カテゴリー「♖ 宝塚大劇場」の152件の記事

2023/07/17

日傘さす人つくる人。

7月7日に宝塚大劇場にて花組公演「鴛鴦歌合戦」と「GRAND MIRAGE!」の初日を見てきました。

6月28日に星組公演「1789」を観劇した後、宝塚ホテルの部屋で何気なくCSを付けていたら、次回大劇場公演のPR番組で柚香光さんが着物の組紋のことなどを朗らかにお話しされていてなんだか楽しそうな作品だなぁと興味が湧いたのですが、「1789」にかまけて花組公演のチケットを手に入れていなかったことに気づいてがっかり。
その話を翌日ヅカ友さんにお話ししたら青天の霹靂のように初日に見に行けることになり(急展開)1週間後の再遠征と相成りました。

今回は諦めていたところからの奇跡のような出来事でしたがまず滅多に起きることではないし、こんな迂闊な人間にもチャンスがあるように観劇できなくなった人が譲りたい相手に譲渡できる公式のシステムがあるといいなぁと思います。

「鴛鴦歌合戦」は昔のオペレッタ映画が元ネタということだけは事前に知っていましたが、それ以外の知識も情報もなく、ただただ「柚香さんが公演について朗らかにお話ししている」という印象だけで観劇しました。
その光景が胸に刺さった訳が観劇してなんとなくですがわかった気がします。

ここ最近観劇した「ファクトリー・ガールズ」や「1789」とは真逆の世界観で、誰も世の中を変えようなんて思っていない!
彼らはユートピアみたいな世界に生きているから。
お米がなくてもヒロインは飢えないし可愛いおべべを着ているし、親のない子は優しい誰かに育んでもらえる。
まさに小柳ワールド。

取り巻きを大勢連れている大店のお嬢さんが恋のライバルで、父親は生活費を使い込んで晴れ着も買えないし、フェティシズム強めなお殿様には好かれてしまうし、なにより好きな礼三さんは態度をはっきりしてくれないし!ヒロインお春ちゃんの日常はなかなか困難。思わずがんばれ~~!と思ってしまう。

いやいや、父親が生活費を使い込んでしまってお米が買えないとか、その父親が奸計に嵌って大金を工面できなければ殿様の妾にされてしまうとか、現実的に考えたらかなり深刻な状況、経済的虐待だし性搾取未遂。がんばれ~とかヘラヘラ言ってる場合じゃないと思うんですけどそこはさらっとノンキな演出に。それこそがこの作品なのかな。

社会を変えなくてもヒロインを困らせている人たちが改心すればそれで解決。(登場人物は皆素直なので気づいたら改心も早い)
経済的な問題も思いもよらぬことで解決。(最初から匂わせているのでわかりやすい)

唯一変わらないのが礼三郎。
金持ちは嫌いだと言って決別を匂わせて彼女に決心させる。
礼三郎に対して自分が変わらないことを証明するために彼女は国家予算に匹敵するものをふいにする。
あれまぁ。(心の声)

この展開は往年の喜劇っぽくて懐かしいけれど。
自分が支配できない女性とは添えないってことか。
と今の世に見るとついそんな感想ももっちゃうかな。
そのお金で世の中に貢献して人々を幸せにすることもできるのだけど、社会的な責任を負うよりもささやかな幸せ、という人なんだよね礼三郎は。
たしかにお殿様の器ではないな。

ツッコミ出すといろいろあることはあるのだけど、見ているひとときは登場人物たちへの愛おしさに涙し、演じる人たちに対する愛しみが溢れて心が癒されました。
役として人として葛藤し魂を振り絞るような舞台に深く感動もしますが、このような演者の魅力を前面に出した「上質な学芸会」を楽しめるのも宝塚の懐の深さだなぁと思いながらほのぼのとした気持ちで帰路につきました。

結論「これはこれであり」。

(・・・がしかし、どのへんが「鴛鴦」で「歌合戦」だったのかな)

<CAST>
浅井礼三郎(柚香光) 涼しい顔をして自分の領域を守って生きている人。そこに皆が憧れて方々から縁談話が持ち込まれるのだと思うけど本人は嫌気がさしていそう。山寺で子どもたちに剣術の指南をしている姿がいちばん清々しくて彼らしくて目に麗しかったです。これを見られるのは山寺の尼さまたちだけなんですよね笑。
客席から登場して振り向いた時の懐から出る手が色っぽくて反則だと思いました。

お春(星風まどか) チェッが可愛い。お父さんがあんなだから生活の苦労を背負って強がって生きているところが愛おしい。時折こぼす少女らしい愚痴もまた可愛いのだけど、お父さんにしろ礼三さんにしろ、自分の世界に没頭するタイプだから一生生活の苦労は絶えなそう。この先も自分のほうを見てくれない礼三さんにやきもきしそうだし・・強くなるしか仕様がないなぁ。
料亭のお嬢さんおとみちゃんが傘を売ってというのに「うちは小売りはしてません!」って突っぱねるのが超絶可愛かったです。その後の2人のやりとりも。

峰沢丹波守(永久輝せあ) 「ぼくは若い殿様~♪」なんて歌いながら登場するお殿様ははじめて見ました笑。大好き。楽しそうに演じている永久輝さん大好き。はちゃめちゃな役なのに塩梅がわかっているのさすがだなぁ。途中からうっすらと悲哀を感じさせるところも巧いなと思いました。
殿様本人は軽い気持ちでもそれを聞いた家来はそれを叶えるために悪知恵を働かせ非道なこともやってしまいかねないので言動には気をつけましょうねと思いました。

秀千代(聖乃あすか) とにかく可愛い弟君。皆に愛される末っ子というかんじ。頭をふるふるふるとさせるところはたまらなく可愛かったです。ちょとした仕草でも客席の目が止まるのはさすがだなぁ。舞台にいると思わず目が行ってしまいます。
どうしてこんなにもやさしい兄おとうとが生まれるのでしょうか。(あの方のお子様だからかなぁ)

道具屋六兵衛(航琉ひびき) みんなに同じものを二つとない一品と売りつけて平気な顔でいるのが笑えました。自分が売りつけておいて買い取る時には偽物扱いで二束三文で平然としているのも。商いとはこんなものだから引っ掛かる方が悪いのだという前提なのですね。
この作品で卒業される航琉さんにたくさん場面があるのが愛を感じました。(宝塚のこういう学芸会っぽい愛情も嫌いじゃないです)

志村狂斎(和海しょう) ヒロインのすべての困りごとの原因をつくっているのはこのお父様だと思います。なのに憎めない役に作っているのは凄いなぁと思いました。
最後まで道具屋さんのこと微塵も疑っていないように演じる方が難しそう笑。
和海さんもこの公演で卒業されるのでラストがこの役でよかったなぁと思いました。(主役の柚香さんより舞台にいた記憶が・・)

麗姫(春妃うらら) ある意味お家騒動の黒幕??(可愛い黒幕だけど) 妄想劇場気味で愛するお殿様と倹しく市井で暮らしても良いって言うあたりは案外本気ですよね。
春妃さんも卒業されるこの公演で天然風味全開の可愛い奥方様の役でよかったなぁと思います。

遠山満右衛門(綺城ひか理) 娘の藤尾の恋心を知ってなんとかしてやりたい親ばか全開のお武家様で礼三郎の義理の叔父。
縁談の話の時に藤尾ちゃんを礼三さんにもっと近づけと唆すのが可笑しくて可愛くて好きでした。

藤尾(美羽愛) 親同士が決めた礼三郎の許嫁。礼三さんのことは憧れの君って感じなのかな。親に言われつづけて自分も礼三が好きという暗示にかかっているのかなとも思う素直で愛らしい武家のお嬢様。
恋煩いの病鉢巻で登場する場面は凛として新しい心境に立ったことを感じさせて印象的でした。(そんな娘に慌てふためくお父様も好き)
ラストでお春ちゃんとおとみちゃんとのわたしたちお友達になりましょうね♡は最高でした。

おとみ(星空美咲) いつも取り巻きを引き連れて登場するのですがそれだけで可笑しい。
お春ちゃんとの日傘を売る売らないの場面はもう1回(というかなんどでも)見たいくらい好きでした。
自分が恵まれていることを知らないで育ったとても素直なお嬢様キャラが愛おしかったです。
お春ちゃん藤尾さんとはしゃいでいる姿を見ると目尻が下がりまくりました。

天風院(美風舞良) 山寺の尼様。蓮京院様にお仕えしながらも礼三郎に見惚れていて夢見る夢子さんな面もあり可愛らしかったです。

蘇芳(紫門ゆりや) お家のことをとっても心配している家臣。お殿様があんなだから時には悪者にも回らなくちゃいけないし気苦労が多そう。愚痴もこぼしたくなりますよね。(わかります)

蓮京院(京三紗) 今回のMVPを差し上げたい。セリフに入る間が素晴らしくて聴き入ってしまいます。礼三郎さん良い男に育って見惚れちゃいますよね。(わかります)

「GRAND MRAGE!」は"ネオ・ロマンチック・レビュー”と銘打ったショーで、岡田先生のロマンチック・レビューとしては22作目だそうです。
新場面もどこか既視感があるかなというかんじです。

プロローグの紫陽花色のコスチュームが花組によく似合って素敵でした。
くすみパステル調が“ネオ”かなぁなんて思いました。

「彷徨える湖」の場面の星風まどかちゃんのダンスに釘付けでした。まどかちゃんのお腹がグランミラージュ!
名曲「SO IN LOVE」を永久輝さんが歌って、柚香さんまどかちゃんが踊るフィナーレのデュエットダンスは最高でした。

どんなに激しく踊ってもコスチュームがセクシーでも、上品さだけは絶対に崩れないのが宝塚らしくて素晴らしいなぁと思いました。
花組は舞台化粧が綺麗な組だなぁというのも再認識しました。

お芝居とともにショーも夢夢しくて明朗で「ザ・宝塚」を浴びたひとときでした。

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2023/07/14

いつか時代が変わったら。

6月28日に宝塚大劇場にて星組公演「1789-バスティーユの恋人たち-」を見てきました。

東宝版「1789」はこれまで見た中でいちばん好きなミュージカル作品と言っても言い過ぎではないくらい好きで、宝塚で上演されるなら礼真琴さん主演で見たいと願っていた作品だったので、星組で上演と知った時には飛び上がるほどうれしかったです。
タカラジェンヌの時間には限りがあり在団中に見たいと願う演目に当たるのは奇跡にも近いことだと思っています。たくさんの人が願ったからこそ実現した上演だと思います。

日本初演の2015年月組公演では大役マリー・アントワネットをトップ娘役の愛希れいかさんが演じ、主人公ロナンの恋人オランプ役は別の娘役さん(早乙女わかばさん、海乃美月さん)がダブルキャストで演じていたので、星組版ではどうなるのだろうと上演決定後は配役をあれこれと想像する日々でした。
 
舞空瞳さんがあの王妃様の超絶豪華なドレスを纏ったらそれはそれは映えるだろうなぁ。でもやっぱり東宝版みたいに礼さんが演じる主人公ロナンの相手役として激動の時代を懸命に生きる“ザ・ヒロイン”なオランプを舞空瞳さんで見たいなぁ。でもどっちも捨てがたいなぁ。
ロナンを苛むペイロール伯爵は専科で礼さんの同期の輝月ゆうまさんだったらいいのになぁなどなど。

じっさいに発表された配役は意外でもあり納得でもありいっそう期待が高まるもので、これはチケットが取れるだけ見たいなぁと浮き立っていたのですが―― 蓋を開ければ当然の超人気公演で手に入ったチケットはたったの1枚・・呆然とするしかありませんでした。

その貴重な1枚もどうなることかと青ざめる事態が。6月2日に初日こそ開けたもののその翌日から出演者体調不良のため公演中止、当面はいつ公演が再開されるのかわからない状況となり、脳裡にはこの2年あまりのコロナ禍で経験した数々の出来事が過り震える日々を送りました。
けっきょく1か月間の公演期間のうちの半分が中止となって公演再開となったのは6月18日の15時半公演から。
もうこれ以上は1公演も止まりませんように千秋楽まですべて公演できますようにと祈り続けて観劇日に漕ぎつけました。

そんな顛末の末の待ちに待った観劇日。
客席に座るもさらに高まる緊張。
(なにしろ昨年は博多座で開演10分前に中止を告げられたトラウマもありますし)

幕が開き主人公の故郷であるボースの農民たちが絵画のように舞台に浮かび上がり、奏でられるイントロダクションに体温が一気に上がる感覚。
軍隊が国王の名の下に農民たちを虐げ礼さん扮するロナンが「肌に刻まれたもの」を歌い始めた瞬間さらに体中の血が沸き立ちそれ以降はひたすら「1789」の世界に圧倒されつづけました。見たかったもの聴きたかったものが目の前に存在する幸せに酔い痴れました。

礼さんロナンの素晴らしさも期待以上でしたが、若き革命家たちデムーラン暁千星さん、ロベスピエール極美慎さん、ダントン天華えまさんが想像以上に見応えがあり気持ちが爆上がりしました。
若きイケメン革命家が歌って踊ってこそ「1789」――1幕から「デムーランの演説」「革命の兄弟」「パレロワイヤル」と畳みかけるように好きなナンバーがつづきここからすでに涙目に。

暁さんはその声量と声の深みに驚きました。かなり下級生の頃から抜擢されていた方だけにその成長ぶりを目の当たりにして感慨深いものがありました。
2幕の「武器をとれ」でセンターで朗々と歌い上げる暁さんを見て彼女がデムーランにキャスティングされた理由に合点がいきました。配役発表されるまでは暁さんがロベスピエールだろうと思っていたのでした。

「武器をとれ」は宝塚では今回はじめて歌われるナンバーですが、その演説によりパリ市民が決起しバスティーユ襲撃へとつながる重要な局面で、壇上から市民を歌(演説)によって盛り上げ扇動する暁さんの堂々とした姿に心が震えました。
ちなみにですが、このデムーランこそ「ベルサイユのばら」のベルナールのモデルとなった人物なんですよね。この「武器をとれ」のシーンもベルばらに描かれていました。東宝版を観劇した時にどこかで見たことがある図だなぁと思ったのも然り。(詩ちづるさん演じる婚約者のリュシルはロザリーということになりますね)

もともと天華さんの実力は信頼しているのですが難しいパートも難なく歌い上げるのは流石、危なっかしい仲間たちに目を配るお兄さんみたいなダントンだなぁと思いました。
そしてたぶんおそらく私は「1789」のロベスピエール役者に心底弱いようで・・。悔しいけれど極美さんのロベスピエールに幾度と撃ち抜かれました。それはもう易々と・・。
2幕最初のロベスピエールの「誰のために踊らされているのか?」は超好きなナンバーなのですが、その日の極美さんは声を潰されているのかフレーズ毎の高音の第一声が全て出ていないようでした。(千秋楽のライブ配信ではすべて音程を下げて歌われていたのでやはり喉を潰されてしまったのかな)東京公演では元の声に戻っているといいなと思います。

有沙瞳さんのマリー・アントワネットはとても大人しめに感じました。
これまで宝塚や東宝で同役を演じた人たちが伝説的なトップ娘役(花總まりさん、愛希れいかさん)であったり華やかなトップスター経験者(凰稀かなめさん、龍真咲さん)だったこともありどうしてもその記憶と比べてしまうのかもしれませんが、有沙さんも「龍の宮物語」や「王家に捧ぐ歌」などで艶やかなプリンセスを演じてきた方なので威風堂々と華やかな王妃像を作って見せてくれるだろうという期待がありました。

初演ではトップ娘役が演じた役だったものが2番手の娘役さんが演じることになって、場面や持ち歌が減り比重が変わっているのだとは思いますが、それでもやっぱりかの「マリー・アントワネット」ですから圧倒的な輝きと存在感を期待します。有沙さんはそれができる役者さんだと思っています。たとえばかつて伶美うららさんはトップ娘役ではなかったけれど無冠でも記憶に残る大輪の花のように存在していましたので有沙さんにも期待せずにいられません。
この公演が最後となる有沙さんの最高の輝きをこの目で見たいです。

ひとりの女性として家族を愛して家族のために生きたいと願う2幕の「神様の裁き」のアリアは素晴らしくてとても心に響きました。そういうマリー・アントワネット像を目指されているのかなと思います。さらに1幕からのギャップを表現して魅了してほしいなぁと贅沢なことを願ってしまいます。
オランプに決心を促す場面もとても好きでした。

瀬央ゆりあさんのアルトワ伯は媚薬を用いて淫蕩に耽るようなタイプではなく冷静に虎視眈々と王座を狙う切れ者に見えました。彼の眼には兄ルイ16世は凡庸で無能な人間に見えているのだろうなと。
王妃の醜聞を利用して兄を失脚させるのが目的でそのためにオランプを見張らせているのであって恋情を抱いているようには見えないアルトワでした。
教会でオランプに媚薬を使おうとするのもオランプに執着があるわけではなく自分にとって邪魔な相手として危害を加えるのが目的かなと。
いずれロンドンから戻ったらいつのまにか王座に就いていそうだなぁと思いました。
これまでのアルトワ像とはタイプが違うけれど居住まいや目線が知的で含みがあって面白かったです。

輝月ゆうまさん演じるペイロール伯爵は鞭を振るったり蹴りを入れたりのタイミングが琴さんとぴったりで本当にロナンを甚振っているようで今回の「1789」の見どころの一つでした。(虐げられる琴さんの反応がとんでもなくリアルで凄すぎて瞠目でした)
大義に忠実で情け容赦ない軍人貴族だなぁと思いました。

ソレーヌ役の小桜ほのかさんはお上手なのは知っていましたけど、こんなに地声で凄味のある歌い方ができるとは。地声から澄んだ声への切り替えも素晴らしくて観劇後も「夜のプリンセス」が頭から離れませんでした。

フェルゼン役の天飛華音さん、ルイ16世とマリー・アントワネットがようやく心通わせる場面でのセリフの入り方が素晴らしかったです。
「しかし御一家が危機に瀕する時あらばこのフェルゼン命に代えてもお守りいたします」
本当に芝居センスのある方だなぁと今後も楽しみです。

オランプ役の舞空瞳さんのヒロイン力はやっぱり素晴らしいなぁと思いました。彼女が登場すると目が勝手に追ってしまいます。
けっこう理不尽なことや辻褄が??な行動もするのですが受け容れて見てしまうのはそのヒロイン力によるものだなぁと。
与えられた役割、職務に一生懸命なオランプの姿が舞空さん自身とも重なってきゅんとしました。

1幕ラストの「声なき言葉」の盛り上がりは宝塚版ならではの感動でしたし、2幕もまた「次の時代を生き抜くんだ」と言い残し息絶えたロナンを囲んで打ちひしがれていた皆が前を向いて高らかに述べる人権宣言は名場面だと思います。そこからのラストナンバー「悲しみの報い」に感動は最高潮――となるはずが、今しがた皆の嘆きの中で息絶えたばかりのロナンがピカピカの白尽くめの衣裳でせり上がりで登場した時だけはえええっと戸惑いました。

あそこはもう少し人の世の遣る瀬無さや、未来への希望にデムーランやソレーヌたちとともに浸っていたかったなぁと思います。
志半ばで彼は逝ってしまったけれど、そんな名もなき人々の願いと行動の積み重ねがいまの世の中の礎を作っているんだと。命を燃やした彼らの願いを踏み躙ろうとする力は今の世も隙あらば頭をもたげようとするけれど、それに負けてはならないのだという強い意思を噛みしめる時間をあと少しだけ持ちたかったなぁ。

キラキラのロナンの登場が早すぎて心が宙ぶらりんのまま享楽的なフィナーレを見たせいか今回のフィナーレは気持ちがいまいち盛り上がらずに終わってしまった気がします。
本編は本当に最後のタイミング以外最高だっただけにちょっと残念かなと思いました。

というものの最高の舞台を見られた満足感たるや凄かったです。
あと1枚だけ東京のチケットが取れたので無事に観劇できることを心の底から祈っています。

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2023/04/15

二度と同じ夢は見れない。

4月6日と7日に宝塚大劇場にて宙組公演「カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~」を見てきました。

正直唖然としました。
でもトップスターの退団公演ならこんなものなのかもしれません。
小池先生の作品だし世界の「007」ということで期待しすぎていたのかも。
でも甲斐先生&太田先生の音楽でこの盛り上がらなさはどういうこと?とは思います。
音楽だけはいつも裏切らなかったのになぁ。

トンチキなのはいいとしても設定があまりに稚拙だと物語に入り込めないなぁ。
ロマノフの継承に関する部分とマッドサイエンティストのところでうーんとなってしまいました。
(ロマノフ家の帝位継承が指名制??「大公女襲名」??大公女の戴冠式??「大公女陛下」??そもそもツァーリの娘か孫娘に生まれないと大公女にはなれないのじゃないの??と同日観劇した知人に疑問を投げかけたら「考えたら負け」との御達しが)
イルカの歌のロジックも謎でした。
歌唱指導にも使用するくらいなのでいちばん言いたいことなんですよね?
キキちゃん(芹香斗亜さん)どんな気持ちで歌っているのかなぁ。タカラジェンヌは偉大だなぁ。

岡田先生の場合は女豹だけど、小池先生の夢は女子大生なのかなぁ。
大学生、劇作家、社会活動家など知的でお堅い属性の女性を籠絡するの好きだなぁ。
などとストーリーとは関係のないことを考えながら見ていました。
脚本自体、設定を面白がって書いているというか、散りばめられた過去作の欠片に気づいてほしそうに書かれているようでした。
ロマノフとか、マリア皇太后とか、マッドサイエンティストとか、女子大生もそういう欠片の1つかな。
いっそホテルを建てたらよかったのになぁ。
というか007の設定、いる? とかいったら元も子もないか。

でも007、冷戦時代のスパイものの設定が活きている場面が見当たらなかったのも事実。
スパイものなのに全体にまったりしていてスリリングな場面もなかったし、せっかくパリに英米仏のエージェントが集まったのに、英国人らしさ米国人らしさフランス人らしさでクスリとさせるような場面もなくて。
ステレオタイプすぎるのは批判されるかもしれないけど、共通認知を有効に使って知的に表現するのも腕の見せ所なのになぁ。
そういうところがスパイものの面白さだし、そこに1960年代らしさも加わるととても素敵なのに。

スパイものらしい身のこなしが素敵だったのが、スメルシュ役の鷹翔千空さんでした。
ピストルを撃った時の反動がリアルで。良い筋肉の使い方だなぁと惚れ惚れしました。
ジェイムズ・ボンドのこともル・シッフルのことも容易に仕留めてしまえそうなのに、さぁというところ部下を助けに行っちゃうのがツボでした。(良い人♡)

緩急のある芝居で場面を面白くしていたのはミシェル役の桜木みなとさん。過激派の学生と言われるとそうなの?という設定だけど。
それからゲオルギー大公の妃役の花菱りずさん。彼女が大袈裟なくらいに芝居をしてくれたので飽きずに見られたかなと思います。
天彩峰里さんも歌、芝居の巧さが際立っていました。ル・シッフルの横暴さを堪える部下の顔と自分より下の者には鞭を揮って悪女ぶったりしたかと思うとコメディタッチで場面をすすめたり、いろんな顔を見せてさすがでした。

真風涼帆さんはいつもの真風涼帆さんとしてカッコよくて、潤花さんもいつもの潤花さんで華やかで、芹香斗亜さんはいつものチャーミングな悪役で。
役というよりキャリアを踏まえての男役、娘役としての魅力で見せる感じでした。
トップコンビのサヨナラ公演らしくてそれもいいか。それができるのがスターだもんね。(しかし新人公演の主演者にはハードル高そう)

「007」と思わなければ愉しくて、愛のある退団公演ともいえると思います。
舞台の上に出演者が大勢いる場面も多くて、2度目に2階から見た時は壮観で楽しかったです。パラシュートの場面も近く感じるし!
初見では舞台が近かったせいか楽しみ方がわからなかったのかもしれません。せっかく舞台上にいるのに「あなたナニ人?」な人も多くて、そういうところ1人1人が役のバックグラウンドを見せてくれたら退屈せず面白く見られそうです。

そしてなんだかんだと言いながら、真風さんと潤花さんがパラシュートで寄り添いながら歌う場面や、デュエットダンスには涙目になってしまいました。
この愛おしい時間にも限りがあるのだなぁと。
ムラではもう見れないので来月東京公演で1回のみ見納めしてきます。

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2022/12/14

夜明け色に咲いた愛の物語を。

12月12日と13日に宝塚大劇場にて星組公演「ディミトリ~曙光に散る、紫の花~」「JAGUAR BEAT-ジャガービート-」を見てきました。
13日は千秋楽でした。

「ディミトリ」は、この1か月のあいだに個々の役を演じる人たちがそれぞれの解を見つけ出しそれを目指して深めていったんだなぁと感動する出来栄えでした。
時に涙したり見蕩れたりもしましたが芝居が正解を導き出すほどに、どうしても興が醒めてしまう部分が残りもやもやしました。

終演後ファン友さんに思いをぶつけて気づかせてもらったのですが(・・恐縮)、どうやら私は一段と生田先生には厳しいみたいです。
どうしてかな?と考えたところ、目にとまった(耳にとまった)ディテールで期待を膨らませた結果、・・期待外れで勝手にプンスカしているみたいです。

意図したものの回収が拙いのか、そもそもどうする気もないものなのか、それすらもわからないものに期待しては裏切られているような。
そういうことが何作も続いているかんじです。
それに勝手に憤っているみたいです。
相対評価は高いのですが、ここに至るまでの私憤が混ざって絶対評価になると辛口になってしまうようです。

もっと高い所に行けそうなのにと思うと口惜しさに地団駄を踏みたくなるのです。
いつもは封をしているけど、そのもっと高い所の作品を心の底では求めているんだなぁと思います。

それを一瞬見せてくれそうな気がしてしまうんですよね。生田先生のもったいぶった言い回しや演出は。

だいぶ話が飛んでしまいますが、劇場も舞台装置もとても豪華でそれに携わる人々も演じるタカラジェンヌたちも並々ならぬ努力で舞台を作っているのだから、それに相応しく脚本も一級品であってほしいなというのが心の奥にあります。
繰り返し再演できるような、また見たくなるようなオリジナル作品を作り上げることが宝塚歌劇の未来には必要なのではないかなと思います。
そのためには、これはという作品はブラッシュアップして再演していくこともあってもいいのじゃないかなと思います。再度、時間とお金をかけて人的にも劇団の総力をあげて元の脚本を磨き上げていくことも。
「ディミトリ」をそのようにして何年か後にまた見せてもらえたらなぁと思います。

そしてまさに見てきたばかりの「ディミトリ」についてですが。
まず礼真琴さんが演じたディミトリはこんなに簡単に描いて終わる人物じゃないだろうになぁと思います。
この役を演じるのはとても難しかっただろうなぁと思いました。
彼という人物を主役として描くなら、もっと深いところ触れてもよさそうなのになと思います。

幼くして異教の国に人質に出された少年の寄る辺なき心。
人質にされた国の王女に救いを見出しのちに彼女の王配となるも、その出自によって宮廷中から疎まれる身で自分の居場所を定めるまで。
たった1人の味方であり彼の人生の意味そのものであった愛する妻=女王の許しがたい裏切り(不貞)からの幽閉の身となったこと。
そして王配としては憎むべき敵国の帝王に命を助けられ、彼の慈悲と寵愛を受けて生かされる立場となり愛する国が蹂躙されるさまをその傍らで見る思い。
その恩義ある帝王を、自分を裏切り苦境におとしめた女王への愛のために命を捨てても裏切る決意にいたること。
オーストリア皇后やフランス王妃に劣らないドラマティックな人生の物語が見れそうなんですが。

この不安定な立場の中で彼がアイデンティティをどう形成していったかを見たかったなぁと思います。
ヒロインにとって都合の良い夫、ヒロインに都合の良いおとぎ話で終わってしまったのがもったいないなぁと思います。

ルスダンは、それが夫の命を奪うことになっても、それが自分自身の心を抉ることになっても、女王としての決断を重んじた。ジョージアの女王であることが彼女にとって自分の生きる意味にまでなっていた。
ディミトリは、ルーム・セルジュークの王子でもディミトリでもなく、ジョージアの王配だという言葉に満足して息絶える。
これは対称なのか非対称か、微妙に思えます。そうともとれるし、ちがうともとれる。
そこももやもやが残るところだったなぁと思います。

ディミトリのおかげでルスダンは背負うものが軽くなったよ、よりは、ディミトリの死を背負ってルスダンはその後の人生を苦しみながらも果敢に生きて死の時を迎えた、のほうが私は好きです。
原作にあった「狐の手袋」のエピソードにいちばん心が震えたのもそれかなと思います。

うまく言えないのですが、「ディミトリ」と「曙光に散る、紫の花」の中間ぐらいの物語を見たいなと思います。

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2022/11/29

マジ!マジ!マジック!

11月17日と18日に宝塚大劇場にて星組公演「ディミトリ~曙光に散る、紫の花~」「JAGUAR BEAT-ジャガービート-」を見てきました。

「JAGUAR BEAT」は外連味たっぷり、齋藤吉正先生ワールドてんこ盛りのショーでした。
ゴージャスなコスチュームがスタイルの良い星組生にはまって眼福。
サウンドエフェクトが強めで目眩く色彩の洪水。情報量が多くて目がぐるぐるしました。

猫耳の可愛い娘役さんたちがいたんだけど、どの場面だったっけ?
お顔を確認しようと思ったのに、かっこいい人たちにも気を取られているあいだにうたかたのように消えてしまいました。

キラッキラにキュートな舞空瞳さんに目を奪われ、胡散臭く発光してる瀬央ゆりあさんに思わずのけ反りそうになったり、超絶スタイルの極美慎さんの笑顔にクラクラしたり、美人な女豹の天華えまさんに釘付けになったり、なんかいっぱいキラキラの組子出た~!あっあそこに朝水りょうさん♡などと目まぐるしく視線を動かしているといつの間にか礼真琴さんが登場してて、え?こんなことってある?
ふつうトップさんの登場には拍手があるんじゃなかったっけ??
みたいな場面もあったりして、なんというか見知らぬ街のイルミネーションの眩惑と喧騒のクリスマスマーケットで迷子になってしまったようなそんな感覚に陥りました。

2回観劇したのに記憶がぐちゃぐちゃで、どの記憶がどの場面だったかさっぱりわからない状態です。
具体的な記憶より印象が勝る感じといいますか、わたし的には舞空瞳さん、瀬央さん、極美さんが最高に素敵に見えたショーでした。
舞空さんメインにしたダンシングショーを見てみたいなぁなんて思ったり。

前回「グランカンタンテ」を見て宝塚らしいショーに感動したのですが、今回の「JAGUAR BEAT」も真反対だけどこれもまた宝塚らしいショーだったと思います。
ただ「グランカンタンテ」みたいなショーが見られると思って客席にいたので、初見はショーのスピードに脳みそがついていけてなかったです。
翌日2回目を見るときにはちゃんと覚えていようと思ったのに、やっぱり無理でした。

ちょっと残念に思ったのは、音をいじりすぎて礼真琴さんの伸びのある歌声を堪能できなかったこと。
ジャガーの咆哮をかぶせるよりも、礼さんの歌声そのものをもっと聞きたかったなぁと思うけれど、作品的に無理な発声をしそうなので(無理をするとどんなシャウトでも出せそうな礼さんなので)、歌いまくるであろう次回作の「赤と黒」や「1789」までその伸びやかな歌声は温存してもらったほうがいいかなと思いました。

さらに言うと「グランカンタンテ」に大満足だったものの、礼さん以外の星組生の活躍をもっと見たいなぁとも思っていた私には、この「JAGUAR BEAT」はそこの部分が満たされているのが嬉しく楽しかったです。
あっちが満たされればこっちが足りない・・といろいろわがままな要求ばかりですね。

この作品で星組大劇場のショーデビューとなる暁千星さんの印象は「真面目だなぁ」でした。
月組の時よりも高く飛び跳ね踊り動きまわっている印象もあり、たくさん活躍できそう。
新しい環境に慣れてさらにこのマーリンという役割の悪の余裕と色気が増すのを楽しみにしています。

どの場面だったか、暁さんの手下のような役をしていた水乃ゆりさんの柄タイツの脚に目が釘付けになり頭がバグを起こしそうになりました。
マレーネ・ディートリッヒみたいな水乃ゆりちゃんが見たいなぁ。そう思いませんか齋藤先生。
悪い暁さんの隣には大輪の牡丹のような娘役さんが合うなぁと絶賛"ありゆり”推しになりました。

クラブみたいな場面で、パニエたっぷりミニドレスの舞空瞳ちゃんにも頭が爆発しそうになりました。可愛さ∞。「満天星大夜總会」のHANACHANG(花總まりさん)を彷彿しました。
この場面の後方でボーイ役の極美慎さんと水乃ゆりちゃんからも目が離せなくなって、どこを見ていいか困ったのでした。舞空瞳ちゃんと瀬央さんの勝負の行方も気になるのに!
瀬央さん、暁さん、極美さん、綺城ひか理さん、天華えまさんの五色のスタイル戦隊みたいなコスチューム場面も爆上がりました。
ほかにも猫耳、車いす、迷彩のミリタリーコスチューム等々、齋藤先生の趣味嗜好がてんこ盛りだなぁと思いました。
終演幕に映し出される礼さんの「See you!」も笑。

なんだかんだ訳がわからなくなりながら夢中で見終わったショーでした。
さらに進化した舞台を、また見に行きたいです。

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2022/11/23

君と生きた夢を。

11月17日と18日に宝塚大劇場にて星組公演「ディミトリ~曙光に散る、紫の花~」「JAGUAR BEAT-ジャガービート-」を見てきました。

「ディミトリ」は、冒頭の物乞い(美稀千種さん)とリラの精たち(小桜ほのかさん、瑠璃花夏さん、詩ちづるさんほか)の場面から、愛ゆえの別れを語るバテシバ(有沙瞳さん)の場面までがとても秀逸で美しく盛り上がって、これは名作の予感!と期待したのですが、だんだんと尻すぼみに。
幕が下りた時には、スン・・(虚無)となっていました。
なぜこんなに盛り上がらなかったのだろう。題材はとてもいいのに。

翌日の2回目の観劇は、筋はわかっていたので登場人物の気持ちを自分なりに補完しながら見たせいかとても感動したのですが、よくよく考えたらこれってほぼ私の脳内劇場だったのかもしれません。
ネタはよいので、想像の翼はどんどん拡げられます。
美しい姿と属性をつかって勝手に夢を見られる。
盛り上がるであろう場面はやらずに、さほどでもない場面をセリフにしていくのはなぜだろう。
ゆえに見たいことは想像するしかなかったというのが正解かな。

それから初日があけて間もない頃にありがちな、役者個々の技量の差が顕著に出てしまっているのも大きかったように感じます。
導入の場面は力量のある人たちが魅了してくるのに対して、それを受けての場面に出てくる人たちがまだ役を掴めていないようなのも、何を描こうとしているのか行方不明にしていた要因かと思います。
ルスダン(舞空瞳さん)、ジャラルッディーン(瀬央ゆりあさん)、アヴァク(暁千星さん)に頑張ってもらわないとこの作品は面白くならないと思います。
足りない情報は芝居で埋めてもらうしかない。
そして物語が転じるきっかけを担うミヘイル(極美慎さん)にもなんとか役の肉付けを頑張っていただいて大きな見どころにしてほしいです。
せっかくのヒロインと絡む役ですから、これを美味しくしない手はないでしょう。

気になったところを上げると。

賢者(物乞い)が見掛け倒しだったなぁと思います。
もっと効果的に語り部&進行の役割を担えただろうに。
異教の国々との境目に位置するキリスト教国ジョージアの地理的、歴史的状況を紐解いて語らせてもよかったのでは。
モンゴルやホラズム朝の脅威がいかほどのものかわかるように。
冒頭の誰もいない土地は、いつのどこなのだろう。
王都トビリシならば、ジャラルッディーンに占領された後は再びジョージアが奪還して、ルスダンも王宮に戻った描写でラストシーンになっているので、舞台では描かれていないそれよりもっと後の再びモンゴルに攻められて灰燼となったトビリシでしょうか。
だとしたら、それを描くことに意味があるのでしょうか。ラストと繋がらないのに。
踏み出しと着地がちぐはぐな心地悪さが残りました。

それからルスダンが暴君に見えたこと。
とってつけたような名づけのシーンは何を見せたかったのか。横暴な王女とそれを許す母女王?
わざわざ挿入するならどうしてその名にしたのか、名付けたルスダンに好感を抱けるような理由がほしい。放置しないで。
異教の国に人質として送られた少年の心許なさを見せてほしかったし、彼がルスダンに惹かれる理由を見せてほしかったな。
男女を逆にしたら、古来から使い古された話だなぁと思いました。
異教の国から連れて来られて、暴君以外に寄る辺のないヒロインがすれ違いの末に愛に殉じたことで最終的に認められるという。
DV男をDV女に変換しただけに見えないように願いたい。

ジャラルッディーンの登場はもっとカッコよく演出できなかったのかな。
牢獄の登場も間が抜けたように感じたし。
もはやこれまでかという危機一髪で登場し、手負いのディミトリを抱き起すようなシーンが見たかったなと思います。ジャラルッディーンの下に身を置く以外に道はないディミトリの境遇が推し量れるように。
そしてトビリシを破壊するジャラルッディーンの下に身を寄せる自分をディミトリがどう思っているかも大事なところだと思うんだけどなぁ。
主人公は何をするか以上に何を感じるか、それを観客に届けられるかが大事だと思います。

モンゴルももっと猛々しく脅威として演出してほしかったです。
ジャラルッディーンのホラズム朝を滅ぼしジョージアまでも侵攻しようとするモンゴル。
国土を失ったジャラルッディーンがジョージアを狙うこととなった元凶であるモンゴルの脅威を。

アヴァクが手下にする指令も漠然としすぎだなぁと思いました。
ディミトリの暗殺も彼の指令だと印象づくように描けばラストのルスダンとのやりとりが感動の場面になるのにもったいないなと思いました。

再会のシーンも盛り上がりに欠けたなぁ。
別れた時とは何もかもが変わっている2人を見たかったです。なにより少女時代とは別人のようになったルスダンを。
相容れない関係になったディミトリにすがりつく娘の姿は泣ける場面になるはずなのに。幼子を挟んだ2人の姿も。

もったいなさすぎていろいろ言いたくなってしまい、ついには勝手に想像して脳内劇場に浸ってしまうこの感じは、「白夜の誓い」と同じだなぁと思いました。
来月も見る機会があるので、不足していた情報量が芝居の力で埋められていたらいいなと思います。

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2022/09/11

キミは黙ってるほうがステキだよ。

9月1日と2日に宝塚大劇場にて宙組公演「HiGH&LOW」「Capricciosa!!」を見てきました。

正直なところ「HiGH&LOW」 は私の趣味の範疇ではなく、原作ドラマも公演解説も見ないで観劇したのですが、これが意外にもう1回見に行けないかなぁと思うくらいに楽しめました。
舞台上で所狭しと飛び跳ねる宙組生を愛でることができる作品になっているのがよかったです。
いつもの宝塚の演目とはちがうせいもあるかもですが、100期以下の皆さんがイキイキと活躍しているように感じました。
一言でまとめると「目が足りない!」

開演前はヴェローナ(ロミ+ジュリ)みたいな世界観と思っていればいいのかな?と思っていたのですが、そこまで拗らせてはいなくて。
コブラ(真風涼帆さん)周辺の人々は邪気もなくて、ちゃんと勤労しててえらいねと思いました。親世代との関係も良好みたいだし。
「笑顔が可愛い得なやつ」(亜音有星さん)は私も好みです。
山王街=モンタギューと思えば、たしかに居心地が良さそうなのはわかる気はします。
敵の「舞踏会」に変装して潜入するのもロミジュリリスペクトですよね。

帰属意識に溢れた若者たちがチームごとにイズムやテリトリーを持っていて、互いに反目しあっているのはわかりました。90年代っぽくも感じました。
冒頭でコブラが言う「この街を守りたかっただけだ」とはなんだったんだろう。それはさいごまでわからず終いでした。

1回目の観劇はストーリーを追っていたのでえ?で終わってしまったのですが、2回目はこれはこういうパフォーマンスなんだと思って見ることで役になりきった彼らが舞台で
花を開かせる瞬間を目の中に収めることができて面白かったです。

潤花ちゃん演じるカナは、余命わずかと言いながら明るく元気にふるまうフレンドリーな女性で、潤花ちゃんはやっぱり可愛いなぁと心が潤いました。
小学生以来会ってなかった相手にいきなり「私死ぬの」って言うのはちょっと???でしたが。
あれはいま言わなくちゃって彼女なりに勇気を振り絞った結果なのかなぁ。でもすごく軽く宣っていて、絶対にシリアスにしたくないって決意の表れなのかな。

そして余命宣告されて「やりたいこと」っていうのがあれなんだなぁ。ほかのことを思い煩う必要がないくらい家族に愛されている人なんだなぁと思いました。
そんな愛されて育ち恵まれた人が、見捨てられた人々が棲む無名街の闇市で買い物をしたい♡と連れて行ってもらって嬉しそうにはしゃいでいる姿がぞわぞわしました。
そこで見て経験したことをワクワクした♡とニッコニコの彼女に困惑。私は野口先生の作品のこういうさりげなく挿入される描写が残酷でグロテスクに感じられて苦手なのだなぁ。

ロッキー(芹香斗亜さん)はちょっととぼけた雰囲気もあり紳士的なふるまいだけど一転して凄味のある人みたい。
舞台では上辺しか描かれていないけれど原作ではもっとイズムがある人なんだろうな。と勝手に思いました。
彼の舞踏会の客人や従業員を無個性にせずキャラクターをつけて見せてほしかったなぁ。エピソードがない分、1人ひとりの存在にストーリーを感じられたらいいのにと思いました。
ナンバー2役の風色日向さんは、カチッとした身なりとスマートな身のこなしながら得体の知れない雰囲気がよかったです。本家もこういう人なのかな。

スモーキー(桜木みなとさん)がとても心に刺さりました。
あの朧かながら存在感のあるなんともいえない雰囲気。異空間に迷い込んだような不思議な感覚に陥りました。
RUDE BOYSのナンバーがとても良かったです。歌が凄い。そして秋音光さんや優希しおんさんなど身体能力が高いメンバーによる同時多発的なパフォーマンス。本当に目が足りなくて、ぜったいに見逃してしまっていると思います涙。

お祭りの場面は着流しの浴衣姿の真風さんを見られてよかったです。
祭り太鼓も本格的で心が沸き立ちました。けど季節はいつなんだろう。浴衣だから夏祭り?? にしてはほかのシーンが夏っぽくないんだなぁ。
コブラは達磨一家が仕切っている祭りだとわかっていて出向いているのかな。だとしたらそうとうむちゃなリクエストを叶えてあげているんですね。カナのために。

殴り合いの場面を見ていると、アドレナリンと脳内麻薬物質に支配されてる状態だなぁさらに興奮状態を求めてエスカレートするやつやん。セルフコントロールが効く人ならいいけれど。と心配になりました。
コブラも限度ってものを知らないヤカラがいるって言っていたけど。

「キミは黙っているほうがステキだよ」というのはカナのセリフですが、これを「冷静さを保て」という意味だと自分に落とし込むコブラは深慮の人なんだなぁと思いました。
私には、カナは自分が聞きたくない言葉をコブラに言わせないためにそう言っているように思えたから。
でも状況を冷静に見る目こそが最良の生き残るすべだし、そんなコブラは決して暴力行為の依存症ではないのだなと思いました。

苦邪組のリン(留依蒔世さん)は5つのチームの本拠地に火を放ったりしてSWORDを敵に回して何か得することがあったのかな。
チーム同士で潰し合いをさせる方向でもっと緻密に計画実行すればよかったのに。いろいろ雑だなぁと思いました。
SWORDに火をつけて闘って敗れるまでがお仕事なんでしょうけど。なんか間尺に合わないなぁ。
宝塚オリジナルのチームらしいので、もうやりたい放題好き放題やっちゃって爪痕を残してほしいなと思いました。
春乃さくらさんをはじめとする七姉妹のチャイナドレスの着こなしがとても美しくて好きでした。
そういえばバイフー(小春乃さよさん)、メイナンツー(泉堂成さん)と、役名といい服装といい、苦邪組ってチャイニーズマフィアかなにかなのかな。

レディースの女の子たち。そんなにパワーに溢れているんだからもっと大きな夢が持てるよ。とは思うんだけど、それほどにここ(山王街)は居心地がいいのかなぁ。
女の子を傷つけるのは夜の街だけじゃないからなぁ。
純子さん(天彩峰里さん)も本気でなにがなんでも「コブラの女になってやる」っていうよりは、いまの状態でいることが大事なのかなと思いました。
仲間を気にかけてあげたりチームでいることが。
集まっているメンバーもどこかで寂しい思いをしてきた女の子たちなのかなと。

それぞれの登場人物たちの関係性を見る人の観点でさまざまに好きなように落し込んで愉しむ作品なのかなと思いました。


「Capricciosa!!」は大介先生のショーにしてはまったりしていた印象でした。
いつもだったら神妙にお芝居を見てショーで盛り上がるというのが定番ですが、今回は1幕目の「HiGH&LOW」 でアドレナリンをそうとう放出しちゃった後だったからでしょうか。
それぞれの場面は大介先生クオリティで楽しかったです。
チョンパはやっぱり良いですね。

宙組の歌上手さんたちが各所で活躍していた印象が強いです。
とくに天彩峰里さんが目立って活躍されていたように感じました。彼女が歌いだすと注目せずにいられません。
若翔りつさんと朝木陽彩さんのデュエットもこれ聞きたかったやつだぁと思いました。
留依蒔世さんはさすがのよい声。中詰めも、圧巻のエトワールも。退団されるのが残念でなりません。

私にとっての
心のスイーツ♡水音志保さんが目立つポジションにいたのがうれしかったです。
紫藤りゅうさんとのペア、2輪のバラのようで素敵でした。それから真風さん芹香さん桜木さんとのデュエットダンスの場面は組む相手ごとに異なった雰囲気を楽しめて至福でした。
「ミ・アモーレ」のドレスを翻すときのキュートな表情が鮮やかに記憶に残っています。

潤花ちゃんの笑顔には肯定されるような救われるような気持になります。まさに衆生を救う笑顔。
スカラ座の場面、白いドレスで真風さんと踊る姿は夢物語のようでした。
この場面はプリマドンナの春乃さくらさんも素敵でした。歌声も。

夢物語といえば、ヴェネツィアの場面も。
ゴンドリエーレ瑠風さんと帽子の美女桜木さんの絵がとても美しかったです。

「HiGH&LOW」の反動か、娘役さんたちに魅了されたショーでした。
宙組のすらりとして楚々と品の良い娘役さんたちを堪能しました。

スカラ座の場面からフィナーレに向けて、あれ?これは?と思う演出が心をざわつかせました。
まるで真風さんへのはなむけのような。
もしかして東京公演では客席の涙を誘うことになるのかしらと。

血潮が騒ぐというタイプの作品ではなかったけれど、パフォーマーの技量ともども質の良いショーという印象を受けました。
終演後のロビーの階段で「かっぷりちょ~ぉざ~ぁかっぷりちょ~ざ~♪」と小さな女の子が楽し気に歌いながら降りていた姿に遭遇し、良いショーだったのだと実感しました。
中詰めのお衣装が全体として見たときにのっぺりとしているように感じられていまいち気分が上がらなかったので、そこだけ改善されたらいいのになぁと思います。

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2022/07/13

アルルカンの哀しみ。

7月5日に宝塚大劇場にて花組公演「巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜」「Fashionable Empire」を見てきました。

予定では5日と6日はドラマシティで宙組公演「カルト・ワイン」を見るつもりでした。5日の夜はムラでヅカ友さんたちと合流してDVD鑑賞会も予定していました。
しかし数日前から台風4号の動きがあやしく新幹線に遅延が発生するかもしれない、どうしよう前泊したほうがいいかなとやきもきしていました。

4日午後の予報を見ると、どうやら台風4号は速度が遅く5日の移動に影響はなさそうなので予定通り5日の新幹線に乗ることに決め、その旨をヅカ友さんたちに連絡して安堵して・・翌朝は早めの出発だからとさくさく夕食とお風呂を終えてタブレットを開いてみると宝塚歌劇公式アカウントからLINEが・・・。

「公演関係者から新型コロナウィルスの陽性が確認されたため、7月5日(火)~7日(木)の公演を中止させていただきます。」

まさに天国から地獄の心境。呆然として言葉も出ませんでした。

折しもの台風接近により新幹線は手数料なしでキャンセルできる状況でした。どうしよう・・・。
数か月前から計画を立て楽しみにしていた観劇とDVD鑑賞会。鑑賞会だけでも参加する??
混乱する脳みそをほったらかしにして手は勝手に宝塚歌劇公式HPを開いていました。花組の5日の15時半公演は?がーん貸切公演じゃん。

いや待って。さらに検索の手をすすめると「ぴあ貸切」とな。これは渡りに舟かも。ことし宙組大劇場公演「NEVER SAY GOODBYE」が公演中止になったときにぴあ貸切のリセールを買って観劇した経験が。ぴあのサイトを開くと、あった~リセール。そのままぽちっと。
ヅカ友さんたちに「花組15時半を見ることにしたので遅れるけど参加します」と連絡。この数分の自分の行動力に驚き。ふだんは百万回逡巡するタイプなのに。

ということで急遽観劇した花組大劇場公演。
なんの下調べもしていなくて、「巡礼の年」はリストとショパンとサンドが出るのよね程度の予備知識で見たのですが、これが「すごく好きなやつ」でした。
こういう作品を待っていたんだと思えるほど。

リストとダグー伯爵夫人マリーとの関係は、昔父が持っていたクラシック全集のレコードについていた解説で知っている程度だったのですが、星風まどかさん演じるマリーは想像より純情で可愛らしい女性でした。

白皙の美男で突然雷に打たれたように発奮してそれまでの生き方を大きく変えるリストはイメージ通りで、その魂の変遷を全身で表現する柚香光さんに引き込まれました。
そして、肖像画のリストがなぜあのヘアスタイルだったか。彼がピアノを叩くと弧を描くように跳ね上がる麗しい髪束を見て合点しました。乱れる髪の毛さえも音楽的で神がかった美しさでした。
これは当時の女性たちも夢中になったにちがいない。もちろん私もなる、と。

その生涯を1時間半にどんな手をつかって収めるのだろうと思いましたが、駆け足ながらどんどん展開してここに収めたかーと思いました。
夢か現かの場面が効いていたなぁと思います。
リストが少年リストを受け入れる場面は胸にきました。お隣の見ず知らずの方が嗚咽を漏らされたのを聞かなかったら私も危なかったかも。

当時のパリで、ハンガリー出身の野心ある若者がどういう目で見られていたのかも想像できました。
そこには歴然とした格差の壁があったのだろうな。それを必死で乗り越えようとしたのだろう青年リスト。
彼のあのスタイルはそういうことだったのか。
自分を持て囃す他者を嘲笑うことで自尊心を保ち、返す刀で自分自身をも嘲笑っていたのだろうな。
それを見抜いて彼に突きつけたのがマリーだったんだなぁ。
そりゃあ居ても立っても居られないだろうな。

ちょっと意地悪な見方をしてしまうと、知られたくない彼自身の正体を暴いて自尊心を粉々にしたマリーを自分に夢中にさせることで自尊心を取り戻そうとした部分もあるのじゃないかな。
他でもない彼女が自分に夢中になっていることに意味があったのだろうなと思います。
自分のキラキラでも超絶技巧でもなく、精神的な部分で彼女を夢中にさせていることが重要ポイント。

パリを離れ、合わせ鏡のようにお互いだけを見つめることで満たされたかった。
彼女の中の自分を愛していたんだなぁと思います。

世間の批評から逃れて、自分だけを認めてくれる人と同じものを見て悦び同じものを嫌う蜜月に出現した小さな齟齬。
自分が受容しないものを受容するマリーに彼は傷ついたのだろうなと思います。
自分で自分を認めてやれないリストにとってマリーが彼だけを認めている、ということがあのとき彼のすべてだったんだなと思います。

14歳かそこらの彼が経験したことは、世界のすべてから拒絶されるに等しい出来事だったのだと思います。
そのトラウマをずっと引きずっている。
フランス人ではないこと。ハンガリー人であること。エリートではないこと。貧しさ。庇護されないこと。いつも遥か上にあるものを見て生きていること。

こどものような癇癪を起こすリストの葛藤に気づくのが、彼と似た境遇でもあるフレデリック・ショパン(水美舞斗さん)。
リストがもらえなかった神様からの贈り物をもらっている人。
そしてリストの野心と自尊心をよくわかって彼を焚きつけるジョルジュ・サンド(永久輝せあさん)。
良くも悪くも彼の野心とスノビズムを理解し、そのこどものような魂を愛している人。魂の半分。
マリー、ショパン、サンド。三者三様にそれぞれリストと同じ魂を持った人々だと思いました。
その人物配置が巧いなと。

最後まで自制心を保ったストーリー運びで、脱線しなかったのもよかったなと思います。
ダグー伯爵(飛龍つかささん)とラプリュナレド伯爵夫人(音くり寿さん)の役回りも効いていたなと思います。
もっと膨らませたい部分もいろいろあったと思うのですが、1時間半にまとめてあらゆる世代の観客に提供するには絞り込まないとだから。

私は聖乃あすかさんが演じたジラルダンという人が心に刺さって興味が湧いたのですが、そして星空美咲さん演じるデルフィーヌ・ゲーがどんな人なのかもっと知りたかったけど、本筋から逸れてしまうからこれでよかったのだと思いました。
(後で自分で調べたのですが、とても興味深い人物で、いつかこの2人の人物で作品を描いてもらえたらなぁと思いました)

彷徨えるリストに大切なことを気づかせるショパン、そして彼とサンドの会話。
30年後に再会したリストとマリーの対話。
このラストへの流れがとても好きでした。
彼は世界に愛されていたし、彼もこの世界を愛している。それに気づいてここにいるのだと思うと自然と涙が。
なによりもそれを証明するリストの少年たちへのまなざしが心に沁みました。

生田先生が作品に添える副題にはじめて共感できました。(「シェイクスピア」の頃から苦手だったのですが)
このリスト・フェレンツを3か月演じきったあとの柚香さんにどんな変化があるだろう。そんな楽しみを持てた作品に出会えた幸せを感じる観劇でした。

「Fashionable Empire」もビートの効いたちょっと懐かしい選曲がとても好きなショーでした。
この公演で退団する飛龍つかささんと音くり寿さんが同期の方たちに囲まれる場面は思わず感動でうるうる。
聖乃あすかさん中心の場面では、「ぴあ」「ぴあ」言っていた気がするのだけど聞き違いかな。ぴあ貸切だからかな。通常公演を見ていないのでわからないのですが、聖乃さんがくっさくキザっていてときめきました。男役楽しんでいるなぁ笑。

柚香さんと水美さんが競い合うように高速リフトをする場面もびっくりしたなぁ。
音くり寿さんと美風舞良さんが対で歌う場面も聞き惚れながらもう二度と聞けないなんてもったいないことだなぁと思いました。まだまだ聞ける機会があると思っていたのに。

永久輝さんのハスキーな歌声もとても色気があって好きでした。お芝居に引き続きこのショーでも一瞬女役をされていましたよね。男役に早変わった瞬間の開放的な得意顔にフフッとなりました。

フィナーレのデュエットダンスは、難易度のある振り付けを軽々とこなしながらもラブフルな雰囲気はこのコンビ(れいまど)ならでは。
スピーディーな展開で記憶が前後しているのですが、とても楽しめたショーでした。

24時間前にはまさか翌日自分が花組公演を見ているとは思いもしなかったのですが、見ることができてよかったなぁと心から思った公演でした。

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2022/06/04

夢見た大人じゃなくても。

5月24日に宝塚大劇場にて星組公演「めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人-」「Gran Cantante!!」を見てきました。
イープラスの貸切公演でした。

この公演は初日開けて数日後の4月26日にマチソワしたのですが、公演関係者に新型コロナウィルス陽性者が確認されたため4月30日より公演中止となっていました。
果たして2度目の観劇は叶うのか?と心配だったのですが5月19日より公演が再開され観劇することができました。

お芝居もショーも「礼真琴」を満喫。
「めぐり会い~」の銀橋でルーチェ(礼真琴さん)が
歌う「Love Detective」、これぞ礼真琴。でわくわくしました。

「めぐり会い~」は前回見た時よりも演じている皆さんが楽しんでいるのが伝わりました。
そして私はロナン(極美慎さん)が好きかも。忘れていたオタク心をくすぐられたみたいです

前回見た時はアニス(水乃ゆりさん)がツボり、今回はアニスに加えてロナンが刺さりまくりました。

親の言いなりになるように育てられてしまった人なんだなぁ。
親が示す価値以外を認められないように洗脳されて、それに当てはまらない人を見下すような人に。
オンブルパパ(綺城ひか理さん)めちゃストイックそうだもんなぁ。
フォション(ひろ香祐さん)みたいに、好きな時に好きなだけお菓子を食べる生活なんて考えられなかったんじゃないのかな。
ローウェル公(輝咲玲央さん)を筆頭にローウェル家とオンブル家では家風が違い過ぎるよねと思います。

コーラス王(朝水りょうさん)も大切な娘を預けるにあたって、悪者から命を守ることのみを要件とするならオンブル家が最適と思ったはずなのだけど、娘に甘々な父親の気持ちが加味された結果、ストイックなオンブル家に預けるにはしのびず、のびのびと笑顔いっぱいに成長できそうなノンキな親戚の家庭が最良と選択したのかなと思います。
その感覚こそがやっぱり、コーラス王とオーウェル公が血縁のゆえんでは?
オンブルパパは「血」というけど、血がつながっていれば良いというわけではなくて、血がつながっているゆえの価値観や性質の相似こそがこの決定をもたらした気がします。
オンブルパパには気の毒だけど・・・。

そんな報われないオンブルパパとオーウェル公とコーラス王の若い頃のスピンオフが見たくてうずうずしています。
この関係性に疼きます。
もちろんオルゴン伯爵やマダム・グラファイスも登場して。それにそれぞれの奥方たちもどんな女性か知りたいなぁ。

王女の侍女かと思いきや、剣術の使い手らしいアージュマンド(瑠璃花夏さん)はコーラス王が遣わした侍従兼武官かなにかなのかな。
王女にも自分で自分の身を守れるように剣術の指南もしているのですよね。
だから危急に及んでもアンジェリーク(舞空瞳さん)は果敢に道を開くことができた。
そんな自らの手で剣を振るって窮地を打開するアンジェリークとアージュマンドを目の前にして、ジュディス(小桜ほのかさん)はどんな気持ちだろうと思うと胸がきゅっとなりました。

軽い気持ちで見ることができて、笑いながらもキャラクターの心情を思い、時にはっとさせられたりうるうるさせられる作品に心が解されました。

ライトテイストなお芝居の後には、息つく暇もないような、これでもか、な“ザ礼真琴ショー”「グランカンタンテ」。
リミットなしの「礼真琴」のパフォーマンスが圧巻。
あまりに集中して見て聴いて感じて終演後はぐったり。良い意味で。

「ボニータ」をはじめどの楽曲も、こんなふうに歌って踊ってショーアップされたら本望でしょうと思いました。
礼さんに呼応するように、星組生のパフォーマンスも前回見た時よりもレベルアップした印象で、どの場面も見ごたえがありました。

終始クオリティの高いショーで大満足でしたが、個人的には「ニンジン娘」みたいな場面がもう1こくらいあってもいいかなぁ。とも思いました。
凄すぎて背筋が伸びすぎカチコチになってたので。(お芝居が「めぐり会い~」でよかった~~~)

でもこんなショーが見られるのもいまの星組だからこそ。
礼さんと星組を堪能出来て大満足。高揚して終演後に逢ったヅカ友さんに思いを語りまくってしまいました。
ここにありちゃん(暁千星さん)が加わるなんてもう。。想像しただけで見逃せない思いです。

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2022/05/04

グランカンタンテ。

4月26日に宝塚大劇場にて星組公演「めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)-」「Gran Cantante(グラン カンタンテ)!!」をマチソワしてきました。

ショーはそのタイトルどおり、礼真琴さんが歌い歌い踊るショーでした。
懐かしいスペインものの柴田作品の主題歌や挿入歌を次々に歌い継いでいく場面は宝塚ファンとして心躍りました。
(わたし的にはタニウメで聴いたあの歌を、礼さんと美穂さんで聴いてることに妙なテンションの上がり方をしたり・・笑)
礼さんが大階段で「オンブラマイフ」を歌う場面は圧巻。
クオリティの高いショーを見たなぁ。これなら何回も見れるなぁ。と思いました。(といっても残るチケットはあと1枚なんですけど)

観劇から1週間たってしまったのですが、感想を書こうと思ったら、これが意外と細部を記憶していない・・涙。
全編スパニッシュだったせいかな。礼さんが凄かったのは間違いないんですけど。
鮮明に思い出せる場面は、瀬央ゆりあさんが銀橋で「ニンジン娘」を歌っていた場面。
瀬央さんの後ろで踊っていた極美慎さんの表情だったり。
それから礼さんが闘牛士の場面での牛さんの瀬央さんだったり。
ワッカのドレスの万里柚美さんだったり。太鼓を叩いてた華雪りらさんだったり。
天寿光希さんと音羽みのりさんが歌っている場面もあって、ああ退団されるんだなぁと思ったり。
フラメンコの掛け声がカッコイイと思ったり。
せり上がりして銀橋を渡る極美さんのお顏だったり。
見ている時は夢中で愉しんだんですが、場面の細部をほんとうに覚えていない自分に愕然。

ちょっと言い訳をさせてもらうと、「礼さんとその他大勢」か「礼さんと美穂圭子さんとその他大勢」なシーンが多くて、記憶力の弱い私には難易度が高くて・・。全編スパニッシュというのも記憶が混乱する原因かな。
礼さんだから成立してるショーだと思いますが、星組には素敵な人がいっぱいいたはずなのに、あまりピックアップされていなかった? されていたのに記憶がない?・・どっちだろう。
検証するためにも、もう1回見たいです。(どうか叶いますように・・涙)

美穂圭子さんの歌も素晴らしかったですが、ずっと歌われている印象で。ここぞという場面であの歌声を披露されるほうが記憶に残った気がします。
星組のいろんな人の歌声も聞きたかったなぁ。とくに娘役さんの。

パフォーマンスは本当に素晴らしかったのですが、礼さんと美穂さん以外のパフォーマーの顔があまり見えないショーだったかも・・と思いました。
でも、私の勘違いかもしれないので、もう1回絶対見たいです。
どうか早く公演が再開しますように。切に祈ります。

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