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2020/11/27

鷹は海をめざし海に生き海へ還る。

11月25日に梅田芸術劇場メインホールにて宝塚歌劇星組公演「エル・アルコン-鷹-」「Ray―星の光線-」を見てきました。

「エル・アルコン-鷹-」は、最初はスペクタクルな礼真琴さんの歌声に酔いしれ、舞空瞳さんの脅威のドレス姿と(なんでしょうあの身頃の小ささ!そして腰から下のスカートのバランス♡)どういう体幹があったらそのポーズを維持できるの?という美しい身のこなしにほわあぁぁぁん♡となり、ティリアンとギルダとしての2人のセリフの掛け合いもなかなか小気味よくて、これは期待♡と思って見ていたのですが、作品自体の描かれ方が途中からどうしても受け付なくなってしまいました。
大昔に原作ファンだったあの頃の大切なものを踏みにじられてしまったような気持ちになってしまって。
第二部のショー「Ray」が最高に素晴らしくてこれだけでチケット代以上の価値があり興奮して帰宅したのですが。
ショーの感想はのちほど書くつもりですが、ここではどうしても書かずにいられない大昔のファンの繰り言を。

このお芝居の原作が描かれた1970年代はいまよりずっと女性蔑視な考え方が生きていて、「はいからさんが通る」の青江冬星ではないけれど「女は泣く」「女はサボる」、即物的、数字が苦手、感情的、大局でものを見ることができない等々と文筆家の人たちでも普通に書ていた時代でした。人間的に負とされる部分を女性という属性の特徴だとされて、それを有していることを「女らしい」と見做されていた時代でした。『婦に長舌あるは是れ乱の階なり』—— 慎みのある女性が尊ばれるのは自分が劣っているという立場をわきまえて決して男性が為そうとすることの邪魔をしないから。
まだまだそんな空気が蔓延る時代に、新しい時代の風を感じて生きていた当時の少女たちの中には「女らしい」と言われることに蔑みの目で見られてるような居心地の悪さを感じる者も少なくなかったと思います。
そういう少女たちが既存の文学の中にはない生き方を少女漫画の中に探り求め支持したのが、女性に生まれて軍人として生きる主人公の物語や、少年同士の友愛を描いた物語、動乱の時代をたくましく生きる女性のロマンスなどではなかったかなと思います。現実にはとてもいないような女性に献身的な男性が登場するのもポイント。

そんな時代に、女性に都合が悪い男性たちを描いて人気を博したのが「エル・アルコン-鷹-」等の作者である青池保子先生でした。
その青池作品には「女性嫌悪」が根底にあるとずっと思っていましたが、それは当時の「女性らしさ」という概念に対する嫌悪ではなかったかといまにしてみると思うのです。大事な局面で泣き喚き、任務の邪魔をし、即物的で色恋にしか興味がないとされる存在=「女性」への。

齋藤吉正先生の作演出による宝塚歌劇の「エル・アルコン」は、その原作にある女性嫌悪の部分をさらに別な方向に煮詰めてしまったようないたたまれなさがありました。
それは本来の原作の方向とは真逆ではないかと思わずにいられませんでした。

また原作のティリアンは、野望のためには手段を択ばない敵役ではあれど、部下を信頼し傲慢な上司には激しく憤り(そのプンスカ具合が好きでした)、時には水夫と一緒になって肉体労働をして窮地を脱したり、幾度も死にかけるピンチにも遭う。部下に「死ぬなよ」と声を掛けることもあれば、彼なりに人を悼みもする(自分が殺めた者だったりするけれど)。
そんなエピソードのなかに、それでも野望を捨てない理由や冷酷な所業をやってのける理由が見出せる、感情的で人間らしい面もふんだんにある、激しさと冷たさのギャップが魅力的な人物でした。ですが舞台のティリアンは立派な衣装を着込んでしじゅう抑えた声で話す人物で、彼を魅力的に見せるエピソードを芝居で見せる場面はなく、かわりに寒々しいモノローグで誤魔化されていて、キャラクターとしてちっとも魅力的に思えませんでした。

いまでは「エル・アルコン」がシリーズの代表作であり代名詞ですが、世に出たのは、麗しの女装海賊キャプテン・レッド(ルミナス・レッド・ベネディクト)が主人公の「七つの海七つの空」が先でした。そしてそのレッドは、当時はまさに“言わずと知れた”レッド・ツェッペリンのヴォーカル、ロバート・プラントがモデルでした。
彼の部下にはツェッペリンのメンバー、ジョン・ボーナム、ジミー・ペイジ、ジョン・ポール・ジョーンズがモデルになっているキャラクターがいて、その関係性を面白がって読んでいた記憶があります。
あの頃の英米のロック・グループへの少女たちの熱狂は、その音楽性以外にも、もしかしてそれ以上に、「男性だけのグループの関係性」というものに憧れと夢を募らせた結果なのではないかと思います。問答無用に自分の属性が劣った一方とされてしまう男女の関係よりも、男性だけの盟友関係に夢を見たのではと。
そんな頭の中だけ、仲間内だけの空想が漫画という二次元の中で具現化されていることをどうして喜ばないでいられましょう。愉しまないでどうしましょう。そしてさらに性別を超えた装いや性別にこだわらないセクシュアリティのキャラクターたちが支持された理由も、おなじところに根があるのではないかと思います。その表現もいまとなってはアウトかもしれませんが。
この傾向はキャプテン・レッドの末裔とされるキャラクターたちが活躍する別作品「エロイカより愛をこめて」の初期により強いかな。
「七つの海七つの空」のほうは、イングランドの海賊たちがチームとなり、もうひとりの主役ティリアンが率いるスペイン無敵艦隊を敗るアルマダの海戦をクライマックスとする物語を紡いでいきます。

この「七つの海七つの空」には当時の少女漫画らしくちゃんとヒロインが登場します。それが貴族の娘ジュリエット、舞台では桜庭舞ちゃんが演じていましたが、私はこのジュリエットの登場でさ———っと醒めてしまいました。桜庭舞ちゃんは演出どおりにカンペキに演じただけだと思うのですが。
原作のジュリエットはあんな頭が弱そうな話し方をする女の子ではないし「お嫁さん」に憧れる子でもありません。あんなふうにハートの照明をあびて笑い者にされるようなキャラクターでもありません。
結婚よりも自由と夢と海賊に憧れる17歳。意に沿わない人の花嫁になるところを海賊に攫われて、さらにレッドたちに救われてみずから海賊見習いになる女の子。原作漫画を読んでいた頃は、レッドと仲間たち、ティリアンとニコラスがいれば満足で、正直ジュリエットは邪魔に思っていました。バンドの中の紅一点ってかんじで居方が難しい立ち位置だけど、彼女なりにレッドたちの役に立とうと懸命に生きて、ティリアンに一杯食わせたりもしてる。レッドに淡い恋心を抱きながらも、それよりも仲間として役割を果たすことで彼らの中に自分の居場所を作ろうとする子。いまになって考えると彼女の気持ちがよくわかる気がします。だからこそ、宝塚歌劇であんな描きかたをしてほしくなかったなと思うのです。
シグリットもペネロープもあの時代を女性として懸命に生きているキャラクターだと思うのだけど、舞台での描かれ方にはまるで愛を感じられませんでした。むしろ「女の浅知恵」とでも言いたげな描かれ方でした。
原作では、愛の言葉を囁きながら自分の腕の中で刺殺したペネロープの最期にティリアンはくちづけをしていたし、その遺体の処理を「できるだけきれいにしてやれ」と命令したり、けっして心のない人間というわけではなかったのに。
ただいつも彼は死と隣り合わせの運命に挑戦し続けていたから、他人にも死と隣り合わせの人生をその手で与えてしまう。だからといって人を人とも思わない人間では決してないと私は思います。

さらに最もショックだったのが、ギルダの描かれ方でした。
原作のギルダは、まさに「女にはできない」とされていたものをことごとくやってのけるキャラでした。身体中にある創傷、それまでの少女漫画にありがちだったリカちゃん体型ではなく、長身面長で首筋もしっかりとしたバービー体型、スカートを翻して剣を揮う女海賊。誰にも屈することなく、ティリアンとも互角に戦い、敗れ、すべてを失ってもなお、ティリアンの命を狙い続けた誇り高き女性。ティリアンは彼女の最期に敵将として心からの敬意を払っていたのに、舞台での詰まるところ女でしかないような描かれ方がとてもショックでした。
そしてとってつけたような原作にはない安っぽい子ども時代のエピソード。あんな蛇足を足すくらいなら、その尺をつかって原作のエピソードを描いてほしかったと思います。原作ものを手掛ける以上は逃げずにちゃんと向き合ってほしいと思います。

そしてキャプテン・レッドも幼く作り過ぎている気がしました。
幼い頃から義父に虐待を受け、その愛人たちに囲まれて育ち、みずからの境遇を自分の力で切り拓くために野望を胸に士官学校から海軍に入隊し権力に近づく道を選んだティリアンと、豪商の息子として両親に愛されオックスフォードの法科で学び、父親が反逆罪で処刑されてすべてを失うも、心に復讐を秘めて仲間と海賊として生きるキャプテン・レッド。
育った環境はちがえど、ともにアルマダの海戦時で20代半ば。
レッドもいつまでも世間知らずの若者ではないだろうし、1年のあいだに人間として逞しくなったレッドがティリアンと対峙するからこそ、ティリアンもより大きく見え、その生き方に説得力がでるのでは。
初演のキャストがどうしても年齢差があるように見えたのかもしれないけれど、初演が必ずしもベストではないのだから、いまのキャストといまの感覚で作品に向き合ってほしいなと思いました。

原作はどのキャラクターも心をもった人間として描かれていました。だからこそ読みごたえがあり私は(おそらく多くの人が)夢中になったのです。
冷酷といわれたティリアンにも心があり、なぜそうするのかという理由を見出すこともでき、心酔することができました。
舞台ではただただ非道な行いを重ねるだけになっていたのが残念でなりませんでした。

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2020/11/18

あの日の12月。

11月12日と13日に宝塚大劇場にて、宙組公演「アナスタシア」を見てきました。

アーニャ役の星風まどかちゃん、知ってはいたけれどほんとうに素晴らしいパフォーマーだなぁ。
開幕1週間にしてこの安定感。声の張り、伸び、コントロール。気持ちの良い歌声でした。

リトルアナスタシア役の天彩峰里ちゃんの愛らしいこと! ほんとうにそこにちいさなグランドプリンセスが存在していました。
祖母マリア皇太后(寿つかささん)に「私のいちばんのお気に入り」とハグされ、父ロシア皇帝ニコライⅡ世(瑠風輝さん)からも「今宵のさいしょのダンスの相手」としてエスコートされるなど大切に愛情を注がれて、尊重されて育ち培われた自尊心。それがのちの彼女につながっているなぁと思いました。

アナスタシアの長姉大公女オリガ役の愛海ひかるさん、娘役転向後のはじめての役でしたが笑顔輝く美人さんでドレスもよく似合って違和感なし(笑)。実咲凛音さんに面影が似ている気がしました。
次姉大公女タチアナ役の水音志保さん、宙組にこんな素敵な娘役さんがいたのか~♡ ほかの場面でもモブの中に素敵な娘役さんがいるな~と思うと彼女でした。大公女の豪華なドレス姿もとてもお似合いでした。これからどんどん注目したいです。

アナスタシアのすぐ上の姉大公女マリア役は、宙組にようこその潤花ちゃん。とても華があり目を惹きました。クラシカルな雰囲気もありお姫様役がぴったり。バレエの場面ではオデットとしてジークフリート役の亜音有星さんとの並びが夢夢しかったです。
白い生地に金の錦繍のドレスを纏ったこの三姉妹がとてもとても眼福で、私は目を離すことができませんでした。

アナスタシアの弟、幼い皇太子アレクセイ役は遥羽ららちゃん。アナスタシアの夢の中で語りかける場面はその鈴の音のような声と不思議な言葉が印象的でした。
そのアレクセイを平然とお姫様抱っこ?していたロマノフ家の鷹翔千空さん、涼しいお顏を少しも崩さずすごいなぁと思いました。
ニコライⅡ世役の瑠風輝さんも、リトルアナスタシアを(こちらはまさに)お姫様抱っこしていて、なんだかもうタカラヅカなんだけども、さらにその先の超タカラヅカといいますか、夢心地でした。

ロマノフ家のプリンスとして登場する4人の美麗な白軍服の男役さんは、秋音光さん、紫藤りゅうさん、留依蒔世さんそして鷹翔千空さん。大公女姉妹をエスコートする立ち姿も凛々しく優しく一滴の毒もなくこれはまさしくタカラヅカじゃなければどこで見るのかと。
このなかのいちばん若い人がドミトリー大公かな?と思ったけれど、彼は革命の時にはロシアを追放されていたのだっけ。
ではこのロマノフたちは、処刑された別の若き大公や公たちかなぁ。
まるで砂糖菓子のようにロマンチックなロマノフたちに陶然となりながら、その煌めきと幸福感がいっそうせつなくなりました。

彼らに富と幸福が集約されるシステムの陰で、お腹も心も満たされず凍えて走り回っていた少年がいたのよね。ペテルブルクの街で。(と心の中でもうひとりの私が囁きました)

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2020/08/20

かんたんに言ってくれる。

8月18日にシアタードラマシティにて宝塚歌劇宙組公演「壮麗帝」千秋楽の2公演を見てきました。

プロローグから歌舞音曲に目と耳が喜ぶ公演でした。
数か月宝塚だけではなくすべての観劇から遠ざからずを得なかった身にはとても沁みました。
この1か月で見た「はいからさんが通る」「Flying SAPA」と比べても宝塚歌劇らしいお約束がふんだんにある作品で「私いま宝塚を見てる~」と実感しました。

初見は「宝塚」を見たことにただただ満足な私でしたが、脚本的にはエピソードの羅列というかロジックがないというか、こどもの話をうんうん、それで?と聴きながら、あ、ヤマもオチもナシか(笑)となるようなそんな感覚でした。
同じ回を見た方が終演後の感想で「年代記」とおっしゃっていたのですがまさにそれだなと思いました。
魅力ある役者たちが演じて見せる「歴史秘話ヒストリア」「ぜいたくな年代記」ですね。

皇帝が即位するとき継承権をもつ他の皇子を殺めるのがオスマンの慣習と聞かされたヒロインのヒュッレム(遥羽ららちゃん)が、慣習は改めればよいと、家族が仲良く暮らすのは素敵なことじゃありませんかと言って、心優しき皇帝スレイマン(桜木みなとさん)の心を動かしていました。
スレイマンも仲の良かった異母兄が自分のせいで殺されたから彼女の言葉が響くのだろうなぁ。

さあこれからどうするのかお手並み拝見!と思って見ていたんだけど。

次々に子どもをこさえるだけで、もしかして何もしていない・・・??
「可愛いなお前は」とか言われている場合じゃないですよ。

皇帝の側室は1人しか皇子を生まないのが慣習、何人も皇子を産めば同母の兄弟同士で殺し合うことになる、それでもいいのかと真意を母后ハフサ(凛城きらさん)に問いただされても、兄弟が仲良く助け合って国を治めればよいという以上のことは言わないヒュッレム、確実に我が子に迫っている危機について考えているのはそれだけ? と思いました。
とうぜんながら母后にわかってもらえなくて、ひとり「伝えたいことが言葉にできない」的なことを歌うけれど、すでにこの世に生まれた息子たちをどう守っていこうとしているのか、なにを訴え理解してもらいたいのか、それをつたえることを母として命懸けでやらないでどうするの?! 
(ていうかですよ、そのヒロインの思いなり覚悟なりを言葉に尽くして観客に見せるのが脚本家の仕事じゃないのかな~? 「言葉にできない」でわかってもらおうっていうのは観客に甘えすぎじゃない??とも思いました)

慣例を破りヒュッレムひとりを寵愛し次々に子を産ませているスレイマン。
子どもを多く作ればそれだけ殺される子どもが増える。そうならないための手立てはなにも講じていない。
子どもたちは成長し、寵妃ヒュッレムの一番目の息子の第二皇子が次期皇帝の有力候補と目されるようになると、とうぜん第一皇子の母マヒデブラン(秋音光さん)は危機感を募らせヒュッレムを毒殺しようとして露見。
スレイマンはマヒデブランと第一皇子を地方へ封じるも、それがゆくゆくの火種となって祭り上げられ反乱を起こした第一皇子を処刑するはめに陥る。
すべては自分が蒔いた種だ。寵妃の命が狙われるのも、自分が息子を処刑することになるのも。
そうならないためにある慣習なのに、それを破りながらなにも対処していないんだもの。

馴れ初めし頃、国境付近の小競り合いで故郷が被害を受け奴隷に売られたヒュッレムに同情し自分の責任だと言い、平和を望む彼女の言葉に肯きながら「国境のない世界をつくるために戦う」と言ったスレイマン。
その「戦う」は比喩でもなんでもなく、戦争をして領土を広げていくってことですよね。ヒュッレムの身にかつて起きたことを、さらにどんどん起こしていくって彼女にむかって宣言しているのですよね。
(ニコニコ聴いているヒュッレムもどうなの・・・汗)

対話になっていないのですよね。対話しているようで噛み合っていない。
たがいに耳の遠い祖母と大叔母の会話を聞いているような感覚に陥りました。(相槌を打ちながらそれぞれちがうことを話していたなぁ)

ともに育ち信頼していた大宰相イブラヒム(和希そらさん)があんなにかんたんに敵の奸計に堕ちるのもどうしても解せない。
なにかに囚われすぎて目が曇っていたの? そこを描いて見せてほしかったなぁ。

なんというか元ネタはドラマチックだから尺はあるけど、物語としては伝記よりもさらに浅くて軽い、抗いもせずなるようになった年代記だったなという感想です。

と言いながら、タカラジェンヌのパフォーマンスをおおいに愉しみ、プロローグのベリーダンス衣装のららちゃんに溶かされ、ハティージェの天彩峰里ちゃん可愛い~、こってぃ(鷹翔千空さん)悪~い、水音志保さん素敵、七生(眞希)さんほくろ~♡ 群舞のカズキソラッ! ハフサ様のお化粧で燕尾の凛城さん♡となり、ずんちゃん(桜木みなとさん)の挨拶に感動し満足して劇場を後にした私でした。

こうして文句も言いつつ心ときめかせつつ宝塚が見られるってことが、ほんとうにしあわせなことだと感じています。

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2020/08/13

どんな世界をつくるか競争ね、わたしたち。

究極の融和、ユートピア思想、それを渇望するわけ。
ちがいが争いを、分断を、不幸を招くと考えたから。
神の恵みが当たり前の人びとと明日には命がないかもしれない憐れなみなし子。

8月4日と5日、梅田芸術劇場メインホールにて宝塚歌劇宙組公演「FLYING SAPA -フライング サパ-」を見てきました。
以来ずっと心のうちでブコビッチ(汝鳥伶さん/穂稀せりさん)と対話をしているような気がします。
彼がめざしたもの。彼がわかってほしかったことを知りたくて。

ブコビッチと対話したオバク(真風涼帆さん)は宇宙へと冒険の旅に出ることを決意。
崩壊した共同体のシステムの再構築に関心を向ける人ではなく、未知をもとめて刺激的で外的リスクの多い人生をその足で歩いていきたい人なんだな。
たしかにそういう人だったと思います。SAPAの違法ホテルに目的地へ向かうでもなくぐずぐず停留していた人たちを一蹴したり、「自己責任」を口にして人助けは不本意そうだったし。レジスタンスとして活動していたのも誰かのため社会のためではなくブコビッチへの憎しみのため、それだけだったのじゃないかな。

その彼の無謀ともいえる旅にポルンカの人口の半分(15,000人?)の人びとが同行するというのがどうにも解せないのです。
いつの間にそれほどの人びとを束ねる艦長と認められる人になったのかな。
その15,000人とはどんな人たちなんだろう。タフで健康で夢のある人たちかしら。

私だったらオバクにはついていかないなぁと思います。福祉とか医療とかに感心がなさそうなリーダーだし。
ピカピカのキレイゴトと批判されても「誰も見捨てない」と言ったノア(芹香斗亜さん)とポルンカに残りたいなぁ。
ノアを批判したイエレナ(夢白あやさん)は「サーシャ(オバク)だったら」と言いかけたけど、オバクだったら「自分の身は自分で守れ」と言ったはずと言いたかったのかな。

そんなイエレナもオバクたちとは旅立たずポルンカに残るという。子どもが生まれるからと。それは口実かもしれないけれど、それが口実になるくらいには、子連れでは困難な旅ということなのだろうな。
誰でもが行ける旅じゃない。

そんな旅に行きたい人びと、行くことができる人びと・・・夢と自信に満ちた人びとを統率するオバクとともに旅立つミレナ(星風まどかちゃん)。
微笑ましいクーデターを起こしてポルンカに残り黴臭い民主主義とやらをやりなおすと宣言するイエレナ。ノアとともに。
それぞれに苦しみ自分を苛み抜いた2人がふたたび友情をわかち抱擁する場面が大好きでした。
「どんな世界をつくるか競争ね、私たち」と。
壮絶な15年間を過ごしてきた2人。愛についてはこれからたくさん学んでいくのだろうな。
そして憐れなみなし子ブコビッチと内なる対話を登場人物のだれかひとりでもいいのでしていてほしいな。ときどきは。

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2020/07/22

風に乗せて伝えよう変わらぬ気持ちを。

7月20日に宝塚大劇場にて花組公演「はいからさんが通る」を見てきました。

ようやく再開された宝塚公演の最初の演目、そして柚香光さんの大劇場トップお披露目公演。
私にとっては2月の星組公演以来の観劇・・と幾重にも待ちに待ったこの日でした。

れいちゃん(柚香光さん)の少尉のなんと素敵なこと。
指の先まで夢と薔薇と甘やかなものが詰まっているとしか思えない。
柚香光はタカラヅカでできています。

華ちゃん(華優希さん)演じる紅緒の愛らしさに頬が緩みました。
けなげさとその魂の強さに涙しました。
女子のおかれた立場の理不尽さに憤るもなにをどこからどうするべきかもわからなくて。
男の真似事をしてみたり八つ当たりをしてみたり強くならねばと気負ってみたり。
紅緒の忙しい気持ちにかつての少女は共感し愛おしく思いました。

そんな紅緒のとばっちりばかり受けている少尉なのだけど、彼が彼女を愛しいと思う気持ちが溢れんばかりにつたわり、そんな少尉もまた愛おしくてたまりませんでした。

異国の血を引く自分に向けられる周囲のまなざし、親に捨てられたと思う寂しさ、わけもなく自分がわるいのだと思うこども。
そんな自分を愛してくれる人たちに報いたいという思いが彼の生き方そのものになっているのも理解できてしまう。贖罪のために生きてしまう人・・。

そんな少尉を心の底から笑わせたのが紅緒なんだなぁと。
「あなたのせいよ!」と真っ向から食って掛かってくる女の子。それ自体は言いがかりでしかないけれど、はっきりと自分を主張する彼女が眩しく輝いて見えたのだろうなぁ。彼には絶対にもち得ないマインドをもっている女の子が。
そんな想像をめぐらせることができるれいちゃんの芝居がとても好きでした。
紅緒のことには少尉もほんの少しだけどエゴを出せるのだなぁと思えてうれしかったりもしました。

原作を読んでいた頃はこんなに少尉の気持ちを考えたことがなかったなぁと思ったり。
そもそもその頃のご贔屓は蘭丸と冬星さん、そして環さんだったなぁと思い出しました(笑)。
舞台で見る少尉と紅緒は、漫画で見ていた時よりもけなげさとせつなさが増していた印象でした。私が彼らよりうんと年上になったせいでしょうか。つい泣かされてしまうのは。
時代背景もなんだかリアルにかんじられました。ぜったいにあり得ない少女漫画の設定なのに・・。でもそこにリアルが見えたなぁ。

見ていると愛おしさが次から次へと溢れてきて、2人のお芝居に引き込まれていきました。

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2020/02/25

方々、さらばでござる。

2月12日と16日、東京宝塚劇場にて宙組公演「El Japón(エル ハポン) -イスパニアのサムライ-」と「アクアヴィーテ!!~生命の水~ 」を見てきました。
2月16日は千秋楽でした。東京宝塚劇場で千秋楽を観劇するのは、凰稀かなめさんの退団公演以来です。(近年はありがいたいことに映画館のライブビューイングで見させてもらっていますが・・時代は移り変わりゆきますです)

同公演は、宝塚大劇場で12月上旬に観劇して以来2か月ぶりの観劇でした。
待ち遠しくて、1月の終わりに観劇まであと何日かなぁと考えて、まだ半月以上も先なことに愕然としたりもしていました。
この公演は上演期間が1か月半と通常より長かったのでした(涙)。(「白夜の誓い」の時も1か月半だったので、東京の2月公演はそういう傾向なのでしょうか)

ということで待ちに待っての観劇の感想です。

「エルハポン」はストーリーの流れがすごくよくなっていると感じました。出演者全員の目指すところが1つになっていると。
そのうえで、それぞれの役の奥行きも感じられてとても面白く観劇しました。

いちばん変わった印象をうけたのは、星風まどかちゃん演じるカタリナかな。心の動きがすごく伝わってきました。
酒場でのシーン。いつもより声のトーンがちがうカタリナ。無理に明るくふるまおうとしているよう。
治道の帰国が近いことを知り1人ですべてを背負う覚悟でいるのかなぁ。でも寂しさは隠せないでいる。昔の幸せな頃を思い出したり。明るく自分に言い聞かせてみたり。揺れ動いている気持ちがすごく伝わってきました。

いつもは気丈なカタリナの弱さに触れた治道の戸惑い、心に湧き出す愛しさ、その思いゆえに彼女が笑みをとりもどすように柄でもないダンスを自らいざない(でもいつのまにかあっさり会得していた・・さすが剣士)、というそんなエモーショナルな流れが手に取るように見えて。
いつのまにか言葉はなくとも交わす目線とダンスとで心を通わすようになっていた治道とカタリナに涙しました。
そこから治道と訣しあらためて覚悟を決めたカタリナが歌うアリアのなんとも心に沁みること・・。2人の芝居がここまで来たのだなぁ。
真風さんは心を打つ芝居を自然にする人だなぁ。そして千秋楽にはずれなしの人だなぁと思います。
みちすじがちゃんと見えている人なんだろうなぁと思います。

主演の2人の芝居の深まり。そして2人とはちがうところで繰り広げられる人物たちの生き様、咆哮もさらに面白くなっていました。

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2020/02/24

守るべきものは。

2月17日に宝塚大劇場にて星組公演「眩耀の谷」と「Ray」を見てきました。―― の感想のつづきです。

瀬央ゆりやさん演ずる謎の男の正体は薄々察せられるものがありましたが、ほんとうに謎なのはなぜ彼は礼真を・・・?ということでした。
終盤にその理由が明かされるわけですが、そこがちょっと腑に落ちないといいますか。

血統だけではないはずですよね。血統だけでいうなら瞳花だって該当するし、ほかにも末裔は幾人もいそうです。なにより瞳花の幼い息子だって。
礼真の資質こそ相応しいからですよね。そこがふわっとしてた気がします。対比させる誰かとかがいたら面白いのになぁ。
愛月ひかるさん演じる管武将軍がもっと亜里の謎に踏み込む野心的な人物として描かれていたらなぁ。瞳花を通じてなにかを悟って動いているとか。

幼子をめぐる話の流れがなんともすっきりしないのです。管武将軍の無情さ、保身のための計算高さをあらわすだけの道具になっているようで。
瞳花も。美しく舞っている場合じゃない気がして。我が子を思う気持ち。母の嘆きはそんなものではないのでは。もっと主体的にかかわろうとする意志が見たかった。

管武将軍、幼子、瞳花。
このあたりの描き方、焦点の当て方が物足りなく感じます。
演じる方の力でなんとか埋めてもらうしかないのかな。来月もう一度見る予定がありますので期待したいです。
(が、新型コロナウィルスの蔓延も甘くみてはいられない状況で、今回が唯一の観劇であったかもしれません)

謎の男を演じる瀬央さんは、ごく普通の男のような雰囲気から話がすすむにつれていわくありげになっていくかんじが面白かったです。


宣王を演じる華形ひかるさんは、私欲でうごく狡猾そうな暴君の雰囲気。
巫女の敏麗を演じる音羽みのりさんは、宮殿の女性の誰よりも強い力をもっているように見える臈長けた女性。
宣王の妾妃瑛琳を演じる小桜ほのかさんは目ぢからのあるクールな印象の女性で、敏麗とは姉妹らしい。

この姉妹の目的もいまいちわからなくて。
宣王が「黄金の谷」に心動かされる人間であることは熟知しているのですよね。
瑛琳を寵妃にするために画策しているということなのかしら。
もしかして瞳花が盲目となったことにもかかわっていたりする? それは飛躍のし過ぎかな。
すんごくアクの強い婀娜な姉妹だったので印象的なのですが、思い返すとなにがしたかったのかよくわからない(笑)。
けど見応えのある姉妹で気になりました。

春崇役の有沙瞳さん。語り口調が優しげで、そしてお上手です。
ラストのしあわせそうな笑みが印象的で忘れられません。彼女のおかげで満足して良いものを見たわ~~としあわせな気持ちで幕間をむかえました(笑)。

印象的といえば、礼真をいざなう神さまの使い、小鳥か蝶かと見紛うようなしなやかに舞い踊る動きが美しくて。
あとでプログラムを見ると、水乃ゆりさんかな?
星組はデキル娘役が多くて層が厚いなぁとしみじみ思いました。


さて、ショー「Ray」について。
これは中村B先生、本望だろうなぁと思いました。
ロックもジャズも歌いこなす琴ちゃん(礼真琴さん)。シャウトもウィスパーも思いのまま。ヴォーカリストだわ。

MUSIC AND DANCE, SONG AND DANCE,DANCE,DANCE ‼︎なショーで、 素材で勝負って感じのスピーディーなショーで楽しかったです。
手拍子も裏打ちでノリやすくてよかったです。(「アクアヴィーテ」の頭打ちがずっと違和感で・・楽のウィスキーボンボンまでも涙)
なんというか、まさしくショーを楽しんでいる!という気分。

で気分がのったところに登場する愛ちゃん(愛月ひかるさん)。
ナニソレ。
ナニそのハットの被り方。ナニそのスーツの着こなし。ナニその長い脚のさばき方♡
正しく宝塚だわ~~~~♡

正統派エンターテイナーと正統派タカラヅカが交互にきて、なんだかムヒムヒ笑っちゃうショーでした。
そしてどっちついても踊る踊る踊る!星組生。
新生星組ってこうなんだ! まさしく新しい星組をお披露目されたかんじがしました。

綺城ひか理さんも天華えまさんも歌うまっ。
極美慎さんもそういうニュアンスで歌えるんだ。
この世代の男役さんの充実ぶり、凄いなぁ。

男役さんに負けていない、それぞれが半歩前に出ているような勢いの娘役さんにも驚きます。
娘役さんがカッコイイ(笑)。

そして名も知らぬ下級生にも綺麗なひとたちがたくさん。(星組下級生の舞台化粧技術すごい???)
そして踊れる。歌える。驚き。
ほかの組にだってチャンスさえあえば踊れる歌える生徒さんたくさんなのかもしれないけど、とにかくこれがいまの星組なのねと。
いろいろ瞠目するショーでした。(詳細はあまり覚えていない・・・笑)

星組はたまに見るせいもあると思うけど、下級生だと思っていた人の成長に驚きます。
星組さんは育てることに長けているのかなぁなんて思いながら帰路につきました。

来月もう一度見れることができますように!

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2020/02/21

真実を知るには勇気がいる。

2月17日に宝塚大劇場にて星組公演「眩耀の谷」「Ray」を見てきました。
期待の新トップコンビ礼真琴さんと舞空瞳さんの大劇場お披露目公演。チケットを手に入れるのは難しいかなぁと思っていたのですが、宙組東京千秋楽観劇の翌日に日にちを絞ってプレイガイドの先行にエントリーしてみたら幸運にも観劇が叶いました。

「眩耀の谷」はお芝居としては初の謝珠栄先生の大劇場作品でした。
古代の中国が舞台の作品として、音楽も舞踊も舞台美術も素晴らしいものでした。それを表現している星組の皆さんも。
凄いものを見たわと思いました。

宙組公演「エル ハポン-イスパニアのサムライ-」を見て、人を育てるということが明日への希望だなぁとしみじみと思ったのですが、この「眩耀の谷」を見てさらに、命をつなぐ次世代への愛が連々と人を生かしているのだなぁと思いました。
主人公が民を扇動し殲滅されゆくさまを美化する「メサイア」が美しければ美しいほどエモーショナルであればあるほど受け容れ難かった私には、この主人公礼真(礼真琴さん)の苦悩するさま、そして彼の決断に深く共感しました。

礼真の瞳には、そこに生きている人々の姿が見えている―― そう思いました。
生きるために、次代に命をつなぐために、虐げられ傷ついた民たちが必死で銀橋を渡っている姿に心迫るものがありました。
彼らを護るため目を配る男たちにも。
生きるということがどれほど尊いか。それを見せられたような気がしました。
有沙瞳さん演じる春崇がそれを象徴しているような役で幸せな気持ちのなかで終幕を迎えることができました。

「まことを知るには勇気がいる」
自分が真実と思っているものは、都合よく修正されたそれではないのか。
おそらく主演の礼真琴さんのお名前にも掛けられた“マコト”という言葉を噛みしめながら、この時世だからこそいっそう心に響くものがありました。

礼真琴さんは父母を敬愛し、尊敬する人の言葉に素直に感銘をうける純粋な青年丹礼真を全身全霊で演じてらっしゃいました。
礼真として民を思う気持ちはそのまま組を思う気持ちとも重なって見え、この役を通じて彼女自身が大きくなるにつれ、さらに深みのある作品になる予感がしました。

見ているとどんどん湧いてくる謎と、それが解けていく面白さ。
あのとき意味があるとも思わなかった礼真の行動にちゃんと意味があったのか!とか。(金属で叩くと火花が散る黄鉄鉱は「愚者の黄金」とも呼ばれる)
このさき公演を重ねてネタバレが浸透してしまってからは、内面を表現する芝居が勝負かなと思います。
磨かれていくことでさらに面白くなる作品だと思います。

ヒロインの瞳花を演じる舞空瞳さんは、一族の王の妹で舞姫の役。
可憐な彼女にぴったりな役かと思いきや、盲目にされ、しかも幼い子どもと生き別れてしまった悲しい女性の役。
彼女にとってこの役は挑戦だなぁと思いました。女性として言い尽くしがたい悲惨な憂き目に遭ったという実感は正直まだ伝わってこなくて、セリフの上だけになってしまっている感はありました。
盲目の役ということで目ヂカラを封印されてしまうのも難しいところかなぁ。星組には目ヂカラのある娘役さんが多いから(小桜ほのかさんとか音羽みのりさんとか小桜ほのかさんとか)つい薄い印象になってしまうのも気の毒な気がしました。
彼女がどうこの役を掴んでいくかで作品も深まっていくだろうなぁと。
盲目ながら舞う姿はとっても美しくて彼女の魅力が発揮されていました。ラストシーンで礼真と並ぶ姿も美しい対でした。

管武将軍役の愛月ひかるさんは、まだまだ本領発揮とはいかないかなぁというのが正直な印象でした。
まだお芝居が臆病というか。
もっと礼真の心酔が当然に思える武将としての器の大きさやキラキラ(ギラギラ?)したカリスマ性が見えたらいいなぁ。
そこからのギャップが見せどころじゃないかしら。
そうすると礼真の苦悩の理由に説得力が増すと思います。
コスチュームの似合いっぷりはさすがでしたので、役に相応しい色気も加味して魅せてほしいなと思います。

ひきつづき謎の男役の瀬央ゆりやさんについて書きたいところですが、健康管理も社会的責任なご時勢、睡眠時間確保のため、後日にいたしたいと存じます。

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2019/12/12

おまえの決心は俺が見とどけてやる。

12月9日と10日、宝塚大劇場にて宙組公演「El Japón(エル ハポン) -イスパニアのサムライ-」と「アクアヴィーテ(aquavitae)!!~生命の水~ 」を見てきました。

前回11月22日23日に見たときは、うまく咀嚼できないまま飲み込んでしまったような腑に落ちない印象を受けていたのですが、今回はぐいぐい引き込まれて集中して見ることができました。
ストーリーを追いながら集中して見ていると、あっそうなんだ、なるほどの連続。どの場面もどのセリフも、見逃すのが聞き逃すのがもったいなくて、ビューポイントも多々。目が足りない。となりました。

真風涼帆さん演じる主人公(蒲田治道)が内省的なサムライというキャラクターなので、役柄的に受け身なため、周りが強く押さないと強く押し返せない。周りの芝居しだいで起伏が乏しい作品になってしまうように思います。
前回見たときよりも周囲の人たちの気持ちが強くなっていたのが集中して見られた理由じゃないかなと思います。

とくにエリアル役の桜木みなとさんが変わったかも。より漫画的に押し気味に治道とかかわっていってた気がします。ひとの話など聞いちゃいない(笑)。一方的なエリアルに、そんなつもりはないのに巻き込まれてしまう治道が好きでした。
さらにもっと過剰にナルシストに演じてもいいのではないかしらと、そのほうがぜったいにたのしい(笑)。

それから、はる役の天彩峰里ちゃんも漫画的な役づくりが活きているなと思います。
今回は、ほかの奴隷に売られた女の子たちもキャラが濃くなっていて、みんなでわちゃわちゃしている場面がたのしかったです。それぞれにちゃんとキャラがあるのだなと。ロベルタ(花音舞さん)やアレハンドロ(芹香斗亜さん)とのかかわり方にも個性が見えました。

ドン・フェルディナンド役の英真なおきさんはいわずもがなで心得ていらっしゃる。目つきからセリフ回しから絵に描いたような下種が過ぎる悪党。こんなふうに演じられたらたのしいだろうなぁ。
ドン・フェルディナンドの手下の黒マントの軍団が、前回見たときよりもカッコよくなってました。スタイル良い人たちがマントを翻す姿は眼福。(下級生だと思っていた人たちがどんどんカッコよくなってきてて焦る~でも帽子が目深でいまいち判別がついていない私です・・涙)
せっかくなので、次に出てきたときにも誰が誰とはっきりわかるキャラづくりにするといいのになぁと思います。
あの悪辣な奸物ドン・フェルディナンドの手下となるような人たちだから、それは一筋縄ではいかない気性とか裏事情がありそう。

ヒロインのカタリナ役の星風まどかちゃんが情感豊かになってていてすごいなぁと思いました。肌色と合わないなぁと思っていたドレスもすっきりとして見えました。
なのに、まどかちゃんが存分にヒロイン力を表現できる場面がないのだよなぁ。
剣術の稽古を通じて治道との心の距離が近づく場面とか、治道の帰国が決まった知らせをうけて心揺れる場面とかは描かれていないのですよね。
2人が剣術の稽古をしているはずの時間に、宿屋の女の子達と使節団の若者たちが元気にエイヤー!やっている場面を見ている場合じゃないのよ私は~!(可愛いけど)

一緒に観劇した初見の友人も、意識が飛んだときに肝心な場面(治道とカタリナが心通わす場面)を見逃してしまったと思ったと言っていました。
いやいやいや、そもそもそういう場面がないのです。びっくりですよね。
どうやらこの物語りは、私たちが思っているのとは異なるロジックではこばれているようなのです。
それゆえに初見では上手に咀嚼できなかったのだと思います。

ストーリーを追いながら気づいたことですが、この作品は、少年漫画の流儀で見ないとだめなんだと。
「死に時を探して無為に生きていた主人公が、マストアイテムを得て覚醒する」物語なのだと。
そのアイテムが、守るべき人、倒すべき悪、ライバル、そしてトモダチ。
目的が達成されたとき、おのずと恋も成就する。そういうロジックなのだと。
(だから恋愛模様の展開にはあまり場面を割かないのだろうなぁ)
守るべき人とは、主君であったり愛しく思う人であったりですが、あちらがどう思うかは関係なく、自分がこの人と決めた人のこと。
ライバルはこの作品では変則的で、主人公は意図せず勝手に巻き込まれてる(笑)。トモダチもまぁそうかも。

基本的には翻弄され型の主人公で、内省的な恋愛体質なので、彼を動かすには突拍子もない人物や出来事が必要なのだと思います。
アレハンドロみたいなトモダチが。
宿屋の主人におさまっても、いろんなもの(事件)をアレハンドロが持ってきそうだな。そのたびに巻き込まれる治道、みたいな-その後のイスパニアのサムライ-のスピンオフが見てみたいなと思います。(こんどこそマカロニ・ウエスタンになるかな)
もちろん、もれなくエリアスと藤九郎(和希そらさん)がくっついてきますね。 

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2019/12/04

おとぎ話の終わりは。

11月21日に東京宝塚劇場にて、花組公演「A Fairy Tale -青い薔薇の精-」と「シャルム!」を見てきました。
みりおちゃん(明日海りおさん)の宝塚最後の公演、はたしてチケットが手に入るのだろうかと思っていましたが、幸運にも友の会で当選して見納めすることができました。

お芝居「A Fairy Tale」は終演後、景子先生、これでもかと少女趣味をぶち込んで来ましたね(笑)と思って笑えてしまいました。
設定も舞台美術もセリフの端々も。過剰なほどに美しく清らで、自分が好まないものは世界観から排除してしまうそんな少女の夢。こそばゆいけど嫌いじゃないです。
本意でない政略結婚だったとはいえ、夫である相手に「あなたを愛したことなど一度もない」と言い切ってしまえるヒロインの強情な潔癖さ。これは遁世して夢見る少女小説家にでもなるしかありませんなと思ったらある意味正解で(笑)。
そういえば、寄宿学校でも授業中に妖精の絵を描いたり仕事を持ちたいなどと言ってクラスメイトの少女たちに引かれていたなぁ。夢想の中に生きてほかの少女たちからは孤立しているそんな子だったよね、シャーロット(華優希さん)は。
たぶん、このシャーロットというヒロインに共感する、あるいは自分を重ねてしまう宝塚ファンはすくなくないのではないかな。

なんだか笑えてしまったのはそんな心当たりが私にもあったからかなと思います。
そしてやっぱり終わりがハッピーエンドだったのも大きいかなと思います。(相変わらず権威主義で無神経なところがあるなぁ景子先生、、と思うところもありましたが。自分がハッピーでいるために踏みつけにしている存在に気づいてもいなさそうなところがあるなぁと。オールオッケーとは思えない部分が)

お芝居ラストのみりおエリュの振り向きざまの表情にいろんなものが過って見えたように思いますが、そのなかに悪戯好きのフェアリーの顔も見えた気がしました。
ああ、これもみりおちゃんが持っているもののひとつなんだなと思って、この期に及んで可笑しくなってしまったのもありました。
思い込み激しく一途に突き進んで破滅していく役がこのうえもなく似合っていたみりおちゃんですが、ほくそ笑む悪戯な妖精の顔もたしかに持っていたよなぁと。
端から見ていてちょっと辻褄が・・とか、えっこれで彼らが誰かのために生きていると思えるの・・とか、唖然とするストーリー運びであっても、心底から心を動かし嘘にならないところ、さすがだなぁと思いました。この純粋さがタカラジェンヌの鑑だなぁと。

この繊細な薔薇様が棲む世界を無邪気に愛した頃、遠く隔たり信じることが出来なかった頃、かけがえのないものと気づく頃。
妖精とは。
自分と重ねてみるとさまざま思うことが過るのは、みりおちゃんやそれぞれの役を演じきった花組の生徒さんたちの力によるものだったなぁと思います。いまの花組はすごく力のある組だなぁとしみじみ思います。芝居の良い組になりましたよねぇ。

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