観。
(わ・目の前に極美さんが・・舞空瞳さんの笑顔がこんな近くに・・)
銀橋に人の気配を感じて、これはあれ(チョンパ)だと予測はできたのですが、実際に目の前に居並ぶタカラジェンヌを見ると驚きと歓喜で脳内が大洪水になりました。

かっこいい男役さんたちと舞空さんに 歓喜していたら、2番手の暁千星さんがステージ中央に娘役さんたちと登場でひゃぁあとなり、さらに高いセットの上には豪華絢爛なトップスター礼真琴さんが登場で高揚感がどんどんエスカレーション。オープニングからガツンと心を掴まれました。

お揃いの「Tiara Azul」とロゴの入ったTシャツで娘役さんたちと男役さんたちがそれぞれペアになって踊る場面は可愛いかったです。
いろんな雰囲気のペアのなかで舞空さんと暁さんのペアは・・あれ?笑。
程度はまちまちですがそれぞれ恋人らしくなっていくカップルのなか、誰よりも自信満々な暁さんは誰よりも長く手足を伸ばして舞空さんにアプローチ。彼女の心はもう自分のものとキラッキラに瞳を輝かせて愛嬌抜群。(小一時間前まで銀縁眼鏡でクールに構えていた人とおなじ人です笑 そしてまた憂いを纏ったやさぐれタンゴを踊る人です・・)
そんな暁さんの強い押しに釈然としない表情七変化の舞空さんがとても可愛いかったなぁ。ノリきれていない風なのに暁さんとめちゃ踊っていたのも逆にすごいなと思いました。
(それぞれに通しの役名があるのですが逆に書いていて混乱してしまうので芸名で書いています)

最悪の出会いから礼真琴さんと舞空さんが飛び込んだ色鮮やかな洋装店の場面も大好きでした。娘役さんたちがとても可愛い! カラフルな衣装を纏ったディスプレイのマネキンに扮した娘役さんもそれにちょっかいをかけている店員の小桜ほのかさん詩ちづるさんも。(こんなヴィヴィッドカラーの組み合わせを着こなせる人たちって・・)
ショップオーナーかマネジャーかのこれまたネオンカラーにネオンカラーを重ねたようなド派手な極美慎さんも見ものでした。(これでサマになっちゃうのって・・)
礼さん舞空さんにチョイスされたジャケットとドレスがさらに・・呆然でした。(・・これで街にいく設定よね・・?) どんな派手な衣装を着ても素敵なタカラジェンヌという存在の尊さに手を合わせたくなりました。

いよいよ始まったカルナバルは舞台全体が煌めき、動く舞台セットとパフォーマーのパッショナブルなダンスが次々に繰り出すさまは、順々に巡ってくるカルナバルの山車を見物しているようで興奮を覚えました。見どころが満載すぎて目と心で追うのが大変。
小桜ほのかさんと瑠璃花夏さんに挟まれて両手に花の碧海さりおさんが羨ましい!(しかもマチソワで最後に手を取る相手が違ったような・・・?)
男役さんたちに囲まれて水乃ゆりさんが踊る『スーパーゆり様タイム』はさながら極楽浄土の迦陵頻伽のような有難さでした。
カルナバルといえば!の娘役さんたちのコスチューム(タカラヅカナイズしているのでノープロブレム)踊りまくるトップコンビに暁さん、これぞラテンショーの中詰の盛り上がり!(客席降りもありました! 一斉にじゃなくてこれもチームごと?みたいな)
そして盛り上がりのままにロケットに突入。
中詰までがあっという間で、まだまだ先があるのにこんなに盛り上がって大丈夫かな?と心配してしまうほどでした。

こんなに盛り上がってどうなってしまうの?と思っていたら、あら?
場面はトップコンビのロマンティックな雰囲気に。カルナバルの日に出会って、カルナバルで盛り上がって、そこからこんなに可愛らしくなるのが新鮮。
若い清い爽やか。
でもそれを見て心穏やかではない暁さん。今日フラれたばかりなのに、自分をふった相手は今日出会ったばかりの人とフォーリンラブなんだもん。
やさぐれてやけ酒を呷る姿が色っぽい。
他人のパートナーにちょっかいを出したり、他人が飲んでいる酒瓶を横取りしたり。とっても態度が悪いのに、極美さんたちは怒ったりしなくてしょうがないなーって感じで。
そうそう男の人たちってフラれて荒む同性には優しいよねとやけにリアルを感じて微笑ましかったです。これはときめくブラザーフッド。
暁さん極美さんのまわりで小芝居する人たちも面白くて目が離せない。そしてやっぱり踊る暁さんはソリッドでかっこいい。
良い場面だなぁと思いました。さっきまであんなにド派手なお祭りだったのにこの落差がいいなぁ。

そんな暁さんの心も知らず礼さんと舞空さんは2人だけの世界。
このペアで踊るダンスが素晴らしくて隅々までうっとりしました。それまでとは打って変わって飾りのないシンプルな衣装と裸足。広い舞台の上を2人だけの息遣いで埋めていくような・・本当に魂が踊っているようでした。
「Ray」のカミソリデュエットダンスで度肝を抜かれて、凄いトップコンビが誕生したなぁと感動したことなども思い出されて、なんだか泣きそうになりました。

そこから小桜さんの歌からはじまり星組の仲間に囲まれた暁さんがセンターで歌い踊る場面でとうとう涙腺が決壊。なぜ涙が出るのかもわからないのだけど。不意に清らかなものに触れてしまったそんな感じでしょうか。
礼さん舞空さんも加わって、この公演で退団する4人がセンターで踊りそれを星組生が見守るように踊り・・。よくある場面かもしれませんが、けれどそこには普遍的に心を揺さぶるものが流れていました。それを探し当て新たに息を吹きかけるのも宝塚らしさなのではないかと思います。
歌詞、曲、ダンス、そしてパフォーマーのフィジカルと心と、すべてが相まってなんとも言えない空間ができていました。

皆の心が一つになり清々しく去った後、1人で銀橋で歌うのは極美さん。明日への固い決意を心に秘めた頼もしさが胸に響きました。
そして鮮やかなピンクのドレスを身に纏った娘役さんと礼さんのダンス場面。ここが大好きでした! ネオンカラーの照明が降り注ぐ中でお洒落で大人っぽい雰囲気で。すごく礼さんらしくて素敵な場面だなぁと思いました。

大階段の男役群舞のかっこいいことと言ったら。あの階段中央での手振りに心を掴まれ、礼さん中心ならではの抜け感に心がひょう〜〜と舞い上がり、続く暁さん中心のソリッドなダンスに見ているこちらの体温も上がりました。

『ことなこ』(礼さん舞空さん)最後のデュエットダンスはもう、これこそ「エモい」と言う言葉がピッタリの、こんな『ことなこ』を見てみたかったデュエットダンスでした。
いままでにないゆったりとした振り付けで優美に踊る2人。体のすべてを自在に使える2人だからこそのドリーミーなデュエットダンス。
そして銀橋で輝くティアラを舞空さんの頭に載せる礼さん、おとぎ話を絵画にしたような2人のシーンは見る人を夢見心地にする素敵な演出だなぁと思いました。

いったんカルナバルの最高潮で盛り上がった後で、等身大の青春(タカラジェンヌの等身大なので普通とは全然違いますが)を見せる流れが好きだったなぁと思います。その等身大の青春がキラキラしていてなんだか涙腺を刺激される感じがとてもエモーショナルで。
価値観の押し付けがない、奇を衒うのじゃなくて普遍的な素敵や感動を真面目に丁寧に積み上げてつくられた作品だったなぁと思います。それがいまの星組にぴったりで心に沁みるショーでした。
若さと清らかさと青春に乾杯。

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2024/09/11

夢を追いかけるよりも速く

9月4日と5日に宝塚大劇場にて星組公演「記憶にございません!」「Tiara Azul ーDestinoー」を見てきました。
この公演は星組トップ娘役舞空瞳さんの退団公演です。

「記憶にございません!」は三谷幸喜氏原作のコメディ映画を宝塚で舞台化した作品で、シチュエーションやキャラクターを楽しめる作品でした。
脚本演出には思うところもあるのですがそこを論うのは控えます。(私は石田作品でしばしば見られる1つの方面に擦り寄りおもねる一方でほかを蔑ろにする表現が苦手です)
ん?と思う要素に引っ張られずいい塩梅に演じていた礼真琴さんはじめ星組生の力に天晴れと思いました。

なかでも「これ、ほかの人が演じたらいたたまれなかったかも」と思ったのが山西あかね役の小桜ほのかさんです。
際どさと品の良さのギリギリ。チャーミングさも失わない。
嘘っぽいのに白々しくない、小桜さんならではのリアリティが光っていました。

鶴丸官房長官役の輝月ゆうまさんも凄いなと思いました。一癖も二癖もありそうな大物に見えながら政治哲学がない人物をいいかんじに演じていて、みんながこの人の何にひれ伏すのかが見えてくるのが面白かったです。
小野田治役のひろ香祐さんの怪演も凄かったです。石田先生、本当に演者に助けられているなと思いました。

ダークスーツに銀縁眼鏡の首相秘書官井坂役の暁千星さんは反則でした。鬼に金棒、男役に銀縁眼鏡。佇むだけで魂を抜かれそうでした。
フリーライター古郡役の極美慎さんは胡散臭さが立ち振る舞いから滲み出ていて、なるほど~と思わせる人物でした。
暁さん極美さんともに下級生時代から成長を期待していたお2人が作品の中でしっかりと役目を担っている姿は感慨ひとしおでした。

私が星組を見る動機の1つであった水乃ゆりさんが、ニュースキャスター近藤ボニータ役で卒業することも言葉にならない思いでした。
その優美なダンスや美しいドレス姿にうっとりさせられてきた水乃ゆりさんですが、これまであまり前面に出て滔々とセリフをしゃべる印象ではなかったので、脳裏に過去のいろんな役が浮かんできて涙ぐみそうになりました。さいごまでやりきって卒業してくださいと心から思います。
キャストが発表されたときに石田作品にありがちなセクシーコスプレ系の役だったらどうしようと内心心配していたのが杞憂に終わってよかったです。

主演の黒田啓介役の礼真琴さんは、コメディって運動神経だっけ?と思うくらい役が似合って笑わせてもらいました。運動神経と舞台センスに感服しました。
どの場面も間が素晴らしかったですが、なかでもレストランの場面が最高でした。息子役の稀惺かずとさんもなんともいえないタイミングが巧くて大好きな場面でした。

黒田首相夫人役の舞空瞳さん。夫との仲は冷え切っていて息子は反抗期、そのうえ夫の部下と不倫中⁈・・という星組のプリンセスの最後の役がこれ??ってかんじなのだけど、どんな役でもヒロインにしてしまう舞空さんは流石でした。(この顔芸はたしかにこれまでのキャリアのなせる技・・と思いました笑)
セーラー服で登場した時はさすがにギョッとしたのですが、それ以上にアレな方が登場したのですっかり飛んでしまいました。
井坂役の暁さんとのタンゴの場面(ICH KUSSE IHRE HAND , MADAME)はコミカルな振付ながら流石でやっぱり見入ってしまいました。
宝塚最後の公演で耐え忍ぶストレスフルな役ではなくて思いのままを口にして、問題はあれど愛されるべき人に求愛されて幸せそうなとびきりの笑顔で終われるのはよかったよねと思いました。

個人的にニュアンスが大好きだった鰐淵影虎お兄様役の碧海さりおさんとか、90年代にこういう議員秘書やニュースキャスターの女性いたよねと思う秘書官番場さん役の詩ちづるさん(案外将来都知事とかになっていたりして)など1人1人が個性的で、出演者が一丸となって作り上げた作品だなと思いました。

(ショーの感想は次で書きたいと思います)

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2024/09/01

儚さを抱きしめて

8月22日に東京宝塚劇場にて、宙組特別公演「 Le Grand Escalier」を見てきました。三井住友カード貸切公演でした。

航空性中耳炎から観劇

1公演だけの観劇なので飛行機で日帰りしたのですが、お盆前に罹患した新型コロナ感染症からの副鼻腔炎が治りきっていなかったせいか、機内で航空性中耳炎を起こしてしまい難聴状態での観劇となってしまいました。(新型コロナ感染症侮るなかれです💦)

症状としては世間の音がすべて遠く聞こえる感じだったので観劇に影響があるのではと心配だったのですが、劇場の音響の中で増幅された音は特に問題なく聞こえてほっとしました。(終演後に会った友人の声は記憶していた声と違って聞こえてあれ??となりました💦)

というわけなので私自身の聞こえのせいもあるかもしれませんが、前回(7/31と8/1)の観劇時よりも皆さん声がお疲れかも?と思いました。
瑠風さんが歌うのを聴くのは大劇場公演以来でしたが、「まことの愛」はとても慎重に歌われている印象でした。

芹香さんや春乃さんの歌も前回の観劇時よりも残響少なめに聞こえたのですが、やはりこれは私の聞こえの問題だったのでしょうか。それとも音響が変わったのか、はたまた座席位置のせいなのか。
考えても答えは出ないのですが、アコースティックぽいというか声の強弱など生っぽくてこれまでとちょっと違う響き方に聞こえて貴重なものが聴けた気がしました。

瑠風さんの復帰

今回の楽しみの一つは前回見られなかった瑠風さんを見ることでしたが、大劇場公演ぶりに見る瑠風さんが想像を超えて弾けていたのに驚きました。
「幸福を売る人」も「アイ・ラブ・レビュー」も大劇場とは全然ノリが違ってとても前のめりな印象、「マンハッタン不夜城」も軽快になってていいもの見たなぁと楽しかったです。
私の中で瑠風さんは真面目なイメージが強かったのですが今回で変わりました。これからもいろんな瑠風さんを見たいです。

春乃さくらさんに惹かれて

大劇場の舞台機構を使っての80分の特別公演ということもあって盛りだくさん、見どころ満載のショーでしたが、娘役さんたちの活躍がたくさん目に止まって見れば見るほど心躍りました。

トップ娘役が活躍する場面もいつにも増して多かった印象的ですが、春乃さくらさんの期待を裏切らないパフォーマンスとなにより舞台に幸せそうに立っているそのことにとても救われましたし幸せな気持ちになりました。
「HiGH&LOW」のKIDAで大好きになった娘役さんでしたが、この公演でさらにさらに大好きになりました。
どの場面の春乃さんにも惹かれましたが、公演を見るたびに好きになっていったのは「アイカランバ」です。
今回もセンターの扉からの登場で待ってました!と思いました。あの衣装の領布のようなものをひらひらさせるその動かし方が好きでリズムに乗る体の動かし方が好きで歌声、歌い方が好きで銀橋を渡るときの芹香さんとのコンタクトが好きで・・もう存在のすべてが好きでした。理屈を超えて。
なぜかこの場面の春乃さんを見ていると毎回遠野あすかさんを思い出したりもして。姿が似ているというのではないんですけど。

視線泥棒の鷹翔千空さん

ジャングルの蛇はもちろん、ずっと私の視線泥棒だった鷹翔千空さんの活躍も忘れることができません。瑠風さんの休演中はカーニバルの場面を出ずっぱりで盛り上げていたことも。
瑠風さんが復帰しての「アイ・ラブ・レビュー」は鷹翔さんのスウィング調の歌をまた聞くことができて、これこれこれを待っていたのよと思いました。
このクオリティの高いショーを支え、時に引っ張っていたのは間違いないと思います。

桜木みなとさんのクオリティ

桜木さんを芯にした場面のクオリティの高さも瞠目ものでした。終始レベルの高いパフォーマンスを見せていた桜木さんの存在があってこそのこのショーの満足度だと思います。
桜木さんセンターの作品(芝居もショーも)をこれからももっと見たいと切に切に思いました。

芹香斗亜さんと宙組

まだ芹香さんが新公を卒業するかしないかの頃のCSの対談番組で「怒るという感情がわからない」的なことを話していたことがいまでもずっと心に残っています。
個人の内面のことですのでその理由は分かりません。
ただ人前で演技をすることを生業にしている人にとってそれは大丈夫なの?と思い、それ以来なんだか気になるジェンヌさんでした。(私が見たのは初回放送から数年後かもしれません)
宙組に異動になった芹香さんは感情溢れる芝居をする人で、観客を楽しませることを自分も楽しんでいて、宙組の下級生を育てたいとも話すその姿に頼もしさも感じていました。
10代で入団して以来関わった様々な人の影響をうけて成長しいまの姿があるのだろうなと思いましたし、それをまた下級生に返すことで貢献していこうとしているのだろうなと、そんなふうに思いお披露目公演を楽しみにしていました。
今回の特別公演では、舞台の真ん中で力の限り歌い上げる姿、桜木さんとの絶妙なコンビネーション、それらをようやく見ることができたことに宝塚大劇場では言葉にならない感慨が溢れました。
そして東京公演ではそれを繰り返し見ることができる喜びを感じました。

あの頂へ

おなじ場所からおなじものを見ていたとしても人によって見えるものは違うのだと思います。
私が見て感じたものは私のもの。
90周年から100周年にかけて、100周年から110周年にかけて、1ファンとしても公演スケジュールがどんどんタイトになっていくのは感じていましたし、求められる技能がより高くなっていくのも感じていました。
それがどれほど劇団員やスタッフにストレスをかけていたか。
いま思えばそれは当たり前ではなかったのだと分かりますが、当時はタカラジェンヌってなんてすごい人たちなのだろうと称賛の気持ちで仰ぎ見ていたように思います。
それを知っているからこそ心の中が波立ちますが、その中でがんばってきた1人1人に心からの拍手を送ることでしか私は自分の言葉にし得ない気持ちを表すことができないと思いました。
いまここ(舞台)にいる人たちにも私がファンになって見てきたここにいない人たちにも送るつもりで精一杯の拍手をしてきました。
ここから高みを目指して頂を見つめる人たちへ。

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